特許第6861488号(P6861488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6861488-造粒物 図000004
  • 6861488-造粒物 図000005
  • 6861488-造粒物 図000006
  • 6861488-造粒物 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861488
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】造粒物
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/00 20060101AFI20210412BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20210412BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20210412BHJP
   E02D 3/046 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   E02D3/00 101
   E02D3/12 102
   G21F9/36 541E
   G21F9/36 541D
   G21F9/36 541M
   E02D3/046
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-162174(P2016-162174)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-31130(P2018-31130A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年8月1日に公益社団法人土木学会から発行された「平成28年度土木学会全国大会 in TOHOKU」 と題するDVD−ROMに収録
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯 さち恵
(72)【発明者】
【氏名】森川 義人
(72)【発明者】
【氏名】木ノ村 幸士
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−223578(JP,A)
【文献】 特開平11−108247(JP,A)
【文献】 中島 均,齋藤 亮,浅田 素之,郷家 光男,鳥越 崇,西川 昌芳,大年寺層泥岩を用いたベントナイト混合土の透水係数,第71回年次学術講演会講演概要集,公益社団法人土木学会,2016年 8月 1日,pp.11−12
【文献】 磯 さち恵,森川 義人,木ノ村 幸士,藤原 斉郁,破砕性堆積軟岩の特性を活かしたベントナイト混合土の効率的施工方法,大成建設技術センター報,2015年,第48号,pp.27−1〜27−8
【文献】 遠藤 さち恵,森川 義人,木ノ村 幸士,藤原 斉郁,破砕性堆積軟岩のベントナイト混合土への合理的適用法への研究,大成建設技術センター報,2014年,第47号,pp.11−1〜11−8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00
E02D 3/046
E02D 3/12
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積軟岩を主体とする母材と、前記母材を被覆するベントナイトとを備える造粒物であって、
前記堆積軟岩は、掘削土であり、かつ、破砕率が48%以上で、なおかつ、メチレンブルー吸着量が16mmol/100g以上であり、
前記ベントナイトの混合率は、前記母材および前記ベントナイトの乾燥重量に対して5%〜10%の範囲内であることを特徴とする、造粒物。
【請求項2】
前記堆積軟岩が、新第三系鮮新統、第三系中新世、新第三系中新統または第四系更新統の掘削土であることを特徴とする、請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
前記堆積軟岩が、新第三系鮮新統に属する仙台層群の掘削土であることを特徴とする、請求項1に記載の造粒物。
【請求項4】
前記堆積軟岩が、大年寺層または向山層の掘削土であることを特徴とする、請求項3に記載の造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種廃棄物の貯蔵施設等では、施設底部、施設斜面部および廃棄物層下部に不透水層を形成する場合がある。
不透水層は、遮水性能および変形追随性能を備えている必要がある。また、放射性物質を含有する廃棄物の中間貯蔵施設では、遮水性能および変形追従性能に加えて、流出防止性能を備えている必要がある。なお、本明細書において「不透水層」とは、不透水性の土壌層をいい、「難透水性土壌層」も含むものとする。
このような不透水層を構成する材料には、特許文献1に示すように、脆弱岩(C〜D級岩盤に区分される堆積軟岩)からなる母材に脆弱岩を混合してなる混合土を使用する場合がある。母材として脆弱岩を使用すると、締固めにより母材が破砕されて好適な粒度分布になるため、密実で遮水性に優れた不透水層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−223578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不透水層は、均質性を確保する必要がある。不透水層を均質に施工するためには、撒き出し時に取扱いやすく、かつ、締固め時にバラツキが生じ難い材料を使用するのが望ましい。
