特許第6861537号(P6861537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861537
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】音声出力装置付エレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   B66B3/00 F
   B66B3/00 M
   B66B3/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-38948(P2017-38948)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-144914(P2018-144914A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−018589(JP,A)
【文献】 特開平04−191267(JP,A)
【文献】 特開2006−341964(JP,A)
【文献】 特開2012−121710(JP,A)
【文献】 特開2013−001467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 3/02
B66B 11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ある階の夫々の乗場において乗場扉の三方を覆うように配設された三方枠と、前記乗場毎に設けられた乗場音声出力装置とを備えた音声出力装置付エレベーターであって、
前記各階に1以上の光電センサを備え、前記光電センサは、前記三方枠の一方側側壁部に取り付けられて他方側側壁部に向けて光を出射する光出射部、及び前記他方側側壁部に取り付けられて前記光出射部から出射された光を受ける受光部を有し、
更に、カゴ内に人が存在するか否かを検知可能なカゴ内人検知部と、
前記光電センサからの信号と、前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、カゴ内に人が存在すると共に特定階の前記三方枠で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、前記カゴから人が降りてくることを意味する音声を前記特定階の前記乗場音声出力装置に出力させる制御部と、
を備え、
前記カゴ内人検知部は、前記カゴの乗車率を検出可能な信号を前記制御部に出力し、
前記各階の乗場の上方に設けられ、前記乗場に存在する人を検知可能な乗場センサと、
前記カゴ内に配設されたカゴ音声出力装置と、を備え、
前記制御部は、前記乗場センサからの信号と前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、前記カゴの乗車率が所定以上の乗車率であり、かつ前記カゴの着床時に人が乗り込んでくると判断すると、前記カゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を前記カゴ音声出力装置に出力させる、音声出力装置付エレベーター。
【請求項2】
複数ある階の夫々の乗場において乗場扉の三方を覆うように配設された三方枠と、前記乗場毎に設けられた乗場音声出力装置とを備えた音声出力装置付エレベーターであって、
前記各階に1以上の光電センサを備え、前記光電センサは、前記三方枠の一方側側壁部に取り付けられて他方側側壁部に向けて光を出射する光出射部、及び前記他方側側壁部に取り付けられて前記光出射部から出射された光を受ける受光部を有し、
更に、カゴ内に人が存在するか否かを検知可能なカゴ内人検知部と、
前記光電センサからの信号と、前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、カゴ内に人が存在すると共に特定階の前記三方枠で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、前記カゴから人が降りてくることを意味する音声を前記特定階の前記乗場音声出力装置に出力させる制御部と、
を備え、
前記カゴ内に配設されたカゴ音声出力装置と、
前記各階に設けられ、高さ方向に間隔をおいて配設される複数の前記光電センサと、を備え、
