(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
羊膜シートを裁断して製造される2つの羊膜片であって、一方の羊膜片は凸部を有し、他方の羊膜片は該凸部に対応する形状の凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の羊膜片。
隣接する2つの羊膜片の間の境界線を裁断する際に一方の羊膜片側を凸状となるように裁断加工することで、前記隣接する2つの羊膜片の一方に凸部を、他方に該凸部に対応する形状の凹部を形成することを特徴とする請求項10に記載の羊膜片の製造方法。
正立配置と倒立配置の1対の略矩形状の羊膜片を対にして、それぞれの凸部及び凹部が形成された1辺を相対向して近接させるように裁断加工することを特徴とする請求項11に記載の羊膜片の製造方法。
前記正立配置と前記倒立配置の羊膜片を対にして、それぞれ一方の凸部と他方の凹部が重なるように形状加工することを特徴とする請求項11に記載の羊膜片の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の複数の実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。以下に説明する実施形態では、羊膜を乾燥させた乾燥羊膜片及びその製造方法について説明しているが、本発明の羊膜片は、乾燥羊膜片に限定されず、乾燥されていない通常の羊膜片や、保存液等に浸漬された湿潤状態の羊膜片も含まれる。
【0049】
1.第1の実施形態(凸部)
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る羊膜片について説明する。
図1は、識別部が凸部の実施形態を示す羊膜片の平面図であり、
図1(a)は識別用の凸部が三角形、
図1(b)は円弧状、
図1(c)は矩形、
図2(d)は複数の識別部を有する実施形態である。本実施形態では、線対称図形である矩形状の羊膜片の一部に凸部を設けて、羊膜片を略矩形状に整形することにより、羊膜片を非線対称とすることで、表裏の識別ができるようにしている。
【0050】
図1(a)に示すように、羊膜片11−1は、本体部13と凸部(識別部)15とを備えている。本体部13は、羊膜片11−1を構成する主要部であり、凸部15は、本体部13の表裏の識別に用いられる手段である。本体部13は、平面視における輪郭形状を区分する端部を有しており、本実施形態では輪郭形状が矩形状(正方形状)である。本体部13の大きさは、特には限定されず、その用途に応じて種々のサイズとすることが可能であるが、再生治療に用いられる場合は例えば1×1cm、2×2cmなどの比較的小型の正方形のほか、5×5cmのような大型正方形や、2×3cmのような長方形などを例示することができる。
【0051】
本体部13は、矩形状であり、4つの辺13a〜13dによって端部が構成されている。また、本体部13は、4つの線対称軸Xa〜Xdを有しており、これらの線対称軸Xa〜Xdによって平面視において線対称となっている。すなわち、本体部13は、その輪郭形状(辺13〜13dで区分される形状)が線対称図形ということができる。線対称軸Xaは、本体部13のうち相対する2つの辺13aと辺13bのそれぞれの中点を通る中心線であり、線対称軸Xbは、相対する2つの辺13cと辺13dのそれぞれの中点を通る中心線である。また、線対称軸Xcは、辺13aと辺13dのなす角と、辺13bと辺13cのなす角を通る対角線であり、線対称軸Xdは、辺13aと辺13cのなす角と、辺13bと辺13dのなす角を通る対角線である。
【0052】
凸部15は、表裏の識別を可能とする手段であり、本発明の識別部に該当する。本実施形態の凸部15は、二等辺三角形であり、辺13bの一部に設けられている。二等辺三角形の大きさは、特に制限はないが、例えば本体部13が1×1cmの場合は、辺13bを
底辺として凸部15の頂角までの距離(高さ)が1〜3mmの範囲内が好ましく、2mmの程度がより好ましい。凸部15の大きさが小さいと、視認性が悪くなって表裏の識別が難しくなりやすい。
【0053】
一方、凸部15の大きさが大きいと、羊膜片11−1を複数製造する際に無駄となる部分が多くなる。すなわち、1枚の羊膜から複数の羊膜片を切り出す際に、本実施形態のような矩形状の本体部13の羊膜片11−1は、本来であれば羊膜を碁盤目状に裁断することで、無駄なく(歩留りよく)羊膜片を切り出すことができる。しかしながら、本実施形態の羊膜片11−1は辺13bから突出する凸部15を備えているため、1つの羊膜片の凸部15と、これに隣接する羊膜片の辺と間の凸部15以外の部分は、本体部13には含まれずに無駄になる。したがって、凸部15の大きさが大きすぎると、無駄になる部分が増え、製造工程において歩留まりが悪くなりやすい。