このような観点から、本発明は、撒き出し時の材料のハンドリング性がより高く、かつ、締固め後の品質のばらつきがより少ない造粒物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、堆積軟岩を主体とする母材と、前記母材を被覆するベントナイトとを備える造粒物であって、前記堆積軟岩は掘削土であり、かつ、破砕率が48%以上で、なおかつ、メチレンブルー吸着量が16mmol/100g以上であり、前記ベントナイトの混合率は、前記母材および前記ベントナイトの乾燥重量に対して5%〜10%の範囲内である。
なお、前記堆積軟岩には、例えば、新第三系鮮新統、第三系中新世、新第三系中新統または第四系更新統の掘削土を使用することができる。新第三系鮮新統の掘削土としては、例えば、仙台層群の掘削土、より好ましくは、大年寺層または向山層の掘削土を使用すればよい
かかる造粒物によれば、ベントナイトの混合量によらず、所望の透水係数を確保することが可能となる。そのため、ベントナイトの混合量を低減することで、材料費の低減化を図ることができる。また、配合設計に要する手間も省略することが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の造粒物によれば、撒き出し時の材料のハンドリングが向上し、締固め後の品質のばらつきが低減し均質性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の廃棄物処分場の概要を示す断面図である。
図2】本実施形態の造粒物を示す断面図である。
図3】堆積軟岩を母材とした造粒物および山砂を母材とした造粒物の透水係数と有効粘土密度の関係を示すグラフである。
図4】異なる堆積軟岩を母材とした造粒物の透水係数とベントナイト混合率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の造粒物の使用方法の一例として、放射性物質を含有する廃棄物(放射性廃棄物4)の管理型最終処分場1における不透水層2について説明する。管理型最終処分場1は、図1に示すように、地盤を掘削することにより形成された凹部3(溝等)に構築されている。
不透水層2は、放射性廃棄物4の側面および底面を覆うように、凹部3の底部および斜面部に形成されている。なお、放射性廃棄物4の上面は覆土5により覆われている。また、放射性廃棄物4を複数層に分けて埋め立てる場合には、各廃棄物層の底部にも不透水層2を形成する。
【0009】
不透水層2は、図2に示す造粒物8を締固めることにより形成されている。造粒物8は、母材6と、母材6を被覆するベントナイト7とを備えている。
母材6は、スメクタイト系粘土鉱物を比較的多く含有する堆積軟岩を主体としている。本実施形態では、母材6として、凹部3の形成時に地盤を掘削することにより発生した掘削土を使用している。すなわち、本実施形態の造粒物8は、凹部3の掘削時に発生した岩盤層の掘削土に、貧配合のベントナイト7を混合することにより形成されている。
【0010】
本実施形態の堆積軟岩は、新第三系鮮新統に属する仙台層群の向山層の掘削土からなる。なお、母材6は、堆積軟岩の掘削土であればよく、堆積軟岩の種類等は限定されるものではない。例えば、堆積軟岩は、必ずしも仙台層群から採取する必要はない。また、堆積軟岩は、新第三系鮮新統に属する仙台層群の大年寺層から採取されたものであってもよい。さらに、堆積軟岩は、例えば、第三系中新世、新第三系中新統または第四系更新統の掘削土であってもよい。
本実施形態の堆積軟岩は、破砕率が48〜51%の範囲内で、かつ、当該堆積軟岩のメチレンブルー吸着量が24〜36mmol/100gの範囲内である。なお、堆積軟岩の破砕率は、上記の範囲に限定されるものではないが、48%以上であるのが望ましい。また、メチレンブルー吸着量も上記の範囲に限定されるものではないが、16mmol/100g以上であるのが望ましい。破砕率は、岩の破砕率試験方法(JHS109)に従って計測した。
【0011】
造粒物の製造は、まず、堆積軟岩の掘削土を、破砕機を利用して一次破砕する。なお、一次破砕に使用する破砕機は限定されるものではなく、例えば、バックホウの取り付けられたバケット式破砕機を使用すればよい。一次破砕後の掘削土の粒径は限定されるものではないが、例えば、40mm以下にする。次に、一次破砕した掘削土を粒度調整することなく混合機に投入し、ベントナイトおよび水と混合することで造粒物を製造する。ベントナイトの混合率は、堆積軟岩が締固め時の粒子破砕により適度な細粒分を有する粒度分布に調整されることを考慮して、造粒物の乾燥重量に対して5%〜10%の範囲内とする。なお、ベントナイトの混合率は適宜決定すればよい。
母材は、堆積軟岩を主体としていれば、堆積軟岩以外の材料(例えば、砂等)が母材に含まれていてもよい。
【0012】
不透水層2は、造粒物を撒き出すとともに敷均した後、締固めることにより形成する。造粒物の撒き出し方法は限定されないが、例えば、バックホウやブルドーザ等の建設機械を使用すればよい。また、造粒物の締固めは、例えば振動ローラやコンパクタ等の建設機械を用いて転圧すればよい。
【0013】
本実施形態の造粒物によれば、堆積軟岩を主体とした母材にベントナイトを混合しているので、母材の破砕性と母材に含有される膨潤性粘土鉱物の両方の特性を総合的に利用して施工の効率化を図り、かつ、合理的配合設計が可能となる。
