特許第6861510号(P6861510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861510筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861510
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20210412BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20210412BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20210412BHJP
   B43K 5/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C09D11/17
   B43K7/00
   B43K8/02
   B43K5/00
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-239207(P2016-239207)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-119839(P2017-119839A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-257571(P2015-257571)
(32)【優先日】2015年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 展子
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124360(JP,A)
【文献】 特開2003−327891(JP,A)
【文献】 特開2001−040263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/16
B43K 5/00,7/00,8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ被覆金属顔料粒子と、凝集コントロール剤と、溶媒と、を含んでなり、前記シリカ被覆金属顔料粒子に対する、前記凝集コントロール剤の配合比が、質量基準で0.01倍〜5.0倍であり、前記凝集コントロール剤が、弾性重合体とセルロース誘導体であって、前記弾性重合体が、スチレン−ブタジエンエラストマーまたはアクリル系エラストマーであり、前記セルロース誘導体が、エーテル化度が0.65〜0.85であるカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。
【請求項2】
粘度が、20℃、剪断速度380sec−1、回転速度100rpmで、1mPa・s〜50mPa・sである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記弾性重合体のガラス転移温度(Tg)が、1℃〜70℃である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤を更に含んでなり、前記界面活性剤が、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびコハク酸系界面活性剤から1種以上選択された、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
消泡剤を更に含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属顔料粒子が、アルミニウム顔料粒子である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリオレフィン樹脂粒子を更に含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光輝性を有する筆記線を残すことができる筆記具用水性インキ組成物として、特許文献1のような、アルミニウムなどの金属粉末、ゲル化剤および球状樹脂粒子を含むインキ組成物が知られている。
【0003】
類似の筆記具用水性インキ組成物として、特許文献2には、水、水溶性溶剤、およびケイ酸塩で被覆された金属顔料粒子を含むインキ組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記したような従来のインキ組成物では、金属粉末や金属顔料粒子などの光輝性をもたらす顔料の比重が大きいため、時間の経過に伴って顔料が沈降して、所謂ハードケーキを形成し、その結果、振とうしても顔料が再分散されないなどの課題を有していた。特に、低粘度のインキ組成物においては、顔料が沈降しやすいため、このハードケーキ化を防止し、顔料を再分散させることは大きな課題であった。この様な課題を解決するため、特許文献3には、セルロースなどの水不溶性物質を表面に被覆した板状顔料を含有させたインキ組成物が提案されている。しかしながら、インキ組成物のハードケーキ化の防止や、顔料の再分散性において、十分に解決するものではなかった。
【0005】
また、上記の特許文献1〜3のような従来のインキ組成物を筆記具に用いて、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に筆記した場合、筆記線がかすれたり線縮みしたりするなどして、良好な筆記線が得られないなど、非浸透性の記録媒体に対する筆記性において、改良の余地があった。
【0006】
さらに、上記の特許文献1〜3のような従来のインキ組成物を用いて形成させた筆記線は耐擦性が低いため、摩擦などにより剥がれてしまう可能性が高く、特に、非浸透性の記録媒体に対する筆記線の耐擦性は低かった。そのため、より耐擦性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−126715号公報
【特許文献2】特開2014−231553号公報
【特許文献3】特開2013−124360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、今般、金属顔料粒子を含んでなる水性インキ組成物に特定の成分を配合することにより、インキ組成物のハードケーキ化を防止し、経時後、容易に顔料を再分散することができ、さらに、紙などの浸透性の記録媒体や、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する筆記性をも改良することができるとの知見を得た。
【0009】
本発明はこのような知見に基づくものであり、その目的は、ハードケーキを形成せず、再分散性良好で、経時安定性に優れ、浸透性および非浸透性の両記録媒体に対する筆記性、発色性、および光輝性が良好であるインキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、シリカ被覆金属顔料粒子と、凝集コントロール剤と、溶媒と、を含んでなり、前記シリカ被覆金属顔料粒子に対する、前記凝集コントロール剤の配合比が、質量基準で0.01〜5.0倍であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による筆記具は、上記筆記具用水性インキ組成物を収容してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハードケーキを形成せず再分散性良好で、経時安定性に優れ、浸透性および非浸透性の両記録媒体に対する筆記性、発色性、光輝性が良好であるインキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0014】
