(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861554
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】汚泥用脱水剤
(51)【国際特許分類】
C02F 11/147 20190101AFI20210412BHJP
C02F 11/148 20190101ALI20210412BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20210412BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20210412BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
C02F11/147
C02F11/148
B01D21/01 111
B01D21/01 102
D06M15/507
D06M15/53
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-67207(P2017-67207)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167191(P2018-167191A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 文
(72)【発明者】
【氏名】三浦 篤人
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−097510(JP,A)
【文献】
特開昭56−013099(JP,A)
【文献】
特開2002−219360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52−56、11/00−20
B01D 21/01
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−10
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を、ポリエーテル・ポリエステル共重合体である親水性油剤で処理した繊維状物(a)、凝集剤(b)および水を含有する汚泥用脱水剤。
【請求項2】
繊維状物(a)は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維および天然繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1記載の汚泥用脱水剤。
【請求項3】
凝集剤(b)は、無機凝集剤および高分子凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1記載の汚泥用脱水剤。
【請求項4】
無機凝集剤は、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、消石灰および硫化第一鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項3記載の汚泥用脱水剤。
【請求項5】
高分子凝集剤は、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ共重合物、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物、アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物、ポリビニルアミジン、キトサン、ポリグルタミン酸、アルギン酸、ペクチン、でんぷん、アクリル酸エステルとアクリルアミドとの共重合体およびメタクリル酸エステル重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項3記載の汚泥用脱水剤。
【請求項6】
100重量部の凝集剤(b)に対して、0.83〜20,000重量部の繊維状物(a)を含有する、請求項1記載の汚泥用脱水剤。
【請求項7】
繊維状物(a)は、長さが3〜30mm、太さが2〜300μmである、請求項1記載の汚泥用脱水剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、有機性排水などを生物処理ないし化学薬品で処理する際に発生する汚泥の脱水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界では温室効果ガス排出量の削減、省エネルギー、廃棄物量の削減に代表される環境配慮がますます求められており、下水処理場、浄化槽、し尿処理施設、産業排水処理施設、その他排水処理施設等でも、環境に配慮した処理方法への転換が進められている。環境への配慮は同時に事業者にとってコストダウンにもつながり、今後さらに技術が進化することが予想される。
機械、装置面での工夫も進んでいるが、大型装置の更新は一般に数十年に一度であり、簡単には導入できないのも事実である。
下水、工場排水などの有機性排水の生物処理に伴い発生する汚泥は、脱水し、減量した上で廃棄または再利用されている。廃棄された後は焼却処分されることが多い。いずれの場合も、汚泥を脱水、減量化することが廃棄物量削減あるいは取り扱い性、また焼却時の補助燃料削減の意味でも重要である。しかし、処理方法の変化あるいは下水、排水自体の変化により、近年、汚泥の脱水、減量化がより困難になってきており、脱水性の低い、すなわち汚泥の含水率が高い汚泥の廃棄量が増加していることが問題となっている。中でも消化汚泥や標準活性汚泥法およびオキシデーションディッチ法に伴う余剰汚泥は脱水が難しいものとして知られている。
【0003】