すなわち、母材に破砕率が48%以上の堆積軟岩を使用しているため、粒度調整がなされていなくても、転圧により母材が破砕して、適切な粒度分布に調整され、適度な細粒分が含まれる。そのため、ベントナイトが貧配合であっても、遮水性に優れた不透水層2が形成される。
また、膨張性粘土鉱物であるスメクタイト系粘土鉱物が比較的多く含有された堆積軟岩を母材に使用しているため、ベントナイトの配合率を低減させることができ、合理的な配合設計が可能となる。
【0014】
また、母材として掘削土(現地発生土)を使用しているため、礫や砂等の購入土を使用する場合に比べて、費用を大幅に削減することができる。また、母材となる掘削土に対して手間のかかる粒度調整等の処理を施す必要が無く、簡易な事前破砕のみが必要とされるため、施工性および経済性に優れている。
また、造粒物を転圧すれば、堆積軟岩が破砕して適度な粒度分布に調整されるため、母材同士の間隙が小さくなる。すなわち、高い締固め密度で、飽和度が高く、空気間隙率が低い良好な締固め性状が得られる。そのため、高品質の不透水層2を構築することができる。
また、不透水層2にせん断破壊等が生じた場合であっても、ベントナイトの膨潤変形により、必要な止水性が回復される。
さらに、締固めによる堆積軟岩の粒度分布の改善効果が、ベントナイト造粒物のせん断抵抗力の発現性に寄与し、盛土材として必要なせん断抵抗力を発現する。また、ひずみが大きくなっても残留応力が維持される力学変形特性を有する変形追随性が発現される。
不透水層2を構成する材料を粒状(粒状物)にすることで、撒き出し時のハンドリングが向上し、転圧締固め時の材料分離によるバラツキが抑制され、均質な不透水層2を形成することができる。
【0015】
次に、本実施形態の造粒物の不透水層2の材料としての適用性を確認するために行った確認試験の結果について説明する。
本確認試験では、母材として、向山層から採取した堆積軟岩の掘削土を使用するものとした。また、ベントナイト混合率を5%にした場合と10%にした場合についても不透水層の透水試験を行った。また、比較例として、母材のみの場合の透水試験も行った。さらに、母材として稲城砂(山砂)を使用した場合についても、ベントナイト混合率を5%にした場合と、10%にした場合について透水試験を行った。試験結果を図3に示す。
【0016】
図3に示すように、母材として堆積軟岩を使用した場合は、ベントナイト混合率5%の実施例1およびベントナイト混合率10%の実施例2のいずれの場合でも透水係数が10−11m/secオーダーであった。一方、母材として稲城砂を使用した場合は、ベントナイト混合率が5%では透水係数が10−10m/secオーダーとなり、堆積軟岩を母材としてベントナイトを使用しない場合と同等となった。母材として稲城砂を使用し、ベントナイト混合率が10%の場合は、透水係数が10−11m/secオーダーとなった。
したがって、本実施形態の粒状物によれば、母材に稲城砂(山砂)を使用する場合に比べて、ベントナイトの混合量を低減させることができる。
【0017】
表1に向山層の堆積軟岩と稲城砂(山砂)のスメクタイト系粘土鉱物の含有量を示す。スメクタイト系粘土鉱物の含有量は、メチレンブルー吸着量試験により測定した。
表1に示すように、向山層の堆積軟岩のメチレンブルー吸着量は36mmol/100gであった。一方、稲城砂のメチレンブルー吸着量は8mmol/100gであった。したがって、向山層の堆積軟岩は、稲城砂の4倍以上のスメクタイト系粘土鉱物を含んでいることが確認された。なお、ベントナイトのメチレンブルー吸着量は84mmol/100gであった。
このように、本実施形態の造粒物によれば、透水係数に影響を与えると考えられているスメクタイト系粘土鉱物を多量に含有する堆積軟岩を母材として使用しているため、ベントナイトの配合率を低減させることができ、合理的な配合設計が可能となる。
【0018】
【表1】
【0019】
次に、性質の異なる3種類の堆積軟岩について、ベントナイト混合率を5,10,15%にした場合の透水係数を測定した。測定結果を図4に示す。なお、母材として使用する堆積軟岩には、新第三紀鮮新世の向山層(実施例)、中期中新世の稚内層(比較例)、新第三紀の与那原層(比較例)から採取したものを使用した。表2に各堆積軟岩の特性を示す。
【0020】
【表2】
【0021】
図4に示すように、本実施形態の粒状物(向山層)によれば、ベントナイト混合率に関わらず、透水係数が安定している。一方、稚内層や与那原層では、ベントナイト混合率が増加することにより透水係数が低下する傾向が示された。
向山層の次にスメクタイト系粘土鉱物の含有率が高い稚内層が、スメクタイト系粘土鉱物の含有率が低い与那原層に比べて透水係数が大きい結果となった。一方、稚内層の破砕率は、与那原層の破砕率よりも小さかった。この結果から、スメクタイト系粘土鉱物を含有している母材であっても、その能力を発揮するためには、堆積軟岩の性質の影響が大きいことが確認された。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、管理型最終処分場1の不透水層2を形成する場合に本発明の造粒物8を使用する場合について説明したが、本発明の造粒物8を使用する箇所は、管理型最終処分場に限定されるものではない。例えば、中間貯蔵施設等の不透水層に使用してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 管理型最終処分場
2 不透水層
3 凹部
4 放射性廃棄物
5 覆土
6 母材
7 ベントナイト
8 造粒物
図1
図2
図3
図4