制御部は、前記特定階の前記複数の光電センサのうちで上側の1以上の前記光電センサが人を検知しなかった一方、下側の1以上の前記光電センサが人を検知したと判断すると、子供が前記カゴに乗り込んでくることを意味する音声を前記カゴ音声出力装置に出力させる、音声出力装置付エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置を含むエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターとしては、特許文献1に記載されているように、乗場扉周囲の三方を覆うように三方枠を配設したものがある。三方枠には、例えば、制御装置が内蔵され、点検札が保守作業中に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−322208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カゴに乗り込もうという人が三方枠に囲まれたスペースでカゴの到着を待っていると、カゴ内から出てくる人とぶつかり易いだけでなく、乗場扉と接触する可能性も高まる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、三方枠に囲まれたスペースでカゴの到着を待っている人に、乗場扉に近づきすぎている旨、注意喚起でき、カゴ内に乗客がいることも伝達できる音声出力装置付エレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示に係る音声出力装置付エレベーターは、複数ある階の夫々の乗場において乗場扉の三方を覆うように配設された三方枠と、前記乗場毎に設けられた乗場音声出力装置とを備えた音声出力装置付エレベーターであって、前記各階に1以上の光電センサを備え、前記光電センサは、前記三方枠の一方側側壁部に取り付けられて他方側側壁部に向けて光を出射する光出射部、及び前記他方側側壁部に取り付けられて前記光出射部から出射された光を受ける受光部を有し、更に、カゴ内に人が存在するか否かを検知可能なカゴ内人検知部と、前記光電センサからの信号と、前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、カゴ内に人が存在すると共に特定階の前記三方枠で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、前記カゴから人が降りてくることを意味する音声を前記特定階の前記乗場音声出力装置に出力させる制御部と、を備える。
【0007】
開示によれば、制御部が、カゴ内に人が存在すると共に特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、カゴから人が降りてくることを意味する音声を特定階の乗場音声出力装置に出力させる。したがって、三方枠で囲まれたスペースにいる人にカゴから降りてくる人とぶつかる可能性がある旨、注意喚起できる。
【0008】
更には、カゴ内に人が存在する条件と、特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在する条件とが同時に満たされた瞬間に、カゴの存在位置に限らず、カゴから人が降りてくることを意味する音声が、特定階に出力される。例を挙げれば、50の乗場が存在する場合に、カゴが最上階周辺の高層階に存在する場合において、最下階周辺の低層階の乗場で上記2つの条件が満たされても、当該低層階の乗場で上記音声が出力される。したがって、当該音声が出力された後にカゴ内に人がいなくなる状況が起こり得る。しかし、このような場合でも、上記音声を出力することで、三方枠で囲まれたスペースにいる人にカゴ内の乗客の有無と関係なく単に乗場扉に近づきすぎると危ないことを警告できる。よって、エレベーターのより安全な運行を実現できる。
【0009】
また、本開示において、前記カゴ内人検知部は、前記カゴの乗車率を検出可能な信号を前記制御部に出力し、前記各階の乗場に設けられたカゴ呼び釦と、前記カゴ内に配設されたカゴ音声出力装置と、を備え、前記制御部は、前記カゴ呼び釦からの信号と前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、前記カゴの乗車率が所定以上の乗車率であり、かつ前記カゴの着床時に人が乗り込んでくると判断すると、前記カゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を前記カゴ音声出力装置に出力させてもよい。
【0010】
例えば、ビジネスビルにおける、カゴ内が混雑する時間帯、例えば、出勤時、昼食時、及び退社時等に、先にカゴに乗り込んだ人がカゴのカゴ扉側に立って、後からカゴに乗り込んだ人が、行先階指定釦を押しにくい状況が生じることがある。
【0011】
上記構成によれば、カゴの乗車率が所定以上の乗車率であって、カゴの着床時に人が乗り込んでくる場合に、カゴ音声出力装置がカゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を出力する。したがって、カゴ内の混雑時に後からカゴに乗り込んだ人が行先階指定釦を押圧し易くなる。
