(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪本発明の一態様の概要≫
本発明の一態様に係る有機EL素子は、基板上に配された平坦化層と、無機材料からなり、前記平坦化層のサブピクセルに相当する領域の少なくとも一部を露出させた状態で、前記平坦化層上に配された絶縁層と、前記サブピクセルに相当する領域を規定する開口部を有し、前記絶縁層上に配されたバンクと、前記平坦化層の前記露出した部分上に配された画素電極と、前記画素電極上に配された透光性導電層と、前記開口部内において、少なくとも前記透光性導電層の上方に配された発光層と、前記発光層の上方に配された対向電極とを有し、前記バンクの底面と前記平坦化層との間には、全面的に前記絶縁層が介在しており、前記平坦化層の上面は、少なくとも前記画素電極及び前記絶縁層の何れか一方で覆われていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記絶縁層は、前記平坦化層と前記バンクとの間から、前記画素電極の縁部と前記平坦化層との間まで連続的に配されていてもよい。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記絶縁層は、前記平坦化層と前記バンクとの間から、前記画素電極の縁部と前記透光性導電層との間まで連続的に配されていてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記画素電極及び前記透光性導電層の積層体の縁部は、平面視で前記バンクと重なっていてもよい。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記画素電極及び前記透光性導電層の積層体は、前記開口内において前記バンクから離間して配されていてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記絶縁層は、前記バンク材料よりも光吸収性が高い無機材料からなってもよい。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の特定の局面では、前記光吸収性を有する無機材料は、酸化クロムであってもよい。
以下、具体例を示し、構成および作用・効果を説明する。
【0014】
なお、以下の説明で用いる実施形態は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例示であって、本発明は、その本質的部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
≪実施形態1≫
[1.有機EL表示装置の全体構成]
以下では、実施形態1に係る有機EL素子を含む有機EL表示装置の構成について
図1を用い説明する。
【0015】
図1は、有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。
図1に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを有し構成されている。有機EL表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子1(
図2、
図3参照)が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と制御回路250とから構成されている。
【0016】
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
[2.有機EL表示パネル100の構成]
図2は、有機EL表示パネル100の画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る有機EL表示パネル100は、所謂ラインバンク構造を採用している。即ち、有機EL表示パネル100は、各々がX軸方向に長尺で、Y軸方向に互いに間隔をあけて配置された複数条の第1バンク17aと、各々がY軸方向に長尺で、X軸方向に互いに間隔をあけて配置された複数条の第2バンク17bとを備える。
【0017】
隣接する一対の第1バンク17aと、隣接する一対の第2バンク17bとで規定される各領域に、有機EL素子1R,1G,1Bの何れかが形成され、各有機EL素子1R,1G,1Bがサブピクセルとなっている。各サブピクセルのY方向の長さは、例えば、300μmである。
有機EL素子1Rは赤色(R)の光を出射し、有機EL素子1Gは緑色(G)の光を出射し、有機EL素子1Bは青色(B)の光を出射する。X方向に隣接する3つの有機EL素子1R,1G,1Bで1つの画素(ピクセル)が構成されている。なお、発光色を特に限定する必要がない場合には、これらの有機EL素子を総称して有機EL素子1と呼ぶ。
【0018】
また、第1バンク17aの高さは、例えば、第2バンク17bの高さの40%〜70%の範囲内であって、より好ましくは、50%〜55%の範囲内である。また、第1バンク17aと第2バンク17bとを特に区別する必要が無い場合には、総称してバンク17と呼ぶ。
[3.有機EL素子の構成]
本実施形態に係る有機EL素子1の構成について、
図3を用い説明する。
【0019】
図3は、有機EL表示パネル100を
