(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記回転子の回転が前記駆動パルスとは同期しているが前記時刻データに対してずれている場合には、前記駆動周波数を増加または減少させて、前記回転子の回転と前記時刻データとのタイミングを合わせる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電モータ。
前記検出部は、前記複数の帯電部とは別に前記回転子に設けられた検出用帯電部と、前記複数の固定電極とは別に前記固定子に設けられた検出用電極とで構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電モータ。
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づき前記回転子の回転が安定状態になったと判断したときに、前記駆動パルスを、前記回転子の起動時に印加される起動パルスから前記起動パルスよりも消費電力が少ない低消電パルスに切り替える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の静電モータ。
前記低消電パルスは、前記複数の固定電極に通電させる通電期間と、いずれの固定電極にも通電させない非通電期間とを含み、前記非通電期間に前記回転子を惰性で回転させる駆動パルスであり、
前記起動パルスは前記非通電期間を含まない駆動パルスであり、
前記制御部は、前記駆動パルスを、前記起動パルスと前記低消電パルスとの間で切り替える、請求項8に記載の静電モータ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、静電モータについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0018】
図1は、静電モータ1の概略構成図である。静電モータ1は、時計の運針用に使用されるモータであり、アクチュエータ2、駆動部3および制御部4を有する。
図2(A)および
図2(B)は、それぞれ、アクチュエータ2の模式的な斜視図および側面図である。アクチュエータ2は、主要な構成要素として、回転子(ロータ)10、回転軸11、帯電部12、検出用帯電部15、固定子(ステータ)20,30、固定電極21,22,31,32および検出用電極25を有する。
【0019】
図2(A)に示すように、アクチュエータ2は、回転子10が2枚の固定子20,30に挟まれて構成される。固定子20と回転子10の間、および回転子10と固定子30の間には、一定の間隔が空けられている。
図1では、アクチュエータ2として、上側の固定子20の下面、回転子10の上面および下側の固定子30の上面を並べて示している。
図2(B)では、簡単のために、横方向が回転子10および固定子20,30の円周方向(
図2(A)の矢印C方向)に相当するように変形された側面図を示している。静電モータ1は、駆動部3に入力された電気信号をもとに、帯電部12と固定電極21,22,31,32との間に静電気力を発生させて、回転子10を回転させることにより、電力から動力を取り出す。
【0020】
回転子10は、例えばシリコン基板、帯電用の電極面が設けられたガラスエポキシ基板、またはアルミ板などの低比重材といった周知の基板材料で構成される。
図2(A)に示すように、回転子10は、例えば円板形状を有し、その中心で回転軸11に固定されている。
図1および
図2(B)に示すように、回転子10の上下面には、略台形状の帯電部12が、円周方向に等間隔、かつ回転軸11を中心として放射状に形成されている。また、回転子10では、重量を軽くするために、円周方向に沿って帯電部12と交互に、略台形状の複数の貫通孔(スリット)13が形成されている。回転子10は、駆動部3に入力された電気信号に応じて帯電部12と固定電極21,22との間で発生する静電気力により、回転軸11の周りを、円周方向である矢印C方向(時計回り)およびその逆方向(反時計回り)に回転可能である。
【0021】
回転軸11は、回転子10の回転中心となる軸であり、
図1および
図2(A)に示すように、回転子10の中心を貫通している。図示しないが、回転軸11の上下端は、軸受けを介して静電モータ1の筐体に固定されている。なお、
図2(B)では回転軸11の図示を省略している。
【0022】
帯電部12は、エレクトレット材料で構成された薄膜であり、回転子10の上下面に回転軸11を中心として放射状に形成されている。帯電部12は、すべて同一の極性(例えば負)に帯電している。帯電部12のエレクトレット材料としては、例えば、CYTOP(登録商標)などの樹脂材料、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)もしくはポリビニルフルオライド(PVF)などの高分子材料、または、シリコン酸化物(SiO
2)もしくはシリコン窒化物(SiN)などの無機材料が用いられる。
【0023】
