(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による有機無機複合粒子は、シリカ成分を1.0〜83.0重量%、生分解性プラスチックを17.0〜99.0重量%の範囲で含んでいる。また、平均粒子径d
1が0.5〜25μm、真密度が1.03〜2.00g/cm
3、真球度が0.80以上である。
【0014】
シリカ成分が1%未満の場合は、シリカ成分が持つバインダーとしての効果が低くなり、また、微細な生分解性プラスチック同士の接点が多くなるために、再分離させることが困難となる。一方、生分解性プラスチックが17%未満の場合は、プラスチックビーズ特有のソフト感としっとり感が得られない。さらに、シリカ成分が1〜79重量%、生分解性プラスチックが21〜99重量%が好ましい。特に、シリカ成分が5〜70重量%、生分解性プラスチックが30〜95重量%が好ましい。
【0015】
有機無機複合粒子の真密度が1.03g/cm
3未満だと、水系環境に流出した際に水に浮くために、生分解の速度が遅延する。一方、真密度が2.00g/cm
3を超える粒子では、生分解性プラスチックの含有量が低く、プラスチック粒子の様な感触特性が得られにくい。真密度は1.10〜1.90g/cm
3の範囲が特に好ましい。
【0016】
有機無機複合粒子の真球度が0.80未満であると、肌上に塗布された際の転がり感の持続性が著しく低下する。真球度は0.90以上が特に好ましい。なお、真球度は走査型電子顕微鏡の写真から画像解析法により求められる。
【0017】
有機無機複合粒子の平均粒子径d
1が0.5μm未満であると、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性などの化粧料の感触特性が著しく低下する。一方、25μmを超えると、粒子粉体に触ったとき、ざらつきを感じるようになり、ソフト感としっとり感が低減する。また、平均粒子径は2〜10μmがより好ましい。なお、平均粒子径はレーザー回折法で求められる。
【0018】
さらに、有機無機複合粒子は水に対する接触角が90°以下であることが好ましい。水に対する接触角が90°を超える有機無機複合粒子は、水系環境に流出した際に水に浮きやすく、生分解の速度が遅延するおそれがある。なお、接触角は、構成成分である生分解性プラスチックの性質に依存する。生分解性プラスチックが疎水性の場合は、接触角が90°を超えることが多い。この場合は、有機無機複合粒子に界面活性剤等を加えることで、接触角を90°以下にできる。接触角が90°以下の親水性の有機無機複合粒子は、生分解の遅延が起きにくいだけでなく、ポリ塩化ビフェニル化合物や殺虫剤などの非水溶性の有害な化学物質を吸着しにくい。さらに、接触角は80°以下が好ましく、70°以下が特に好ましい。
【0019】
さらに、有機無機複合粒子の弾性率は2〜30GPaが好ましい。弾性率が2未満であると、パウダーファンデーション等の圧縮成型品の強度が低下するため、粒子の配合量が制限されることがある。弾性率が30GPaを超えると、応力に対する歪が生じ難く、プラスチックビーズのようなソフト感としっとり感を付与できない。なお、弾性率は3〜20GPaの範囲が特に好ましい。ここで、弾性率は微小圧縮試験法で求められる。
【0020】
有機無機複合粒子を化粧料に用いる場合、化粧料の製造工程で粒子が崩壊し、当初想定していた機能が得られないおそれがある。そのため、粒子の分散液に超音波を印加し、印加前後の平均粒子径の変化率が変わらないことが好ましい。そこで、有機無機複合粒子を蒸留水に分散させた分散液を、超音波分散機を用いて60分間分散させた。分散試験後の平均粒子径d
3と試験前の平均粒子径d
1の比(d
3/d
1)は、±0.05以内、すなわち、0.95〜1.05が好ましい。この比(d
3/d
1)が0.95未満ということは、粒子の強度が低いということであり、化粧料等の製造工程における機械的付加により、粒子が崩壊し、所望の感触改良効果が得られないおそれがある。この比が1.05より大きいということは、水中で生分解性プラスチックが膨潤することを表している。そのため、化粧料等の製造後に増粘しやすく、品質安定性を担保できない。さらに、感触特性も変化する虞がある。なお、この比(d
3/d
1)は、0.97〜1.03が特に好ましい。
【0021】
また、有機無機複合粒子として、外殻の内部に空洞が形成された中空構造の粒子を適用することができる。中空粒子は同径の中実粒子より軽いため、成分量(重量%)が同一のとき、中空粒子の粒子数は中実粒子の場合の粒子数より多い。
【0022】
なお、外殻の厚さTと有機無機複合粒子の外径ODの比(T/OD)は、0.02〜0.45の範囲が好ましい。外殻の厚さ比(T/OD)が、0.45を超えると、中空構造でない粒子と実質的に同等になってしまう。一方、外殻の厚さ比が、0.02未満であると、粒子が崩壊しやすくなる。更に、外殻の厚さ比(T/OD)は、0.04〜0.30の範囲が特に好ましい。ここで、外殻は、窒素ガスが通過する多孔性でも、窒素ガスが通過しない無孔性でも良い。
【0023】
さらに、BET法で求めた単位体積当たりの比表面積は5〜60m
2/cm
3未満が好ましい。有機無機複合粒子の比表面積が5m
2/cm
3未満であると、生分解性が劣ることがある。比表面積が60m
2/cm
