特許第6861517号(P6861517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861517配線シート、構造体および光発電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861517
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】配線シート、構造体および光発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20210412BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01L31/04 500
   H01L31/06 455
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-573427(P2016-573427)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2016053461
(87)【国際公開番号】WO2016125880
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年8月29日
【審判番号】不服2020-7325(P2020-7325/J1)
【審判請求日】2020年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-22069(P2015-22069)
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 結
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】一関 主税
(72)【発明者】
【氏名】中田 一之
【合議体】
【審判長】 瀬川 勝久
【審判官】 近藤 幸浩
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−536894(JP,A)
【文献】 特開2000−243990(JP,A)
【文献】 特開2000−186114(JP,A)
【文献】 特開2012−138467(JP,A)
【文献】 特開2012−209462(JP,A)
【文献】 特開2014−15544(JP,A)
【文献】 特開2006−210906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/04 - 31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートと、
前記樹脂シートの一方の面に設けられた微細配線と、
を有し、
JIS−K7105に準じて測定した前記樹脂シートの350nmの波長における光線透過率が、70%以上である、配線シートであって、
前記樹脂シートが、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料により形成されている配線シート。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、または前記共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【請求項2】
JIS−K7105に準じて測定した前記樹脂シートの全光線透過率が80%以上である、請求項1に記載の配線シート。
【請求項3】
前記微細配線が、平行に配置されてなる複数のワイヤにより形成されている、請求項1または2に記載の配線シート。
【請求項4】
室温条件下、JIS−K7215に準じてタイプDデュロメータを用いて測定した、前記樹脂シートを形成する材料のショアD硬度が、25を超えて200以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の配線シート。
【請求項5】
前記微細配線の一部が、前記樹脂シートに埋設されている請求項1乃至のいずれか一項に記載の配線シート。
【請求項6】
前記樹脂シートが、多層構造を有している請求項1乃至のいずれか一項に記載の配線シート。
【請求項7】
前記樹脂シートにおける前記微細配線が設けられている面とは反対側の面に、フッ素樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選択される1以上を含む材料により形成された層を有する、請求項に記載の配線シート。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載された配線シートと、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料により形成されている封止材と、からなる構造体。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、または前記共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【請求項9】
前記封止材が、白色顔料を含む請求項に記載の構造体。
【請求項10】
透光性基板と、
請求項1乃至のいずれか一項に記載された配線シートと、
を備えた光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線シート、構造体および光発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光発電モジュールには、通常、光エネルギーを電気エネルギーへ変化する半導体素子(光発電素子)が搭載されている。従来の代表的な光発電モジュールにおいては、当該モジュールが有する発電特性の低下を抑制するため、上記光発電素子が外気と接触することや、上記光発電素子に衝撃が加わること等を防ぐ目的で、上記光発電素子が樹脂シートにより封止されている。この樹脂シートには、光エネルギーを効率よく光発電素子に供給するため、透明性が要求されている。そして、樹脂シートを形成する材料としては、透明性、柔軟性、接着性、引張強度、耐候性およびコストバランス等の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に使用されてきた。
【0003】
近年、光発電モジュールの各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。特に、近年では、光発電モジュールに対して、発電効率の向上および低コスト化等の要求が高まっている。こうした要求を満たすべく、樹脂シートの構成について種々の検討がなされている。
【0004】
樹脂シートの構成に着目した技術として、例えば、以下のものがある。
【0005】
特許文献1には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と紫外線吸収剤とを含み、電離性放射線により処理された樹脂封止シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−141542号公報
【特許文献2】特開2011−210891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の樹脂シートは、紫外線吸収剤を含む構成を採用しているため、樹脂の紫外線劣化を抑制した長期耐久性という点においては、ある程度の効果が期待できる。このように、従来の樹脂シートは、当該樹脂シートの長期耐久性を実現すべく、光発電素子に380nm未満の波長領域の光、すなわち紫外線が入射すること自体を防ぐ構成を採用したものであった。そのため、光発電モジュールの発電効率を向上させるという点においては、限界を有していた。
【0008】
こうした事情に鑑みて、現在、発電効率をさらに向上させるため、可視光に由来する光エネルギーにくわえて、紫外線に由来する光エネルギーについても、電気エネルギーへ変化させることのできる構成を備えた光発電モジュールが強く求められている。
近年、上述した長期使用に伴う樹脂の紫外線劣化を抑制しつつ、紫外線に由来する光エネルギーを利用できる樹脂シートを得るため、当該樹脂シート中に蛍光物質等の波長変換剤を含有させる技術について、種々の検討がなされている(特許文献2等)。しかし、本発明者らは、上記波長変換剤を含む樹脂シートでは、取り込んだ紫外線の波長を変換する際に、微量の光エネルギーが失われるという知見を得た。
【0009】
そこで、本発明の目的は、紫外線由来の光エネルギーをも効率よく発電に寄与させることのできる配線シート、当該配線シートを備えた構造体および光発電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、近年、光発電モジュールに要求されている低コスト化という課題を考慮した上で、長期間紫外線照射しても劣化することのない配線シートに使用することが可能な樹脂材料について鋭意検討した。その結果、配線シートの有する特性は、使用する樹脂の種類、樹脂の密度、樹脂のメルトフローレート、樹脂の架橋状態、添加剤の種類や配合量等の各種因子の組み合わせ次第で微妙に変化してしまうとことを知見した。そのため、本願発明に係る配線シートを形成するための樹脂材料の特徴を一般化して規定することは困難であった。
【0011】
そこで、本発明者らは、紫外線由来の光エネルギーを効率よく発電に寄与させることのできる配線シートを実現すべく鋭意検討した結果、350nmの波長における樹脂シートの光線透過率という尺度が設計指針として有効であることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明によれば、
樹脂シートと、
前記樹脂シートの一方の面に設けられた微細配線と、
を有し、
JIS−K7105に準じて測定した前記樹脂シートの350nmの波長における光線透過率が、70%以上である配線シートが提供される。
【0013】
さらに、本発明によれば、
上記配線シートと、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料により形成されている封止材と、からなる構造体が提供される。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、または前記共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【0014】
さらに、本発明によれば、
透光性基板と、
上記配線シートと、
を備えた光発電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、紫外線由来の光エネルギーをも効率よく発電に寄与させることのできる配線シート、当該配線シートを備えた構造体および光発電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0017】
図1】第1の実施形態に係る配線シートを示す断面図の一例である。
図2】第1の実施形態に係る配線シートを示す平面図の一例である。
図3】第1の実施形態に係る構造体を示す断面図の一例である。
図4】第1の実施形態に係る光発電モジュールを示す断面図の一例である。
図5】第2の実施形態に係る配線シートを示す断面図の一例である。
図6】第2の実施形態に係る光発電モジュールの層構造を示す模式的な断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
<<配線シート100>>
図1は、本実施形態に係る配線シート100を示す断面図の一例である。
図1に示すように、本実施形態に係る配線シート100は、樹脂シート10と、上記樹脂シート10の一方の面に設けられた微細配線20と、を有するものである。そして、JIS−K7105に準じて測定した上記樹脂シート10の350nmの波長における光線透過率は、70%以上である。こうすることで、紫外線由来の光エネルギーをも効率よく発電に寄与させることのできる配線シート100を実現することができる。
