特許第6861546号(P6861546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861546加工ユニット並びにワーク、特に金属薄板を打抜き加工するための工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861546
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】加工ユニット並びにワーク、特に金属薄板を打抜き加工するための工作機械
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/20 20060101AFI20210412BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B21D28/20
   B21D28/00 D
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-52888(P2017-52888)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-164815(P2017-164815A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年12月11日
(31)【優先権主張番号】16160858.3
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ エッツェル
(72)【発明者】
【氏名】デニス トレンクライン
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02527058(EP,A1)
【文献】 特開2011−112625(JP,A)
【文献】 特表2014−515315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/20
B21D 28/00
B30B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク、特に金属薄板(5)を打抜き加工するための工作機械(1)の加工ユニットであって、該加工ユニットは、打抜き工具を取付け可能な打抜き工具支持体(7)と、横方向駆動部材(17,18)を有する打抜き駆動装置(12)とを備えており、該打抜き駆動装置(12)の打抜き駆動モータ(14)により、前記横方向駆動部材(17,18)を、前記打抜き工具支持体(7)に対して相対的に、行程軸線(11)に対して横方向に延びる横方向移動軸線(19)に沿った駆動装置横方向移動で以て駆動することができるようになっていることに基づき、前記打抜き工具支持体(7)は、前記行程軸線(11)に沿って移動することができるようになっているものにおいて、
当該加工ユニットは、前記打抜き工具支持体(7)に取付け可能な打抜き工具のためのスクレーパ(10)用のスクレーパ支持体(9)と、該スクレーパ支持体(9)を前記行程軸線(11)に沿って動かすことのできるスクレーパ駆動装置(13)とを有しており、前記打抜き駆動装置(12)の前記横方向駆動部材(17,18)は、前記駆動装置横方向移動に際して、前記スクレーパ支持体(9)に対して相対的に、前記横方向移動軸線(19)に沿って可動であり、前記打抜き工具支持体(7)と前記スクレーパ支持体(9)とは、前記行程軸線(11)に沿って互いに相対的に移動することができるようになっていることを特徴とする、加工ユニット。
【請求項2】
前記スクレーパ支持体(9)は、前記打抜き工具支持体(7)に、前記横方向移動軸線(19)の方向で支持されていて且つ前記行程軸線(11)に沿っては可動にガイドされている、請求項1記載の加工ユニット。
【請求項3】
前記横方向駆動部材(17,18)が、前記横方向移動軸線(19)に沿って、前記スクレーパ支持体(9)を前記行程軸線(11)の方向で可動に支持している、前記スクレーパ支持体(9)用に設けられた支持構造体(37)に、前記横方向駆動部材(17,18)が、前記横方向移動軸線(19)に沿ってガイドされていることに基づき、前記打抜き駆動装置(12)の前記横方向駆動部材(17,18)は、前記横方向移動軸線(19)の方向で、前記スクレーパ支持体(9)に対して相対的に移動するようにガイドされている、請求項1又は2記載の加工ユニット。
【請求項4】