3以上であると、ナノマテリアルの定義に適合してしまい、従来のプラスチックビーズと同様な用途で安心して使用できない場合がある。比表面積は10〜60m
2/cm
3未満が特に好ましい。
【0024】
以下に、本発明の有機無機複合粒子に含まれるシリカ成分と生分解プラスチックについて詳細に説明する。
【0025】
<シリカ成分>
シリカ成分を例示すると、珪酸バインダーやシリカ粒子が挙げられる。珪酸バインダーとしては、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリ(Naイオンの除去等)したものを使用できる。珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩などが挙げられる。
【0026】
ここで、シリカ粒子とはシリカを含有する無機酸化物粒子を表し、シリカだけでなく、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−セリアなどの複合酸化物が例示できる。シリカ粒子の組成の違いによって有機無機複合粒子の製造条件を変更する必要はない。化粧料に配合する場合には非晶質シリカが好適である。
【0027】
また、シリカ粒子の平均粒子径d
2は、5nm〜1μmが好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、生分解性粒子に対するバインダーとしての効果が低下する。また、水中環境でのシリカの溶解速度が低下し、その結果、良好な生分解性を損なうことがある。平均粒子径が5nm未満の場合は、粒子としての安定性が低いことから工業的な側面で好ましくない。10nm〜0.5μmの範囲が特に望ましい。
【0028】
さらに、有機無機複合粒子には、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウムの少なくとも一つを含む無機酸化物粒子が20重量%以下であれば含まれてもよい。この量であれば、有機無機複合粒子の内部に均一にこの無機酸化物粒子を含有することができる。ここで、酸化鉄として、酸化第二鉄、α−オキシ水酸化鉄、四酸化三鉄が好ましい。また、無機酸化物粒子の平均粒子径は、シリカ粒子と同レベルであることが望ましい。すなわち、5nm〜1μmの範囲が適している。
【0029】
なお、植物由来の原料から生成されたシリカ成分を用いることが持続可能社会の実現の観点で好ましい。また、欧米などの海外では環境との調和、安全性の観点から自然及びオーガニック化粧料のニーズが高まっている。ISO16128−1(Guidelines on technical definitions and criteria for natural And organic cosmetic ingredients and products Part1:Definitions for ingredients)ではその原料が定義されている。シリカ源としては珪砂が多用されている。珪砂を起源とするシリカは鉱物由来原料の分類であるが、植物由来のシリカ成分であれば自然原料として分類され自然指数を高めることができることから、当該ニーズに対応することができる。
【0030】
植物由来のシリカ成分は、イネ科植物に多く含まれており、米の籾殻やその稲穂から抽出することができる。例えば、特開平7−196312号公報に開示された焼成法や特開2002−265257号公報に開示された加圧熱水法などにより、高純度なシリカが得られることが知られている。このようにして得られた植物由来のシリカ成分を水酸化ナトリウムで溶解して珪酸ナトリウムを調製し、その後、常法に従って、シリカ粒子を調製することができる。
【0031】
<生分解性プラスチック>
生分解性プラスチックとしては、平均粒子径d
4が1nm〜1μmの生分解性プラスチック粒子が好ましい。このような微細な平均粒子径の粒子により得られる有機無機複合粒子は、良好な生分解性を発揮する。0.1〜0.5μmの範囲が特に好ましい。その他、電子顕微鏡写真で計測される太さが1〜500nm、長さが1μm以上のセルロースナノファイバーや、太さが10〜50nm、長さが100〜500nmのセルロースナノクリスタルも生分解性プラスチックとして好適である。
【0032】
特に、グルコース分子を構成単位とした結晶性セルロースが好ましい。更に、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形である結晶性セルロースが好ましい。I型の結晶形でない意図的な化学修飾を行ったセルロースは、前述のISO16128−1の定義に基づき、自然原料としての分類とはならない可能性がある。なお、セルロースの結晶形は、赤外分光法にて同定することができ、3365〜3370cm
−1に強い吸収が認められる。その他、固体13C NMR法でもケミカルシフトの違いや、X線回折法による回折角から同定することもできる。また、結晶形は、Iα、Iβの何れであっても良く、混合物であっても良い。
【0033】