固定子20,30は、例えばポリイミドなどのFPC基板またはガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成される。
図2(A)に示すように、固定子20,30は、例えば円板形状を有し、回転子を挟むようにその上下に配置されている。固定子20は、回転子10の上面に対向して回転子10の上側に配置され、固定子30は、回転子10の下面に対向して回転子10の下側に配置されている。固定子20,30は、回転子10とは異なり、静電モータ1の筐体に固定されている。
【0024】
固定電極21,22,31,32は、電圧が印加されて回転子10を駆動するための電極であり、
図1に示すように、それぞれ略台形状の複数の電極で構成される。固定電極21,22は固定子20の下面(回転子10の上面との対向面)において、固定電極31,32は固定子30の上面(回転子10の下面との対向面)において、それぞれ円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。同じ組の固定電極(すなわち、同じ参照符号で表される複数の固定電極)同士は、円周方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。
【0025】
回転軸11を中心とする同一円周上では、個々の帯電部12と個々の固定電極の幅はすべて同じである。また、回転子10の各面の帯電部12と各組の固定電極の個数は、すべて同じである。1つの固定電極21とそれに隣接する固定電極22の円周方向の幅を1周期とすると、固定電極31,32の配置位置は、固定電極21,22の配置位置に対して1/4周期分、矢印C方向にずれている。すなわち、回転子10の回転方向における固定電極21,22と固定電極31,32との配置位置は、互いに位相がずれた関係にある。この位相ずれにより、固定子20,30の一方における1つの固定電極は、円周方向において、固定子20,30の他方における2つの固定電極に重なる。
【0026】
駆動部3は、アクチュエータ2の駆動回路であり、制御部4から入力された制御信号に応じて、所定の駆動周波数で極性が交互に切り替わる交番電圧(駆動パルス)を固定電極21,22および固定電極31,32に印加する。固定電極21,22,31,32の極性は、この駆動パルスの波形に応じて変化する。駆動部3は、駆動パルスに応じて固定電極21,22,31,32に選択的に通電することで、複数の帯電部12と固定電極21,22,31,32との間に発生する静電気力により、回転子10を回転させる。
【0027】
検出用帯電部15は、帯電部12と同様にエレクトレット材料で構成された薄膜であり、回転子10の上面における回転軸11との嵌合孔の周辺の2か所に形成されている。検出用電極25は、固定子20の下面における回転軸11との嵌合孔の周辺の2か所に形成されている。検出用帯電部15と検出用電極25は、帯電部12および固定電極21,22に上面視で重ならず、回転子10が回転して円周方向の位置が合ったときに互いに対向するように、回転子10と固定子20の内周側の径方向における同じ位置に配置されている。図示した例では回転軸11の断面は円形であり嵌合孔も円形であるが、嵌合孔が円形ではなく長径と短径を有する場合には、検出用帯電部15と検出用電極25の面積をなるべく大きくするために、それらを嵌合孔の短径部に配置することが好ましい。
【0028】
検出用帯電部15と検出用電極25は検出部の一例であり、回転子10が回転して検出用帯電部15が通過するたびに検出用電極25から検出信号が出力されるため、その検出信号の波形から、回転子10の回転状態を検出することができる(Z相検出)。また、検出用帯電部15と検出用電極25を回転子10と固定子20の内周側における回転軸11との嵌合孔の周辺に形成することで、回転子10の外径を増やすことなく、回転子10の回転状態を検出することができる。
【0029】
回転子10の回転状態としては、主に、時刻同期状態、駆動パルスとの同期状態および脱調状態の3通りがある。時刻同期状態は、回転子10の動作が駆動パルスに同期し、かつ、時計の計時手段50(
図1を参照)の時刻データにも同期している(静電モータ1により駆動される時計の針が示す時刻が時刻データと合っている)状態である。駆動パルスとの同期状態は、回転子10の動作が駆動パルスには同期しているが、時刻データには同期していない(上記の時計の針が示す時刻が時刻データと合っておらず、時刻ずれが発生している)状態である。また、脱調状態は、回転子10の動作が駆動パルスに同期していない状態であり、具体的には、回転子10の回転速度が通常とは異なるか、回転子10が正方向(矢印C方向)とは逆方向に回転しているか、または回転子10の回転が停止している状態である。脱調状態のときには、一般に、時刻ずれも発生している。
【0030】