【0019】
本実施形態における紫外線由来の光エネルギーとは、380nm未満の波長領域の光に由来する光エネルギーを指す。
【0020】
背景技術の項で述べたとおり、近年、光発電モジュールに対して、発電効率の向上および低コスト化等の要求水準が高まっている。こうした事情に鑑みて、近年では、可視光に由来する光エネルギーにくわえて、紫外線に由来する光エネルギーについても、電気エネルギーへ変化させることのできる光発電モジュールを実現するため、樹脂シート中に蛍光物質等の波長変換剤を含有させる技術について、種々の検討がなされてきた。しかし、本発明者らは、樹脂シート中に波長変換剤を含有させたとしても、取り込んだ紫外線の波長を変換する際に、微量の光エネルギーが失われるという知見を得た。具体的には、本発明者らは、従来の波長変換剤を含有させた樹脂シートを用いた場合、取り込んだ紫外線に由来する光エネルギーの一部を電気エネルギーに変換できないという、集電ロスが生じてしまうことを見出した。
【0021】
また、光発電モジュールにおいて光発電素子を封止する目的で使用する当該光発電モジュールの受光面(入射面)側に配することを前提とした樹脂シートには、一般に、以下に挙げる6つの性能が要求されている。第1に要求される性能は、より多くの光を透過させるための透明性である。第2に要求される性能は、光発電素子が割れてしまうことを防ぐための柔軟性である。第3に要求される性能は、光発電モジュールの外部から空気が侵入して光発電素子に接触することを防ぐことができる程度に、上記光発電素子と当該樹脂シートが密着した状態を実現できる接着性である。第4に要求される性能は、光発電モジュールの使用環境における温度変化により樹脂が膨張してしまうことや、収縮してしまうことを防ぐことができる程度の引張強度である。第5に要求される性能は、樹脂材料が紫外線によって劣化してしまうことを抑制できる程度の耐候性である。第6に要求される性能は、光発電モジュールの使用時に光発電素子の性能低下や故障を防ぐことのできる程度の長期耐湿熱性である。
【0022】
ここで、本実施形態に係る配線シート100は、上述したように、樹脂シート10が、波長350nmの光を特定量以上透過させることができる構成を採用したものである。そのため、本実施形態に係る配線シート100によれば、取り込んだ紫外線の波長を変換することなく、上記紫外線由来の光エネルギーを利用することができるものである。これにより、従来の樹脂シートと比べて、発電効率を向上させた光発電モジュールを実現することができる。なお、本実施形態に係る配線シート100は、当然のことながら上述した6つの要求特性を満たすものである。
【0023】
本実施形態に係る配線シート100において、JIS−K7105に準じて測定した樹脂シート10の350nmの波長における光線透過率は、70%以上であるが、好ましくは、75%以上であり、より好ましくは、80%以上である。こうすることで、より一層効果的に紫外線に由来する光エネルギーを発電に寄与させることが可能となる。
【0024】
本実施形態に係る配線シート100は、JIS−K7105に準じて測定した上記樹脂シート10の全光線透過率が、好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、85%以上である。こうすることで、紫外光に限らず種々の波長領域における光を効率よく発電に寄与させることが可能となる。なお、JIS−K7105に準じた全光線透過率の測定には、紫外光、可視光および赤外光を含む白色光線を使用する。
【0025】
<微細配線20>
図1に示すように、配線シート100において、微細配線20の一部は、樹脂シート10に埋設されていることが好ましい。こうすることで、微細配線20と樹脂シート10との接合状態を強固なものとすることができる。そのため、配線シート100を用いて封止された状態にある光発電素子400(図4参照)に対して加わる衝撃による影響を緩和させることができる。
【0026】
図2は、本実施形態に係る配線シート100を示す平面図の一例である。
図2に示すように、本実施形態に係る配線シート100における微細配線20は、光発電モジュールの低コスト化という観点から、平行に配置されてなる複数のワイヤにより形成されていることが好ましい。こうすることで、微細配線20を形成するために使用する金属材料の量を低減させることが可能となる。微細配線20を形成する金属材料としては、銀、銅、インジウムおよびスズ等が挙げられる。これらの中でも、インジウム、スズまたはインジウムとスズとの合金が好ましい。なお、微細配線20を形成する上記ワイヤは、集電効率の観点から、直径50μm以上500μm以下のワイヤであることが好ましく、直径100μm以上300μm以下のワイヤであることがより好ましい。
【0027】
<樹脂シート10>
本実施形態に係る配線シート100の有する特性は、課題を解決するための手段で述べたとおり、使用する樹脂の種類、樹脂の密度、樹脂のメルトフローレート、樹脂の架橋状態、添加剤の種類や配合量等の各種因子の組み合わせ次第で変化するものであるが、当該配線シート100における樹脂シート10は、(A)エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、またはエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマー、および(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジル(グリシジル(メタ)アクリレートとも呼ぶ。)を含む共重合体、のいずれかを含む樹脂材料により形成されたものであることが好ましい。こうすることで、長期間光発電モジュールを使用したとしても、紫外線により樹脂が劣化しにくい配線シート100を実現することができる。この理由として、上述した各樹脂材料は、いずれも、透明性が高い樹脂であるとともに、紫外線による影響を受けにくく、かつ引張強度等の機械的特性に優れた樹脂材料であることが挙げられる。そのため、上述した樹脂材料の配合組成を高度に制御した場合には、紫外線由来の光エネルギーを効率よく発電に寄与させることのできる樹脂シート10を実現できる可能性が高い。なお、樹脂シート10を形成する樹脂材料の詳細については、後述する。
【0028】
樹脂シート10は、室温(25℃)条件下、JIS−K7215に準じてタイプDデュロメータを用いて測定した、当該樹脂シート10を形成する材料のショアD硬度が、好ましくは25を超えて200以下であり、より好ましくは30以上200以下であり、さらに好ましくは45以上200以下、さらにより好ましくは48以上100以下である。こうすることで、光発電モジュールにおいて、配線シート100を用いて封止された状態にある光発電素子400に対して加わる衝撃による影響を緩和させることができる。そのため、特定の領域について特定の条件で測定したショアD硬度が上記数値範囲内にある樹脂シート10を備えた配線シート100によれば、光発電モジュールの耐久性を向上させることができる。また、樹脂シート10に微細配線20を形成する際、微細配線20の樹脂シート10への埋設を適度に制御することができるため、光発電モジュールに適用する際に光発電素子400との接続を良好なものとすることができる。これにより、本実施形態に係る配線シート100によれば、発電効率を更に向上させることができる。
【0029】
樹脂シート10は、当該樹脂シート10を形成する材料の60℃における貯蔵弾性率E´が、好ましくは1MPa以上1000MPa以下であり、より好ましくは10MPa以上1000MPa以下であり、さらに好ましくは20MPa以上500MPa以下である。こうすることで、光発電モジュールにおいて、配線シート100を用いて封止された状態にある光発電素子400に対して加わる衝撃による影響を緩和させることができ、さらに、微細配線20の埋没を適切な範囲に調節することができる。そのため、特定の領域について特定の条件で測定した貯蔵弾性率E´が上記数値範囲内にある樹脂シート10を備えた配線シート100によれば、光発電モジュールの耐久性を向上させるとともに、発電効率を向上させることができる。
【0030】
樹脂シート10は、当該樹脂シート10を形成する材料について、室温(25℃)条件下、JIS−K7106に準じて測定した曲げ剛性率が、好ましくは10MPa以上400MPa以下であり、より好ましくは30MPa以上400MPa以下であり、さらに好ましくは50MPa以上400MPa以下であり、さらにより好ましくは100MPa以上300MPa以下である。こうすることで、光発電モジュールの使用環境における温度変化により樹脂が膨張してしまうことや、収縮してしまうことをより一層効果的に抑制することができる。
【0031】
樹脂シート10は、JIS−K7127に準じて、25℃、負荷速度200mm/minという条件で引張試験を行った際に得られる引張弾性率の値が以下の条件を満たすものであることが好ましい。具体的には、JIS−K7127に準じて、25℃、負荷速度200mm/minという条件で引張試験を行った際に得られる樹脂シート10のMD方向の引張弾性率を、TSとし、JIS−K7127に準じて、25℃、負荷速度200mm/minという条件で引張試験を行った際に得られる樹脂シート10のTD方向の引張弾性率を、TSとしたとき、TS/TSの値が、好ましくは、0.9以上1.1以下であり、さらに好ましくは、0.95以上1.05以下である。こうすることで、樹脂シート10の全域にわたって均一な引張特性を付与することができる。これにより、光発電モジュールの使用温度条件が急激に変化した場合においても、樹脂材料の膨張または収縮により当該光発電モジュールの有する発電特性が変化することを効果的に抑制することができる。
【0032】
樹脂シート10は、当該樹脂シート10の85℃、90%RHでの透湿係数が、好ましくは、0g・mm/m・day以上100g・mm/m・day以下であり、さらに好ましくは、0g・mm/m・day以上70g・mm/m・day以下である。こうすることで、より一層長期耐湿熱性に優れた配線シート100を実現することができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る樹脂シート10を形成する樹脂材料について説明する。
【0034】
本実施形態に係る樹脂シート10は、上述したように、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料により形成されたものであることが好ましい。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、またはエチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【0035】
樹脂シート10を形成する樹脂材料について、JIS−K7210−1999に準じて、190℃、荷重2169gの条件下、測定したメルトフローレートは、好ましくは、0.1g/10min以上50g/10min以下であり、さらに好ましくは、0.5g/10min以上30g/10min以下であり、最も好ましくは、1g/10min以上20g/10min以下である。こうすることで、シートの加工性を向上させることが可能となるため、光発電モジュールを作製した際に、樹脂のはみだしを抑制しつつ、良好な接着性を実現することができる。
【0036】
エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーにおける不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸成分としては、(メタ)アクリル酸が好ましい。そのため、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。なお、本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸との2元共重合体に限らず、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸を含む多元共重合体も包含している。上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステル成分としては、上述した不飽和カルボン酸成分として用いられる各種カルボン酸の炭素数1〜20のアルキルエステルが挙げられる。具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係るエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはそのアイオノマーにおける(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位の含有量は、優れた紫外線透過性を実現する観点から、好ましくは、2重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは、4重量%以上25重量%以下であり、さらに好ましくは、9重量%以上25重量%以下であり、最も好ましくは、12重量%以上20重量%以下である。
また、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸エステルの含有量は、1重量%以上35重量%以下が好ましく、3重量%以上32重量%以下がより好ましく、5重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
【0038】
エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーには、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、アルミニウム等の多価金属等に由来する金属種を含有させることができる。これらの中でも、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛が好ましく用いられる。一般に、アイオノマーは、透明性に優れ、かつ高温における貯蔵弾性率E´が高いことが知られている。また、本実施形態に係るエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーの中和度は、好ましくは、80%以下であり、さらに好ましくは、接着性の観点から60%以下であり、最も好ましくは、40%以下である。
【0039】
また、本実施形態に係る樹脂シート10を、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーにより形成する場合、共重合体の透明性および接着性を良好にする観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸の含有量は、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。一方、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸の含有量は、吸湿性を低減させる観点から、好ましくは、20重量%以下であり、さらに好ましくは、15重量%以下である。
また、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、共重合体の透明性および接着性を良好にする観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸エステルの含有量は1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。一方、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、吸湿性を低減させる観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸エステルの含有量は、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは32重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0040】
本実施形態において、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体の融点は、好ましくは55℃以上であり、さらに好ましくは、60℃以上であり、最も好ましくは、70℃以上である。こうすることで、光発電モジュールの使用時に温度上昇した場合に樹脂シート10が変形することや、光発電モジュールの製造時に樹脂材料が流れ出すことやバリが発生することを抑制することができる。
【0041】
本実施形態に係るエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体は、高温、高圧条件下、ラジカル共重合反応を行うことにより得ることができる。また、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーは、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体と金属化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0042】
本実施形態に係る樹脂シート10に含まれるエチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体に含まれる(メタ)アクリル酸グリシジルとは、メタクリル酸グリシジルまたはアクリル酸グリシジルの少なくとも一方を指す。
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0043】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体中の(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位の含有割合は、好ましくは2重量%以上30重量%以下、より好ましくは3重量%以上25重量%以下である。
(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位の含有割合が上記範囲内であると、得られる樹脂シート10の接着性や柔軟性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0044】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体中の「エチレン由来の構成単位」の含有割合は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。このとき、エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル以外の他のモノマー単位(例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等)をさらに含むことができる。
【0045】
具体的には、エチレンに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位とを含有する共重合体のほか、この2つの構成単位のほかに、さらに酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の少なくとも一方を含有する共重合体等が挙げられる。
酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0046】
酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合の下限値は、特に制限はないが、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上が望ましい。さらには、酢酸ビニルに由来の構成単位または(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合は、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、さらに0.5〜20重量%、特に1〜20重量%の範囲が好ましい。
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体は、1種を単独でまたは共重合比等の異なる共重合体の2種以上またはモノマー種の異なる共重合体の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体の少なくとも一部はシランカップリング剤により変性されていてもよい。
シランカップリング剤の含有量はエチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体100重量%中0.01〜5重量%が好ましい。
【0048】
樹脂シート10には、上記の(A)および(B)のいずれか一方を含んでいればよいが、樹脂シート10の樹脂成分100重量%中に上記の(A)および(B)を合計で30重量%以上含むことが好ましく、40重量%以上含むことがより好ましく、50重量%以上含むことがさらに好ましい。上限値は特に制限はないが上記の(B)を含む場合は80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
【0049】
また、本実施形態に係る樹脂シート10を形成する樹脂材料は、その他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂やエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0050】
エチレン系樹脂としては、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、5モル%以上50モル%未満であるエチレン・α-オレフィン共重合体やエチレン・極性モノマー共重合体等が挙げられる。
【0051】
上記炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィン等が挙げられ、これらは2種類を組み合わせて使用することもできる。
中でも、上記α−オレフィンの炭素数は、汎用性(コストや量産性あるいは入手のしやすさ)の点で、3〜10が好ましく、さらには3〜8が好ましい。
【0052】
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体であり、いずれのエチレン・α−オレフィン共重合体も、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%以上であることを意味する。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、例えば、メタロセン系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等で製造できる。
【0053】
エチレン・極性モノマー共重合体は、例えば、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。本実施形態において極性モノマーとは官能基を有するモノマーを意味する。
エチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0054】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸のアルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のアルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1〜12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1〜8が好ましい。