【0054】
凸部15は、線対称軸Xa〜Xdのすべてにおいて、各線対称軸Xa〜Xdを挟んで分割される2つの領域が非線対称となるように、本体部13に設けられる。本実施形態では、凸部15は、線対称軸Xa〜Xdで区分される8つの領域の1つの辺13b上であって、線対称軸Xa〜Xd上ではない領域に設けられている。
【0055】
このように、本発明では、識別部である凸部15を本体部13が有することで、表裏の判別が可能となる。特に、本実施形態のように本体部13が線対称軸Xa〜Xdを有する線対称図形(矩形状)の場合、本体部13の輪郭形状は表面と裏面で合同となるため、本体部13の輪郭形状だけでは表裏の識別が不可能であるが、本発明のように識別部を有することで、矩形の対称性が崩れるため、表裏の識別が可能となる。なお、「対称性が崩れる」とは、線対称軸で区分される領域の少なくとも一領域に、他の領域に対して数学的合同とならないように(数学的合同条件を満たさないように)識別部を設けること、と言い換えることができる。ここで、「数学的合同」とは、各辺の数及びそれらの各辺がなす角度、各辺の順序が等しい形状として定義する。
【0056】
また、羊膜は、等方性でかつ乾燥物であっても比較的柔らかいため、どのような形状にも加工が容易であるため、識別部を加工しやすい。したがって、後述するように切断などの方法で表裏の識別可能な羊膜片を容易に製造することができる。
【0057】
凸部15は、本体部13の端部(辺13a〜13d)の上であれば、任意の位置に設けることができるが、本実施形態のように線対称軸Xa〜Xdの上ではない位置が好ましい。凸部15が線対称軸Xa〜Xdの上に配置されると、凸部15の位置が表面と裏面とで近似したものとなり、表裏判別が困難となりやすい。
【0058】
羊膜片11−1の表裏を識別するには、凸部15の位置を使用者が予め記憶しておく。医師などが羊膜片を使用して再生治療を行う場合を例に挙げると、例えば、
図1(a)のように矩形状の本体部13の右側の辺13bの中心より上側に凸部15が位置する場合は表面といったように使用者が記憶しておけば、羊膜片11−1に正対して右辺の上側に凸部15が位置した場合は表面、位置しない場合は裏面であると判断できる。このようにして、羊膜片の表裏の間違いを防止することが可能となる。あるいは、左辺の上側に凸部15が位置した場合には裏面と判断してもよい。
【0059】
また、本実施形態の凸部15は、辺13bから外側に突出する部位であるため、その部分をピンセット等で保持することができ、本体部13に接触せずに施療等を行うことができる。
【0060】
凸部15の位置は、線対称軸Xa〜Xdを挟んで分割される領域の対称性を崩した形態
であれば、この辺13b内で任意の位置にずらしてもよい。また、凸部15の大きさは、任意に変更することができる。
【0061】
さらに、複数の羊膜片において、凸部15の位置及び大きさのいずれか1つ以上を変えることで、羊膜片のロットの識別が可能になる。ここでいう「ロット」とは、羊膜片の製造過程における最小単位で、同一ロットの羊膜片とは、同一由来の羊膜から製造され、本体部が同一の形状であるものを意味する。凸部15の位置でロットを識別可能とするには、例えば、辺13bの中心より上側に凸部15を有する場合はAロット(第1ロット)、辺13bの中心より上側に凸部15を有する場合はBロット(第2ロット)のように識別可能とすることができる。同様に、凸部15の大きさでロットを識別可能とするには、例えば、凸部15の高さが2mmの場合はCロット(第3ロット)、凸部15の高さが1mmの場合はCロット(第4ロット)のように識別可能とすることができる。
【0062】
このように、凸部15の位置及び大きさのいずれか1つ以上を変更することで、無限の組合せのロットを識別することが可能となる。なお、凸部15が位置する辺が長くなるほど、ロット差の視認性を上げることができ、多くのロットを識別することが可能となる。
【0063】
さらに、凸部15を2辺上に複数設けるようにしてもよい。例えば、辺13bに加えて辺13aに設けるなどを行ってもよい。これにより、更に多くのロットを区別することが可能となる。また、医療の現場では、例えば小さな創傷や火傷に対しては、この羊膜片を更に小片に裁断する場合があるが、上記のように複数の位置に凸部15を設けることにより、それぞれの小片において、表裏面及びロットを識別することが可能となる。
【0064】
次に、本実施形態の変形例に係る羊膜片を
