(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中央部の軸方向寸法が前記バルーンの軸方向寸法の1/2より大きく設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用バルーンカテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る医療用バルーンカテーテルの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における医療用バルーンカテーテルを示す模式図であり、
図2は、本実施形態におけるバルーン膨張状態を示す軸方向視した模式断面図であり、図において、符号100は、バルーンカテーテルである。
【0024】
本実施形態における医療用バルーンカテーテル(バルーンカテーテル)100は、
図1に示すように、ハブ110、バルーン120、プロキシマルシャフト130、およびガイドワイヤルーメンチューブ150を本体として有する。
【0025】
ハブ110は、バルーンカテーテル100を操作する医師の手元(近位側)に配置される。ハブ110には、ストップコック110aが設けられ、ハブ110は、高圧流体を供給するインフレータ等のような圧力印加装置(図示せず)と接続可能に構成されている。ハブ110には遠位側に延在するようにプロキシマルシャフト130が流体連通可能に接合され、プロキシマルシャフト130の遠位側には、バルーン120が接合されている。プロキシマルシャフト130は、高圧流体をバルーン120内部に供給するための流路が内部に形成される。
【0026】
バルーン120の近位端は、接続部120aとされてプロキシマルシャフト130の外周面を囲繞してその外周面に接合される。バルーン120の遠位端は、接続部120bとされてプロキシマルシャフト130の外周面を囲繞してその外周面に接合される。あるいは、バルーン120の遠位端は、接続部120bとされてプロキシマルシャフト130の遠位側から突出するディスタルシャフトを兼ねたガイドワイヤルーメンチューブ150の外周面を囲繞してその外周面に接合されてもよい。
【0027】
バルーン120内部に設けられたプロキシマルシャフト130の図示しない開口部により、バルーン120に供給される高圧流体がバルーン120内部に滞留し、バルーン120が拡張する。つまり、バルーン120は、高圧流体が内部に供給される前には、プロキシマルシャフト130の外径とほぼ同じ寸法に折り畳まれ、プロキシマルシャフト130の遠位側の外周面に密着するように設けられている。バルーン120は、高圧流体が内部に供給されると、折り目が展開することで拡張する。なお、
図1では、バルーン120が拡張した状態を示している。
【0028】
ガイドワイヤルーメンチューブ150は、その内腔(ガイドワイヤルーメン)がプロキシマルシャフト130の流体供給流路と連通することなくコアキシャル型又はバイアキシャル型の二重管構造を成すようプロキシマルシャフト130を貫通し、さらにバルーン120を貫通して設けられている。ガイドワイヤルーメンチューブ150の遠位側の開口部は、バルーン120の先端部よりもさらに遠位側に配設されている。ガイドワイヤルーメンチューブ150の近位側の開口部は、ガイドワイヤ160の挿出口であるガイドワイヤポート170として設けられている。
【0029】
本実施形態のバルーン120は、
図1に示すように、プロキシマルシャフト130から供給される流体により拡張収縮可能な筒状の膜状本体120cと、前記膜状本体の軸方向両端から伸延され、かつ前記カテーテルと接続する接続部120a,120bとから構成されている。
【0030】
膜状本体120cは、
図1に示すように、血管、尿管、胆管、食道などの生体内の管腔の狭窄部を拡張するためのほぼ均一外径を有する筒状とされた中央部121と、筒状の膜状本体120cの両端位置に形成されてそれぞれテーパー状(先細状)となるように縮径された両端部122,122とからなるものとされている。
【0031】
両端部122,122は、縮径するそれぞれの端部がそれぞれ接続部120a,120bに連設されている。両端の接続部120a,120bには、それぞれ開口が形成されてプロキシマルシャフト130が挿通されている。
なお、図において、両端部122,122は、円弧状の輪郭線を有しているが、これに限定されるものではなく、中央部121から接続部120a,120bへと縮径するものであれば、その輪郭形状はバルーン120の用途に応じて任意に設定することが可能である。