生分解性プラスチックには、石油由来の物が工業的に多用されているが、生分解性があれば原料が何であるかは問わない。但し、持続可能社会の実現の観点では、生分解性プラスチックは、再生可能な有機資源であるバイオマスプラスチックであることが望ましく、化学合成で作られるポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリアスパラギン酸、微生物で作られるプルラン、ポリグルタミン酸、ポリヒドロキシアルカン酸、植物や動物由来のデンプン、セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン、ポルフィランが挙げられる。特に植物由来のセルロースが品質、価格、流通量、および安全性の観点で好適である。
【0034】
<有機無機複合粒子の製造方法>
次に、有機無機複合粒子の製造方法について説明する。はじめに、シリカ成分と生分解性プラスチックが分散された混合液を用意する。この混合液に界面活性剤と非水系溶媒を加えて、乳化液滴を形成する(乳化工程)。そして、この乳化液滴を脱水処理する(脱水工程)。得られた分散体を固液分離して有機無機複合粒子を固形物として取り出す(固液分離工程)。この固形物を乾燥して解砕する(乾燥工程)。
【0036】
<乳化工程>
シリカ成分と生分解性プラスチックが分散された混合液を用意する。シリカ成分の分散液と生分解性プラスチックの分散液とを混合して調製してもよい。この混合液の固形分濃度が、0.01〜50%の範囲になるように調整する。なお、溶媒は水が好ましい。固形分濃度が50%を超えると、通常、水分散体の粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が損なわれることがある。固形分濃度が0.01%未満では特に利点がなく、経済性が悪い。
【0037】
この混合液に非水系溶媒と界面活性剤を加える。乳化のために必要な非水系溶媒は、水と相溶しないものであればよく、一般的な炭化水素溶媒を用いることができる。また、界面活性剤は、油中水滴型の乳化液滴を形成できるものであればよいが、非水系溶媒の極性に応じて、HLB値が1〜10の範囲の界面活性剤が適している。界面活性剤のHLB値は特に1〜5の範囲が好ましい。異なるHLB値の界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
次に、この溶液を乳化装置により乳化させる。このようにして、0.5〜500μmの乳化液滴を含んだ乳化液を調製する。乳化装置は、一般的な高速せん断装置の他、より微細な乳化液滴が得られる高圧乳化装置、より均一な乳化液滴が得られる膜乳化装置、マイクロチャネル乳化装置などの従来公知の装置を目的に応じて用いることができる。
【0039】
<脱水工程>
次に、乳化工程で得られた乳化液を脱水処理する。例えば、常圧、または減圧下での加熱により、水を蒸発させる。これにより、乳化液滴が脱水されて粒子径0.5〜25μmの有機無機複合粒子を含む非水系溶媒分散体が得られる。
【0040】
具体的には、常圧下の加熱脱水法では、冷却管を備えたセパラブルフラスコを加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。また、減圧下の加熱脱水法では、ロータリーエバポレーターや、蒸発缶など用いて減圧加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。後述の固液分離工程で非水系溶媒分散体から固形物として取り出せる程度まで脱水を行うことが好ましい。脱水が不十分であると、固液分離工程で球状粒子としての形態を維持できないので注意が必要である。
【0041】
<固液分離工程>
固液分離工程では、従来公知の濾過、遠心分離などの方法で、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体から固形分を分離する。これにより、有機無機複合粒子のケーキ状物質が得られる。
【0042】
<乾燥工程>
乾燥工程では、常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質から非水系溶媒を蒸発させる。これにより、平均粒子径0.5〜25μmの有機無機複合粒子の乾燥粉体が得られる。
【0043】
なお、乳化工程と脱水工程の間に凍結工程を設けてもよい。乳化工程で得られた乳化液滴を−50〜0℃の範囲で冷却することにより、液滴中の水を凍結させた凍結乳化物が得られる。次いで、脱水工程で凍結乳化物を脱水処理する。凍結温度が−50℃〜−10℃の場合は、多孔性の有機無機複合粒子が調製できる。−10〜0℃の場合は、氷の結晶の成長に伴い、液滴中のシリカ成分と生分解性プラスチック成分が液滴の外周に排斥される。そのため、外殻の内部に空洞を有する中空構造の有機無機複合粒子が調製できる。凍結工程では、例えば、−10〜0℃の範囲の特定の温度を維持させてもよいし、この範囲内で変動させてもよい。
【0044】
さらに、固液分離工程で得られた有機無機複合粒子のケーキ状物質を洗浄して、界面活性剤を低減してもよい。本発明に係る有機無機複合粒子をファンデーション等の固形製剤に用いる場合は、特に問題はないが、乳化物等の液体製剤に配合した場合、長期安定性を阻害することがある。そのため、有機無機複合粒子に対して、界面活性剤の残留量を500ppm以下とすることが好ましい。界面活性剤を低減させるためには、有機溶媒を用いて洗浄すると良い。
【0045】
<化粧料>
以下に、有機無機複合粒子と各種の化粧料成分とを配合して得られる化粧料について具体的に説明する。
【0046】
