【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成は、別の開閉弁や複数の圧力センサ等、本来は必要ではない複数の別付けの装置が必要であり、部品点数が増加してコスト高を招く等の不利がある。しかも、上記従来構成では、開閉弁の動作異常を判断することは可能であるが、発電酸素用のブロアの動作異常については判別することができないという不利もある。
【0007】
ブロアの動作異常について説明を加えると、ブロアが故障して送風動作が全く行われていない場合には、異常であることを判断し易い。これに対して、例えば、ブロアの内部に水が侵入するという異常が発生したような場合には、ブロアの運転動作は引き続き行うことが可能であり、燃料電池の出力が低出力であれば、通常運転と略同じような運転を継続することが可能である。しかし、このようにブロア内部に水が侵入している状態で運転を継続すると、ブロアが短期間で著しく損傷するおそれがある。
【0008】
ブロアに対する水の侵入について説明する。
燃料電池では、従来より、燃料電池内部に水を供給して、アノードやカソードを湿潤させる構成のものがあり、この構成では、運転を停止している時には、燃料電池内部に水が多量に存在することになる。
【0009】
そして、運転停止中には、燃料電池内部に残留している酸化剤ガスによってカソードが酸化することを回避するために、改質器を経由して原燃料ガスを供給して燃料電池内部の圧力を高めに設定する保圧処理を行う場合がある。
【0010】
又、運転停止状態から発電を開始させる場合に、燃焼部に残留している未燃焼ガス等を排出させるために、改質器を経由して燃焼用空気を供給することがある。このときも燃料電池内部の圧力が高めに変化することがある。
【0011】
その結果、発電用酸素ガスが通流するガス供給路に備えられる開閉弁が故障していると、運転停止中や運転開始時等において、燃料電池内部の圧力が高めに変化することに起因して、燃料電池内部に存在する水の一部がガス供給路を通してブロアに侵入することがある。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、別付けの装置を備える等の構造の複雑化を招くことなく、燃料電池部への発電用酸素ガスの供給不具合が発生したことを判別できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、
原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質部と、
前記改質部で生成された前記燃料ガスが供給されるアノード、及び、発電用酸素ガスが供給されるカソードを有する燃料電池部と、
前記燃料電池部での発電反応で用いられた後に前記アノードから排出される排出燃料ガス中の燃料成分を燃焼させる燃焼部と、
前記発電用酸素ガスを前記カソードに供給するための発電酸素用ブロアーと、
運転制御部とを備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池部の出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記燃料電池部の出力電力を検出する電力検出部と、を備え、
前記運転制御部は、
前記発電用酸素ガスの単位時間当たりの流量が、前記燃料電池部の出力電力に見合った目標流量となるように前記発電酸素用ブロアーの出力を調節し、
前記電力検出部で検出される出力電力が一定の間に、前記電圧検出部で検出される出力電圧が所定の許容範囲以上の変動を示したとき、前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定
し、
前記運転制御部は、
前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定し、且つ、前記発電酸素用ブロアーの現在の出力が、前記発電用酸素ガスの単位時間当たりの流量を前記燃料電池部の出力電力に見合った目標流量にするときの基準出力から設定値以上大きくなっているとき、前記発電用酸素ガスの流路抵抗の増大を原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると判定し、
前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定し、且つ、前記発電酸素用ブロアーの現在の出力が前記基準出力から前記設定値以上大きくなっていないとき、前記発電酸素用ブロアーを原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると判定する点にある。
【0014】
運転制御部は、燃料電池部の出力電力に見合った目標流量となるように発電酸素用ブロアーの出力を調節するのであるが、例えば、水の侵入等が原因でブロアの動作に異常が発生した場合には、ブロアから送り出される空気の流量に特有の乱れが生じて、この乱れに伴って燃料電池部の出力電圧が大きく上下に変動することがある。
【0015】
そこで、そのことを利用して、燃料電池部の出力電力が一定である条件下において、燃料電池部の出力電圧が許容範囲以上に変動すると、カソードへの発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定することができる。尚、燃料電池の運転状態を検知するために、電圧検出部及び電力検出部は本来必要な構成である。