前記打抜き駆動装置(12)の前記横方向駆動部材(17,18)は、前記行程軸線(11)の方向で当該加工ユニットの支持構造体(20)に支持されており、前記横方向駆動部材(17,18)自体は、前記スクレーパ支持体(9)及び/又は前記スクレーパ駆動装置(13)のスクレーパ駆動原動機(32)及び/又は前記打抜き工具支持体(7)を、前記行程軸線(11)の方向で支持している、請求項1から3までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項5】
前記スクレーパ駆動装置(13)は、ピストン・シリンダ原動機として形成されたスクレーパ駆動原動機(32)を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項6】
前記スクレーパ支持体(9)は、前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って通過ている駆動ロッド(35,36)を介して前記スクレーパ駆動装置(13)のクレーパ駆動原動機(32)に結合されており、前記スクレーパ支持体(9)は、前記駆動ロッド(35,36)の、前記スクレーパ駆動原動機(32)から遠い方の側に配置されており、且つ前記駆動ロッド(35,36)を介して前記打抜き工具支持体(7)に、前記横方向移動軸線(19)の方向で支持されていると共に、前記行程軸線(11)に沿って可動にガイドされている、請求項1からまでのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項7】
前記スクレーパ支持体(9)は、前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って通過している駆動ロッド(35,36)を介して前記スクレーパ駆動装置(13)の前記スクレーパ駆動原動機(32)に結合されており、前記スクレーパ支持体(9)は、前記駆動ロッド(35,36)の、前記スクレーパ駆動原動機(32)から遠い方の側に配置されており、且つ前記駆動ロッド(35,36)を介して前記打抜き工具支持体(7)に、前記横方向移動軸線(19)の方向で支持されていると共に、前記行程軸線(11)に沿って可動にガイドされており、前記駆動ロッド(35,36)としては、前記スクレーパ駆動原動機(32)として設けられたピストン・シリンダ原動機のピストンに取り付けられていて、前記ピストン・シリンダ原動機から遠い方の端部に前記スクレーパ支持体(9)が結合されたピストンロッドが設けられている、請求項記載の加工ユニット。
【請求項8】
前記駆動ロッドは第1の駆動ロッド(35)として設けられており、前記スクレーパ支持体(9)は更に、前記第1の駆動ロッド(35)に対してされ且つ前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って通過ている第2の駆動ロッド(36)を介して、前記スクレーパ駆動装置(13)の前記スクレーパ駆動原動機(32)に結合されており、前記スクレーパ支持体(9)は、前記第2の駆動ロッド(36)の、前記スクレーパ駆動原動機(32)から遠い方の側に配置されていて、前記第2の駆動ロッド(36)を介して前記横方向移動軸線(19)の方向で前記打抜き工具支持体(7)に支持されていると共に、前記行程軸線(11)に沿って可動にガイドされている、請求項6又は7記載の加工ユニット。
【請求項9】
前記スクレーパ駆動原動機(32)は、2つの原動機ユニット(33,34)を有しており、前記スクレーパ駆動原動機(32)の一方の原動機ユニット(33)は、前記第1の駆動ロッド(35)に対応配置されており、前記スクレーパ駆動原動機(32)の他方の原動機ユニット(34)は、前記第2の駆動ロッド(36)に対応配置されている、請求項8記載の加工ユニット。
【請求項10】
前記打抜き駆動装置(12)の前記横方向駆動部材(17,18)は、前記打抜き駆動モータ(14)と前記打抜き工具支持体(7)との間に設けられた楔形伝動装置(21)の打抜き駆動モータ側の伝動装置要素を形成していて、前記行程軸線(11)に沿って前記打抜き工具支持体(7)を駆動する際に、前記楔形伝動装置(21)の打抜き工具支持体側の伝動装置要素と協働する、請求項1から9までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項11】
前記打抜き駆動装置(12)の前記横方向駆動部材(17,18)及び/又は前記楔形伝動装置(21)の打抜き工具支持体側の伝動装置要素は、前記横方向移動軸線(19)に対して傾斜した楔面(22,23,26,27)を備えた伝動楔として形成されている、請求項10記載の加工ユニット。
【請求項12】