【0055】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n−ブチル等から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0056】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0057】
エチレン・極性モノマー共重合体は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・極性モノマー共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのその他の樹脂はシランカップリング剤で変性されていてもよい。
シランカップリング剤の含有量はその他の樹脂成分100重量%中0.01〜5重量%が好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係る樹脂シート10を形成する樹脂材料中には、例えば、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、トリフェニルホスファイト等の酸化防止剤、ステアリン酸鉛、ラウリン酸バリウム等の熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、微粒酸化チタン、酸化亜鉛等の充填剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤等の各種添加剤を配合してもよい。特に、配線シート100をバックシート側に配する場合には、当該配線シート100に透明性は要求されないため、発電効率を向上させる観点から、顔料、染料、無機充填剤を配合することが好ましい。上記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系のものが用いられる。各成分の含有量は、樹脂シート10中の樹脂成分100重量部に対して0.005〜2重量部が好ましく、0.008〜1重量部がより好ましい。
【0059】
ヒンダードアミン系の光安定剤の具体例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキサノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(o−クロロベンゾイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェノキシアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−3−nオクチル−スピロ[4,5]デカン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−アセトキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)ホスファイト、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロパン−1,1,2,3−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものが挙げられる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4'−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェロール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0061】
また、ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファネートジメチルエステル、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファネート等が挙げられる。
【0062】
シランカップリング剤としては、ビニル基、アミノ基又はエポキシ基と、アルコキシ基のような加水分解基とを有するシランカップリング剤及びチタンカップリング剤等が挙げられる。このようなシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプピルトリメトキシシラン及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジt−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2−(2'−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール等のベンゾトリアゾール系;フェニルサリチレートおよびp−オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系のものが用いられる。
【0063】
顔料としては、酸化チタンや炭酸カルシウム等の白色顔料、ウルトラマリン等の青色顔料、カーボンブラックのような黒色顔料等が挙げられる。特に、酸化チタンのような無機顔料を配合することは、光発電モジュールの絶縁抵抗が低下することを防止する観点から好ましい。
【0064】
本実施形態に係る樹脂シート10を形成する樹脂材料中には、例えば、変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を任意に配合してもよい。
【0065】
なお、樹脂シート10における微細配線20が配される面の表面には、微細配線20の位置ずれを防ぐ目的で、接着剤成分が付与されていることが好ましい。また、樹脂シート10は、多層構造を形成したものであってもよい。樹脂シート10の総厚みは10μm以上500μm以下であることが好ましく、25μm以上200μm以下であるとさらに好ましい。
樹脂シート10が多層構造の場合は3層構造が好ましい。この場合、表層(片面)の膜厚は1μm以上100μm以下が好ましく、中間層の膜厚は4μm以上400μm以下が好ましい。
【0066】
<配線シート100の製造方法>
本実施形態における配線シート100の製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、樹脂シート10を形成する樹脂材料の配合組成や、樹脂シート10と微細配線20との接合方法に関する条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、JIS−K7105に準じて測定した樹脂シート10の350nmの波長における光線透過率の値が、上述した特定の条件を満たす配線シート100を得ることができる。
(1)樹脂シート10を形成する樹脂材料の選択
(2)樹脂シート10と微細配線20との接合方法
【0067】
以下、本実施形態に係る配線シート100の製造方法の一例について説明する。ただし、本実施形態の配線シート100の製造方法は、以下の例に限定されない。また、本実施形態の配線シート100の製造方法の一例については、実施例にて具体的に後述する。
【0068】
(1)樹脂シート10を形成する樹脂材料の選択
上記課題を解決するための手段の項で述べたとおり、長期間紫外線照射しても劣化することのない配線シート100に使用することが可能な樹脂材料を得るためには、使用する樹脂の種類、樹脂の密度、樹脂の架橋状態、添加剤の種類や配合量等の各種因子を適切に組み合わせる必要がある。そして、紫外線による影響を受けにくく、かつ強度等の機械的特性に優れた樹脂材料であるという点を踏まえると、本実施形態に係る樹脂シート10を形成する樹脂材料は、以下の(A)および(B)のいずれかを含むものであることが好ましい。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、またはエチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【0069】
(2)樹脂シート10と微細配線20との接合方法
本実施形態に係る配線シート100を得るためには、例えば、樹脂シート10のロールと、微細配線20を形成するワイヤを加熱接着して得られる。そして、本実施形態に係る配線シート100を製造する際には、押し付け部の加熱温度を、樹脂シート10の表面のみを溶融させる温度に制御する必要がある。具体的には、上記押し付け部の加熱温度を、50℃以上120℃以下に制御することが好ましい。こうすることで、微細配線20の位置ずれを防いだ配線シート100を実現することができる。また、樹脂シート10と微細配線20との接合は、例えば、特開2005−536894号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0070】
<<構造体200>>
図3は、本実施形態に係る構造体200を示す断面図の一例である。
図3に示すように、本実施形態に係る構造体200は、上記配線シート100と、特定の樹脂材料により形成されている封止材50とからなるものである。ここで、封止材50を形成する樹脂材料としては、封止能力を有する樹脂であれば制限なく使用できるが、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料が好ましい。そして、構造体200をセル裏側に配する場合には、発電効率を向上させる観点から、封止材50を形成する樹脂材料中に白色顔料を配合することが好ましい。なお、封止材50を形成する樹脂材料と上述した樹脂シート10を形成する樹脂材料は、同一であってもよく、異なる配合であってもよい。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、またはエチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【0071】
次に、本実施形態に係る封止材50を形成する樹脂材料について説明する。
【0072】
本実施形態に係る封止材50は、上述したように、以下の(A)および(B)のいずれかを含む樹脂材料により形成されたものが好ましい。
(A)エチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体、またはエチレンと不飽和カルボン酸を含む共重合体のアイオノマー
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体
【0073】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーにおける不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸成分としては、(メタ)アクリル酸が好ましい。そのため、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。なお、本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸との2元共重合体に限らず、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸を含む多元共重合体も包含している。上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステル成分としては、上述した不飽和カルボン酸成分として用いられる各種カルボン酸の炭素数1〜20のアルキルエステルが挙げられる。具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0074】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはそのアイオノマーにおける(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位の含有量は、優れた紫外線透過性を実現する観点から、好ましくは、2重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは、4重量%以上25重量%以下であり、さらに好ましくは、9重量%以上25重量%以下であり、最も好ましくは、12重量%以上20重量%以下である。
