【実施例1】
【0036】
本実施例では、本発明の樹脂成形装置の一例と、それを用いた樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0037】
図1の断面図に、本実施例における樹脂成形装置の構成を模式的に示す。図示のとおり、この樹脂成形装置1000は、上型(一方の型)1100及び下型(他方の型)1200を含む成形型と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300と、下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1400とを主要構成要素として含む。また、樹脂成形装置1000は、さらに、離型フィルム吸着機構(
図1では、図示せず)及びエアベント開閉機構1330を、主要構成要素として含む。エアベント開閉機構1330は、本実施例では、後述するように、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300の構成要素の一つであるが、本発明は、これに限定されない。例えば、エアベント開閉機構1330が、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300とは別の、樹脂成形装置1000の構成要素の一つであってもよい。
【0038】
上型(一方の型)1100は、上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101と、上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1102及び1103とを含む。図示のとおり、上型キャビティブロック1101は、2つ並列に配置されている。上型キャビティ枠部材を構成する部材のうち、上型キャビティ枠部材1103は、2つの上型キャビティブロック1101に挟まれるように配置されている。上型キャビティ枠部材1102は、図示のとおり、上型キャビティブロック1101の外側に配置されている。上型キャビティ枠部材には、上型キャビティ枠部材1102及び1103に囲まれるように摺動孔1105が形成されている。上型キャビティブロック1101は、摺動孔1105内を、前記成形型の型開閉方向に移動可能である。なお、前記「型開閉方向」は、
図1では、上型1100及び下型1200の開閉方向であり、すなわち、図の上下方向である。さらに、図示のとおり、上型キャビティブロック1101における下型(他方の型)1200との対向面と、上型キャビティ枠部材1102及び1103の内側面とで空間を囲むことにより上型キャビティ(一方の型キャビティ)1106を形成可能である。そして、後述するように、樹脂成形される被成形物を、離型フィルムを介して上型キャビティブロック1101によって押圧可能である。また、上型キャビティ枠部材1102の下端には、エアベント溝1104が形成されている。
【0039】
なお、
図1においては図示していないが、上型キャビティ枠部材1103には、さらに、樹脂成形時の余剰樹脂(不要樹脂)を収容する空間である余剰樹脂部(不要樹脂部、またはカル部ともいう)が形成されていてもよい。
【0040】
下型(他方の型)1200は、下型キャビティブロック(他方の型キャビティブロック)1201、下型サイドブロック(他方の型サイドブロック)1202、及びポットブロック1203を主要構成要素とし、さらに、下型キャビティブロックピラー(他方の型キャビティブロックピラー)1204、下型弾性部材(他方の型弾性部材)1205、及びプランジャ1212を含む。なお、プランジャ1212は、前記のように下型1200の構成要素の1つであってもよいが、下型1200とは別の、樹脂成形装置1000の構成要素の1つであってもよい。下型キャビティブロック1201は、2つあり、それぞれ、上面が上型キャビティブロック1101に対向するように配置されている。ポットブロック1203は、2つの下型キャビティブロック1201に挟まれるように配置されている。下型サイドブロック1202は、図示のとおり下型キャビティブロック1201の外側に配置されている。そして、2つの下型キャビティブロック1201は、それぞれ、下型サイドブロック1202及びポットブロック1203に挟まれるように配置されている。ポットブロック1203には、上下方向に貫通する孔であるポット1211が形成されている。プランジャ1212は、ポット1211内を上下動可能である。後述するように、プランジャ1212を上昇させることで、ポット1211内の流動性樹脂を、上型キャビティ1106内に押し込むことが可能である。
【0041】
下型キャビティブロックピラー1204は、下型キャビティブロック1201の下面に取り付けられている。下型弾性部材1205は、下型キャビティブロックピラー1204を取り囲むように配置され、型開閉方向(図上下方向)に伸縮可能である。
【0042】
