(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861549
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
F24H1/18 503P
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-58282(P2017-58282)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-159531(P2018-159531A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】細川 沙奈
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−138678(JP,A)
【文献】
特開2011−237083(JP,A)
【文献】
特開2015−158323(JP,A)
【文献】
特開2013−155987(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0216770(US,A1)
【文献】
特開平07−324809(JP,A)
【文献】
特開2007−085664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源装置、及び当該熱源装置で発生した熱を温水として貯える貯湯タンクを有する熱源ユニットと、
前記熱源ユニットと供給先との間に設けられ、前記貯湯タンクから供給される温水及び給水源から供給される水のうち少なくとも一方が、前記熱源ユニットから前記供給先に流れる供給路と、
前記供給路に設けられ、前記供給路を流れる温水又は水を加熱する加熱装置を有する加熱ユニットと、を備える給湯システムであって、
前記熱源ユニットを制御する制御部を備え、
前記制御部は、測定対象温度が下限温度以下になると、水の凍結発生条件が満たされたと判定し、前記水の凍結発生条件を満たすと、常に、前記貯湯タンク内の温水を前記供給路を経由して前記供給先に供給する凍結予防運転を行う給湯システム。
【請求項2】
熱源装置、及び当該熱源装置で発生した熱を温水として貯える貯湯タンクを有する熱源ユニットと、
前記熱源ユニットと供給先との間に設けられ、前記貯湯タンクから供給される温水及び給水源から供給される水のうち少なくとも一方が、前記熱源ユニットから前記供給先に流れる供給路と、
前記供給路に設けられ、前記供給路を流れる温水又は水を加熱する加熱装置を有する加熱ユニットと、を備える給湯システムであって、
前記熱源ユニットを制御する制御部を備え、
前記制御部は、測定対象温度が水の凍結発生条件を満たすと、前記貯湯タンク内の温水を前記供給路を経由して前記供給先に供給する凍結予防運転を、設定時間だけ行い、
前記制御部は、前記凍結予防運転を終了した後、前記測定対象温度が基準温度以上になっていなければ、前記凍結予防運転を再度行う給湯システム。
【請求項3】
前記測定対象温度は、外気の温度、前記給水源から供給される水の温度、前記供給路の温度、及び前記供給路内の水の温度のうち少なくとも何れか一つである請求項1又は2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記凍結予防運転において、前記貯湯タンクから供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されて、目標温度の温水が前記熱源ユニットから前記供給路に供給される請求項1〜3の何れか一項に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記供給先は、浴槽である請求項1〜4の何れか一項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記測定対象温度が下限温度以下になると、前記水の凍結発生条件が満たされたと判定し、
前記基準温度は、前記下限温度よりも高い温度である請求項2に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯システムとして、熱源装置、及び当該熱源装置で発生した熱を温水として貯える貯湯タンクを有する熱源ユニットと、熱源ユニットと供給先との間に設けられ、貯湯タンクから供給される温水及び給水源から供給される水のうち少なくとも一方が、熱源ユニットから供給先に流れる供給路と、供給路に設けられ、供給路を流れる温水又は水を加熱する加熱装置を有する加熱ユニットと、を備える給湯システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の給湯システムでは、外気の温度が低い場合、供給路が凍結するのを防止するべく、供給路をヒータによって温めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−324809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の給湯システムでは、ヒータによる凍結予防が行われると、その分だけ電力が消費されてしまう。
【0005】
上記状況に鑑み、凍結予防による電力消費量を削減可能な給湯システムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
熱源装置、及び当該熱源装置で発生した熱を温水として貯える貯湯タンクを有する熱源ユニットと、
前記熱源ユニットと供給先との間に設けられ、前記貯湯タンクから供給される温水及び給水源から供給される水のうち少なくとも一方が、前記熱源ユニットから前記供給先に流れる供給路と、
前記供給路に設けられ、前記供給路を流れる温水又は水を加熱する加熱装置を有する加熱ユニットと、を備える給湯システムであって、
前記熱源ユニットを制御する制御部を備え、
前記制御部は、測定対象温度が
下限温度以下になると、水の凍結発生条件が満たされたと判定し、前記水の凍結発生条件を満たすと
、常に、前記貯湯タンク内の温水を前記供給路を経由して前記供給先に供給する凍結予防運転を行うことにある。