また、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、不飽和カルボン酸エステルの含有量は、共重合体全量に対し1重量%以上35重量%以下が好ましく、3重量%以上32重量%以下がより好ましく、5重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーには、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、アルミニウム等の多価金属等に由来する金属種を含有させることができる。これらの中で、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛が好ましく用いられる。一般に、アイオノマーは、透明性に優れ、かつ高温における貯蔵弾性率E´が高いことが知られている。また、本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーの中和度は、好ましくは、80%以下であり、さらに好ましくは、接着性の観点から60%以下であり、最も好ましくは、40%以下である。
【0076】
また、本実施形態に係る封止材50を、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体またはエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーにより形成する場合、共重合体の透明性および接着性を良好にする観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸の含有量は、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。一方、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸の含有量は、吸湿性を低減させる観点から、好ましくは、20重量%以下であり、さらに好ましくは、15重量%以下である。
また、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、共重合体の透明性および接着性を良好にする観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸エステルの含有量は、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。一方、共重合体が不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、吸湿性を低減させる観点から、共重合体全量に対する不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは35重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0077】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体の融点は、好ましくは55℃以上であり、さらに好ましくは、60℃以上であり、最も好ましくは、70℃以上である。こうすることで、光発電モジュールの使用時に温度上昇した場合に樹脂シート10が変形することや、光発電モジュールの製造時に樹脂材料が流れ出すことやバリが発生することを抑制することができる。
【0078】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体は、高温、高圧条件下、ラジカル共重合反応を行うことにより得ることができる。また、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーは、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体と金属化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0079】
本実施形態に係る封止材50に含まれるエチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体に含まれる(メタ)アクリル酸グリシジルとは、メタクリル酸グリシジルまたはアクリル酸グリシジルの少なくとも一方を指す。
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0080】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体中の(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位の含有割合は、好ましくは2重量%以上30重量%以下、より好ましくは3重量%以上25重量%以下である。
(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位の含有割合が上記範囲内であると、得られる封止材50の接着性や柔軟性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0081】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体中の「エチレン由来の構成単位」の含有割合は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。このとき、エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル以外の他のモノマー単位(例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等)をさらに含むことができる。
【0082】
具体的には、エチレンに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位とを含有する共重合体のほか、この2つの構成単位のほかに、さらに酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の少なくとも一方を含有する共重合体等が挙げられる。
酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0083】
酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合の下限値は、特に制限はないが、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上が望ましい。さらには、酢酸ビニルに由来の構成単位または(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の含有割合は、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、さらに0.5〜20重量%、特に1〜20重量%の範囲が好ましい。
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体は、1種を単独でまたは共重合比等の異なる共重合体の2種以上またはモノマー種の異なる共重合体の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体の少なくとも一部はシランカップリング剤により変性されていてもよい。
シランカップリング剤の含有量はエチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含む共重合体100重量%中0.01〜5重量%が好ましい。
【0085】
封止材50には、上記の(A)および(B)のいずれか一方を含んでいればよいが、封止材50の樹脂成分100重量%中に上記の(A)および(B)を合計で30重量%以上含むことが好ましく、40重量%以上含むことがより好ましく、50重量%以上含むことがさらに好ましい。上限値は特に制限はないが上記の(B)を含む場合は80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
【0086】
また、本実施形態に係る封止材50を形成する樹脂材料は、その他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂やエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0087】
エチレン系樹脂としては、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、5モル%以上50モル%未満であるエチレン・α-オレフィン共重合体やエチレン・極性モノマー共重合体等が挙げられる。
【0088】
上記炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィン等が挙げられ、これらは2種類を組み合わせて使用することもできる。
中でも、上記α−オレフィンの炭素数は、汎用性(コストや量産性あるいは入手のしやすさ)の点で、3〜10が好ましく、さらには3〜8が好ましい。
【0089】
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体であり、いずれのエチレン・α−オレフィン共重合体も、エチレン由来の構成の含有割合が50モル%以上であることを意味する。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、例えば、メタロセン系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等で製造できる。
【0090】
エチレン・極性モノマー共重合体は、例えば、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。本実施形態において極性モノマーとは官能基を有するモノマーを意味する。
エチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0091】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸のアルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のアルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1〜12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1〜8が好ましい。
【0092】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n−ブチル等から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0093】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0094】
エチレン・極性モノマー共重合体は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・極性モノマー共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのその他の樹脂はシランカップリング剤で変性されていてもよい。
シランカップリング剤の含有量はその他の樹脂成分100重量%中0.01〜5重量%が好ましい。
