特許第6861582号(P6861582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861582
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   H01R13/42 B
   H01R13/42 F
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-116529(P2017-116529)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-3788(P2019-3788A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸由
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−120443(JP,A)
【文献】 特開2007−324049(JP,A)
【文献】 特開2007−109475(JP,A)
【文献】 特開2009− 93811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック形状に形成されるものであって、端子を収容する端子収容室と、上面又は下面のいずれか一方に開口されるとともに前記端子収容室に連通するように形成された組み付け凹部と、を有するコネクタハウジングと,
前記端子を一次的に係止するランスアームと、前記組み付け凹部に組み付けられた際に該組み付け凹部に設けられた係止凹部に係止される係止突起と、を有するランスブロックと,
該ランスブロックと前記コネクタハウジングの軸方向に並んで前記組み付け凹部に組み付けられた際に前記端子を二次的に係止するスペーサと,
を備え、
前記コネクタハウジングは、
前記組み付け凹部の内面に突設され且つこの上面が回動支点面として形成された回動支点部を設けてなり、
前記ランスブロックは、
この一端側に配置され且つ前記回動支点面に引っ掛けることが可能な回動手段を設けてなり、
さらに、前記ランスブロックは、
前記回動手段を、前記回動支点面に引っ掛けて該回動支点面を回動支点として前記ランスブロックの他端を回動させて前記組み付け凹部に組み付けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記回動支点部は、
前記回動支点面が平面状に形成され、
前記回動手段は、
前記回動支点面に引っ掛ける部分が前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記回動支点面に面接触可能な平面状に形成される
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、
該コネクタハウジングの両側面の内面に、側方から視たときに傾斜形状となるように形成された摺接面を有する回動ガイド溝を設けてなり、
前記ランスブロックは、
該ランスブロックの両側面に、該ランスブロックの回動の際に前記摺接面に摺接する回動ガイド突起を突設してなり、
さらに、前記ランスブロックは、
前記回動ガイド突起が前記摺接面に摺接することによって前記ランスブロックの組み付け位置までガイドされる
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、
前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記ランスブロックの一端側が前記組み付け凹部の内面と当接可能に形成され、
さらに、前記コネクタハウジングは、
前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記摺接面と前記回動ガイド突起とが当接可能に形成される
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のコネクタにおいて、
前記回動ガイド突起は、
前記摺接面の終端部に対してラップ形状となるように形成される
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項3,4又は5に記載のコネクタにおいて、
前記回動ガイド突起は、
該回動ガイド突起の軸方向に直交するように切断したときの断面が円形となるように形成される
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子収容室が複数並んで形成されるコネクタハウジングと、端子収容室に収容される端子とを含んで構成されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したコネクタの技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1の図3に図示するように、電気コネクタ10は、ハウジング20と、図示しないコンタクト(雌端子)と、ランスブロック40と、サイドリテーナ50とを備えている。
【0003】
ハウジング20は、下面21dに開口された凹部24が形成されている。コンタクトは、ハウジング20の凹部24に収容されている。ランスブロック40は、コンタクトを一次的に係止する弾性ランスが設けられている。サイドリテーナ50は、「スペーサ」とも呼ばれる部材であって、コンタクトを二次的に係止する。
