(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感光性樹脂からなり、回転する塗布ロールの周面に塗布されたインクを、前記塗布ロールの周面に押し付けられたドクターバーによって掻き取ることで、前記インクを所定の厚みで前記塗布ロールの周面に塗布し、回転する前記塗布ロールを基板の塗布面に押し込むことで、前記インクを前記塗布面に塗布するインクの塗布方法であって、
前記塗布ロールは、弾性変形可能な弾性体であり、
前記塗布ロールの周面に対する前記ドクターバーの押し込み量、前記塗布ロールの回転速度、前記塗布面に対する前記塗布ロールの押し込み量のうち少なくとも前記塗布ロールの押し込み量を変化させることで、前記塗布面における前記インクの膜厚を変えるインクの塗布方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細について実施形態に基づいて説明する。
図1〜3に示すように、本実施形態に係る塗布装置1は、基板2の塗布面3に感光性樹脂からなるインク4を塗布する装置である。
対象の基板2は、少なくとも塗布面3に導体回路が形成されているものであれば、任意に構成されてよい。本実施形態の基板2は、その両面(両方の塗布面3,3)に導体回路が形成され、両方の塗布面3,3にソルダーレジストを形成することで、FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)基板等のように両面にバンプが現れる両面印刷回路基板を構成するものである。
塗布装置1は、塗布ロール11と、ドクターバー12と、ロール回転駆動部13と、ドクターバー駆動部14と、ロール押込み駆動部15と、移送部16と、制御部17と、を備える。
【0014】
塗布ロール11は、円柱状に形成され、基板2の塗布面3に対向する周面111を有する。塗布ロール11の周面111には、インク4が塗布される。塗布ロール11は、その軸線L1を中心に回転できるように、また、塗布ロール11の周面111を基板2の塗布面3に押し付けることができるように、塗布装置1のベース(不図示)に設けられている。塗布ロール11は
、ウレタンゴム等のように弾性変形可能な弾性体である。
本実施形態において、塗布ロール11は、基板2の両方の塗布面3,3に対向し、基板2をその厚さ方向から挟み込むことができるように、基板2の厚さ方向に間隔をあけて一対配列されている。
【0015】
一対の塗布ロール11,11は、相対的に近づいたり離れたりする方向に移動するように、塗布装置1のベースに設けられている。これにより、各塗布ロール11の周面111を基板2の各塗布面3に押し付けることができる。一対の塗布ロール11,11は、例えば、基板2の各塗布面3に対して近づいたり離れたりする方向に各々移動可能となるように、塗布装置1のベースに設けられてもよい。本実施形態では、一対の塗布ロール11,11のうち一方(
図2において右側の塗布ロール11)が、基板2の塗布面3に対して近づいたり離れたりするように、塗布装置1のベースに対して移動可能に設けられている。他方の塗布ロール11は、塗布装置1のベースに対して移動しないように設けられている。
【0016】
ドクターバー12は、概ね平板状に形成され、各塗布ロール11の周面111に押し付けられる。より具体的に、ドクターバー12は、基板2との間に塗布ロール11が位置するように配されている。
図2のように塗布ロール11の軸線L1方向から見て、鉛直方向(
図1,2において上下方向)におけるドクターバー12の下端部は、塗布ロール11の周面111に対して最も近くに位置する。ドクターバー12の下端部は塗布ロール11の周面111に押し付けられる。ドクターバー12は、その下端部から上端部に向かうにしたがって塗布ロール11の周面111から離れるように延びている。ドクターバー12は、塗布ロール11に対する押し付け圧力が変化するように、塗布ロール11に対して移動可能とされている。
インク4を塗布ロール11の周面111に供給するためにインク4を貯留する貯留空間V1は、例えば別途設けられてもよいが、本実施形態では、塗布ロール11とドクターバー12との隙間によって形成されている。
【0017】
本実施形態において、各塗布ロール11及び各塗布ロール11に対応するドクターバー12は、同一の支持体18によって支持されている。支持体18は、塗布ロール11の軸線L1方向における塗布ロール11及びドクターバー12の両端部を支持する。
本実施形態では、一方の塗布ロール11が基板2の塗布面3に対して近づいたり離れたりするように、一方の塗布ロール11及びドクターバー12を支持する一方の支持体18(