化粧料に本発明の有機無機複合粒子を用いると、従来のシリカ粒子等の無機系単一成分からなる粒子と異なり、転がり感、転がり感の持続性、及び均一な延び広がり性だけでなく、プラスチックビーズ特有のソフト感としっとり感という、化粧料の感触改良材に求められる代表的な感触特性を得ることができる。
【0047】
化粧料成分としては、以下のものが挙げられる。オリーブ油、ナタネ油、ホホバ油、牛脂等の油脂類。カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等のロウ類。パラフィン、スクワラン、合成及び植物性スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素類。ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類。イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール類。アルキルグリセリルエーテル類、ミリスチン酸イソプロピル、パルチミン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、ラウリル酸セチル、オレイン酸デシル等のエステル類。エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール類。ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等の糖類。メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーン油、各種変性シリコーン油、環状ジメチルシリコン油等のシリコーン油。シリコーン系等の有機化合物にて架橋させたシリコーンゲル。ノニオン系、カチオン系、アニオン系、または両性の界面活性剤。パーフルオロポリエーテル等のフッ素油。アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、アルブミン、プルラン、カルボキシビニルポリマー、セルロース及びその誘導体、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の高分子。パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系、サリチル酸系、安息香酸エステル系、ウロカニン酸系、ベンゾフェノン系をはじめとした紫外線防御剤。各種粒子径、粒子径分布および形状を有する酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、マイカ、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、硫酸バリウム、パール光沢を有する雲母チタン、およびそれらの複合物。酢酸ブチル、アセトン、トルエン等の溶剤。動植物抽出物、アミノ酸及びペプチド類、ビタミン類、殺菌・防腐剤、酸化防止剤、変性又は未変性の粘土鉱物、各種有機顔染料、水、香料。ここで、前述の酸化チタンや酸化亜鉛等の無機化合物では、その表面に予めシリコーン処理、フッ素処理、金属石鹸処理などを施してもよい。
【0048】
また、ポリアクリル酸メチル、ナイロン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタンなどの樹脂粒子を含んでいてもよい。
【0049】
さらに、美白効果を有する有効成分として、アルブチン、コウジ酸、ビタミンC、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、ジ−パルチミン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド、その他のアスコルビン酸誘導体、プラセンタエキス、イオウ、油溶性甘草エキス、クワエキス等の植物抽出液、リノール酸、リノレイン酸、乳酸、トラネキサム酸などを含ませてもよい。
【0050】
また、肌荒れ改善効果を有する有効成分として、ビタミンC、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、カフェー誘導体、リグナン、サポニン、レチノイン酸及びレチノイン酸構造類縁体、N−アセチルグルコサミン、α−ヒドロキシ酸等の抗老化効果を有する有効成分、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類、混合異性化糖、トレハロース、プルラン等の糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン・キトサン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の生体高分子類、アミノ酸、ベタイン、セラミド、スフィンゴ脂質、コレステロール及びその誘導体、ε−アミノ化プロン酸、グリチルリチン酸、各種ビタミン類などを含ませてもよい。
【0051】
さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Eleventh Edition2006)等に収載されている化粧料成分を使用することができる。
【0052】