【0095】
また、本実施形態に係る封止材50を形成する樹脂材料中には、例えばヒドロキノンモノベンジルエーテル、トリフェニルホスファイト等の酸化防止剤、ステアリン酸鉛、ラウリン酸バリウム等の熱安定剤、微粒酸化チタン、酸化亜鉛等の充填剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤等の各種添加剤を配合してもよい。各成分の含有量は、封止材50中の樹脂成分100重量部に対して0.005〜2重量部含有することが好ましく、0.008〜1重量部含有することがより好ましい。
特に、バックシート側に使用する封止材50には、透明性が要求されないため、発電効率を向上させる観点から、顔料、染料、無機充填剤を配合することが好ましい。上記顔料としては、酸化チタンや炭酸カルシウム等の白色顔料、ウルトラマリン等の青色顔料、カーボンブラックのような黒色顔料等が挙げられる。特に、酸化チタンのような無機顔料を配合することは、光発電モジュールの絶縁抵抗が低下することを防止する観点から好ましい。上記無機顔料の配合量は、封止材50に含まれる樹脂成分100重量部に対して、好ましくは、0重量部以上100重量部以下であり、さらに好ましくは、0.5重量部以上50重量部以下であり、最も好ましくは、4重量部以上50重量部以下である。
【0096】
本実施形態に係る封止材50を形成する樹脂材料中には、例えば、変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を任意に配合してもよい。また、封止材50は、多層構造の場合は少なくとも1層が上述した各種樹脂からなる層であり、すべての層が上述した各種樹脂で構成されていてもよい。
封止材50の膜厚は、好ましくは、50μm以上1000μm以下であり、より好ましくは、100μm以上500μm以下である。くわえて、光発電モジュールの受光面(光入射面)側に配置する封止材50は、JIS−K7105に準じて測定した350nmの波長における光線透過率が70%以上であることが好ましい。こうすることで、紫外線由来の光エネルギーをも効率よく発電に寄与させることのできるモジュールを実現することができる。
封止材50が多層構造の場合は3層構造が好ましい。この場合、表層(片面)の膜厚は10μm以上500μm以下が好ましく、中間層の膜厚は50μm以上1000μm以下が好ましい。
【0097】
<<光発電モジュール300−1>>
図4は、本実施形態に係る光発電モジュール300−1を示す断面図の一例である。
図4に示すように、本実施形態に係る光発電モジュール300−1は、透光性基板70と、上記配線シート100と、封止材50を備えている。この光発電モジュール300−1は、上述したように、350nmの波長領域における樹脂シート10の光線透過率が70%以上である配線シート100を備えるものであるため、紫外線由来の光エネルギーを効率よく発電に寄与させることができる。そのため、本実施形態に係る光発電モジュール300−1は、従来の光発電モジュールと比べて発電効率に優れている。
【0098】
上記透光性基板70としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等が挙げられる。中でも、より多くの光エネルギーを発電に寄与させる観点から、ガラスが好ましい。
【0099】
本実施形態に係る光発電モジュール300−1における光発電素子400としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ヘテロ接合型等のシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル等のIII族化合物−V族化合物半導体系の素子やII族化合物半導体化合物−VI族化合物半導体系の素子が挙げられる。
【0100】
本実施形態に係る光発電モジュール300−1に適用するバックシート80としては、例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属や、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂により形成された1層もしくは多層のシートが挙げられる。中でも、製造工程において絶縁処理を排除し、光発電モジュール300−1の製造コストを低減させる観点から、アルミ以外の材料を用いて形成したバックシート80とすることが好ましい。
【0101】
また、本実施形態に係る光発電モジュールの態様は、紫外線由来の光エネルギーを効率よく発電に寄与させることのできるものであれば、どのような態様であってもよい。
具体的に、本実施形態に係る光発電モジュールとしては、透光性基板70/配線シート100/光発電素子400/配線シート100/バックシート80(保護材)のように光発電素子400の両面を2枚の配線シート100で挟み込むように封止するもの、透光性基板70/封止材50/配線シート100/光発電素子400/配線シート100/封止材50/バックシート80(保護材)のように、光発電素子400の両面を2枚の配線シート100で挟み込むように封止するとともに、透光性基板70と配線シート100との間に封止材50を介在させるもの、透光性基板70の表面上に予め形成された光発電素子400を用い、透光性基板70/光発電素子400/配線シート100/バックシート80(保護材)のように構成するもの、透光性基板70上に例えば、フッ素樹脂系シート上にアモルファス光発電素子400をスパッタリング等で作製し、その上に配線シート100とバックシート80(保護材)を形成させるような構成のもの等を挙げることができる。
【0102】
また、別のタイプの光発電モジュールとして、バックシート80(保護材)の上に形成した光発電素子400上に、配線シート100と透光性基板70とを形成した構成のもの、透光性基板70上に形成した光発電素子400上に、配線シート100とバックシート80(保護材)とを形成した構成のもの等もある。具体的には、ガラス上にアモルファス光発電素子400をスパッタリング等で作製し、その上に配線シート100とバックシート80とを形成させた構成のものが挙げられる。
【0103】
(第2の実施形態)
<<配線シート100>>
図5は、本実施形態に係る配線シート100を示す断面図の一例である。
図5に示す配線シート100は、樹脂シート10における微細配線20が接合している面とは反対側の面に対して、基材層30を積層しているという点で、第1の実施形態と異なる。具体的には、図5に示す配線シート100は、樹脂シート10における微細配線20が設けられている面とは反対側の面に、フッ素樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選択される1以上を含む材料により形成された基材層30を有するものである。ここで、基材層30を形成する材料について、室温条件下、JIS−K7215に準じてタイプDデュロメータを用いて測定したショアD硬度は、10以上100以下であることが好ましく、20以上100以下であるとさらに好ましい。基材層30を形成する材料のショアD硬度を、上記数値範囲内とすることにより、微細配線20の樹脂シート10への埋め込みを適切に行うことができるため、発電効率をより一層向上させることができる。また、基材層30の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上80μm以下であるとさらに好ましい。くわえて、光発電モジュールの受光面(光入射面)側に配置する基材層30は、JIS−K7105に準じて測定した350nmの波長における光線透過率が70%以上であることが好ましい。こうすることで、紫外線由来の光エネルギーをも効率よく発電に寄与させることのできるモジュールを実現することができる。
【0104】
上記フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(PCTFEE)、ポリフッ化ビニル(PVF)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。中でも、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)およびポリフッ化ビニル(PVF)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0105】
上記アクリル樹脂としては、アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体等が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル単位を主成分とした重合体であるメタクリル樹脂が好ましい。このメタクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体等が挙げられる。
これらのフッ素樹脂、あるいはアクリル樹脂は、封止材50との密着を向上させるために表面をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、フレーム処理等の表面処理や、接着剤を使用することができる。さらに、接着剤としては、耐水性に優れたものが好ましく、例えば、オレフィン系重合体のシラン変性体や無水マレイン酸変性体、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0106】
<<光発電モジュール300−2>>
本実施形態に係る光発電モジュール300−2は、上述した基材層30を有する配線シート100を用いているという点で、第1の実施形態と異なる。具体的には、本実施形態に係る光発電モジュール300−2は、例えば、以下のヘテロ接合型の光発電素子400を備えた態様とすることができる。ただし、本実施形態に係る光発電モジュール300−2は、以下のヘテロ接合型の光発電素子400を備えた例に限定されない。
【0107】
図6は、本実施形態に係る光発電モジュール300−2の層構造を示す模式的な断面図の一例である。
図6に示すように、本実施形態に係る光発電モジュール300−2は、ヘテロ接合型の光発電素子400を備えている。
光発電素子400は、第1導電型の結晶半導体基板11を備えているとともに、結晶半導体基板11の一方の面側に、第1非晶質系半導体膜12と、第1導電型の第2非晶質系半導体膜13と、第1透光性電極膜14と、第1電極15と、をこの順に備えている。
光発電素子400は、更に、結晶半導体基板11の他方の面側に、真性の第3非晶質系半導体膜16と、第2導電型の第4非晶質系半導体膜17と、第2透光性電極膜18と、第2電極19と、をこの順に備えている。
第1非晶質系半導体膜12は、第2非晶質系半導体膜13よりも不純物濃度が低い第1導電型であるか、又は、真性である。
光発電モジュール300−2は、更に、光発電素子400の一方の面の第1電極15に第1樹脂シート22により接合固定された複数の第1微細配線21と、光発電素子400の一方の面との間に複数の第1微細配線21を挟んでいるとともに第1樹脂シート22を介して光発電素子400の一方の面に接合された第1基材層23と、透光性基板70と、透光性基板70と第1基材層23との間に充填された第1封止層500と、を備えている。
光発電モジュール300−2は、更に、光発電素子400の他方の面の第2電極19に第2樹脂シート52により接合固定された複数の第2微細配線51と、光発電素子400の他方の面との間に複数の第2微細配線51を挟んでいるとともに、第2樹脂シート52を介して光発電素子400の他方の面に接合された第2基材層53と、第2保護層600と、第2保護層600と第2基材層53との間に充填された第2封止層60と、を備えている。
【0108】
光発電素子400の各構成要素の導電型について説明すると、結晶半導体基板11は、例えばn型である。この場合、第2非晶質系半導体膜13はn型、第1非晶質系半導体膜12は真性又はn型(第2非晶質系半導体膜13よりも不純物濃度が低いn型)、第4非晶質系半導体膜17はp型である。