図1(b)と
図1(c)に示す。羊膜片11−2(
図1(b))では識別部として円弧状の凸部16を、羊膜片11−3(
図1(c))では識別部として矩形状の凸部17を、それぞれ本体部13に設けている。羊膜片11−2と羊膜片11−3のサイズは、
図1(a)と同様に、いずれも例えば1×1cmとすることができ、それぞれの凸部16,17の高さはいずれも2mmとすることができる。なお、羊膜片11−2と羊膜片11−3のサイズは、1×1cmに限ることなく、その他のサイズでもよい。このように、本発明では、識別部がこのような円弧状等の形状でも、
図1(a)に示す三角形状の凸部15と同様に、羊膜片の表裏面を識別することが可能となる。
【0065】
本発明の羊膜片の他の変形例に係る羊膜片を
図2(d)に示す。この変形例の羊膜片11−4は、識別部として三角形の凸部15と矩形の凸部17を辺13bに備えている。このように、識別部としての矩形、三角形、さらには他の変形例で挙げた円弧の形状の凸部を混在して設けることにより、表裏の識別がより容易になる。また、凸部の位置、形状、大きさの少なくとも1つを変更することで、羊膜片のロット識別を可能とすることもできる。
【0066】
さらに、複数の羊膜片で識別部を複数設けることで、その位置や形状の組み合わせによって区別できるロットの数を大幅に増やすことも可能となる。なお、識別部の凸部形状はこれらの形状に限ることはなく、複雑な多角形を用いることも可能である。しかしながら、過度に複雑な多角形の場合は識別性が低下する場合もあるので留意する必要がある。
【0067】
本実施形態のように識別部が凸部15の場合、正立配置の羊膜片を並べて切り出すと、各羊膜片の間隔を三角形状の凸部15の高さ分だけの幅(例えば、2mm)を離して裁断加工せねばならないので、その幅分の羊膜は無駄に廃棄されることになる。本体部が1×1cmのサイズの場合、その廃棄部は羊膜片の面積の2割に相当し、かなりの部分が無駄になる。
【0068】
その廃棄分を低減する方法として、
図2(e)に示すように、正立配置の羊膜片11−1を180度回転させた倒立配置の羊膜片11−1’を隣接させ、羊膜片11−1の凸部15と羊膜片11−1’の凸部15’とが同一の側面に位置するように形状加工する。これにより、凸部15,16’の周辺部を隣接する羊膜片11−1と羊膜片11−1’とで共用することが可能となり、廃棄部分を半減させることができる。また、羊膜片11−1の形状が長方形の場合には、短辺側に凸部15を設けることにより、廃棄される部分をさらに減らすことができる。
【0069】
次に、本発明の羊膜片の製造方法について説明する。
図3は、羊膜の入手から乾燥、出荷までの羊膜片の製造プロセスを示すフロー図である。自然分娩や帝王切開により得られた羊膜は病院を経由して提供される。その入手状況、母子の血液型、形状、厚さ、汚れ具合等をコンピュータのデータベースなどに記録して登録する(羊膜入手・登録工程)。その後、羊膜の検査(検査工程)を行い、消毒洗浄を経て(消毒・洗浄工程)、さらに乾燥台に乗せるための前裁断を行って羊膜を乾燥装置の台に乗せられるサイズのシート(羊膜シート)に裁断する(前裁断工程)。次に、羊膜シートを乾燥装置に入れて脱水・乾燥を行って乾燥羊膜シートとする(脱水・乾燥工程)。この工程が終了して乾燥羊膜シートを乾燥装置から取り出した後、所望のサイズに裁断加工して羊膜片とし、あわせてロットをデータベースなどに記録する(裁断・ロット記録工程)。最後に、羊膜片と乾燥材などを入れてパッケージングした後(パッケージング工程)、病院等に出荷する(出荷工程)。
【0070】
本実施形態の製造方法では、乾燥後の羊膜に対して裁断を行って、識別部を有する羊膜片を切り出している。羊膜片の形状加工は、単純な矩形状の形状加工ではなく、識別部である凸部15〜17を形成するように複雑な形状の裁断加工が必要となる。このため、本実施形態では、自動レーザビームカッターを使用している。自動レーザビームカッターとは、レーザビームを照射して切断する装置であり、予めプログラムしておいた形状を自動的に裁断する全自動の装置である。羊膜は、薄い黄色の色を持つ半透明膜であり、YAGレーザの基本波(波長1.064μm)をよく吸収するため、1ワット以下の小型のYAGレーザ装置が使用できる。このレーザビームカッターを、求める羊膜の形状に沿って走査するようにプログラミングすることにより、羊膜片の本体部と凸部とを連続して効率よく形成することが可能となる。このように、レーザービームの動きを事前にプログラミングすることにより、複雑な形状の識別部でも自在に加工することが可能となる。
【0071】