図2のA−A線で切断した模式断面図であり、1つの有機EL素子1に相当する部分の断面図である。本実施形態においては、1つの有機EL素子1は、1つの画素(サブピクセル)に対応している。有機EL表示パネル100は、同図上側を表示面とする、いわゆるトップエミッション型である。
図3に示すように、有機EL表示パネル100は、基板11、平坦化層12、絶縁層13、画素電極14、透光性導電層15、ホール注入層16、バンク17、発光層18、電子輸送層19、対向電極20、および封止層21を備える。なお、基板11、平坦化層12、電子輸送層19、対向電極20、および封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
【0020】
<基板>
基板11は、絶縁材料として樹脂からなる基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、画素毎に駆動回路が形成されている。基材111が形成される樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂等の絶縁性材料が挙げられる。本実施形態においては、基材111は、樹脂から成り、具体的には、例えば、ポリイミド系樹脂である。
【0021】
<平坦化層>
平坦化層12は、基板11上に配置されている。平坦化層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、
図2の断面図には示されていないが、平坦化層12には、画素毎にコンタクトホールが形成されている。
【0022】
<絶縁層>
絶縁層13は、電気絶縁性及び低い水分透過性を有する無機材料からなる。絶縁層13は、サブピクセルに相当する領域であるバンク17の開口部17c内における少なくとも一部(以下、「露出部分12a」と称する。)を露出させた状態で、平坦化層12上に配置されている。言い換えると、絶縁層13は、開口部17c内における露出部分12aを除く平坦化層12上に配置されており、平坦化層12の露出部分12aは、絶縁層13に覆われていない。
【0023】
絶縁層13の無機材料として、例えば、SiN、SiO、酸化クロム、酸化モリブデン等を用いることができる。
<画素電極>
画素電極14は、平坦化層12の露出部分12a上及び、絶縁層13の露出部分12aを取り囲む部分である縁部13a上に配置されている。言い換えると、画素電極14は、平坦化層12の露出部分12a上を覆い、絶縁層13の縁部13a上に乗り上げて配置されている。画素電極14は、導電材料からなり、陽極として機能している。画素電極14は、画素(サブピクセル)毎に個々に設けられ、コンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。本実施形態においては、トップエミッション型であるので、画素電極14は、光反射性を具備するとよい。光反射性を具備する導電材料としては、金属が挙げられる。具体的には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などがある。
【0024】
<透光性導電層>
透光性導電層15は、透光性及び導電性を有する材料からなり、画素電極14上に配置されている。透光性及び導電性を有する材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
【0025】
<ホール注入層>
ホール注入層16は、画素電極14上に配置されている。ホール注入層16は、画素電極14から発光層18へのホール(正孔)の注入を促進させる機能を有する。ホール注入層16の材料としては、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの金属の酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を用いることができる。上記の金属酸化物からなるホール注入層16は、大きな仕事関数を有する。従って、発光層18に対し、ホールを安定的に注入する機能、またはホールの生成を補助する機能を有する。本実施の形態においては、ホール注入層16は、金属酸化物からなり、例えば、酸化タングステンからなる。
【0026】
ここで、ホール注入層16を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。
<バンク>
バンク17は、ホール注入層16の縁部を被覆し、それ以外の部分を露出させた状態で絶縁層13上に配置されている。ホール注入層16上面においてバンク17で被覆されていない領域(以下、「開口部17c」という。)は、サブピクセルに対応している。即ち、バンク17は、サブピクセル毎に設けられた開口部17cを有し、開口部17cは、サブピクセルに相当する領域を規定している。
【0027】
本実施形態においては、バンク17は、画素電極14が形成されていない部分においては、平坦化層12上に形成されている。即ち、画素電極14が形成されていない部分においては、バンク17の底面は平坦化層12の上面と接している。