【0012】
また、本開示において、前記カゴ内人検知部は、前記カゴの乗車率を検出可能な信号を前記制御部に出力し、前記各階の乗場の上方に設けられ、前記乗場に存在する人を検知可能な乗場センサと、前記カゴ内に配設されたカゴ音声出力装置と、を備え、前記制御部は、前記乗場センサからの信号と前記カゴ内人検知部からの信号とに基づいて、前記カゴの乗車率が所定以上の乗車率であり、かつ前記カゴの着床時に人が乗り込んでくると判断すると、前記カゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を前記カゴ音声出力装置に出力させてもよい。
【0013】
カゴ呼び釦の替わりに、乗場に存在する人を検知可能な乗場センサを用いてカゴ内への人の乗り込みを判断してもよい。本構成においても、カゴの乗車率が所定以上の乗車率であって、カゴの着床時に人が乗り込んでくる場合に、カゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声をカゴ内に出力できる。したがって、カゴ内の混雑時に後からカゴに乗り込んだ人が行先階指定釦を押圧し易くなる。
【0014】
また、本開示において、前記カゴ内に配設されたカゴ音声出力装置と、前記各階に設けられ、高さ方向に間隔をおいて配設される複数の前記光電センサと、を備え、制御部は、前記特定階の前記複数の光電センサのうちで上側の1以上の前記光電センサが人を検知しなかった一方、下側の1以上の前記光電センサが人を検知したと判断すると、子供が前記カゴに乗り込んでくることを意味する音声を前記カゴ音声出力装置に出力させてもよい。
【0015】
子供は、肉体が大人に比べて劣り、カゴに乗り込む際に想定外の動きをすることもある。上記構成によれば、特定階の複数の光電センサのうちで上側の1以上の光電センサが人を検知しなかった一方、下側の1以上の光電センサが人を検知したと判断すると、カゴ音声出力装置が、子供がカゴに乗り込んでくることを意味する音声を出力する。したがって、カゴ内の人が、子供がカゴに乗り込んでくることを予め認識でき、カゴ内の人が子供の乗り込みを想定した動きを取り易くなる。よって、エレベーターを、安全かつ円滑に運行できる。
【0016】
また、本開示に係る音声出力装置付エレベーターは、複数ある階の夫々において乗場において乗場扉の三方を覆うように配設された三方枠と、前記乗場毎に設けられた乗場音声出力装置とを備えた音声出力装置付エレベーターであって、前記三方枠の一方側側壁部に取り付けられて他方側側壁部に向けて光を出射する光出射部、及び前記他方側側壁部に取り付けられて前記光出射部から出射された光を受ける受光部を有し、前記各階に設けられる光電センサと、カゴ内に人が存在するか否かを検知可能なカゴ内人検知部と、カゴの存在位置を特定可能なカゴ位置特定部と、前記光電センサからの信号、前記カゴ内人検知部からの信号、及び前記カゴ位置特定部からの信号に基づいて、前記カゴ内に人が存在すると共に特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在し、かつ前記カゴが前記特定階の乗場から高さ方向に所定距離以内の位置に存在すると認識すると、前記カゴから人が降りてくることを意味する音声を前記特定階の前記乗場音声出力装置に出力させる。
【0017】
開示によれば、制御部が、カゴ内に人が存在すると共に特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在し、かつ、カゴが特定階の乗場から高さ方向に所定距離以内の位置に存在すると認識すると、カゴから人が降りてくることを意味する音声を特定階の乗場音声出力装置に出力させる。したがって、三方枠で囲まれたスペースにいる人に、乗場扉が開くときに対してより時間的に近いタイミングでカゴから降りてくる人とぶつかる旨、注意喚起することになる。よって、カゴから降りてくる人とぶつかるという情報の重要性が高まり、更に、音声が出力される頻度を低減でき、乗場にいる人が音声の出力で不快になることを抑制できる。

【発明の効果】
【0018】
本発明に係る音声出力装置付エレベーターによれば、三方枠に囲まれたスペースでカゴの到着を待っている人に、乗場扉に近づきすぎている旨、注意喚起でき、カゴ内に乗客がいることも伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
図2】上記エレベーターにおける最下階の乗場の乗場扉周辺の斜視図である。
