(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861588
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】伝送線路
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20210412BHJP
H01P 1/04 20060101ALI20210412BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
H01P5/08 D
H01P1/04
H01P3/12 100
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-133964(P2017-133964)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-16955(P2019-16955A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松丸 幸平
【審査官】
岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/162992(WO,A1)
【文献】
特表2004−511155(JP,A)
【文献】
特開2000−077912(JP,A)
【文献】
特開2002−016407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01P 1/04
H01P 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する接合層により接合された第1の導波路と第2の導波路とを備え、
前記第1の導波路は、脆性材料により構成されており、
少なくとも前記接合層の第1の導波路側は、導電性接着剤により構成されている、
ことを特徴とする伝送線路。
【請求項2】
前記導電性接着剤の硬化後の弾性率は、前記脆性材料の弾性率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記第1の導波路の導波モードと前記第2の導波路の導波モードとは、前記第1の導波路に形成された開口と前記第2の導波路に形成された開口とを介して結合されており、前記接合層は、これらの開口を取り囲んでいる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記接合層は、角のない外縁を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の伝送線路。
【請求項5】
前記第1の導波路と前記第2の導波路とは、前記接合層に加え、前記接合層を取り囲むように形成された他の接合層により接合されており、
前記他の接合層は、非導電性接着剤により構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の伝送線路。
【請求項6】
前記非導電性接着剤の硬化後の弾性率は、前記脆性材料の弾性率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載の伝送線路。
【請求項7】
前記他の接合層は、角のない外縁を有する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の伝送線路。
【請求項8】
前記第1の導波路は、(1)前記脆性材料により構成された誘電体基板と、(2)当該誘電体基板の第1の主面に形成された第1の導体層と、(3)当該誘電体基板の第2の主面に形成された第2の導体層と、(4)前記誘電体基板の内部に形成されたポスト壁と、を備え、前記第1の導体層及び前記第2の導体層を広壁とし、前記ポスト壁を狭壁とする導波路である、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の伝送線路。
【請求項9】
前記脆性材料は、石英ガラスである、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の伝送線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料により構成された導波路を含む伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体基板の表裏に導体層を形成した誘電体導波路は、ミリ波の伝送に適しており、薄型に実現することが可能であるという利点がある。例えば、誘電体導波管アンテナ(特許文献1参照)は、このような誘電体導波路の一例である。誘電体導波路の基板の構成材料としては、誘電正接が小さく、誘電損失を小さく抑えることが可能な石英ガラスが有望である(特許文献2参照)。
【0003】
また、伝送線路を構成する誘電体導波路を接合する方法としては、ネジ止め、はんだ付け、及びろう付けが挙げられる(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4181085号公報
【特許文献2】特開2014−265643号公報
