特許第6861589号(P6861589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861589
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】テント
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/42 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   E04H15/42
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-134215(P2017-134215)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-15120(P2019-15120A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】狩野 茂
(72)【発明者】
【氏名】李 弘宰
(72)【発明者】
【氏名】知久 健
(72)【発明者】
【氏名】鳴川 肇
(72)【発明者】
【氏名】本間 万理
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05240021(US,A)
【文献】 特開昭54−098014(JP,A)
【文献】 米国特許第05642750(US,A)
【文献】 米国特許第04265259(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第105804490(CN,A)
【文献】 特開平10−121788(JP,A)
【文献】 特開2001−290851(JP,A)
【文献】 特表2019−525033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テントシートと、前記テントシートを支持するための複数のポールと、前記複数のポールに対応して前記テントシートの表面に沿って形成され、前記複数のポールを挿通するための複数のスリーブと、を備えるテントであって、
前記複数のポールが、前記複数のスリーブに挿通されて前記テントが設置面上に設置されたとき、
前記テントシートは、
ドーム型の形状を有するドーム部と、
前記ドーム部の下端縁から下方に延設された裾部と、を含み、
前記ドーム部と前記裾部とが両方合わせて一つの空間を形成しており、
前記裾部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積は、前記ドーム部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積よりも小さく、
前記複数のスリーブは、前記ドーム部の中央領域に対して、前記ドーム部の一方側の下端部から、他方側の下端部まで、前記ドーム部の表面に沿うように配置された複数の第1スリーブを含む、
テント。
【請求項2】
前記裾部の側面と前記設置面とが成す接触角の範囲は、90度より大きく180度より小さい、
請求項1に記載のテント。
【請求項3】
前記テントシートは、複数のシート部材から構成されており、
前記複数のシート部材の各々は、多角形の形状を有する、
請求項1又は2に記載のテント。
【請求項4】
前記テントシートは、球形多面体の形状を有し、
前記複数のシート部材は前記球形多面体の各多角形の面を構成する、
請求項3に記載のテント。
【請求項5】
前記球形多面体は、アルキメデス立体を含む、
請求項4に記載のテント。
【請求項6】
前記アルキメデス立体は、イコシドデカヘドロンを含む、
請求項5に記載のテント。
【請求項7】
前記複数のシート部材のうち、複数の、隣り合うシート部材同士の境界線は、前記ドーム部の中央領域に対して一方側の下端部から、他方側の下端部まで連鎖する連鎖境界線を形成しており、前記複数の第1スリーブの各々は、互いに異なる連鎖境界線に沿って配置されている、
請求項3乃至6のいずれか一項に記載のテント。
【請求項8】
前記複数のスリーブは、前記テントシートの測地線に沿って配置されている、
請求項3乃至7のいずれか一項に記載のテント。
【請求項9】
前記複数のポールのうちの前記複数の第1スリーブに挿通される複数の第1ポールは互いに長さが等しい、
請求項8に記載のテント。
【請求項10】
前記複数のポールの各々は、分解可能又は折り畳み可能である、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テントに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーム型のテントが知られている。ドーム型のテントとしては、例えば米国特許第3863659号明細書に記載の「テント」、米国特許第4265259号明細書に記載の「シェルター構造」、米国特許第8602044号明細書に記載の「改善されたテントの組み立て体」が挙げられる。これらの特許文献で開示されたドーム型のテントは、略半球型に組まれたポールとテントシートとにより構成されており、テントシートで形成される居住空間が略半球の形状を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3863659号明細書
【特許文献2】米国特許第4265259号明細書
【特許文献3】米国特許第8602044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献のようなドーム型のテントにおいて、その居住性を高めるために、高さ方向の居住空間を増加させる方法としては、略半球状のテントシートの直径を大きくする方法が考え得る。しかし、テントシートの直径を大きくすると、テントの設置面積が拡大するので、広い設置場所が必要となり、設置場所が著しく制限されるおそれがある。また、テントシートの直径を大きくすると、テント全体が大きくなるので、少人数・短時間でテントを組み立てることが難しくなるおそれがある。高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えて、組み立てを容易にするテントが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えて、組み立てを容易にすることが可能な、居住性、コンパクト性及び組み立て容易性に優れたテントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテントは、テントシートと、前記テントシートを支持するための複数のポールと、前記複数のポールに対応して前記テントシートの表面に沿って形成され、前記複数のポールを挿通するための複数のスリーブと、を備えるテントであって、前記複数のポールが、前記複数のスリーブに挿通されて前記テントが設置面上に設置されたとき、前記テントシートは、ドーム型の形状を有するドーム部と、前記ドーム部の下端縁から下方に延設された裾部と、を含み、前記裾部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積は、前記ドーム部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積よりも小さく、前記複数のスリーブは、前記ドーム部の中央領域に対して、前記ドーム部の一方側の下端部から、他方側の下端部まで、前記ドーム部の表面に沿うように配置された複数の第1スリーブを含む、テント、である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えて、組み立てを容易にすることが可能な、居住性、コンパクト性及び組み立て容易性に優れたテントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施の形態に係るテントの構成例を示す斜視図である。
図2図2は実施の形態に係るテントの構成例を示す正面図である。
図3図3は実施の形態に係るテントの構成例を示す平面図である。
図4図4は実施の形態に係るテントの構成例を示す底面図である。
図5図5は実施の形態に係るテントの構成例を示す模式図である。
図6図6は実施の形態に係るテントの組み立て途中の状態を示す斜視図である。
図7図7は実施の形態に係るテントシートの構成例を示す正面図である。
図8図8は実施の形態に係るスリーブの構成例を示す正面図である。
図9図9は実施の形態に係るテンション構造の構成例を示す斜視図である。
図10図10は実施の形態に係るテンション構造の構成例を示す模式図である。
図11図11は実施の形態に係るテンション構造の作用を示す模式図である。
図12図12は実施の形態に係る案内手段の構成例を示す斜視図である。
図13図13は実施の形態に係る案内手段の他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の開示は、具体的には以下の態様に関する。
