(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着色用液体懸濁液の全重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量が、1%〜2.5%であり、顔料固形分の量が、53%〜70%であり、かつチキソトロープ添加剤の量が、0.1%〜0.7%である、請求項1に記載の着色用液体懸濁液。
無機顔料がカーボンブラックを含むか、または酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、クロム酸鉛、酸化チタン、亜鉛白、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、鉄マンガンブラック、コバルトグリーン、マンガンブルー、マンガンバイオレット、スルホセレン化カドミウム、クロムオレンジ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、亜鉛黄、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーもしくはこれらの混合物の少なくとも1種を含む金属含有顔料を含む、請求項4に記載の着色用液体懸濁液。
無機顔料がカーボンブラックを含むか、または酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、クロム酸鉛、酸化チタン、亜鉛白、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、鉄マンガンブラック、コバルトグリーン、マンガンブルー、マンガンバイオレット、スルホセレン化カドミウム、クロムオレンジ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、亜鉛黄、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはこれらの混合物の少なくとも1種を含む金属含有顔料を含む、請求項11に記載の着色セメント質組成物。
セメント質バインダーの全乾燥重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量が、0.004%〜0.25%であり、顔料固形分の量が、0.25%〜6%であり、かつチキソトロープ添加剤の量が、0.0004%〜0.07%である、請求項9から14までのいずれか1項に記載の着色セメント質組成物。
さらに、着色用液体懸濁液以外に、空気連行剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、空気遮断剤、発泡剤、腐食防止剤、収縮低減混和剤、亀裂低減混和剤、減水剤、繊維、ポゾラン、強度向上剤、レオロジー改質剤、撥水剤、湿潤剤、水溶性ポリマー、防湿混和剤、ガス形成剤、透過性低減剤、ポンプ輸送助剤、殺真菌性混和剤、殺菌性混和剤、殺虫性混和剤、骨材、アルカリ反応低減剤、結合混和剤、ポリマー微小球またはこれらの混合物の少なくとも1種を含むセメント混和剤または添加剤を含む、請求項9から17までのいずれか1項に記載の着色セメント質組成物。
【技術分野】
【0001】
顔料は、コンクリート、モルタルまたはセメントペーストにおけるその使用に関連して、不溶性であり、コンクリート成分に対して不活性であり、かつ製品に特定の色を付与する、微細な乾燥粉末、乾燥顆粒、粉末もしくは顆粒の水性懸濁液またはスラリーとして定義される。顔料の色は、3つの特性(色相、明度および彩度)に関して説明することができ、これらは、顔料の純度(酸化物含量)および明るさ(brightness)の指標となる。
【0002】
乾燥形態の顔料は、粒子のアグロメレートとして存在する。アグリゲートが破壊して、コンクリート、モルタルおよびセメントペースト中に分散する容易さは、粒子間の引力が減少する程度に依存する。顔料の着色作用は、配合物におけるセメントおよび微細な骨材に付いた汚れの程度に依存する。それゆえ、セメントおよび微細な骨材含量は、達成される着色の程度に顕著に影響を及ぼすことになる。
【0003】
顔料の適用量により、典型的には、スランプが低下し、水要求およびセメント質組成物の尚早な剛化が増大し、かつ瞬間に硬化が生じ得る。セメント質混合物のスランプを増大させるために、追加で水が加えられるが、一般に、配合物の水分が高くなるにつれて、最終的な色がより明るくなる。水分が増大するとまた、得られるセメント質組成物の強度が低下する。
【0004】