制御部4は、CPUおよびメモリを含むマイクロコンピュータで構成され、アクチュエータ2を駆動するための制御信号を生成して駆動部3に入力することで、回転子10の動作を制御する。制御部4は、通常は、計時手段50の時刻データに同期した所定の駆動周波数で回転子10を回転させる。また、制御部4は、検出用帯電部15と検出用電極25により脱調が検出された場合には、回転子10を一旦停止させてから駆動を再開させるか、あるいは、回転子10を停止させずに回転速度を変化させることにより、時刻同期状態に復帰させる。そのために、制御部4は、通常の駆動周波数よりも低い周波数の駆動パルスを固定電極21,22,31,32に印加させて回転子10を回転させることで帯電部12を所定の指針基準位置に合わせた上で、時刻データにタイミングを合わせて回転子10を回転させる。
【0031】
制御部4は、そのマイクロコンピュータにより実現される機能ブロックとして、
図1に示すように、脱調判定手段41、周波数変更手段42、リセット手段43、位置決め手段44および時刻同期手段45を有する。
【0032】
脱調判定手段41は、検出用電極25から出力される検出信号に基づき、回転子10が脱調状態にあるか否かを判定(検出)する。回転子10が1周する間に検出用帯電部15の通過に伴い検出用電極25が検出信号を1回出力するため、脱調判定手段41は、その検出信号のタイミングをカウンタで計測し、そのカウント値が通常の回転速度に対応する予め定められた範囲内に収まっていれば脱調状態ではないと判定する。また、脱調判定手段41は、カウント値がその範囲から外れていれば脱調状態にあると判定し、特に、回転子10が1周する期間内に検出用電極25の検出信号がなければ、回転子10が停止していると判定する。
【0033】
周波数変更手段42は、脱調判定手段41の判定結果に応じて駆動パルスの周波数(駆動周波数)を増減させて、回転子10の回転速度を増減させるか、またはその回転を停止させる。例えば、周波数変更手段42は、脱調状態にあると脱調判定手段41が判定した場合には、駆動パルスとの同期状態に戻すために、通常の駆動周波数よりも低い周波数の駆動パルスを固定電極21,22,31,32に印加させて、回転子10を通常よりも遅い速度で回転させる。
【0034】
リセット手段43は、脱調状態にあると脱調判定手段41が判定し、かつ周波数変更手段42が駆動周波数を増減させても回転子10が駆動パルスとの同期状態に戻らない場合に、固定電極21,22,31,32にリセットパルスを印加させる。また、リセット手段43は、回転子10が逆方向に回転しているかまたは回転子10の回転が停止していると脱調判定手段41が判定した場合にも、同様にリセットパルスを印加させる。リセットパルスにより、リセット手段43は、帯電部12の円周方向の位置が規定位置に合うように回転子10を回転させて、そこで一旦停止させる。規定位置とは、回転子10を次に起動するときに固定電極21,22,31,32のうちで駆動パルスにより最初に電圧を印加する固定電極(例えば固定電極31)と帯電部12とが重なる円周方向の位置である。
【0035】
図3は、アクチュエータ2のリセットパルスの例を示す図である。第1〜第4電極は、
図1の固定電極31,21,32,22にそれぞれ相当する。
図3では、横軸が時間tであり、第1〜第4電極のそれぞれに印加される電圧の波形を示している。
図3に示すように等間隔の時刻t1〜t5(t1<t2<t3<t4<t5)を定義し、時刻t1〜t2、時刻t2〜t3、時刻t3〜t4および時刻t4〜t5の期間をそれぞれ(A)〜(D)とおく。時刻t1から時刻t5までの期間は、駆動パルスの1周期と同じ長さであるとする。
【0036】
図3のリセットパルスは、上記の規定位置を第1電極の円周方向の位置として、各帯電部12を第1電極に合わせて回転子10を停止させるためのものである。リセットパルスは、ブレーキ期間と、ブレーキ期間よりも開始が遅い位置決め期間とで構成されるパルスであり、期間(A),(B)がブレーキ期間に、期間(B),(C)が位置決め期間に、それぞれ相当する。期間(A)では第4電極が、期間(B)は第1、第4電極が、期間(C)では第1電極が、それぞれ正電位になり、この期間中、第2、第3電極は負電位のままである。なお、図示した例では、ブレーキ期間と位置決め期間は一部重複しているが、これらの期間は必ずしも重複していなくてもよい。
【0037】
第1〜第4電極は、隣接する2つの固定電極の幅を1周期として1/4周期ずつ、回転子10の回転方向(円周方向)にこの順序でずれて、繰り返し配置されている。したがって、
図3のリセットパルスでは、まず、ブレーキ期間において、負電位の帯電部12と引き合うように、円周方向の位置が第1電極の手前にある第4電極を正電位にした後、第4電極と第1電極とを正電位として、各帯電部12を第1電極に近付ける。ブレーキ期間では、2組以上の固定電極に通電させ、それらの固定電極で回転子10を駆動して、比較的大きなトルクを発生させる。そして、後続する位置決め期間において、第4電極と第1電極を正電位にした状態から、第1〜第4電極のうちで各帯電部12の回転方向の停止位置を合わせたい第1電極のみを正電位とし、各帯電部12を第1電極に揃えて回転子10を停止させる。
【0038】