[態様1]
テントシートと、前記テントシートを支持するための複数のポールと、前記複数のポールに対応して前記テントシートの表面に沿って形成され、前記複数のポールを挿通するための複数のスリーブと、を備えるテントであって、前記複数のポールが、前記複数のスリーブに挿通されて前記テントが設置面上に設置されたとき、前記テントシートは、ドーム型の形状を有するドーム部と、前記ドーム部の下端縁から下方に延設された裾部と、を含み、前記裾部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積は、前記ドーム部の下端縁で形成される図形の前記設置面への投影面積よりも小さく、前記複数のスリーブは、前記ドーム部の中央領域に対して、前記ドーム部の一方側の下端部から、他方側の下端部まで、前記ドーム部の表面に沿うように配置された複数の第1スリーブを含む、テント。
【0010】
本態様1のテントでは、ドーム型(半球状)のドーム部の下方に裾部が付加されている。したがって、裾部の分だけテント内の高さが高くなるので、高さ方向の居住空間を増加させることができる。それにより、使用者がテント内で立ち上がることができるなど、テントでの高さ方向の居住性を向上させることができる。そのとき、本テントでは、裾部の下端で形成される図形の投影面積を、ドーム部の下端で形成される図形の投影面積よりも小さくしている。それにより、ドーム部の設置面積以上にテントの設置面積を拡げる必要が無く、設置場所の制限を抑制できる。すなわち、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えることができる。
更に、本テントでは、平面視で、裾部がドーム部よりも内側に位置することになるので、テントを組み立てるときに、テントシートを拡げると、裾部はドーム部にほぼ覆われて、下側に隠れることになる。このようなテントの場合、もし仮にドーム部の表面だけでなく、裾部の表面にまでスリーブが連なっていると、テントを組み立てるときに、下側に隠れた裾部の第1スリーブにまでポールを通す必要があり、複数の第1スリーブに複数のポールを通すことが難くなるおそれがある。そこで、本テントでは、複数の第1スリーブが、裾部には形成されず、ドーム部の一方側の下端部から他方側の下端部まで、ドーム部の表面に沿うように配置されている。それゆえ、複数のポールのうちの複数の第1ポールの各々を複数の第1スリーブの一つに容易に挿通させることができる。それにより、第1ポールの両端部を起立させ、テントシートをポールで吊り下げるようにして、テントを容易に組み立てることができる。すなわち、高さ方向の居住空間を増加させつつ、テントを容易に組み立てることができる。なお、裾部では複数のポールがむき出しになるが、それら複数のポールをフックや着脱式のスリーブなどで、裾部に取り付けることが可能である。
このように、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えて、組み立てを容易にする、居住性、コンパクト性及び組み立て容易性に優れたテントを得ることができる。
【0011】
[態様2]
前記裾部の側面と前記設置面とが成す接触角の範囲は、90度より大きく180度より小さい、上記態様1に記載のテント。
【0012】
本態様2のテントでは、裾部の側面と設置面との接触角の範囲が90度より大きく180度であり、したがって、テントシートの下方側の部分は、下方へ向かうに連れて窄まった形状を有している。すなわち、テントの内部では、側面が、裾部においてテントの底面からドーム部との境界に(上方へ)向かうに連れて外側に広がり、ドーム部において裾部とドーム部との境界から天井に(更に上方へ)向かうに連れて内側に縮まる形状となる。そのため、テントの内部で使用者がテントの側面の近くに着座したときでも、従来のドーム型のテントと比較して、使用者が頭部を圧迫されることを抑制できる。それにより、使用者が着座した状態での平面方向の居住空間を増加させることができる。すなわち、平面方向の居住空間を増加させて、居住性をより高めることができる。
【0013】
[態様3]
前記テントシートは、複数のシート部材から構成されており、前記複数のシート部材の各々は、多角形の形状を有する、上記態様1又は2に記載のテント。
【0014】
本態様4のテントでは、シート部材は多角形の形状を有しているので、組み立てる前の段階でも、シート部材の形状を容易に把握することができる。それにより、組み立てるときに、テントシートを適切に展開でき、例えばスリーブの入口/出口などの位置を的確に把握できるので、テントをより容易に組み立てることが可能となる。
【0015】
[態様4]
前記テントシートは、球形多面体の形状を有し、前記複数のシート部材は前記球形多面体の各多角形の面を構成する、上記態様3に記載のテント。
【0016】
本態様4のテントでは、テントシート(ドーム部+裾部)が球形多面体の形状を有している。ただし、この場合、球形多面体のうち、球の上方側の半分に対応する部分は、略半球状のドーム部であり、球の下方側の半分に対応する部分は、略半球のうちの下方側の部分が前記設置面と平行な平面で切断された形状の裾部である。この場合、テントシートがより球形に近いため、高さ方向及び平面方向での居住性をより高めることができる。また、テントシートがより球形に近いため、テントシート内の容積に対するテントシートの表面を沿うスリーブ及びポールの長さを相対的に短くできる。よって、ポールをスリーブにより容易に挿通させることができるので、テントの設置に掛かる時間と手間を削減でき、テントをより容易に組み立てることができる。
【0017】
[態様5]
前記球形多面体は、アルキメデス立体を含む、上記態様4に記載のテント。
【0018】
本態様5のテントでは、テントシートがアルキメデス立体の形状を有している。すなわち、テントシートが更により球形に近いため、高さ方向及び平面方向での居住性を更により高めることができる。また、テントシート内の容積に対するテントシートの表面を沿うスリーブ及びポールの長さを相対的により短くでき、ポールをスリーブに更により容易に挿通させることができる。それにより、テントをより容易に組み立てることができる。
【0019】
[態様6]
前記アルキメデス立体は、イコシドデカヘドロンを含む、上記態様5に記載のテント。
【0020】
本態様7のテントでは、テントシートがイコシドデカヘドロンの形状を有している。すなわち、アルキメデス立体の中でもより球形に近い形状を有している。それゆえ、高さ方向及び平面方向での居住性を更により高めることができ、テントをより容易に組み立てることができる。
【0021】
[態様7]
前記複数のシート部材のうち、複数の、隣り合うシート部材同士の境界線は、前記ドーム部の中央領域に対して一方側の下端部から、他方側の下端部まで連鎖する連鎖境界線を形成しており、前記複数の第1スリーブの各々は、互いに異なる連鎖境界線に沿って配置されている、上記態様3乃至7のいずれか一項に記載のテント。
【0022】
本態様7のテントでは、複数の、隣り合うシート部材同士の境界線が、ドーム部の一方側の下端から他方側の下端まで連鎖する連鎖境界線を形成しており、その連鎖境界線に沿って第1スリーブが配置されている。そのため、第1スリーブがシート部材を横切らない、すなわちシート部材の内側にスリーブとの結合箇所を有さないので、組み立てる前の段階でも、シート部材の形状を容易に把握することができる。それにより、組み立てるときに、テントシートを適切に展開でき、スリーブの入口/出口を的確に把握できるので、テントを容易に組み立てることが可能となる。
【0023】
[態様8]
前記複数のスリーブは、前記テントシートの測地線に沿って配置されている、上記態様3乃至7のいずれか一項に記載のテント。
【0024】
本態様8のテントでは、複数のスリーブがテントシートの測地線に沿って配置されている。それにより、複数のスリーブ、延いては複数のポールの長さを最短の長さにすることができ、ボールをスリーブにより容易に挿通させることができる。したがって、テントの設置に掛かる時間と手間を削減でき、テントをより容易に組み立てることができる。
【0025】
[態様9]
前記複数のポールのうちの前記複数の第1スリーブに挿通される複数の第1ポールは互いに長さが等しい、上記態様8に記載のテント。
【0026】
本態様9のテントでは、長さが等しい複数の第1スリーブに挿通される複数の第1ポールの長さを等しくしている。それにより、どの第1スリーブに、どの第1ポールを挿通してもよいので、第1スリーブと第1ポールとを照合する手間が抑制される。よって、テントの設置に掛かる時間と手間を削減でき、テントをより容易に組み立てることができる。
【0027】
[態様10]
前記複数のポールの各々は、分解可能又は折り畳み可能である、上記態様1乃至9のいずれか一項に記載のテント。
【0028】