図3】三方枠で囲まれたスペースにいる人に乗場扉に近づきすぎると危ないことを警告するときの制御盤の処理手続を示すフローチャートである。
図4】混雑時にカゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝えるときの制御盤の処理手続を示すフローチャートである。
図5】カゴ内の人に子供がカゴに乗り込んでくることを伝えるときの制御盤の処理手続を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の図面および実施例の説明で、X方向は、カゴの奥行き方向を示し、Y方向は、カゴの幅方向を示し、Z方向は、カゴの高さ方向を示す。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター10の概略構成図である。図1に示すように、エレベーター10は、カゴ11、巻上機12、釣合錘13、ワイヤーロープ14、カゴ呼び釦15、行先階指定釦16、光電センサ装置17、着床位置検出センサ18、カゴ内人検知部の一例としての重量センサ25、乗場音声出力装置26、カゴ音声出力装置27、及び制御部としての制御盤19を備える。制御盤19及び巻上機12は、昇降路20上方にある機械室30内に設けられる。なお、エレベーターが機械室を有さない場合、制御盤及び巻上機は、例えば昇降路下方にあるピット上に設けられる。ワイヤーロープ14は、巻上機12に巻回され、一端部がカゴ11の上部に固定されるのに対して、他端部が釣合錘13に固定される。カゴ呼び釦15は、カゴ11を呼ぶと共にカゴ11の移動方向を指定する釦であり、全ての階の乗場22に設けられる。また、行先階指定釦16は、カゴ11の行先階を指定するためにカゴ11内に設けられる。カゴ11及び釣合錘13の夫々は、昇降路20内に設けられたガイドレールでガイドされる。カゴ呼び釦15、及び行先階指定釦16からの信号を受けた制御盤19が巻上機12のモータ12aの回転数及び回転方向を適宜制御することで、カゴ11が昇降路20内を昇降する。
【0022】
光電センサ装置17は、各階の乗場22に設置される。光電センサ装置17は、複数の光電センサを含み、各光電センサは、乗場の三方枠60(図2参照)に取り付けられる。光電センサ装置17は、三方枠60で囲まれたスペースにいる人を検知する。光電センサ装置17が当該人を検知する方法、複数の光電センサの配置構成、及び各光電センサの構成については、後で図2を用いて詳細に説明する。
【0023】
着床位置検出センサ18は、カゴ11が着床する乗場22の着床位置を検出する。着床位置検出センサ18は、例えば、各階の着床位置に対応する昇降路位置に設けられた鉄板等のベーン18aと、ベーン18aを検出する磁気方式の検出器18bとで構成される。着床位置検出センサ18からカゴ11が乗場22に着床したことを表す信号を受けた制御盤19が乗場扉用モータ及びカゴ扉用モータ(図示せず)を制御することで、乗場扉31及びカゴ扉32が開き、人がカゴ11から乗り降り可能となる。
【0024】
重量センサ25は、カゴ11の下方側に設けられる。重量センサ25は、例えば、カゴ本体と、カゴ本体を支持するカゴ枠との間に配設される圧電素子を含み、圧電素子は、カゴ室内の負荷に応じた信号を制御盤19に出力する。制御盤19は、重量センサ25からの信号に基づいて、カゴ室内の乗客及び物の総荷重を算出し、カゴが運行可能である最大積載荷重に対する総荷重の比(乗車率)を算出する。
【0025】
乗場音声出力装置26は、各階に設けられ、合成音を生成する乗場音声生成部と、乗場音声生成部に電気的に接続された乗場スピーカとを含む。乗場音声生成部は、制御盤19からの制御信号によって合成音を生成し、生成された合成音が乗場スピーカから乗場22に出力される。乗場音声出力装置26は、乗場にいる人に情報を伝えるために用いられる。
【0026】
カゴ音声出力装置27は、カゴ11内に設けられ、合成音を生成するカゴ音声生成部と、音声生成部に電気的に接続されたカゴスピーカとを含む。カゴ音声生成部は、制御盤19からの制御信号によって合成音を生成し、生成された合成音がカゴスピーカからカゴ11内に出力される。カゴスピーカは、カゴ11内において非常時等に管制センタと通話するのに用いられるスピーカで構成できるが、当該スピーカとは別のスピーカで構成されてもよい。カゴ音声出力装置27は、カゴ11内の人に情報を伝えるために用いられる。
【0027】