【0032】
本実施形態のバルーン120は、ポリアミド樹脂、ウレタン系、ナイロン系といった一般的に医療用バルーンとして用いられる樹脂からなるものとされ、特に限定されるものではない。
また、バルーン120の肉厚も、一般的なバルーンに準じることができ、例えば、直管状の中央部121よりも両端部122,122の方が大きく設定されることができる。
【0033】
バルーン120は、プロキシマルシャフト130の流体供給流路を通じて流体が当該バルーン120内に加圧供給されると膨張状態となり、プロキシマルシャフト130の流体供給流路に対して陰圧が付与されて流体がバルーン120内から排出されると収縮状態となる。
【0034】
図3は、本実施形態におけるバルーン中央部の折り畳み状態を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の折り畳み状態を示す軸方向視した模式断面図(b)であり、
図4は、本実施形態のバルーンにおける中央部の折り畳み線と両端部の折り畳み線との関係を示す斜視図であり、
図5は、本実施形態におけるバルーン中央部の羽付け工程を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の羽付け工程を示す軸方向視した模式断面図(b)であり、
図6は、本実施形態におけるバルーン中央部の巻き付け工程を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の巻き付け工程を示す軸方向視した模式断面図(b)である。
【0035】
バルーン120は、
図3に示すように、その収縮状態において形成される複数の羽状のプリーツ125,126を備えている。プリーツ125は、中央部121において形成されており、プリーツ126は、両端部122,122に形成されている。
【0036】
中央部121に形成された各プリーツ125は、
図3(a)に示すように、バルーン120の周方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)として3枚が設けられている。これら各プリーツ125は、バルーン120において軸線方向に延在するように形成されており、バルーン120における筒状となる中央部121の軸方向全長、つまり、バルーン120の近位側両端部122の遠位側から遠位側両端部122の近位側にわたって連続して形成されている。
【0037】
プリーツ125は、バルーン120における軸線と平行な方向に延在するように形成された中央部121軸方向全長に延在する複数の山折り線121aと、同様に中央部121軸方向全長に延在する谷折り線121bとによって、バルーン120を折り曲げることによって形成されている。
【0038】
山折り線121aは、バルーン120の径方向において等間隔に3本設けられ、その間に、谷折り線121bが隣接する山折り線121aどうしの間に等距離となるようにして3本設けられている。谷折り線121bの内側部分は、プリーツ125巻き付けの芯となるプロキシマルシャフト130の外周に当接するように折り畳まれることが好ましい。
【0039】
山折り線121aと谷折り線121bとはいずれも平行状態とされて、それぞれが等しい長さを有するように設定されるが、これに限るものではない。
【0040】
両端部122,122に形成された各プリーツ126は、
図3(b)に示すように、バルーン120の周方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)として6枚が設けられている。これら各プリーツ126は、バルーン120において軸線方向に延在するように形成されており、バルーン120における筒状となる中央部121の軸方向端部から、バルーン120自体の端部、つまり、中央部121の近位側からバルーン120の近位端接続部120aまで、および、中央部121の遠位側からバルーン120の遠位端接続部120bまで、それぞれにわたって連続して形成されている。
【0041】
プリーツ126は、バルーン120における軸線と略平行な方向に延在するように形成された軸方向に延在する複数の山折り線122aと、谷折り線122bとによって、バルーン120を折り曲げることによって形成されている。
谷折り線122bは、
図4に示すように、山折り線121aの端部からバルーン120の軸方向に連続して延在するように設けられ、バルーン120端部の接続部120aまたは接続部120bに接続するように設けられる。