本態様10のテントでは、複数のポールの各々が、分解可能又は折り畳み可能である。それにより、ポールをスリーブに挿通させるとき、長いポールを挿通させる場合と比較して、設置のときに必要な領域を狭くでき、またスリーブの入口で次々につなげる/伸ばすことにより、より容易にポールをスリーブに挿通させることができる。よって、テントの設置に掛かる時間と手間を削減でき、テントをより容易に組み立てることができる。
【0029】
以下、実施の形態に係るテント1について、図面を参照して説明する。ただし、本発明のテント1は、下記の実施の形態の構成に制限されることはなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
【0030】
まず、テント1の全体的な構成について説明する。
図1図6は、実施の形態に係るテント1の構成例を示す図である。ただし、図1はテント1の斜視図であり((a)はフライシート9なし、(b)はフライシート9あり)、図2はテント1の正面図であり、図3はテント1の平面図であり、図4はテント1の底面図であり、図5はテント1の内部の模式図である。図6はテント1の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
【0031】
テント1は、テントシート2と、複数のポール3と、複数のスリーブ4と、複数のテンション構造5と、別体のフライシート9と、を備えている。テント1は、テントシート2、複数のポール3及びフライシート9がテント1の下端に設けられた固定部材8、8’により設置面Gに固定されて使用される。ただし、設置面Gに設置されたテント1(テントシート2)において、設置面G、すなわちテント1の底部B(底面)に垂直な方向を上下方向とし、相対的にテント1の底部Bに近づく方向を下方又は下側とし、相対的にテント1の頂部Pに近づく方向を上方又は上側とする。テント1の表面に沿う方法を周面方向とし、設置面Gに平行な方向を平面方向とする。また、テント1を頂部P側から下方に向かって見ることを平面視という。別の実施の形態では、テンション構造5及びフライシート9の少なくとも一方を備えない。
【0032】
テントシート2は、いわゆるインナーシートであり、テント1の居住空間を形成する部材である。テントシート2は、略球状の形状であって、半球よりも大きく、球よりも小さい形状を有している。言い換えると、テントシート2は、略球状の部材において、上側の半球部分をそのままにして、下側の半球部分のうちの下方側の部分が設置面Gと平行な平面で切断された形状を有している。別の言い方をすると、テントシート2は、立体角が2πステラジアンより大きく4πステラジアンより小さい第1立体角を有する球帽に近似する形状であって、立体角が0の位置を頂部とし、第1立体角の位置を底部とする形状を有している。なお、テントシート2の底面は、シート状の底部Bで覆われている。テントシート2は、その他、窓7や出入口Dやベンチレータ(図示せず)やポケット(図示せず)などを有している。
【0033】
テントシート2の略球状の形状は、イコシドデカヘドロン(準正三十二面体又は十二・二十面体)の形状に基づいている。イコシドデカヘドロン(ICOSIDODECAHEDRON)は、正五角形を十二面、正三角形を二十面、それぞれ含んでいる。そして、テントシート2における略球状の形状は、正五角形を頂面及び底面として配置されたイコシドデカヘドロンにおいて、下側の半球部分における底面から所定の厚さの部分を、その底面に平行な仮想面で切断した形状を有している。ただし、仮想面は、正多角形の頂点同士を結んだ平面であり、例えば底面から全体の高さの約1/5程度の位置を通る面である。上側の半球部分には正五角形が六面、正三角形が十面それぞれ含まれており、下側の部分には部分的に切断された正五角形が五面、正三角形が五面それぞれ含まれている。イコシドデカヘドロンの形状に基づく形状であることは、球の形状に近いという点、したがって例えば体積に対する表面積の割合が小さくなる点で好ましい。また、イコシドデカヘドロンは、球の大円の部分としての測地線(ジオデシック・ライン)を辺とする多角形で形成されたジオデシック多面体であるということができる。なお、テントシート2の略球状の形状は、別の実施の形態では、アルキメデス立体又は準正多面体であり、更に別の実施の形態では、多面体の頂点が球に内接する球形多面体である。
【0034】
テントシート2は、ドーム部11と裾部12とを含んでいる。
ドーム部11は、テントシート2のうちのドーム型の形状を有する部分であり、すなわち略球状の部材における上側の半球部分である。ドーム部11には、正五角形が六面、正三角形が十面それぞれ含まれている。以下では、ドーム部11の下端縁で形成される、設置面Gに平行な面を赤道面Eともいう。赤道面Eはドーム部11と裾部12との境界面である。裾部12は、テントシート2のうちのドーム部11の下端縁から下方に延設された部分で、略球状の部材における下側の半球部分であり、その下方側の部分が設置面と平行な平面で切断された形状である。裾部12には、部分的に切断された正五角形が五面、正三角形が五面それぞれ含まれる。ただし、これらのドーム部11や裾部12における各形状は、製造歩留りを考慮し、寸法の多少のずれ(例示:±5%)を許容するものである。
【0035】
図4に示すように、裾部12の下端縁で形成される図形である底部Bにおける設置面Gへの投影面積Sは、ドーム部11の下端縁で形成される図形である赤道面Eにおける設置面Gへの投影面積Sよりも小さい。Sは好ましくはSの60%以上95%以下であり、より好ましくはSの70%以上85%以下である。大き過ぎると裾部12の効果(後述)が得られず、小さ過ぎると居住区間が狭くなる。したがって、テント1では、平面視で、裾部12の外側の端縁がドーム部11の外側の端縁よりも内側に位置しているということができる。なお、底部Bの形状は、本来は正五角形になるが、正五角形の五辺のうちの入口部分の一辺を除く四辺の中点を外側にずらすことで、九角形としている。それにより、底部Bを拡げることで平面方向の居住性を高めている。
【0036】
また、図5に示すように、裾部12の側面Wと設置面Gとが成す接触角αの範囲は、90度より大きく180度より小さい。αは好ましくは95度より大きく135度より小さく、より好ましくは95度より大きく120度より小さい。小さ過ぎると裾部12の効果(後述)が得られず、大き過ぎると居住区間が狭くなる。よって、テントシート2の下側の部分である裾部12は下方、すなわち底部Bへ向かうに連れて窄まった形状を有する。すなわちテント1では、側面Wが、裾部12においてテント1の底面(底部B)からドーム部11との境界(赤道面E)に向かうに連れて外側に拡がり、ドーム部11において裾部12とドーム部11との境界(赤道面)から天井(頂部P)に向かうに連れて内側に縮まる形状となる。したがってドーム部11の下端で形成される底部Bの設置面Gへの投影図形は、裾部12の下端で形成される赤道面Eの設置面Gへの投影図形を内側に含む。
【0037】
複数のスリーブ4の各々は、ポール3が挿通されるための袖状又は筒状の部材で、ポール3が配置される位置に対応してテントシート2の表面に沿って配置(接合)される。一つのスリーブ4には一本のポール3が挿通される。よって、テントシート2の表面に投影したスリーブ4の配置は、テントシート2の表面に投影したポールの配置とほぼ重なる。
【0038】
複数のスリーブ4は、複数の第1スリーブ4aと、少なくとも一つの第2スリーブ4bとを含んでいる。第1スリーブ4aは、ドーム部11の中央領域に対して、ドーム部11の一方側の下端部から、他方側の下端部まで、ドーム部11の表面に沿うように、ドーム部11の表面に配置(接合)されている。ドーム部11の一方側の下端部は、例えば赤道面E上又は赤道面E近傍に位置し、他方側の下端部はその一方側の端部に対してドーム部11の中央領域を挟んで反対側における赤道面E上又は赤道面E近傍に位置し、いずれもポール3を挿入可能な開口を有する。第1スリーブ4aは赤道面Eに、0度より大きく180度より小さい角度で交差している。ただし、ドーム部11の中央領域とは、ドーム部11内部の赤道面Eの中央部とする。第2スリーブ4bは、第1スリーブ4a以外のスリーブ4である。第2スリーブ4bは、テント1の出入口D付近を除いて赤道面Eを囲むように、ドーム部11の表面に沿うように、ドーム部11の表面に配置(接合)されている。第2スリーブ4bは赤道面Eに平行に(赤道面Eに交差せずに)配置されている。
【0039】