【0004】
ランスブロック40は、ハウジング20の下面21d側から凹部24に挿入され、前方に移動させることによりハウジング20に装着されるよう構成されている。また、サイドリテーナ50は、ハウジング20の下面21d側から凹部24に挿入されてハウジング20に装着されるとともに、ランスブロック40を押圧固定する。サイドリテーナ50に押圧固定されることによりランスブロック40の前後方向の移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来技術では、ランスブロックのコネクタハウジングへの組み付け作業は、まず、ランスブロックをコネクタハウジングの凹部に挿入し、しかる後、ランスブロックを前方に移動させるという手順にて行う必要があった。すなわち、(1)ランスブロックの挿入、及び、(2)ランスブロックの前方移動という二段階の操作を行わなければならなかった。したがって、コネクタの組み立てに係る作業性が悪くなるというような問題点があった。
【0007】
また、従来技術では、ランスブロックが前方に移動されていない状態でスペーサ(特許文献1におけるサイドリテーナに相当)を凹部に挿入しようとしても、ランスブロックに干渉してしまい、スペーサを挿入することができなかった。このため、スペーサを凹部に挿入するには、ランスブロックを凹部に挿入した後、正規の位置まで再度移動させる必要があった。したがって、この点からも、コネクタの組み立てに係る作業性が悪くなるというような問題点があった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、組み立てに係る作業性を向上させることができるコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のコネクタは、ブロック形状に形成されるものであって、端子を収容する端子収容室と、上面又は下面のいずれか一方に開口されるとともに前記端子収容室に連通するように形成された組み付け凹部と、を有するコネクタハウジングと,
前記端子を一次的に係止するランスアームと、前記組み付け凹部に組み付けられた際に該組み付け凹部に設けられた係止凹部に係止される係止突起と、を有するランスブロックと,
該ランスブロックと前記コネクタハウジングの軸方向に並んで前記組み付け凹部に組み付けられた際に前記端子を二次的に係止するスペーサと,
を備え、
前記コネクタハウジングは、
前記組み付け凹部の内面に突設され且つこの上面が回動支点面として形成された回動支点部を設けてなり、
前記ランスブロックは、
この一端側に配置され且つ前記回動支点面に引っ掛けることが可能な回動手段を設けてなり、
さらに、前記ランスブロックは、
前記回動手段を、前記回動支点面に引っ掛けて該回動支点面を回動支点として前記ランスブロックの他端を回動させて前記組み付け凹部に組み付けられていることを特徴とする。
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、ランスブロックの回動手段を回動支点面に引っ掛けて回動支点面を回動支点としてランスブロックの他端を回動させることにより、ランスブロックの組み付け凹部への組み付けが完了する。
【0011】
請求項2記載の本発明のコネクタは、請求項1に記載のコネクタにおいて、前記回動支点部は、前記回動支点面が平面状に形成され、前記回動手段は、前記回動支点面に引っ掛ける部分が前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記回動支点面に面接触可能な平面状に形成されることを特徴とする。
【0012】
このような特徴を有する本発明によれば、ランスブロックを組み付け凹部に組み付けた際に、回動手段の回動支点面に引っ掛ける部分と回動支点面とが面接触することから、上記組み付けられた状態において、ランスブロックがガタ付き難くなる。
【0013】
請求項3記載の本発明のコネクタは、請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、該コネクタハウジングの両側面の内面に、側方から視たときに傾斜形状となるように形成された摺接面を有する回動ガイド溝を設けてなり、前記ランスブロックは、該ランスブロックの両側面に、該ランスブロックの回動の際に前記摺接面に摺接する回動ガイド突起を突設してなり、さらに、前記ランスブロックは、前記回動ガイド突起が前記摺接面に摺接することによって前記ランスブロックの組み付け位置までガイドされることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、回動ガイド突起が摺接面に摺接することによってランスブロックが組み付け位置までガイドされることから、ランスブロックを摺接面に沿って回動させるだけで組み付け凹部に組み付けることができる。
【0015】