このような化粧料は、従来公知の一般的な方法で製造することができる。化粧料は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ジェル状、ムース状、液状などの各種形態で使用される。具体的には以下の製品が挙げられる。石鹸、クレンジングフォーム、メーク落とし用クリーム等の洗浄用化粧料。保湿・肌荒れ防止、アクネ、角質ケア、マッサージ、しわ・たるみ対応、くすみ・くま対応、紫外線ケア、美白、抗酸化ケア用等のスキンケア化粧料。パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、ムースファンデーション、プレスドパウダー、化粧下地等のベースメークアップ化粧料。アイシャドウ、アイブロー、アイライナー、マスカラ、口紅等のポイントメークアップ化粧料。育毛用、フケ防止、かゆみ防止、洗浄用、コンディショニング・整髪用、パーマネント・ウエーブ用、ヘアカラー・ヘアブリーチ用等のヘアケア化粧料。洗浄用、日焼け防止、手荒れ防止、スリミング用、血行改善用、かゆみ抑制、体臭防止、制汗、体毛ケア、リペラント用、ボディパウダー等のボディーケア化粧料。香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、シャワーコロン等、練香水、ボディーロ−ション、バスオイル等のフレグランス化粧料。歯磨き、マウスウォッシュ等のオーラルケア製品。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0054】
[実施例1]
市販のシリカゾル(日揮触媒化成社製:SS−300、平均粒子径300nm、シリカ濃度20質量%)50gをロータリーエバポレーターで濃縮し、シリカ濃度40質量%のシリカゾル25gとする。このシリカゾルに、陽イオン樹脂(三菱化成社製、SK−1B)を一気に加えてpHを2.5とした後、陽イオン交換樹脂を分離する。これにより、脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)がなされ、シリカ粒子濃度39.3質量%のスラリーaが得られる。スラリーaに、I型セルロース粒子(旭化成社製セオラス(登録商標)RC−N30)10gと純水30gを均一に分散した高分子分散液を添加し、スラリーbを調製する。
【0055】
得られたスラリーbを、ヘプタン(関東化学社製)1300gと界面活性剤AO−10V(花王社製)9.75gを混合した溶液中に加え、乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して10000rpmにて10分間乳化を行う。得られた乳化液を60℃で16時間加熱して、乳化液滴から脱水したのち、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過する。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄して界面活性剤を除去し、ケーキ状物質を得る。このケーキ状物質を、120℃で12時間乾燥する。この乾燥粉体をジューサーミキサー(日立製作所社製)で10秒間粉砕し、250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、有機無機複合粒子の粉体を得た。有機無機複合粒子の調製条件を実施例ごとに表1に示す。また、有機無機複合粒子の粉体の物性を以下の方法で測定した。その結果を表2に示す。
【0056】
(1)各粒子の平均粒子径(d
1、d
2、d
4)
レーザー回折法を用いて、有機無機複合粒子、シリカ粒子、生分解性プラスチック粒子の粒度分布を測定し、この粒度分布からメジアン径を求め、平均粒子径とした。このようにして、有機無機複合粒子の平均粒子径d
1、シリカ粒子の平均粒子径d
2および生分解性プラスチック粒子の平均粒子径d
4を求めた。レーザー回折法による粒度分布の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2(株式会社堀場製作所製)を用いた。但し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等に代表される繊維状生分解性プラスチック粒子の平均粒子径d
4については、その粒子の比表面積と比重から、以下の式を用いて等価球換算の平均粒子径を算出した。
【0057】
「平均粒子径」=6000÷(「真密度」×「比表面積」)
【0058】
(2)平均粒子径比(d
3/d
1)
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2にて有機無機複合粒子の平均粒子径を測定する際、該装置の分散条件を「超音波60分間」に設定し分散した後、粒度分布を測定する。分散後の粒度分布からメジアン径で表わされる平均粒子径d
3を求める。これから超音波分散前後の平均粒子径比(d
3/d
1)を求める。
【0059】
(3)有機無機複合粒子の真密度の測定方法
有機無機複合粒子を磁性ルツボ(B−2型)に約30mL採取し、105℃で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを15mL採取し、全自動ピクノメーター(QUANTACHROME社製:Ultrapyc1200e)を用いて真密度を測定した。
【0060】
(4)シリカ粒子の変動係数