なお、本実施形態では、自動レーザビームカッターを使用しているが、羊膜片の裁断方法としては自動レーザビームカッターには限定されず、通常のカッターナイフやはさみによる切断などでもよい。また、本実施形態では、乾燥羊膜に対して羊膜片の裁断を行っているが、これに限定されず、乾燥前の羊膜を裁断してもよい。
【0072】
また、病院等で入手された羊膜は、数十センチないしそれ以上の不定形の形状をしており、前裁断においても、できるだけ無駄を出さないように周辺部も残すため、一定形状に仕上げられてはいない。そのため、乾燥後の裁断加工においても自動的に裁断することが困難な場合があり、そのときは人による裁断機への設置などを含めて半自動的に裁断加工することがある。
【0073】
さらに、一枚の乾燥羊膜シートからでも色々なサイズの羊膜を切り出すことになり、同時に複数の羊膜シートを乾燥することが多いため、その混同を避ける必要が生じる場合がある。この識別には、一回の乾燥工程で製造される複数の羊膜片の識別が最低必要であり、好ましくは入手先別、用途別にロット単位で識別できることが必要であり、数十種類の羊膜片を識別できることが求められる。また、上記したように、治療に使用する羊膜は、複数の性質の異なる層が積層されており、その表裏面によって特性が異なるため、表裏面
の識別が必須となる。
【0074】
これらの要求は、不純物の混入が無く、できるだけ簡易で、かつ、識別性の高い方法で満たされることが望ましい。そこで、上述したように、識別部の位置と形状の組合せによって、多様性を発揮できるように仕上げることにより、羊膜片の表裏識別だけでなく、ロット識別が可能となる。
【0075】
2.第2の実施形態(凹部)
次に、
図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る羊膜片について説明する。
図4は、識別部が凹部の羊膜片を示す平面図であり、
図4(a)は凹部が三角形状、
図4(b)は凹部が円弧状、
図4(c)は凹部が長方形状、
図4(d)は角部を切り欠いた実施形態である。第1の実施形態では、本体部の端部から外側に突出する凸部を識別部とすることで、正方形の線対称性を崩して表裏を識別できるようにしたが、本実施形態では、本体部の端部から内側に没入する凹部を識別部とすることで、本体部の線対称性を崩して表裏を識別できるようにしている。
【0076】
図4(a)に示すように、本実施形態の羊膜片21−1は、本体部13が矩形状であり、4つの線対称軸Xa〜Xdを有している。本実施形態の凹部24は、線対称軸Xa〜Xdで区分される8つの領域の1つの辺13b上であって線対称軸Xa〜Xd上ではない領域に設けられている。本実施形態の凹部24は、高さ2mmの直角三角形とすることができるが、これに限定されず、高さ1mmなどとしてもよい。なお、ここでいう「高さ」とは、辺13bを底辺として凹部24の頂角までの距離を意味する。また、凹部24の位置は、本体部13の対称性を崩して非線対称となる位置であれば、この辺13b内で任意の位置とすることが可能である。
【0077】
この凹部24により、表裏面の識別が可能となることや、複数の羊膜片を製造する場合において、識別部である凹部24の位置と大きさを変更することでロット識別を可能とすることは、第1の実施形態と同様である。また、本体部13のサイズは、上記の1×1cmに限るものではなく、2×3cmなどの長方形や5×5cmの大型のものとすることができる。また、凹部24を形成する辺13bの長さが長くなるほど、ロット差の視認性を上げることができ、多くのロットを区別することが可能となる。
【0078】
このように、識別部が凹部の場合、上述した第1の実施形態のような凸部の場合と比べて、本体部の端部を切り欠くだけで加工できるため、裁断において無駄になる部分はこの切り欠きの部分だけである。したがって、本実施形態では、上述した凸部を形成する場合と比べて、羊膜の廃棄部分が少なくなり、使用面積効率がよい。
【0079】
さらに、凹部24を辺13b上に複数設けてもよく、その場合は凹部24の形状や位置を種々に変更してもよい。これにより、複数の羊膜片を製造する際に、更に多くのロットを区別することが可能となる。また、大きなサイズの羊膜片でも同様に、本実施形態の三角状の凹部24により、表裏面の識別が可能となる。
【0080】
本実施形態の羊膜片21−1は、上述した第1の実施形態と同様に、YAGレーザを用いた自動レーザビームカッターを用いることにより製造することができる。このように自動レーザビームカッターを用いることで、本体部の端部と凹部を連続して形状加工することができる。
【0081】
次に、本実施形態の変形例に係る羊膜片を
図4(b)〜