ブレーキ期間と位置決め期間とで異なる組合せの固定電極に通電することにより、仮に、ブレーキ期間において帯電部12とある組の固定電極との円周方向の位置が一致し、回転方向のトルクが働かない状態にあったとしても、次の位置決め期間でトルクを発生させ、回転子10を回転させることができる。したがって、
図3のリセットパルスを印加すれば、帯電部と固定電極との位置関係にかかわらず、各帯電部12を第1電極の正対位置に合わせて停止させることができる。
【0039】
図4(A)〜
図4(D)は、リセットパルス印加時のアクチュエータ2の動作を説明する図である。これらの図は、縦方向と横方向がそれぞれアクチュエータ2の厚さ方向と円周方向に相当する模式的な縦断面図である。各図の上から順に、固定子20の第2、第4電極(固定電極21,22)、回転子10の上面および下面の帯電部12、ならびに固定子30の第1、第3電極(固定電極31,32)を示している。第2、第4電極と第1、第3電極はそれぞれ同一面に形成されており、それらの鉛直方向の高さは同じであるが、各図では、図示をわかりやすくするために、これらの電極を縦方向にずらしている。
図4(A)および
図4(B)は
図3に示した期間(A),(B)にそれぞれ対応し、
図4(C)および
図4(D)は期間(C)に対応する。各図では、これらの時刻に正電位になる電極を強調して示しており、また、帯電部12と第1〜第4電極との間に働く静電気力および回転子10の回転方向を矢印で示している。
【0040】
図示した例では、最初に、
図4(A)に示すように、円周方向において帯電部12が第3電極と丁度重なり、第2、第4電極と部分的に重なり、かつ第1電極とは重ならない位置で回転子10が停止しており、この状態で
図3のリセットパルスが印加されたとする。期間(A)では、
図4(A)に示すように、第4電極が正電位であり、回転子10は、帯電部12と重なる第4電極から引力を受けて、矢印C方向(図中右方向)に回転する。
【0041】
期間(B)では、
図4(B)に示すように、第1、第4電極が正電位であるため、回転子10は、帯電部12と重なるこれらの電極から引力を受けて、矢印C方向にさらに回転する。期間(C)では、
図4(C)に示すように、第1電極が正電位であるため、回転子10は、帯電部12と重なる第1電極から引力を受けて矢印C方向にさらに回転する。しかしながら、期間(C)では第2〜第4電極が負電位であるため、帯電部12が第1電極に重なるまで回転子10が回転すると、回転子10には矢印C方向のトルクが働かなくなる。このため、
図4(D)に示すように、回転子10は、帯電部12が第1電極に重なった状態で停止する。
【0042】
位置決め手段44は、リセット手段43によりリセットパルスが印加され、回転子10が一旦停止した後で、時刻データに同期した通常の駆動周波数よりも低い(例えば1/2以下の)周波数の駆動パルス(補正パルス)を印加させて、回転子10をゆっくり回転させる。そして、位置決め手段44は、帯電部12の円周方向の位置が所定の指針基準位置に合うまで回転子10を回転させて、そこで再度、回転子10の回転を停止させる。ゆっくり回転させるのは、回転子10に慣性があるので、指針基準位置に停止し易くするためである。補正パルスは通常の駆動パルスと同じでもよいが、回転子10を確実に回転させられるように、複数組の固定電極に同時に通電して回転方向に強いトルクを発生させるパルスであることが好ましい。
【0043】
指針基準位置は、例えば、回転子10が回転させる時計の指針が12時を指すときの回転子10の円周方向の位置である。指針基準位置は、検出用電極25と同じ位置でもよいし、異なる位置でもよい。指針基準位置が検出用電極25と同じ位置の場合には、位置決め手段44は、補正パルスにより回転子10を回転させ、検出用電極25からの出力信号により回転子10の回転方向の位置を検出した後に、さらに1周回転させてから、検出用帯電部15が検出用電極25に重なる位置で回転子10を停止させてもよい。指針基準位置が検出用電極25とは異なる位置である場合には、位置決め手段44は、両者の円周方向の距離に応じて回転子10を回転させてから停止させればよい。
【0044】
なお、時計の指針を基準位置に合わせるための運針モードであることをユーザに明示するために、位置決め手段44は、補正パルスによる回転子10の回転方向を、通常とは逆方向にしてもよい。また、リセットパルスが印加された後には、必ずしも位置決め手段44により回転子10を指針基準位置に再度停止させなくてもよく、回転子10をゆっくり回転させたまま駆動パルスとの同期状態へ移行させた上で、次に説明する時刻同期手段45により、回転子10の回転を時刻データに同期した状態に復帰させてもよい。
【0045】