図2において右側の支持体18)が、塗布装置1のベースに対して移動可能とされている。他方の塗布ロール11及びドクターバー12を支持する他方の支持体18は、塗布装置1のベースに固定されている。
【0018】
ロール回転駆動部13は、各塗布ロール11を回転駆動する。ロール回転駆動部13には、任意のモータが採用されてよいが、本実施形態では塗布ロール11の回転角度や回転速度を把握できるように、入力されたパルス信号によって動作するパルスモータが採用されている。
【0019】
ドクターバー駆動部14は、ドクターバー12を駆動してドクターバー12を塗布ロール11の周面111に対して押し当てたり、離脱させたりする。また、ドクターバー駆動部14は、ドクターバー12を駆動して各塗布ロール11に対するドクターバー12(特にドクターバー12の下端部)の押し込み量を変化させる。
ここで、ドクターバー12の押し込み量は、塗布ロール11に対する押し付け圧力が変化するようにドクターバー12が塗布ロール11に対して移動する移動長さである。ドクターバー12の押し込み量は、塗布ロール11の周面111に塗布されたインク4がドクターバー12によって掻き取られた後に塗布ロール11の周面111に残るインク4の膜厚に関係する。例えばドクターバー12の押し込み量が増加した場合、塗布ロール11の周面111におけるインク4の膜厚は減少する。
ドクターバー駆動部14には、任意のモータが採用されてよいが、本実施形態ではドクターバー12の押し込み量を把握できるように、入力されたパルス信号によって動作するパルスモータが採用されている。
【0020】
ロール押込み駆動部15は、塗布ロール11を駆動して塗布面3に対する塗布ロール11の押し込み量を変化させる。より具体的に、ロール押込み駆動部15は、塗布ロール11を基板2の塗布面3に対して近づいたり離れたりする方向に移動させる。ロール押込み駆動部15は、例えば一対の塗布ロール11,11をそれぞれ駆動してもよいが、本実施形態では一方の塗布ロール11のみを駆動する。また、本実施形態のロール押込み駆動部15は、支持体18並びに支持体18に支持された塗布ロール11及びドクターバー12からなる塗布ユニット10を、塗布ロール11が塗布面3に対して近づいたり離れたりする方向に移動させるユニット駆動部19として構成されている。
ユニット駆動部19(ロール押込み駆動部15)には、任意のモータが採用されてよいが、本実施形態では塗布ロール11の押し込み量を把握できるように、入力されたパルス信号によって動作するパルスモータが採用されている。
【0021】
移送部16は、基板2の塗布面3に沿って塗布ロール11及び基板2を相対的に移動させる。移送部16による塗布ロール11と基板2との相対的な移動速度は、少なくとも塗布面3にインク4を塗布する際に、塗布ロール11が基板2の塗布面3上を転がるように、後述する制御部17によって塗布ロール11の回転速度に対応するように制御される。
移送部16は、例えば塗布ロール11を移送するロール移送部であってもよいが、本実施形態では基板2を移送する基板移送部20である。
【0022】
本実施形態において、基板移送部20は、一対の塗布ロール11,11の間に基板2を送り込んだり、一対の塗布ロール11,11の間から基板2を引き抜いたりするように、基板2を移送する。
より具体的に説明すれば、基板移送部20は、基板2を保持する保持部21と、保持部21を移動させる移送駆動部22と、を備える。
保持部21は、基板2を吊下げるように基板2の端部を保持し、塗布装置1のベースに対して上下(鉛直方向)に移動可能とされている。
移送駆動部22は、保持部21に保持された基板2が一対の塗布ロール11,11の間を通過するように、保持部21を上下に移動させる。移送駆動部22の駆動系には、パルスモータを使用し、後述する制御部17がモータに指示したパルス量を累積集計することで基板2の位置を把握する。本実施形態ではパルスモータを採用したが、少なくともデジタル量で動作指示が可能な駆動装置であればよく、例えばリニアスライダ等を用いることも可能である。
【0023】
制御部17は、ロール回転駆動部13、ドクターバー駆動部14、ロール押込み駆動部15のうち少なくとも一つの動作を制御し、塗布ロール11の周面111に対するドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを変化させる。
【0024】
本実施形態の塗布装置1は、制御部17が実行する各種処理に用いる各種情報や、制御部17が実行した各種処理によって得られた各種情報を記憶する記憶部23を備える。制御部17は、記憶部23に記憶された各種情報に基づいて、ロール回転駆動部13、ドクターバー駆動部14、ロール押込み駆動部15のうち少なくとも一つの動作を制御する。以下、この点について具体的に説明する。