図4(d)に示す。羊膜片21−2(
図4(b))では識別部として円弧状の凹部25を、羊膜片21−3(
図4(c))では識別部として矩形状の凹部26を、それぞれ本体部13に備えている。羊膜片21
−2と羊膜片21−3のサイズは、いずれも例えば1×1cmとすることができ、それぞれの凹部25,26の窪みの高さはいずれも2mmとすることができる。これによって、三角形状の凹部24と同様に、表裏面を識別することが可能となる。なお、羊膜片21−2と羊膜片21−3のサイズは、1×1cmに限ることなく、他のサイズでもよい。また、これらの羊膜片も、自動レーザビームカッターを用いて形状加工できることは上述した実施形態と同様である。
【0082】
これらの三角形、円弧、矩形の形状を有する凹部を混在して用いることにより、より確実に表裏の識別を可能とすることができる。また、複数の羊膜片を製造する場合には、凹部の位置、形状、大きさの少なくとも1つを変更することで、羊膜片のロット識別を可能とすることもできる。この場合、三角形、円弧、矩形の形状を有する凹部を混在して用いることにより、識別できるロットの数を大幅に増やすことも可能となる。さらに、本実施形態の凹部と第1の実施形態の凸部とを混在させてもよい。これにより、さらに識別できるロットの数を増やすことができる。
【0083】
また、
図4(d)に示すように、本体部13の角を切り欠いて凹部27とし、これを識別部としてもよい。本実施形態では、本体部13の角を三角形に切り欠いた形状をしており、その形状は本体部13の対角線に対して左右で非対称としている。このように切り欠き部を設けることでも、線対称図形である本体部13の対称性を崩して表裏の識別が可能となる。
【0084】
本体部13の角に対する凹部27の切り欠き角度は、表裏の識別が可能な程度であれば、任意の角度とすることができる。複数の羊膜片を製造する場合には、この切り欠き角度を変えることによって、ロット識別も可能となる。
【0085】
本実施形態のように、本体部13の角を切り欠いて識別部とする場合、切り欠き角度によって形状の変化を付けて多様性を持たせることになるが、角度の切り欠きによる形状変化ではそれほど多用な形状とすることは一般的に困難である。このため、識別部の形状による表裏の識別や、複数の羊膜片を製造する場合のロット識別は、例えば上述した実施形態のように辺上に識別部を設けたような、より複雑な形状の識別部と比較して困難となりやすい。また、本体部13の角部は、折れ曲がりや破損が生じやすい部分であるため、これらのものとの判別が難しい場合がある。一方で、本体部13の角部の切り欠きは、簡単に行うことができるため、複雑な形状加工をする場合と比較して、製造コスト等の観点からは優れている。
【0086】
本実施形態の羊膜片の製造方法としては、第1の実施形態と同様に自動レーザビームカッターを使用することができるが、これに限定されないことは言うまでもない。なお、本実施形態では、矩形形状の一部を切り欠いて目的の形状を形成するので凸部がなく、正立配置の複数の羊膜片が隣接するように配置して裁断加工することができる。このため、第1の実施形態の凸部のように隣接する羊膜片の間の領域で無駄になる部分がないため、第1の実施形態の羊膜片と比べて製造工程における歩留まりが相対的によい。
【0087】
3.第3の実施形態(凹部と凸部の組合せ)
次に、
図5を参照して、本発明の第3の実施形態の羊膜片について説明する。
図5は、識別部として凸部と凹部を備える羊膜片を示す平面図であり、
図5(a)は凸部と凹部がいずれも長方形の実施形態を示している。
図5(a)に示すように、本実施形態の羊膜片31−1は、本体部13が矩形(正方形)状であり、、4つの線対称軸Xa〜Xdを有している。線対称軸Xa〜Xdで区分される8つの領域の1つの辺13b上であって、線対称軸Xa〜Xd上ではない領域に設けられている。
【0088】
本実施形態では、識別部として凸部17と凹部26を備えている。本実施形態の凸部17は、線対称軸Xa〜Xdで区分される8つの領域の1つの辺13b上であって線対称軸Xa〜Xd上ではない領域に設けられており、凹部26は、線対称軸Xa〜Xdで区分される8つの領域の1つの辺13b上であって線対称軸Xa〜Xd上ではない領域に設けられている。また、凸部17と凹部26は、線対称軸Xa〜Xdで区画される8つの領域の異なる領域にそれぞれ設けられている。凸部17と凹部26は、輪郭形状が長方形状であり、かつ両者の輪郭形状が合同であり、凸部17と凹部26を突き合わせたときに隙間が生じない形状となっている。なお、本実施形態の凸部17と凹部26は、いずれも高さ2mmの矩形状とすることができるが、これに限定されず、例えば高さ1mmなどとしてもよい。
