(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
本実施形態に係る装飾シート1は、何らかのデザインまたは何らかの情報が印刷されたシートである。
図1に示すように、この装飾シート1は、広告宣伝、方向指示、交通標識、道案内などの様々な目的で路面90に貼られる。シートに印刷されるデザインまたは情報は何ら限定されるものではなく、例えば、標識、文字、図形、広告、色、またはこれらの組合せであり得る。「路面」とは、アスファルト、コンクリート、石材などの材料で舗装された面である。路面の場所は限定されず、例えば、道路、広場、駐車場などの、人または車両が通行する場所であってもよいし、任意の建物の構内であってもよい。
【0011】
装飾シート1の具体的な構成は何ら限定されない。以下では一例として、特開2016−40110号公報に記載の路面用装飾シートを装飾シート1として説明する。
【0012】
図2に示すように、装飾シート1は、表面層2、意匠層3、接着剤層4、および基材層5をこの順に備える。なお、構成される層の数には限定はなく、例えば、装飾シートが、表面層2と意匠層3との間、あるいは意匠層3と接着剤層4との間に他の層を備えていてもよい。
【0013】
「表面層」とは、少なくとも、使用時に、表面に露出する面を有する層をいい、通常この表面上を人や車両などが通過する。「意匠層」とは、装飾シートに色彩(透明を含む)、模様、文字、図形等の意匠を付与することを主な目的とする層であり、印刷層を含む。ただし、意匠層は印刷層を含まなくてもよい。
【0014】
表面層2は、凹凸状の主表面2aを有する。主表面2aは、装飾シート1の最表面に位置する。換言すれば、表面層2の主表面2aと対向する面側に、意匠層3、接着剤層4、および基材層5が配置される。
【0015】
表面層2に形成される凹凸は、防滑性を付与できるものであれば、形状や構造は限定されない。例えば、ビーズを用いることで表面層2に凹凸を形成することができる。例えば
図2に示すように、表面層2は、意匠層3側から、第1のビーズ層6と第2のビーズ層7とをこの順で備える。第1のビーズ層6および第2のビーズ層7は、それぞれ樹脂8(8a,8b)と粒子9(9a,9b)とを含む。第1のビーズ層6に含まれる樹脂8aと、第2のビーズ層7に含まれる樹脂8bとは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。第1のビーズ層6に含まれる粒子9aと、第2のビーズ層7に含まれる粒子9bとは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
樹脂8としては、非粘着性の樹脂であればよく、粒子9との濡れ性が良好で膜強度および耐溶剤性に優れた樹脂を用いてもよい。また、樹脂8としては、耐溶剤性の面から架橋型の樹脂を用いてもよい。樹脂8の例として、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0017】
粒子9としては、例えば無機材料または有機材料で形成された略球状の粒子であり、非粘着性であってもよい。粒子9の例として、アルミナ、シリカ、ガラス、その他の金属酸化物、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、またはウレタン樹脂で形成された粒子が挙げられる。樹脂で形成された粒子を粒子9として使用する場合は、耐溶剤性の面から当該樹脂が架橋されていてもよい。
【0018】
粒子9の粒子径のメジアンは、例えば、20μm〜60μmとすることができる。メジアンとは、粒子9における粒子径分布の中央値をいう。粒子9a,9bの粒子径のメジアンが互いに異なっている場合は、第1のビーズ層6に含まれる粒子9aの粒子径のメジアンが第2のビーズ層7に含まれる粒子9bの粒子径のメジアンよりも大きくてもよいし、第1のビーズ層6に含まれる粒子9aの粒子径のメジアンが第2のビーズ層7に含まれる粒子9bの粒子径のメジアンよりも小さくてもよい。