上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300は、上型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)1301と、上型キャビティブロック保持部材(一方の型キャビティブロック保持部材)1302と、ロードセル(押圧力測定機構)1303と、上型キャビティブロックピラー(一方の型キャビティブロックピラー)1304と、上型楔形機構(一方の型楔形機構、又は上型コッター機構ともいう)1310と、上型第2楔形部材保持部材(一方の型第2楔形部材保持部材、又は、上型第2コッター保持部材、若しくは一方の型第2コッター保持部材ともいう)1321と、上型第2楔形部材保持部材の弾性部材(他方の型第2楔形部材保持部材の弾性部材)1322と、エアベント開閉機構1330と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材)1340と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材)1341と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材)1342及び1343とを含む。プラテン1340は、一枚の板状部材であり、上型1100の上方に、上型1100全体を覆うように配置されている。また、後述するように、プラテン1340には、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300の他の部材が、直接又は間接的に取り付けられている。
【0043】
上型キャビティブロック保持部材1302は、図示のとおり、プラテン1340を上下方向に貫通しており、上下動可能である。一方の型キャビティブロック保持部材1302の下端には、上型キャビティブロックピラー1304が取り付けられている。上型キャビティブロックピラー1304の下端には、上型キャビティブロック1101が取り付けられている。また、後述するように、上型キャビティブロック1101は、上型キャビティブロックピラー1304に対し、脱着可能である。上型キャビティブロック駆動機構1301は、上型キャビティブロック保持部材1302の上端に接続されている。上型キャビティブロック駆動機構1301により上型キャビティブロック保持部材1302を上下動させることで、上型キャビティブロック1101を上下動(すなわち、型開閉方向に移動させることが)可能である。
【0044】
上型楔形機構1310は、図示のとおり、上型第1楔形部材(一方の型第1楔形部材、上型第1コッター、又は一方の型第1コッターともいう)1311aと、上型第2楔形部材(一方の型第2楔形部材、上型第2コッター、又は一方の型第2コッターともいう)1311bと、上型楔形部材動力伝達部材(一方の型楔形部材動力伝達部材、上型コッター動力伝達部材、又は一方の型コッター動力伝達部材ともいう)1312と、上型楔形部材駆動機構(一方の型楔形部材駆動機構、上型コッター駆動機構、又は一方の型コッター駆動機構ともいう)1313とを含む。
図1に示すように、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとは、それぞれ、厚み方向(図上下方向)における一方の面が、テーパ面である。より具体的には、図示のとおり、上型第1楔形部材1311aの下面及び上型第2楔形部材1311bの上面が、それぞれテーパ面である。上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとは、互いのテーパ面が対向するように、配置されている。
【0045】
また、上型第1楔形部材1311aは、上型楔形部材動力伝達部材1312を介して上型楔形部材駆動機構1313に連結している。そして、上型楔形部材駆動機構1313により、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとにより形成される一対の上型楔形部材(一対の一方の型楔形部材。以下、単に「一対の上型楔形部材」、「上型楔形部材」又は「上型コッター」ということがある。)のテーパ面のテーパ方向(図左右方向)にスライドさせることで、前記一対の上型楔形部材の厚み方向の長さを変化可能である。例えば、上型第1楔形部材1311aをその先端方向に向けてスライドさせると、上型第2楔形部材1311bは、上型第1楔形部材1311aに対し相対的に逆方向にスライドすることになる。そうすると、前記一対の上型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さが大きくなる。また、例えば、逆に、上型第1楔形部材1311aをその後端方向に向けてスライドさせることで、前記一対の上型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さを小さくすることが可能である。これにより、後述するように、上下方向(型開閉方向)における上型キャビティブロック1101の位置を変更可能である。すなわち、これにより、上型キャビティ1106の深さを適切な深さに調節可能である。
【0046】
なお、
図1の例では、上型楔形部材駆動機構1313により、前記一対の上型楔形部材の上側の上型第1楔形部材1311aを水平(図左右)方向に摺動(スライド)させることができる。しかし、これに限定されず、例えば、上型楔形部材駆動機構1313により、下側の上型第2楔形部材1311bをスライド可能であっても良いし、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの両方をスライド可能であっても良い。また、上型楔形部材駆動機構1313としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0047】