【0089】
このように構成することのより羊膜の廃棄部分を極力減らし、かつ2枚の羊膜片の凹凸部を同時に形成することが可能となる。すなわち、
図5(b)に示すように、まず羊膜片31−1と羊膜片31−1’の2枚分のサイズの羊膜片の外周を裁断加工する。さらにその中心部に、羊膜片31−1の凸部17と羊膜片31−1’の凹部26’が、羊膜片31−1の凹部26と羊膜片31−1’の凸部17’が、それぞれ互いに突き合う位置となるように形状加工する。これにより、凹凸部を有する羊膜片31−1とそれを180度回転した羊膜片31−1’を同時に作製することができる。また、この場合、それぞれの羊膜片の凸部と凹部が対応するため、廃棄部分が全く生ぜず、効率よく羊膜を用いることが可能となる。
【0090】
さらに、医療現場において患部が広範囲に及ぶときは、複数の羊膜片を並べて患部に貼付することがあるが、本実施形態のように凸部17と凹部26の輪郭形状が合同であるため、隣接する羊膜片の凹部と凸部とを突き合わせて患部に貼合すると、羊膜片の間に隙間が生じない。これにより、羊膜片の隙間を通じた空気感染等が生じにくくなる。また、複数の羊膜片を患部に貼合する際に、羊膜片を重ねて患部に貼合するとその部分は患部に接触しないため、無駄な領域となってしまうが、本実施形態のように隣接する羊膜片の間に隙間なく貼合することができると、無駄な領域を無くすることができる。
【0091】
本実施形態の羊膜片も、上述した第1,第2の実施形態と同様に、凹凸部を辿るようにプログラミングした自動レーザビームカッターにより作製することができる。また、この凸部17と凹部26の位置は、この辺13b内で任意の位置にずらしても対称性を崩した状態を保つことができる。これにより、ロット識別のための複数の状態を簡易に作製することが可能である。さらに、本実施形態では、長方形状の凸部17と凹部26であるが、これに限られるものではなく、円弧状、矩形状など、互いに数学的合同を保つ形状である限り、どのような形状も使用できる。また、本実施形態では、凸部17と凹部26の位置は同じ辺13b上であったが、異なる辺上となるように配置してもよい。
【0092】
以上詳述したように、本実施形態の羊膜片によれば、形状加工において廃棄する部分を無くすことができ、羊膜の使用効率の良い、したがって安価な乾燥羊膜片を提供することが可能となる。また、複数の羊膜片を製造する際には、識別部の形状、大きさ、位置の少なくとも1つをロットごとに変更することで、ロット識別も可能となる。
【0093】
4.第4の実施形態(孔部)
以下、
図6を参照して、本発明の第4の実施形態の羊膜片について説明する。
図6は、識別部が孔部の羊膜片を示す平面図であり、
図6(a)と
図6(c)は本体部が長方形状、
図6(b)は本体部が正方形状の実施形態である。
図6(a)に示すように、本実施形態の羊膜片41−1では、本体部43が長方形状の線対称図形であり、2本の線対称軸Xa,Xbを有している。線対称軸Xaは、相対する2つの辺43aと辺43bの中点を通る中心線であり、線対称軸Xbは、相対する2つの辺43cと辺43dの中点を通る中心
線である。
【0094】
本実施形態の識別部は、本体部43の辺(端部)43a〜43dよりも内側に形成された孔部46である。本実施形態の孔部46は円形状であり、線対称軸Xa,Xbで区分される4つの領域のうちの1つの領域の周辺部に設けられている。本体部43のサイズは、例えば1×2cmとすることができるが、これに限定されない。また、孔部46の大きさは、例えば直径0.5mmとすることができるが、これに限定されず、1mmや2mmなどとすることができる。孔部46の位置は、辺12bと辺13aがなす角部に近接した位置に設けられているが、この位置についても特に限定されず、線対称軸Xaに近い位置などとすることができる。孔部46の中心の位置は、辺43bと辺43dのそれぞれの辺から1〜5mm程度の範囲内が好ましい。
【0095】
次に、
図6(b)に本実施例の他の変形例を示す。この羊膜片41−2は、本体部13の形状が略矩形状(正方形)であり、そのサイズは例えば1×1cmとすることができる。この場合は本体部13の中心線だけでなく対角線Xc,Xdも線対称軸となるので、合計4本の線対称軸Xa〜Xdを有することになる。また、孔部46は、略円形であり、それ自体の形状によって表裏の識別を行うことが困難である。したがって、孔部46は、これらの線対称軸Xa〜Xdの線上を避けた位置に形成している。これによって、本体部が正方形の場合でも非対称の形状を有する羊膜片とすることができる。この孔部46は、線対称軸Xa〜Xdの線上に中心が位置するものでなければ、本体部13のどこに設けてもよく、また複数の孔部を設けることもできる。そのため、複数の羊膜片を製造する場合には、ロット識別可能な多数の羊膜片を作製することが可能となる。