【0025】
本実施形態の記憶部23には、
図4〜6のグラフのように、基板2の塗布面3におけるインク4の膜厚と、ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つと、を対応付けた制御用情報が記憶されている。制御用情報におけるインク4の膜厚は、インク4が基板2の塗布面3に塗布された後に、UVキュア及びポストベーク処理を実施して塗布面3上のインク4をソルダーレジストとした後の膜厚である。また、制御用情報におけるインク4の膜厚は、例えば露光処理、現像処理を実施した後の膜厚としてもよい。
【0026】
図4のグラフは、塗布ロール11に対するドクターバー12の押し込み量と、基板2の塗布面3におけるインク4(ソルダーレジスト)の膜厚とを対応付けた制御用情報であり、ドクターバー12の押し込み量を制御するために用いる。
図4の制御用情報では、塗布ロール11の回転速度及び塗布ロール11の押し込み量を一定としている。
図4のグラフでは、塗布ロール11に対するドクターバー12の押し込み量が増加するにしたがって、基板2の塗布面3におけるインク4の膜厚が減少している。これは、ドクターバー12の押し込み量が大きいほど、ドクターバー12によって掻き取られた後に塗布ロール11の周面111に残るインク4の膜厚が小さくなることに起因する。
【0027】
図5のグラフは、塗布ロール11の回転速度と、基板2の塗布面3におけるインク4(ソルダーレジスト)の膜厚とを対応付けた制御用情報であり、塗布ロール11の回転速度を制御するために用いる。
図5の制御用情報では、ドクターバー12の押込み量及び塗布ロール11の押し込み量を一定としている。
図5のグラフでは、塗布ロール11の回転速度が増加するにしたがって、基板2の塗布面3におけるインク4の膜厚が増加している。これは、塗布ロール11の回転速度が大きいほど、塗布ロール11が単位時間あたりにドクターバー12から受ける圧力(線厚)が小さくなることで、ドクターバー12によって掻き取られた後に塗布ロール11の周面111に残るインク4の膜厚が大きくなることに起因する。
【0028】
図6のグラフは、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し込み量と、基板2の塗布面3におけるインク4(ソルダーレジスト)の膜厚とを対応付けた制御用情報であり、塗布ロール11の回転速度を制御するために用いる。
図6の制御用情報では、ドクターバー12の押込み量及び塗布ロール11の回転速度を一定としている。
図6のグラフでは、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し込み量が増加するにしたがって、基板2の塗布面3におけるインク4の膜厚が減少している。これは、塗布ロール11の押し込み量が大きいほど、塗布ロール11上のインク4が通り得る基板2の塗布面3と塗布ロール11の周面111との隙間が小さくなることに起因する。
【0029】
記憶部23には、上記した
図4〜6の三つの制御用情報が個別に記憶されてもよいが、例えば、
図4〜6の三つのうち二つ選択して組み合わせた制御用情報が記憶されてもよいし、
図4〜6の三つ全てを組み合わせた制御用情報が記憶されてもよい。
【0030】
制御部17は、上記した制御用情報に基づいて、ロール回転駆動部13、ドクターバー駆動部14、ロール押込み駆動部15のうち少なくとも一つの動作を制御する。これにより、インク4を所望の膜厚で塗布面3に塗布することが可能となる。例えば、塗布装置1を扱う作業者がインク4の膜厚の目標値(目標膜厚)をキーボード等の入力部(不図示)に入力し、制御部17が、制御用情報に基づいて目標膜厚に対応するドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを設定することで、目標膜厚に対応する膜厚でインク4を基板2の塗布面3に塗布できる。
【0031】
また、本実施形態の記憶部23には、移送部16によって塗布ロール11と基板2とが相対的に移送される方向(移送方向)における基板2の位置と、基板2の塗布面3におけるインク4の複数の目標膜厚と、を対応付けた目標情報が記憶されている。
目標情報は、例えば
図8に示すように、基板2の塗布面3において基板2の移送方向に並ぶ複数の領域R1〜R7(
図7参照)と、各領域R1〜R7におけるインク4の目標膜厚とを対応付けたデータテーブルである。
図7において、基板2の移送方向は左方向であり、基板2の塗布面3には、基板2の左端から右方向に向けてインク4が順次塗布される。