【0109】
結晶半導体基板11としては、n型の半導体特性を有する結晶体であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。結晶半導体基板11を構成するn型の結晶半導体としては、シリコン(Si)の他、SiC、SiGe、SiN等を挙げることができるが、生産性等の点からシリコンが好ましい。結晶半導体基板11は、単結晶体であってもよいし、多結晶体であってもよい。
【0110】
また、第1非晶質系半導体膜12、第2非晶質系半導体膜13、第3非晶質系半導体膜16及び第4非晶質系半導体膜17は、それぞれシリコン薄膜とすることができる。
【0111】
第1非晶質系半導体膜12は、結晶半導体基板11の一方の面(図6における上面)に積層されている。
第2非晶質系半導体膜13は、第1非晶質系半導体膜12の一方の面(図6における上面)に積層されている。
第1非晶質系半導体膜12と第2非晶質系半導体膜13との合計の膜厚は、例えば1nm以上20nm以下とすることができる。
【0112】
第1透光性電極膜14は、第2非晶質系半導体膜13の一方の面(図6における上面)に積層されている。
第1透光性電極膜14を構成する透明電極材料の具体例としては、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、タングステンドープインジウム酸化物(Indium Tungsten Oxide:IWO)、セリウムドープインジウム酸化物(Indium Cerium Oxide:ICO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(アルミニウムドープZnO)、GZO(ガリウムドープZnO)等の公知の材料を挙げることができる。
【0113】
第3非晶質系半導体膜16は、結晶半導体基板11の他方の面(図6における下面)に積層されている。第4非晶質系半導体膜17は、第3非晶質系半導体膜16の他方の面(図6における下面)に積層されている。換言すれば、第3非晶質系半導体膜16は、結晶半導体基板11と第4非晶質系半導体膜17との間に介在している。第3非晶質系半導体膜16の膜厚は、例えば1nm以上10nm以下とすることができる。第4非晶質系半導体膜17の膜厚は、例えば1nm以上20nm以下とすることができる。
【0114】
第2透光性電極膜18は、第4非晶質系半導体膜17の一方の面(図6における下面)に積層されている。第2透光性電極膜18を構成する材料は、第1透光性電極膜14と同様である。
【0115】
ここで、真性とは、不純物が意図的にドープされていないことをいう。したがって、真性の非晶質系半導体膜には、原料に本来含まれる不純物や製造過程において非意図的に混入した不純物が存在するものも含まれる。
また、非晶質系とは、非晶質体のみならず、微結晶体を含むことを意味する。
n型の非晶質半導体膜とは、薄膜中に含有される元素の数密度比として、シリコンに対して10−5程度以上の不純物が含有されているものをいう。
【0116】
第1電極15は、例えば、フィンガー電極であるか、又は、第1透光性電極膜14の他方の面(図6における上面)の全面に成膜された金属膜である。
同様に、第2電極19は、フィンガー電極であるか、又は、第2透光性電極膜18の他方の面(図6における下面)の全面に成膜された金属膜である。
第1電極15及び第2電極19を構成するフィンガー電極の材料としては、銀ペースト等の導電性接着剤や、銅線等の金属導線を用いることができる。フィンガー電極の幅は、例えば、20μm以上80μm以下程度である。
また、第1電極15及び第2電極19を構成する金属膜としては、銀ペースト等の導電性接着剤を用いることができる。複数の第1微細配線21は、例えば、互いに平行に配置された複数のワイヤ又はバスバーである。
【0117】
本実施形態に係る光発電モジュールは、例えば、以下の方法で制作することができる。なお、光発電モジュールの製造方法の一例について、上述した図6に示す光発電モジュール300−2を例に挙げて説明する。
【0118】
先ず、光発電素子400は、結晶半導体基板11の一方の面上に、第1非晶質系半導体膜12、第2非晶質系半導体膜13及び第1透光性電極膜14をこの順に成膜する一方で、結晶半導体基板11の他方の面上に、第3非晶質系半導体膜16、第4非晶質系半導体膜17及び第2透光性電極膜18をこの順に成膜し、更に、第1透光性電極膜14の一方の面(図6における上面)上に第1電極15を、第2透光性電極膜18の他方の面(図6における下面)上に第2電極19を、それぞれ形成することにより得られる。
【0119】
次に、第1基材層23、第1樹脂シート22及び第1微細配線21が一体化した第1マルチワイヤー部材と、透光性基板70と、シート状の第1封止層500を準備する。
そして、第1マルチワイヤー部材を光発電素子400の一方の面の第1電極15と透光性基板70との間に介在させ、かつ、第1マルチワイヤー部材と透光性基板70との間に第1封止層500を介在させる。
同様に、第2基材層53、第2樹脂シート52及び第2微細配線51が一体化した第2マルチワイヤー部材と、第2保護層600と、シート状の第2封止層60とを準備する。
そして、第2マルチワイヤー部材を光発電素子400の他方の面の第2電極19と第2保護層600との間に介在させ、かつ、第2マルチワイヤー部材と第2保護層600との間に第2封止層60を介在させる。
そして、これらを一括して加熱及び両面から加圧することにより、第1樹脂シート22を介して第1微細配線21を第1電極15に対して溶着するとともに、第1封止層500を介して第1基材層23と透光性基板70とを溶着し、第2樹脂シート52を介して第2微細配線51を第2電極19に対して溶着するとともに、第2封止層60を介して第2基材層53と第2保護層600とを溶着する。こうして、光発電モジュール300−2を得ることができる。
【0120】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0121】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
実施例及び比較例で用いた原料を以下に示す。
【0124】
<原料>
−1.樹脂−
(A)層用の樹脂
・アイオノマー1:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸単位含有量=15重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度23%、MFR5g/10分)
・アイオノマー2:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル三元共重合体(メタクリル酸単位含有量=5重量%、アクリル酸ブチル7重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度10%、MFR11g/10分)
・アイオノマー3:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸単位含有量=8.5重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度18%、MFR6g/10分)
【0125】
(B)層用の樹脂
・アイオノマー4:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル三元共重合体(メタクリル酸単位含有量=5重量%、アクリル酸ブチル7重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度10%、MFR11g/10分)
・アイオノマー5:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸単位含有量=12重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度36%、MFR1.5g/10分)
【0126】
−2.添加剤−
・酸化防止剤:ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010)
・紫外線吸収剤:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール
・光安定剤:ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
・シランカップリング剤:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
【0127】
なお、A層およびB層に用いられる安定剤マスターバッチ1としては、各層用の樹脂と同じ樹脂と、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤とを、樹脂/酸化防止剤/紫外線吸収剤/光安定剤=93.7/0.3/4/2の重量比で混合し、あらかじめ2軸押し出し機にて押し出したものを用いた。
また、A層およびB層に用いられる安定剤マスターバッチ2としては、各層用の樹脂と同じ樹脂と、酸化防止剤、光安定剤とを、樹脂/酸化防止剤/光安定剤=96/2/2の重量比で混合し、あらかじめ2軸押出機にて作製したものを用いた。白色マスターバッチとしては、大日精化工業株式会社製白色マスターバッチPE−M 13N4700/酸化防止剤/紫外線吸収剤/光安定剤を所定重量比で混合し、あらかじめ2軸押出機にて作製したものを用いた。
また、A層に用いられる安定剤マスターバッチ3としては、ベース樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(三井化学製タフマーA−4090S)と、酸化防止剤、光安定剤とを、ベース樹脂/酸化防止剤/光安定剤=96/2/2の重量比で混合し、あらかじめ2軸押出機にて作製したものを用いた。
【0128】
−3.配合−
<A層>
・(A)−1:アイオノマー1/安定剤マスターバッチ1/シランカップリング剤=90/10/0.2
・(A)−2:アイオノマー2/安定剤マスターバッチ1/シランカップリング剤=90/10/0.2
・(A)−3:アイオノマー2/安定剤マスターバッチ2/シランカップリング剤=90/10/0.2
・(A)−4:アイオノマー3/安定剤マスターバッチ1/白色マスターバッチ/シランカップリング剤=85/10/5/0.2
・(A)−5:EVA1/安定剤マスターバッチ3=90/10
・(A)−6:EMA1/安定剤マスターバッチ3=90/10
・(A)−7:EOC1/安定剤マスターバッチ3=90/10
・(A)−8:EOC2/安定剤マスターバッチ3=90/10
【0129】
(EVA1の調製)
エチレン・メタクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体(EGMAVA、住友化学(株)製、ボンドファースト7B、エチレン含有量:83重量%、メタクリル酸グリシジル含有量:12重量%、酢酸ビニル含有量:5重量%、MFR(190℃、2160g荷重):7g/10分):49.1重量部、エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:10重量%):49.1重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名「KBM503」):1.5重量部および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富(株)製、商品名「ルペロックス101」):0.3重量部を予め混合し、溶融温度220℃にて40mmφ単軸押出機で、EGMAVAおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをグラフト変性させることにより、シランカップリグ剤により変性されたエチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルを含むEVA1を得た。