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、「水性インキ組成物」と表す。)は、シリカ被覆金属顔料粒子と、凝集コントロール剤と、溶媒と、を含んでなり、シリカ被覆金属顔料粒子と凝集コントロール剤を特定比率に設定されたものである。以下、本発明による水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
(シリカ被覆金属顔料粒子)
シリカ被覆金属顔料粒子とは、金属顔料粒子がシリカにより被覆されたものである。 金属顔料粒子がシリカにより被覆されていることで、水性インキ組成物中の金属顔料粒子が経時的に沈降してハードケーキ化してしまうことを防止し、該金属顔料粒子の再分散性を向上させることができる。また、シリカは、溶媒との反応性が低く、安定性が高い。そのため、シリカ被覆金属顔料粒子を用いると、金属顔料粒子と溶媒との反応等によって起こる気泡の発生を抑制することができ、経時安定性の優れた水性インキ組成物を得ることができる。前記シリカ被覆金属顔料粒子の中でも、経時安定性が優れることを考慮すれば、金属顔料粒子の表面がシリカにより被覆されたものが好ましい。
【0016】
前記金属顔料粒子の材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ブロンズ、およびこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、比重が小さく、金属顔料粒子の沈降およびそれに伴うハードケーキ化ならびに再分散性の低下を防止することができることから、アルミニウムが好ましい。
【0017】
前記金属顔料粒子の形状は、任意に選択できるが、光をより拡散し、光輝性を向上させることができるため針状、板状または方形であることが好ましい。
【0018】
シリカによる金属顔料粒子の被覆量、すなわち金属顔料粒子の質量100質量部に対するシリカの質量の割合は、3〜20質量部であることが好ましく、11〜20質量部であることがより好ましい。被覆量が上記数値範囲内であれば、金属顔料粒子の光輝性を損なうこと無く、水性インキ組成物のハードケーキ化を十分に防止することができる。
【0019】
シリカ被覆金属顔料粒子の平均粒子径は、1〜30μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましく、3〜10μmであることがさらに好ましい。前記金属顔料粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成された筆記線の光輝性を維持することができるとともに、前記金属顔料粒子が水性インキ組成物中において沈降した場合であっても、その再分散性を向上させることができる。また、平均粒子径が上記数値範囲内の前記金属顔料粒子を含む水性インキ組成物を、マーキングペンなどの筆記具に使用した場合、インキ吐出性を向上させることができる。なお、前記金属顔料粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。本明細書では、シリカ被覆金属顔料粒子の「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。
【0020】
シリカ被覆金属顔料粒子の平均粒子径をDμm、平均厚みをdμm、とした場合、前記金属顔料粒子のアスペクト比(D/d)は、1〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。前記金属顔料粒子のアスペクト比(D/d)が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成させた筆記線に金属顔料粒子の高い光輝性を与えることができる。また、水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、ペン先でのインキ詰まりを抑制することができる。
【0021】
水性インキ組成物におけるシリカ被覆金属顔料粒子の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1〜15質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。前記金属顔料粒子の含有量が上記数値範囲内である水性インキ組成物を筆記具に用いた場合、ペン先からのインキ吐出性の低下を防止することができるとともに、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成させた筆記線の光輝性を維持することができる。
【0022】
(凝集コントロール剤)
水性インキ組成物は、凝集コントロール剤を含んでなる。凝集コントロール剤は、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、シリカ被覆金属顔料粒子の再分散性を向上させることができる。凝集コントロール剤としては、例えば、弾性重合体や、セルロース誘導体などを用いることができ、これらの中から2種以上を併用することが特に好ましい。
【0023】
シリカ被覆金属顔料粒子に対する、凝集コントロール剤の配合比は、質量基準で、0.01〜5.0倍である。より好ましくは、0.1〜2.5倍であり、さらに好ましくは、0.5〜2.0倍である。配合比が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、かつ、振とうや撹拌することで、前記金属顔料粒子を容易に再分散させることが可能な凝集状態を作ることができるようになり、前記金属顔料粒子の再分散性を向上することができる。さらに、配合比が上記数値範囲内であれば、凝集コントロール剤によって、前記金属顔料粒子の光輝性が遮られることなく、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成された筆記線に高い光輝性を与えることができる。また、前記金属顔料粒子の非浸透性の記録媒体に対する定着性を向上させることができるため、筆記線の耐擦性をも向上させることができる。
【0024】
水性インキ組成物における凝集コントロール剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜25質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。凝集コントロール剤の含有量が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、前記金属顔料粒子の再分散性を向上させることができる。さらに、凝集コントロール剤の含有量が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物の粘度を、20℃、剪断速度380sec−1、回転速度100rpmにおいて、1〜50mPa・sに設定しやすく、前記インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、前記インキ組成物がペン先の筆記先端部に供給到達されるまでの時間が短くなり、インキ吐出性が向上する。そのため、浸透性および非浸透性の両記録媒体に対する筆記性を向上させることができる。
【0025】
(弾性重合体)
水性インキ組成物に弾性重合体を含有させることにより、シリカ被覆金属顔料粒子の再分散性を向上させることができる。また、弾性重合体は、水性インキ組成物の定着性を向上させ、これを用いて形成される筆記線の耐擦性、特に、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する筆記線の耐擦性をさらに向上させることもできる。
【0026】