【0032】
さらに、本実施形態の塗布装置1は、
図3に示すように、移送方向における基板2の位置を検出する基板位置検出部30を備える。
制御部17は、記憶部23に記憶された目標情報(
図8参照)を参照して基板位置検出部30から出力された基板2の位置に対応するインク4の目標膜厚と、前述した制御用情報(
図4〜6参照)に基づいて、ロール回転駆動部13、ドクターバー駆動部14、ロール押込み駆動部15のうち少なくとも一つの動作を制御する。これにより、移送方向における基板2の位置に応じて、塗布面3におけるインク4の膜厚を適宜変化させることができる。
【0033】
上記した基板位置検出部30は、例えば、押付検知センサ31と、速度検出センサ32と、位置算出部34と、を備えてよい。
押付検知センサ31は、基板2に対する塗布ロール11の押し付けを検知する。押付検知センサ31は、例えば塗布ロールに設けられる圧力センサによって構成されてもよいが、例えばパルスモータからなるユニット駆動部19(ロール押込み駆動部15)によって構成されてもよい。
速度検出センサ32は、基板2の塗布面3上で転がる塗布ロール11の回転速度を検出する。速度検出センサ32は、例えば塗布ロール11の回転速度を直接検出するセンサによって構成されてもよいが、例えばパルスモータからなるロール回転駆動部13によって構成されてもよい。
【0034】
位置算出部34は、押付検知センサ31において検知された検知情報に基づいて、基板2の塗布面3に対してインク4の塗布が開始された塗布開始位置を設定する。さらに、位置算出部34は、塗布開始位置を基準として、速度検出センサ32において検出された塗布ロール11の回転速度に基づいて、移送方向における基板2の位置を継続的に算出する。位置算出部34は、例えば制御部17に含まれてもよい。
【0035】
また、上記した基板位置検出部30は、例えば、移送部16による塗布ロール11と基板2との相対的な移送距離を検出する距離検出センサ33を備えてもよい。
この場合、位置算出部34は、前述と同様に、基板2の塗布面3に対してインク4の塗布が開始された塗布開始位置を設定した上で、塗布開始位置を基準として、距離検出センサ33において検出された移送距離に基づいて、移送方向における基板2の位置を継続的に算出する。
基板位置検出部30は、上記した速度検出センサ32及び距離検出センサ33の両方を備えてもよいが、例えば一方のみ備えてもよい。
【0036】
位置算出部34において設定される塗布開始位置は、例えば、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し付け開始時において、塗布面3におけるインク4の膜厚の変動の大きさが許容範囲内となる位置に設定されるとよい。
位置算出部34において設定される塗布開始位置は、例えば
図7,9に示すように、基板2の移送方向において塗布ロール11が押し付けられる基板2の位置XPとしてもよい。例えば、塗布ロール11を基板2に押し付けた直後における塗布膜厚(塗布面3におけるインク4の膜厚)が安定している場合、また、ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを制御することで、塗布ロール11を基板2に押し付けた直後における塗布膜厚を安定させる場合には、塗布開始位置を基板2の位置XPとしてもよい。
【0037】
また、例えば、塗布ロール11が基板2に押し付けられた基板2の位置XPから基板2の移送方向に所定距離D2だけ進むまで塗布膜厚が安定しない場合、位置算出部34において設定される塗布開始位置は、例えば、基板2の位置XPから所定距離D2だけ進んだ基板2の位置X0としてもよい。
所定距離D2は、例えば塗布装置1で試験を実施し、塗布ロール11を押し付けた位置XPから塗布膜厚が安定するまでの距離を測定することで得てもよい。また、所定距離D2は、例えば
図9に示すように、塗布ロール11の回転方向において、ドクターバー12が押し付けられる塗布ロール11の周面111の第一位置P1から、基板2の塗布面3に押し付けられる塗布ロール11の周面111の第二位置P2に至る周面111上の距離D1(=2πr×θ/360°)以上としてもよい。
また、所定距離D2は、例えば、塗布ロール11を基板2に押し付ける際にドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを制御して塗布膜厚を安定させる等することで、距離D1よりも短く設定されてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係るインク4の塗布方法について説明する。