それゆえ、色を維持または改善し、スランプに対する影響を高めるかまたは影響を与えず、かつセメント質組成物の水要求に対する影響を低下させるかまたは影響を与えない分散剤および顔料を含有する着色用液体懸濁液(liquid coloring suspension)を含む着色セメント質組成物を提供することが望ましい。それゆえ、水分を増大させずにまたはスランプを低下させずにセメント質組成物の色を維持または改善する着色用液体懸濁液が、工業的に有利である。
【0005】
長期安定性を有し、セメント質組成物の水分および粘度を減少させ、かつ混合物全体にわたる顔料の分散を改善することによって色を維持または増大させる着色用液体懸濁液が提供される。
【0006】
改善された粘稠度、改善された貯蔵寿命、沈降防止性および沈殿防止(anti-sludging)性、ならびに減少したポリカルボキシレート分散剤要求量を有する着色用液体懸濁液も提供される。ポリカルボキシレート分散剤の要求量は、着色用懸濁液の場合だけでなく、着色用液体懸濁液を含有するセメント質組成物に添加されるポリカルボキシレート減水剤に関しても減少される。
【0007】
着色用液体懸濁液を含有するセメント質組成物のほかに、そのような着色セメント質組成物を製造する方法も提供される。
【0008】
水硬性セメントと、顔料分散剤と、粉末顔料またはその分散液とを混合することによって作られる従来の顔料着色セメント配合物とは対照的に、水硬性セメントと、ポリカルボキシレートおよび顔料の分散液を含む着色用液体懸濁液とを相乗的に混合することによって作られるセメント質配合物は、水の無変化(water neutrality)、または増大した水要求ではなく減少した水要求を示す。これらの顔料着色セメント質配合物はまた、硬化後に優れた圧縮強度を示し、対応する非顔料着色配合物と比較して硬化遅延を示さない。本方法に従って作られたセメント質配合物は、従来の顔料着色コンクリートと比較して増大した色強度を示す。
【0009】
着色用液体懸濁液を有し、有効なまたは改善された色分散および無変化または減少した水分を有する着色セメント質組成物のほかに、このような着色セメント質組成物を製造する方法が提供される。
【0010】
ポリカルボキシレート分散剤は、水硬性セメント質組成物中で、セメントを分散させ、水分を減少させるのに有効である。これらの分散剤は、セメント粒子に結合し、静電反発力および立体反発力の両方を発生させることによって作用し、それにより粒子を引き離したままにし、より流動性の系をもたらす。
【0011】
本明細書全体を通して、「ポリカルボキシレート分散剤」という用語は、ペンダント側鎖を有する炭素主鎖を有するポリマーを指し、ここで、側鎖の少なくとも一部は、カルボキシル基、エーテル基、アミド基またはイミド基を介して主鎖に結合している。ポリカルボキシレート分散剤は、典型的には、これに限定されないがカルボン酸基などのセメント粒子結合部分と、ポリオキシアルキレンエーテルを含むことができる分散側鎖(dispersing side chains)とを含み、さらに他の官能部分を含むこともできる。ポリカルボキシレートコポリマーは、モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、モノカルボン酸エステルもしくはジカルボン酸エステル、アルケニルエーテルおよび他のエチレン性不飽和種の部分から誘導されたまたはこれらの部分を含むように生成された構造単位を含むことができる。特定の実施形態では、ポリカルボキシレートコポリマーはまた、加水分解の際にポリマー上に追加のセメント粒子結合官能部分を露出させる加水分解性部分を含むことができる。分散剤という用語はまた、セメント質組成物のための可塑剤、減水剤、流動化剤、凝集防止剤または超可塑剤として機能もする化学物質を含むことを意味する。
【0012】
混和剤(admixture)、セメント質組成物および方法において使用されるポリカルボキシレート分散剤は、これらに限定されないがGLENIUM
(登録商標)3030NS、GLENIUM
(登録商標)7101、GLENIUM
(登録商標)7500、GLENIUM
(登録商標)7700、GLENIUM
(登録商標)7710またはGLENIUM
(登録商標)3000NS(BASF Admixture Systems,クリーブランド(オハイオ州))、ADVA
(登録商標)(W.R.Grace Inc.,ケンブリッジ(マサチューセッツ州))、VISCOCRETE
(登録商標)(Sika,チューリッヒ(スイス))およびSUPERFLUX
(登録商標)(Axim Concrete Technologies Inc.,ミドルブランチ(オハイオ州))の商標名で販売されている分散剤または減水剤を含むことができる。
【0013】