本発明において弾性重合体とは、固体状態である時に弾性を有する重合体をいう。このような重合体としては、スチレンと、ブタジエン、イソプレン、エチレン・ブチレン、エチレン・プロピレン、ビニルイソプレンなどのオレフィンなどと、から成るスチレン−オレフィン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー、スチレン−アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、酢酸ビニル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、フッ素系エラストマーなどのエラストマー類、天然ゴム、シリコンゴムなどの合成ゴム類、アイオノマー樹脂などのエチレン系樹脂などが挙げられる。これらのうちスチレン−ブタジエンエラストマー、アクリル系エラストマーが好ましく用いられる。弾力性を有する筆記線にして、筆記した記録媒体を折り曲げるなどしても、筆記線割れを抑制しやすい(曲げ強度)効果も付与できるため、スチレン−ブタジエンエラストマーを用いることがさらに好ましい。また、弾性重合体は、そのままインキ中に含有させても良く、予め溶媒中に安定に分散させたエマルジョンとして、含有させても良い。
【0027】
スチレン−ブタジエンエラストマーについては、前記金属顔料粒子の再分散性、水性インキ組成物の定着性や経時安定性を考慮すれば、スチレン−ブタジエンエラストマーの平均粒子径は300nm以下であるものが好ましく、より好ましくは200nm以下である。スチレン−ブタジエンエラストマーの平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
スチレン−ブタジエンエラストマーのpHは、5〜10であることが好ましく、さらには、6〜9であることが好ましい。スチレンブタジエン−エラストマーのpHが上記数値範囲内であれば、前記金属顔料粒子の腐食や、分散性の低下などを防止することができる。
また、スチレン−ブタジエンエラストマーを、溶媒中に安定に分散させたエマルジョンとして用いる場合は、該スチレン−ブタジエンエラストマーエマルジョンの粘度は、25℃において、100〜350mPa・sであることが好ましい。スチレン−ブタジエンエラストマーエマルジョンの粘度が、上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、前記インキ組成物が、ペン先の筆記先端部に供給到達されるまでの時間が短くなるため、インキ吐出性が向上し、浸透性および非浸透性の両記録媒体に対する筆記性を向上させることができる。また、スチレン−ブタジエンエラストマーを構成する全体量に対して、スチレンの含有量は60mol%以下のものが好ましく、50mol%以下であるものがより好ましい。
【0028】
弾性重合体の分子量は特に限定されず、目的とする水性インキ組成物の物性に応じて、例えば重量平均分子量が1,000以上であるものが好ましい。また、一方で重量平均分子量は1,000,000以下であるものを用いることができる。
【0029】
弾性重合体のガラス転移温度(Tg)は、1〜70℃であることが好ましく、2〜60℃であることがより好ましく、さらには、2〜20℃であることが好ましい。弾性重合体のガラス転移温度が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成された筆記線の光輝性と、筆記線の耐擦性を向上させることができる。なお、弾性重合体のTgは、示差走査熱量測定により求めることができる。
【0030】
水性インキ組成物における弾性重合体の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜15.0質量%であることが好ましく、0.1〜8.0質量%であることがより好ましく、0.1〜6.5%であることがさらに好ましい。弾性重合体の含有量が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、前記金属顔料粒子の再分散性を向上させることができる。また、上記配合比である水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する筆記性を向上させ、筆記線の定着性および曲げ強度をも向上させることができる。
【0031】
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースおよびそれらの塩などが挙げられる。これらのうちカルボキシメチルセルロースは、水性インキ組成物のハードケーキ化ならびに、シリカ被覆金属顔料粒子の再分散性の低下をより防止することができるので好ましい。これは、カルボキシメチルセルロースに含まれるカルボキシル基が、前記金属顔料粒子に吸着しやすく、該金属顔料粒子同士の凝集を阻害することが理由であると考えられる。さらに、カルボキシメチルセルロースは、水性インキ組成物中での溶解性が良好でもあるため好ましい。
【0032】
さらに、より水性インキ組成物のハードケーキ化ならびに前記金属顔料粒子の再分散性の低下を防止することを考慮すれば、カルボキシメチルセルロースの重量平均分子量が50,000以下であるものが好ましく、より考慮すれば、前記重量平均分子量が35,000以下が好ましい。さらに、前記セルロール誘導体のセルロース鎖の平均重合度については、筆記性と前記水性インキ組成物のハードケーキ化ならびに、前記金属顔料粒子の再分散性を考慮すれば、前記平均重合度は50〜300が好ましい。これは、前記平均重合度が300以下であると、インキ粘度が高くなりやすくなることを防ぎ、浸透性および非浸透性の両記録媒体に対する筆記性を良好に保つことができる。前記平均重合度が50以上であると、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、前記金属顔料粒子の再分散性を良好に保つことができる。より上記を考慮すれば、前記平均重合度は100〜250が好ましい。
また、インキ中での溶解安定性を考慮すれば、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は、0.65〜0.0.85であるものを用いることが好ましい。
【0033】
水性インキ組成物におけるセルロース誘導体の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましく、0.5〜3.5質量%であることがさらに好ましい。セルロース誘導体の含有量が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、前記金属顔料粒子の再分散性を向上することができる。また、上記配合比のインキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、浸透性および非浸透性の両記録媒体において、色わかれやかすれることなどなく良好な筆記線を得ることができるとともに、非浸透性の記録媒体に対する筆記線の耐擦性を向上させることができる。
【0034】
凝集コントロール剤としては、弾性重合体とセルロース誘導体を併用することが特に好ましい。弾性重合体とセルロース誘導体を併用した水性インキ組成物では、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、前記金属顔料粒子の再分散性を更に向上することができるともに、前記水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に使用した場合、浸透性および非浸透性の記録媒体に対する筆記性を更に向上させることができる。
セルロース誘導体に対する、弾性重合体の配合比は、質量基準で、0.1〜10倍であることが好ましく、0.3〜5倍であることがより好ましく、さらに好ましくは、1〜3倍である。セルロース誘導体に対する、弾性重合体の配合比が、上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に用いた場合、非浸透性の記録媒体に対する筆記線の耐擦性を向上させることができる。
【0035】
(溶媒)