なお、
図4においては、一枚のプリーツ125とこれに対応するプリーツ126のみを詳細に示している。
【0042】
谷折り線122bは、山折り線121aと同様にバルーン120の径方向において等間隔として3本設けられ、この谷折り線122bの両側には、それぞれ2本の山折り線122aが、いずれも両端部を接続するように設けられている。
山折り線122aは、谷折り線122bと山折り線121aとの接続部分から、周方向にずれるように分岐するとともに、山折り線122aの端部が、バルーン120端部の接続部120aまたは接続部120bにおいて、谷折り線122bの端部と接続するように設けられている。
【0043】
山折り線122aと谷折り線122bとはいずれも両端部122の軸方向全長にわたって延在して、山折り線122aが谷折り線122bよりも大きな延長を有するように設定される。
【0044】
このように、山折り線121a、山折り線122a、谷折り線121b、谷折り線122bが形成されることにより、バルーン120には、中央部121の3枚のプリーツ125と中央部121よりも多い6枚とされるプリーツ126を両端部122に有するようにバルーン120を折り畳むことができる。
【0045】
プリーツ125は、直管状の中央部121におけるバルーン10周囲寸法を山折り線121aと谷折り線121bとの本数で分割した長さと等しい径方向寸法を有している。
これに対してプリーツ126は、縮径状態として形成された両端部122におけるバルーン10周囲寸法を山折り線122aと谷折り線122bとの本数で分割した長さと等しいかこれよりやや大きい径方向寸法を有している。
したがって、プリーツ126の径方向寸法である折り畳んだ羽状の長さは、プリーツ125の径方向寸法である折り畳んだ羽状の長さよりも小さくなるように設定されている。
【0046】
これにより、中央部121における折り畳み状態のバルーン12内側面が互いに当接している面積に比べて、両端部122における折り畳み状態のバルーン12内側面が互いに当接している面積は小さくなるように設定されているため、バルーン120内部に加圧流体を供給した際に、中央部121に比べて両端部122のほうが先に膨張するように構成することが可能となる。
【0047】
なお、谷折り線122bの内側部分は、接続部120aまたは接続部120bにおいて、プリーツ126を巻き付けの芯となるプロキシマルシャフト130の外周に当接するように折り畳まれるが、谷折り線122bの内側部分は、山折り線121aとの接続部分においては、プロキシマルシャフト130の外周に当接していない。
【0048】
なお、
図4においては、プリーツ125およびプリーツ126が多少開いた状態で示してある。
このように、中央部121は、山折り線121aが延在している軸方向の長さを有する領域として設定され、また、両端部122,122は、谷折り線122bが延在している軸方向の長さを有する領域として設定される。このように、両端部122,122は、バルーン120の縮径程度とは関係なく設定することができる。
中央部121は、バルーン120の軸方向長さの1/2以上、好ましくは、9/10程度とすることができる。なお、両端部122,122をバルーン120の縮径した部分のみとして形成することも可能である。
【0049】
バルーン120は収縮状態になるにつれて、これらのプリーツ125,126がそれぞれバルーン120の周方向に折り畳まれて、
図5,
図6に示すように、プロキシマルシャフト130の周囲に巻き付いた状態とされる。
【0050】
以下、本実施形態における医療用バルーンカテーテル100の製造方法について説明する。ここでは、特にバルーン120にプリーツ125およびプリーツ126を形成するための工程を中心に説明する。
【0051】
まず、バルーン120を製造するバルーン製造工程を行う。この工程では、まず押出成形により、バルーン120となる管状のパリソンを製造する。
次に、管状のパリソンを長さ方向に延伸させた後、バルーン120の形状に形成された金型を用いて、所定の条件下でブロー成形を行う。これにより、管状のパリソンが2軸延伸された状態となる。その後、延伸された管状パリソンの両端を切断することでバルーン120を製造する。
【0052】
次に、プロキシマルシャフト130の遠位端部にバルーン120の接合部120a,120bを接合する。この工程では、プロキシマルシャフト130の遠位端部を接合部120a,120bに挿入し、その状態でこれらを熱溶着により接合し、バルーン120内部を密閉する。なお、接合方法は、必ずしも熱溶着に限定されることはなく、例えば接着剤による接着等その他の接合方法を採用してもよい。