【0016】
その結果、本来必要とされる装置を用いることで、別付けの装置を備える等の構造の複雑化を招くことなく、燃料電池部への発電用酸素ガスの供給不具合が発生したことを判別できるものとなった。
ところで、発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していても、その不具合の発生要因として、発電酸素用ブロアーを原因とするものだけでなく、発電用酸素ガスが通流するガス供給路が何等かの要因で閉塞されて流路抵抗の増大していることも考えられる。
そして、流路抵抗の増大が原因であれば、発電酸素用ブロアーの出力を目標流量に対応する基準出力に調整しても、目標流量の発電用酸素ガスを供給することができない。その結果、運転制御部が、目標流量になるように発電酸素用ブロアーの出力を調整すると、発電酸素用ブロアーの出力が基準出力よりも設定量以上大きい出力になる。一方、発電酸素用ブロアーが原因であれば、発電酸素用ブロアーの出力は基準出力から大きく変動するおそれは少ない。
そこで、上記特徴構成では、そのことを利用して、発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定した場合に、流路抵抗の増大が原因であるか、発電酸素用ブロアーが原因であるかを判定することが可能となる。
【0017】
本発明に係る燃料電池システムの別の特徴構成は、前記運転制御部は、前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定したとき、前記燃料電池部の出力電力を所定の低出力状態にさせる低出力運転を所定期間行う点にある。
【0018】
例えば、水の侵入等が原因で発電酸素用ブロアーの動作に異常が発生している場合であっても、燃料電池部が低出力状態で運転しているときは、通常運転と略同じような出力電圧の変動が少ない安定した運転を継続することが可能である。そこで、不具合が発生していると判定したときには、低出力運転を行うことで、発電酸素用ブロアーに無理な力が掛かって早期に破損する等の不利を回避できる。尚、不具合が発生していると判定した結果、所定時間が経過する間に何等かの対策を取ることが可能であるから、低出力運転を所定期間行うようにして、不必要に長く継続することを回避できる。
【0023】
本発明に係る燃料電池システムの更に別の特徴構成は、
前記運転制御部は、
前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定し、且つ、前記発電酸素用ブロアーの現在の出力が前記基準出力から前記設定値以上大きくなっていないとき、前記発電酸素用ブロアーへの水の侵入を原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると判定する点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、燃料電池部の出力電圧が変動して不具合が発生しているにもかかわらず、発電酸素用ブロアーの出力が基準出力から設定値以上大きくなっていなければ、発電酸素用ブロアーへの水の侵入が原因であると判定する。つまり、このような場合には、発電酸素用ブロアーの送風能力自体に問題はなく、水の侵入が原因であることが想定できる。
【0025】
従って、発電酸素用ブロアーの出力の大きさの違いによって、水の侵入が原因であるか否かを判定することができる。
【0026】
本発明に係る燃料電池システムの運転方法の特徴は、
原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記改質部で生成された前記燃料ガスが供給されるアノード、及び、発電用酸素ガスが供給されるカソードを有する燃料電池部と、前記燃料電池部での発電反応で用いられた後に前記アノードから排出される排出燃料ガス中の燃料成分を燃焼させる燃焼部と、前記発電用酸素ガスを前記カソードに供給するための発電酸素用ブロアーとを備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池部の出力電圧を検出する電圧検出部と、前記燃料電池部の出力電力を検出する電力検出部とを備え、
前記発電用酸素ガスの単位時間当たりの流量が、前記燃料電池部の出力電力に見合った目標流量となるように前記発電酸素用ブロアーの出力が調節され、前記電力検出部で検出される出力電力が一定の間に、前記電圧検出部で出力電圧を検出する電圧検出工程と、
前記電圧検出工程で検出された出力電圧が所定の許容範囲以上の変動を示したとき、前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定する不具合判定工程
と、
前記不具合判定工程において、前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定したとき、前記発電酸素用ブロアーの現在の出力が、前記発電用酸素ガスの単位時間当たりの流量を前記燃料電池部の出力電力に見合った目標流量にするときの基準出力から設定値以上大きくなっていれば、前記発電用酸素ガスの流路抵抗の増大を原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると推定し、前記発電酸素用ブロアーの現在の出力が前記基準出力から前記設定値以上大きくなっていなければ、前記発電酸素用ブロアーを原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると推定する不具合原因推定工程と、を有する点にある。