また、
図1では、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bのそれぞれ一方の面の全体がテーパ面である。しかし、本発明はこれに限定されず、少なくとも一方の楔形部材を、前記テーパ面に沿ってスライドさせることが可能であれば良い。例えば、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの一方又は両方において、その一方の面の一部のみがテーパ面であっても良い。より具体的には、例えば、図示の上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの少なくとも一方において、一方の面の先端側(細い側)のみがテーパ面であり、根本側(太い側)は水平面であっても良い。
【0048】
上型第2楔形部材保持部材1321の上面は、上型第2楔形部材1311bの下面と接している。一方、プラテン1340の下面は、上型第1楔形部材1311aの上面と接している。すなわち、前記一対の上型楔形部材は、上型第2楔形部材保持部材1321の上面と上型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材1340の下面とに挟まれるように配置されている。そして、上型第2楔形部材保持部材の弾性部材1322及び上型第2楔形部材保持部材1321を用いて、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとが接した状態を保っている。
【0049】
上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材は、上部の部材1342及び下部の部材1343により形成される。上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1343は、図示のとおり、その下面に、上型キャビティ枠部材1102及び1103を取り付けることができる。後述するように、上型キャビティ枠部材1102及び1103は、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1343に対し着脱可能である。また、上型キャビティブロックピラー1304は、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343を上下方向に貫通しており、上下動可能である。上型第2楔形部材保持部材の弾性部材1322は、上型第2楔形部材保持部材1321の下面と上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342の上面とに挟まれるように配置され、上下方向に伸縮可能である。上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341は、その上端がプラテン1340の下面に、下端が上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342の上面に、それぞれ接続されている。また、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341は、上型第2楔形部材保持部材1321と、上型キャビティブロック保持部材1302と、前記一対の上型楔形部材とを取り囲むように配置されている。
【0050】
エアベント開閉機構1330は、エアベントピン動力機構1331と、エアベントピン1332とを含む。エアベントピン1332は、図示のとおり、上型キャビティ枠部材1102の上部と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341、並びにプラテン1340を、上下方向に貫通しており、上下動可能である。エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を上下動させることで、後述するように、エアベント溝1104を開閉可能である。なお、エアベントピン動力機構1331としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0051】
なお、上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300に設置される「上型キャビティブロック位置変更機構(一方の型キャビティブロック位置変更機構)」は、本実施例では、上型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)1301と、上型楔形機構(一方の型楔形機構)1310とを含む。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、上型キャビティブロック位置変更機構(一方の型キャビティブロック位置変更機構)が、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。
【0052】
下型キャビティブロック位置変更機構設置部1400は、図示のとおり、下型楔形機構(他方の型楔形機構)1410と、下型取付部材(他方の型取付部材)1421と、プラテン(下型第2楔形部材保持部材、又は、他方の型第2楔形部材保持部材、下型第2コッター保持部材、若しくは他方の型第2コッター保持部材ともいう)1422とを含む。