スリーブ4のうち、第1スリーブ4aは、挿通の作業の途中でポール3が第1スリーブ4aの外にはみ出さないよう、よって挿通されるポール3が連続的に覆われるように、連続的に形成されている。それにより、テント1を組み立てるとき、二次元的に展開されたテントシート2の第1スリーブ4aの一方側の端部から他方側の端部まで、ポール3を一気に挿通できる。一方、スリーブ4のうち、第2スリーブ4bは、ポール3が所々露出するように、断続的に形成されている。それにより、テント1を組み立てるとき、複数の第1スリーブ4aに挿通された複数の第1ポール3aにより三次元の略球体形状に形成され、張り詰めた状態のテントシート2において、赤道面Eの第2スリーブ4bにポール3を挿通するとき、使用者が手で補助し易くするためである。別の実施の形態では、第1スリーブ4aが断続的に形成されてもよく、第2スリーブ4bが連続的に形成されてもよい。
【0040】
複数のポール3は、テントシート2を支持するための部材であり、複数のスリーブ4内に挿通されて使用される。複数のスリーブ4に挿通された複数のポール3が設置面Gに張られることで、複数のポール3は複数のスリーブ4を介してテントシート2を支持することができる。上記のように、一本のポール3が一つのスリーブ4に挿通される。なお、複数のポール3の各々は分解可能又は折り畳み可能に形成されている。
【0041】
複数のポール3は、複数の第1ポール3aと、少なくとも一本の第2ポール3bとを含んでいる。第1ポール3aは、ドーム部11に形成された第1スリーブ4aに挿通される。第1ポール3aのうちのドーム部11側の部分は、第1スリーブ4aに挿通されて、ドーム部11の一方側の下端部から他方側の下端部まで、ドーム部11の表面に沿うように配置されている。一方、第1ポール3aのうちの裾部12側の部分は、ドーム部11の一方側及び他端側の各々の下端部から設置面Gまで、裾部12の表面に沿って延びて設置面Gに達し、固定部材8により設置面Gに固定される。第1ポール3aにおける裾部12の表面に沿って延びる部分は、フック等により裾部12の表面に結合される。第1ポール3aは、ドーム部11及び裾部12の表面において、赤道面Eに、0度より大きく180度より小さい角度で交差している。第2ポール3bは、ドーム部11の赤道面Eに沿って形成された第2スリーブ4bに挿通される。第2ポール3bは、第2スリーブ4bに挿通されて、テント1の出入口D付近を除いて、赤道面Eを囲み、ドーム部11の表面に沿うように位置している。第2ポール3bは、ドーム部11の表面において、赤道面Eと交差せず、平行である。
【0042】
フライシート9については、テントシート2、複数のポール3、複数のスリーブ4及び複数のテンション構造5で形成される略球形の構造を覆うことが可能であれば特に制限はない。例えば、その略球形の構造が内接するように形成された略球形又は準正多角形などのシートが挙げられる。
【0043】
テントシート2やフライシート9の材料としては、テントシートやフライシートとして使用可能であれば特に制限はないが、例えば、各種のナイロンやテトロンやポリエステルのような合成樹脂が挙げられる。ポール3の材料としては、ポールの材料として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、カーボンファイバや繊維強化プラスチックのような複合材、ジュラルミン(アルミニウム合金)やスチールやステンレスのような金属などが挙げられる。スリーブ4の材料としては、スリーブとして使用可能であれば特に制限はないが、例えば、テントシートの材料と同様な材料を用いることができる。各材料については適宜表面加工等の加工がなされてもよい。
【0044】
次に、本実施の形態におけるテント1の組み立て方法は、以下のような方法で行う。
(1)折り畳まれたテントシート2を設置面G上に展開する。このとき、ドーム部11を上側に、裾部12を下側にする。すなわち、ドーム部11上の複数のスリーブ4が上側に露出し、裾部12が概ね下側に隠れる。
(2)テントシート2の複数の第1スリーブ4aに複数の第1ポール3aを挿通する。このとき、一つの第1スリーブ4aにつき一本の第1ポール3aを入れ、第1スリーブ4aを挟んでドーム部11上の両側に第1ポール3aの両端部がはみ出すようにする。この(2)工程の状態が図6である。
(3)複数の第1ポール3aの両端部を保持しつつ、複数の第1ポール3aを起立させるようにして、ドーム部11を半球状にする。そして、複数の第1ポール3aの両端部を裾部12に取り付けられた複数のフック及び複数の固定部材8に取り付ける。
(4)第2スリーブ4bに第2ポール3bを相通する。必要に応じてフライシート9で全体を覆う。
以上のような方法で、テント1が組み立てられる。
【0045】
本テントでは、ドーム型(半球状)のドーム部11の下方に裾部12を付加しているので、裾部12の分だけテント1内の高さを高くできる。それにより、図5に示すように、使用者M1がテント1内で立ち上がることができるなど、テント1での高さ方向(底部Bと頂部Pとの間の方向)の居住空間を増加させることができる。また、そとのき、裾部12の下端縁で形成される図形、すなわち底部Bの設置面Gへの投影面積Sを、ドーム部11の下端縁で形成される図形、すなわち赤道面Eの設置面Gへの投影面積Sよりも小さくしている。それにより、ドーム部11の設置面積(概ねSに相当)以上にテント1の設置面積を拡げる必要が無く、すなわちドーム部だけのテント(従来のドーム型のテント)と同じ設置面積で済むので、設置場所の制限を抑制できる。すなわち、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えることができる。例えば、直径が3mの場合、従来のドーム型のテントでは、天井高は約1.5mになるが、本テント1では、天井高は約2.1mになる。すなわち、天井高を約4割増しにすることができる。
更に、テント1では、平面視で、裾部12がドーム部11よりも内側に位置している。そのため、図6に示すように、テント1を組み立てるときに、テントシート2を拡げると、裾部12はドーム部11に入り込んで、すなわちドーム部11にほぼ覆われて、下側に隠れることになる。このようなテント1の場合、もし仮にドーム部の表面だけでなく、裾部の表面にまでスリーブが連なっていると、テントを組み立てるときに、下側に隠れた裾部の第1スリーブにまでポールを通す必要があり、複数の第1スリーブに複数のポールを通すことが難くなる。そこで、テント1では、複数の第1スリーブ4aが、裾部12には形成されず、ドーム部11の一方側の下端部から他方側の下端部まで、ドーム部11の表面に沿うように配置されている。それゆえ、複数のポール3のうちの複数の第1ポール3aを複数の第1スリーブ4aに、一つの第1スリーブ4aにつき一本の第1ポール3aずつ挿通し易くすることができる。図6のテントシート2では、ドーム部11上の複数の第1スリーブ4aに、複数の第1ポール3aが挿通された状態を示している。それにより、その後に、複数の第1ポール3aの各々の両端部を起立させ、テントシート2を複数の第1ポール3aで吊り下げるようにして、図1(a)に示すように、テント1を容易に組み立てることができる。すなわち、高さ方向の居住空間を増加させつつ、テント1を容易に組み立てることができる。なお、裾部12では複数の第1ポール3aがむき出しになるが、それら複数の第1ポール3aをフックや着脱式のスリーブなどで、裾部12に取り付けることが可能である。
このようにして、寝袋に入って寝るだけの従来のテントではなく、住宅の居室のような内部で立って活動もできる快適な空間を有する本テント1を得ることができる。そして、例えばオートキャンプを気軽に楽しむ一般的な家族でも、独創的な本テント1を簡単に組み立てることができる。それにより、高さ方向の居住空間を増加させつつ、設置面積の増加を抑えて、組み立てを容易にする、居住性、コンパクト性及び組み立て容易性に優れたテントを得ることができる。
【0046】
本実施の形態において、好ましい態様として、図5に示すように、裾部12の側面Wと設置面Gとが成す接触角αの範囲が90度より大きく180度より小さい。このようなテント1では、テントシート2の下方側の部分、すなわち裾部12は、下方へ向かうに連れて窄まった形状を有することになる。すなわち、テント1の内部では、側面Wが、裾部12においてテント1の底面(底部B)からドーム部11との境界(赤道面E)に向かうに連れて外側に拡がり、ドーム部11において裾部12とドーム部11との境界(赤道面E)から天井(頂部P)に向かうに連れて内側に窄まる形状となる。そのため、テント1の内部で使用者M2がテント1の側面Wの近くに着座したときでも、ドーム部だけのテント(従来のドーム型のテント)と比較して、使用者M2が頭部を圧迫されることを抑制できる。それにより、使用者M2が着座した状態での平面方向の居住空間を増加することができる。すなわち、平面方向の居住空間を増加させて、居住性を高めることができる。
【0047】
図7は実施の形態に係るテントシート2の構成例を示す正面図である。