走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM−7600F)により、倍率2万倍から25万倍で写真(SEM写真)を撮影する。この画像の250個の粒子について、画像解析装置(旭化成社製、IP−1000)を用いて、平均粒子径を測定し、粒子径分布に関する変動係数(CV値)を算出した。
【0061】
(5)シリカ粒子、有機無機複合粒子の真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−8000)により、倍率2000倍から25万倍の倍率で写真撮影して得られる写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれその最大径DLと、これに直交する短径DSとの比(DS/DL)を測定し、それらの平均値を真球度とした。
【0062】
(6)有機無機複合粒子の比表面積
有機無機複合粒子の粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30mL採取し、105℃の温度で2時間乾燥した後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、この試料を1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m
2/g)をBET法にて測定した。有機無機複合粒子に配合したシリカと生分解性プラスチックの組成比(配合重量比)から求められる比重(例えば、シリカが100%であれば2.2g/cm
3、セルロースが100%であれば1.5g/cm
3)でこれを換算し、単位体積当たりの比表面積を求めた。
【0063】
(7)有機無機複合粒子の細孔容積、細孔径
有機無機複合粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥した後、デシケーター中で室温まで冷却し、自動ポロシメーター(カウンタークローム・インスツルメンツ社製PoreMasterPM33GT)を使用して水銀圧入法により細孔径分布を測定した。詳しくは、水銀を1.5kPa〜231MPaで圧入し、圧力と細孔径の関係から細孔径分布が求められる。この方法によれば、約7nmから約1000μmの細孔に水銀が圧入されるため、有機無機複合粒子の内部に存在する小径の細孔と、有機無機複合粒子の粒子同士の間隙の両方が細孔径分布に表れる。粒子同士の間隙は、概ね粒子の平均粒子径に対して1/5〜1/2の大きさになる。粒子同士の間隙に依存する部分を除いて、細孔に依存する細孔径分布に基づき、細孔容積、平均細孔径を算出した。このとき、必要に応じてピーク分離ソフト(自動ポロシメーターに付属)が用いられる。
【0064】
(8)有機無機複合粒子の組成分析
有機無機複合粒子の粉体0.2gを白金皿で精秤し、硫酸10mLと弗化水素酸10mLを加えて、砂浴上で硫酸の白煙が出るまで加熱する。冷却後、水約50mLを加えて加温溶解する。冷却後、水200mLに希釈しこれを試験溶液とする。この試験溶液について誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を使用し、有機無機複合粒子の組成を求める。
【0065】
(9)接触角
有機無機複合粒子1gを105℃で乾燥させた後、直径1cm、高さ5cmのセルに入れ、50kgfの荷重でプレスして成型物を得る。得られた成型物の表面に水を一滴たらして水に対する接触角を測定した。
【0066】
(10)弾性率
有機無機複合粒子の粉体から、平均粒子径±0.5μmの範囲にある粒子1個を選び、試料とした。微小圧縮試験機(島津製作所製、MCTM−200)を用いて、この試料に一定の負荷速度で荷重を負荷し、圧縮弾性率を測定した。
【0067】
[実施例2]
実施例1で用いた高分子分散液内のI型セルロース粒子の代わりに、スギノマシン社製BiNFi−s WMa―10002を用いた。これ以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0068】
[実施例3]
実施例1で用いた高分子分散液内のI型セルロース粒子の代わりに、第一工業製薬社製レオクリスタC−2SPを用いた。これ以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0069】
[実施例4]
高分子分散液内のI型セルロース粒子(旭化成社製セオラス(登録商標)RC−N30)の混合量を、4.3gに変更した。これ以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0070】
[実施例5]
高分子分散液内のI型セルロース粒子(旭化成社製セオラス(登録商標)RC−N30)の混合量を、23.3gに変更した。これ以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0071】
[実施例6]
乳化液を−5℃の恒温槽中に16時間静置して乳化液滴を凍結させ、さらにその乳化液を常温で放置したのち、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。これ以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0072】
[実施例7]