前記横方向駆動部材は第1の横方向駆動部材(17)として設けられており、前記打抜き駆動装置(12)が追加的に第2の横方向駆動部材(18)を有しており、前記第1の横方向駆動部材(17)と、前記第2の横方向駆動部材(18)とは、前記横方向移動軸線(19)に沿って互いに反対の方向に、駆動装置横方向移動で以て駆動することができ、これにより前記打抜き工具支持体(7)は、前記行程軸線(11)に沿って移動することができるようになっている、請求項1から11までのいずれか1項記載の加工ユニット。
【請求項13】
前記打抜き駆動装置(12)の前記第1の横方向駆動部材(17)と前記第2の横方向駆動部材(18)とはそれぞれ、前記打抜き駆動モータ(14)と前記打抜き工具支持体(7)との間に設けられた前記楔形伝動装置(21)の、前記打抜き駆動モータ側の伝動装置要素を形成しており、前記行程軸線(11)に沿って前記打抜き工具支持体(7)を駆動する際に、前記第1の横方向駆動部材(17)は、前記楔形伝動装置(21)の第1の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(24)と協働し、且つ前記第2の横方向駆動部材(18)は、前記楔形伝動装置(21)の第2の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(25)と協働する、請求項12記載の加工ユニット。
【請求項14】
前記打抜き駆動装置(12)の前記第1の横方向駆動部材(17)及び前記第2の横方向駆動部材(18)、及び/又は前記楔形伝動装置(21)の前記第1の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(24)及び前記第2の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(25)は、伝動楔として形成されており、前記第1の横方向駆動部材(17)と前記第2の横方向駆動部材(18)とは、前記横方向移動軸線(19)に沿って互いに反対の方向に、駆動装置横方向移動で以て駆動することができると共に、それぞれ楔面(22,23)を有しており、前記第1の横方向駆動部材(17)及び前記第2の横方向駆動部材(18)の前記楔面は、前記横方向移動軸線(19)に対して互いに反対の方向に傾斜しており、且つ/又は、前記楔形伝動装置(21)の前記第1の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(24)及び前記第2の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(25)は、それぞれ楔面(26,27)を有しており、前記第1の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(24)及び前記第2の打抜き工具支持体側の伝動装置要素(25)の前記楔面(26,27)は、前記横方向移動軸線(19)に対して互いに反対の方向に傾斜している、請求項13記載の加工ユニット。
【請求項15】
前記駆動ロッド(35,36)が前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って貫通することにより、前記駆動ロッド(35,36)は前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って通過している、請求項6記載の加工ユニット。
【請求項16】
前記第2の駆動ロッド(36)は、前記第1の駆動ロッド(35)に対して前記横方向駆動軸線(19)に沿って離されている、請求項8記載の加工ユニット。
【請求項17】
前記第2の駆動ロッド(36)が前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って貫通することにより、前記第2の駆動ロッド(36)は前記打抜き工具支持体(7)を前記行程軸線(11)に沿って通過している、請求項8記載の加工ユニット。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の加工ユニット(6)が設けられていることを特徴とする、ワーク、特に金属薄板(5)を打抜き加工するための工作機械。
【請求項19】