1つの実施形態では、混和剤組成物は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約0.5%〜約3%のポリカルボキシレート分散剤固形分を含有する。別の実施形態では、混和剤組成物は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約1%〜約2.5%のポリカルボキシレート分散剤固形分を含有する。別の実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの乾燥重量を基準として、着色用液体懸濁液によって与えられる約0.0008%〜約0.51%のポリカルボキシレート分散剤固形分を含有する。更なる実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの乾燥重量を基準として、着色用液体懸濁液によって与えられる約0.004%〜約0.25%のポリカルボキシレート分散剤固形分を含有する。
【0014】
スラリーまたは分散液の形態の着色用混和剤は、4つの主な理由のために使用される:(a)本質的に濡れ性が乏しい非常に微細な粒子を含有する材料の濡れ性および分散特性を高めるため;(b)一般に使用される装置による分散を可能にするため;(c)均一に着色されたコンクリート混合物を提供する顔料スラリーによりコンクリート運搬用車両へ添加し易くするため;および(d)微細な粉末を取り扱うことによって生じ得る健康危害を減らすため。これらの着色用混和剤は、通常、フタロシアニンなどの有機顔料またはカーボンブラックなどの無機顔料いずれかの顔料、またはこれらに限定されないが金属酸化物などを含み、かつこれらに限定されないが酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、クロム酸鉛、酸化チタン、亜鉛白、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、鉄マンガンブラック、コバルトグリーン、マンガンブルー、マンガンバイオレット、スルホセレン化カドミウム、クロムオレンジ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、亜鉛黄、ウルトラマリンブルーおよびコバルトブルーを含むことができる金属含有顔料から構成される。
【0015】
顔料の色は、3つの特性(色相、明度および彩度)に関して説明することができ、これらは、顔料の純度(酸化物含量)および明るさの指標となる。色相は、赤色を、黄色、青色などと区別する色の特性である。明度または輝度(lightness)は、光反射特性または色の輝度を示す。彩度または飽和度は、色相もしくは色の濃度または深さであり、同じ明度のグレーまたはニュートラルからのそのずれの尺度である。
【0016】
1つの実施形態では、着色用液体懸濁液は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約50%〜約75%の顔料固形分を含有する。別の実施形態では、着色用液体懸濁液組成物は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約53%〜約70%の顔料固形分を含有する。別の実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの乾燥重量を基準として、約0.1%〜約10%の顔料固形分を含有する。更なる実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの乾燥重量を基準として、約0.25%〜約6%の顔料固形分を含有する。
【0017】
先行技術の特定の顔料分散液(着色用液体懸濁液)は、特に着色用液体懸濁液中の顔料の濃度が高い場合(顔料固形分が55%超の混和剤組成物)、セメントおよびコンクリート混合物中に顔料粒子を効果的に分散させない。さらに、これらの着色用液体懸濁液中の顔料の濃度が増大するにつれて、顔料粒子は分離して溶液から沈降し始め、混和剤の貯蔵寿命が低下する。先行技術では、顔料固形分が50%より高い金属含有(酸化鉄)顔料分散液があるが、これらの分散液は塗料またはプラスチック用に配合されており、セメントおよびコンクリート中では混入空気が増大するなどの悪影響を及ぼす。セメント質混合物中で空気が高まると、設計歩留まりおよび圧縮強度が低下し、他の有害な影響を引き起こされる。
【0018】
ポリカルボキシレート分散剤を含有する着色用液体懸濁液は、先行技術における着色用混和剤と比較して、セメント質組成物中での顔料粒子の分散を改善する。セメント質組成物への顔料分散液の添加は、従来では、コンクリートのコンシステンシーの1つの尺度である水需要を増大させ、スランプを低下させる。水需要のこの増大は、着色用液体懸濁液の適用量が高くなるほど、特に、顔料分散液中の顔料粒子の濃度が増大するにつれてより大きくなる。対照的に、本着色用液体懸濁液は、セメントの重量を基準として高濃度で適用しても、セメント質組成物の水需要を増大させない。さらに、顔料分散液は、セメント質組成物の色を改善する。