そこで、脱水対象である汚泥に凝集剤と、脱水助剤として再生セルロースなどの繊維を添加し、汚泥を脱水しやすい状態にした上で、機械または重力等を利用して脱水する処理することが提案されている(特許文献1、2)。しかしこの処理方法においても、汚泥中の脱水助剤である繊維の分散性をさらに向上させ、汚泥の脱水ケーキの含水率をさらに低下させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5,658,107号
【特許文献2】特許第4,817,431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、汚泥の脱水ケーキの含水率を低減できる汚泥用脱水剤を提供することにある。また本発明の目的は、追加のタンクや装置の設置を行うことなく、簡単に汚泥の脱水ケーキの含水率を低減できる汚泥用脱水剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、凝集剤(b)と共に、表面を親水性油剤で処理した繊維状物(a)を脱水助剤として用いると、汚泥中の繊維の分散性を向上させることができ、汚泥の含水率を低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、表面を
、ポリエーテル・ポリエステル共重合体である親水性油剤で処理した繊維状物(a)、凝集剤(b)および水を含有する汚泥用脱水剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の汚泥用脱水剤は、汚泥処理槽中での繊維状物の分散性が良好であり、汚泥の脱水ケーキの含水率を低減できる。本発明の汚泥用脱水剤によれば、運搬性も優れ、追加のタンクや装置の設置を行うことなく、効率的に汚泥の脱水ケーキの含水率を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔汚泥用脱水剤〕
本発明の汚泥用脱水剤は、表面を
、ポリエーテル・ポリエステル共重合体である親水性油剤で処理した繊維状物(a)、凝集剤(b)および水を含有する。
<繊維状物(a)>
繊維状物(a)として、合成繊維、半合成繊維、再生繊維および天然繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
合成繊維として、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、炭素繊維、アラミド繊維、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリ乳酸繊維などが挙げられる。
半合成繊維として、ガラス繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)などのセルロース繊維、アセテートなどが挙げられる。
再生繊維として、古紙紙、古紙や紙の破砕物、稲わら、葦などのバイオマス、草木由来の繊維状物、織布、不織布、網状布を切断したもの、織布、不織布、網状布をほぐしたものが挙げられる。
天然繊維として、ポリ乳酸、木質パルプ、ケナフ、綿、麻、羊毛、絹、その他動物の毛等が挙げられる。
繊維状物(a)は長さが、好ましくは1〜50mm、より好ましくは3〜20mmである。繊維状物(a)は太さが、好ましくは2〜300μm、より好ましくは5〜30μmである。
【0010】
親水性油剤として、ポリエーテル・ポリエステル共重合
体が挙げられる
。ポリエーテル・ポリエステル共重合体として、例え
ば、テレフタル酸−アルキレングリコール−ポリアルキレングリコール、テレフタル酸−イソフタル酸−アルキレングリコール−ポリアルキレングリコール、テレフタル酸−アルキレングリコール−ポリアルキレングリコールモノエーテル、テレフタル酸−イソフタル酸−アルキレングリコール−ポリアルキレングリコールモノエーテル等の共重合体が挙げられる。該共重合体の製造に用いる低級アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチルグリコールが好適であり、ポリアルキレングリコールとしては、通常平均分子量が400〜12,000、好ましくは600〜6,000のポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、ポリプロピレングリコールが好適である。さらにポリアルキレングリコールのモノエーテルとしては、ポリエチレングリコール等のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノフェニルエーテル等が好適であるが、分散性向上効果の点からポリエチレングリコールのモノエーテル類が特に好適である。
【0011】
また該ブロック共重合体は、テレフタレート単位:イソフタレート単位が95:5〜50:50(モル比)の範囲内にあることが分散性向上効果の点から特に好ましく、また、テレフタレート単位+イソフタレート単位:ポリアルキレングリコール単位が3:1〜10:1(モル比)の範囲内にあることが分散性向上効果の点から特に好ましい。
さらに該ブロック共重合体の平均分子量は使用するポリアルキレングリコールの分子量にもよるが、通常1,000〜20,000、好ましくは3,000〜10,000である。
【0012】
親水性油剤の量は、100重量部の繊維状物(a)に対し、好ましくは0.5〜10000重量部、より好ましくは1〜2500重量部である。
繊維状物に親水性油剤に付与する方法としては、親水性油剤を溶解したウォーターバスまたは油浴中に繊維状物をくぐらせる方法、親水性油剤を溶解した水溶液を噴霧する方法などがある。
【0013】
<凝集剤(b)>
凝集剤(b)として、無機凝集剤および高分子凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
無機凝集剤として、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、消石灰および硫化第一鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