当該工作機械は、前記加工ユニット(6)を前記横方向移動軸線(19)に沿って位置決め可能な機械フレーム(2)を有している、請求項18記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク、特に金属薄板を打抜き加工するための工作機械の加工ユニットに関し、該加工ユニットは、打抜き工具を取付け可能な打抜き工具支持体と、横方向駆動部材を有する打抜き駆動装置とを備えており、該打抜き駆動装置の打抜き駆動モータにより、前記横方向駆動部材を、前記打抜き工具支持体に対して相対的に、該打抜き工具支持体の行程軸線に対して横方向に延びる横方向移動軸線に沿った駆動装置横方向移動で以て駆動することができることに基づいて、前記打抜き工具支持体は、前記行程軸線に沿って移動することができるようになっている。
【0002】
本発明は更に、前記形式の加工ユニットを用いてワークを打抜き加工するための工作機械に関する。
【0003】
請求項1の上位概念に記載した従来技術は、欧州特許出願公開第2527058号明細書(EP 2 527 058 A1)から公知である。この刊行物には、行程駆動装置を備えるプレスが開示されており、行程駆動装置によりプレス工具は行程軸線に沿って、プレス工具により加工されるべきワークに向かって且つ/又は反対方向に向かって移動可能である。行程軸線に沿ってプレス工具の移動を生ぜしめるために、行程駆動装置は、駆動モータと、この駆動モータとプレス工具との間に配置された楔形伝動装置とを有している。駆動側の楔形伝動装置要素は、プレス工具の行程軸線に対して横方向に動かされる。駆動側の楔形伝動装置要素は、その運動時に被動側の楔形伝動装置要素と協働する。被動側の楔形伝動装置要素にはプレス工具が結合されており、被動側の楔形伝動装置要素は、駆動側の楔形伝動装置要素により行程軸線に対して横方向に行われる運動に基づき、プレス工具と一緒に行程軸線に沿って動く。
【0004】
本発明の課題は、この従来技術の機能を拡張することにある。
【0005】
この課題は、特許請求項1記載の加工ユニット及び特許請求項15記載の工作機械により解決される。
【0006】
打抜き工具用の打抜き工具支持体と、打抜き工具支持体及び打抜き工具を行程軸線に沿って動かすための打抜き駆動装置とを備える打抜きユニットに加え、本発明による加工ユニットは、打抜きユニットの打抜き工具用のスクレーパを備えるスクレーパユニットを有しており、この場合、スクレーパ支持体延いてはスクレーパも、打抜き工具から分離された状態で、行程軸線に沿って位置決めされ得る。打抜き駆動装置は横方向駆動部材を有しており、横方向駆動部材は、行程軸線に沿った打抜き工具支持体の動きを生ぜしめるために、行程軸線に対して横方向に延びる横方向移動軸線に沿った駆動装置横方向移動で以て駆動される。打抜き工具の運動からスクレーパを分離するために、一つには、打抜き駆動装置の横方向駆動部材が、その駆動装置横方向移動において、スクレーパ支持体に対して相対的に、横方向移動軸線に沿って可動になっている。更に、打抜き工具支持体とスクレーパ支持体とが、行程軸線に沿って互いに相対的に移動することができるようになっている。これにより、行程軸線に沿ったスクレーパ支持体の位置延いてはスクレーパ支持体に取り付けられたスクレーパの位置も、打抜き工具支持体及び打抜き工具が行程軸線に沿って占めている位置に関係なく規定することができるようになっている。横方向移動軸線に沿った打抜き駆動装置の横方向駆動部材の動きが、行程軸線に沿ったスクレーパ支持体及びスクレーパの位置に影響を及ぼすことはない。
【0007】
つまり本発明の場合は特に、スクレーパを「有効スクレーパ」の動作モードのみならず、「無効スクレーパ」の動作モードでも作動させる可能性が生じる。
【0008】
「有効スクレーパ」の動作モードにおいて、行程軸線に沿った運動を実施することができるようにするために、スクレーパは必ずしも専用の駆動装置を必要とはしない。むしろスクレーパが行程軸線に沿って占める位置は、行程軸線に沿って加工しようとするワークに向かう打抜き工具の作業行程においても、反対方向に実施される戻り行程においても、打抜き工具若しくは打抜き工具を備えた打抜き工具支持体によって規定される。運動的には、スクレーパは行程軸線に沿って加工しようとするワークに向かう打抜き工具の作業行程に際して、スクレーパがワークに載置されるまで、打抜き工具に結合された状態で移動する。スクレーパがワークに支持されることで、必然的に行程軸線の方向では位置不変になった状態で、打抜き工具はワークを打抜き加工するまで、行程軸線に沿ってその作業行程を継続する。作業行程の死点到達を以て、作業行程とは反対方向に向けられた打抜き工具の戻り行程が導入され、打抜き工具はまず、打抜き工具が今打抜き加工したワークから出るまで、行程軸線に沿って作業行程とは反対の方向に、引き続きワークに支持されているスクレーパに対して相対的に移動する。打抜き工具がワークから出ると直ちに、打抜き工具はスクレーパを戻り行程方向に、ワークから離れる方に向けられた動きで以て連行する。