溶媒としては、水、および水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水としては、イオン交換水、蒸留水および水道水などの慣用の水を用いることができる。また、水と有機溶剤との混合溶媒を用いる場合、有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ミネラルスピリットなどを用いることができる。なお、有機溶剤の含有率は、溶媒の総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
水性インキ組成物における溶媒の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、20〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。溶媒の含有量は、上記数値範囲内であれば、前記水性インキ組成物の安定性を保つことができるとともに、良好な筆記性を得ることができる。
【0037】
(界面活性剤)
水性インキ組成物は、界面活性剤を含んでなることが好ましい。前記界面活性剤としては、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびコハク酸系界面活性剤などが挙げられ、前記界面活性剤は、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびコハク酸系界面活性剤の中から、1種以上選択して用いることが好ましい。水性インキ組成物に上記のような界面活性剤を含有させることで、表面張力を下げて、フィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する水性インキ組成物のぬれ性を改善し、該非浸透性の記録媒体に対する筆記性を向上させることができる。
【0038】
前記界面活性剤の中でも、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を含んでなることが好ましい。これは、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤は非常に安定性が高く、よりぬれ性の改善効果を持続的に発揮し、非浸透性の記録媒体での筆記性を向上させやすいためである。また、すでに、記録媒体上に筆記線などとしてインキ組成物があった場合に、上から重ねて書いても、それらの筆記線などが色わかれしたり、かすれたり、色が混じりあったり、線縮みを起こしたりなどすることがなく、良好に筆記することが可能となる(重ね書き性能が向上する)ため、好ましい。
さらに、その他の界面活性剤として、フッ素系界面活性剤は、前記界面活性剤の中でも、少量で表面張力を低減しやすく、よりぬれ性の改善効果を発揮することができるため、より重ね書き性能を向上させやすい。また、シリコーン系界面活性剤は、化学的に安定であり、他の物質を侵さず経時的安定性に優れ、環境に対する安全性においても良好でありながら、濡れ性を改善でき、重ね書き性能を向上させやすい。そのため、本発明では、少量含有することで効果を発揮しやすいフッ素系界面活性剤や、経時安定性および環境安全性が良好であるシリコーン系界面活性剤を含んでなることが好ましい。
よって、本発明においては、ぬれ性を改善し、非浸透性の記録媒体に対する筆記性および重ね書き性能が向上することや、水性インキ組成物中の安定性を考慮すれば、少なくともアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤を用いることが好ましく、さらには、前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と少量で効果を発揮しやすいフッ素系界面活性剤とを併用して用いること、もしくは、前記アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と経時安定性および環境安全性が良好であるシリコーン系界面活性剤とを併用して用いることが、より好ましい。
【0039】
アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤としては、例えば、アセチレンアルコール系界面活性剤、およびアセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。特に、アセチレングリコール系界面活性剤は、筆記後の筆記線の揮発性、すなわち乾燥性に優れることで、短時間で耐擦性を付与することができるため、好ましい。
さらに、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤のHLB値については、ぬれ性をより向上することを考慮すれば、HLB値7以上であることが好ましい。さらにHLB値10以上であると、水性インキ組成物中での親水性が強くなり、水に対して溶解しやすく、経時安定性が安定する傾向にあり、長期に渡り、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤の効果を保つことができるため、好ましい。
【0040】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロ基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。その中でも、フッ素系界面活性剤の構造式中にエチレンオキシドがあると、親水性が高く、水に対して溶解しやすく、経時安定性が高い傾向にあり、フッ素系界面活性剤の効果を長期に渡り保つことができるため、好ましい。特には、本発明において、表面張力を低減しやすく、よりぬれ性の改善効果を発揮することで重ね書き性能を向上させやすい、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を用いることが、さらに好ましい。
【0041】
また、非浸透性の記録媒体に対する筆記性や、重ね書き性を考慮すると、グリフィン法によって求められるフッ素系界面活性剤のHLB値は、5〜15であることが好ましく、より考慮すれば、フッ素系界面活性剤のHLB値は、5〜9であることがより好ましい。尚、グリフィン法によって求められるHLB値は「20×親水部の式量の総和/分子量」で定義される。
また、フッ素系界面活性剤0.1%水溶液の表面張力は、20mN/m以下であることが好ましい。尚、表面張力は、23℃条件下において、ウィルヘルミー法にて測定することができる。
【0042】
水性インキ組成物における前記フッ素系界面活性剤の含有量は、水性インキ組成物の表面張力を下げて、非浸透性の記録媒体に対するぬれ性を改善し、該非浸透性の記録媒体に対する筆記性や重ね書き性を向上することを考慮すれば、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.005〜1.5質量%であることが好ましく、より重ね書き性の向上やインキ経時安定性を考慮すれば、0.005〜0.5質量%であることがより好ましく、より考慮すれば、0.005〜0.3質量%であることが好ましい。
【0043】
シリコーン系界面活性剤としては、反応性シリコーンオイルや非反応性シリコーンオイルが挙げられ、中でも、経時安定性の優れる非反応性シリコーンオイルを用いることが好ましい。さらに、前記非反応性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラキル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル等が挙げられるが、特には、本発明において、水との溶解性や経時安定性に優れ、さらには環境安全性においても良好であり、重ね書き性能を向上させやすい、ポリエーテル変性シリコーンオイルを選択して用いることが好ましい。
【0044】
また、非浸透性の記録媒体に対する筆記性や、重ね書き性をさらに考慮すると、シリコーン系界面活性剤のHLB値は、10〜18であることが好ましく、より考慮すれば、10〜15であることが好ましい。