請求項4記載の本発明のコネクタは、請求項3に記載のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記ランスブロックの一端側が前記組み付け凹部の内面と当接可能に形成され、さらに、前記コネクタハウジングは、前記ランスブロックを前記組み付け凹部に組み付けた際に前記摺接面と前記回動ガイド突起とが当接可能に形成されることを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、ランスブロックを組み付け凹部に組み付けた際に、ランスブロックの一端側が組み付け凹部の内面に当接するとともに、ランスブロックの回動ガイド突起が摺接面に当接することから、上記組み付けと同時に、組み付け凹部内におけるランスブロックの前後方向(コネクタハウジングの軸方向)の移動が規制される。
【0017】
請求項5記載の本発明のコネクタは、請求項3又は4に記載のコネクタにおいて、前記回動ガイド突起は、前記摺接面の終端部に対してラップ形状となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、回動ガイド突起が摺接面の終端部に対してラップ形状となることから、ランスブロックを組み付け凹部に組み付けた際に、組み付け凹部内におけるランスブロックの前後方向の移動が、より確実に規制される。また、回動ガイド突起が摺接面の終端部に対してラップ形状となることから、上記組み付けられた状態において、ランスブロックがガタ付き難くなる。
【0019】
請求項6記載の本発明のコネクタは、請求項3,4又は5に記載のコネクタにおいて、前記回動ガイド突起は、該回動ガイド突起の軸方向に直交するように切断したときの断面が円形となるように形成されることを特徴とする。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、回動ガイド突起の、この軸方向に直交するように切断したときの断面が円形であることから、回動ガイド突起が摺接面の終端部に対してラップし易くなるか、少なくとも回動ガイド突起が摺接面の終端部にゼロタッチで当接する。したがって、ランスブロックの前後方向の移動が、より確実に規制され、且つ、ランスブロックがガタ付き難くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ランスブロックを回動させるだけで組み付け凹部に組み付けることができるため、従来技術のように、ランスブロックをコネクタハウジングの凹部に挿入した後、ランスブロックを前方向に移動させるという二段階の操作が不要となる。したがって、コネクタの組み立てに係る作業性を向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、ランスブロックを組み付け凹部に組み付けた際に、ランスブロックの前後方向の移動が規制され、且つ、ランスブロックのガタ付きを抑えることができるため、ランスブロックを組み付け凹部に挿入した後、前方に移動させることなく正規の位置に配置することができ、ランスブロックの位置によってスペーサの組み付け凹部への挿入が阻害されることがなくなる。したがって、この点からも、コネクタ1の組み立てに係る作業性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るコネクタの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2図1におけるランスブロックの拡大斜視図である。
図3】コネクタの組み立て作業の手順を説明する図である。
図4図3に続く図であって、(a)はランスブロックが回動を開始した状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Bの指示する部分を拡大した図である。
図5図4に続く図であって、(a)は回動ガイド突起が摺接面に摺接する状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Dの指示する部分を拡大した図である。
図6図5に続く図であって回動ガイド突起が摺接面に摺接する状態を示す図である。
図7図6に続く図であって、(a)はランスブロックがコネクタハウジングに組み付けられた状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Fの指示する部分を拡大した図である。
図8図7に続く図であってスペーサがコネクタハウジングに仮係止された状態を示す断面図である。
図9】スペーサがコネクタハウジングに仮係止された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図9を参照しながら、本発明に係るコネクタの実施例について説明する。
【実施例】
【0024】
図1は本発明に係るコネクタの一実施形態を示す分解斜視図、図2図1におけるランスブロックの拡大斜視図、図3はコネクタの組み立て作業の手順を説明する図であってランスブロックを組み付け凹部に挿入する前の状態を示す図、図4図3に続く図であって、(a)はランスブロックが回動を開始した状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Bの指示する部分を拡大した図、図5図4に続く図であって、(a)は回動ガイド突起が摺接面に摺接する状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Dの指示する部分を拡大した図、図6図5に続く図であって回動ガイド突起が摺接面に摺接する状態を示す図、図7図6に続く図であって、(a)はランスブロックがコネクタハウジングに組み付けられた状態を示す断面図、(b)は(a)における矢印Fの指示する部分を拡大した図、図8図7に続く図であってスペーサがコネクタハウジングに仮係止された状態を示す断面図、図9はスペーサがコネクタハウジングに仮係止された状態を示す斜視図である。