【0019】
50%より高い顔料固形分を有する先行技術における金属含有(酸化鉄)顔料分散液は、経時的に粘度を得る傾向にあり、これがゲル形成および貯蔵寿命の低下につながる。さらに、先行技術のいくつかの顔料分散液(着色用液体懸濁液)は、顔料粒子をセメントおよびコンクリート混合物中に効果的に分散させるが、多くの場合、混入空気が増大するなどの悪影響を引き起こす。セメント質混合物中で空気が高まると、圧縮強度が低下し、仕上げがより困難なものとなり、かつ他の有害な影響が引き起こされる。
【0020】
チキソトロープ添加剤は、着色用液体懸濁液中の顔料分離および沈降を減少させ、ゲル構造を形成するようにそれらを急速に増粘させ、すなわちその粘度を増大させる。ゲル構造は自立性であり、静水圧を低下させてゲル強度の増大とともに形成する。チキソトロープ添加剤は、以前は、有機ポリマーまたは合成ポリマー、セルロースまたは他の材料、例えば分散剤、有機凝集剤、ベントナイト粘土および有機粘土、例えばヘクトライト粘土もしくはスメクタイト粘土とブレンドされたセルロースを含んでいた。
【0021】
セメント質組成物のための特定の着色用液体懸濁液に関しては、着色用液体懸濁液混和剤生成物中で高いおよび/または変動する粘度、酸化鉄などの顔料の沈降、および沈殿物(sludge)の堆積が観察されており、その結果、コンテナ、タンクおよびシステムの洗浄の問題が生じる。
【0022】
突きとめられていた沈降物および廃棄物または「沈殿物」堆積の1つの原因が、粘土、例えばスメクタイトまたはベントナイト粘土の、特定の着色用液体懸濁液中、または分散液中での使用である。粘土材料は予測不能なものであり得、その特性はpH、ならびにせん断のエネルギーおよび時間に左右される。また、粘土材料は、懸濁液の流体損失に寄与し得る。さらに、粘土、例えばベントナイト粘土は、懸濁液中でのほかにセメント質組成物中で一般的に使用されるポリカルボキシレート分散剤の高い吸着性および吸収性を示す。この吸着および吸収親和性は、粘土の剥離を生じる可能性があり、顔料の分散、粒子の沈降、および沈殿に悪影響を与える。
【0023】
本発明者らは、着色用液体懸濁液中の多糖類チキソトロープ添加剤の使用が、バルク安定性、懸濁液粘度の改善、経時的な粘稠度、着色用液体懸濁液のポンプ輸送性、固形分の沈降および沈殿の減少、メンテナンスサイクル中の分散装置、コンテナ、タンクおよび容器の洗浄およびメンテナンスのし易さの向上をもたらすことを見出した。
【0024】
それゆえ、チキソトロープ添加剤は、多糖類、特定の実施形態では、微生物由来の多糖類、例えばデュータンガム(diutan gum)、ウェランガムまたはキサンタンガム粘性溶液または懸濁液から構成されるポリマー粘性溶液または懸濁液を含むことができる。それゆえ、本明細書中で多糖類添加剤を「溶液」として言及することは、水中での粘性溶液および懸濁液の両方を含む。
【0025】
さらに、多糖類チキソトロープ添加剤、例えば多糖類デュータンは、粘土材料によるポリカルボキシレート分散剤の吸収または吸着作用を回避し、更なる潤滑作用を付与し、かつ着色用液体懸濁液およびセメント質組成物中で一般に必要とされるポリカルボキシレートの量を減少させることを可能にする。ポリカルボキシレート分散剤以外の分散剤を、着色用液体懸濁液および/またはセメント質組成物中でさらに使用してもよい。
【0026】
また、着色用液体懸濁液中で、多糖類チキソトロープ添加剤、例えばデュータン溶液または懸濁液を使用することにより、さもなければ、例えば着色配合物のpHおよび/または顔料の製造方法によって引き起こされる非相溶性が理由で、従来のチキソトロープ添加剤とは非相溶性であり得た追加の顔料成分の使用が着色用懸濁液中で可能となる。本着色用液体懸濁液のpHは、一般的には、約8〜約10未満、特定の実施形態では、約8.5〜約9.5の範囲であり得る。
【0027】
多糖類チキソトロープ添加剤を含有する本着色用液体懸濁液は、顔料成分の着色力を維持し、セメント質組成物中で使用される従来の混和剤生成物と相溶性である。
【0028】
特定の実施形態では、本着色用液体懸濁液は、粘土材料を含まない。特定の実施形態では、本着色用液体懸濁液は、セルロース系材料を含まない。
【0029】