【0007】
本特徴構成によれば、測定対象温度が水の凍結発生条件を満たすと、貯湯タンク内の温水が供給路を流れる。これにより、供給路が温水によって温められるため、供給路を温めるためのヒータが不要になる。すなわち、本特徴構成によれば、凍結予防による電力消費量を削減可能な給湯システムを実現することができる。
また、測定対象温度が下限温度以下になれば、貯湯タンク内の温水が供給路を自動的に流れるため、測定対象温度が下限温度以下になった場合に、貯湯タンク内の温水を供給路に確実に流すことができる。
また、本発明の特徴は、
熱源装置、及び当該熱源装置で発生した熱を温水として貯える貯湯タンクを有する熱源ユニットと、
前記熱源ユニットと供給先との間に設けられ、前記貯湯タンクから供給される温水及び給水源から供給される水のうち少なくとも一方が、前記熱源ユニットから前記供給先に流れる供給路と、
前記供給路に設けられ、前記供給路を流れる温水又は水を加熱する加熱装置を有する加熱ユニットと、を備える給湯システムであって、
前記熱源ユニットを制御する制御部を備え、
前記制御部は、測定対象温度が水の凍結発生条件を満たすと、前記貯湯タンク内の温水を前記供給路を経由して前記供給先に供給する凍結予防運転を、設定時間だけ行い、
前記制御部は、前記凍結予防運転を終了した後、前記測定対象温度が基準温度以上になっていなければ、前記凍結予防運転を再度行うことにある。
本特徴構成によれば、測定対象温度が水の凍結発生条件を満たすと、貯湯タンク内の温水が供給路を流れる。これにより、供給路が温水によって温められるため、供給路を温めるためのヒータが不要になる。すなわち、本特徴構成によれば、凍結予防による電力消費量を削減可能な給湯システムを実現することができる。
本特徴構成によれば、凍結予防運転において、設定時間に対応する一定量の温水を確実に供給することができる。
本特徴構成によれば、凍結予防運転が行われたにもかかわらず、依然として凍結の虞がある場合は、再度、凍結予防運転が行われる。これにより、凍結の発生を確実に予防することができる。
【0008】
さらに、本発明において、
前記測定対象温度は、外気の温度、前記給水源から供給される水の温度、前記供給路の温度、及び前記供給路内の水の温度のうち少なくとも何れか一つで
あると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、外気の温度、給水源から供給される水の温度、供給路の温度、及び供給路内に存在する水の温度は、水の凍結発生と相関があり、これらのうち少なくとも何れか一つを測定対象温度とすることにより、水の凍結発生を高い精度で判定することができる
。
【0010】
さらに、本発明において、
前記凍結予防運転において、前記貯湯タンクから供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されて、目標温度の温水が前記熱源ユニットから前記供給路に供給されると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、貯湯タンク内の温水の使用量を必要最小限に抑えると共に、供給路に供給される温水を適切な温度に管理することができる。
【0012】
さらに、本発明において、
前記供給先は、浴槽であると好適である。
【0013】
通常、供給先が浴槽である場合、温水を浴槽に供給するか否かを切り替えるべく、供給路に自動制御弁が設けられている。本特徴構成によれば、自動制御弁を利用することにより、凍結予防運転に係る制御システムを構築し易い。
【0018】
さらに、本発明において、
前記制御部は、前記測定対象温度が下限温度以下になると、前記水の凍結発生条件が満たされたと判定し、
前記基準温度は、前記下限温度よりも高い温度であると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、基準温度が下限温度に対して余裕があるため、凍結予防運転終了後直ちに測定対象温度が下限温度以下になって凍結予防運転が頻繁に行われる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】凍結予防運転に係る制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0022】
図1に示すように、給湯システムは、熱源ユニット1と、浴槽2(本発明に係る「供給先」に相当)と、供給路3と、加熱ユニット4と、制御部5と、を備えている。熱源ユニット1は、熱源装置6と、熱交換器7と、貯湯タンク8と、を備えている。
【0023】
熱源装置6は、例えば、固体酸化物形燃料電池であり、燃料ガス中の水素等と酸素ガスとを電解質を介して化学反応させることにより発電を行う。熱交換器7は、熱源装置6で発生した熱(排熱)を回収して温水を作り出す。
【0024】
貯湯タンク8は、熱源装置6で発生した熱を温水として貯える。貯湯タンク8内の温水を出湯する出湯路9が設けられている。給水源(図示省略)から貯湯タンク8に給水する給水路10が設けられている。給水路10から分岐する分水路11が設けられている。
【0025】
熱交換器7と貯湯タンク8との間には、排熱を回収する排熱回収路12が設けられている。排熱回収路12のうち熱交換器7よりも上流側には、ポンプPが設けられている。
【0026】
供給路3は、熱源ユニット1と浴槽2との間に設けられ、貯湯タンク8から供給される温水及び前記給水源から供給される水が、熱源ユニット1から浴槽2に流れる。供給路3の上流側端部には、出湯路9の下流側端部及び分水路11の下流側端部が混合弁V1を介して接続されている。混合弁V1は、貯湯タンク8から供給される温水と前記給水源から供給される水との混合比を調整可能である。
【0027】
加熱ユニット4は、供給路3に設けられている。加熱ユニット4は、供給路3を流れる温水又は水を加熱する加熱装置13を備えている。加熱装置13は、燃焼器14と、燃焼器14を覆うケーシング15と、燃焼器14に空気を供給するブロワ16と、燃焼器14にガスを供給するガス供給路17と、を備えている。