【0019】
ビーズ層6,7中の樹脂8と粒子9との質量比(樹脂8:粒子9)は、例えば8:2〜1:9とすることができる。
【0020】
第1のビーズ層6は、樹脂8aに粒子9aを添加および混合した後、意匠層3の一面上に、例えばナイフコーティングなどの従来公知の方法により塗布し乾燥させて得ることができる。第2のビーズ層7は、樹脂8bに粒子9bを添加および混合した後、あらかじめ作製した第1のビーズ層6の意匠層3と反対側の面上に、例えばナイフコーティングなどの従来公知の方法により塗布し乾燥させて得ることができる。第1のビーズ層6および第2のビーズ層7を塗布する際の塗布重量は、例えば10g/m
2〜50g/m
2とすることができる。
【0021】
ビーズ層6,7の厚さは、例えば、それぞれ10μm〜100μmとすることができ、また、20μm〜80μmとすることもできる。
【0022】
第1のビーズ層6および第2のビーズ層のいずれにおいても、粒子9が樹脂8から露出せず、粒子9の表面が樹脂8で覆われてもよい。
【0023】
本実施形態では、表面層2は第1のビーズ層6と第2のビーズ層7の2層から構成されることにより、凹凸形状の主表面2aを有するが、表面層は、一つのビーズ層のみを有してもよいし、3以上のビーズ層を有してもよい。表面層に凹凸を形成する手段は、ビーズに限られず、例えば、樹脂層自身にエンボス加工を施すことで凹凸形状を形成してもよい。表面層の凹凸形状の主表面上にさらに保護層が形成されてもよい。この保護層は、例えば、路面への装飾シートの貼り付け施工後に、コーティングにより形成することができる。
【0024】
意匠層3は、例えば
図2に示すように、表面層2側から、透明フィルム層10と、透明フィルム層10の一面上に形成された印刷層11とをこの順で備える。
【0025】
透明フィルム層10には、意匠層3の基材としての役割を果たす強度(剛性)を有するフィルムを用いることができる。このようなフィルムとして、例えばアクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、またはフッ素系ポリマーからなるフィルムを使用することができる。例えば、印刷性の点からアクリル系ポリマーが用いられてもよい。透明フィルム層の厚さは、例えば、3μm〜500μmとすることができ、また、5μm〜300μmとすることもできる。
【0026】
印刷層11は、水性インク、有機溶媒系インク、またはUVインクを用いた各種インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、静電印刷、またはオフセット印刷等を用いて透明フィルム層10上に形成することができる。
【0027】
本実施形態では、意匠層3は透明フィルム層10と印刷層11とから構成されるが、意匠層は、例えば、プラスチックを着色した1以上の着色フィルム層から構成されてもよい。
【0028】
基材層5は、装飾シート1が路面に貼付された際に、路面を構成する成分(例えばアスファルト)を浸透させないような化学的安定性を有してもよい。基材層5は、装飾シート1を路面に貼付した際に、路面の凹凸に追従できる延性を有してもよい。このような基材層5として、例えば、アルミニウム、またはアルミニウム合金等の金属フィルムを用いることができる。基材層5の厚さは、例えば20μm〜200μmとすることができる。
【0029】
接着剤層4は、65℃における弾性率が0.3MPa以上となるように構成されてもよい。接着剤層4の65℃における弾性率が0.3MPa以上であると、高温環境下(例えば50℃以上)において装飾シート1を使用した場合でも、車両の据え切りによる装飾の歪みを抑制することができる。同様の観点から、接着剤層4の65℃における弾性率は、0.35MPa以上、あるいは0.4MPa以上とすることもできる。一方、加工性の観点から、接着剤層4の65℃における弾性率は10GPa以下、5GPa以下、または1GPa以下であってもよい。ここで、「弾性率」とは、昇温速度5℃/秒で測定した貯蔵弾性率(G’)を意味する。