バンク17は、例えば、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。バンク17は、発光層18を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層18を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施形態では、バンク17は、樹脂材料からなり、バンク17の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
【0028】
<発光層>
発光層18は、開口部17c内に配置されている。発光層18は、ホールと電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層18の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。
【0029】
本実施形態においては、発光層18は、インクジェットによる湿式法で形成される。
<電子輸送層>
電子輸送層19は、発光層18及びバンク17上に配置されている。即ち、電子輸送層19は、各サブピクセル共通に1つの層として形成されている。電子輸送層19は、対向電極20から注入された電子を発光層18へ輸送する機能を有する。電子輸送層19は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0030】
<対向電極>
対向電極20は、電子輸送層19上に配置されている。対向電極20は、各サブピクセル共通に設けられており、陰極として機能している。対向電極20は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の導電性を有する透光性材料で形成されている。
【0031】
<封止層>
封止層21は、対向電極20上に配置されている。封止層21は、外部からの水分や酸素の浸入を抑制し、その結果、発光層18が水分や酸素に触れて劣化することを抑制する。有機EL表示パネル100はトップエミッション型であるため、封止層21の材料としては、例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の透光性材料が選択される。
【0032】
<その他>
なお、
図3には図示しないが、封止層21の上にカラーフィルタや上部基板を配置してもよい。上部基板により、水分および酸素などから、ホール注入層16、発光層18、電子輸送層19の更なる保護が図られる。
[4.透光性導電層の劣化抑制]
本実施形態に係る有機EL素子1においては、平坦化層12とバンク17との間に絶縁層13が介在している。絶縁層13は、平坦化層12とバンク17の底面との間に全面的に介在している。絶縁層13は、水分透過性が低いため、平坦化層12の表面に吸着された水分のバンク17への移動は、絶縁層13により抑制される。その結果、平坦化層12からバンク17を介して透光性導電層15への水分の移動が抑制される。
【0033】
また、画素電極14は、金属材料からなり、水分透過性が低い。そのため、平坦化層12の表面に吸着された水分の透光性導電層15への移動は、画素電極14により抑制される。そして、平坦化層12の上面の画素電極14で覆われていない部分は、絶縁層13で覆われており、絶縁層13の縁部13aは画素電極14により覆われている。言い換えると、平坦化層12の上面は、少なくとも画素電極14及び絶縁層13の何れか一方で覆われている。従って、絶縁層13と画素電極14との間に、水分が透過する隙間が存在しない。その結果、平坦化層12の表面に吸着された水分の透光性導電層15への移動が全面的に抑制される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る有機EL素子の構成によると、平坦化層12の表面に吸着された水分の透光性導電層15への移動が抑制されるため、透光性導電層15の劣化が抑制される。これにより、有機EL素子1の駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制される。
なお、製造過程における様々な要因により、絶縁層13及び画素電極14に微小な孔や欠損部分が形成される場合が考えられる。これらの孔や欠損部分が、有機EL素子及び有機EL表示パネルの品質を実質的に損なわない程度のものであれば、絶縁層13は、平坦化層12とバンク17の底面との間に全面的に介在しているものとして扱ってよく、平坦化層12の上面は、少なくとも画素電極14及び絶縁層13の何れか一方で覆われているものとして扱ってよい。以下、各実施形態及び各変形例においても同様である。
【0035】
[4.有機EL表示パネル100の製造方法]
本実施形態に係る有機EL表示パネル100の製造方法の一例を、
図4〜
図9を用いて説明する。
図4は、有機EL表示パネル100の模式工程図である。
図5〜
図9は、有機EL表示パネル100の製造過程を模式的に示す部分断面図である。
先ず、
図5(a)に示すように、基材111上にTFT層112を形成して、基板11を形成する(
図4のステップS1)。
【0036】
次に、
図5(b)に示すように、基板11上に平坦化層12を成膜する(
図4のステップS2)。平坦化層12の材料には、本実施形態においては、ポジ型の感光性材料であるアクリル樹脂を用いる。平坦化層12は、アクリル樹脂を溶媒(例えば、PGMEA)に溶解させた溶液を基板11上に塗布して成膜した後、焼成を行って形成する(