【0045】
水性インキ組成物における前記シリコーン系界面活性剤の含有量は、水性インキ組成物の表面張力を下げて非浸透性の記録媒体に対するぬれ性を改善し、該非浸透性の記録媒体に対する筆記性や重ね書き性を向上させることを考慮すれば、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜3質量%であることが好ましく、より重ね書き性の向上やインキ経時安定性の向上を考慮すれば、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
【0046】
コハク酸系界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホコハク酸塩であるアルキルスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0047】
水性インキ組成物における前記界面活性剤の総含有量は、非浸透性の記録媒体に対するぬれ性を改善し、該非浸透性の記録媒体に対する筆記性や重ね書き性を向上することを考慮すれば、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜3質量%であることが好ましく、より重ね書き性の向上やインキ経時安定性を考慮すれば、0.1〜1.5質量%であることがより好ましく、より考慮すれば、0.1〜1.2質量%であることがより好ましい。
【0048】
(ポリオレフィン樹脂粒子)
水性インキ組成物は、ポリオレフィン樹脂を含んでなることが好ましい。水性インキ組成物が、ポリオレフィン樹脂を含んでなることで、水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。特に、非浸透性の記録媒体に対する筆記線の耐擦性の向上に効果的である。また、本発明で用いられる凝集コントロール剤は、筆記線の定着性を向上させる効果もあるため、ポリオレフィン樹脂粒子と併用することにより、筆記線の耐擦性をより向上させることができるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂粒子の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレンを用いる場合には、低密度ポリエチレン、直鎖状低分子ポリエチレン、高密度ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどを用いることができる。これらのポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、例えば重量平均分子量が500〜10000であるポリオレフィンが好ましく、重量平均分子量が3000〜8000であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の重量平均分子量が上記数値範囲内であれば、この水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。ポリオレフィン樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
【0049】
ポリオレフィン樹脂粒子の形状は、特に限定されず、球状、針状、板状、方形など任意の形状をとることができるが、球状形状であると、摩擦抵抗が小さくなる傾向にあることから、より高い滑性を筆記線に付与しやすいため、球状であることが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、0.1〜35μmであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、この水性インキ組成物をマーキングペンなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。また、高い耐擦性を付与しつつ、水性インキ組成物、およびその筆記線の光輝性も維持するという観点からは、0.1〜20μmであることがより好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法により測定することができる。
【0051】
水性インキ組成物におけるポリオレフィン樹脂粒子の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1.5質量%であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、ペン先からのインキ吐出性および水性インキ組成物、およびそれを用いて形成された筆記線の光輝性を維持することができるとともに、筆記線に対し、より高い滑性を付与することができる。
【0052】
また、シリカ被覆金属顔料粒子に対する、ポリオレフィン樹脂粒子の配合比は、質量基準で0.01〜1.0倍であることが好ましく、0.05〜0.5倍であることがより好ましい。配合比が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成された筆記線の光輝性を維持することができるとともに、筆記線に対し、さらに高い滑性を付与することができる。
【0053】
(水溶性アクリルポリマー)
水性インキ組成物は、水溶性アクリルポリマーを含んでなることが好ましい。本発明において水溶性アクリルポリマーとは、繰り返し単位にアクリル酸またはメタクリル酸を含み、側鎖に水溶性基を有するものである。この水溶性基は、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基であっても、またそれ以外の水溶性基であってもよい。水性インキ組成物に水溶性アクリルポリマーを含有させることにより、水性インキ組成物の定着性を向上させ、これを用いて形成される筆記線の耐擦性をさらに向上させることができる。さらに、水溶性アクリルポリマーがカルボキシル基を有することが好ましい。このような水溶性アクリルポリマーは、シリカ被覆金属顔料粒子に吸着して該金属顔料粒子同士の凝集を阻害するので、それらのハードケーキ化ならびに再分散性の低下を防止することができるためである。特に、上記した凝集コントロール剤と水溶性アクリルポリマーを併用することで、その効果が強く発現するので好ましい。
【0054】
水溶性アクリルポリマーとしては、水溶性アクリル樹脂、および水溶性スチレン−アクリル樹脂などを用いることができる。これらのポリマーの分子量は特に限定されないが、例えば重量平均分子量が1000〜100000であるものが好ましい。
【0055】
水性インキ組成物における水溶性アクリルポリマーの含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜7質量%であることが好ましく、0.3〜5質量%であることがより好ましく、0.3〜3質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
(補色顔料)
水性インキ組成物は、得られる筆記線の色彩を調整するため、補色顔料を含んでいてもよい。補色顔料は、特に限定されず、赤、青、黄、緑、白、黒など様々な色の顔料を用いることができる。補色顔料としては、例えば、SP4359、SP5658、およびSP9604(富士色素株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
水性インキ組成物における補色顔料の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0058】
(消泡剤)