【0039】
本実施形態のインク4の塗布方法では、回転する塗布ロール11の周面111に塗布されたインク4を、塗布ロール11の周面111に押し付けられたドクターバー12によって掻き取ることで、インク4を所定の厚みで塗布ロール11の周面111に塗布させる。また、回転する塗布ロール11を基板2の塗布面3に押し込むことで、インク4を基板2の塗布面3に塗布する。
そして、本実施形態のインク4の塗布方法では、塗布ロール11の周面111に対するドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを変化させる。
以下、本実施形態の塗布装置1を用いたインク4の塗布方法について、より具体的に説明する。
【0040】
まず、基板2の塗布面3にインク4を塗布する手順を説明する。
基板2の塗布面3にインク4を塗布する際には、はじめに、
図11に示すように、移送方向における基板2の第一端部を一対の塗布ロール11,11の間に位置させる準備工程を実施する。準備工程では、
図10に示すように、基板2を基板移送部20の保持部21に保持させた状態で、基板移送部20によって基板2を下降させて
図11に示す位置まで移動させればよい。準備工程においては、例えば、保持部21が一対の塗布ロール11,11よりも下側で基板2を保持した後、基板2が一対の塗布ロール11,11の間を通過するように基板2を上昇させて
図11に示す位置まで移動してもよい。さらに、塗布ロール11は、準備工程において塗工準備が完了した段階で回転してもよいが、後述する押付工程を実施するまで停止していてもよい。
【0041】
上記した準備工程を完了した後には、
図11に示すように、一対の塗布ロール11,11によって一対の基板2をその厚さ方向から挟み込み、各塗布ロール11を回転させながら各塗布面3に押し付ける押付工程を実施し、塗布動作を開始する。
押付工程では、一方の塗布ロール11(
図11において右側の塗布ロール11)が他方の塗布ロール11に近づくように、ロール押込み駆動部15(ユニット駆動部19)によって一方の塗布ロール11を移動させればよい。押付工程を実施することで、一対の塗布ロール11,11が基板2の各塗布面3に押し込まれる。
前述した準備工程において塗布ロール11の回転が停止している場合、押付工程では、各塗布ロール11を周面111上の距離D1に対応する角度θ(
図9参照)以上に回転(空転)させた上で、各塗布ロール11を基板2の各塗布面3に押し付けるとよい。これにより、塗布ロール11を基板2の塗布面3に押し付けた時点から塗布面3に対するインク4の塗布を開始できる。
【0042】
その後、
図12に示すように、基板移送部20によって基板2を移送方向に移送する移送工程を実施する。移送工程では、各塗布ロール11が基板2の各塗布面3上を転がるように、基板移送部20による基板2の移送速度を、塗布ロール11の回転速度に対応させる。移送工程を実施することで、移送方向における基板2の第一端部から第二端部に向けて基板2の各塗布面3にインク4が塗布される。
そして、
図13に示すように、基板2の第二端部が一対の塗布ロール11,11の間に到達することで、基板2の塗布面3に対するインク4の塗布が完了する。
上記したインク4の塗布において、塗布ロール11の回転、保持部21の移動等は、制御部17がロール回転駆動部13や移送駆動部22等の動作を制御することで行われる。
【0043】
そして、本実施形態のインク4の塗布方法では、前述の移送工程において、制御部17が、ドクターバー駆動部14、ロール回転駆動部13、ロール押込み駆動部15のうち少なくとも一つの動作を制御して、ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを変化させる。より具体的に、本実施形態のインク4の塗布方法では、移送方向における基板2の塗布面3の途中の位置(所定位置)で、ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを変化させる。
ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量の少なくとも一つを変化させることで、
図4〜6に示したように、基板2の塗布面3に塗布されるインク4の膜厚を変えることができる。
【0044】
上記したインク4の塗布方法では、例えば基板2の塗布面3にインク4を塗布する工程(特に押付工程及び移送工程)が1回のみ実施されてもよいが、例えば複数回繰り返して実施されてもよい。