1つの実施形態では、着色用液体懸濁液は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約0.025%〜約1%のチキソトロープ添加剤を含有する。別の実施形態では、着色用液体懸濁液は、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、約0.1%〜約0.7%のチキソトロープ添加剤を含有する。別の実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの全乾燥重量を基準として、着色用液体懸濁液によって与えられる約0.00008%〜約0.17%のチキソトロープ添加剤を含有する。更なる実施形態では、セメント質組成物は、セメント質バインダーの全乾燥重量を基準として、着色用液体懸濁液によって与えられる約0.0004%〜約0.07%のチキソトロープ添加剤を含有する。
【0030】
理論に縛られるものではないが、先行技術に基づき、ポリカルボキシレート分散剤および顔料のみを含有する着色用液体懸濁液と比較して、チキソトロープ添加剤は着色用液体懸濁液の粘度を増大させると予想されることから、ポリカルボキシレート分散剤とチキソトロープ添加剤との相互作用によって引き起こされるマイナスの相乗効果があると考えられる。しかしながら、チキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液は、ポリカルボキシレート分散剤および顔料のみを含有する混和剤の粘度よりも低い粘度を有し、長期安定性(低粘度)を伴った予期せぬ結果を有する。さらに、粘度が経時的に増大してゲル化を引き起こす先行技術の顔料分散体と比べて、着色用液体懸濁液の粘度は減少し、それから経時的に安定化する。先行技術に基づき、セメント質組成物に色を付与するために使用される、分散剤およびチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液は、経時的に粘度が増大して着色用液体懸濁液のゲル化を引き起こすことが予想される。本発明の場合には、ポリカルボキシレート分散剤とチキソトロープ添加剤との相互作用により、着色用液体懸濁液の粘度を低下させ、それから経時的に安定化させる予期しない相乗効果がある。この結果、着色用液体懸濁液の貯蔵寿命が高まる。
【0031】
本明細書中で用いられる「セメント」という用語は、任意の水硬性セメントを指す。水硬性セメントは、水の存在下で硬化して固まる材料である。水硬性セメントの適切な非限定的な例は、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、メーソンリーセメント、アルミナセメント、耐火セメント、マグネシアセメント、例えばリン酸マグネシウムセメント、リン酸マグネシウムカリウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、高炉スラグ微粉末、混合スラグ(blended slag)、フライアッシュまたはポゾランセメント、天然セメント、水硬性水和石灰およびこれらの混合物を含む。ポルトランドセメントとは、ケイ酸三カルシウムの含有量が高く、ポルトランドセメントおよびポルトランドセメントに化学的に類似または近似しているセメントを含むすべてのセメント質組成物を意味し、その規格はASTM規格C150に記載されている。商業的に用いられるポルトランドセメントは、水硬性ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウムおよび鉄アルミン酸カルシウムから構成され、相互粉砕添加物として1つ以上の形態の硫酸カルシウムを有するクリンカーを微粉砕することによって生成された水硬性セメントを意味する。ASTM C150に従ったポルトランドセメントは、タイプI、II、III、IVまたはVに分類される。
【0032】
ペーストは、水硬性セメントバインダーそれ単独と、またはポゾラン、例えばフライアッシュ、シリカヒュームもしくは高炉スラグと組み合わせたものと、水とから構成される混合物として定義される。他のポゾランは、天然ポゾラン、メタカオリンまたは焼成粘土を含むことができる。モルタルは、細骨材をさらに含むペーストとして定義される。コンクリートは、粗骨材をさらに含むモルタルである。
【0033】
セメント質組成物中に含まれることができる骨材は、シリカ、石英、砂、粉砕大理石、ガラス球、花崗岩、石灰岩、方解石、長石、漂砂(alluvial sands)、他の任意の耐久性骨材またはこれらの混合物であってよい。
【0034】
本明細書中に記載されるセメント質組成物は、他の添加剤または成分を含有してもよく、記載または例示された配合物に限定されるべきではない。単独で添加されることができるセメント添加剤は、これらに限定されないが空気連行剤、凍結融解抵抗性混和剤、骨材、ポゾラン、他のフィラー、硬化および強度促進剤/向上剤、発泡剤、空気遮断剤(air detraining agents)、硬化遅延剤、減水剤、腐食防止剤、湿潤剤、水溶性ポリマー、レオロジー改質剤、撥水剤、繊維、防湿混和剤、ガス形成剤、透過性低減剤、ポンプ輸送助剤、殺真菌性混和剤、殺菌性混和剤、殺虫性混和剤、微細鉱物混和剤、アルカリ反応性低減剤(alkali-reactivity reducer)、結合混和剤、収縮低減混和剤、亀裂低減混和剤、ポリマー微小球、ならびに着色用液体懸濁液またはセメント質組成物の特性に悪影響を及ぼさない任意の他の混和剤または添加剤を含む。セメント質組成物は、前述の添加剤のそれぞれの1つを含有する必要はない。