水性インキ組成物は、消泡剤を含んでなることが好ましい。これは、本発明のように金属顔料粒子を用いる場合は、金属顔料粒子の金属粉の形状は、針状、板状、方形などのものでは、インキ製造時に巻き込こんだ気泡が抜けにくい傾向があり、筆跡に気泡が残るとピンホールが発生しやすくなるためである。消泡剤としては、シリコーン系、ポリエーテル系、アセチレングリコール系、アクリル系重合物系などが挙げられるが、ポリエーテル系やシリコーン系の消泡剤を含んでなることが好ましい。さらには、表面張力や水との界面張力とも低く、泡膜に進入し、拡散しやすく、優れた消泡効果を発揮しやすいシリコーン系消泡剤を含んでなることがより好ましい。
【0059】
水性インキ組成物における消泡剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.0001〜0.1質量%であることが好ましく、0.0005〜0.05質量%であることがより好ましく、0.001〜0.01質量%であることがさらに好ましい。消泡剤の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ中に気泡を巻き込んでしまった場合でも、消泡効果が効果的に働き、筆記線に気泡が残らず、良好な筆記線を得ることができる。
【0060】
(その他)
また、水性インキ組成物は、必要に応じて、防菌剤、防錆剤、pH調整剤、剪断減粘性付与剤、および粘度調整剤などを含んでいてもよい。
【0061】
(筆記具用インキ水性インキ組成物)
本発明による水性インキ組成物の粘度は、20℃、剪断速度380sec−1、回転速度100rpmにおいて、1〜50mPa・sであることが好ましく、3〜30mPa・sであることがより好ましい。水性インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、マーキングペンなどの筆記具に使用した場合、ペン先の筆記先端部に、前記インキ組成物が供給到達されるまでの時間が短くなり、インキ吐出性を向上させることができる。特にフィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する筆記性の向上を考慮すると、5〜15mPa・sであることがより好ましい。なお、粘度の測定はE型回転粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて行うことができる。
【0062】
本発明による水性インキ組成物の20℃における粘性指数nは、0.7〜1.0であることが好ましく、0.80〜1.00であることが好ましく、さらに0.85〜0.98であることが好ましい。ここで、粘性指数nは、S=αDで示される粘性式中のnを指す。なお、Sは剪断応力(dyn/cm=0.1Pa)、Dは剪断速度(s−1)、αは粘性係数を示す。粘性指数nは、E型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)を用いてインキ粘度を測定して、算出することができる。水性インキ組成物の粘性指数nが上記数値範囲内であれば、マーキングペンなどの筆記具に使用した場合のインキ吐出性を向上させることができ、特にフィルムなど非浸透性の記録媒体への筆記性を向上させることができる。
【0063】
水性インキ組成物のpHは、6.0〜10.0であることが好ましく、7.0〜9.0で あることがより好ましい。水性インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、シリカ被覆金属顔料粒子を用いる場合では、該金属顔料粒子が腐食してしまったり、分散性が低下してしまったりすることを防止することができる。本発明において、pHの値は、例えばIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
【0064】
水性インキ組成物の表面張力は、20℃環境下において、10〜35mN/mが好ましい。これは、35mN/m以下であれば、筆記線の滲みや、紙への裏抜けを防ぐことができる傾向にあり、10mN/m以上であれば、非浸透性の記録媒体への筆記時に、かすれたり、色わかれしたりすることなどがなく、良好な筆記線が得られるとともに、筆記線の乾燥性を向上させることができる傾向にある。よりその傾向を考慮すれば、水性インキ組成物の表面張力は、22〜33mN/mが好ましい。特に、本発明においては、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤とフッ素系界面活性剤を併用すること、または、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤とシリコーン系界面活性剤を併用することで、水性インキ組成の表面張力の値を上記範囲に設定しやすいため、より好ましい。
なお、表面張力は、20℃環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
【0065】
(水性インキ組成物の製造方法)
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0066】
(筆記具)
本発明の水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン芯またはボールペンチップなどをペン先としたマーキングペンやボールペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの筆記具に用いることができる。その中でも、フィルムなど非浸透性の記録媒体に対する筆記性を良好にするには、ペン芯が繊維チップ、フェルトチップであることが好ましい。特には、マーキングペンに用いることが好ましい。また、前記ペン芯の気孔率は、50〜80%とすることが好ましい。前記ペン芯の気孔率が上記数値範囲内であれば、シリカ被覆金属顔料粒子の目詰まりがなく、適切なインキ吐出量および筆記線の光輝性を維持することができる。
特に、前記ペン芯の気孔率を50〜80%とし、水性インキ組成物に、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびコハク酸系界面活性剤の中から、1種以上選択して用い、水性インキ組成物の粘度を、20℃、剪断速度380sec−1、回転速度100rpmにおいて、1〜50mPa・sとした場合では、水性インキ組成物が、ペン先の筆記先端部へ供給到達されるまでの時間が短くなり、浸透性および非浸透性の記録媒体に対する筆記性を向上させることができるため、好ましい。
【0067】
本発明の筆記具は、水性インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、水性インキ組成物を充填することのできるインキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、シリカ被覆金属顔料粒子を再分散させるために、インキ収容体にはインキを攪拌する攪拌ボールなどの攪拌体を内蔵することが好ましい。さらに、前記攪拌体の形状は、球状体、棒状体などが挙げられる。攪拌体の材質は特に限定されるものではないが、具体例としては、金属、セラミック、樹脂、硝子などを挙げることができ、これらの中でも、シリカ被覆金属顔料粒子を再分散させるための攪拌力を考慮すれば金属材質を、コストを考慮すれば硝子材質を用いることが好ましい。なお、撹拌体は、複数個、複数種類の材質を用いても良い。
【0068】
本発明の筆記具は特に限定されず、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具であってもよく、ペン先を軸筒内に収容可能な出没式筆記具であってもよい。前記出没式筆記具のペン先の出没機構は、ノック式、回転式およびスライド式などが挙げられる。
【0069】
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、および(4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、水性インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構などを挙げることができる。