図2は、エレベーター10における最下階の乗場22の乗場扉31周辺の斜視図である。次に、図2を用いて、光電センサ装置17が人を検知する方法、光電センサ装置17が含む複数の光電センサ40,41の配置構成、及び各光電センサ40,41の構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、エレベーター10は、各階の乗場22に乗場扉31の三方を覆うように配設された三方枠60を備え、光電センサ装置17は、第1及び第2光電センサ40,41を含む。第1光電センサ40は、光出射部としての投光器40a、及び受光部としての受光器40bを有し、投光器40aは三方枠60の一方側側壁部60aに取り付けられ、受光器40bは他方側側壁部60bに取り付けられる。投光器40aと受光器40bは、Y方向に対向し、同じ高さ位置に配設される。投光器40aの発光素子から出射された光は、当該光を遮る人がいないと受光器40bの受光素子の受光面に入射し、人で遮られると当該受光面に入射しない。第1光電センサ40は、投光器40aから投光された光が受光器40bに到達しないことで人を検知する。
【0029】
また、第2光電センサ41も、光出射部としての投光器41a、及び受光部としての受光器41bを有し、投光器41aは一方側側壁部60aに取り付けられ、受光器41bは他方側側壁部60bに取り付けられる。投光器41aと受光器41bは、Y方向に対向し、同じ高さ位置に配設される。投光器41aの発光素子から出射された光は、当該光を遮る人がいないと受光器41bの受光素子の受光面に入射し、人で遮られると当該受光面に入射しない。第2光電センサ41も、投光器41aから投光された光が受光器41bに到達しないことで人を検知する。
【0030】
第1光電センサ40は、第2光電センサ41よりも高い位置に設置される。詳しくは、第1光電センサ40は、床からの高さが、女性の大人を検知できる一方、子供を検知できない高さに設置され、例えば、床からの高さが140cm〜155cmの範囲の高さに設置される。他方、第2光電センサ41は、子供でも確実に検知できる高さに設置され、例えば、床からの高さが100cm〜115cmの範囲の高さに設置される。第1及び第2光電センサ40,41の夫々は、人を検知したか否かを表す信号を制御盤19に出力する。
【0031】
エレベーター10の制御盤19は、三方枠60で囲まれたスペースにいる人に乗場扉31に近づきすぎると危ないことを警告する制御を行い、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御も行う。また、制御盤19は、カゴ11内の人に子供がカゴ11に乗り込んでくることを伝える制御も行う。以下、図3図5を用いて、これらの制御について説明する。
【0032】
図3は、三方枠60で囲まれたスペースにいる人に乗場扉31に近づきすぎると危ないことを警告するときの制御盤19の処理手続を示すフローチャートである。
【0033】
保守作業員等が、図示しない自手切換部を切り換えて、エレベーター10が、カゴ呼び釦15での操作が無効となって、カゴ11が保守作業員等の手動操作に応じて昇降する手動モードからカゴ呼び釦15及び行先階指定釦16からの信号でカゴ11が自動で昇降する自動モードに切り換わると、制御がスタートする。
【0034】
制御がスタートすると、制御盤19は、ステップS1で重量センサ25からカゴ11内の人検知信号を受けたか否かを判定する。ステップS1で否定判定されると、ステップS1が繰り返される。他方、ステップS1で肯定判定されて、制御盤19が、カゴ内に人が存在すると判定すると、ステップS2に移行する。
【0035】
ステップS2では、制御盤19は、少なくとも一つの階で下側の第2光電センサ41から人検知信号を受けたか否かを判定する。ステップS2で否定判定されるとステップS1以下が繰り返される。他方、ステップS2で肯定判定されて、制御盤19が、当該少なくとも一つの階において三方枠60で囲まれたスペース内に人が存在すると判定すると、ステップS3に移行する。ステップS3では、制御盤19が、当該少なくとも一つの階の乗場音声出力装置26にカゴから人が降りてくることを意味する音声を出力させ、ステップS4に移行する。ステップS3で出力される音声としては、例えば、「カゴから降りる方が居られます。扉から離れて頂きますようお願い申し上げます」といった音声を採用できるが、カゴから人が降りてくることを意味する音声であれば如何なる音声でもよい。
【0036】
ステップS3の後のステップS4では、自動モードが手動モードに切り換えられたか否かが判定される。ステップS4で否定判定されるとステップS1以下が繰り返され、ステップS4で肯定判定されると、制御がエンドになる。
【0037】
本実施形態によれば、制御盤19が、カゴ11内に人が存在すると共に特定階の三方枠60で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、カゴ11から人が降りてくることを意味する音声を特定階の乗場音声出力装置26に出力させる。したがって、三方枠60で囲まれたスペースにいる人にカゴ11から降りてくる人とぶつかる可能性がある旨、注意喚起できる。