高分子凝集剤として、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ共重合物、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物、アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物、ポリビニルアミジン、キトサン、ポリグルタミン酸、アルギン酸、ペクチン、でんぷん、アクリル酸エステルとアクリルアミドとの共重合体およびメタクリル酸エステル重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
本発明の汚泥用脱水剤は、100重量部の凝集剤(b)に対して、好ましくは0.83〜20,000重量部、より好ましくは3〜5,000重量部さらに好ましくは1〜2,000重量部の繊維状物(a)を含有する。
【0014】
<汚泥用脱水剤の製造>
汚泥用脱水剤は、表面を親水性油剤で処理した繊維状物(a)、凝集剤(b)および水を混合して製造することができる。
100重量部の水に対し、繊維状物(a)と凝集剤(b)の合計として、好ましくは0.1〜250重量部、より好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部の割合で混合することが好ましい。 汚泥用脱水剤は、
図1に示す凝集剤溶解装置内で、繊維状物と凝集剤と水とを混合して製造することが好ましい。
〔汚泥の脱水方法の例〕
本発明の汚泥の脱水方法の一例として、工程(1)および工程(2)を含む方法を示す。
【0015】
(工程(1))
工程(1)は、本発明の汚泥用脱水剤を汚泥に添加し、撹拌し汚泥フロック液Bを得る工程である。
汚泥として、下水処理場、農業集落排水施設、浄化槽、し尿処理施設、産業排水処理施設、浄水場、製紙工場または鉱山からの汚泥等が挙げられる。
汚泥用脱水剤は、100重量部の汚泥に対し、好ましくは0.3〜3000重量部、より好ましくは0.6〜1000重量部添加する。
工程(1)は、生汚泥、消化汚泥、余剰汚泥などを入れた
図1に示す凝集混和槽に、汚泥用脱水剤を添加し、撹拌し汚泥フロック液Bを得ることが好ましい。汚泥用脱水剤は、
図1に示す汚泥濃縮槽または消化汚泥濃縮槽、汚泥凝集混和槽に添加しても良い。
【0016】
(工程(2))
工程(2)は、汚泥フロック液Bを脱水し、脱水ケーキCを得る工程である。脱水は、脱水機で行うことが好ましい。脱水機としては遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、トルネードプレス、フィルタープレスなどを用いることができる。脱水ケーキCの含水率は、好ましくは70〜95重量%、より好ましくは70〜85重量%、さらに好ましくは70〜80重量部%である 。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の汚泥用脱水剤は、下水処理場、浄化槽、し尿処理施設、産業排水処理施設、その他排水処理施設工場から発生する汚泥、浄水場にて発生する汚泥、製紙工程で発生する汚泥、建築・土木工事で発生する汚泥、鉱廃水由来の汚泥などに用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の詳細を実施例および比較例により説明し、結果は表1、表2、表3、表4、表5および表6に示す。なお、表1、表2、表3、表4、表5および表6の表内は、それぞれ同じ汚泥、同じ薬品を使用し、同日、同環境で試験を行った結果であり、同じ条件で2回テストを行った結果の平均値を示した。これらは一例であり、特定的な記載がない限りは、汚泥の種類、脱水助剤の材質や形状、使用方法等の条件を特定するものではない。
実施例、比較例における脱水ケーキの含水率は全て以下の方法で測定した。
(1)アルミカップの空重量を測定する。X(g)
(2)測定対象の脱水ケーキをアルミカップに移し、重量Y(g)を測定する。
(3)アルミカップごと脱水ケーキを乾燥機に入れ、105℃で一晩乾燥させる。
(4)乾燥後、アルミカップごと脱水ケーキの重量Z(g)を測定する。
(5)以下の計算式で、脱水ケーキの含水率を算出する。
含水率(%)=(Y−Z)/(Y−X)
【0019】
[実施例1]
<汚泥用脱水剤の製造>
繊維 状物(a)として、繊維径が17.5μm、長さが5mmの丸断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに、親水性油剤としてポリエーテル・ポリエステル共重合体を付与した繊維 状物を用いた。凝集剤(b)として、アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)(固体)を用いた。
繊維 状物(a)2.14gと凝集剤(b)1gとの混合物を純水500mlに添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Aを調製した。
<汚泥の脱水>
(工程(1))
この脱水剤A37.4mlを消化汚泥200mlに添加し、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロック液Bを調製した。(脱水剤Aの添加量は、凝集剤(b)は汚泥TS対比で1.4wt%、同時に、繊維状物(a)は汚泥TS対比で3wt%相当)。
(工程(2))
凝集した汚泥フロック液Bをろ布(中尾フィルター製PP9A25)上で30秒程度重力ろ過した後、圧空を利用したピストン型脱水機を用いて0.6MPaの圧力で5分間圧搾し脱水ケーキを得た。得られた脱水ケーキの含水率を表1に示す。脱水ケーキの含水率は、工程(1)〜(2)の一連の操作を2回行い、各回の脱水ケーキの含水率値の平均値を求めた。
【0020】
[実施例2]
<汚泥用脱水剤の製造>
純水500mlに、実施例1と同じ繊維 状物(a)を2.14g添加し、薬匙で撹拌して均一に分散させた後、凝集剤(b)として、アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(固体)を1g添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Bを調製した。