図4のステップS3)。焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で180分間行う。
【0037】
続いて、
図5(c)に示すように、平坦化層12上に絶縁層13を形成する。絶縁層13の厚さは、例えば、5〜1000〔nm〕より好ましくは、50〜400〔nm〕である。絶縁層13は、平坦化層12上に絶縁層13用の材料(SiN,SiO,酸化クロム,酸化モリブデン等の無機材料、あるいは、有機樹脂材料に無機フィラー、無機顔料などを含んだもの)を用いて蒸着法やスパッタ法により一様な層を形成した後に、エッチングによりパターニングして形成する。なお、エッチングを行う代わりに、絶縁層13を、マスク等を用いて所定のパターンになるように形成してもよい。
【0038】
そして、
図5(d)に示すように、平坦化層12及び絶縁層13上に、画素電極材料層14aを一様に形成する(
図4のステップS5)。
次に、
図6(a)に示すように、画素電極材料層14a上に、透光性導電材料層15aを一様に形成する(
図4のステップS6)。
続いて、
図6(b)に示すように、透光性導電材料層15a上に、ホール注入材料層16aを一様に形成する(
図4のステップS7)。
【0039】
そして、
図6(c)に示すように、画素電極材料層14a、透光性導電材料層15a、及びホール注入材料層16aの積層体をエッチングによりパターニングし(
図4のステップS8)、画素電極14、透光性導電層15、及びホール注入層16を同時に形成する。
次に、
図7(a)に示すように、ホール注入層16および絶縁層13上に、第1バンク17aの材料である第1バンク用樹脂を塗布し、第1バンク材料層170aを形成する。第1バンク用樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるフェノール樹脂が用いられる。第1バンク材料層170aは、第1バンク用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液をホール注入層16上および絶縁層13上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、第1バンク材料層170aにパターン露光と現像を行うことで第1バンク17aを形成し(
図7(b),
図4のステップS9)、焼成して第1バンク17aが完成する(
図4のステップS10)。
【0040】
次に、
図7(c)に示すように、ホール注入層16,絶縁層13,および第1バンク17a上に、第2バンク17bの材料である第2バンク用樹脂を塗布し、第2バンク材料層170bを形成する。第2バンク用樹脂には、第1バンク用樹脂とは異なる種類の感光性材料(例えば、第1バンク用樹脂とは異なる波長の光により硬化する感光性材料)が用いられる。
【0041】
第2バンク材料層170bは、第1バンク材料層170aよりも大きな膜厚で形成される。そして、第1バンク材料層170aと同様にパターン露光と現像を行って第2バンク17bを形成し(
図8(a),
図4のステップS11)、焼成して第2バンク17bが完成する(
図4のステップS12)。これにより、バンク17(第1バンク17a及び第2バンク17b)が完成し、発光層18の形成領域であって、サブピクセルに相当する領域である開口部17cが規定される。第1バンク17aおよび第2バンク17bの焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0042】
なお、第1バンク17aと第2バンク17bとを同一の材料を用いて同時に形成してもよい。その場合、第1バンク17aが形成される予定の領域と第2バンク17bが形成される予定の領域とで、露光強度や露光深度を変えるなどして、第2バンク17bよりも第1バンク17aの方が低くなるようにするとよい。
また、バンク17の形成工程においては、さらに、バンク17の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部17cに塗布するインクに対するバンク17の接触角を調節する目的、又は、表面に撥液性を付与する目的で行われる。なお、このような表面処理を、第1バンク17aに対しては行わず、第2バンク17bに対してのみ行ってもよい。
【0043】
次に、開口部17cに対し、発光層18の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド301のノズル3030から吐出して開口部17c内のホール注入層16上に塗布した後、焼成(乾燥)を行って、発光層18を形成する(
図8(b),
図4のステップS13)。
なお、このとき、本実施形態においては、発光層18の上面は、第1バンク17aの上面よりもZ軸方向において高い位置にあり、第1バンク17aは発光層18に覆われている。
【0044】
続いて、
図9(a)に示すように、発光層18上および第2バンク17b上に、電子輸送層19を形成する。電子輸送層19は、構成材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して一様に成膜して形成する(
図4のステップS14)。
そして、