テントシート2は、複数のシート部材21から構成されている。テントシート2の略球状の形状は準正三十時面体に基づくので、複数のシート部材21の形状は、多角形(正五角形及び正三角形)の形状を有している。隣り合うシート部材21同士は辺及び頂点を共有するように接合部(図示されず)により互いに接合されている。接合の方法としては縫合や接着や融着などの方法が挙げられる。隣り合うシート部材21同士の接合部は、隣り合うシート部材21同士の境界線22を形成している。複数の境界線22は、ドーム部11の中央領域に対して一方側の下端部から、他方側の下端部まで、周面方向に沿って連鎖して、連鎖境界線23を形成している。ただし、連鎖するとは、境界線の一端部が次の境界線の一端部に接続し、次の境界線の他端部が更に次の境界線の一端部に接続し、というように複数の境界線が直列に並んで端部同士を接合する状態をいう。そして、複数のスリーブ4は、複数の連鎖境界線23に沿って配置されている。別の実施の形態ではシート部材21の形状は少なくとも一部は多角形以外の形状であり、更に別の実施の形態ではテントシート2は複数のシート部材21から構成されず、一枚のシート部材から構成される。
【0048】
具体的には、複数のシート部材21は、正五角形の形状を有するシート部材21aと、正三角形の形状を有するシート部材21bとを含んでいる。ドーム部11には、正五角形のシート部材21aが六面存在し、正三角形のシート部材21bが十面存在する。また、裾部12には、部分的に切断された正五角形のシート部材21a’が五面存在し、正三角形のシート部材21bが五面存在する。このうち、赤道面Eと交差して又は赤道面Eから離れて延びる境界線22である複数の第1境界線22aが連鎖して、第1連鎖境界線23aが構成される。一方、赤道面Eに沿って延びる境界線22である複数の第2境界線22bが連鎖して、第2連鎖境界線23bが構成される。
このとき、テントシート2の略球状の形状は準正三十時面体に基づくので、連鎖境界線23、すなわち第1連鎖境界線23a及び第2連鎖境界線23bは、イコシドデカヘドロンの大円の部分であり、測地線(曲面上の最短距離の線)に相当している。
【0049】
ただし、複数のシート部材21の形状とは、シート部材21における接合部、すなわち境界線で形作られる(又は縁取られる)形状をいう。したがって、例えばシート部材21の形状が多角形であるとは、境界線(接合部)で形作られる(又は縁取られる)シート部材21の形状が多角形であることをいう。また、複数のシート部材21が多角形の形状を有するという場合、必ずしも厳密な多角形でなくてもよく、実質的に多角形であればよい。実質的に多角形とは、例えば、テントシート2を球体の形状に近づけるように、各シート部材21の多角形の各辺が、外側に緩やかに凸となるように膨らんだ多角形を含み、したがって内角の和が180度以上になる多角形を含む。本実施の形態の場合、テントシート2がイコシドデカヘドロン(準正三十時面体)に基づく形状を有しているが、より球体に近い形状となる。また、シート部材21には、製造歩留りを考慮して、寸法の多少のずれ(例示:±5%)を含んでもよい。
【0050】
図8は実施の形態に係るスリーブ4の構成例を示す正面図である。この図は、図7のテントシート2に複数のスリーブ4及び複数のポール3を付け加えた構成を示しており、すなわち、図2においてテンション構造5を除いた構成を示している。
複数のスリーブ4の各々は、複数の境界線22、すなわち連鎖境界線23に沿って配置されている。各連鎖境界線23は、イコシドデカヘドロンの大円の部分であり、測地線に相当する。したがって、複数のスリーブ4及び複数のポール3は、テントシート2の大円の部分、又は、測地線に沿って配置されている、ということができる。
【0051】
ここで、複数の第1スリーブ4aに挿通される複数の第1ポール3aは、複数の第1連鎖境界線23aに沿って配置される。複数の第1連鎖境界線23aは、互いに長さの等しい測地線に沿って形成されているから、互いに長さが等しい。一方、第2スリーブ4bに挿通される第2ポール3bは、第2連鎖境界線23bに沿って配置される。第2連鎖境界線23bは、赤道面Eの測地線に沿って形成されているが、その測地線は第1連鎖境界線23aが沿う測地線よりも長いから、第2連鎖境界線23bは、第1連鎖境界線23aよりも長くなる。
【0052】
本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、テントシート2が複数のシート部材21から構成され、複数の、隣り合うシート部材21同士の境界線22が、ドーム部11の一方側の下端部から他方側の下端部まで連鎖する連鎖境界線23を形成しており、その連鎖境界線23に沿って第1スリーブ4a(及び第1ポール3a)が配置されている。そのため、第1スリーブ4aがシート部材21を横切らない、すなわちシート部材21の内側に第1スリーブ4aとの結合箇所を有さない。例えば、正五角形のシート部材21aを分割するように第1スリーブ4aがシート部材21を横切らない。そのため組み立てる前の段階でも、シート部材21の形状、例えば正五角形及び正三角形を容易に把握することができる。それにより、テント1を組み立てるときに、テントシート2を適切に展開でき、第1スリーブ4aにおける第1ポール3a挿入用の開口を的確に把握できるので、テント1を容易に組み立てることが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態における好ましい態様として、テント1では、シート部材21は多角形、例えば正五角形や正三角形の形状を有している。そのため、複数の、隣り合うシート部材21同士の境界線22が連鎖境界線23を形成できるように、複数のシート部材21を容易に形成・配置することができる。それにより、テント1を組み立てるときに、テントシート2をより適切に展開でき、スリーブ4におけるポール3挿入用の開口をより的確に把握できるので、テントをより容易に組み立てることが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態における好ましい態様として、テント1では、テントシート2(ドーム部11+裾部12)がイコシドデカヘドロンの形状(ただし、下方の部分が一部除かれた形状、以下同じ。)を有している。別の実施の形態では、テント1では、テントシート2が多面体、中でも多面体を構成する多角形の頂点が球に内接する(外接球を有する)球形多面体の形状を有していてもよいし、半正多面体の形状を有していてもよいし、アルキメデス立体又は準正多面体の形状を有していてもよい。これらの場合にも、テントシート2が球形に近いため、高さ方向及び平面方向での居住性を高めることができる。また、テントシート2が球形に近いため、テントシート2内の容積に対するテントシート2の表面を沿うスリーブ4及びポール3の長さを相対的に小さくできる。それにより、ポール3をスリーブ4に容易に挿通させることができるので、テント1をより容易に組み立てることができる。更に別の実施の形態では、テント1では、テントシート2が球の太円の部分としての測地線(ジオデシック・ライン)を辺とする多角形で形成されたジオデシック多面体でもよい。この場合、上記各多面体の奏する効果に加えて、スリーブ4及びポール3の長さを最短の長さにできるので、ポール3をスリーブ4に容易に挿通させることができ、テント1をより容易に組み立てることができる。なお、テントシート2は、厳密な意味で、これら球形多面体やアルキメデス立体(半正多面体、準正多面体、準正三十二面体(イコシドデカヘドロンを含む))の形状を有する必要はなく、略球形多面体や略アルキメデス立体の形状、すなわち実質的に球形多面体やアルキメデス立体その形状を有すればよい。実質的にそれらの形状を有する、とは、各辺が丸みを帯びて曲線になっていたり、各面が丸みを帯びて曲面になっていたりするなどの変形を有する形状を含む趣旨である。
【0055】
また、本実施の形態における好ましい態様として、テント1では、複数のスリーブ4がテントシート2の測地線に沿って配置されている。それにより、複数のスリーブ4、延いては複数のポール3の長さを最短の長さにすることができ、ポール3をスリーブ4により容易に挿通させることができる。したがって、テント1の設置に掛かる時間と手間を削減でき、テント1をより容易に組み立てることが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態における好ましい態様として、テント1では、長さが等しい複数の第1スリーブ4aに挿通される複数の第1ポール3aの長さを等しくしている。それにより、どの第1スリーブ4aに、どの第1ポール3aを挿通してもよいので、第1スリーブ4aと第1ポール3aとを照合する手間が抑制される。したがって、テント1の設置に掛かる時間と手間を削減でき、テント1をより容易に組み立てることが可能となる。
【0057】
次に、テンション構造5について説明する。本実施の形態では、好ましい態様として、テント1が複数のテンション構造5を備えている。図9図11は実施の形態に係るテンション構造5の構成例を示す図である。ただし、図9は、テント1のテンション構造5の構成例を示す斜視図であり、図10はテンション構造5の構成例を示す模式図であり、図11はテンション構造5の作用を示す模式図である。