【0053】
下型楔形機構1410は、図示のとおり、下型第1楔形部材(他方の型第1楔形部材、下型第1コッター、又は他方の型第1コッターともいう)1411aと、下型第2楔形部材(他方の型第2楔形部材、下型第2コッター、又は他方の型第2コッターともいう)1411bと、下型楔形部材動力伝達部材(他方の型楔形部材動力伝達部材、下型コッター動力伝達部材、又は他方の型コッター動力伝達部材ともいう)1412と、下型楔形部材駆動機構(他方の型楔形部材駆動機構、下型コッター駆動機構、又は他方の型コッター駆動機構ともいう)1413とを含む。
図1に示すように、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとは、それぞれ、厚み方向(図上下方向)における他方の面が、テーパ面である。より具体的には、図示のとおり、下型第1楔形部材1411aの上面及び下型第2楔形部材1411bの下面が、それぞれテーパ面である。下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとは、互いのテーパ面が対向するように、配置されている。
【0054】
また、下型第1楔形部材1411aは、下型楔形部材動力伝達部材1412を介して下型楔形部材駆動機構1413に連結している。そして、下型楔形部材駆動機構1413により、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとにより形成される一対の下型楔形部材(一対の他方の型楔形部材。以下、単に「一対の下型楔形部材」、「下型楔形部材」又は「下型コッター」ということがある。)のテーパ面のテーパ方向(図左右方向)にスライドさせることで、前記一対の下型楔形部材の厚み方向の長さを変化可能である。例えば、下型第1楔形部材1411aをその先端方向に向けてスライドさせると、下型第2楔形部材1411bは、下型第1楔形部材1411aに対し相対的に逆方向にスライドすることになる。そうすると、前記一対の下型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さが大きくなる。また、例えば、逆に、下型第1楔形部材1411aをその後端方向に向けてスライドさせることで、前記一対の下型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さを小さくすることが可能である。これにより、後述するように、上下方向(型開閉方向)における下型キャビティブロック1201の位置を変更可能である。これにより、例えば、後述する基板(被成形物)10の厚みがばらついても(例えば、後述する
図6における左右の基板10の厚みが異なっても)、各下型キャビティブロック1201(例えば、
図6における左右の下型キャビティブロック1201)の位置を適切に変更(調整)することにより、左右の基板10を適切な押圧力でクランプすることが可能となる。
【0055】
なお、
図1の例では、下型楔形部材駆動機構1413により、前記一対の下型楔形部材の下側の下型第1楔形部材1411aを水平(図左右)方向に摺動(スライド)させることができる。しかし、これに限定されず、例えば、下型楔形部材駆動機構1413により、上側の下型第2楔形部材1411bをスライド可能であっても良いし、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの両方をスライド可能であっても良い。また、下型楔形部材駆動機構1413としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0056】
また、
図1では、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bのそれぞれ一方の面の全体がテーパ面である。しかし、本発明はこれに限定されず、少なくとも一方の楔形部材を、前記テーパ面に沿ってスライドさせることが可能であれば良い。例えば、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの一方又は両方において、その一方の面の一部のみがテーパ面であっても良い。より具体的には、例えば、図示の下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの少なくとも一方において、一方の面の先端側(細い側)のみがテーパ面であり、根本側(太い側)は水平面であっても良い。また、
図1では、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとが接していないが、上型楔形機構1310と同様に、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとが接した状態を保つようにしてもよい。
【0057】
下型第2楔形部材保持部材1422の上面は、下型第1楔形部材1411aの下面と接している。一方、下型キャビティブロックピラー1204の下端は、下型第2楔形部材1411bの上面に接続されている。すなわち、前記一対の下型楔形部材は、下型第2楔形部材保持部材1422の上面と下型キャビティブロックピラー1204の下端とに挟まれるように配置されている。そして、前記一対の下型楔形部材の厚み方向の長さを変化させることで、下型キャビティブロック1201を上下動可能である。