【0053】
次に、バルーン120に対して圧力を付与することによりバルーン120を膨張させる膨張工程を行う。この工程では、バルーン120を所定の膨張状態として、
図2に示すように、バルーン120の使用時における膨張状態(全部膨張状態)とする。バルーン120に付与する圧力は、バルーン120の拡張処置における使用時と等しい圧力か、これより小さい、80%程度の圧力とすることができる。
【0054】
続いて、バルーン120にプリーツ125およびプリーツ126を形成するためのプリーツ形成装置10にバルーン120をセット(配置)する。さらに、連続して、プリーツ形成装置10によってバルーン120にプリーツ125およびプリーツ126を形成するプリーツ形成工程を行う。
【0055】
以下、これら各工程について
図5〜
図9に基づいて説明する。
図7は、本実施形態におけるプリーツ形成装置を示す模式図であり、
図8は、本実施形態におけるバルーン中央部の折り畳み工程を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の折り畳み工程を示す軸方向視した模式断面図(b)であり、
図9は、本実施形態におけるバルーン中央部の折り畳み工程を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の折り畳み工程を示す軸方向視した模式断面図(b)であり、図において、符号10は、プリーツ形成装置を示すものである。
【0056】
プリーツ形成装置10は、
図7に示すように、円形状の開口部を有するベースプレート11と、同プレートの正面視において開口部12の中心軸周りに所定の間隔で複数(図では3つ)設けられた押圧部材13と、隣接する押圧部材13の間に設けられた押圧板21と、を備える。
【0057】
押圧部材13は、ベースプレート11における開口部12の開口縁部から開口部12の中心軸側に向かって延びるように形成されており、上記開口縁部に配設された回動軸部15を介して回動可能に軸支されている。また、押圧部材13は、ベースプレート11の板面と平行な板面を有する平板状をなしており、その厚みがバルーン120の全長(軸線方向の長さ)よりも大きいものとされている。
【0058】
押圧板21は、隣接する押圧部材13の間に位置し、ベースプレート11における開口部12の開口縁部から開口部12の中心軸側に向かって延びるように形成されており、上記開口縁部に配設された回動部22を介して回動可能に軸支されている。また、押圧板21は、開口部12の中心軸と平行な板面を有する平板状をなしており、その長さがバルーン120における両端部122の軸線方向の長さと同程度とされている。
【0059】
各押圧部材13により囲まれる内側領域はバルーン120が配置される配置領域17となっている。
各押圧部材13は、配置領域17の中心軸を中心として放射状に互いに等間隔に配置されており、それら各々が回動軸部15の中心軸を中心として回動可能となっている。この場合、回動軸部15の中心軸を中心とする各押圧部材13の回動により配置領域17の大きさが大小変化する。なお本実施形態では、配置領域17の中心軸と開口部12の中心とが一致するように構成されている。また、配置領域17にバルーン120が配置された場合には、そのバルーン120の中心軸およびプロキシマルシャフト130の中心軸が配置領域17の中心軸に一致し、その状態でバルーン120外周部が押し潰されて、プリーツ形成がなされるようになっている。
【0060】
押圧板21は、押圧部材13と同様に、配置領域17の中心軸を中心として放射状に互いに等間隔に配置されており、それら各々が回動部22の中心軸を中心として回動可能となっている。この場合、回動部22の中心軸を中心とする各押圧板21の回動により、押圧板21先端21aが配置領域17へ突出する量の大きさが大小変化する。
なお、押圧板21は、バルーン120の両端部122に対応するように、中心軸方向に離間して2箇所に3枚ずつ、計6枚設けられる。
【0061】
押圧部材13には、その回動先端となる先端13c側に、配置領域17に配置された膨張状態のバルーン120の外周面を押圧する第1押圧面13aと第2押圧面13bとが形成されている。これら各押圧面13a,13bは、配置領域17の中心軸方向から見て各々円弧状をなしており、第1押圧面13aが凹状の円弧状に形成されているのに対し、第2押圧面13bが凸状の円弧状に形成されている。これら各押圧面13a,13bは必ずしも円弧状である必要はなく、その一部又はすべてが平面状、あるいは、自由曲面等折り畳みに好適な形状であってもよい。