【0028】
熱源ユニット1の内部において、供給路3のうち混合弁V1の出口近傍には、温度センサT1が設けられている。温度センサT1は、供給路3内の温水又は水の温度を検出する。加熱ユニット4の内部において、供給路3のうち加熱装置13よりも下流側には、温度センサT2及び供給弁V2が、上流側からこの順で設けられている。温度センサT2は、測定対象の温度(測定対象温度)tを検出する。測定対象は、供給路3の温度であってもよいし、あるいは、供給路3内の水の温度であってもよい。すなわち、供給路3の温度及び供給路3内の水の温度は、夫々、本発明に係る「測定対象温度」に相当する。
【0029】
制御部5は、熱源ユニット1及び加熱ユニット4を制御する。制御部5には、混合弁V1、温度センサT1、温度センサT2、供給弁V2等が接続されている。制御部5は、測定対象温度tが水の凍結発生条件を満たすと、貯湯タンク8内の温水を供給路3を経由して浴槽2に供給する凍結予防運転を行う。なお、制御部5に代えて、熱源ユニット1用の制御部と加熱ユニット4用の制御部とが夫々設けられていてもよい。
【0030】
図2に示すように、制御部5は、測定対象温度tが下限温度tmin以下になると(S1:Yes)、水の凍結発生条件が満たされたと判定し、凍結予防運転を行う(S2)。制御部5は、測定対象温度tが下限温度tminを上回っている場合(S1:No)は、水の凍結発生条件が満たされていないと判定し、凍結予防運転を行わない。
【0031】
凍結予防運転において、制御部5は、供給弁V2を開位置に切り替えると共に、熱源ユニット1から供給路3に供給される温水の温度が第1目標温度となるように、混合弁V1の開度を調整する。これにより、貯湯タンク8から供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されて、第1目標温度の温水が熱源ユニット1から供給路3を経由して浴槽2に供給される。
【0032】
そして、制御部5は、凍結予防運転の運転時間hが設定時間hsを経過していれば(S3:Yes)、凍結予防運転を終了する(S4)。すなわち、制御部5は、凍結予防運転を設定時間hsだけ行う。制御部5は、凍結予防運転の運転時間hが設定時間hsを経過していなければ(S3:No)、凍結予防運転を継続する。
【0033】
そして、制御部5は、凍結予防運転を終了した後、測定対象温度tが基準温度ts以上になっていなければ(S5:No)、凍結予防運転を再度行う。基準温度tsは、下限温度tminよりも高い温度である。制御部5は、凍結予防運転を終了した後、測定対象温度tが基準温度ts以上になっていれば(S4:Yes)、凍結予防運転を再度行わない。
【0034】
再度の凍結予防運転において、制御部5は、供給弁V2を開位置に切り替えると共に、熱源ユニット1から供給路3に供給される温水の温度が第2目標温度となるように、混合弁V1の開度を調整する。本実施形態では、第2目標温度は、第1目標温度よりも低い温度である。これにより、貯湯タンク8から供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されて、第2目標温度の温水が熱源ユニット1から供給路3を経由して浴槽2に供給される。
【0035】
なお、再度の凍結予防運転が終了した後は、測定対象温度tが基準温度ts以上になるまで(S5:Yes)、凍結予防運転を繰り替えてしてもよいし、あるいは、凍結予防運転が行われる回数に制限を設けてもよい。
【0037】
(1)上記実施形態では、本発明に係る「測定対象温度」は、供給路3の温度又は供給路3内の水の温度である。しかし、これに代えて、本発明に係る「測定対象温度」は、外気の温度又は前記給水源から供給される水の温度であってもよい。すなわち、本発明に係る「測定対象温度」は、外気の温度、前記給水源から供給される水の温度、供給路3の温度、及び供給路3内の水の温度のうち少なくとも何れか一つであればよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、貯湯タンク8から供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されて、目標温度の温水が熱源ユニット1から供給路3を経由して浴槽2に供給される。しかし、これに代えて、貯湯タンク8から供給される温水と前記給水源から供給される水とが混合されることなく、貯湯タンク8から供給される温水のみが熱源ユニット1から供給路3を経由して浴槽2に供給されるようにしてもよい。
【0039】
(3)上記実施形態では、第2目標温度は、第1目標温度よりも低い温度である。しかし、これに代えて、第2目標温度は、第1目標温度と同じ温度であってもよい。
【0040】
(4)上記実施形態では、本発明に係る「供給先」は、浴槽2である。しかし、本発明に係る「供給先」は、浴槽2に限定されるものではない。例えば、本発明に係る「供給先」は、温水暖房装置であってもよい。
【0041】
(5)上記実施形態では、制御部5は、凍結予防運転を設定時間だけ行う。しかし、これに代えて、設定供給量の温水が供給路3を経由して浴槽2に供給されるように、制御部5が凍結予防運転を設定供給量だけ行うようにしてもよい。
【0042】
(6)上記実施形態では、基準温度tsは、下限温度tminよりも高い温度である。しかし、これに代えて、基準温度tsは、下限温度tminと同じ温度であってもよい。
【0043】
なお、上記実施形態及び上記別実施形態は、矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。また、本発明は、上記実施形態及び上記別実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、給湯システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 熱源ユニット
2 浴槽(供給先)
3 供給路
4 加熱ユニット
5 制御部
6 熱源装置
8 貯湯タンク
13 加熱装置
hs 設定時間
t 測定対象温度
tmin 下限温度
ts 基準温度