【0058】
テントシート2は、図9図2図3に示すように、テントシート2内に区画された複数の第1領域Rを有する。複数の第1領域Rの各々は、テントシート2では、複数のポール3のうちのいくつかのポール3である複数の区画ポール3pにより区画され、内部に他のポール3を含まない領域である。すなわち、複数の区画ポール3pが挿通される、複数の区画スリーブ4pにより区画され、内部に他のスリーブ4を含まない領域でもある。第1領域Rは、シート部材21の(イコシドデカヘドロンの)正五角形の領域に相当する。
【0059】
テント1は、第1領域R内に、テンション構造5を備えている。テンション構造5は、第1領域Rに生じる荷重を周囲の構成、例えば区画ポール3pなどに分散することにより、テント1の耐荷重を向上させる。テンション構造5は、第1領域Rを、複数のテンション領域Aに区分する。したがって、テンション構造5は、第1領域Rに生じる荷重を複数のテンション領域Aに分散して、複数のテンション領域Aから周囲の構成、例えば複数のテンション領域Aに接する区画ポール3pなどに更に分散することにより、テント1の耐荷重を向上させる、ということもできる。なお、頂部Pの第1領域Rではテントシート2の内部にテンション構造5を備えている。頂部Pのテンション構造5は、テントシート2の内部において、内側から外側に向かって頂部Pを突き上げている。この場合、支持部材51はテントシート2の内部に位置する。別の実施形態では、支持部材51が頂部Pのテントシート2を貫通して外部に延びてもよい。頂部Pのテンション構造5は、テントシート2の外部にあってもよい。
【0060】
テンション構造5は、複数の線状部材52と、支持部材51と、を備えている。
複数の線状部材52の各々は、一端部を少なくとも一本の区画ポール3pに結合され、他端部を支持部材51に結合された、ワイヤーや紐のような線状の部材である。区画ポール3pにおける線状部材52が結合される位置は、シート部材21の正五角形の頂点の位置に相当する、二本の区画ポール3pが交差している位置である。別の実施の形態では、区画ポール3pにおける線状部材52が結合される位置は、正五角形の各辺の途中(例示:中心)の位置である。支持部材51は、第1領域R内に位置し、例えば第1領域R内のテントシート2の表面上に位置しており、テントシート2の表面に対して所定の高さ(厚さ)を有する部材である。支持部材51は、好ましくは複数の線状部材52に掛かる力がバランスする釣り合いの位置に配置される。支持部材51は、好ましくは第1領域Rの正多角形の重心に配置される。このとき、支持部材51はテントシート2の表面に接合されずに載置されており、複数の線状部材52によりその釣り合いの位置に支持(保持)される。別の実施の形態では、支持部材51は、第1領域Rの正多角形の重心に配置されず、更に別の実施の形態では、支持部材51はテントシート2の表面に接合される。ただし、結合とは、部材同士が直接的に接触した状態で結合(接合)する場合だけでなく、リング部材などの他の部材を介して間接的に結合する場合を含む。この場合では、線状部材52は、リング部材53を介して、一端部を区画ポール3pに結合されている。すなわち、線状部材52は、環の中を区画ポール3pが貫通した状態のリング部材53に接合される。
【0061】
複数の区画ポール3pで囲まれた第1領域Rは、テンション構造5の複数の線状部材52により、複数のテンション領域Aに区分される。テンション領域Aは、支持部材51に他端部を接合された互いに隣り合う二本の線状部材52と、一本の区画ポール3pにより囲まれた三角形の領域と見ることができる。このような三角形の領域では、三角形の頂点である支持部材51に力が加わっても左右の辺である二本の線状部材52に力を分散させることができる。分散された力は、区画ポール3pによって受け止められる。
【0062】
例えば、正五角形の第1領域Rは、図10に示すように、五つの三角形のテンション領域A11〜A15に区分されている。すなわち、五つのテンション領域A11〜A15は、いずれも支持部材51に他端部を接合された互いに隣り合う二本の線状部材52と、一本の区画ポール3pにより囲まれた三角形の領域である。したがって、三角形の頂点である支持部材51に荷重K10が加わっても、その荷重K10を五つの三角形の左右の辺である五本の線状部材52に分散させて、それぞれ荷重K11〜K15とすることができる。分散された荷重K11〜K15は、それぞれ複数の区画ポール3pによって受け止められる。別の実施の形態では、区画ポール3pにおける線状部材52が結合される位置が正五角形の各辺の途中(例示:中心)の位置の場合、テンション領は互いに隣り合う二本の線状部材52と互いに隣り合う二本の区画ポール3p(部分)による四角形である。
【0063】
ただし、支持部材51に加わる荷重K10としては、例えば、支持部材51に直接加わる荷重や、第1領域Rのテントシート2に加わった荷重がテントシート2を変形させることでテントシート2に伝達され、そのテントシート2の変形により支持部材51が押されるなどして支持部材51に伝達された荷重や、隣接する第1領域Rの荷重が線状部材52経由で支持部材51に伝達された荷重、などが挙げられる。また、頂部Pのテンション構造5では、各線状部材52は、テントシート2の内側に延びる保持部材(図示せず)を介して外側のスリーブ4に結合している。頂部Pのテンション構造5は、強度の向上だけでなく、頂部Pを上方へ突き上げることで、頂部の頂部Pに水等が溜まるのを防止する。
【0064】
テント1では、図11に示すように、複数の線状部材52の各々は、第1線状部材5211と、第2線状部材5212とを含んでいる。第1線状部材5211は、一端部を区画ポール3pの所定箇所に結合され、他端部を支持部材51におけるテントシート2に接する一端部に結合されている。第2線状部材5212は、一端部を区画ポール3pの所定箇所(第1線状部材52と同一箇所)に結合され、他端部を支持部材51におけるテントシート2に接しない他端部(一端部と反対側の他端部)に結合されている。すなわち、支持部材51と二本の第1線状部材5211及び第2線状部材5212とにより、別の三角形のテンション領域A21が形成されている。したがって、その三角形のいずれかの頂点に荷重が加わっても、その荷重をその頂点の左右の辺に分散できる。更に、隣接する別の線状部材52においても、例えば支持部材51と二本の第1線状部材5221及び第2線状部材5222とにより、別の三角形のテンション領域A22が形成されている。それにより、例えば支持部材51に下向きに加わった荷重K20を、第1線状部材5211と第1線状部材5221とに分散して、荷重K21と荷重K22とすることができる。同様に、例えば支持部材51に上向きに加わった荷重K20を、第1線状部材5211と第1線状部材5221とに分散することができる。なお別の実施の形態では、複数の線状部材52の各々は、構造や組み立ての容易性の観点から、第2線状部材5212(、5222)及び第1線状部材5211(、5221)のいずれか一方を含まない。
【0065】
線状部材52の材料としては、所定の強度を有していれば特に制限はなく、例えば金属、無機材料、合成樹脂(繊維)、天然繊維などが挙げられる。また、支持部材51の形状は、所定の高さ(厚さ)を有すれば特に制限はなく、例えば棒状の部材、球状又は楕円体上の部材などが挙げられる。支持部材51が球状又は楕円体の場合、線状部材52をより安定的に支持できる。支持部材51の材料としては、所定の強度を有していれば特に制限はなく、例えば金属、無機材料、合成樹脂、天然樹脂などが挙げられる。
【0066】
本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、第1領域Rと、テンション領域Aとを備え、支持部材51は、第1領域R内に位置している。そのため、テントシート2の第1領域Rに風などの荷重がかかったとき、その荷重を、第1領域Rのテントシート2だけでなく、テンション構造5(線状部材52及び支持部材51)及びそれに連なる複数の区画ポール3pにより受け止めることができる。
すなわち、図10に示すように、第1領域Rの表面に略平行な面で見ると、第1領域Rへの荷重K10は、支持部材51を介して複数の線状部材52へ分散されつつ(荷重K11〜K15)伝達され、更に複数の線状部材52から複数の区画ポール3pへ分散されつつ伝達される。よって、テント1は、第1領域Rへの荷重K10を、第1領域Rのテントシート2だけでなく、複数の線状部材52及び複数の区画ポール3pに分散して受け止めることができる。すなわち、引っ張り(例示:線状部材52)と圧縮(例示:区画ポール3p)とをバランスよく統合して、荷重K10をバランスよく分散させることができる。その結果、テント1は、第1領域Rへの荷重を第1領域Rのテントシート2だけで受け止める場合と比較して、より強い荷重を受け止めることができる。すなわち、テント1は、第1領域Rへの荷重に対する強度を向上させることができ、延いてはテント1全体としての強度を向上させることができる。特に、支持部材51が複数の線状部材52に掛かる力がバランスする釣り合いの位置に配置されている場合、荷重K10をさらにバランスよく分散させることができる。