【0027】
燃料電池部の出力電力に見合った目標流量となるように発電酸素用ブロアーの出力が調節されるが、例えば、水の侵入等が原因でブロアの動作に異常が発生した場合には、ブロアから送り出される空気の流量に特有の乱れが生じて、この乱れに伴って燃料電池部の出力電圧が大きく上下に変動することがある。
【0028】
そこで、電圧検出工程において、燃料電池部の出力電力が一定であるときに、燃料電池部の出力電圧を検出し、不具合判定工程において、出力電圧が所定の許容範囲以上の変動を示していれば、カソードへの発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定することができる。尚、燃料電池の運転状態を検知するために、電圧検出部及び電力検出部は本来必要な構成である。
【0029】
その結果、本来必要とされる装置を用いることで、別付けの装置を備える等の燃料電池システムの構造の複雑化を招くことなく、燃料電池部への発電用酸素ガスの供給不具合が発生したことを判別できるものとなった。
ところで、発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していても、その不具合の発生要因として、発電酸素用ブロアーを原因とするものだけでなく、発電用酸素ガスが通流するガス供給路が何等かの要因で閉塞されて流路抵抗の増大していることも考えられる。
そして、流路抵抗の増大が原因であれば、発電酸素用ブロアーの出力を目標流量に対応する基準出力に調整しても、目標流量の発電用酸素ガスを供給することができない。その結果、運転制御部が、目標流量になるように発電酸素用ブロアーの出力を調整すると、発電酸素用ブロアーの出力が基準出力よりも設定量以上大きい出力になる。一方、発電酸素用ブロアーが原因であれば、発電酸素用ブロアーの出力は基準出力から大きく変動するおそれは少ない。
そこで、上記特徴では、そのことを利用して、発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定した場合に、流路抵抗の増大が原因であるか、発電酸素用ブロアーが原因であるかを判定することが可能となる。
【0030】
本発明に係る燃料電池システムの運転方法の別の特徴は、
前記不具合判定工程で、前記カソードへの前記発電用酸素ガスの供給に不具合が発生していると判定したとき、前記燃料電池部の出力電力を所定の低出力状態にさせる低出力運転を所定期間行う対策工程を有する点にある。
【0031】
例えば、水の侵入等が原因で発電酸素用ブロアーの動作に異常が発生している場合であっても、燃料電池部が低出力状態で運転しているときは、通常運転と略同じような出力電圧の変動が少ない安定した運転を継続することが可能である。そこで、不具合が発生していると判定したときには、低出力運転を行うことで、発電酸素用ブロアーに無理な力が掛かって早期に破損する等の不利を回避できる。尚、不具合が発生していると判定した結果、所定時間が経過する間に何等かの対策を取ることが可能であるから、低出力運転を所定期間行うようにして、不必要に長く継続することを回避できる。
【0036】
本発明に係る燃料電池システムの運転方法の更に別の特徴は、
前記不具合原因推定工程で、前記発電酸素用ブロアーを原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると推定したとき、前記燃料電池部の出力電力を所定の低出力状態にさせる低出力運転を所定期間行う対策工程を有する点にある。
【0037】
上記方法によれば、発電酸素用ブロアーを原因とする発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると推定したときに、燃料電池部の出力電力を所定の低出力状態にさせるので、別の原因であると想定されるときには、別の対策を取ることになる。
【0038】
従って、発電酸素用ブロアーを原因とするときにのみ、そのことに対して適切な対策を取ることができる。
【0039】
本発明に係る燃料電池システムの運転方法の更に別の特徴は、
前記不具合原因推定工程で、前記発電酸素用ブロアーを原因とする前記発電用酸素ガスの供給の不具合が発生していると推定したとき、前記燃料電池部を発電させない間の所定のタイミングで、前記発電酸素用ブロアーを動作させて当該発電酸素用ブロアーから前記カソードに向けて前記発電用酸素ガスを流す点にある。
【0040】
上記方法によれば、燃料電池部を発電させていない間の適切なタイミングにて、発電酸素用ブロアーからカソードに向けて発電用酸素ガスを流すことにより、カソード側に水が多量に存在していても、水が発電酸素用ブロアーに侵入してくることを防止できる。
【0041】
本発明に係る燃料電池システムの運転方法の更に別の特徴は、
前記所定のタイミングが、前記燃料電池部を発電させない間で、前記カソードから前記発電酸素用ブロアーに向かう圧力が加わるタイミングであると好適である。
【0042】
上記方法によれば、カソードから発電酸素用ブロアーに向かう圧力が加わるタイミングで、発電酸素用ブロアーからカソードに向けて発電用酸素ガスを流すことにより、水が発電酸素用ブロアーに侵入してくることをより的確に防止することができる。