【0009】
「無効スクレーパ」の動作モードでは、スクレーパは行程軸線に沿って、スクレーパがワークから離れた位置へ動かされる。ワークからスクレーパが離された状態で、ワークは打抜き工具により加工され、打抜き工具はスクレーパに対して相対的に、適宜に設定された行程を、行程軸線に沿って進む。上述した「有効スクレーパ」の動作モードとは異なり、「無効スクレーパ」の動作モードでは、ワーク加工中に行程軸線に沿ってスクレーパが占める位置は、別個のスクレーパ駆動装置により規定される。それというのも、「有効スクレーパ」の動作モードとは異なり、このためにワークを利用することはできないからである。スクレーパがワークから離れた状態で打抜き工具によりワーク加工を行うことができるようにするためには、ワークを利用せずにスクレーパと打抜き工具とを互いに分離して、行程軸線に沿って動かす手段を設ける必要がある。
【0010】
独立特許請求項1及び15記載の本発明の特別な構成形式は、従属特許請求項2〜14及び16から明らかである。
【0011】
打抜き駆動装置の横方向駆動部材を確実に機能させて、スクレーパ支持体に対して相対的に横方向移動軸線に沿って移動させることができるようにするために、本発明の好適な構成では、スクレーパ支持体が、横方向移動軸線の方向で支持されており、この場合、スクレーパ支持体を支持する加工ユニットの特にコンパクトな構成形式のために、打抜き工具支持体が利用される(特許請求項2)。
【0012】
横方向移動軸線に沿った、打抜き駆動装置の横方向駆動部材の所定の移動は、本発明では横方向駆動部材の適当なガイドにより保証される。この場合、好適には、横方向移動軸線に沿って横方向駆動部材をガイドする、本発明による加工ユニットのコンパクトな構成形式のために、スクレーパ支持体用に設けられていて、このスクレーパ支持体を行程軸線の方向において可動に支持する支持構造体が用いられる(特許請求項3)。横方向移動軸線の方向で、スクレーパ支持体用の支持構造体は、打抜き工具支持体に支持されていてよく、これにより、打抜き駆動装置の横方向駆動部材を確実に機能させて、スクレーパ支持体用の支持構造体に対して相対的に、横方向移動軸線に沿って移動させることができるようになっている。
【0013】
装置全体のコンパクトな構成形式には、打抜き駆動装置の横方向駆動部材が、行程軸線の方向で加工ユニットの支持構造体に支持されており、横方向駆動部材自体は、スクレーパ支持体及び/又はその支持構造体及び/又はスクレーパ駆動装置のスクレーパ駆動原動機及び/又は打抜き工具支持体を、行程軸線の方向で支持している、という特許請求項4記載の特徴も役立つ。
【0014】
本発明の別の好適な構成では、スクレーパ駆動原動機として、ピストン・シリンダ原動機が設けられている(特許請求項5)。
【0015】
スクレーパ支持体が、行程軸線に沿って可動であると同時に、横方向移動軸線の方向で打抜き工具支持体に有効に支持されていることは、本発明の好適な構成では、スクレーパ支持体が、駆動ロッドを介してスクレーパ駆動装置のスクレーパ駆動原動機に結合されていることによって実現されており、駆動ロッドは、打抜き工具支持体を行程軸線に沿って通過、特に貫通しており、この場合、スクレーパ支持体は、駆動ロッドの、スクレーパ駆動原動機から遠い方の側に配置されている(特許請求項6)。
【0016】
スクレーパ駆動原動機としてピストン・シリンダ原動機が設けられている場合には、打抜き工具支持体を通過若しくは貫通する駆動ロッドとして、スクレーパ駆動原動機のピストンに取り付けられていて、スクレーパ駆動原動機から遠い方の端部にスクレーパ支持体が結合されているピストンロッドを利用することができる(特許請求項7)。
【0017】
スクレーパ支持体延いてはスクレーパの特に効果的な支持及びガイドを保証するために、本発明の別の好適な構成では、特に横方向駆動軸線に沿って互いにずらされた、2つの駆動ロッドが用いられる。両駆動ロッドは、行程軸線に沿って打抜き工具支持体を通過若しくは貫通している。両駆動ロッドを介して、スクレーパ支持体は横方向移動軸線の方向で支持されていると共に、行程軸線に沿って可動に、打抜き工具支持体にガイドされている(特許請求項8)。
【0018】
この場合、スクレーパ支持体を備える駆動ロッドの移動には、好適には、それぞれ両駆動ロッドのうちの一方に対応配置された2つの原動機ユニットを備えるスクレーパ駆動原動機が用いられる(特許請求項9)。本発明の好適な構成では、スクレーパ駆動原動機の原動機ユニットは、それぞれピストン・シリンダユニットとして形成されている。