【0030】
このような接着剤層4は、例えばポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、塩化ビニル系接着剤などの感熱接着剤から形成される感熱接着剤層とすることができる。耐候性と色味の観点から、アクリル系接着剤が選ばれてもよいし、特に感熱接着剤が選ばれてもよい。例えば、接着剤層4は、20℃においては粘着性を殆ど示さず、100℃以上において粘着性を示す感熱接着剤層であってもよい。このような接着剤層4として、例えば、0℃以上のTgを有する第1のアクリルポリマーと、0℃未満のTgを有する第2のアクリルポリマーとを含有し、第1のアクリルポリマー100重量部に対して第2アクリルポリマーを100重量部〜230重量部含有する接着剤を使用してもよい。さらに、接着剤は、65℃で固形であり融点が80℃以上の粘着付与剤を含んでもよい。このような粘着付与剤として、例えば、ロジンエステルやテルペンフェノールなどを使用できる。接着剤は架橋剤を含まなくてもよい。
【0031】
接着剤層4は、隠蔽性を向上させる(装飾シート1の表面層2側から基材層5が見えないようにする)観点から、上記の接着剤に加えて顔料、染料等をさらに含有してもよい。接着剤層4は、意匠性を向上させる観点から、酸化チタン等の白色顔料をさらに含有してもよい。酸化チタンの含有量は特に限定されないが、接着剤層4中に15重量%以上、より好ましくは20重量%以上含むことで、良好な隠蔽性を付与することができる。酸化チタンの含有量は、分散性、接着性を維持するために、接着剤層4中に50重量%以下であってもよい。
【0032】
装飾シート1における高温での車両の据え切り耐性をより確実なものとするためには、装飾シート1は、65℃における弾性率が0.3MPa未満であるような接着剤層、例えば粘着剤層を含まなくてもよい。装飾シート1で用いられる接着剤層が複数層ある場合は、全ての接着剤層において、65℃における弾性率が0.3MPa以上であってもよい。あるいは、接着剤層のみならず、装飾シート1を構成する全ての層において、65℃における弾性率が0.3MPa以上であってもよい。
【0033】
装飾シート1は周知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に製造法の一例を示す。
【0034】
ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムライナーに、透明フィルム層10を構成する樹脂をナイフコート等により塗布および乾燥して透明フィルム層10を形成する。得られた透明フィルム層10のライナーと反対側の面に、第1のビーズ層6を構成する樹脂8aおよび粒子9aを含有する溶液を塗布し乾燥させて第1のビーズ層6を形成する。続いて、第2のビーズ層7を構成する樹脂8bおよび粒子9bを含有する溶液を塗布し乾燥させて第2のビーズ層7を形成する。これにより、表面層2が形成される。
【0035】
透明フィルム層10からライナーを剥がし、その面にインクジェットプリンターなどにより、印刷を施して印刷層11を形成することにより意匠層3を形成する。続いて、意匠層3に、一面に接着剤層4が配置された基材層5を貼り合わせて装飾シート1を得る。
【0036】
既に述べたように装飾シートの構造は限定されるものではなく、例えば、装飾シート1よりも簡易な構造を有する装飾シートが用いられてもよい。簡易な構造の装飾シートの例として、表面にガラスビーズが配置された合成ゴム系シート層と合成ゴム系粘着層とを有する装飾シートが挙げられる。
【0037】