【特許文献3】特開2002−185203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、互いに接合された2つの導波路を含む従来の伝送線路においては、少なくとも一方の導波路(以下、「第1の導波路」と記載する)が石英ガラスなどの脆性材料により構成されている場合、以下のような問題を生じる。
【0006】
第1の問題は、ネジ止めにより2つの導波路を接合する場合に生じる問題である。ネジ止めにより2つの導波路を接合する場合、2つの導波路にネジ孔を穿孔する必要がある。しかしながら、第1の導波路にネジ孔を穿孔すると、その機械的強度は低下する。また、穿孔作業中に第1の導波路が破損するリスク、及び、穿孔作業中に生じた傷を起点として、穿孔作業後に第1の導波路が破損するリスクが高い。
【0007】
第2の問題は、はんだ付け又はろう付けにより2つの導波路を接合する際に生じる問題である。はんだ付けにより2つの導波路を接合する場合、はんだを溶融させる際に2つの導波路の温度が上昇し、はんだを硬化させる際に2つの導波路の温度が低下する。このため、第1の導波路に第2の導波路との熱膨張差に起因する応力が働く。また、はんだが凝固収縮する際にも第1の導波路に応力が働く。これらの応力により第1の導波路が破損するリスクが高い。ろう付けにより2つの導波路を接合する場合も同様である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、脆性材料により構成された導波路の破損が生じ難い伝送線路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る伝送線路は、導電性を有する接合層により接合された第1の導波路と第2の導波路とを備え、前記第1の導波路は、脆性材料により構成されており、少なくとも前記接合層の第1の導波路側は、導電性接着剤により構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、上記第1の導波路と上記第2の導波路とが上記接合層により接合される。したがって、上記第1の導波路と上記第2の導波路とを、ネジ止め、はんだ付け、又はろう付けにより接合する必要がない。このため、上記第1の導波路と上記第2の導波路とをネジ止め、はんだ付け、又はろう付けにより接合することに起因して、脆性材料により構成された上記第1の導波路が破損するリスクを低減することができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、上記接合層が導電性を有している。したがって、上記第1の導波路と上記第2の導波路とがネジ等により接合されていなくても、上記第1の導波路と上記第2の導波路とを短絡することができる。
【0012】
本発明に係る伝送線路において、前記導電性接着剤の硬化後の弾性率は、前記脆性材料の弾性率よりも小さい、ことが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、上記接合層の弾性率が上記第1の導波路を構成する脆性材料の弾性率よりも小さい。したがって、上記第1の導波路と上記第2の導波路との熱膨張差により上記第1の導波路に作用する応力を緩和することができる。このため、上記第1の導波路に作用する応力により上記第1の導波路が破損するリスクを低減することができる。
【0014】
本発明に係る伝送線路において、前記第1の導波路の導波モードと前記第2の導波路の導波モードとは、前記第1の導波路に形成された開口と前記第2の導波路に形成された開口とを介して結合されており、前記接合層は、これらの開口を取り囲んでいる、ことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、上記第1の導波路の導波モードと上記第2の導波路の導波モードとを結合するための開口が、導電性接着剤により構成された上記接合層により取り囲まれる。したがって、上記第1の導波路と上記第2の導波路との隙間において生じ得る電磁波の漏えいを抑えることができる。
【0016】
本発明に係る伝送線路において、前記接合層は、角のない外縁を有する、ことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、応力集中により上記接合層が破壊されるリスクを低減することができる。
【0018】
本発明に係る伝送線路において、前記第1の導波路と前記第2の導波路とは、前記接合層に加え、前記接合層を取り囲むように形成された他の接合層により接合されており、前記他の接合層は、非導電性接着剤により構成されている、ことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記第1の導波路と上記第2の導波路とが、導電性接着剤により構成された上記接合層及び非導電性接着剤により構成された上記他の接合層の両方により接合される。このため、上記第1の導波路と上記第2の導波路との接合面積を増し、上記第1の導波路と上記第2の導波路との接合強度を増すことができる。また、上記接合層に集中していた応力を上記他の接合層に分散することができる。このため、応力による上記接合層の破壊を生じにくくすることができる。また、上記接合層が上記他の接合層に取り囲まれているため、上記接合層は、外部環境に晒されなくなる。このため、外部環境に晒されることにより生じ得る上記接合層の劣化(例えば腐食など)を抑えることができる。
【0020】