時刻同期手段45は、位置決め手段44により指針基準位置で停止した回転子10に対し、計時手段50の時刻データに同期した周波数の駆動パルスをその時刻データにタイミングを合わせて印加させて、回転子10を起動する。また、時刻同期手段45は、回転子10が脱調状態になり、周波数変更手段42が駆動周波数を増減させて駆動パルスとの同期状態へ移行させた場合にも、時刻データにタイミングを合わせて同様の駆動パルスを印加させる。これにより、時刻同期手段45は、回転子10の回転を駆動パルスと時刻データに同期した状態に復帰させる。例えば、回転子10が駆動パルスとの同期状態にある場合、時計に遅れがあれば駆動周波数を増加させて遅れを取り戻し、進みがあれば駆動周波数を低下させて回転を遅くする。その上で、時刻同期手段45は、秒針の次の周回で回転子10の回転と時刻データとのタイミングを合わせることで、時計の時刻合わせをする。
【0046】
図5は、静電モータ1の時刻同期処理のフローチャートである。
図5および後述する
図12に示すフローは、制御部4のメモリに予め記憶されたプログラムに従って、制御部4のCPUにより実行される。
【0047】
時刻同期処理では、まず、制御部4は、駆動部3に駆動パルスを出力させる(S1)。そして、脱調判定手段41は、検出用電極25からの出力信号に基づき回転子10の回転状態を検出する(S2)。回転子10の回転速度が通常の回転速度に対応する予め定められた範囲内である場合には、脱調状態ではなく(S3でNo)、回転子10は時刻同期状態にあるため、S1に戻って、制御部4は、駆動部3に駆動パルスの出力を継続させる。
【0048】
一方、回転子10の回転速度が予め定められた範囲内にない場合には、脱調判定手段41は、回転子10が脱調状態にあると判定する(S3でYes)。ここで、回転子10が正方向に回転していない場合(S4でNo)、すなわち、いわゆるビビリの状態か、または逆方向への回転もしくは停止の状態にある場合には、リセット手段43は、駆動部3にリセットパルスを出力させて、回転子10を一旦停止させる(S5)。その上で、周波数変更手段42は、駆動パルスの周波数を通常の駆動周波数よりも低くして、駆動部3に低周波数の駆動パルスを出力させる(S6)。一方、回転子10が正方向に回転している場合(S4でYes)、すなわち、回転子10が止まったり動いたりを繰り返しているがある程度動いている不安定な状態にある場合には、S5は実行されずにS6が実行される。
【0049】
その上で、脱調判定手段41は、検出用電極25からの出力信号に基づき回転子10の回転状態を再度検出する(S7)。ここで、回転子10の回転速度が予め定められた範囲内にない(すなわち、低周波数の駆動パルスとの同期状態にない)場合(S8でNo)には、S5に戻って、リセット手段43は、駆動部3にリセットパルスを出力させる。
【0050】
一方、S7での検出の結果、回転子10の回転速度が予め定められた範囲内である(すなわち、低周波数の駆動パルスとの同期状態にある)場合(S8でYes)には、時刻同期手段45は、時計の指針が示す時刻と計時手段50の時刻データとのズレ量を算出する(S9)。その際、位置決め手段44により回転子10を指針基準位置に一旦停止させてもよいし、回転子10はゆっくり回転したままであってもよい。周波数変更手段42は、S9での算出の結果、時計が進んでいる場合(S10でYes)には、駆動部3に通常の駆動周波数よりも低い周波数の駆動パルスを出力させ(S11)、時計が遅れている場合(S10でNo)には、通常の駆動周波数よりも高い周波数の駆動パルスを出力させる(S12)。
【0051】
こうして、時刻同期手段45は、駆動周波数の調整により、時計の針が示す時刻が計時手段50の時刻データと同期(一致)した状態を実現する(S13)。その後、再びS1に戻り、制御部4は、時刻データとタイミングを合わせて、再び駆動部3に駆動パルスを出力させ、以上の各ステップを繰り返す。
【0052】
以上説明した静電モータ1では、回転子10が脱調状態になっても、慣性量の大きな回転子10を無理に逆転動作させる必要がなく、駆動周波数の増減により時刻を補正することができるため、時計に適用した場合に、ユーザが運針状態に不自然さを感じ難い。また、仮に負荷変動により回転子10が停止してしまったとしても、制御部4の制御により確実にその停止状態から抜け出して、時刻データとの同期状態に復帰させることができるので、静電モータ1は時計の運針用モータとしての使用に適している。
【0053】
図3に示したリセットパルスの波形は、固定電極の組数や、各組の固定電極の配置(位相の違い)などに応じて変化する。以下では、固定電極の組数が上記のものとは異なるアクチュエータについて、リセットパルスとそれを印加したときの動作を説明する。
【0054】
図6は、別のアクチュエータ2Aの概略構成図である。アクチュエータ2Aは、固定電極の組数および配置以外の点では、アクチュエータ2と同じ構成を有する。静電モータ1は、アクチュエータ2に代えてアクチュエータ2Aを有してもよい。アクチュエータ2Aの固定子20,30は、それぞれ3組の固定電極21〜23,31〜33を有し、これらはそれぞれ略台形状の複数の電極で構成される。固定電極21〜23は固定子20の下面において、固定電極31〜33は固定子30の上面において、それぞれ円周方向にこの順序で、回転軸11を中心とする放射状に形成されている。同じ組の固定電極同士は、円周方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。