【0062】
また、各押圧面13a,13bはそれぞれ隣り合った他の押圧部材13に対向するものとなっている。すなわち、図において第1押圧面13aは図の反時計回り方向に位置する押圧部材13の第2押圧面13bに対向し、第2押圧面13bは図の時計回り方向に位置する押圧部材13の第1押圧面13aに対向している。各押圧面13a,13bは、中心軸方向において少なくともバルーン120の長さよりも大きい長さ寸法を有している。
【0063】
各押圧面13a,13bは、それら両押圧面13a,13bの間の隙間においてバルーン120を押し潰すことでプリーツ125,126を形成するものであり、各押圧面13a,13bにおいて所定の間隔(プリーツ形成のための間隔)を隔てて互いに対向する対向部分がプリーツ形成面となっている。ここで、第1押圧面13aにおいては、その一部が第2押圧面13bに対向しない非対向面部となっており、プリーツ形成時には、その非対向面部によりバルーン120の中央部121および両端部122が配置領域17の中心軸に向けて押圧されるようになっている。
【0064】
押圧面13aと押圧面13bとの交差する先端13cは、配置領域17に配置された膨張状態のバルーン120外周面において、中央部121の谷折り線121bとなる部分に当接し、この部分を押圧して谷折り線121bを形成する部分とされる。
押圧板21の先端21aは配、配置領域17に配置された膨張状態のバルーン120外周面において、両端部122の谷折り線122bとなる部分に当接し、この部分を押圧して谷折り線122bを形成する部分とされる。
【0065】
各押圧部材13は、回動軸部15の中心軸を中心とする回動によって
図8(a)(b)に示す初期位置と、
図9(a)(b)に示すプリーツ形成位置との間で移動可能とされている。各押圧板21も、同様に、回動部22の中心軸を中心とする回動によって
図8(b)に示す初期位置と、
図9(b)に示すプリーツ形成位置との間で移動可能とされている。
【0066】
押圧部材13は、図示しないモータ等の駆動装置によってそれぞれ同じ側に同期して回動するようになっている。また、押圧板21は、図示しないモータ等の駆動装置によってそれぞれ同じ側に同期して回動および配置領域17の中心に向けて突出するようになっている。
【0067】
各押圧部材13が初期位置からプリーツ形成位置に移動すると、それぞれ第1押圧面13aの先端13c側が配置領域17の中心軸側、つまり、配置されたバルーン120の径方向内側に向かって変位する。具体的には、各押圧部材13における第1押圧面13aの先端13cに内接する仮想内接円を想定した場合、この仮想内接円の径が、押圧部材13の初期位置においてはバルーン120の中央部121の外径よりも若干大きくなり、押圧部材13のプリーツ形成位置においてはバルーン120の接続部120a,120bの外径よりもやや大きくなるようになっている。また、各押圧部材13が初期位置からプリーツ形成位置に移動すると、隣り合う各押圧部材13が接近し各押圧部材13の間の隙間、詳しくは各押圧部材13において対向する押圧面13a,13bどうしの隙間が小さくなる。
【0068】
バルーン120を配置する工程では
図8(a)(b)に示すように、プリーツ形成装置10における配置領域17にバルーン120を配置する。なおこのとき、各押圧部材13および各押圧板21は初期位置にある。この場合、バルーン120における両端部122と中央部121との境界を、それぞれ、互いに軸方向に離間した押圧板21と押圧板21との対向する端部に位置合わせした状態で、バルーン120を配置領域17に配置する。これにより、バルーン120において中央部121の軸方向外側に位置する両端部122,122が押圧板21と軸方向に対応する状態として配置領域17に配置される。なお、本工程は、膨張工程の前に行ってもよい。
【0069】
次に、バルーン120の中央部121および両端部122,122に対してプリーツ125およびプリーツ126を形成するプリーツ形成工程を行う。
【0070】
この工程では、各押圧部材13を、
図8(a)(b)に示す初期位置から