本発明に係る伝送線路において、前記非導電性接着剤の硬化後の弾性率は、前記脆性材料の弾性率よりも小さい、ことが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、上記他の接合層の弾性率が上記第1の導波路を構成する脆性材料の弾性率よりも小さい。したがって、上記第1の導波路と上記第2の導波路との熱膨張差により上記第1の導波路に作用する応力を緩和することができる。このため、上記第1の導波路に作用する応力により上記第1の導波路が破損するリスクを低減することができる。
【0022】
本発明に係る伝送線路において、前記他の接合層は、角のない外縁を有する、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、応力集中により上記他の接合層が破壊されるリスクを低減することができる。
【0024】
本発明に係る伝送線路において、前記第1の導波路は、(1)前記脆性材料により構成された誘電体基板と、(2)当該誘電体基板の第1の主面に形成された第1の導体層と、(3)当該誘電体基板の第2の主面に形成された第2の導体層と、(4)前記誘電体基板の内部に形成されたポスト壁と、を備え、前記第1の導体層及び前記第2の導体層を広壁とし、前記ポスト壁を狭壁とする導波路である、
上記の構成によれば、上記第1の導波路を薄型かつ軽量に実現することができる。
【0025】
本発明に係る伝送線路において、前記脆性材料は、石英ガラスである、ことが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、上記第1の導波路の誘電損失を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、脆性材料により構成された導波路の破損が生じ難い伝送線路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る伝送線路の分解斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に示した伝送線路の平面図である。(b)は、
図1に示した伝送線路の断面図である。
【
図3】(a)は、
図1に示した伝送線路の第1の変形例の平面図である。(b)は、同図の(a)に示した伝送線路の断面図である。
【
図4】
図1に示した伝送線路の第2の変形例の平面図である。
【
図5】
図1に示した伝送線路の第3の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔伝送線路の構成〕
本発明の一実施形態に係る伝送線路について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る伝送線路1の分解斜視図である。
図2の(a)は、
図1に示す伝送線路1の平面図である。
図2の(b)は、
図1に示す伝送線路1のA−A’断面を示す断面図である。なお、
図1及び
図2に示した座標系は、ポスト壁導波路11を導波された後に導波管21を導波される電磁波に関して、y軸正方向がポスト壁導波路11における進行方向に一致し、z軸正方向が導波管21における進行方向に一致するように設定されている。x軸正方向は、上記のように定めたy軸正方向及びz軸正方向と共に右手系を構成するように設定されている。以下、ポスト壁導波路のことをPWW(Post-wall waveguide)と略記する。
【0030】
伝送線路1は、ミリ波の伝送に適した伝送線路であり、接合層31を介して接合されたポスト壁導波路11(特許請求の範囲における「第1の導波路」)と導波管21(特許請求の範囲における「第2の導波路」)とを備えている。狭壁がポスト壁により構成されたポスト壁導波路には、狭壁が導体板により構成された誘電体導波路と比べて、軽量に実現できるという利点がある。
【0031】
(PWW11)
PWW11は、基板12と、基板12の第1の主面12aに形成された第1の導体層13と、基板12の第2の主面12bに形成された第2の導体層14と、を備えている。導体層13,14は、PWW11の広壁として機能する。
【0032】
基板12は、誘電体からなる脆性材料により構成されている。基板12を構成する脆性材料としては、例えば、ガラス(例えば、石英ガラス)やセラミックスなどが挙げられる。本実施形態においては、基板12を構成する脆性材料として、石英ガラス(熱膨張係数:0.5×10
−6/K,弾性率:73GPa)を用いている。
【0033】
基板12の内部には、ポスト壁15,16,17が形成されている。ポスト壁15は、柵状に配列された複数の導体ポスト15iにより構成されている。ここで、iは、1≦i≦Lの自然数である(Lは導体ポスト15iの個数を表す自然数)。各導体ポスト15iは、第1の主面12aから第2の主面12bまで貫通したビアを基板12に形成したうえで、金属などの導電体をそのビア内部に充填あるいはそのビア内面に堆積することによって得られる。これらの導体ポスト15iの間隔を、PWW1を導波される電磁波の波長と比べて十分に小さくすることによって、ポスト壁15を反射壁として機能させることができる。ポスト壁16,17も、ポスト壁15と同様、複数の導体ポスト16j,17kにより構成されており、PWW11の狭壁として機能する。ここで、jは、1≦j≦Mの自然数であり、kは、1≦k≦Nの自然数である(Mは、導体ポスト16jの個数を表す自然数であり、Nは、導体ポスト17kの個数を表す自然数)。
【0034】