【0035】
実施例
サンプル1〜3
薄赤色酸化鉄着色用液体懸濁液配合物を、第1A表に示す成分および量に従って調製し、安定化された粉末状の分散性スメクタイト粘土チキソトロープ添加剤を含有する比較サンプル1、デュータン多糖類チキソトロープ添加剤を含有するサンプル2および3を得た。粘土はセルロース材料で安定化させた。
【0036】
サンプルを、初期pHおよび粘度について評価した。1日目の粘度を、30秒間撹拌した後に、スピンドル#64を用いて60rpmでブルックフィールド粘度計により測定した。センチポアズ(cps)での結果を第1A表に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液サンプルが、粘土含有試料とほぼ同じ色強度を有しているかどうかを調べるために、CIEL
*a
*b
*(CIELAB)試験を用いてサンプルをさらに評価した。第1B表に報告する結果は、サンプル2および3の色強度が比較サンプル1の約5〜8%以内であったことを示す。サンプル3は、懸濁液の調製においてサンプル2ほど入念には粉砕されていなかった可能性があることから、より低い色強度が生じることに留意した。
【0039】
【表2】
【0040】
サンプル4〜7
黄色酸化鉄着色用液体懸濁液配合物を、第2A表に示す成分および量に従って調製し、多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有するサンプル4および5を得た。
【0041】
【表3】
【0042】
比較サンプル6および7は、安定化された粉末状の分散性スメクタイト粘土チキソトロープ剤を含有する、実験室で生成された標準的な黄色酸化鉄顔料懸濁液であった。
【0043】
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液サンプルが、粘土含有サンプルとほぼ同じ色強度を有しているかどうかを調べるために、CIELAB試験を用いてサンプルを評価した。第2B表に報告する結果は、サンプル4および5の色強度が比較サンプル6および7よりも約2%大きかったことを示す。
【0044】
【表4】
【0045】
サンプル8〜10
黒色酸化鉄着色用液体懸濁液配合物を、第3A表に示す成分および量に従って調製し、粉末状の分散性スメクタイト粘土チキソトロープ添加剤を含有する比較サンプル8、多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有するサンプル9および10を得た。
【0046】
サンプル9および10の粘度測定は、多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液が経時的に一定の粘度を維持することを示した。
【0047】
【表5】
【0048】
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液サンプルが、粘土含有サンプルとほぼ同じ色強度を有しているかどうかを調べるために、CIELAB試験を用いてサンプルを評価した。第3B表に報告する結果は、サンプル8〜10の色強度が実質的に同じであったことを示す。
【0049】
【表6】
【0050】
サンプル11および12
中程度の赤色酸化鉄着色用液体懸濁液配合物を、第4A表に示す成分および量に従って調製し、安定した粉末状の分散性スメクタイト粘土チキソトロープ添加剤を含有する比較サンプル11および多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有するサンプル12を得た。安定性を7日後に視覚的に評価し、その際、サンプルの150グラム部分を、50°F、70°Fおよび90°Fに保持した。比較サンプル11は、3つの温度すべてで水分離を示したが、サンプル12は、いずれの温度においても水分離を示さなかった。
【0051】
【表7】
【0052】
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液サンプルが、粘土含有サンプルとほぼ同じ色強度を有しているかどうかを調べるために、CIELAB試験を用いてサンプルを評価した。第4B表に報告する結果は、サンプル11および12の色強度が実質的に同じであったことを示す。