図9(a)(b)に示すプリーツ形成位置に移動させて、各押圧部材13の第1押圧面13aの先端13cによりバルーン120の中央部121を押し潰すことにより、中央部121の一部を各押圧部材13の間に中央部121の径方向外側に向けて突出させ複数のプリーツ125を形成する。
【0071】
同時に、各押圧板21を、
図8(b)に示す初期位置から
図9(b)に示すプリーツ形成位置に移動させて、各押圧板21の先端21aによりバルーン120の両端部122,122をバルーン10内側方向に押し潰すことにより、両端部122,122の一部を各押圧部材13および押圧板21の間に両端部122の径方向外側に向けて突出させ複数のプリーツ126を形成する。
【0072】
具体的には、この際、
図9(a)に示すように、中央部121の一部が各押圧部材13において対向する各押圧面13a,13b(具体的には各羽形成面)の間の隙間に入り込み、それら各面13a,13bの間で挟み込まれてプリーツ125が形成される。より詳しくは、これら各面13a,13bの間に中央部121の一部が所定時間挟み込まれることでプリーツ125が形成される。
【0073】
同時に、
図9(b)に示すように、両端部122の一部が各押圧部材13と押圧板21において対向する押圧面13aと押圧板21との間、および,押圧面13bと押圧板21との間の隙間に入り込み、それら押圧面13aと押圧板21,押圧面13bと押圧板21の間で挟み込まれてプリーツ126が形成される。
【0074】
このとき、内圧のかかったバルーン120が膨張しようとしているため、押圧部材13の交差する先端13cが当接した中央部121の部分に対して、周方向その両側がバルーン120外方向に向けて膨張しようとしている。このため、この押圧部材13先端13cが当接した線状の箇所がバルーン120中心軸方向に押し込まれることになるため、押圧部材13先端13cに沿って谷折り線121bが形成されることになる。
【0075】
同時に、隣り合う押圧部材13先端13cからバルーン120の周方向に等距離の位置に押圧板21の先端21aが、当接した両端部122の部分に対して、周方向その両側がバルーン120外方向に向けて膨張しようとしている。このため、この押圧板21先端21aが当接した線状の箇所がバルーン120中心軸方向に押し込まれることになるため、押圧板21先端21aに沿って谷折り線122bが形成されることになる。
【0076】
このように、押圧板21の先端21aが、隣り合う押圧部材13先端13cどうしから、バルーン120の周方向に等距離の位置に当接することで、プリーツ125の先端となる山折り線121aに連続した位置に、押圧板21の先端21aの当接した谷折り線122bが形成されることになる。
【0077】
なお、本工程において、プロキシマルシャフト130の内管に内径固定用のマンドレルを挿入した状態でプリーツ125,126を形成するようにしてもよい。
【0078】
これにより、
図5(a)(b)に示すように、中央部121の軸方向全長にプリーツ125を3枚形成するとともに、両端部122の軸方向全長にプリーツ125よりも径方向寸法の小さなプリーツ126を6枚形成することができる。
【0079】
プリーツ形成工程が終了した後、バルーン120に対して陰圧を付与し、その状態で各押圧部材13および押圧板21を初期位置に移動させバルーン120を配置領域17から取り外す。これにより、バルーン120において、
図5(a)に示すように、中央部121にプリーツ125が形成されるとともに、
図5(b)に示すように、両端部122にプリーツ126が形成された状態が保持される。
【0080】
次に、バルーン120の周方向に沿ってプリーツ125およびプリーツ126を折り畳むフォールド工程を行う。この工程では、
図7に示した、プリーツ形成装置10を用いてプリーツ125およびプリーツ126を折り畳むことができる。プリーツ形成装置10は、折り畳み装置として用いる場合、バルーン120と、配置領域17周囲の押圧部材13とが、互いに回動可能とされていればよい。
【0081】
フォールド工程では、まず、プリーツ形成装置10の配置領域17に、プリーツ125およびプリーツ126の形成されたバルーン120を配置し、その後、押圧部材13を回動させることによりプリーツ125およびプリーツ126を同部材13により回動する側に押しながらプリーツ125およびプリーツ126を折り畳む。これにより、各プリーツ125およびプリーツ126がバルーン120の径方向に折り畳まれ、バルーン120の軸線周りに巻き付いた状態となる。
【0082】