この場合、基板2の塗布面3上にインク4を塗布した後、UVキュア及びポストベーク処理を実施した後に、再度、基板2の塗布面3上にインク4を塗布すればよい。また、基板2の塗布面3に所定の開口パターンを有するソルダーレジストを形成する場合には、UVキュア及びポストベーク処理を実施する前に、露光処理、現像処理を実施してもよい。
【0045】
本実施形態の塗布装置1及びインク4の塗布方法によれば、インク4を基板2の塗布面3に塗布している間に、基板2の塗布面3に塗布されるインク4の膜厚を変えることができる。したがって、同一の基板2上でソルダーレジストの膜厚が異なる複数種類の回路基板の製造が可能となる。することができる。その結果として、複数種類の回路基板の製造に要する作業時間を短縮できると共に、基板、ソルダーレジストの材料の使用量を低減できるという効果が得られる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
[基板]
本実施例では、基板2として、ガラスエポキシの板材(ガラスエポキシ板)の両面に銅材からなる導体回路を形成した両面基板を用意した。ガラスエポキシ板の各寸法は、縦612mm、横512mm、厚さ0.8mmとした。ガラスエポキシ板の縦寸法は、基板2の移送方向に対応する寸法とした。ガラスエポキシ板の横寸法は、基板2の移送方向及び厚さ方向に直交する方向の寸法とした。導体回路は、ガラスエポキシ板の両面に公知の方法で形成した。
【0048】
[インクの塗布方法(ソルダーレジストの形成方法)]
本実施例では、はじめに、基板2に酸洗浄処理及び表面粗化処理を施した。次いで、本実施形態の塗布装置1を用い、基板2の両面(両方の塗布面3,3)にインク4を塗布した。その後、塗布されたインク4に、露光処理及び現像処理を施して所定の開口パターンを形成した。そして、UVキュア及びポストベーク処理を施して、基板2の両面のインク4をソルダーレジストとした。
【0049】
本実施例では、
図14〜20の各グラフに示すように、7種類のインク4の塗布方法(実施例1〜7)を実施した。
第一の塗布方法(実施例1)では、
図14に示すように、ドクターバー12の押し込み量、塗布ロール11の回転速度及び塗布ロール11の押し込み量を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。
第二の塗布方法(実施例2)では、
図15に示すように、ドクターバー12の押し込み量及び塗布ロール11の回転速度を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例2では、塗布ロール11の押し込み量を一定とした。
第三の塗布方法(実施例3)では、
図16に示すように、ドクターバー12の押し込み量及び塗布ロール11の押し込み量を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例3では、塗布ロール11の回転速度を一定とした。
第四の塗布方法(実施例4)では、
図17に示すように、塗布ロール11の回転速度及び塗布ロール11の押し込み量を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例4では、ドクターバー12の押し込み量を一定とした。
【0050】
第五の塗布方法(実施例5)では、
図18に示すように、ドクターバー12の押し込み量を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例5では、塗布ロール11の回転速度及び塗布ロール11の押し込み量を一定とした。
第六の塗布方法(実施例6)では、
図19に示すように、塗布ロール11の回転速度を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例6では、ドクターバー12の押し込み量及び塗布ロール11の押し込み量を一定とした。
第七の塗布方法(実施例7)では、
図20に示すように、塗布ロール11の押し込み量を変化させることで、インク4の膜厚を変えた。実施例7では、ドクターバー12の押し込み量及び塗布ロール11の回転速度を一定とした。
【0051】
実施例1〜7の塗布方法では、いずれも基板2の塗布面3のうち塗布ロール11が押し付けられた基板2の位置XPから基板2の移送方向に所定距離D2だけ進んだ位置X0を、基板2におけるインク4の塗布開始位置(塗布開始位置X0)とした(
図9参照)。
図14〜20に示す各グラフの横軸は、塗布開始位置X0からの塗布距離を示しており、
図7に例示した基板2のX軸方向に対応する。
【0052】
図14〜16,18の各グラフにおいて、ドクターバー12の押し込み量の基準(ゼロ点)は、例えば、塗布ロール11に対するドクターバー12の押し付け圧力がゼロとなるドクターバー12の位置(例えばドクターバー12が塗布ロール11に接触のみしている位置)である。