本実施形態では、装飾シート1を路面に貼るために自動締固め機20を用いる。自動締固め機とは、自機の動力により、荷重、振動、衝撃などの物理的作用を路面に及ぼすことが可能な機械であり、自動転圧機と呼ばれることもある。従来から、自動締固め機は、路面の構成要素(例えば土、路床、路盤など)の空隙を減少させて路面を高密度な状態にするために用いられている。典型的には、自動締固め機は、道路の舗装工事に際して、舗装前に地盤を固めるために用いられる。本実施形態の特徴の一つは、この自動締固め機を用いて装飾シートを路面に貼り付ける点にある。自動締固め機20は自走式(人が押したり引いたりしなくても自機の動力により自動的に進むことが可能であること)であってもよい。
【0038】
自動締固め機20の種類は限定されない。例えば、自動締固め機20は、プレートコンパクタやダンパなどの平板式であってもよいし、ロードローラ、タイヤローラ、ダンピングローラ、コンバインドローラなどのローラ式であってもよい。いずれにしても、自動締固め機20は路面に接触する面を備える。例えば、ローラ式の自動締固め機ではローラの外周面がその接触面に相当し、平板式の自動締固め機では、いちばん下に位置する平板の下面(底面)がその接触面に相当し、これは接触面が平板により規定されることを意味する。
【0039】
一例として、振動または衝撃により装飾シート1を上から叩くことで該装飾シート1に圧力を掛ける平板式の自動締固め機20(例えば、プレートコンパクタまたはダンパ)が用いられてもよい。
【0040】
装飾シート1を路面により確実に貼り付けるために、自動締固め機20の接触面の少なくとも一部に緩衝材30が取り付けられてもよい。緩衝材は、外部から伝わる衝撃または振動を和らげる機能を持つ資材である。接触面に緩衝材30が取り付けられた自動締固め機20を用いることで、装飾シート1を傷つけることなく路面90にしっかりと貼り付けることができる。この目的を達成することができるのであれば緩衝材30の種類および材料は何ら限定されない。例えば、ゴム板(天然ゴムまたは合成ゴム)、ウレタンマット、またはカーペットが緩衝材30として用いられてもよい。特に、緩衝材30としてゴム板を使用すると、装飾シート1の路面への高い追従性を得ることが可能になる。追従性とは、装飾シートが路面の凹凸内に進入して貼り付くという性質である。
【0041】
緩衝材30の厚さおよび硬度は、自動締固め機20が路面に与える力の量(例えば、荷重、振動の強さ、または衝撃の強さ)と、装飾シート1の確実な貼付との双方を考慮して設定されてもよい。例えば、緩衝材30がウレタンマットである場合には、硬度は、JIS K 6400−2(D法)に規定された方法により測定される値として30N〜122Nであってよく、厚さは1mm〜10mmであってもよい。緩衝材30がゴム板であれば、硬度は、タイプAデュロメータを用いて測定される値として44〜90であってよく、厚さは1mm〜10mmであってもよい。例えば、厚み2mmのゴム板を緩衝材として使用する場合、タイプAデュロメータを用いて測定される硬度の値が60〜90の範囲であるゴム板を使用すれば、装飾シート(例えば、
図2に示す装飾シート1)の路面への追従性を高くできる。
【0042】
自動締固め機20の接触面に緩衝材30を取り付ける方法も限定されないが、例えば両面粘着テープまたは粘着剤を用いて緩衝材30を接触面に貼ってもよい。接触面に取り付けられる緩衝材30の枚数は1でもよいし複数でもよい。複数の緩衝材30を接触面に沿って並べる場合には、緩衝材30同士の間を空けてもよいし空けなくてもよい。複数の緩衝材30を重ねることで緩衝材30全体としての厚さを調整してもよい。あるいは、自動締固め機20そのものの構成として、当初から(自動締固め機20の製造または流通の時点から)接触面が緩衝材30で形成されてもよい。
【0043】
次に、
図3および
図4を参照しながら、本実施形態に係る、路面への装飾シートの貼付方法を説明する。
図3および
図4では自動締固め機20の例としてプレートコンパクタを示すが、上述したように自動締固め機20の種類は何ら限定されない。なお、プレートコンパクタとしては、ハンドガイドによるプレート(平板)式の振動締固め機を使用できる。この振動締固め機は、平板の上に搭載された起振機を備え、偏心軸を高速回転させて遠心力を発生させてその振動により締固めと自走とを同時に行う機械である。