<汚泥の脱水>
この脱水剤Bを実施例1と同じ汚泥の脱水方法で消化汚泥に添加し、凝集させた後、脱水し、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0021】
[実施例3]
<汚泥用脱水剤の準備・汚泥の脱水>
消化汚泥200mlに、実施例1と同じ繊維 状物(a)をTS対比で3wt%となるよう0.16g添加し、薬匙で撹拌することで繊維 状物(a)を汚泥中に均一に分散させた。次に凝集剤(b)溶液(アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)を汚泥TS対比1.4wt%相当となるよう37.4ml汚泥に添加し、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0022】
[比較例1]
<汚泥の脱水>
凝集剤(b)(アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)を純水に溶解させた0.2wt%水溶液)37.4mlを消化汚泥200mlに添加し(TS対比で1.4wt%相当)、凝集させ汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
表1に示す実施例1、2、3と、繊維状物(a)を用いない比較例1の比較から明らかなように、本発明の汚泥用脱水剤は汚泥脱水性向上効果を有する。実施例1と実施例2を比較から明らかなように、水に繊維状物(a)を分散させた後、凝集剤(b)を溶解して製造した汚泥用脱水剤によれば、より高い脱水性向上効果が得られる。
【0023】
【表1】
【0024】
[実施例4]
消化汚泥200mlに繊維径21.6μm、長さ5mmの丸断面で、斑延伸処理を施したポリエチレンテレフタレート製のショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)0.16gを添加し(TS対比3wt%相当)、薬匙で撹拌することで繊維状物(a)を汚泥中に均一に分散させた。次に凝集剤(b)(アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)水溶液を37.4ml汚泥に添加した後(TS対比で1.4wt%相当)、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0025】
[比較例2]
親水性油剤を付与していない繊維径21.6μm、長さ5mmの丸断面で、斑延伸処理を施したポリエチレンテレフタレート製のショートカットファイバー0.16g(TS対比で3wt%相当)を消化汚泥200mlに添加し、薬匙で撹拌することで繊維状物(a)を汚泥中に均一に分散させた。さらに凝集剤(b)(アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)水溶液を37.4ml(TS対比で1.4wt%相当)を添加した後、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0026】
[比較例3]
凝集剤(b)(アルキルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物)水溶液37.4ml(TS対比で1.4wt%相当)を汚泥に添加し、凝集させ汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。表2に示す実施例4と比較例2、比較例3との比較のとおり、繊維に親水性油剤を付与した繊維状物(a)は、脱水性向上効果が高い。
【0027】
【表2】
【0028】
[実施例5〜10、比較例4]
[実施例5]
<汚泥用脱水剤の製造>
繊維径14.3μm、長さ5mmの三角断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)1.88gと、凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)(固体)1gの混合物を、純水500mlに添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Cを調製した。
<汚泥の脱水>
(工程(1))
この脱水剤C22.4mlを余剰汚泥200mlに添加し(凝集剤(b)がTS対比で1.6wt%、同時に繊維状物(a)3wt%)相当)薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
[実施例6]
繊維径8μm、長さ6.4mmの丸断面、捲縮がかかったタイプのポリ乳酸製ショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)1.88gと、凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)(固体)1gの混合物を、純水500mlに添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Dを調製した。
【0029】
この脱水剤D22.4mlを余剰汚泥200mlに添加し薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックをピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0030】
[実施例7]
繊維径12.6μm、長さ5mmの十字断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)1.88gと、凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)(固体)1gの混合物を純水500mlに添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Eを調製した。