図14〜16,18の各グラフにおける押し込み量の正方向は、塗布ロール11に対するドクターバー12の押し付け圧力が増加することを意味する。
【0053】
図14,16,17,20の各グラフにおいて、塗布ロール11の押し込み量の基準(ゼロ点)は、例えば、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し付け圧力がゼロとなる塗布ロール11の位置(例えば塗布ロール11が基板2に接触のみしている塗布ロール11の位置)である。
図14,16,17,20の各グラフにおける塗布ロール11の押し込み量の正方向は、基板2の塗布面3に対する塗布ロール11の押し付け圧力が増加することを意味する。
【0054】
実施例1〜7では、いずれも
図7に示す基板2の塗布面3の各領域R1〜R7におけるインク4の各目標膜厚T1,T2,T3(
図8参照)を以下のように設定した。
目標膜厚T1=12μm
目標膜厚T2=14μm
目標膜厚T3=16μm
各領域R1〜R7におけるインク4の目標膜厚T1,T2,T3は、基板2の両方の塗布面3,3で同じとした。
【0055】
実施例1〜7では、
図7の基板2及び
図14〜20のグラフに示すように、いずれもインク4を塗布面3に塗布する際に、以下の手順でインク4の膜厚を変えた。
はじめに、塗布面3の領域R1と領域R2との境界となる基板2の位置X1で、ドクターバー12の押し込み量を減少させたり、塗布ロール11の回転速度を増加させたり、塗布ロール11の押し込み量を減少させたりすることで、基板2の塗布面3に塗布されるインク4の膜厚を増加させた。
次いで、塗布面3の領域R2と領域R3との境界となる基板2の位置X2で、ドクターバー12の押し込み量をさらに減少させたり、や塗布ロール11の回転速度をさらに増加させたり、塗布ロール11の押し込み量をさらに減少させたりすることで、基板2の塗布面3に塗布されるインク4の膜厚をさらに増加させた。
【0056】
その後、塗布面3の領域R3と領域R4との境界となる基板2の位置X3で、ドクターバー12の押し込み量を増加させたり、塗布ロール11の回転速度を減少させたり、塗布ロール11の押し込み量を増加させたりすることで、基板2の塗布面3に塗布されるインク4の膜厚を減少させた。
そして、塗布面3の領域R4と領域R5との境界となる基板2の位置X4で、基板2の位置X1の場合と同様に、ドクターバー12の押し込み量や塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量を設定し、領域R5に塗布されるインク4の膜厚を領域R2の場合と同等とした。
【0057】
さらに、塗布面3の領域R5と領域R6との境界となる基板2の位置X5で、基板2の位置X2の場合と同様に、ドクターバー12の押し込み量や塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量を設定し、領域R6に塗布されるインク4の膜厚を領域R3の場合と同等とした。
また、塗布面3の領域R6と領域R7との境界となる基板2の位置X6で、基板2の位置X3の場合と同様に、ドクターバー12の押し込み量や塗布ロール11の回転速度、塗布ロール11の押し込み量を設定することで、領域R7に塗布されるインク4の膜厚を領域R4の場合と同等とした。
最後に、塗布面3の領域R7の端をなす基板2の位置X7で、塗布面3に対するインク4の塗布を終了した。
【0058】
実施例1〜7では、いずれも目標膜厚T2に設定した塗布面3の領域R2,R5に対応する基板2の部分を、第一回路基板201として製造される部分とした。第一回路基板201は、
図7において破線で囲まれた部分とし、各領域R2,R5において複数設けられるようにした。
また、目標膜厚T3に設定した塗布面3の領域R3,R6に対応する基板2の部分を、第二回路基板202として製造される部分とした。第二回路基板202は、
図7において破線で囲まれた部分とし、各領域R3,R6において複数設けられるようにした。
目標膜厚T1に設定した塗布面3の領域R1,R4,R7に対応する基板2の部分は、回路基板として製造されない部分とした。領域R1,R4,R7における目標膜厚T1を、領域R2,R3,R5,R6における目標膜厚T2,T3よりも薄く設定して塗布することができるので、従来のように均一な厚みでインク4を塗布する場合と比較して、回路基板201,202を含む基板2に塗布するインク4の量の低減が可能となった。
【0059】
[インク(ソルダーレジスト)の膜厚の測定]