【0044】
まず、作業者は装飾シート1と緩衝材30付きの自動締固め機20とを用意する。作業者は、当初から緩衝材30が取り付けられた自動締固め機20を作業現場に搬入してもよいし、作業現場で緩衝材30を自動締固め機20に取り付けてもよい(用意工程)。
図3は、接触面の全体に緩衝材30が取り付けられた自動締固め機20(プレートコンパクタ)を示す。続いて、作業者は装飾シート1を路面90の所望の位置に手作業などにより仮貼りする。この仮貼り工程では、装飾シート1はずれない程度に貼られるに過ぎない。作業者は、路面90に接着剤を塗布した後に装飾シート1を貼ってもよい。あるいは、装飾シート1の裏面に予め接着層が設けられてもよい。接着剤または接着層の例として、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、およびクロロプレン系接着剤が挙げられるが、装飾シート1を路面90に貼るための接着剤の種類は何ら限定されない。
【0045】
続いて、作業者は緩衝材30付きの自動締固め機20を作動させ、
図4に示すように、その自動締固め機20を装飾シート1上で動かすことでその装飾シート1に対して圧力を掛ける(圧着工程)。すなわち、作業者は自動締固め機20を用いて装飾シート1を路面90に圧着する。作業者は、自動締固め機20が装飾シート1の全面を通るように自動締固め機20を操作する。
図3および
図4の例では、自動締固め機20は自走式のプレートコンパクタであり、したがって路面90に沿って自動的に少しずつ移動するので、作業者は必要な場合に限って自動締固め機20の進行方向または位置を変えればよい。以上の処理により、
図1に示すように装飾シート1が路面にしっかりと貼り付けられる。
【0046】
図3および
図4では緩衝材30を自動締固め機20に取り付けたが、緩衝材の利用は必須ではない。自動締固め機に緩衝材を取り付けるか否かは、自動締固め機の性能、装飾シートの仕様、および路面の種類などの諸要素に基づいて決めてもよい。また、自動締固め機そのもの、並びに緩衝材の種類、硬度、および厚さも、装飾シートの仕様や路面の種類などの諸要素に基づいて決めてもよい。
【0047】
以上説明したように、本発明の一側面に係る路面への装飾シートの貼付方法は、装飾シートを路面上に仮貼りする仮貼り工程と、仮貼りされた装飾シートに対して自動締固め機により圧力を掛ける圧着工程とを含む。
【0048】
このような側面においては、自動締固め機の力を利用して装飾シートを路面に圧着させるので、人手による作業に比べて短時間で装飾シートを確実に路面に貼り付けることができる。
【0049】
他の側面に係る路面への装飾シートの貼付方法では、自動締固め機が、路面に接する接触面の少なくとも一部に緩衝材が取り付けられたものであり、圧着工程では、仮貼りされた装飾シートに緩衝材が接するように自動締固め機を該装飾シート上に位置させて、装飾シートに対して圧力を掛けてもよい。このように緩衝材を用いることで、圧着工程では、装飾シートには自動締固め機の部品そのものではなく緩衝材が当たるので、装飾フィルムを傷付けることなくしっかりと路面に貼り付けることができる。
【0050】
他の側面に係る路面への装飾シートの貼付方法では、緩衝材がゴム板であってもよい。緩衝材としてゴム板を用いることで、装飾フィルムを傷付けることなくしっかりと路面に貼り付けることができる。
【0051】
他の側面に係る路面への装飾シートの貼付方法では、自動締固め機がプレートコンパクタであってもよい。一般に接触面が平板で規定されるプレートコンパクタを用いることで、その接触部分を点または線にする場合よりも装飾シートをしっかりと路面に貼り付けることができる。
【0052】
他の側面に係る路面への装飾シートの貼付方法では、自動締固め機が、振動または衝撃により装飾シートを上から叩くことで該装飾シートに圧力を掛けてもよい。装飾シートを叩きながら貼り付けることで、装飾シートをしっかりと路面に貼り付けることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