【0055】
回転軸11を中心とする同一円周上では、個々の固定電極の幅はすべて同じであるが、その大きさは、個々の帯電部12の幅の2/3である。また、回転子10の各面の帯電部12と各組の固定電極の個数は、すべて同じである。1つの固定電極21とそれに隣接する固定電極22,23の円周方向の幅を1周期とすると、固定電極31〜33の配置位置は、固定電極21,22の配置位置に対して1/12周期分、矢印C方向にずれている。
【0056】
図7は、アクチュエータ2Aのリセットパルスの例を示す図である。第1〜第6電極は、
図6の固定電極31,21,32,22,33,23にそれぞれ相当する。
図7のリセットパルスも、各帯電部12を第1電極に合わせて回転子10を停止させるためのものである。時刻t1〜t5、期間(A)〜(D)、ブレーキ期間および位置決め期間の定義は、
図3のときと同じである。期間(A)では第4〜第6電極が、期間(B)は第1、第4〜第6電極が、期間(C)では第1電極が、それぞれ正電位になり、この期間中、第2、第3電極は負電位のままである。
【0057】
第1〜第6電極は、円周方向にこの順序でずれて繰り返し配置されている。したがって、
図7のリセットパルスでは、まず、ブレーキ期間において、負電位の帯電部12と引き合うように、円周方向の位置が第1電極の手前にある第4〜第6電極を正電位にした後、これらの電極と第1電極とを正電位として、各帯電部12を第1電極に近付ける。そして、後続する位置決め期間において、第1、第4〜第6電極を正電位にした状態から、第1〜第6電極のうちで各帯電部12の回転方向の停止位置を合わせたい第1電極のみを正電位とし、各帯電部12を第1電極に揃えて回転子10を停止させる。
【0058】
図8(A)〜
図8(D)は、リセットパルス印加時のアクチュエータ2Aの動作を説明する図である。各図では、
図4(A)〜
図4(D)と同様に、上から順に、固定子20の第2、第4、第6電極(固定電極21〜23)、回転子10の上面および下面の帯電部12、ならびに固定子30の第1、第3、第5電極(固定電極31〜33)を示している。これらの図と
図7との対応関係は、
図4(A)〜
図4(D)のときと同様である。
【0059】
図示した例では、最初に、
図8(A)に示すように、円周方向において帯電部12が第3〜第6電極と重なり、かつ第1、第2電極とは重ならない位置で回転子10が停止しており、この状態で
図7のリセットパルスが印加されたとする。
図8(A)〜
図8(C)に示すように、期間(A)では第4〜第6電極が、期間(B)では第1、第4〜第6電極が、期間(C)では第1電極が、それぞれ正電位になるため、回転子10は、帯電部12と重なるこれらの電極から引力を受けて、矢印C方向に回転する。しかしながら、期間(C)では第1電極以外は負電位であるため、帯電部12と第1電極の円周方向の位置が揃うまで回転子10が回転すると、回転子10には矢印C方向のトルクが働かなくなる。このため、
図8(D)に示すように、回転子10は、帯電部12が第1電極に重なった状態で停止する。
【0060】
図9は、さらに別のアクチュエータ2Bの概略構成図である。アクチュエータ2Bは、固定電極の組数および配置以外の点では、アクチュエータ2と同じ構成を有する。静電モータ1は、アクチュエータ2に代えてアクチュエータ2Bを有してもよい。アクチュエータ2Bの固定子20は下面に、固定子30は上面に、それぞれ4組の固定電極21〜24,31〜34を有し、これらはそれぞれ略台形状の複数の電極で構成される。同じ組の固定電極同士は、円周方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。
【0061】
固定電極21,23は固定子20の内周側(回転軸11に近い側)において交互に、固定電極22,24は固定電極21,23よりも外周側(回転軸11から遠い側)において交互に、かつそれぞれ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。同様に、固定電極31,33は固定子30の内周側において交互に、固定電極32,34は固定電極31,33よりも外周側において交互に、かつそれぞれ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。言い換えると、固定電極21,23および固定電極22,24ならびに固定電極31,33および固定電極32,34は、固定子20,30上で回転軸11を中心として同心円状に配置されている。
【0062】
回転軸11を中心とする同一円周上では、個々の帯電部12と個々の固定電極の幅はすべて同じである。また、回転子10の各面の帯電部12と各組の固定電極の個数は、すべて同じである。1つの固定電極21とそれに隣接する固定電極23の円周方向の幅を1周期とすると、固定電極22,24の配置位置は、固定電極21,23の配置位置に対して1/4周期分、矢印C方向にずれている。同様に、固定電極32,34の配置位置は、固定電極31,33の配置位置に対して1/4周期分、矢印C方向にずれており、固定電極31〜34の配置位置は、固定電極21〜24の配置位置に対して1/8周期分、矢印C方向にずれている。