図9(b)に示すように、電子輸送層19上に、対向電極20を形成する。具体的には、ITO,IZO等の材料を用い、真空蒸着法,スパッタリング法等により対向電極20を形成する(
図4のステップS15)。
【0045】
続いて、
図9(c)に示すように、対向電極20上に封止層21を形成する。封止層21は、SiNを材料に用い、スパッタ法,CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成する(
図4のステップS16)。
以上の工程を経ることにより有機EL表示パネル100が完成する。
なお、封止層21の上にカラーフィルタや上部基板を配置してもよい。
【0046】
≪実施形態2≫
図10(a)は、実施形態2に係る有機EL素子2を有する有機EL表示パネル200の模式断面図である。なお、実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。
有機EL素子2は、絶縁層213が、平坦化層12上のバンク17直下の部分のみを覆って配置されている点、及び、これに伴い、画素電極214が絶縁層213に乗り上げて配置されていない点において、実施形態1に係る有機EL素子1と異なっている。それ以外は、有機EL素子1と同じである。画素電極214及び絶縁層213は、それぞれ画素電極14及び絶縁層13と形状が異なるので異なる符号を付しているが、材料は、それぞれ画素電極14及び絶縁層13と同じである。
【0047】
有機EL素子2における、絶縁層213、画素電極214、透光性導電層15、ホール注入層16、及びバンク17は、例えば、以下のような方法で形成することができる。先ず、平坦化層12上に、画素電極材料層、透光性導電材料層、ホール注入材料層の積層体を形成し、当該積層体をエッチングによりパターニングする。その後、エッチングで積層体が除去されて平坦化層12が露出した部分に、マスクを用いて絶縁層213を形成し、その上にバンク17を形成する。または、先ず、平坦化層12上に絶縁層213を形成し、平坦化層12上面の絶縁層213が形成されていない部分に、マスクを用いて画素電極214、透光性導電層15、及びホール注入層16を形成した後、バンク17を形成してもよい。
【0048】
実施形態2に係る有機EL素子2の構成によっても、平坦化層12とバンク17の底面との間に絶縁層213が介在している。これにより、平坦化層12の表面に吸着された水分のバンク17への移動が抑制され、従って、当該水分のバンク17を介した透光性導電層15への移動が規制される。また、平坦化層12の上面の絶縁層13が配置されていない部分には、画素電極214が配置されている。言い換えると、平坦化層12の上面は、少なくとも画素電極214及び絶縁層13の何れか一方で覆われている。従って、平坦化層12の表面に吸着された水分の透光性導電層15への移動は、絶縁層213及び画素電極214により抑制されるため、透光性導電層の劣化が抑制される。これにより、駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制される。
【0049】
なお、製造上の誤差により、絶縁層213と画素電極214との間に微小な隙間が存在することが考えられる。しかし、この場合であっても、有機EL素子2は、バンク17の底面と平坦化層12との間に絶縁層213が配置されていることにより、絶縁層213を備えない従来の構成と比較して、平坦化層12から透光性導電層15への水分の浸入経路が非常に微小である。従って、従来の構成と比較して、水分の浸入を十分に抑制することができ、透光性導電層15の劣化が抑制される。これにより、有機EL素子2の駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制される。
【0050】
また、そのような隙間は微小なものであるので、平坦化層の上面の画素電極で覆われてない部分は、実質的に絶縁層で覆われているとみなすことができる。
≪実施形態3≫
図10(b)は、実施形態3に係る有機EL素子3を有する有機EL表示パネル300の模式断面図である。なお、実施形態1及び実施形態2と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
有機EL素子3は、絶縁層313が、平坦化層12とバンク317(
図10(b)では、第2バンク317bのみが示されている。)との間から画素電極214の縁部に乗り上げて当該縁部を覆って配置されている点が、有機EL素子1及び有機EL素子2と異なっている。絶縁層313の画素電極214の縁部に乗り上げている部分は、画素電極214と透光性導電層315との間に挟まれている。また、絶縁層313の形状及び配置が異なっているのに伴い、バンク317の形状もバンク17とは異なる(
図10(b)では、第2バンク317bのみが示されている。)。
【0052】
なお、絶縁層313、透光性導電層315、及びバンク317の材料は、それぞれ絶縁層13、透光性導電層15、及びバンク17と同じである。