【0038】
更には、カゴ11内に人が存在する条件と、特定階の三方枠60で囲まれたスペースに人が存在する条件とが同時に満たされた瞬間に、カゴ11の存在位置に限らず、カゴ11から人が降りてくることを意味する音声が、特定階に出力される。例を挙げれば、50の乗場22が存在する場合に、カゴ11が最上階周辺の高層階に存在する場合において、最下階周辺の低層階の乗場22で上記2つの条件が満たされても、当該低層階の乗場22で上記音声が出力される。したがって、当該音声が出力された後にカゴ11内に人がいなくなる状況が起こり得る。しかし、このような場合でも、上記音声を出力することで、三方枠60で囲まれたスペースにいる人にカゴ11内の乗客の有無と関係なく単に乗場扉31に近づきすぎると危ないことを警告できる。よって、エレベーターのより安全な運行を実現できる。
【0039】
図4は、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝えるときの制御盤19の処理手続を示すフローチャートである。以下、図4を用いて、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御について説明する。
【0040】
保守作業員等が、図示しない自手切換部を切り換えて、エレベーター10が、カゴ呼び釦15での操作が無効となって、カゴ11が保守作業員等の手動操作に応じて昇降する手動モードからカゴ呼び釦15及び行先階指定釦16からの信号でカゴ11が自動で昇降する自動モードに切り換わると、制御がスタートする。
【0041】
制御がスタートすると、ステップS11で、制御盤19は、重量センサ25からのカゴ内荷重を表す信号と、最大積載荷重とに基づいて、カゴ11の乗車率を算出し、算出した乗車率が、所定の乗車率以上であるか否かを判定する。所定の乗車率としては、例えば、60%以上、70%以上、又は80%以上を採用できるが、60%未満の値でもよい。ステップS11で否定判定されると、ステップS11が繰り返される。他方、ステップS11で肯定判定されて、制御盤19が、乗車率が、所定の乗車率以上であると判定すると、ステップS12に移行する。
【0042】
ステップS12では、制御盤19は、カゴ11の折り返しが想定される階の手前の階でカゴ11の進行方向と同じ方向のカゴ呼び釦15が押圧されたか否かを判定する。この判定は、例えば、行先階指定釦16からの信号、着床位置検出センサ18からの信号、及びカゴ呼び釦15からの信号に基づいて実行される。着床位置検出センサ18は、カゴ11の存在位置を特定するのに使用する。
【0043】
ステップS12で否定判定されると、ステップS11以下が繰り返される。他方、ステップS12で肯定判定されると、ステップS13に移行する。ステップS12で肯定判定される場合としては、例えば、カゴ11が3階付近を上側に移動し、カゴ内の行先階指定釦16で押圧されている最も高い階の釦が、10階を指定する釦であり、7階の乗場22で上側の移動を表すカゴ呼び釦15が押圧されている場合等がある。この場合、10階がカゴ11の折り返しが想定される階に相当し、7階が手前の階に相当し、上側の移動を表すカゴ呼び釦15が、カゴ11の進行方向と同じ方向のカゴ呼び釦に相当する。
【0044】
ステップS13では、制御盤19が、カゴ音声出力装置27にカゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を出力させ、ステップS14に移行する。ステップS13で出力される音声としては、例えば、「カゴに乗られる方が居られます。奥側に詰めて頂きますようお願い申し上げます」といった音声を採用できるが、カゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声であれば如何なる音声でもよい。
【0045】
ステップS13の後のステップS14では、自動モードが手動モードに切り換えられたか否かが判定される。ステップS14で否定判定されるとステップS11以下が繰り返され、ステップS14で肯定判定されると、制御がエンドになる。
【0046】
例えば、ビジネスビルにおける、カゴ11内が混雑する時間帯、例えば、出勤時、昼食時、及び退社時等に、先にカゴ11に乗り込んだ人がカゴ11のカゴ扉32側に立って、後からカゴ11に乗り込んだ人が、行先階指定釦16を押しにくい状況が生じ易ことがある。しかし、本実施形態によれば、カゴ11の乗車率が所定以上の乗車率であって、カゴ11の着床時に人が乗り込んでくる場合に、カゴ音声出力装置27がカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を出力する。したがって、カゴ11内の混雑時に後からカゴ11に乗り込んだ人が行先階指定釦16を押圧し易くなる。