なお、図中の矢印は、上下、左右、前後の各方向を示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0025】
図1において、引用符号1は、本発明に係るコネクタの一実施形態を示している。コネクタ1は、図示しない相手コネクタと嵌合可能に構成されるものであって、コネクタハウジング2と、図示しない雌端子と、ランスブロック3と、スペーサ4とを備えている。以下、コネクタ1の各構成について説明する。
【0026】
まず、コネクタハウジング2について説明する。
図1に図示するコネクタハウジング2は、絶縁性を有する合成樹脂材料にて成形され、図1に図示するように、左右方向に長く、また、前後方向に延びるブロック形状に形成される。コネクタハウジング2は、図1及び図3に図示するように、上面5と、下面6と、左側面7と、右側面8と、前面9と、後面10とを有し、この内部に、端子収容室11と、組み付け凹部12とを備えている。
【0027】
図1に図示するように、端子収容室11は、上下二段となるように配置形成されている。また、各段の端子収容室11は、左右方向に複数個並ぶように配置形成されている。端子収容室11は、この一端(図1及び図3においては、前後方向における前端)から、図示しない相手コネクタの雄端子を挿入することができるように形成されている。また、端子収容室11は、この他端(図1及び図3においては、前後方向における後端)から、本実施例に係るコネクタ1を構成する雌端子を挿入し収容することができるように形成されている。
【0028】
図3及び図9に図示するように、組み付け凹部12は、下面6の前後方向の略中間部に開口された開口部18に連通するように形成されている。組み付け凹部12は、左右方向に延びるように形成され、且つ、各段の端子収容室11に連通するように形成されている。組み付け凹部12は、この一端側(図3及び図9においては、前後方向における前端側)にランスブロック3を組み付けることができるように形成されている。また、組み付け凹部12は、この他端側(図3及び図9においては、前後方向における後端側)にスペーサ4を組み付けることができるように形成されている。組み付け凹部12は、図9に図示するように、ランスブロック3とスペーサ4とを前後方向に並べて組み付けることができるように形成されている。
【0029】
図3に図示するように、組み付け凹部12は、一対の回動支点部13と、一対の回動ガイド溝14と、一対のランスブロック係止凹部15と、一対のスペーサ仮係止凹部16及び一対のスペーサ本係止凹部17とを備えている。
【0030】
図3及び図9に図示するように、各回動支点部13は、組み付け凹部12の内面19で、且つ、開口部18の一端側(図3においては、前後方向における前端側)の開口端縁に配置形成されている。各回動支点部13は、開口部18の一端側の開口端縁から開口部18の他端側(図3においては、前後方向における後端側)に突出するように形成されている。
【0031】
図3に図示するように、回動支点部13は、この上面が回動支点面20として形成されている。回動支点面20は、ランスブロック3を回動させる際の回動支点となる部分として形成されている。回動支点面20は、ランスブロック3の後述する回動手段30を引っ掛けることができるように形成されている。回動支点面20は、コネクタハウジング2の軸に沿うような平面状に形成されている。
【0032】
図9に図示するように、一対の回動ガイド溝14は、一方の回動ガイド溝14aが、左側面7の内面に配置形成され、また、他方の回動ガイド溝14bが、右側面8の内面に配置形成されている。
【0033】
図3に図示するように、回動ガイド溝14(14b)には、摺接面21が形成されている。摺接面21は、右側面8側から視たときに、図3に図示するように、次第に組み付け凹部12の一端側(図3においては、前後方向における前端側)に傾斜するような形状となるように形成されている。摺接面21は、この終端部22がコネクタハウジング2の軸に直交するような平面状に形成されている。
【0034】
一対のランスブロック係止凹部15は、特許請求の範囲における「係止凹部」に相当するものである。一対のランスブロック係止凹部15は、一方のランスブロック係止凹部15が、左側面7の内面に配置形成され、また、他方のランスブロック係止凹部15が、右側面8の内面に配置形成されている。図3に図示するランスブロック係止凹部15は、ランスブロック3の後述するランスブロック係止突起32を係止することができるように形成されている。
【0035】