【0058】
下型取付部材1421は、下型第2楔形部材保持部材1422の上方に配置され、下型第2楔形部材保持部材1422に対し、相対的に上下しないように固定されている。下型取付部材1421と下型第2楔形部材保持部材1422とに挟まれた空間内において、前記一対の下型楔形部材を前述のように駆動させ、その厚み方向の長さを変化させることが可能である。下型取付部材1421の上面には、下型サイドブロック1202及びポットブロック1203が設置されている。また、下型キャビティブロックピラー1204は、下型取付部材1421内を上下方向に貫通しており、上下動可能である。下型弾性部材1205は、下型キャビティブロック1201の下面と下型取付部材1421の上面とに挟まれており、前述のとおり、型開閉方向(図上下方向)に伸縮可能である。
【0059】
なお、下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1400に設置される「下型キャビティブロック位置変更機構(他方の型キャビティブロック位置変更機構)」は、本実施例では、下型楔形機構(他方の型楔形機構)1410を含む。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、下型キャビティブロック位置変更機構(他方の型キャビティブロック位置変更機構)が、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。
【0060】
図1の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法は、例えば、
図2〜16に示すようにして行うことができる。
【0061】
まず、
図2〜4に示すようにして、上型キャビティ1106の深さを変更する(一方の型キャビティ深さ変更工程)。具体的には、以下のとおりである。
【0062】
まず、
図2に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印c1の方向に下降させる。このとき、上型キャビティ1106が、所定の(目的とする)深さ未満になるまで上型キャビティブロック1101を下降させる。後述するように、再度上型キャビティブロック1101を上昇させることで、上型キャビティ1106を所定の(目的とする)深さとする。
【0063】
つぎに、
図3に示すとおり、左右の上型第1楔形部材1311aを、それぞれ、その先端方向(矢印e1の方向)に移動させる。これにより、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bからなる一対の上型楔形部材の、厚み方向(型開閉方向、図上下方向)の長さが大きくなる。そして、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321が、上型第2楔形部材1311bにより押し下げられて下降する。このとき、上型第2楔形部材保持部材1321を、所定の(目的とする)上型キャビティ1106の深さに対応する位置まで下降させる。
【0064】
つぎに、
図4に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印d1の方向に上昇させる。このとき、図示のとおり、上型キャビティブロック保持部材1302が上型第2楔形部材保持部材1321に接触するまで上昇させる。これにより、左右のそれぞれの上型キャビティ1106が、目的とする深さ(図右側ではD1、左側ではD2)となる。
【0065】
なお、本実施例では、図示及び説明の便宜上、図の左右で上型キャビティ1106の深さが異なる例を示している。しかし、本発明において、成形型の型キャビティの深さを変更する例は、これに限定されない。具体的には、例えば、1回の樹脂成形品の製造方法においては、1つの樹脂成形装置における全ての成形型の型キャビティの深さを同じにし、再度樹脂成形品の製造方法を行う場合に、必要に応じ、それよりも前の回と前記型キャビティの深さを変えて対応してもよい。
【0066】
以上のようにして上型キャビティ1106の深さを変更した後、例えば、
図5〜16に示すようにして樹脂成形を行うことができる。具体的には、以下のとおりである。
【0067】
まず、
図5に示すように、上型1100の型面(上型面)に離型フィルム40を供給する。そして、吸着等によって上型面を離型フィルム40で被覆する(一方の型面被覆工程)。吸着には、後述するように、離型フィルム吸着機構(
図5では、図示せず)を用いてもよい。また、離型フィルム40を吸着させる「上型1100の型面(上型面)」は、図示のとおり、上型キャビティ1106の型面及び上型キャビティ枠部材1102の下面を含む。さらに、このとき、図示のとおり、エアベント溝1104内部にも離型フィルム41を供給する。
図5の状態では、エアベント溝1104が塞がれていないため、エアベント溝1104を介して離型フィルム40を吸着できる。
【0068】
なお、離型フィルム40の吸着は、例えば、
図23に示すようにして行うことができる。