【0063】
図10は、アクチュエータ2Bのリセットパルスの例を示す図である。第1〜第8電極は、
図9の固定電極31,21,32,22,33,23,34,24にそれぞれ相当する。
図10のリセットパルスも、各帯電部12を第1電極に合わせて回転子10を停止させるためのものである。時刻t1〜t5、期間(A)〜(D)、ブレーキ期間および位置決め期間の定義は、
図3のときと同じである。期間(A)では第6〜第8電極が、期間(B)は第1、第6〜第8電極が、期間(C)では第1電極が、それぞれ正電位になり、この期間中、第2〜第5電極は負電位のままである。
【0064】
第1〜第8電極は、隣接する2つの固定電極の幅を1周期として1/8周期ずつ、円周方向にこの順序でずれて配置されている。したがって、
図10のリセットパルスでは、まず、ブレーキ期間において、負電位の帯電部12と引き合うように、円周方向の位置が第1電極の手前にある第6〜第8電極を正電位にした後、これらの電極と第1電極とを正電位として、各帯電部12を第1電極に近付ける。そして、後続する位置決め期間において、第1、第6〜第8電極を正電位にした状態から、第1〜第8電極のうちで各帯電部12の回転方向の停止位置を合わせたい第1電極のみを正電位とし、各帯電部12を第1電極に揃えて回転子10を停止させる。
【0065】
図11(A)〜
図11(D)は、リセットパルス印加時のアクチュエータ2Bの動作を説明する図である。各図では、
図4(A)〜
図4(D)と同様に、上から順に、固定子20の第2、第4、第6、第8電極(固定電極21〜24)、回転子10の上面および下面の帯電部12、ならびに固定子30の第1、第3、第5、第7電極(固定電極31〜34)を示している。これらの図と
図10との対応関係は、
図4(A)〜
図4(D)のときと同様である。
【0066】
図示した例では、最初に、
図11(A)に示すように、円周方向において帯電部12が第5電極と丁度重なり、第2〜第4、第6〜第8電極と部分的に重なり、かつ第1電極とは重ならない位置で回転子10が停止しており、この状態で
図7のリセットパルスが印加されたとする。
図11(A)〜
図11(C)に示すように、期間(A)では第6〜第8電極が、期間(B)では第1、第6〜第8電極が、期間(C)では第1電極が、それぞれ正電位になるため、回転子10は、帯電部12と重なるこれらの電極から引力を受けて、矢印C方向に回転する。しかしながら、期間(C)では第1電極以外は負電位であるため、帯電部12が第1電極に重なるまで回転子10が回転すると、回転子10には矢印C方向のトルクが働かなくなる。このため、
図11(D)に示すように、回転子10は、帯電部12が第1電極に重なった状態で停止する。
【0067】
一般に、静電モータの駆動パルスには、回転子の起動時に印加するパルス(以下、「起動パルス」という)と、起動パルスよりも消費電力が少ない低消電パルスがある。低消電パルスは、例えば、いずれかの組の固定電極に通電させる通電期間と、いずれの組の固定電極にも通電させない非通電期間とを(例えば半周期分ずつ)交互に含み、その非通電期間に回転子を惰性で回転させる駆動パルスであってもよい。あるいは、低消電パルスは、固定子20,30のうちで一方の固定電極のみに通電させる駆動パルスであってもよい。前者の場合には通電を止めることで回転子に速度変動が生じるが、後者の場合には回転子の速度変動が実質的に生じないという特徴がある。
【0068】
特に、静電モータを時計の運針用モータとして使用する場合には、起動パルスは、秒針を細かいピッチで連続的に動かす運針方法(以下、スイープ運針という)の駆動パルスに相当する。また、非通電期間を含む低消電パルスは、秒針を小刻みに動かす運針方法(以下、多ビート運針という)の駆動パルスに相当する。多ビート運針よりもスイープ運針の方が駆動パルスの周波数は高いが、両者は、秒針の見た目の動きが滑らかかどうかで区別する。
【0069】
一般に、静電モータを時計などの電子機器で使用する場合には、なるべく低消費電力で駆動させることが望ましい。そこで、制御部4の制御により、回転子10の起動後に、駆動部3が印加する駆動パルスを、起動パルスから低消電パルスに切り替えてもよい。
【0070】
駆動パルスの切替えを行う場合、制御部4は、例えば、数十回程度、検出用電極25から等間隔に検出信号が出力されたら、回転子10の回転速度が一定になり、回転子10が起動状態から安定状態になったと判断する。そして、制御部4は、検出用電極25からの出力信号に基づいて回転子10の回転が安定状態になったと判断したときに、駆動部3が出力する駆動パルスを、起動パルスから低消電パルスに切り替える。その際、制御部4は、スイープ運針の駆動パルスを多ビート運針の駆動パルスに切り替える。なお、制御部4は、例えばユーザの操作に応じて、スイープ運針と多ビート運針とを切り替えてもよい。
【0071】
図12は、静電モータ1の駆動パルスの切替え処理のフローチャートである。