【0053】
【表8】
【0054】
サンプル13および14
黒色酸化鉄/カーボンブラック着色用液体懸濁液配合物を、第5A表に示す成分および量に従って調製し、ポリアクリレート分散剤で分散された粉末状のスメクタイト粘土チキソトロープ添加剤を含有する比較サンプル13および多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有するサンプル14を得た。
【0055】
【表9】
【0056】
サンプル13および14の懸濁液のそれぞれ150gをブレンドした。ブレンド物の1日目の粘度測定値は1870センチポアズであり、多糖類含有懸濁液を、必要に応じて粘土含有懸濁液とブレンドすることができることを示している。
【0057】
比較サンプル13は、40日後にわずかに塊状となり、底部にわずかに堆積した。サンプル14は、全体にわたって滑らかであり、底部は非常に僅かに厚くなっていた。
【0058】
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液サンプルが、粘土含有サンプルとほぼ同じ色強度を有しているかどうかを調べるために、CIELAB試験を用いてサンプルを評価した。第5B表に報告する結果は、サンプル14の色強度が、比較サンプル13よりもわずかに高いことを示す。
【0059】
【表10】
【0060】
サンプル15
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する黒色酸化鉄/カーボンブラック着色用液体懸濁液配合物を、第6表に示す成分および量に従って調製した。粘度測定値は、4日目および9日目で一定であり、この期間にわたる安定性を示している。このサンプルを、以下の第10表に報告する比較粘土含有サンプルと比較して、セメント質組成物中で様々な濃度にて試験した。
【0061】
【表11】
【0062】
サンプル16および17
多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する黒色および薄赤色酸化鉄着色用液体懸濁液配合物を、第7表に示す成分および量に従って調製した。サンプル16の配合物にはNaOHを一切添加せず、サンプル17の配合物には初期NaOHを添加しなかった。それにもかかわらず、配合物の目標pH9(比較粘土サンプルの安定化のための目標である)からのずれはほとんどなく、サンプル16の粘度測定は、多糖類デュータンチキソトロープ添加剤を含有する着色用液体懸濁液が経時的に一定の粘度を維持することを示した。
【0063】
【表12】
【0064】
サンプル18および19
白色酸化チタン着色用液体懸濁液配合物を、第8表に示す成分および量に従って調製した。二酸化チタンのサイズおよび粒子形状が、分散液の安定性を維持するために懸濁液のより低い粘度を可能にした。
【0065】
【表13】
【0066】
サンプル18の着色用液体懸濁液は希薄であるが安定しており、6日後に表面で分離水は観察されなかった。サンプル19の着色用液体懸濁液も1日目では薄かったが、表面で分離水は観察されなかった。また、懸濁液中に垂直に挿入された舌圧子はまっすぐに立ったままであり、懸濁液の安定性を示していた。
【0067】
懸濁液粘度は、顔料粒子のサイズ、形状および密度に対して様々に変化する。適切な粘度範囲は、分散される顔料固形分に依存して、約200〜約4000センチポアズ、特定の実施形態では、約1500〜約4000センチポアズであり得る。どの特定の顔料粒子についても固形分の不可逆的な沈降または沈殿は生じずに経時的に一定の作業性粘度が維持されることで、着色用液体懸濁液の商業的に貴重な貯蔵寿命が提供される。さらに、本着色用液体懸濁液中で有効な分散が維持されることで、着色用液体懸濁液の有効なポンプ輸送性、ならびにメンテナンスサイクル中の分散装置、コンテナ、タンクおよび容器の洗浄およびメンテナンスのし易さの向上が提供される。これらの利点は、本着色用液体懸濁液を使用することによって、色相、明度および彩度の色強度ならびに完全性を犠牲にすることなくかなえられる。
【0068】
セメント質組成物中での使用
本着色用液体懸濁液のサンプルを、粘土含有着色用液体懸濁液と比較して、また着色用混和剤を含まないセメント質組成物に対して、セメント質組成物中で試験した。セメント質配合設計および結果(スランプまたはスランプフローおよび重量法空気量(gravimetric air content))を、以下の第9表および第10表に報告する。
【0069】