【0031】
この脱水剤E22.4mlを余剰汚泥200mlに添加し薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0032】
[実施例8]
繊維径12.6μm、長さ5mmのW字断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)1.88gと、凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)(固体)1gの混合物を純水500mlに添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Fを調製した。
【0033】
この脱水剤F22.4mlを余剰汚泥200mlに添加し薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0034】
[実施例9]
余剰汚泥200mlに、実施例5と同じ繊維状物(a)をTS対比で3wt%となるよう0.08g添加し、薬匙で撹拌することで繊維状物(a)を汚泥中に均一に分散させた。次に凝集剤(b)(メタクリレート系)水溶液をTS対比1.6wt%相当となるよう22.4ml汚泥に添加した後、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、実施例5と同様の方法で脱水試験を行った。
【0035】
[実施例10]
繊維径8μm、長さ6.4mmの丸断面、捲縮がかかったタイプのポリ乳酸製ショートカットファイバーに親水性油剤(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)0.08gを余剰汚泥200ml(TS対比で3wt%)に添加し、薬匙で撹拌することで繊維状物(a)を汚泥中に均一に分散させた。さらに凝集剤(b)(メタクリレート系)水溶液22.4ml(TS対比1.6wt%相当)を添加した後、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0036】
[比較例4]
凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)水溶液22.4mlを余剰汚泥200mlに添加し(TS対比で1.6wt%相当)凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
表3に示すとおり、十字断面、W字断面の脱水助剤を用いて脱水剤E、Fをそれぞれ調製し使用した実施例7、8においても脱水性が大きく向上した。
繊維状物(a)と凝集剤(b)とを混合、溶解した脱水剤C、Dを用いた実施例5、6はそれぞれ、脱水助剤を先に汚泥に分散させた後に凝集剤(b)を添加した実施例6、7に比べ、より脱水性が向上した。
【0037】
【表3】
【0038】
[実施例1
1]
繊維径12.6μm、長さ5mmの丸断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに、以下の2種類の親水性油剤を付与率0.3wt%となるよう均一に付与したのち、繊維含水率が5%程度になるまで常温で風乾し、繊維状物(a)
を製作した。
・親水性油剤(1):ポリエーテル・ポリエステル共重合体
こ
の繊維状物(a)を用いて、以下の試験を行った。
【0039】
[実施例11]
純水500mlに親水性油剤(1)(ポリエーテル・ポリエステル共重合体)を付与した繊維状物(a)を4.29g添加し、薬匙で撹拌して均一に分散させた後、凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)(固体)を1g添加し、攪拌機を用いて50〜100rpmで1時間撹拌し、脱水剤Gを調製した。
この脱水剤G13.7mlを混合生汚泥200mlに添加し(凝集剤(b)を汚泥TS対比で0.7wt%、同時に、脱水助剤3wt%相当)、薬匙で撹拌して汚泥を凝集させ、汚泥フロックを得た。汚泥フロックを実施例1と同様の方法でピストン型脱水機にて脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。
【0042】
【表4】
【0046】
[実施例13、比較例6]
下水処理場において、標準活性汚泥処理工程より発生した余剰汚泥に対して、遠心脱水機を用いた脱水試験の結果を表6に示す。
[実施例13]
有効容量2m
3の凝集剤溶解槽に水道水を1m
3貯め、そこに繊維径17.5μm、長さ5mmの丸断面、捲縮がかかっていないストレートタイプのポリエチレンテレフタレート製ショートカットファイバーに、親水性油剤としてポリエーテル・ポリエステル共重合体を付与した繊維状物(a)を4.24kg添加し、水中ミキサーで撹拌して繊維状物(a)を分散させた。その後,水道水を200L添加しながら、同時に凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)を2.4kg(0.2wt%相当)添加し、合計1.2m
3の脱水剤Iを調製した。
下水処理場本設備より発生した余剰汚泥8m
3を汚泥貯留槽に貯留し、そこから遠心脱水機に送泥する送泥配管の脱水機流入部直前部に脱水剤Iを送液し、汚泥と混合させた。
脱水機の汚泥処理量7m
3/時に対し、脱水剤Iを417L/時で添加し、3000Gで約2時間運転し、排出された脱水ケーキの含水率を測定した。
【0047】
[比較例6]
有効容量2m
3の凝集剤溶解槽に水道水を1m
3貯め、その後水道水を200L添加しながら、同時に凝集剤(b)(アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物)を2.4kg(0.2wt%相当)添加し、凝集剤(b)溶液を調製した。
その後,実施例13と同様の操作で脱水試験を行った。表6に示すとおり、脱水剤Iを用いた実施例13において脱水性の向上効果を確認した。
【0048】
【表6】