図23においては、樹脂成形装置1000が、離型フィルム吸着機構1351を有する。離型フィルム吸着機構1351は、特に限定されないが、例えば、吸引ポンプ等を用いることができる。プラテン1340と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343と、上型キャビティ枠部材1102及び1103とには、離型フィルム吸着配管1352が設けられている。離型フィルム吸着配管1352は、枝分かれしており、枝分かれしたそれぞれの一端が、上型キャビティ枠部材1102及び1103の下端に、離型フィルム吸着穴1353として開口している。そして、離型フィルム吸着配管1352の他端から、離型フィルム吸着機構1351により吸引することで、離型フィルム吸着穴1353を介して、離型フィルム40及び41を上型面及びエアベント溝1104に吸着させることができる。
【0069】
また、離型フィルム40及び41は、例えば、離型フィルム搬送機構(図示せず)等により、成形型の位置まで搬送し、その後、前述のとおり上型1100の型面(上型面)に供給してもよい。
【0070】
また、本実施例では、離型フィルム40及び41を用いる例を示している。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、離型フィルムを用いなくてもよい。
【0071】
つぎに、
図6に示すとおり、ポット1211内にタブレット(樹脂材料)20aを供給する。これとともに、図示のとおり、下型キャビティブロック1201上面に被成形品(被成形物)10を供給する(被成形物供給工程)。樹脂材料20aは、例えば、熱硬化性樹脂でもよいが、これに限定されず、例えば、熱可塑性樹脂でもよい。このとき、あらかじめ、ヒータ(図示せず)により、上型1100及び下型1200を、又は下型1200のみを、加熱し昇温させておいてもよい。また、例えば、樹脂材料20a及び被成形品10は、それぞれ、搬送機構(図示せず)により成形型の位置まで搬送し、成形型に供給してもよい。
【0072】
また、本実施例では、被成形品(被成形物)10は、基板であり、以下、単に「基板10」という場合がある。図示のとおり、基板10は、その一方の面に、チップ1と、ワイヤー2とが載置(固定)されている。本実施例の樹脂成形品の製造方法では、図示のとおり、基板10の、チップ1及びワイヤー2固定面が、上(上型キャビティ1006の側)を向いており、後述するように、この面を樹脂封止して樹脂成形品(電子部品)を製造する。ただし、本発明において、被成形品(被成形物)は、これに限定されない。前記被成形品(被成形物)は、例えば、前述のとおり、リードフレーム、配線基板、ウェハー、セラミック基板等であってもよいし、その他の任意の被成形品(被成形物)であってもよい。
【0073】
つぎに、
図7に示すとおり、駆動源(図示せず)により、下型1200を矢印X1の方向に上昇させ、基板10を、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟む。このとき、図示のとおり、あらかじめ昇温された下型1200の熱により、樹脂材料20aが溶融して溶融樹脂(流動性樹脂)20bに変化している。
【0074】
つぎに、
図8に示すとおり、下型1200を矢印X2の方向にさらに上昇させる。これにより、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟まれた基板10に対し、下型キャビティブロック1201による上向きの圧力をかける。このようにして、基板10を、
下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟んでクランプする(被成形物固定工程)。
【0075】
つぎに、
図9に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを、その先端方向(矢印a1の方向)に移動させ、下型第2楔形部材1411bに接触させる。この位置で下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bを固定することで、下型キャビティブロック1201の上下方向の位置を、この位置で固定させる。
【0076】
つぎに、
図10に示すとおり、下型1200を矢印Y1の方向に下降させ、いったん型を開く。これにより、いったん下型第1楔形部材1411aを下型第2楔形部材1411bから離す。このようにするのは、つぎの
図11で、下型第1楔形部材1411aを動かしやすくするためである。
【0077】
つぎに、
図11に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを先端方向(矢印a2の方向)にわずかに移動させる。これにより、基板10の締代分を考慮して、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bからなる一対の下型コッターの厚み方向の長さを若干増大させる。
【0078】
つぎに、
図12に示すとおり、下型1200を矢印X3の方向に上昇させ、再度、成形型を締める。さらに、減圧機構(図示せず)を用いて、成形型内(上型キャビティ1106内等)を減圧する。このとき、
図13に示すように、下型1200に矢印X4の方向に上向きの力を加え続ける。
【0079】
つぎに、
図14に示すとおり、プランジャ1212を上向きに(矢印g1の方向に)移動させ、ポット1212内の流動性樹脂20bを上型キャビティ1106内に押し込む。
【0080】
さらに、