図3に図示するように、一対のスペーサ仮係止凹部16及び一対のスペーサ本係止凹部17は、組み付け凹部12の他端側(図3においては、前後方向における後端側)に配置形成されている。一対のスペーサ仮係止凹部16及び一対のスペーサ本係止凹部17は、一方のスペーサ仮係止凹部16及び一方のスペーサ本係止凹部17が、左側面7の内面に配置形成され、また、他方のスペーサ仮係止凹部16及び他方のスペーサ本係止凹部17が、右側面8の内面に配置形成されている。図3に図示するように、スペーサ仮係止凹部16及びスペーサ本係止凹部17は、上下方向に並んで配置形成されている。図3に図示するように、スペーサ仮係止凹部16及びスペーサ本係止凹部17は、スペーサ本係止凹部17がスペーサ仮係止凹部16よりも上側となるように配置形成されている。スペーサ仮係止凹部16及びスペーサ本係止凹部17は、いずれも、スペーサ4の後述するスペーサ係止突起40を係止することができるように形成されている。
【0036】
つぎに、雌端子について説明する。
雌端子は、特許請求の範囲における「端子」に相当するものである。雌端子は、特に図示しないが、導電性を有する金属板を打ち抜いて曲げ加工にて形成されている。雌端子は、コネクタハウジング2の端子収容室11に収容することができる寸法となるように形成されている。雌端子は、図示しない相手コネクタの雄端子と接続することができるように形成されている。雌端子は、公知のものを採用するため、詳細な説明を省略する。
【0037】
つぎに、ランスブロック3について説明する。
図1及び図2に図示するランスブロック3は、絶縁性を有する合成樹脂材料にて成形され、図1及び図2に図示するように、左右方向に長く、また、組み付け凹部12に収容することができる寸法となるように形成されている。ランスブロック3は、コネクタハウジング2の端子収容室11に収容された雌端子を一次的に係止するための部材である。ランスブロック3は、図1及び図2に図示するように、基部23と、左側部24及び右側部25とを備えている。
【0038】
図1及び図2に図示するように、基部23は、上下二段に分かれて形成されている。基部23の上段には、仕切壁26と、ランスアーム27とが形成されている。仕切壁26は、所定の間隔をあけて左右方向に複数個並ぶように配置形成されている。隣り合う仕切壁26同士の間隔は、雌端子を収容することができるような間隔となっている。ランスアーム27は、隣り合う仕切壁26同士の間に配置形成されている。ランスアーム27は、コネクタハウジング2の端子収容室11に収容された雌端子を一次的に係止することができるように形成されている。
【0039】
基部23の下段には、端子挿通孔28と、ランスアーム29とが形成されている。端子挿通孔28は、左右方向に複数個並ぶように配置形成されている。各端子挿通孔28は、雌端子を挿通させることができる寸法となるように形成されている。ランスアーム29は、各端子挿通孔28内に配置形成されている。ランスアーム29は、端子挿通孔28に挿通され、且つ、コネクタハウジング2の端子収容室11に収容された雌端子を一次的に係止することができるように形成されている。
【0040】
図1及び図2に図示するように、左側部24及び右側部25は、基部23に一体形成されている。左側部24は、基部23の左右方向の左側の端部に配置形成され、また、右側部25は、基部23の左右方向の右側の端部に配置形成されている。左側部24及び右側部25は、それぞれ、回動手段30と、回動ガイド突起31と、ランスブロック係止突起32とが形成されている。
【0041】
図1及び図2に図示するように、回動手段30は、ランスブロック3の一端41側に配置形成されている。より詳しくは、回動手段30は、左側部24及び右側部25それぞれの下面の一端側(図1においては、前後方向における前端側)に配置形成されている。回動手段30は、左側部24及び右側部25それぞれの下面の一端側の一部を切り欠いて形成されている。
【0042】
回動手段30は、引っ掛け面33を有している。引っ掛け面33は、特許請求の範囲における「回動支点面に引っ掛ける部分」に相当するものである。引っ掛け面33は、コネクタハウジング2に形成された回動支点部13の回動支点面20(図3参照)に引っ掛けることができるように形成されている。引っ掛け面33は、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に回動支点面20に面接触することができるような平面状となるように形成されている。
【0043】
図1及び図2に図示するように、回動ガイド突起31は、左側部24の外面34及び右側部25の外面35それぞれから突出するように配置形成されている。回動ガイド突起31は、ランスブロック3を回動させる際に、図3に図示する回動ガイド溝14の摺接面21に摺接されるように配置形成されている。回動ガイド突起31は、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に摺接面21の終端部21に当接することができるように配置形成されている。
【0044】
回動ガイド突起31は、摺接面21の終端部22に対してラップ形状となるように形成されている。ここで、「ラップ形状」とは、本実施例においては、回動ガイド突起31の外面が摺接面21の終端部22と重なり合って接触するような形状である(図7参照)。回動ガイド突起31は、具体的には、回動ガイド突起31を、この軸方向に直交するように切断したときに断面が円形となるように形成されている。
【0045】
なお、上記「ラップ形状」は、回動ガイド突起30の外面が摺接面21の終端部22に、少なくともゼロタッチするような形状であってもよいものとする。