なお、プリーツ形成工程後に、陰圧を付与したバルーン120、各押圧部材13および押圧板21を初期位置に移動させずに、プリーツ125およびプリーツ126と押圧部材13および押圧板21とを離間させた状態で、フォールド工程を開始することができる。
【0083】
次に、プリーツ125およびプリーツ126が折り畳まれたバルーン120の外側にプロテクトチューブを被せてバルーン120を加熱することにより、バルーン120をプリーツ125およびプリーツ126が折り畳まれた形状に形状付けする形状付け工程を行う。ナイロン系エラストマーを用いたバルーン120の場合、例えばバルーン120を70℃の温度条件下で20分加熱することができる。
【0084】
その後、後工程として、プロキシマルシャフト130の近位端部にハブ110等を取り付ける工程を行って、一連の製造作業が終了する。
【0085】
なお、本実施形態において、プリーツ125を3枚としたが、4〜8枚等、任意の枚数とすることができ、これをプリーツ形成工程の前に決定することができる。
【0086】
次に、医療用バルーンカテーテル100による処置について簡単に説明する。
図10は、本実施形態の医療用バルーンカテーテル100によるバルーン膨張処置工程を示す模式図であり、
図11は、従来のバルーンカテーテルによるバルーン膨張処置工程を示す模式図である。
【0087】
まず、医療用バルーンカテーテル100のガイドワイヤルーメンチューブ150にガイドワイヤ160を挿通し、挿通したガイドワイヤ160を予め生体管腔内の狭窄部C内に挿入しておいた内視鏡の鉗子口を通じて生体管腔内に挿入する。この際、ガイドワイヤ160を生体管腔内において狭窄箇所Cよりも遠位側まで導入する。続いて、
図10(a)に示すように、バルーンカテーテル100をガイドワイヤ160に沿って押引操作を加えながら生体管腔内に挿入し、バルーン120を狭窄箇所に配置する。このとき、バルーン12は収縮状態としておく。その後、
図10(b)〜(d)に示すように、加圧器を用いてハブ110側からプロキシマルシャフト130の流体供給流路を介してバルーン120に圧縮流体を供給し、バルーン120を膨張させる。
【0088】
バルーン120を拡張すると、巻き付き距離の長い中央部121は膜どうしの密着が高いため拡張しにくく、両端部122は膜どうしの密着が少ないため拡張しやすくなり、結果として、
図10(b)に示すように、中央部121より先に両端部122の拡張が開始する。その後、
図10(c)に示すように、中央部121が拡張挙動を開始する。その結果、
図10(d)に示すように、バルーン120が狭窄部Cに対して滑って位置ずれすることを防止した状態で、バルーン120により狭窄箇所が拡張される。
【0089】
これに対して、従来のバルーンBでは、
図11(a)〜(d)に示すように、バルーンBにおいて、膨張の開始される位置が設定されていないため、バルーンBが狭窄部Cに対して滑って位置ずれする可能性がある。
【0090】
狭窄箇所Cの拡張が終了した後、バルーン120内の圧縮流体を排出する(バルーン120に陰圧を付与する)ことによりバルーン120を収縮させた後、バルーンを、生体管腔内から抜管して拡張処置を終了する。
【0091】
本実施形態においては、プリート工程でプリーツ125,126をつける際に、バルーン120の中央部121と両端部122とで形成するプリーツの枚数を変えることでバルーン120拡張時の挙動を調整して位置ずれを防止することができる。
【0092】
本実施形態においては、バルーン120中央部121を羽付け(プリート)する金型13の軸方向両端位置に、例えば板状の金型21を追加し、中央部121につくるプリーツ125の枚数に対して両端部122につくるプリーツ126の枚数の方が多くなるようなプリーツ形成装置10を用いることにより、このような金型13,21で折り畳まれたバルーン120は、中央部121に作る一枚のプリーツ125に対して両端部122では2枚のプリーツ126を形成することができる。このようにして両端部122のプリーツ126枚数を中央部121のプリーツ125枚数の2倍にすることができる。
【0093】
この金型13,21にてプリーツ形成(羽付け)をしたバルーン120をフォールドすると、中央部121はプリーツ125の長さ寸法が大きくなるため巻き付いた距離が長くなるが、両端部122はプリーツ126の長さが短いため、巻き付いた距離は短くなる。
【0094】