【0019】
打抜き駆動装置として本発明では特に、打抜き駆動モータと打抜き工具支持体との間に配置された楔形伝動装置を有する駆動構成形式が設けられている。楔形伝動装置は、1つ又は2つの打抜き駆動モータ側の伝動装置要素を有しており、打抜き駆動モータ側の伝動装置要素はそれぞれ、打抜き駆動装置の横方向駆動部材により形成される。1つ又は複数の打抜き駆動モータ側の伝動装置要素には、楔形伝動装置の、1つ又は2つの打抜き工具支持体側の伝動装置要素が対応配置されている(特許請求項10,13)。
【0020】
打抜き駆動モータ側の伝動装置要素として2つの横方向駆動部材が設けられている場合には、これらの横方向駆動部材が横方向移動軸線に沿って互いに反対の方向に動かされ、これにより、行程軸線に沿った打抜き工具支持体の運動を生ぜしめることができる(特許請求項12)。
【0021】
打抜き駆動装置の1つ又は複数の横方向駆動部材及び/又は1つ又は複数の打抜き工具支持体側の伝動装置要素は、本発明の有利な構成では、横方向移動軸線に対して傾斜した楔面を有する伝動楔として形成されている(特許請求項11,14)。
【0022】
本発明による工作機械の好適な構成では、特許請求項16に示すように、加工ユニット全体が、工作機械の機械フレームにおいて横方向移動軸線に沿って位置決め可能である。横方向移動軸線に沿って行われる位置決め運動で以て、加工ユニットは、加工しようとするワークの各加工位置へ移動する。このとき、加工しようとするワークと、工作機械の加工ユニットとは、横方向移動軸線と、横方向移動軸線に対して垂直に延びる別の軸線とにより張設される、行程軸線に対して垂直に延在する平面内で、好適には相対的に位置決め可能である。前記別の移動軸線の方向で、加工ユニットとワークとの相対運動を生ぜしめるためには、ワークの相応の可動性、又は加工ユニットの相応の可動性、又はワークと加工ユニット両方の相応の可動性が考えられる。
【0023】
本発明の好適な構成では、打抜き駆動モータが1つ又は複数の横方向駆動部材を横方向移動軸線に沿って駆動すると共に、横方向駆動部材は打抜き工具支持体とスクレーパ支持体とを移動方向に連行することにより、横方向移動軸線に沿った加工ユニットの移動が生ぜしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下に、本発明を例示的な概略図に基づいてより詳細に説明する。
図1】金属薄板を打抜き加工するための加工ユニットを備えた工作機械の大幅な概略図である。
図2図1に示した加工ユニットをより詳細に示す斜視図である。
【0025】
図1に示す、打抜き機1として形成された工作機械は、水平な上部フレーム脚部3を備えた機械フレーム2を有している。上部フレーム脚部3は、加工しようとする金属薄板5の形態のワークを支持するワーク支持部4の上方に延在している。
【0026】
金属薄板5の打抜き加工は、加工ユニット6により行われる。加工ユニット6は、従来の工具ホルダ8を備えた打抜き工具支持体7を有しており、工具ホルダ8には、慣用の構成形式の打抜きポンチ(図1には図示せず)の形態の打抜き工具を入れ替えることができる。加工ユニット6は更に、環状のスクレーパ支持体9を有しており、スクレーパ支持体9は、工具ホルダ8に入れ替えられる打抜きポンチ用の従来の構成形式のスクレーパ10を支持している。
【0027】
工具ホルダ8及び工具ホルダ8に入れ替えられる打抜きポンチを備えた打抜き工具支持体7と、スクレーパ10を備えたスクレーパ支持体9とは、互いに分離された状態で垂直方向の行程軸線11(Z軸線)に沿って可動であり且つ位置決めされ得る。行程軸線11に沿った打抜き工具支持体7の動きは、モータ式の打抜き駆動装置12により生ぜしめられる。行程軸線11に沿ってスクレーパ支持体9を動かし且つ位置決めするためには、原動機式のスクレーパ駆動装置13が設けられている。
【0028】
打抜き駆動装置12は、機械フレーム2に取り付けられた2つのモータユニット15,16を備える、電気的な打抜き駆動モータ14を有している。モータユニット15は、駆動スピンドル46(図2に破線で示唆)を介して第1の横方向駆動部材17を水平な横方向移動軸線19(Y軸線)に沿って駆動し、モータユニット16は、駆動スピンドル47(やはり図2に破線で示唆)を介して第2の横方向駆動部材18を水平な横方向移動軸線19(Y軸線)に沿って駆動する。このためにモータユニット15,16の駆動スピンドル46,47はそれぞれ、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18に取り付けられたスピンドルナット48,49に係合している(図2)。