この場合、強度を向上させる方法として、テンション構造5、すなわち線状部材52と、その線状部材52を支持する支持部材51しか用いておらず、ポール3の数を増加させていない。したがって、テント1の全体としての重量の増加が抑制されており、少人数で運搬することが困難になるおそれはない。また、テンション構造5は極めて簡単な構造なので、少人数・短時間でテントを組み立てることが困難になるおそれはない。例えば、予めテンション構造5をテントシート2に取り付けておいてもよい。例えば、テンション構造5のうち、複数の線状部材52の一端部のみを区画ポール3p用のスリーブ4に取り付けておけばよい。
このようにして、風に対する強度を高めつつ、重量の増加を抑えて、組み立てを容易にする、強度、軽量性及び組み立て容易性に優れたテント1を得ることができる。
【0067】
本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、図11に示すように、複数の線状部材52の各々は、第1線状部材5211と、第2線状部材5212とを含んでいる。すなわち、第1領域Rの表面に略垂直な面で見ると、第1領域Rへの荷重を、複数の第1線状部材5211及び複数の第2線状部材5212の両方に分散して伝達でき、更に複数の区画ポール3pへ分散して伝達できる。したがって、テント1は、第1領域Rへの荷重を、複数の二種類の経路(第1線状部材5211−区画ポール3p、第2線状部材5212−区画ポール3p)に分散して受け止めることができる。その結果、テント1は、荷重をより確実に分散し伝達できる。
更に、隣接する別の線状部材52においても、例えば支持部材51と二本の第1線状部材5221及び第2線状部材5222とにより、別の三角形のテンション領域A22が形成されている。したがって、例えば支持部材51に下向きに加わった荷重K20を、第1線状部材5211の荷重K21と第1線状部材52の荷重K22とに分散して伝達でき、更に複数の区画ポール3pへ分散して伝達できる。したがって、テント1は、第1領域Rへの荷重を、複数の二種類の経路(第1線状部材5211−区画ポール3p、第1線状部材5221−区画ポール3p)に分散して受け止めることができる。その結果、テント1は、荷重をより確実に分散し伝達できる。支持部材51に上向きに荷重が加わった場合も同様である。このように、テント1は、第1領域Rへの荷重に対する強度をより向上することができ、延いてはテント1全体としての強度をより向上させることができる。なお、このとき追加される部材は第1線状部材5211、5221だけなので、テント1の重量の増加はわずかであり、テンション構造5もほとんど変更はない。このようにして、強度、軽量性及び組み立て容易性により優れたテントを得ることができる。
【0068】
本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、図9に示すように、一本の線状部材52の(リング部材53を介した)結合先が二本の区画ポール3pが交差する位置である。そのため、線状部材52から伝達された荷重を二本の区画ポール3pに分散して伝達することができ、すなわち区画ポール3pの一本当たりに分散される荷重を例えば約半分程度に減少できる。したがって、線状部材52に分散できる荷重を増加することができ、それにより、第1領域Rへの荷重に対する強度をより向上することができ、延いてはテント1全体としての強度をより向上させることができる。なお、このとき追加される部材は実質的にないので、テント1の重量の増加は実質的になく、テンション構造5も線状部材52の取付位置以外にはほとんど変更はない。
【0069】
また、本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、図10に示すように、第1領域Rは、互いに隣り合う二本の線状部材52と区画ポール3pとで構成される三角形の複数のテンション領域A11〜A15により区分されている。このように第1領域Rを三角形の複数のテンション領域A11〜A15で区分することで、第1領域Rへの荷重10を少なくとも第1領域Rの二本の線状部材52に効率的に分散でき、更に区画ポール3pに効率的に分散することができる。したがって、テント1は、第1領域Rを複数の三角形で区分しない場合と比較して、より強い荷重を受け止めることができる。すなわち、本テントは、第1領域への荷重に対する強度をより向上することができ、延いてはテント全体としての強度を更により向上させることができる。なお、このとき追加される部材は実質的にないので、テント1の重量の増加は実質的になく、テンション構造5も線状部材52の取付位置以外にはほとんど変更はない。
【0070】
本実施の形態において、好ましい態様として、テント1では、支持部材51は、第1領域Rの形状である、正多角形の重心に配置される。このように、支持部材51がその正多角形の重心に配置されると、第1領域Rのテンション構造5における各線状部材52を、重心に配置された支持部材51からバランスよく正多角形の各頂点へ配置できる。例えば、図10に示すように、第1領域Rは、シート部材21の(イコシドデカヘドロンの)正五角形の領域に相当しており、支持部材51がその正五角形の重心に配置されると、第1領域Rのテンション構造5における各線状部材52を、重心に配置された支持部材51からバランスよく正五角形の各頂点へ向けて配置することができる。それにより、第1領域Rへの荷重K10を、支持部材51から各線状部材52へバランスよく分散することができ、更に分散された荷重K11〜K15を正五角形(正多角形)の各頂点において各線状部材52から各区画ポール3pへバランスよく分散することができる。したがって、テント1は、多角形が正五角形(正多角形)ではない場合と比較して、支持部材51が傾いてしまうなど不安定になることなく、安定してより強い荷重を受け止めることができる。すなわち、テント1は第1領域Rへの荷重に対してより安定的に強度を向上できる。
【0071】
本実施の形態において、好ましい態様として、図9に示すように、テントシート2には少なくとも互いに隣り合う第1領域R及び第1領域Rが区画されている。ただし、互いに隣り合うという場合、図9に示すように頂点を介して隣り合っていてもよいし、テントシート2の多面体の形状によっては共有する辺を介して隣り合っていてもよい。その互いに隣り合う第1領域R及び第1領域Rのうちの一方におけるテンション構造5における線状部材52と、他方におけるテンション構造5における線状部材52とは、互いに隣り合う第1領域R、Rに共通の区画ポール3p、3pを介して、互いに結合されている。
そのため、一方の第1領域Rへの荷重は、まず、その一方の第1領域R内において、支持部材51及び複数の線状部材52を介して複数の区画ポール3p(共通の区画ポール3pを含む)へ分散されつつ伝達される。続いて、共通の区画ポール3pに伝達された荷重は、他方の第1領域Rにおいて、その共通の区画ポール3pに結合する線状部材52に伝達され、更に支持部材51を介して他の線状部材52及び他方の第1領域Rのテントシート2へ分散されて伝達される。次いで、他の線状部材52に伝達された荷重は、他の線状部材52を介して他方の第1領域Rの他の区画ポール3pへ分散されつつ伝達される。このように、テント1は、第1領域Rへの荷重を、その第1領域Rのテントシート2やその第1領域R内の複数の区画ポール3p及びテンション構造5だけでなく、その第1領域Rに隣接する他の第1領域Rのテントシート2や他の第1領域R内の複数の線状部材52及び複数の区画ポール3pにも分散して受け止めることになる。その結果、テント1は、第1領域Rへの荷重を一つの第1領域R内の構成だけで受け止める場合と比較して、更により強い荷重を受け止めることができる。すなわち、テントは、第1領域Rへの荷重に対する強度を更により向上でき、延いてはテント1全体としての強度を更により向上できる。
【0072】