【0096】
本実施形態の他の変形例を
図6(c)に示す。この変形例は、
図6(a)と同様に本体部43が辺43a〜43dを有する長方形状であるが、識別部として3個、3種類の孔部46〜48(円形の孔部46、三角形の孔部47、四角形の孔部48)を有する例である。この孔部46〜48の個数や形状は任意であり、これらの孔部46〜48の形状を任意に変更することにより、多数の非線形形状を作ることができ、これにより、より多くのロットの識別が可能となる。
【0097】
これらの孔部46〜48の直径や辺の長さは、通常は0.1〜2mmの範囲内であり、0.5mm程度で十分識別でき、かつ治療におけるこの孔の影響は無視できる程度である。また、この孔部46〜48の形成には、上記の実施例と同様に、自動レーザビームカッターを使用して形成することができる。円形状の孔部46の場合は,同サイズに集光したレーザビームを用いて加工することができる。すなわち、孔部46は、その直径と等しい直径を有するレーザビームを、本体部43に対して短時間のパスル照射することにより形成することができる。
【0098】
また、円形状の孔部46を含めて、三角形の孔部47、四角形の孔部48の加工には、さらに集光度を高め、孔部のサイズよりも細い径に集光したレーザビームを使用し、これらのビームを孔部46〜48の周辺部に沿うように走査することにより、孔部46〜48を形成することができる。これにより、各種の形状の孔部を、より高い形状精度で加工することができる。
【0099】
本実施形態によれば、微小な孔部を形成することのみで、表裏の識別が可能となるため治療に使用しやすく、また作製プロセスも単純でよくて羊膜片を安価に製造することができる。
【0100】
5.第5の実施形態(円形)
以下、
図7を参照して、本発明の第5の実施形態の羊膜片について説明する。
図7は、
本体部が円形の羊膜片を示す平面図であり、
図7(a)は識別部として2個の凸部を有する実施形態、
図7(b)は凸部と凹部を有する実施形態、
図7(c)は凸部と凹部を合わせて3個有する実施形態、
図7(d)と
図7(e)は識別部として孔部を有する実施形態、
図7(f)は凸部、凹部、孔部の3つを有する実施形態であり、
図7(g)は複数の羊膜片を切り出す態様を示している。
【0101】
図7に示すように、本実施形態では、本体部53が略円形状の線対称図形である。円は、その中心線を通る線がすべて線対称軸である線対称図形である。円形状の本体部53の場合、識別部が1つのみでも、その形状によっては表裏の識別が可能であるが、識別部が1つだと形状のみで表裏を判別する必要があるため、表裏を識別が難しくなりやすい。そこで、本実施形態の羊膜片51−1(
図7(a)と羊膜片51−2(
図7(b))では、識別部として2か所の形状加工により略円形形状の羊膜片の非対称化を行っている。すなわち、羊膜片51−1では形状の異なる2個の凸部(識別部)15,17を、羊膜片51−2では三角形状の凸型(識別部)15と三角形状の凹型(識別部)24を、それぞれ本体部53の円周(端部)の周辺部に設けることで、羊膜片の形状を非対称化している。
【0102】
本実施形態では、それぞれの2個の識別部は、略円形状の本体部53の中心Oから見て互いに90度をなす位置に配置している。なお、識別部の配置は、これに限定されず、羊膜片が表裏識別できる位置であれば、任意の位置と配置することができる。この2個の識別部のなす角度は、互いに180度となる位置以外とすることが好ましい。2個の識別部のなす角度が180°であると、線対称軸上に識別部が並ぶため、表裏の形状が近似して表裏識別が難しくなりやすい。なお、略円形の羊膜片51−1,51−2の非対称化ができて表裏の識別が可能であれば、2個の識別部のなす角は、180度以外の任意の角度とすることができる。また、2個の識別部のなす角度の差を、表裏を識別できる角度で変えることにより、多数の非対称形状ができる。これにより、複数の羊膜片を製造する場合は、識別部をロット識別に使用することも可能である。
【0103】
羊膜片51−3(
図7(c))、羊膜片51−4(
図7(d))、羊膜片51−5(
図5(e))、羊膜片51−6(
図7(f))では、識別部を3か所設けることにより略円形形状の羊膜片の非対称化を行っている。また、この識別部は、羊膜片を複数製造する際には、ロット識別用にも用いることが可能である。羊膜片51−3(
図7(c))は、上述した羊膜片51−2(