【0072】
駆動パルスの切替え処理では、まず、制御部4は、駆動部3に起動パルスを出力させて(S21)、検出用電極25からの出力信号に基づき回転子10の回転状態を検出する(S22)。検出用電極25から等間隔に検出信号が出力されており、回転子10が一定速度で安定に駆動されている場合(S23でYes)には、制御部4は、駆動部3が出力する駆動パルスを、起動パルスから低消電パルスに切り替える(S24)。その上で、制御部4は、検出用電極25からの出力信号に基づき、回転子10の回転状態を再び検出し(S25)、回転子10が一定速度で安定に駆動されている場合(S26でYes)には、低消電パルスによる駆動を継続させて(S27)、処理を終了する。一方、S25で安定駆動が検出されない場合(S26でNo)には、S21に戻り、制御部4は、再び駆動部3に起動パルスを出力させる。
【0073】
また、S22で安定駆動が検出されない場合(S23でNo)には、制御部4は、起動パルスによる駆動を継続させる(S28)。そして、一定時間の経過後、制御部4は、回転子10が一定速度で安定に駆動されているか否かを再び判断する(S29)。回転子10が一定速度で安定に駆動されている場合(S29でYes)には、S24に進んで、制御部4は、駆動部3が出力する駆動パルスを、起動パルスから低消電パルスに切り替える。一方、安定駆動が検出されない場合(S29でNo)には、回転子10の回転に異常があるため、制御部4は、例えば12時の位置などの基準位置まで秒針を送り停止させることでその異常状態を表示して(S30)、処理を終了する。
【0074】
上記のように駆動パルスの切替えを行う静電モータは、回転子10の回転状態が安定してからは、起動時よりも低消費電力で駆動することができる。
【0075】
なお、固定子30の固定電極の配置位置は、
図1、
図6および
図9に示したアクチュエータ2,2A,2Bの場合とは異なり、固定子20の固定電極の配置位置に対して、矢印C方向とは逆方向にずれていてもよい。この場合でも、固定電極の配置に応じて駆動パルスを変更することにより、アクチュエータ2,2A,2Bと同様に回転子10を回転させることができる。
【0076】
また、リセット手段43が印加させるリセットパルスは、
図3、
図7および
図10に示したものに限らず、通常の駆動パルスの1周期の長さを単に長くしたものであってもよい。あるいは、リセットパルスは、駆動パルスの1周期内で最後に正電位になる固定電極に電圧を印加した状態をそのまま長く維持するものであってもよい。
【0077】
また、
図1、
図6および
図9に示した検出用帯電部15と検出用電極25の配置は一例である。図示した例とは異なり、例えば、検出用帯電部15は回転子10の下面に、検出用電極25は下側の固定子30の上面にそれぞれ配置されていてもよい。あるいは、検出用帯電部15と検出用電極25を2組以上設けてもよく、例えば、回転子10の上面と上側の固定子20の下面、および回転子10の下面と下側の固定子30の上面に、それぞれ検出用帯電部15と検出用電極25の組を配置してもよい。
【0078】
また、検出用帯電部15と検出用電極25を用いずに、制御部4は、回転子10の起動から一定時間経過したときに、回転子10の回転が安定状態になったと判断してもよい。また、固定電極21,22のうちで各1個の電極を回転子10の駆動と回転状態の検出に兼用してもよい。この場合、制御部4は、それらの電極から出力される互いに位相がずれた検出信号(A相およびB相の検出信号)と、回転子10が1回転するたびに検出用電極25から出力される検出信号(Z相の検出信号)とに基づいて、回転子10の回転状態を判断し、駆動パルスを切り替えてもよい。
【0079】
また、検出用電極25のノイズを低減させるために、固定子20上の検出用電極25の近傍にGNDパターンを設けてもよい。また、検出用帯電部15および検出用電極25の代わりに、回転軸11をセラミックなどの非導電材で構成して、その上に回転状態の検出用の帯電部をパターン化して配置するとともに、その帯電部に対向する位置に検出用の電極を設けてもよい。あるいは、回転子10の側面の一部に回転状態の検出用の帯電部を設け、それに対向する位置に検出用の電極を設けてもよい。また、帯電部12とは別個に検出用帯電部15を設けるのではなく、複数の帯電部12のうちの一部をそれ以外の帯電部12とは異なる形状として、円周方向における帯電部12の配置パターンを一部変えてもよい。
【0080】
また、静電モータ1を時計の運針用モータとして使用する場合には、検出用帯電部15および検出用電極25の代わりに、時計で一般に用いられている指針位置検出構造を回転子10の回転状態の検出にも流用してもよい。例えば、時計内で秒針を回転させるための歯車に検出穴を設け、その検出穴の上下に発光部と受光部を配置し、検出穴がそれらの間と通過するときだけ発光部からの光を受光部で受光できるようにすることで、歯車の回転に要する時間を測定可能である。静電モータの制御部は、この受光部からの出力信号に応じて、回転子10の回転状態を判定してもよい。