【0054】
自動締固め機に取り付ける緩衝材の種類、厚さ、および硬度を変えながら、アスファルト路面(透水性アスファルト)への装飾シートの貼付を評価した。自動締固め機として三笠産業社製のプレートコンパクタ「MVC−40GB」を用意した。装飾シートとして、1m×1mの寸法に切ったスリーエム社製のペイントフィルム「CPG−II」を用意した。当該フィルムは、
図2に示すように、表面層、意匠層、接着剤層、および基材層をこの順に備える。
【0055】
用意した緩衝材はウレタンマット、ゴム板、およびカーペットの3種類であり、より具体的には以下の通りである。ウレタンマットの硬度はJIS K 6400−2(D法)に規定された方法により測定された値である。ゴム板の硬度はタイプAデュロメータを用いて測定された値である。
[ウレタンマット]
(1)ブリヂストン社製「エバーライトSF(HR−13)」。硬度:30N。厚さ:2mm,5mm,10mmの3種類。
(2)ソフトプレン社製「ラバーライク(ER−6)」。硬度:70N。厚さ:2mm,5mm,10mmの3種類。
(3)ソフトプレン社製「ラバーライク(ER−1)」。硬度:122N。厚さ:2mm,5mm,10mmの3種類。
[ゴム板]
(1)オーサカゴム社製「B054」。硬度:44。厚さ:1mm,2mm,10mmの3種類。
(2)オーサカゴム社製「B010」。硬度:65。厚さ:1mm,2mm,10mmの3種類。
(3)オーサカゴム社製「B079」。硬度:90。厚さ:1mm,2mm,10mmの3種類。
[カーペット]
・東リ社製ヴェニーチェ「GX−9150V」。厚さ:2mm。
【0056】
緩衝材付きの自動締固め機を用いた実験を、緩衝材の種類、硬度、および厚さに応じて実施例1〜19とする。これらの実施例ではいずれも、一枚の矩形の緩衝材の周縁部に幅12mmの両面テープ(スリーエムジャパン社製 商品名:超強力両面テープ接合維新(商標)BR12)を貼り、自動締固め機の接触面(底面)にその緩衝材を取り付けた。
【0057】
アスファルト路面への装飾シートの貼付は次のように行った。まず、路面および装飾シートの裏面に、スリーエムジャパン社製の接着剤(商品名:CPG Adhesive I)を塗布し、その接着剤を乾燥させた後、装飾シートを路面に仮貼りした(仮貼り工程)。続いて、装飾シートの全面にわたって自動締固め機を動かしながら装飾シートを路面に圧着した(圧着工程)。
【0058】
実施例20として、緩衝材を接触面に取り付けることなく自動締固め機(MVC−40GB)で装飾シートをアスファルト路面に貼り付ける実験を行った。実施例20での、アスファルト路面への装飾シートの貼付の手順は、実施例1〜19と同じである。
【0059】
比較例として、自動締固め機(MVC−40GB)を用いず、オーエッチ工業社製白ゴムハンマ「GHW−M」を用いて人手で装飾シートをアスファルト路面に貼り付けた。
【0060】
路面の凹凸の深さに対する装飾シートの追従度を評価した。追従度とは、路面の凹凸の深さに対して、装飾シートがその凹凸内にどれだけ深く進入して貼り付いたかを示す百分率である。装飾シートが路面の凹凸の最深部まで到達して貼り付いた場合には追従度を100%とし、装飾シートが路面の凹凸内に全く進入しない場合の追従度を0%として、各装飾シートの追従度を評価した。
【0061】
各実施例および比較例における追従度の結果を表1に示す。実施例1〜9は緩衝材としてウレタンマットを用いた実験であり、実施例10〜18は緩衝材としてゴム板を用いた実験であり、実施例19は緩衝材としてカーペットを用いた実験である。
【表1】
【0062】
仮貼り工程および圧着工程を含む全体の作業時間は、比較例では約30分であったが、実施例では約5分であった。
【0063】
以上、本発明をその実施形態および実施例に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。