図7(b))の凸部15と凹部24にさらに円弧状の凸部16を本体部53に設けている。これにより、本体部53により多数の形状を形成することができ、表裏の識別がより容易になる。また、複数の羊膜片を製造する場合には、識別できるロット数を増やすことができる。羊膜片51−4(
図7(d))では3個の円形の孔部46を、羊膜片51−5(
図7(e))では円形の孔部46、三角形の孔部47、四角形の孔部48の3種類の識別部を、羊膜片51−6(
図7(f))では凸部15、凹部26、孔部46を、いずれも本体部53に設けることにより、略円形の本体部53の非対称化して表裏の判別を可能としている。また、複数の羊膜片を製造する場合には、3種類の識別部によってロットの識別性を向上させることが可能である。なお、これらの識別部の形状形成にあたっては、上述した他の実施形態と同様に、自動レーザビームカッターにより好適に形状加工することができる。
【0104】
また、羊膜シートから複数の羊膜片を製造する際に、
図7(g)に示すように、円形状の本体部53の円周部が隣接する羊膜片と接触する位置となるように配置し、かつ、凸部15,17が隣接する羊膜片51−1の間の隙間に位置するように切り出すことが好ましい。このように羊膜シートから羊膜片を切り出すことで、切り出した後の余分な部分を少なくすることができ、羊膜シートの歩留まりを向上させることができる。
【0105】
以上に示した実施形態では、識別部として上述した凸部、凹部、孔部を用いて形成でき
る形状の本の一部であり、これらを混在させることにより、無数のロットを識別させることが可能となる。
【0106】
6.第6の実施形態(非線対称図形)
以下、
図8を参照して、本発明の第6の実施形態の羊膜片について説明する。
図8に示すように、本実施形態では、本体部63は、二等辺台形ではない台形状であり、輪郭形状において線対称軸が存在しない非線対称図形となっている。本実施形態では、本体部63の任意の位置に識別部としての孔部46を有している。非対称図形は、線対称軸がないため、それ自体で表裏の識別が可能であるが、本実施形態では、さらに識別部を備えている。このため、非線対称図形である本体部63による表裏識別に加えて、識別部の位置等による表裏識別が可能であり、より確実に表裏の識別が可能となる。
【0107】
本体部63の角63aの傾き角は、特に制限はないが、通常は1〜85°の範囲内である。なお、本体部63自体による表裏の識別性の観点からは、角63aの傾き角は3°以上あれば十分に表裏を判別可能である。一方、角53の傾き角が鋭角になりすぎると、治療部の形状と合わせにくくなるとともに、その部分が剥がれやすくなる。したがって、これらの点から、角53の傾き角は、3〜10°の範囲内が好ましい。なお、施術の際には、この鋭角部分の角53をピンセットで挟むことにより羊膜片をつかみやすくなり、また患部に密着がしやすくなり好適である。
【0108】
本実施形態における利点として、羊膜片の製作のしやすさを挙げることができる。すなわち、
図8(b)に示すように、実施例3(
図5)と同様に、本実施例の羊膜片61−1とそれを180度回転した羊膜片61−1’の2枚分の羊膜片を、両者の非対称を形成する辺を内側に挟むようにして、その境界部を斜めに裁断することのより、2枚分を同時に作製できる。これによって羊膜の無駄な部分を発生させずに裁断することができる。また裁断部が直線であるため、通常の直線状の刃を有するカッターにより裁断できるが、もちろん、自動レーザカッターにより裁断してもよい。
【0109】
以上、複数の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。識別部の数は3個以上とすることも可能であるし、凸部、凹部、孔部を自在に組み合わせることができる。また、識別部の形状、位置、大きさも任意に変更することができる。また、本体部の形状も、上述した矩形状、長方形状、円形状、台形状に限定されず、種々の形状を採用することができる。例えば、本体部の輪郭形状が線対称図形の他の例としては、二等辺三角形(線対称軸1本)、正三角形(線対称軸3本)、ひし形(線対称軸2本)、楕円(線対称軸2本)、半円(線対称軸1本)などを挙げることができる。また、本体部の輪郭形状が非線対称図形の他の例としては、平行四辺形を挙げることができる。
【0110】
また、本発明の羊膜片とは、羊膜を構成する層(膜)の少なくとも1つを備えていれば、羊膜自体に限定されない。例えば、羊膜を構成する羊膜上皮組織、基底膜、間質組織のうち1つ以上の組織から構成されてもよく、これらの組織にさらに羊膜以外由来の組織等を有するものであってもよい。