なお、
図1においては、ポスト壁15,16,17によって実現される狭壁を仮想線(二点鎖線)により図示している。また、
図1においては、後述するPWW−導波管の構成を見やすくするために、ポスト壁15,16の一部を省略して図示している。
【0035】
基板12において、導体層13〜14及びポスト壁15〜17に囲まれた直方体状の領域は、電磁波を伝搬する伝搬領域18として機能する。電磁波は、この伝搬領域18を、
図1に示した座標系においてy軸に沿って伝搬する。
【0036】
導体層13には、開口13aが設けられている。開口13aは、伝搬領域18の一方の端部近傍に配置されており、伝搬領域18の出入口となる。開口13aの形状は、長方形であり、開口13aの向きは、その長辺が伝搬領域18の長手方向(
図1におけるy軸方向)と直交する向きである。
【0037】
(導波路21)
導波管21は、一対の広壁22a〜22bと一対の狭壁22c〜22dとからなる管壁22を有する方形導波管である。導波管21の一端は、ショート壁23によって閉塞されている。ショート壁23には、開口23aが設けられている。開口23aの形状は、PWW11の開口13aと同一である。導波管21の内部は、中空であってもよいし、空気以外の誘電体が充填されていてもよい。
【0038】
導波管21(管壁22及びショート壁23)は、導体材料により構成されている。導波管21を構成する導体材料としては、例えば、銅や真鍮などが挙げられる。本実施形態においては、導波管21を構成する導体材料として、銅(熱膨張係数:16.8×10
−6/K,弾性率:129GPa)を用いている。
【0039】
管壁22により四方を囲まれた直方体状の領域は、電磁波を伝搬する伝搬領域24として機能する。電磁波は、この伝搬領域24を、
図1に示した座標系においてz軸に沿って伝搬する。
【0040】
導波管21は、ショート壁23がPWW11の導体層13と対向し、ショート壁23に設けられた開口23aが導体層13に設けられた開口13aと重なるように配置される。導波管21の伝搬領域24は、開口23a及び開口13aを介してPWW1の伝搬領域18と連通している。導波管21の導波モードは、開口23a及び開口13aを介してPWW1の導波モードと結合されている。
【0041】
(接合層31)
接合層31は、PWW11の導体層13と導波管21のショート壁23との間に介在し、PWW11と導波管21とを接合する機能を担う。この接合層31は、硬化後の弾性率がPWW11を構成する脆性材料(本実施形態においては石英ガラス)よりも小さい導電性接着剤により構成されている。導電性接着剤としては、樹脂に銀フィラーを加えた銀ペーストや樹脂に銅フィラーを加えた銅ペーストなどが挙げられる。
【0042】
本実施形態においては、PWW11の導体層13の表面に開口13aを取り囲むように塗布した銀ペースト(熱膨張係数:30〜50×10
−6/K,硬化後弾性率:5GPa)を硬化させ、これを接合層31として用いている。銀ペーストの塗布には、ディスペンス、転写、印刷などの公知技術を用いればよい。
【0043】
本実施形態に係る伝送線路1においては、PWW11と導波管21とが接合層31により接合されているため、PWW11と導波管21とをネジにより接合する必要がない。したがって、PWW11にネジ孔を設ける必要がない。このため、ネジ孔を穿孔する際にPWW11が損傷したり、ネジ孔を穿孔する際に生じた傷に起因して穿孔後にPWW11が損傷したりする可能性を低減することができる。
【0044】
また、接合層31が導電性を有するため、PWW11と導波管21とがネジにより接合されていなくても、PWW11と導波管21とを短絡させることができる。また、接合層31の弾性率がPWW11を構成する脆性材料の弾性率よりも小さいため、PWW11と導波管21との熱膨張差によりPWW11に作用する応力を緩和することができる。さらに、導電性を有する接合層31がPWW11の開口13a及び導波管21の開口23aを取り囲んでいるため、PWW11と導波管21との隙間において生じ得る電磁波の漏えいを抑えることができる。
【0045】
〔第1の変形例〕
伝送線路1の第1の変形例について、
図3を参照して説明する。
図3の(a)は、本変形例に係る伝送線路1Aの平面図である。
図3の(b)は、本変形例に係る伝送線路1AのA−A’断面を示す断面図である。
【0046】
本変形例に係る伝送線路1Aは、
図1及び
図2に示す伝送線路1に接合層32を追加したものである。接合層32は、接合層31と同様、PWW11の導体層13と導波管21のショート壁23との間に介在し、PWW11と導波管21とを接合する機能を担う。したがって、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、PWW11と導波管21とが、接合層31及び接合層32の両方によって接合される。接合層31及び接合層32の各々は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の接合層及び他の接合層に対応する。
【0047】
この接合層32は、硬化後の弾性率がPWW11を構成する脆性材料(本実施形態においては石英ガラス)よりも小さい非導電性接着剤により構成されている。接合層32を構成する非導電性接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。本実施形態においては、PWW11の導体層13の表面に接合層31を取り囲むように塗布したエポキシ系樹脂(熱膨張係数:30〜50×10