乳化液を−25℃の恒温槽中に16時間静置して乳化液滴を凍結させた。これ以外は実施例6と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0073】
[実施例8]
シリカゾルとして市販品(日揮触媒化成社製 SS−160、平均粒子径160nm、固形分濃度16質量%)62.5gを使用し、エバポレーターで濃縮してシリカ濃度40重量%のシリカゾルとした以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0074】
[実施例9]
シリカゾルとして市販品(日揮触媒化成社製 SI−550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%)50gを使用し、エバポレーターによる濃縮を行わなかった以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0075】
[実施例10]
スラリーaとして珪酸液(固形分濃度5%)200gを使用し、これに、I型セルロース粒子(旭化成社製セオラス(登録商標)RC−N30)10gと純水30gを混合した高分子分散液を添加し、スラリーbを調製した。以降は実施例6と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0076】
[実施例11]
乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して5000rpmにて10分間乳化を行った以外は、実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0077】
[比較例1]
高分子分散液内のセルロース粒子(旭化成社製セオラス(登録商標)RC−N30)の混合量を、1.1gに変更した以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0078】
[比較例2]
乳化液を95℃で4時間加熱した以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。高温で急激に加熱することにより、脱水より先に乳化液滴が崩壊したため、真球度の高い粒子が得られなかった。
【0079】
[比較例3]
乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して500rpmにて10分間乳化を行った以外は、実施例1と同様に有機無機複合粒子を調製し、実施例1と同様に物性を測定した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
[有機無機複合粒子の粉体の感触特性]
次に、各実施例と比較例で得られた粉体を用いて、感触特性を評価した。各粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。さらさら感、しっとり感、転がり感、均一な延び広がり性、肌への付着性、転がり感の持続性、およびソフト感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行い、以下の評価点基準(a)に基づき評価する。各人の評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づき有機無機複合粒子の感触に関する評価を行った。結果を表3に示す。その結果、各実施例の粉体は、化粧料の感触改良材として極めて優れているが、比較例の粉体は、感触改良材として適していないことが分かった。
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
【0083】
【表3】
【0084】
[パウダーファンデーションの使用感]
次に、有機無機複合粒子の粉体を用いて表4に示す配合比率(重量%)となるようにパウダーファンデーションを作製した。すなわち、実施例1の粉体(成分(1))と成分(2)〜(9)をミキサーに入れて撹拌し、均一に混合した。次に、化粧料成分(10)〜(12)をこのミキサーに入れて撹拌し、さらに均一に混合した。次いで、得られたケーキ状物質を解砕処理した後、その中から約12gを取り出し、46mm×54mm×4mmの角金皿に入れてプレス成型した。この様にして得られたパウダーファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。肌への塗布中の均一な延び、しっとり感、滑らかさ、および、肌に塗布後の化粧膜の均一性、しっとり感、やわらかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行い、評価点基準(a)に基づき評価した。また、各人の評価点を合計し、評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感を評価した。結果を表5に示す。ここでは、実施例1〜3による化粧料A〜Cを代表例として取り上げて評価した。実施例に基づく化粧料A〜Cは、その使用感が、塗布中でも塗布後でも、非常に優れていることが分かった。しかし、比較例1〜3の化粧料a〜cは、その使用感がよくないことが分かった。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】