【0046】
ランスブロック係止突起32は、特許請求の範囲における「係止突起」に相当するものである。図1及び図2に図示するように、ランスブロック係止突起32は、左側部24の外面34及び右側部25の外面35それぞれから突出するように配置形成されている。ランスブロック係止突起32は、図3に図示するランスブロック係止凹部15に係止することができるように形成されている。
【0047】
つぎに、スペーサ4について説明する。
図1に図示するスペーサ4は、絶縁性を有する合成樹脂材料にて成形され、図1に図示するように、左右方向に長く、また、ランスブロック3と前後方向に並んで組み付け凹部12(図3参照)に収容することができる寸法となるように形成されている。スペーサ4は、組み付け凹部12に組み付けられた際に雌端子に係合することにより雌端子を二次的に係止するための部材である。
【0048】
図1に図示するように、スペーサ4は、上下二段に分かれて形成されている。スペーサ4の上段には、仕切壁36が形成されている。仕切壁36は、所定の間隔をあけて左右方向に複数個並ぶように配置形成されている。隣り合う仕切壁36同士の間隔は、雌端子を収容することができるような間隔となっている。
【0049】
図1に図示するように、スペーサ4の下段には、端子挿通孔37が形成されている。端子挿通孔37は、左右方向に複数個並ぶように配置形成されている。各端子挿通孔37は、雌端子を挿通させることができる寸法となるように形成されている。
【0050】
図1に図示するように、スペーサ4は、左側面38及び右側部39それぞれにスペーサ係止突起40が形成されている。スペーサ係止突起40は、左側面38及び右側部39それぞれから突出するように配置形成されている。スペーサ係止突起40は、図3に図示するスペーサ仮係止凹部16に係止することができるように形成され、また、図3に図示するスペーサ本係止凹部17に係止することができるように形成されている。
【0051】
つぎに、本実施例に係るコネクタ1の組み立て作業の手順について説明する。
本実施例に係るコネクタ1の組み立て作業は、以下の第一〜第四の作業を含んでいる。
【0052】
まず、第一の作業の手順について説明する。
第一の作業は、ランスブロック3をコネクタハウジング2に組み付ける作業である。まず、図3に図示するように、ランスブロック3を、この一端41側を先端として、図3に図示する矢印Aの指示する方向に移動させる。
【0053】
しかる後、図4に図示するように、ランスブロック3を組み付け凹部12に挿入し、回動手段30の引っ掛け面33を回動支点部13の回動支点面20に乗せるようにして引っ掛ける。ここで、引っ掛け面33と接触する回動支点面20は、ランスブロック3の回動支点となっている。
【0054】
しかる後、図4において、ランスブロック3の他端42を、図4(a)に図示する矢印Cの指示する方向に回動させる。すると、図5に図示するように、回動ガイド突起31が回動ガイド溝14内に入り摺接面21に摺接することにより、回動ガイド溝14によるランスブロック3の回動のガイドが開始される。
【0055】
しかる後、図5(a)に図示する矢印Eの指示する方向にランスブロック3の回動を続けていくと、図6に図示するように、回動ガイド突起31が、摺接面21に摺接することにより、ランスブロック係止突起40がランスブロック係止凹部15に係止する位置(ランスブロック3の組み付け位置)まで案内される。
【0056】
図7に図示するように、回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22に到達すると、ランスブロック係止突起40がランスブロック係止凹部15に係止する。これにより、ランスブロック3がコネクタハウジング2に組み付けられる。以上により、第一の作業が完了する。
【0057】
つぎに、第二の作業の手順について説明する。
第二の作業は、スペーサ4をコネクタハウジング2に仮係止する作業であり、図8に図示するように、スペーサ4を、組み付け凹部12に挿入し、スペーサ係止突起40をスペーサ仮係止凹部16に係止する。これにより、スペーサ4がコネクタハウジング2に仮係止される。以上により、第二の作業が完了する。
【0058】
つぎに、第三の作業の手順について説明する。
第三の作業は、コネクタハウジング2の端子収容室11に雌端子を収容する作業であり、図8において、端子収容室11の後端から図示しない雌端子を挿入し、端子収容室11内に収容する。すると、雌端子にランスブロック3のランスアーム27(図1及び図2参照)が係止する。これにより、雌端子は、一次的に係止される。以上により、第三の作業が完了する。
【0059】
つぎに、第四の作業の手順について説明する。
第四の作業は、スペーサ4をコネクタハウジング2に本係止する作業であり、図8に図示するように、コネクタハウジング2に仮係止されたスペーサ4を、図8に図示する矢印Gの指示する方向に押圧する。すると、特に図示しないが、スペーサ係止突起40がスペーサ本係止凹部17に係止する。これにより、スペーサ4がコネクタハウジング2に本係止される。また、雌端子にスペーサ4が係止する。スペーサ4の上記本係止により、雌端子は、二次的に係止される。以上により、第四の作業が完了するとともに、本実施例に係るコネクタ1の組み立て作業が完了する。