有機EL素子3における、絶縁層313、画素電極214、透光性導電層315、ホール注入層16、及びバンク317は、例えば、以下のような方法で形成することができる。先ず、平坦化層12上に画素電極材料層を一様に形成した後にパターニングを行い、画素電極214を形成する。次に、平坦化層12上面の画素電極214により覆われていない部分及び画素電極214の縁部を覆うように絶縁層313を形成する。絶縁層313は、一様な絶縁材料層を形成した後にパターニングを行って形成してもよいし、マスク等を用いて所定のパターンに形成してもよい。続いて、透光性導電材料層及びホール注入材料層をそれぞれ一様に形成した後、パターニングを行って透光性導電層315及びホール注入層16を形成する。そして、絶縁層313上にバンク317を形成する。なお、透光性導電層315及びホール注入層16を、マスク等を用いて所定のパターンに形成してもよい。
【0053】
実施形態3に係る有機EL素子3の構成においても、平坦化層12の底面とバンク317(
図10(b)では第2バンク317bのみを示している。)との間に絶縁層313が介在している。そのため、平坦化層12の表面に吸着された水分のバンク317への移動が抑制され、バンク317を介した透光性導電層315への水分の移動も抑制される。
また、平坦化層12の上面のうち、画素電極214で覆われていない部分は、絶縁層313で覆われている。言い換えると、平坦化層12の上面は、少なくとも画素電極214及び絶縁層313の何れか一方で覆われている。そして、画素電極214の縁部に絶縁層313の一部が乗り上げて配置されている(言い換えると、画素電極214の縁部が絶縁層313で覆われている。)ため、実施形態2に係る有機EL素子2と比較して、画素電極と絶縁層との間に隙間が生じにくく、水分の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0054】
これにより、透光性導電層315の劣化が抑制され、有機EL素子3の駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制される。
≪実施形態4≫
図11は、実施形態4に係る有機EL素子4を有する有機EL表示パネル400の模式断面図である。なお、実施形態1、実施形態2、及び実施形態3と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
有機EL素子4は、画素電極414、透光性導電層415、及びホール注入層416が、第2バンク417bから離間している点、及び、それに伴い第2バンク417bの形状、絶縁層413の平坦化層12上を覆う割合、及び発光層418の形状が異なる点が、実施形態1に係る有機EL素子1と異なっている。本実施形態では、画素電極414、透光性導電層415、及びホール注入層416は、第2バンク417bから離間しているので、画素電極414、透光性導電層415、及びホール注入層416は、平面視で、バンク417と重なっていないが、実施形態1〜3に係る有機EL素子1〜3では、画素電極414、透光性導電層415、及びホール注入層416の縁部は、平面視で、バンク417と重なっている。
【0056】
なお、絶縁層413、画素電極414、透光性導電層415、ホール注入層416、バンク417b、及び発光層418の材料は、それぞれ絶縁層13、画素電極14、透光性導電層15、ホール注入層16、バンク17b、及び発光層18と同じである。
また、絶縁層413、画素電極414、透光性導電層415、及びホール注入層416は、これらの形成の際に、異なる幅でパターニングを行う以外は、実施形態1に係る有機EL素子1と同様の方法により製造することができる。
【0057】
実施形態4に係る有機EL素子4の構成においても、平坦化層12とバンク417(
図11では第2バンク417bのみが示されている。)の底面との間に全面的に絶縁層413が介在している。そのため、平坦化層12の表面に吸着された水分のバンク417への移動が抑制され、バンク417を介した透光性導電層415への水分の移動も抑制される。
【0058】
また、平坦化層12の上面のうち、画素電極414で覆われていない部分は、絶縁層413で覆われている。言い換えると、平坦化層12の上面は、少なくとも画素電極414及び絶縁層413の何れか一方で覆われている。そして、絶縁層413の縁部413aは、画素電極414により覆われているので、絶縁層413と画素電極414との間に隙間が存在しにくい。その結果、平坦化層12の表面に吸着された水分の透光性導電層415への移動が全面的に抑制され、透光性導電層15の劣化が抑制される。これにより、有機EL素子4の駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制される。
【0059】
≪実施形態3、4に係る有機EL素子の別の効果≫
以上説明したように、実施形態1〜4に係る有機EL素子1〜4の構成によると、平坦化層から透光性導電層への水分の移動が抑制され、透光性導電層の劣化が抑制されるので、その結果、有機EL素子の駆動電圧の高電圧化や発光寿命の低下が抑制されるという効果がある。
【0060】
ところで、実施形態3に係る有機EL素子3及び実施形態4に係る有機EL素子4の構成によると、上記とは別の効果を更に得ることができる。以下、詳しく説明する。