【0029】
駆動スピンドル46,47は、それぞれ同一方向のねじ山を有している。回転方向が同一方向の場合、これにより駆動スピンドル46,47は、スピンドルナット48,49と、スピンドルナット48,49に結合された横方向駆動部材17,18とを、横方向移動軸線19に沿って同一方向に駆動する。駆動スピンドル46,47の回転運動が互いに逆方向の場合には、スピンドルナット48と49、並びに横方向駆動部材17と18とは、横方向移動軸線19に沿って互いに逆の方向に移動させられる。
【0030】
横方向移動軸線19に沿って移動する際に、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とは、これらの横方向駆動部材17,18に共通の加工ユニット6のガイドレール20に沿ってガイドされている。ガイドレール20は、打抜き機1の機械フレーム2(見やすくするために図2には図示せず)に取り付けられており、加工ユニット6の支持構造体を形成している。
【0031】
第1の横方向駆動部材17及び第2の横方向駆動部材18は、打抜き駆動モータ14若しくはモータユニット15,16と、打抜き工具支持体7との間に設けられている楔形伝動装置21の構成部材である。第1の横方向駆動部材17及び第2の横方向駆動部材18は、伝動楔として形成された、楔形伝動装置21の打抜き駆動モータ側の伝動装置要素を形成している。
【0032】
横方向駆動部材17,18は、横方向移動軸線19に対して互いに反対の方向に傾斜した楔面22,23において、打抜き工具支持体7の伝動楔24,25と協働する。伝動楔24,25は、楔形伝動装置21の打抜き工具支持体側の伝動装置要素を形成しており、横方向移動軸線19に対して互いに反対の方向に向かって延びる楔面26,27を有しており、これらの楔面26,27自体は、第1の横方向駆動部材17及び第2の横方向駆動部材18の楔面22,23に向かい合っている。
【0033】
伝動楔24,25の楔面26,27にはガイドレール28,29が取り付けられており、ガイドレール28,29上にはガイドシュー30,31が着座しており、ガイドシュー30,31自体は、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とに取り付けられている。ガイドレール28,29とガイドシュー30,31との間で垂直方向に作用する形状接続(形状による束縛、例えば係合)に基づき、打抜き工具支持体7は、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とに懸吊されている。横方向駆動部材17,18もやはり、ガイドレール20を介して打抜き機1の機械フレーム2に、垂直方向で延いては行程軸線11の方向で支持されている。横方向移動軸線19に沿って、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とは、打抜き工具支持体7に対して相対的に移動する。
【0034】
図1では、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とは、横方向移動軸線19に沿って互いに最大に離間されている。よって打抜き工具支持体7は、ワーク支持部4と、その上に支持された金属薄板5とに対し、行程軸線11に沿って最大に持ち上げられた状態にある。
【0035】
この状態から出発して、打抜き駆動モータ14のモータユニット15,16が、駆動スピンドル46,47の相応する互いに反対方向の回転方向で以て作動させられると、モータユニット15,16により駆動される横方向駆動部材17,18は、横方向移動軸線19に沿って互いに接近運動する。横方向駆動部材17,18の水平方向における強制案内に基づき、楔形伝動装置21は、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とが相互接近したことで、打抜き工具支持体7を、行程軸線11に沿って作業行程で以て、ワーク支持部4と加工しようとする金属薄板5とに向かって降下させる。
【0036】
打抜き工具支持体7の工具ホルダ8に取り付けられた打抜きポンチが金属薄板5を貫通することにより打抜き加工すると直ちに、金属薄板5を加工するために実施された、行程軸線11に沿った打抜き工具支持体7の下降運動は終了する。金属薄板5を打抜き加工する際に、打抜きポンチは、金属薄板5の下側に設けられた、従来の構成形式の打抜きダイ(図面では認識不能)と協働する。