【0130】
(EMA1の調製)
EVA1の調製において、エチレン・酢酸ビニル共重合体の代わりに、EMA:エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(エチレン含有量:80重量%、メタクリル酸メチル含有量:20重量%)を使用した以外はEVA1と同様にしてEMA1を得た。
【0131】
(EOC1の調製)
EVA1の調製において、エチレン・酢酸ビニル共重合体の代わりに、EOC1:エチレン・α−オレフィン共重合体(三井化学製 タフマーA−4090S)を使用した以外はEVA1と同様にしてEOC1を得た。
【0132】
(EOC2の調製)
EVA1の調製において、エチレン・酢酸ビニル共重合体の代わりに、EOC2:エチレン・α−オレフィン共重合体(三井化学製 タフマーH−5030S)を使用した以外はEVA1と同様にしてEOC2を得た。
【0133】
<B層>
・(B)−1:アイオノマー4/安定剤マスターバッチ1=90/10
・(B)−2:アイオノマー4/安定剤マスターバッチ2=90/10
・(B)−3:アイオノマー5/安定剤マスターバッチ1/白色マスターバッチ=85/10/5
【0134】
・樹脂シート1:表層(A)−1/中間層(B)−1/表層(A)−1
・樹脂シート2:表層(A)−2/中間層(B)−1/表層(A)−2
・樹脂シート3:表層(A)−3/中間層(B)−2/表層(A)−3
・樹脂シート4:単層(A)−3
・樹脂シート5:表層(A)−4/中間層(B)−3/表層(A)−4
・樹脂シート6:単層(A)−5
・樹脂シート7:単層(A)−6
・樹脂シート8:単層(A)−7
・樹脂シート9:単層(A)−8
・樹脂シート10:エチレン−酢酸ビニル共重合体系封止材(酢酸ビニル単位含有量=28重量%)
【0135】
<樹脂シートの作製>
樹脂シート1〜3および5の多層樹脂シートを、それぞれ2種3層多層キャスト成形機(田辺プラスチックス機械社製)、フィードブロック式(EDI社製)、40mmφ単軸押出機、およびダイ幅500mm押出機を用いて加工温度140℃にてシート状に成形することにより作製した。
また、樹脂シート4、6〜10の単層樹脂シートは、単層T−ダイ成形機(田辺プラスチックス機械社製)、40mmφ単軸押出機、ダイ幅500mm押出機を用いて、上記樹脂シート1〜3、5と同様に、加工温度140℃にてシート状に成形し、作製した。
さらに、フッ素系フィルムあるいはアクリル系フィルムを基材層として利用した多層配線シートを作製する際には、上記成形機の繰出し部分よりフィルムを供給し、樹脂シート3〜4および6〜9を成形時にニップロールにて加熱圧着することで多層シートを製造した。
【0136】
上記樹脂シート3〜4および6〜10を用いて、実施例および比較例の配線シートを作製した。製造方法は、以下の通りである。
【0137】
<実施例1>
厚さ100μmの樹脂シート3の表面に対して、直径300μmの金属微細配線を等間隔に並べて加熱圧着することにより配線シート1を作製した。得られた配線シート1は、樹脂シート3にワイヤが埋設されていた。
【0138】
<実施例2>
樹脂シート3に代えて、厚さ75μmの樹脂シート4と、厚さ25μmのテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)により形成されたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート2を作製した。得られた配線シート2は、樹脂シート4にワイヤが埋設されていた。
【0139】
<実施例3>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmの樹脂シート4と、厚さ25μmのテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)により形成されたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート3を作製した。得られた配線シート3は、樹脂シート4にワイヤが埋設されていた。
【0140】
<実施例4>
樹脂シート3に代えて、厚さ25μmの樹脂シート4と、厚さ25μmのテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)により形成されたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート4を作製した。得られた配線シート4は、樹脂シート4にワイヤが埋設されていた。
<実施例5>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)により形成されたシートの両面に対して、厚さ50μmの樹脂シート4を接着して得られたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート5を作製した。得られた配線シート5は、樹脂シート4にワイヤが埋設されていた。
<実施例6>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)により形成されたシートの片面に対して、厚さ60μmの樹脂シート6を接着して得られたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート6を作製した。得られた配線シート6は、樹脂シート6にワイヤが埋設されていた。
<実施例7>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)により形成されたシートの片面に対して、厚さ60μmの樹脂シート7を接着して得られたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート7を作製した。得られた配線シート7は、樹脂シート7にワイヤが埋設されていた。
<実施例8>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)により形成されたシートの片面に対して、厚さ60μmの樹脂シート8を接着して得られたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート8を作製した。得られた配線シート8は、樹脂シート8にワイヤが埋設されていた。
<実施例9>
樹脂シート3に代えて、厚さ50μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)により形成されたシートの片面に対して、厚さ60μmの樹脂シート9を接着して得られたシートを使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート9を作製した。得られた配線シート9は、樹脂シート9にワイヤが埋設されていた。
【0141】
<比較例1>
樹脂シート3に代えて、樹脂シート10を使用したという点以外は、実施例1と同様の方法で、配線シート10を作製した。得られた配線シート10は、樹脂シート10にワイヤが埋設されていた。
【0142】
得られた配線シート1〜10を用いて行った測定および評価について、以下に詳説する。
【0143】
・350nmの波長における樹脂シートの光線透過率:25℃という条件下、JIS−K7105に準じて樹脂シートの350nmの波長における光線透過率を測定した。なお、単位は、%とした。
【0144】
・全光線透過率:25℃という条件下、JIS−K7105に準じて樹脂シートの全光線透過率を測定した。なお、単位は、%とした。
【0145】
・ショアD硬度:室温(25℃)条件下、JIS−K7215に準じてタイプDデュロメータを用いて、樹脂シートを形成する材料のショアD硬度を測定した。
【0146】
・曲げ剛性率:JIS−K7106に準じて、東洋精機製作所製自動読取り型 「オルゼン式スティフネステスター」を用いて、樹脂シートの曲げ剛性率を測定した。なお、単位は、MPaとした。
【0147】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
上記配線シート1〜10を用い、以下の方法で光発電モジュールを作製した。
【0150】
<光発電モジュールの作製方法>
下記表2に示すように、透光性基板、受光面封止材(樹脂シート2,3および10を封止材として使用)、配線シート、光発電素子の順に載せた。次に、光発電素子の上に、配線シート、非受光面封止材(樹脂シート1,5および10を封止材として使用)、バックシートをこの順で載せ、真空ラミネータを用いてラミネートし、実施例10〜19および比較例2の光発電モジュールを作製した。
【0151】
得られた光発電モジュールを用いて行った測定および評価について、以下に詳説する。
【0152】
配線接続良否(EL画像):光発電モジュールの配線接続良否について、EL(エレクトロルミネッセンス)法により評価した。すなわち、各光発電モジュールに電流を入力して発光させた状態で、EL画像を取得し、良否の評価を行った。
各光発電モジュールのEL画像の取得には、EL画像検査装置(アイテス社製、PVX100)を用いた。また、EL画像を取得するための測定条件は、シャッター時間15秒、絞り8、ISO感度800、光発電モジュールへの入力電圧0.73V、光発電モジュールへの入力電流8Aという条件を採用した。
そして、得られたEL画像を目視にて確認し、配線接続良否の評価を行った。
評価結果は、A:影なし(接続良好)、C:影あり(配線接続の一部に難あり)、とした。
【0153】
最大出力(Pmax):得られた光発電モジュールについて、最大出力(Pmax)を測定した。
すなわち、各光発電モジュールに入力するバイアス電圧を変化させながら、電流を測定し、得られたデータをプロットすることにより、I−V曲線(図示略)を得た。
ここで、電流の測定には、住友重機械工業株式会社 太陽電池IV測定装置No.M130−DDYTB383 J−JAを用いた。
また、バイアス電圧は、−0.1Vから0.8Vの範囲で変化させ、この範囲のうち、−0.1Vから0.4Vまではバイアス電圧を0.02V刻みで変化させ、0.4Vから0.8Vまではバイアス電圧を0.01V刻みで変化させた。
また、測定条件として、AM1.5G、1SUNを採用し、25℃で測定を行った。
そして、得られたI−V曲線に関し、電圧と電流の積が最大になる点、すなわち「最大出力(Pmax)」を求めた。
【0154】
フィルファクタ(FF):更に、上記の最大出力(Pmax)の測定結果を用いて、得られた光発電モジュールについて、フィルファクタ(FF)を求めた。
ここで、電圧が0V時の電流は短絡電流(short−circuit current=Isc)といい、光発電モジュールに電流が流れていない時の電圧を開放電圧(open−circuit voltage=Voc)という。
フィルファクタ(FF)は、下記式にて算出した。
式:フィルファクタ(FF)=最大出力(Pmax)/(Voc×Isc)
【0155】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
実施例10の光発電モジュールは、紫外線吸収剤を含む受光面封止材を用いたものであるため、実施例11の光発電モジュールと比べて、発電効率の観点においてわずかに劣るものであった。しかし、実施例10の光発電モジュールは、特定の樹脂材料(アイオノマー2を含む樹脂材料)により形成された樹脂シート3を有する配線シート1を備えているため、良好な配線接続性を示すものであった。また、実施例10の光発電モジュールは、比較例2の光発電モジュールと比べて、発電効率の観点において優れたものであった。
【0158】
この出願は、2015年2月6日に出願された日本出願特願2015−022069号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6