【0060】
つぎに、本実施例に係るコネクタ1の作用について説明する。
本実施例に係るコネクタ1によれば、図4図7に図示するように、ランスブロック3の回動手段30を回動支点面20に引っ掛けて回動支点面20を回動支点としてランスブロック3の他端42を回動させることにより、ランスブロック3の組み付け凹部12への組み付けが完了する。
【0061】
また、本実施例に係るコネクタ1によれば、図7及び図8に図示するように、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に、引っ掛け面33と回動支点面20とが面接触することから、上記組み付けられた状態において、ランスブロック3がガタ付き難くなる。
【0062】
また、本実施例に係るコネクタ1によれば、図4図7に図示するように、回動ガイド突起31が摺接面21に摺接することによってランスブロック3が組み付け凹部12における組み付け位置までガイドされることから、ランスブロック3を摺接面21に沿って回動させるだけで組み付け凹部12に組み付けることができる。
【0063】
また、本実施例に係るコネクタ1によれば、図7及び図8に図示するように、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に、ランスブロック3の一端41側が組み付け凹部12の内面19に当接するとともに、ランスブロック3の回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22に当接することから、上記組み付けと同時に、組み付け凹部12内におけるランスブロック3の前後方向(コネクタハウジング3の軸方向)の移動が規制される。
【0064】
また、本実施例に係るコネクタ1によれば、図7及び図8に図示するように、回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22に対してラップ形状となることから、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に、組み付け凹部12内におけるランスブロック3の前後方向の移動が、より確実に規制される。また、回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22に対してラップ形状となることから、上記組み付けられた状態において、ランスブロック3がガタ付き難くなる。
【0065】
さらに、本実施例に係るコネクタ1によれば、図7及び図8に図示するように、回動ガイド突起31の、この軸方向に直交するように切断したときの断面が円形であることから、回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22に対してラップし易くなるか、少なくとも回動ガイド突起31が摺接面21の終端部22にゼロタッチで当接する。したがって、ランスブロック3の前後方向の移動が、より確実に規制され、且つ、ランスブロック3がガタ付き難くなる。
【0066】
つぎに、本実施例に係るコネクタ1の効果について説明する。
以上、図1図9を参照しながら説明してきたように、本実施例によれば、ランスブロック3を回動させるだけで組み付け凹部12に組み付けることができるため、従来技術のように、ランスブロックをコネクタハウジングの凹部に挿入した後、ランスブロックを前方に移動させるという二段階の操作が不要となる。したがって、コネクタ1の組み立てに係る作業性を向上させることができるという効果を奏する。
【0067】
また、本実施例によれば、ランスブロック3を組み付け凹部12に組み付けた際に、ランスブロック3の前後方向の移動が規制され、且つ、ランスブロック3のガタ付きを抑えることができるため、ランスブロック3を組み付け凹部12に挿入した後、前方に移動させることなく正規の位置に配置することができ、ランスブロック3の位置によってスペーサ4の組み付け凹部12への挿入が阻害されることがなくなる。したがって、この点からも、コネクタ1の組み立てに係る作業性を向上させることができるという効果を奏する。
【0068】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1…コネクタ、 2…コネクタハウジング、 3…ランスブロック、 4…スペーサ、 5…上面、 6…下面、 7,38…左側面、 8,39…右側面、 9…前面、 10…後面、 11…端子収容室、 12…組み付け凹部、 13…回動支点部、 14(14a,14b)…回動ガイド溝、 15…ランスブロック係止凹部(係止凹部)、 16…スペーサ仮係止凹部、 17…スペーサ本係止凹部、 18…開口部、 19…内面、 20…回動支点面、 21…摺接面、 22…終端部、 23…基部、 24…左側部、 25…右側部、 26,36…仕切壁、 27,29…ランスアーム、 28,37…端子挿通孔、 30…回動手段、 31…回動ガイド突起、 32…ランスブロック係止突起(係止突起)、 33…引っ掛け面(回動支点面に引っ掛ける部分)、 34,35…外面、 40…スペーサ係止突起、 41…一端、 42…他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9