図15に示すとおり、エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を下向きに(矢印h1の方向に)押し下げ、エアベント溝1104を塞ぐ。その後、同図に示すとおり、プランジャ1212を、矢印g2の方向に、さらに上昇させ、上型キャビティ1106内への流動性樹脂20bの最終充填を行う。このとき、上型キャビティブロック1101は、上型楔形機構1310を用いて固定されている(第2一方の型キャビティブロック固定工程)。さらに、下型キャビティブロック1201は、下型楔形機構1410を用いて固定されている。このように、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が固定されていることで、上型キャビティ1106内に樹脂圧が加わっても、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が型開閉方向に移動することを抑制又は防止できる。
【0081】
さらに、
図16に示すとおり、流動性樹脂20bが硬化して硬化樹脂(封止樹脂)20及び余剰樹脂(不要樹脂部)20dとなった後に、下型1200を矢印Y2の方向に下降させ、型開きする。なお、流動性樹脂20bを硬化させて硬化樹脂(封止樹脂)20とする方法は、特に限定されない。例えば、流動性樹脂20bが熱硬化性樹脂の場合は、さらに加熱を続けることによって硬化させてもよい。また、例えば、流動性樹脂20bが熱可塑性樹脂の場合は、成形型への加熱を停止し、そのまま放冷することによって硬化させてもよい。このようにして、基板10の一方の面(チップ1及びワイヤー2固定面)が硬化樹脂(封止樹脂)20で封止された樹脂成形品(電子部品)を製造することができる。その後、アンローダ(図示せず)等で前記樹脂成形品を樹脂成形装置1000の外に運び出して回収する。
【0082】
なお、本発明の樹脂成形品の製造方法において、前記「樹脂成形工程」は、
図2〜16で説明した方法に限定されない。例えば、
図2〜16ではトランスファ成形の例を示したが、本発明では、圧縮成形等の他の任意の樹脂成形方法を用いることができる。また、トランスファ成形の方法も、
図2〜16の方法に限定されず、任意である。
【0083】
本発明では、例えば、本実施例で説明したように、被成形品の厚みに応じて一方の型キャビティの深さを変更可能である。また、本発明の樹脂成形装置によれば、成形型の部品点数を少なくすることが可能で、前記成形型のコストを低くすることが可能である。
【0084】
なお、前記一方の型キャビティブロックの位置変更には、例えば、前記一方の型楔形機構を用いてもよい。また、前記位置変更には、必要に応じ、例えば、本実施例で説明したように、前記一方の型キャビティブロック駆動機構、前記他方の型楔形機構等を用いてもよい。
【0085】
また、本発明は、本実施例には限定されず、任意の変更が可能である。例えば、本実施例では、前記「一方の型」が上型で、前記「他方の型」が下型である。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、逆に、前記「一方の型」が下型で、前記「他方の型」が上型であってもよい。
【0086】
[実施例2]
つぎに、本発明の別の実施例について説明する。
【0087】
本実施例では、実施例1の樹脂成形装置(
図1)を用いた樹脂成形品の製造方法の別の一例について説明する。より具体的には、上型キャビティ1106の深さを変更する前記「一方の型キャビティ深さ変更工程」を、実施例1の方法(
図2〜4)とは異なる方法により行う例について説明する。
【0088】
前記「一方の型キャビティ深さ変更工程」は、例えば、
図17〜19に示すようにして行うことができる。具体的には、まず、
図17に示すように、
図1と同じ樹脂成形装置1000を準備する。
図17では、初期の上型キャビティ1006の深さが、左右で同じD0となっている。
【0089】
まず、
図18に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印c101の方向に下降させる。これにより、左右の上型キャビティ1006の深さを、それぞれ、所定の(目的とする)深さとする。
【0090】
つぎに、
図19に示すとおり、左右の上型第1楔形部材1311aを、それぞれ、その先端方向(矢印e101の方向)に移動させる。これにより、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bからなる一対の上型楔形部材の、厚み方向(型開閉方向、図上下方向)の長さが大きくなる。そして、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321が、上型第2楔形部材1311bにより押し下げられて下降する。このとき、
図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321が上型キャビティブロック保持部材1302に接触するまで下降させる。以上のようにして、上型キャビティ1106の深さを変更する「一方の型キャビティ深さ変更工程」を行うことができる。その後の樹脂成形は、例えば、実施例1の
図5〜16と同様にして行うことができる。
【0091】
なお、