更に、本実施の形態において、好ましい態様として、図3に示すように、テントシート2には互いに隣り合う第1領域R、Rを含む複数の前記第1領域Rが区画されている。そして、テントシート2は、上方から見て閉鎖形状(略環状に連続する曲面)を形成する曲面(例示:筒や柱における筒や柱を一周する側面、球体における少なくとも帯状の表面(球帽、球帯))であって、この場合にはドーム部11の表面を有している。そのとき、複数の第1領域Rは、頂点又は辺が互いに接するように(ただし、図3の場合には頂点が接するように)、閉鎖形状の曲面(ドーム部11の表面)に沿って連続的に配置されている。すなわち、正五角形の複数の第1領域Rは、頂点が互いに接するように、ドーム部11の表面に沿って連続的に五つ並んでいる。すなわち、隣り合う第1領域R同士が頂点又は辺が互いに接するように区画ポール3pを共用しながら、複数の第1領域Rがテントシート2のドーム部11の側面に並んで一周している。そのため、テント1は、いずれかの第1領域Rへの荷重を、その第1領域Rのテントシート2やその第1領域R内の複数の区画ポール3p及びテンション構造5だけでなく、その第1領域Rの両側に隣接する他の第1領域Rのテントシート2や他の第1領域R内の複数の線状部材52及び複数の区画ポール3pに分散して受け止めることができる。更に、その第1領域Rの両側に隣接する他の第1領域Rが受け止める荷重を、更に隣接する更に他の第1領域Rのテントシート2や更に他の第1領域R内の複数の線状部材52及び複数の区画ポール3pに分散して受け止めることができる。このようにして、いずれかの第1領域Rへの荷重を、閉鎖形状を形成する曲面(ドーム部11の表面)のテントシート2に沿って並んだ複数の第1領域R全体で受け止めることになる。その結果、テント1は、第1領域Rへの荷重を一つの第1領域R内の構成だけで受け止める場合と比較して、更により強い荷重を受け止めることができる。すなわち、テント1は、第1領域Rへの荷重に対する強度を更により向上することができ、延いてはテント1全体としての強度を更により向上させることができる。
【0073】
次に、案内手段について説明する。本実施の形態では、好ましい形態として、テント1が複数の案内手段を備えている。図12は実施の形態に係る案内手段41の構成例を示す斜視図である。ただし、この図において、テンション構造5の記載を省略している。テント1では、複数のポール3の各々は、他の複数のポール3と、テントシート2上の複数の箇所で交差している。ここで、それら複数の箇所又はそれらの周辺において、一本のポールが他の複数のポール3の各々の上側を交差するか下側を交差するかによって、テント1における風等に対する強度が変化する。そこで、本実施の形態において、好ましい態様として、テント1の複数のスリーブ4の各々では、それら複数の箇所又はそれらの周辺において、ポール3及び/又は他のポール3の交差をガイドする複数の案内手段41を備えている。具体的には、案内手段41は、所定のポール3が他のポール3の上側を通過すべきときには、所定のポール3が上側を通り、他のポール3が下側を通るように両ポール3をガイドする。一方、案内手段41は、所定のポール3が他のポール3の下側を通過すべきときには、所定のポール3が下側を通り、他のポール3が上側を通るように両ポール3をガイドする。このように、テント1は、複数のスリーブ4の各々に複数の案内手段41を設けることで、複数のポール3を設計通りに交差させて、設計通りの強度を発揮することができ、安全性を確保することができる。
【0074】
そして、更に、本実施の形態において、好ましい態様として、複数の案内手段41を用いることにより、どのポール3を取っても、そのポール3が他のポール3よりもテントシート2に近い側(他のポール3の下側)を通るように交差する場合と、遠い側(更に他のポール3の上側)を通るように交差する場合とが交互に並ぶように、案内手段41は複数のポール3をガイドしている。
【0075】
このように、テント1では、複数のスリーブ4の各々がポール3をガイドする案内手段41を備えることより、使用者がテント1を組み立てるとき、スリーブ4にポール3を挿通させるだけで、案内手段41により、そのポール3と他の複数のポール3とを所望の位置関係に容易に配置することができる。特に、そのポール3が他の複数のポール3の各々よりもテントシート2に近い側で交差する場合と遠い側で交差する場合とが交互に並ぶように、そのポール3を設置できる。それにより、複数のポール3を強度が高い、状態設計通りの配置で設置することができる。これらにより強度の維持及び安全性の確保と、組み立て易さとをいずれも満足できる。
【0076】
本実施の形態において、好ましい態様として、複数の交差用スリーブ4qは、テントシート2に連続的に形成された複数のスリーブ4に含まれている。そのため、ポール3をスリーブ4に挿通したとき、途中でスリーブ4から飛び出すことなく、テントシート2にポール3を確実に適切に設置できるとともに、複数のポール3を強度が高い配置で設置できる。強度の維持及び安全性の確保と、組み立て易さとをいずれも満足できる。
【0077】
本実施の形態において、好ましい態様として、第1領域Rを形成する複数の第1スリーブ4aの案内手段41は、多角形の頂点に配置されている。多角形の頂点に案内手段41が配置されていることで、第1ポール3aを複数の多角形の辺(連鎖境界線23)に沿って延在するように第1スリーブ4aに挿通することができる。したがって、テント1を組み立てるとき、第1ポール3aを第1スリーブ4aにより容易に挿通させることができるので、テントを容易に組み立てることが可能となる。
【0078】
図12に示すように、案内手段41のうちの案内手段41U1は、互いに交差する二本のポールに3−1、3−2に対応した、互いに交差する二つの交差用スリーブ4q−1、4q−2で形成されている。案内手段41のうちの案内手段41D1では、互いに交差する二本のポール3−1、3−3に対応した、互いに交差する二つの交差用スリーブ4q−1、4q−3で形成されている。
【0079】
案内手段41U1では、互いに交差する二本のポール3のうちの一方のポール3−1は、互いに交差する二つの交差用スリーブ4qのうちの一方である、上側を通る交差用スリーブ4q−1に挿通され、互いに交差する二本のポール3のうちの他方のポール3−2は、互いに交差する二つの交差用スリーブ4qのうちの他方である、下側を通る交差用スリーブ4q−2に挿通されている。一方、案内手段41D1では、互いに交差する二本のポール3のうちの一方であるポール3−1は、互いに交差する二つの交差用スリーブ4qのうちの一方である、下側を通る交差用スリーブ4q−1に挿通され、互いに交差する二本のポール3のうちの他方のポール3−2は、互いに交差する二つの交差用スリーブ4qのうちの他方である、上側を通る交差用スリーブ4q−2に挿通されている。したがって、案内手段41U1及び案内手段41D1は、ポール3−1が他のポール3−2よりもテントシート2から遠い側を通るように交差する場合と、ポール3−1が他のポール3−3よりもテントシート2に近い側を通るように交差する場合とが交互に並ぶように、ポール3−1をガイドしている。
【0080】
このようなテント1では、案内手段41U1及び41D1により、互いに交差する二本のポール3−1、3−2及び3−1、3−3の各々を、テントシート2に近い側及び遠い側のうちの所望の側に設置して、確実に互いに交差させることができる。それにより、複数のポール3を平織りのように配置でき、テント1の強度の維持及び安全性の確保と、組み立て易さとをいずれも満足できる。
【0081】
図13は実施の形態に係る案内手段41の他の構成例を示す斜視図である。ただし、この図において、テンション構造5の記載を省略している。案内手段41のうちの案内手段41U2は、互いに交差する二本のポール3−1、3−2のうちの一方であるポール3−2に対応した交差用スリーブ4q−2で形成されている。案内手段41のうちの案内手段41D2は、互いに交差する二本のポール3−1、3−3のうちの一方であるポール3−1に対応した交差用スリーブ4q−1で形成されている。
【0082】
案内手段41U2では、互いに交差する二本のポール3のうちの一方のポール3−2は、ポール3−1の下側を通る交差用スリーブ4q−2に挿通され、互いに交差する二本のポール3のうちの他方のポール3−1は、交差用スリーブ4qに挿通されていない。一方、案内手段41D2では、互いに交差する二本のポール3のうちの一方のポール3−1は、ポール3−3の下側を通る交差用スリーブ4q−1に挿通され、互いに交差する二本のポール3のうちの他方のポール3−3は、交差用スリーブ4qに挿通されていない。したがって、案内手段41U2及び案内手段41D2は、ポール3−1が他のポール3−2よりもテントシート2から遠い側を通るように交差する場合と、ポール3−1が他のポール3−3よりもテントシート2に近い側を通るように交差する場合とが交互に並ぶように、ポール3−1をガイドしている。
【0083】
このようなテント1では、案内手段41U2及び41D2が、互いに交差する二本のポール3−1、3−2及び3−1、3−3の各々を、テントシート2に近い側及び遠い側のうちの所望の側に設置して、確実に互いに交差させることができる。それにより、複数のポール3を平織りのように配置でき、テント1の強度の維持及び安全性の確保と、組み立て易さとをいずれも満足できる。
【符号の説明】
【0084】
1 テント
2 テントシート
3 ポール
4 スリーブ
4a 第1スリーブ
11 ドーム部
12 裾部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13