−6/K,硬化後弾性率:2〜5GPa)を硬化させ、これを接合層32として用いている。
【0048】
非導電性接着剤を塗布する方法としては、例えば、接合層31によりPWW11と導波管21とを接合した後(接合層31を構成する導電性接着剤を硬化させた後)、キャピラリーフローを用いてPWW11と導波管21との隙間に非導電性接着剤を充填する方法が挙げられる。この方法を用いれば、PWW11と導電性接着剤との間、又は、導波管21と導電性接着剤との間に非導電性接着剤が進入する可能性を低減することができる。したがって、PWW11と導波管21と導通が妨げられる可能性を低減することができる。
【0049】
伝送線路1においては、PWW11と導波管21とが接合層31のみにより接合されるのに対して、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、PWW11と導波管21とが接合層31及び接合層32の両方によって接合される。このため、PWW11と導波管21との接合面積が増し、PWW11と導波管21との接合強度が増す。また、伝送線路1においては、接合層31に集中していた応力が、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、接合層31と接合層32とに分散される。このため、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、応力による接合層31の破壊が生じ難くなる。さらに、伝送線路1においては、外部環境に晒されていた接合層31が、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、外部環境に晒されなくなる。このため、本変形例に係る伝送線路1Aにおいては、外部環境に晒されることにより生じ得る接合層31の劣化を抑えることができる。外部環境に晒されることにより生じ得る接合層31の劣化としては、例えば、吸湿による腐食やマイグレーションによる導通不良などが挙げられる。
【0050】
なお、本変形例では、接合層31の全周に亘って接合層31の外縁と接合層32の内縁とが接触する構成を用いて説明した。しかし、接合層31の外縁と接合層32の内縁とは、その一部又は全部が離間するように構成されていてもよい。
【0051】
〔第2の変形例〕
伝送線路1の第2の変形例について、
図4を参照して説明する。
図4は、本変形例に係る伝送線路1Bの平面図である。
【0052】
本変形例に係る伝送線路1Bは、
図3に示す伝送線路1Aにおいて、接合層31〜32の外縁を変形したものである。伝送線路1Aにおいては、接合層31〜32が角のある外縁(具体的には矩形の外縁)を有するのに対して、伝送線路1Bにおいては、接合層31〜32が角のない外縁(具体的には角丸矩形の外縁)を有している。
【0053】
第1の変形例に係る伝送線路1Aにおいては、接合層31〜32の四隅への応力集中が生じやすいのに対して、本変形例に係る伝送線路1Bにおいては、接合層31〜32の四隅への応力集中が生じ難い。このため、本変形例に係る伝送線路1Bにおいては、応力集中による接合層31〜32の破壊が生じ難くなる。
【0054】
〔第3の変形例〕
伝送線路1の第3の変形例について、
図5を参照して説明する。
図5は、本変形例に係る伝送線路1Cの断面図である。
【0055】
本変形例に係る伝送線路1Cは、
図3に示す伝送線路1Aにはんだ層33を追加したものである。はんだ層33は、導波管21のショート壁23側に開口23aを取り囲むように形成される。本変形例においては、はんだ層33の材料として、AuSn90はんだ(熱膨張係数:13.6
−6/K,弾性率:40GPa)を用いる。接合層31は、PWW11の導体層13側に開口13aを取り込むように形成される。接合層32は、PWW11の導体層13と導波管21のショート壁23との間に接合層31及びはんだ層33を取り囲むように形成される。
【0056】
本変形例に係る伝送線路1Cにおいても、PWW11の開口13aと導波管21の開口23aとの間の空間が導電性を有する接合層31及びはんだ層33により取り囲まれている。このため、PWW11と導波管21との隙間において生じ得る電磁波の漏えいを抑えることができる。
【0057】
なお、本変形例において、接合層31の外縁と接合層32の内縁とは、その一部又は全部が離間するように構成されていてもよいし、はんだ層33の外縁と接合層32の内縁とは、その一部又は全部が離間するように構成されていてもよい。
【0058】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態及びその変形例として開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B,1C 伝送線路
11 ポスト壁導波路(第1の導波路)
12 基板
12a 第1の主面
12b 第2の主面
13 導体層(第1の導体層)
13a 開口
14 導体層(第2の導体層)
15,16,17 ポスト壁
18 伝搬領域
21 導波管(第2の導波路)
22 管壁
23 ショート壁
23a 開口
24 伝搬領域
31 接合層(導電性接着剤)
32 接合層(非導電性接着剤)
33 はんだ層