【0070】
一実施形態において、筆記具は、マーキングペンであり、ペン先は、特に限定されず、例えば、繊維チップ、フェルトチップまたはプラスチックチップなどであってよく、さらに、その形状は、砲弾型、チゼル型または筆ペン型などであってよい。
【0071】
一実施形態において、筆記具は、ボールペンであり、インキ逆流防止体を備えてなることが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例101)
下記原材料および配合量にて、25℃で20分間、攪拌機を用いて、混合、溶解することにより、筆記具用水性インキ組成物を得た。得られた水性インキ組成物の粘度をE型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)により測定した。具体的には、20℃、剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は9.05mPa・sであり、剪断速度456sec−1(回転速度120rpm)における粘度は8.85Pa・sであった。これらの粘度から粘性指数は0.88と算出された。さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃にて水性インキ組成物のpHを測定した結果、pHは8.0であった。
また、実施例101のシリカ被覆金属顔料粒子に対する、前記凝集コントロール剤の配合比が、質量基準で1.1倍であった。
また、得られた水性インキ組成物の表面張力を、表面張力計測器(20℃環境下、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)により測定したところ、26.6mN/mであった。

・シリカ被覆金属顔料粒子 12質量%
(シリカ被覆板状アルミニウム粒子、平均粒子径:7μm、アスペクト比:25、シリカ被覆量:14質量部、固形分:40%、東洋アルミ株式会社製、商品名:EMR−D6390)
・弾性重合体 7.5質量%
(スチレン−ブタジエンエラストマー、固形分:46%、Tg:5℃、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:L−1924)
・セルロース誘導体 1.75質量%
(カルボキシメチルセルロース、固形分:100%、エーテル化度:0.70〜0.80、第一工業製薬株式会社製、商品名:セロゲン5A)
・ポリオレフィン樹脂粒子 1質量%
(低分子ポリエチレン、球状粒子、平均粒子径:1μm、固形分:40%、重量平均分子量:6000、三井化学株式会社製、商品名:ケミパールW401)
・水溶性アクリルポリマー 3質量%
(固形分:30%、富士色素株式会社製、商品名:A−29 NH3)
・界面活性剤 1質量%
(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンEXP4200、有効成分75%)
・防菌剤 0.5質量%
( ロンザジャパン株式会社製、商品名:プロキセルXL−2)
・消泡剤 0.005質量%
(東レ・ダウコーニング社、商品名:アンチフォーム013A、有効成分25%)
・水道水 74.245質量%
【0074】
(実施例102〜134、比較例101〜103)
実施例101に対して、配合する成分の種類や添加量を表1〜表5に示したとおりに変更して、実施例102〜134、比較例101〜103のインキ組成物を得た。これらの例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
また、実施例102、111、117で得られた水性インキ組成物の粘度を、実施例101と同様にE型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)により測定した。
実施例102:剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は9.22mPa・sであり、剪断速度456sec−1(回転速度120rpm)における粘度は9.00mPa・sであった。これらの粘度から粘性指数は0.87と算出された。
実施例111:剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は2.13mPa・sであり、剪断速度456sec−1(回転速度120rpm)における粘度は2.13mPa・sであった。これらの粘度から粘性指数は1.00と算出された。
実施例117:剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は8.13mPa・sであり、剪断速度456sec−1(回転速度120rpm)における粘度は7.95mPa・sであった。これらの粘度から粘性指数は0.88と算出された。
また、実施例128、130で得られた水性インキ組成物の表面張力を、実施例101と同様に、表面張力計測器(20℃環境下、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)により測定したところ、実施例128は、16.1mN/mであり、実施例130は、29.6mN/mであった。

<金属顔料粒子>
Rotosafe Aqua 260 003 Silver(エカルト社製、固形分95%、活性剤処理、平均粒子径:10μm)
<補色顔料>
SP4359(富士色素株式会社製、固形分:23%)
SP5658(富士色素株式会社製、固形分:23%)
<弾性重合体>
A−7535(旭化成ケミカルズ株式会社製、スチレン−ブタジエンエラストマー、Tg:17℃、固形分:46%)
L−1432(旭化成ケミカルズ株式会社製、スチレン−ブタジエンエラストマー、Tg:18℃、固形分:46%)
ジョンクリルPDX−734 1(BASFジャパン株式会社製、アクリル系エラストマー、Tg:15℃、固形分:49%)
AE986B(株式会社イーテック社製、アクリル系エラストマー、Tg:2℃、固形分:35%、)
ジョンクリル352D(BASFジャパン株式会社製、アクリル系エラストマー、Tg:56℃、固形分:45%)
AE986B(株式会社イーテック社製、アクリル系エラストマー、Tg:2℃、固形分:35%、)
<セルロース誘導体>
サンヘックL(株式会社三晶社製、ヒドロキシエチルセルロース、固形分100%)
クルーセルL(株式会社三晶社製、ヒドロキシプロピルセルロース、固形分100%)<界面活性剤>
メガファックF444(DIC社製、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物フッ素系界面活性剤、有効成分:100%、HLB値:8.5、表面張力16.8mN/m)
TSF4440(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、有効成分:100%、HLB値:14)
FZ−2105(東レ・ダウコーニング社製、シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、有効成分:100%、HLB値:11)
エアロゾールOT−100(サイテックインダストリージャパン社製、ジオクチル スルホコハク酸ナトリウム、有効成分:100%)
【0075】
<経時試験>
実施例101〜134および比較例101〜103の水性インキ組成物を、直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、常温にて14日間放置した。その後、一度沈降した各ガラス試験管を上下に振とうして、水性インキ組成物の再分散状態を目視により観察した。下記基準に従って、凝集状態を評価した。得られた評価結果を表1〜表5にまとめた。評価の基準は以下の通りとした。
A:振とうにより、容易に、シリカ被覆金属顔料粒子が再分散されたもの
B:振とうにより、シリカ被覆金属顔料粒子が再分散されたもの