【0037】
作業行程が終了すると、モータユニット15,16と駆動スピンドル46,47とはその回転方向を反転させられ、第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とは、モータユニット15,16により横方向移動軸線19に沿ってそれぞれ反対方向に移動させられて、互いに離間される。その結果、打抜き工具支持体7は、最終的に再び図1に示した位置を占めるまで、戻り行程で以て行程軸線11に沿って持ち上げられる。
【0038】
加工ユニット6全体を、機械フレーム2の上部フレーム脚部3に沿って別の加工位置へ移動させようとする場合には、モータユニット15,16と、その駆動スピンドル46,47とが、同一方向の回転方向で以て作動させられる。駆動スピンドル46,47の同一方向の回転運動方向に依存して、横方向駆動部材17,18延いては加工ユニット6全体が、図1に示した位置から出発して横方向移動軸線19に沿って、図1の右側又は左側に向かって移動する。
【0039】
スクレーパ支持体9とスクレーパ10とは、打抜き工具支持体7から分離されて、スクレーパ駆動装置13のスクレーパ駆動原動機32により移動させられ、この場合、スクレーパ駆動原動機32は、ピストン・シリンダユニット33,34の形態の2つの原動機ユニットを有している。
【0040】
ピストン・シリンダユニット33には、スクレーパ支持体9が第1の駆動ロッド35を介して結合されている。第2の駆動ロッド36は、スクレーパ支持体9をピストン・シリンダユニット34に結合している。この場合、駆動ロッド35,36は、ピストン・シリンダユニット33,34のピストンロッドである。
【0041】
横方向移動軸線19に沿って、第1の駆動ロッド35と第2の駆動ロッド36とは、互いに離されている。第1の駆動ロッド35と第2の駆動ロッド36とは両方共、打抜き工具支持体7を行程軸線11に沿って貫通している。駆動ロッド35,36を介して、スクレーパ支持体9は横方向移動軸線19の方向で打抜き工具支持体7に支持されていると共に、行程軸線11に沿って可動に案内されている。
【0042】
第1の横方向駆動部材17と第2の横方向駆動部材18とは、横方向移動軸線19に沿ってスクレーパ支持体9に対して相対的に可動である。横方向駆動部材17,18が、横方向移動軸線19に沿ってスクレーパ支持体9に対して相対的に行う運動は、ガイドされている。このためには、ピストン・シリンダユニット33,34用に設けられて支持構造体を形成している支持体37にガイドシュー38,39が配置されていると共に、横方向駆動部材17,18の上面にガイドレール40,41が配置されている。横方向駆動部材17,18を、横方向移動軸線19に沿ってスクレーパ支持体9に対して相対的にガイドするためには、ピストン・シリンダユニット33,34の支持体37に設けられたガイドシュー38,39が、横方向駆動部材17,18に設けられたガイドレール40,41と協働する。
【0043】
同時に横方向駆動部材17,18は、行程軸線11の方向でのスクレーパ支持体9及び支持体37の支持、並びにスクレーパ駆動原動機32及び駆動ロッド35,36の支持を引き受けている。
【0044】
図1では、スクレーパ支持体9に取り付けられたスクレーパ10は、加工しようとする金属薄板5の上面からスクレーパ10が行程軸線11に沿って僅かに引き離された位置にある。行程軸線11に沿ったこの位置では、スクレーパ支持体9とスクレーパ10とは緊締装置42により保持される。緊締装置42は、ピストン・シリンダユニット33,34用の支持体37に設けられていて、切換可能な緊締ユニット43,44を有している。相応の切換状態において、緊締ユニット43は第1の駆動ロッド35を行程軸線11に沿って固定する。これに相応して緊締ユニット44も、第2の駆動ロッド36を行程軸線11に沿ってロックするために働く。駆動ロッド35,36の緊締状態では、スクレーパ10は「無効スクレーパ」の動作モードにある。この動作モードにおいてスクレーパ10は、打抜き工具支持体7並びに打抜き工具支持体7に取り付けられた打抜き工具の目下の位置に関係無く、加工しようとする金属薄板5から、緊締装置42により規定された間隔を保っている。
【0045】
打抜き駆動装置12とスクレーパ駆動装置13とを制御するためには、機械数値制御装置45(図1に略示)が設けられている。機械数値制御装置45は、工作機械1のその他の機能の制御、とりわけ上述した、横方向移動軸線19に沿った加工ユニット6全体の走行移動をも担っている。
図1
図2