発光層を、インクジェット装置を用いた湿式法で形成する場合、発光層形成用のインクを開口部内に塗布すると、インクがバンクの壁面(開口の内側面)を伝って這い上がる現象が発生する。そのため、乾燥後の発光層の断面形状において、開口の中央部では発光層の上面が平坦であるが、バンクに隣接する部分では這い上がりにより湾曲した形状となり、膜厚が不均一になる。すると、外光反射スペクトルが想定からずれ、想定外の波長の反射外光が出射光に混ざることにより、出射光の色純度を悪化させるという問題が従来から存在する。
【0061】
外光反射は、主に画素電極の表面で起こるので、平面視における開口内の画素電極の範囲が外光反射に寄与する範囲である。
図3に示す実施形態1に係る有機EL素子1において、画素電極表面の外光反射寄与幅は、W1である。また、
図10(b)に示す実施形態3に係る有機EL素子3及び
図11に示す実施形態4に係る有機EL素子4における画素電極表面の外光反射寄与幅は、W2である。
図10(b)及び
図11からうかがえるように、有機EL素子3及び4では、外光反射寄与幅W2における発光層の上面は比較的平坦であり、膜厚は比較的均一である。
【0062】
ここで、絶縁層13を備えない従来の有機EL素子における外光反射寄与幅は、実施形態1に係る有機EL素子1と同じW1である。そこで、従来の有機EL素子の光学特性の測定を、実施形態1に係る有機EL素子1で代用して行った結果を、
図12(a),(b)に示す。
図12(a)は、有機EL素子1のカラーフィルタを備えない場合におけるELスペクトル、反射スペクトル、カラーフィルタ透過率について、それぞれ波長と強度との関係を示すグラフである。
図12(b)は、有機EL素子1のカラーフィルタを備える場合におけるELスペクトル、反射スペクトル、カラーフィルタ透過率について、それぞれ波長と強度との関係を示すグラフである。
【0063】
図13(a)は、実施形態4に係る有機EL素子4のカラーフィルタを備えない場合におけるELスペクトル、反射スペクトル、カラーフィルタ透過率について、それぞれ波長と強度との関係を示すグラフである。
図13(b)は、実施形態4に係る有機EL素子4のカラーフィルタを備える場合におけるELスペクトル、反射スペクトル、カラーフィルタ透過率について、それぞれ波長と強度との関係を示すグラフである。
【0064】
出射光の所望の波長範囲は、およそ440〜480nmの範囲であるが、
図12(a),(b)では、上記所望の波長範囲外に、比較的高い強度の反射スペクトルが存在し、色純度が悪化している様子がうかがえる。
一方、
図13(a),(b)では、上記所望の波長範囲外の反射スペクトルの強度が大幅に低下している。これは即ち、実施形態4に係る有機EL素子4では、有機EL素子1(即ち、従来の有機EL素子)と比較して、色純度の悪化が抑制され、色純度が向上していることを示している。
【0065】
このように、実施形態3に係る有機EL素子3及び実施形態4に係る有機EL素子4の構成によると、出射光の色純度向上の効果を得ることができる。
≪実施形態1〜4に係る有機EL素子の別の効果≫
実施形態1〜4に係る有機EL素子1〜4は、バンクの下に絶縁層が配置された構成を有する。ここで、絶縁層に光反射性の低い材料、即ち、光吸収性を有する材料を用いると、絶縁層がブラックマトリクスの役割を果たし、バンク底面で反射されて外部へ出射される光を低減させることができる。その結果、コントラスト向上に資することができる。
【0066】
この場合、絶縁層の光吸収性は高い方が好ましく、バンク材料よりも光吸収性が高い材料、例えば、黒色の材料を用いるとよい。そのような材料としては、例えば、酸化クロムを用いることができる。あるいは、有機樹脂材料に無機フィラー、無機顔料などを含んだものであってもよい
≪変形例≫
以上、本発明の一態様を実施形態に基づいて説明したが、本発明が上述の実施形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することが出来る。
【0067】
(1)上記実施形態に係る有機EL素子1〜4は、ホール注入層及び電子輸送層を備えているが、これに限定されるものではない。これらのうちの一方又は両方を備えない構成であってもよい。
(2)ホール輸送層、電子注入層の一方又は両方、及びパッシベーション膜等の別の層をさらに備える構成であってもよい。
【0068】
(3)実施形態に係る有機EL素子1〜4は、所謂ラインバンク方式であるが、ピクセルバンク方式としてもよい。
(4)実施形態に係る有機EL素子1〜4においては、発光層はインクジェットによる湿式法で形成されるが、これに限られない。例えば、蒸着等の乾式法によって形成されてもよい。
【0069】
(5)1つのピクセルを構成するサブピクセルの発光色の組み合わせは、赤色、緑色、青色に限られず、例えばこれらの何れか1色又は2色であってもよいし、赤色、緑色、青色及び黄色の4色であってもよい。また、一つのピクセルにおいて、サブピクセルは1色あたり1個に限られず、例えば青色のサブピクセルが2つなど、各色のサブピクセルが複数配置された構成でもよい。また、ピクセルにおけるサブピクセルの配列は、赤色、緑色、青色の順番に限られず、これらを入れ替えた順番であってもよい。
【0070】
(6)有機EL素子1〜4では、画素電極を陽極、対向電極を陰極としたが、これに限られず、画素電極を陰極、対向電極を陽極とする逆構造であってもよい。
(7)対向電極が有する抵抗成分による電圧降下の影響を低減するためのバスバー(補助電極)を備えてもよい。