C:振とうにより、時間をかけて、シリカ被覆金属顔料粒子が再分散されたもの
D:振とうしても、シリカ被覆金属顔料粒子が十分に再分散しないもの
【0076】
<ペン先の筆記先端部へのインキ到達性試験>
ペン先を具備したマーキングペンのインキ収容体に、直径8mmの金属材からなる球状体の撹拌体を内蔵し、実施例101〜134および比較例101〜103で得られた水性インキ組成物を充填し、ペン先に水性インキ組成物を染み込ませたときの、ペン先先端までのインキ到達時間を下記、基準に従って、評価した。評価結果を表1〜表5にまとめた。なお、ペン先には、気孔率65%の砲弾型ポリエステル繊維芯のペン芯を用いた。
A:ペン先の筆記先端部に、容易に、インキが到達したもの
B:ペン先の筆記先端部に、インキが到達したもの
C:ペン先の筆記先端部に、時間をかけて、インキが到達したもの
D:ペン先の筆記先端部に、インキが到達しなかったもの
【0077】
<筆記性試験>
ペン先の筆記先端部へのインキ到達性試験にて使用したマーキングペンにより、筆記試験用紙及びポリプロピレン製シート上に筆記を行い、それぞれの筆記線を目視により、下記基準に従って、評価した。評価結果を表1〜表5にまとめた。なお、筆記試験用紙としてJISP3201筆記用紙Aを用いた。
A:筆記線が、かすれ、色薄、色わかれなく、良好なもの
B:筆記線が、若干、かすれ、色薄、色わかれがあるが、実用上問題がないもの
C:筆記線が、かすれ、色薄、色わかれがあるが、実用可能なもの
D:筆記線が、かすれ、色薄、色わかれ別れがあるが、実用上懸念があるもの
E:インキがペン先より出ず、筆記不可能なもの
【0078】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0079】
(実施例201)
下記原材料および配合量を下記のように変更した以外は実施例101と同様にして、筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0080】
・シリカ被覆金属顔料粒子 12質量%
(シリカ被覆板状アルミニウム粒子、平均粒子径:7μm、アスペクト比:25、シリカ被覆量:14質量部、固形分:40%、東洋アルミ株式会社製、商品名:EMR−D6390)
・弾性重合体 7.5質量%
(スチレン−ブタジエンエラストマー、固形分:46%、Tg:5℃、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:L−1924)
・セルロース誘導体 1.75質量%
(カルボキシメチルセルロース、固形分:100%、エーテル化度:0.70〜0.80、第一工業製薬株式会社製、商品名:セロゲン5A)
・ポリオレフィン樹脂粒子 1質量%
(低分子ポリエチレン、球状粒子、平均粒子径:1μm、固形分:40%、重量平均分子量:6000、三井化学株式会社製、商品名:ケミパールW401)
・水溶性アクリルポリマー 3質量%
(固形分:30%、富士色素株式会社製、商品名:A−29 NH3)
・界面活性剤 1質量%
(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンEXP4200、有効成分75%)

・防菌剤 0.5質量%
( ロンザジャパン株式会社製、商品名:プロキセルXL−2)
・消泡剤 0.005質量%
(東レ・ダウコーニング社製、商品名:アンチフォーム013A、有効成分25%)
・水道水 74.245質量%
【0081】
(実施例202〜219、比較例201〜比較例202)
実施例201に対して、配合する成分の種類や添加量を表6〜表8に示した通りに変更して、実施例202〜219、および比較例201〜比較例202のインキ組成物を得た。これらの例で使用した材料の詳細は以下の通りである。

<金属顔料粒子>
Rotosafe Aqua 260 003 Silver(エカルト社製、固形分95%、活性剤処理、平均粒子径:10μm)
<補色顔料>
SP4359(富士色素株式会社製、固形分:23%)
SP5658(富士色素株式会社製、固形分:23%)
<弾性重合体>
A−7535(旭化成ケミカルズ株式会社製、スチレン−ブタジエンエラストマー、Tg: 17℃、固形分:46%)
L−1432(旭化成ケミカルズ株式会社製、スチレン−ブタジエンエラストマー、Tg:18℃、固形分:46%)
ジョンクリルPDX−7341(BASFジャパン株式会社製、アクリル系エラストマー、Tg:15℃、固形分:49%)
AE986B(株式会社イーテック社製、アクリル系エラストマー、Tg:2℃、固形分:35%、)
ジョンクリル352D(BASFジャパン株式会社製、アクリル系エラストマー、Tg:56℃、固形分:45%)
AE986B(株式会社イーテック社製、アクリル系エラストマー、Tg:2℃、固形分:35%、)
<セルロース誘導体>
サンヘックL(株式会社三晶社製、ヒドロキシエチルセルロース、固形分100%)
クルーセルL(株式会社三晶社製、ヒドロキシプロピルセルロース、固形分100%
<界面活性剤>
メガファックF444(DIC社製、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物フッ素系界面活性剤)
TSF4440(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル))
FZ−2105(東レ・ダウコーニング社製、シリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル))
エアロゾールOT−100(サイテックインダストリージャパン社製、ジオクチル スルホコハク酸ナトリウム)
【0082】
<耐擦性試験>
ペン先を具備したマーキングペンのインキ収容体に、直径8mmの金属材からなる球状体の撹拌体を内蔵し、実施例201〜219および、比較例201〜202で得られた水性インキ組成物を充填し、ペン先に水性インキ組成物を染み込ませた。ペン先には、気孔率65%の砲弾型ポリエステル繊維芯のペン芯を用いた。このマーキングペンにより、筆記試験用紙及びポリプロピレン製シート上に筆記を行った。この筆記線を1日放置後、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、荷重200g下・綿布にて50往復擦り、擦った後の筆記線を初期の筆記線と比べて、下記基準に従って、耐擦性を評価した。評価結果も表6〜表8にまとめた。なお、筆記試験用紙としてJISP3201筆記用紙Aを用いた。
評価の基準は以下の通りとした。
A:筆記線の剥離がないもの
B:筆記線の剥離が若干あるものの実用上問題がないもの
C:筆記線の剥離があるが、実用可能なもの
D:筆記線の剥離があり、実用上懸念があるもの
E:筆記線の剥離が多く、実用上非常に懸念があるもの
【0083】
【表6】
【表7】
【表8】
【0084】
<重ね書き性試験>
市販の水性顔料マーキングペン(白色系インキのマーキングペン)を用いてポリプロピレン製シート上に筆記し、得られた筆記線の上から、耐擦性試験に使用したマーキングペンにより、重ね書きを行い、得られた筆記線を目視により確認したところ、界面活性剤としてアセチレン結合を構造中に有した界面活性剤のみを用いた実施例201の水性インキ組成物が充填されたマーキングペンで重ね書きを行って得られた筆記線に比べ、実施例213〜実施例219の水性インキ組成物が充填されたマーキングペンで重ね書きを行って得られた筆記線の方が、色が混じり合ったり、線縮みを起こしたりすることなく、良好な筆跡が得られた。中でも、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤と、フッ素系界面活性剤もしくはシリコーン系界面活性剤とを併用した実施例215および実施例217〜実施例219の水性インキ組成物が充填されたマーキングペンで重ね書きを行って得られた筆記線は、特に良好であった。