【0047】
図5は、カゴ11内の人に子供がカゴ11に乗り込んでくることを伝えるときの制御盤19の処理手続を示すフローチャートである。次に、図5を用いて、カゴ11内の人に子供がカゴ11に乗り込んでくることを伝える制御について説明する。
【0048】
保守作業員等が、図示しない自手切換部を切り換えて、エレベーター10が、カゴ呼び釦15での操作が無効となって、カゴ11が保守作業員等の手動操作に応じて昇降する手動モードからカゴ呼び釦15及び行先階指定釦16からの信号でカゴ11が自動で昇降する自動モードに切り換わると、制御がスタートする。
【0049】
制御がスタートすると、制御盤19は、ステップS21で重量センサ25からカゴ11内の人検知信号を受けたか否かを判定する。ステップS21で否定判定されると、ステップS21が繰り返される。他方、ステップS21で肯定判定されて、制御盤19が、カゴ11内に人が存在すると判定すると、ステップS22に移行する。
【0050】
ステップS22では、制御盤19は、カゴ11の折り返しが想定される階の手前の階でカゴ11の進行方向と同じ方向のカゴ呼び釦15が押圧されたか否かを判定する。この判定は、図4のステップS12で説明した判定と同様に実行でき、例えば、行先階指定釦16からの信号、着床位置検出センサ18からの信号、及びカゴ呼び釦15からの信号に基づいて実行される。ステップS22で否定判定されると、ステップS21以下が繰り返される。他方、ステップS22で肯定判定されると、ステップS23に移行する。
【0051】
ステップS23では、制御盤19が、カゴ呼び釦15が押圧された手前の階で、下側の第2光電センサ41から人検出信号を受ける一方、上側の第1光電センサ40から人検出信号を受けなかったか否かを判定する。ステップS23で否定判定されるとステップS21以下が繰り返される。他方、ステップS23で肯定判定されて、制御盤19が、当該手前の階の三方枠60で囲まれたスペースに子供がいると判定すると、ステップS24に移行する。
【0052】
ステップS24では、制御盤19が、カゴ音声出力装置27に子供がカゴに乗り込んでくることを意味する音声を出力させ、ステップS25に移行する。ステップS24で出力される音声としては、例えば、「お子様が乗り込んで来られます。スペースを空けて頂きますよう宜しくお願い申し上げます」といった音声を採用できるが、子供がカゴに乗り込んでくることを意味する音声であれば如何なる音声でもよい。
【0053】
ステップS24の後のステップS25では、自動モードが手動モードに切り換えられたか否かが判定される。ステップS25で否定判定されるとステップS21以下が繰り返され、ステップS25で肯定判定されると、制御がエンドになる。
【0054】
子供は、肉体が大人に比べて劣り、カゴ11に乗り込む際に想定外の動きをすることもある。本実施形態によれば、特定階の複数の光電センサ40,41のうちで上側の第1光電センサ40が人を検知しなかった一方、下側の第2光電センサ41が人を検知したと判断すると、カゴ音声出力装置27が、子供がカゴ11に乗り込んでくることを意味する音声を出力する。したがって、カゴ11内の人が、子供がカゴ11に乗り込んでくることを予め認識でき、カゴ11内の人が子供の乗り込みを想定した動きを取り易くなる。よって、エレベーター10を、更に安全かつ円滑に運行できる。
【0055】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、カゴ11内に人が存在すると共に特定階の三方枠60で囲まれたスペースに人が存在すると認識すると、カゴ11の存在位置に拘わらず、当該特定階の乗場音声出力装置26がカゴ11から人が降りてくることを意味する音声を出力する場合について説明した。しかし、カゴ内に人が存在すると共に特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在すると認識し、更に、カゴが特定階の周辺にいる場合のみに、当該特定階の乗場音声出力装置がカゴから人が降りてくることを意味する音声を出力する構成でもよい。
【0057】