図17〜19では、図示及び説明の便宜上、図の左右で上型キャビティ1106の深さを異なる深さに変更する例を示した。しかし、実施例1でも説明したとおり、本発明において、成形型の型キャビティの深さを変更する例は、これに限定されない。具体的には、例えば、実施例1で説明したとおり、1回の樹脂成形品の製造方法においては、1つの樹脂成形装置における全ての成形型の型キャビティの深さを同じにし、再度樹脂成形品の製造方法を行う場合に、必要に応じ、それよりも前の回と前記型キャビティの深さを変えて対応してもよい。
【0092】
[実施例3]
つぎに、本発明のさらに別の実施例について説明する。
【0093】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、成形型のみを他の成形型と交換することができる。これにより、異なる仕様の成形型による樹脂成形にも容易に対応できる。
【0094】
図20は、
図1(実施例1)と同じ樹脂成形装置1000の構成を示す断面図である。この樹脂成形装置の構成は、
図1で説明したとおりである。
【0095】
図21は、
図20(
図1)の樹脂成形装置1000から、上型1100及び下型1200を取り外して上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300及び下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1400を残した状態を模式的に示す断面図である。上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300及び下型キャビティブロック位置変更機構設置部1400の構成は、
図1で説明したとおりである。
【0096】
図22は、
図21に、
図20(
図1)の装置とは別の上型1100a及び別の下型1200aを取り付けた状態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す断面図である。上型(一方の型)1100aは、上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101に代えて上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101aを有し、上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1102に代えて上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1102aを有し、上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1103に代えて上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1103aを有し、エアベント溝1104に代えてエアベント溝1104aを有し、摺動孔1105に代えて摺動孔1105aを有し、上型キャビティ(一方の型キャビティ)1106に代えて上型キャビティ(一方の型キャビティ)1106aを有する。上型1100aは、各部(例えば、上型キャビティブロック及び上型キャビティ枠部材)の形状、寸法等が若干異なる以外は、
図20(
図1)の上型1100と同様である。また、下型(他方の型)1200aは、下型キャビティブロック(他方の型キャビティブロック)1201に代えて下型キャビティブロック(他方の型キャビティブロック)1201aを有し、下型サイドブロック(他方の型サイドブロック)1202に代えて下型サイドブロック(他方の型サイドブロック)1202aを有し、ポットブロック1203に代えてポットブロック1203aを有し、下型キャビティブロックピラー(他方の型キャビティブロックピラー)1204に代えて下型キャビティブロックピラー(他方の型キャビティブロックピラー)1204aを有し、下型弾性部材(他方の型弾性部材)1205に代えて下型弾性部材(他方の型弾性部材)1205aを有する。下型1200aは、各部(例えば、下型キャビティブロック及びポットブロック)の形状、寸法等が若干異なる以外は、
図20(
図1)の下型1200と同様である。
【0097】
例えば、
図20〜22で示したように、成形型を、異なる仕様の成形型と交換することにより、異なる仕様の樹脂成形にも対応できる。具体的には、例えば、
図20〜22で示したように、必要なキャビティ形状にあわせて上型キャビティブロックの形状を変更してもよい。また、例えば、
図20〜22で示したように、下型キャビティブロックの形状を、使用する基板の形状に合わせて変更してもよい。また、例えば、
図20〜22で示したように、ポットブロックの形状を、使用する樹脂タブレット(樹脂材料)の数、形状等に合わせて変更してもよい。また、例えば、エアベント開閉機構は、成形型の形状に合わせて移動させてもよい。
【0098】
本発明の樹脂成形装置では、例えば、
図1〜22で示したように、楔形機構(コッター機構)が成形型の一部として組み込まれておらず、成形型と楔形機構(コッター機構)とが別々に構成されている。これにより、例えば、
図20〜22で示したように、楔形機構(コッター機構)を交換したり、別の楔形部材(コッター)を用意したりしなくても、容易に成形型を交換できる。このため、本発明の樹脂成形装置によれば、例えば、樹脂成形品の品種交換等のための成形型の交換が容易である。
【0099】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。