上記した実施例1〜7の各塗布方法で塗布されたインク4の膜厚を測定した。測定されるインク4の膜厚は、インク4を基板2の両方の塗布面3,3に塗布した直後の膜厚ではなく、インク4が基板2の両方の塗布面3,3に塗布された後、UVキュア及びポストベーク処理を実施して各塗布面3上のインク4をソルダーレジストとした後の膜厚とした。また、インク4の膜厚は、例えば露光処理、現像処理を実施した後の膜厚としてもよい。
インク4(ソルダーレジスト)の膜厚は、レーザー顕微鏡を用い、インク4(ソルダーレジスト)に形成された所定の開口パターンにおいて測定した。
図14〜20の各グラフには、移送方向における基板2の位置(塗布開始位置X0を基準とした塗布距離)と、上記の測定方法で測定されたインク4の膜厚との関係を記載した。基板2の位置に対するインク4の膜厚の変化の傾向は、基板2の両方の塗布面3,3で差異が無いため、
図14〜20のグラフには、基板2の一方の塗布面3における基板2の位置とインク4の膜厚との関係のみ記載した。
【0060】
[実施例1〜7の評価]
実施例1〜7の各塗布方法で塗布されたインク4の膜厚に関し、インク4の目標膜厚と測定膜厚の誤差を調べた結果を
図21に示す。
図21において、「一方の塗布面」の欄には、ユニット駆動部19によって駆動される一方の塗布ロール11が押し付けられる基板2の塗布面3におけるインク4の目標膜厚と測定膜厚の誤差を記載した。「他方の塗布面」の欄には、ユニット駆動部19によって駆動されない他方の塗布ロール11が押し付けられる基板2の塗布面3におけるインク4の目標膜厚と測定膜厚の誤差を記載した。インク4の目標膜厚に対する測定膜厚の誤差は、測定膜厚が目標膜厚よりも大きい場合に「+」で示し、測定膜厚が目標膜厚よりも小さいに場合に「−」で示した。
図21に示すように、実施例1〜7では、いずれもインク4の目標膜厚に対する測定膜厚の誤差が最大で1.9μmであった。すなわち、実施例1〜7では、いずれも目標膜厚に近い膜厚でインク4を塗布できることが確認された。これにより、同一の基板2を用いてソルダーレジスト(インク4)の膜厚が異なる二種類の回路基板201,202を製造できることが確認された。
【0061】
また、ドクターバー12の押し込み量を一定とした実施例4,6,7では、インク4の目標膜厚に対するインク4の膜厚の誤差の最大値が、いずれも1.4μm以上であった。これに対し、ドクターバー12の押し込み量を変化させた実施例1〜3,5では、インク4の目標膜厚に対するインク4の膜厚の誤差の最大値が、いずれも1.3μm以下であった。したがって、本実施形態の塗布装置1及びインク4の塗布方法によってインク4を基板2の塗布面3に塗布する場合には、ドクターバー12の押し込み量を変化させることで、インク4を高い膜厚精度で基板2に塗布することができることが確認された。
【0062】
また、
図14〜20のグラフを見ると、ドクターバー12の押し込み量を変化させた実施例1〜3,5では、ドクターバー12の押し込み量を一定とした実施例4,6,7と比べて、インク4の膜厚が大きく変わることが確認された。すなわち、ドクターバー12の押し込み量を変化させることは、塗布ロール11の回転速度や塗布ロール11の押し込み量を変化させることよりも、インク4の膜厚の変化に大きく寄与することが確認された。したがって、ドクターバー12の押し込み量を変化させることにより、同一の基板2を用いて、インク4(ソルダーレジスト)の膜厚が大きく異なる複数種類の回路基板を製造できることが確認された。
【0063】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
本発明の塗布装置は、インクを基板の両方の塗布面に塗布するように構成されることに限らず、例えば基板の一方の塗布面のみに塗布するように構成されてもよい。すなわち、本発明の塗布装置は、少なくとも一つの塗布ロールを備えればよい。また、本発明のインクの塗布方法では、同様にして、少なくともインクを基板の一方の塗布面に塗布すればよい。
【0065】
また、例えば、塗布装置の制御部や位置算出部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部や位置算出部が実行する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0066】
また、「コンピュータシステム」は、コンピュータネットワークシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0067】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。