詳しくは、エレベーターが、カゴの存在位置を特定可能なカゴ位置特定部(例えば、着床位置検出センサ18等で構成できる)を備え、制御部が、光電センサからの信号、カゴ内人検知部(重量センサ等で構成できる)からの信号、及びカゴ位置特定部からの信号に基づいて、カゴ内に人が存在すると共に特定階の三方枠で囲まれたスペースに人が存在し、かつカゴが特定階の乗場から高さ方向に所定距離以内の位置に存在すると認識すると、カゴから人が降りてくることを意味する音声を特定階の乗場音声出力装置に出力させる構成でもよい。また、上記所定距離としては、特定階の乗場から2階上(2階下)の乗場までの距離を採用できるが、特定階の乗場から3階以上上(3階以上下)の乗場までの距離を採用してもよい。又は、上記所定距離としては、特定階の乗場から1階上(1階下)の乗場までの距離以下の距離を採用してもよい。
【0058】
また、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御で、カゴ11へ乗り込む人がいるか否かを判定するのに、カゴ呼び釦15からの信号を利用した。しかし、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御で、乗場22にカゴ11へ乗り込む人がいるか否かを判定するのに、各階の乗場22の上方に配設されて、乗場立ち入り空間に人が入ったことを検知する乗場センサ38(図1参照)を利用してもよく、乗場22にカゴ11へ乗り込む人がいるか否かを、乗場センサ38から制御盤19への信号に基づいて判定してもよい。
【0059】
また、子供は後からカゴに乗り込む乗客が行先階指定釦を押圧する妨げになりにくいことを考慮してもよい。すなわち、混雑時にカゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御を実行可能なエレベーターにおいて、エレベーターがカゴ内の様子を特定できるカメラ等の特定手段を備え、制御部が、当該特定手段からの信号に基づいて子供が行先階指定釦の前に立っていると判断すると、カゴ音声出力装置がカゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を出力するのを禁止してもよい。
【0060】
また、子供は小スペースでもカゴに乗り込み可能であることを考慮してもよい。すなわち、混雑時にカゴ11内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える制御で、下側の第2光電センサ41が人を検知する一方、上側の第1光電センサ40が人を検知しなかった場合に、カゴ音声出力装置が、カゴ内の乗客に奥側に詰めて欲しいことを伝える音声を出力しなくてもよい。
【0061】
また、子供が三方枠60で囲まれたスペースに存在することを、2つの光電センサ40,41からの信号で特定する場合について説明した。しかし、子供が三方枠で囲まれたスペースに存在することを、3以上の光電センサからの信号で特定してもよく、特定階の3以上の光電センサのうちで上側の1以上の光電センサが人を検知しなかった一方、下側の1以上の光電センサが人を検知したと判断すると、子供が三方枠で囲まれたスペースに存在すると判定してもよい。又は、各階の三方枠に1つのみの光電センサを設置し、三方枠に囲まれたスペースに人がいるか否かのみを判定する構成でもよい。
【0062】
また、カゴ11内にカゴ音声出力装置27を配設する場合について説明したが、カゴ内にカゴ音声出力装置を配設しなくてもよく、カゴ内に、奥側に詰めて欲しいことを伝える音声や、カゴに乗り込んでくることを意味する音声が流れなくてもよい。そして、各階の三方枠における子供の検知を確実にできる高さ位置(当該高さ位置では、背が子供よりも高い大人は当然に検知できる)に、1つのみの光電センサを設置し、三方枠に囲まれたスペースに立ち入った子供又は大人に、カゴから人が降りてくることのみをアナウンスできる構成でもよい。また、カゴ内人検知部が、重量センサ25であったが、カゴ内人検知部は、行先階指定釦でもよく、制御部が、行先階指定釦のいずれかの階が登録された状態になっていることを認識することで、カゴ内に人が存在することを検知してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 エレベーター、 15 カゴ呼び釦、 16 行先階指定釦、 18 着床位置検出センサ、 19 制御盤、 22 乗場、 25 重量センサ、 26 乗場音声出力装置、 27 カゴ音声出力装置、 31 乗場扉、 38 乗場センサ、 40 第1光電センサ、 40a 第1光電センサの投光器、 40b 第1光電センサの受光器、 41 第2光電センサ、 41a 第2光電センサの投光器、 41b 第2光電センサの受光器、 60 三方枠、 60a 一方側側壁部、 60b 他方側側壁部、 X方向 カゴの奥行き方向、 Y方向 カゴの幅方向、 Z方向 カゴの高さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5