このように折り畳まれたバルーン120を拡張すると、巻き付き距離の長い中央部121は膜どうしの密着が高いため拡張しにくく、両端部122は膜どうしの密着が少ないため拡張しやすくなり、結果として中央部121より先に両端部122の拡張が開始することにより拡張挙動を調整することができ、その結果バルーン120が狭窄部等に対して滑って位置ずれすることを防止できるものである。
【0095】
さらに、板状の金型21を金型13に対してそれぞれ2枚ずつ追加すると、
図12に示すように、中央部12のプリーツ125の枚数に対して両端部122のプリーツ126の枚数を3倍とすることが可能である。このように、追加する押圧板21の数によって、両端部122形成するプリーツ126の枚数を、プリーツ125に対して任意の整数倍とすることができる。
【0096】
なお、本実施形態においては、中央部121が直管状のバルーン120として説明したが、これ以外の輪郭形状を有するバルーンにおいて、その折り畳み方を軸方向で変化させることも可能である。
【0097】
以下、本発明に係る医療用バルーンカテーテルの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図13は、本実施形態における医療用バルーンカテーテルを示す模式図、
図14は、本実施形態におけるバルーン中央部の羽付け工程を示す軸方向視した模式断面図(a)、バルーン両端部の羽付け工程を示す軸方向視した模式断面図(b)である。
【0098】
本実施形態における医療用バルーンカテーテル(バルーンカテーテル)200は、
図13に示すように、シース202と、バルーン220と、接続部204と、先端チップ205と、スタイレット206とを備える。
【0099】
シース202は、ルーメン221を有し、長手軸L方向に延びる長尺で可撓性を有する部材である。シース202の先端部にバルーン220の基端部が気密に接続されている。シース202の基端部には接続部204が設けられている。接続部204には、長手軸Lに沿って先端から基端まで連通する連通路241が形成されている。シース202のルーメン221は、バルーン220の内部及び接続部204の連通路241と連通している。したがって、接続部204に接続したシリンジ等により、連通路241およびルーメン221経由でバルーン220に流体を供給することでバルーン120を膨張させることができる。
シース202の先端部には、X線透視下で確認可能なマーカー222が設けられていてもよい。
【0100】
先端チップ205は、医療用バルーンカテーテル200の先端に設けられている。先端チップ205は、長手軸L方向に延びる略円錐形状の部材であり、体腔内に挿入されたときに、組織への損傷を防ぐために、その先端部は球状に形成されている。
先端チップ205の基端部には、バルーン220の先端部が密着固定されている。
【0101】
スタイレット206は、軸部材であり、バルーン220の内部に挿通され、バルーン120の先端から基端まで長手軸Lに沿って延設されている。スタイレット206の先端部は、先端チップ205の基端に接続されている。スタイレット206は、バルーン220の内部、シース202のルーメン221、および接続部204の連通路241を通って延びており、接続部204の連通路241の内壁に固定されている。スタイレット206は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金等からなる。
【0102】
本実施形態における医療用バルーンカテーテル(バルーンカテーテル)200は、バルーン220が、上述した第1実施形態と同等のものとして設けられる。なお、本実施形態においては、上述した第1実施形態における符号100番台を200番台に読み替えるものとする。
【0103】
バルーン220は収縮状態になるにつれて、これらのプリーツ225,226がそれぞれバルーン220の周方向に折り畳まれて、
図14に示すように、スタイレット206の周囲に巻き付いた状態とされる。
【0104】
ここで、本実施形態においては、プリーツ225,226の折り畳み方向が、第1実施形態におけるプリーツ125,126とは、スタイレット206の周囲方向において逆向きとなっている。つまり、
図5に示すプリーツ125,126においては、折り畳み方向が左回りとなるように図示しているが、
図14に示すプリーツ225,226においては、折り畳み方向が右回りとなるように設定されている。
このように、プリーツの折り畳み方向は、どちら周りとしてもよい。
【0105】
本実施形態における医療用バルーンカテーテル(バルーンカテーテル)200においても、上述した第1実施形態と同等の効果を奏することができる。