薄赤色酸化鉄顔料、および黒色酸化鉄とカーボンブラック顔料をそれぞれ含有する本着色用液体懸濁液のサンプル2および15を、未着色のセメント質混合物20および22、ならびに薄赤色酸化鉄顔料および安定化された粘土成分を含有する比較サンプル21、ならびに黒色酸化鉄とカーボンブラック顔料および安定化された粘土成分を含有する比較例23に対して試験した。液体懸濁液の基準量は、セメント1袋(94ポンド)あたり3ポンドまたは7ポンドの着色用液体混和剤に相当した。
【0070】
セメント質混合物中に含まれるセメントは、LehighタイプIであり、配合設計に含まれる着色用液体混和剤サンプルのほかに、5分の時点で空気連行剤(MICRO AIR
(登録商標)−BASF Admixture Systems製)をセメント質混合物に加えた。
【0071】
試験組成物のスランプは、ASTM C143に記載されているように、コーンを平らな表面に置き、コーンにセメント質組成物を入れ、コーンを抜き出すことによって測定した。次いで、組成物が流れ出て、セメント質組成物の得られたマウンドの下がった分の高さ(スランプ)ならびにマウンドの底面の直径(スランプフロー)をインチ単位で測定した。
【0072】
セメント質組成物の重量法空気量は、ASTM C138に従って、測定した密度またはバッチ容量を、計算した密度または容量と比較することにより測定した。密度(単位重量)は、新鮮なセメント質材料の既知の容量を秤量することによって測定した。
【0073】
本着色用液体懸濁液は、粘土含有懸濁液およびプレーンコンクリートと比較して、スランプフローおよび重量法空気(5分および10分の時点で試験した)に関して同等の結果を与えた。1種の顔料による充填量がより高い場合、スランプフローは部分的に影響を受けた。
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
特定の実施形態では、チキソトロープ添加剤、例えば多糖類デュータンガムは、PEGを有する合成水道水(Synthetic Tap Water)中のガム0.25重量%で測定したときに(3rpm)、約4000〜約8000mPa・s(cP)、特定の実施形態では約3000〜約6000mPa・s(cP)の低せん断粘度を有する。低せん断粘度試験方法は、以下を含む:
ガラス撹拌棒を用いて、400mLのビーカー中4.5gのポリエチレングリコール200(PEG200)に0.75gのガムを分散させる。均質なスラリーが得られた後に、299mLの合成水道水(1000ppmのNaClおよび147ppmのCaCl
2・2H
2Oを含有する脱イオン水)をスラリー混合物中に注ぐ。低ピッチのプロペラ型撹拌機を用いて溶液を800rpmで撹拌する。4時間撹拌した後、温度を25℃(77°F)に調節し、撹拌せずに30分間静置させる。LVスピンドル#1を使用して、このスピンドルを3分間回転させた後に、2.5+トルクスプリング(またはModel DVE2.5+のような同等の機器)を備えたブルックフィールドモデルLV粘度計を使用して3rpmで粘度を測定する。
【0077】
第一の実施形態では、a)液体と、b)ポリカルボキシレート分散剤と、c)顔料と、多糖類チキソトロープ添加剤とを含むセメント質組成物のための着色用液体懸濁液が提供され、ここで、着色用液体懸濁液の粘度は、経時的に安定である。
【0078】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、多糖類はデュータンガムであってよい。
【0079】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量は、約0.5%〜約3%であってよく、顔料固形分の量は、約50%〜約75%であってよく、かつ多糖類チキソトロープ添加剤の量は、約0.025%〜約1%であってよい。
【0080】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、着色用液体懸濁液の全重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量は、約1%〜約2.5%であってよく、顔料固形分の量は、約53%〜約70%であってよく、かつチキソトロープ添加剤の量は、約0.1%〜約0.7%であってよい。
【0081】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、液体は水を含んでよい。
【0082】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、顔料は無機顔料を含んでよい。
【0083】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、無機顔料はカーボンブラックを含んでよいか、または酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、クロム酸鉛、酸化チタン、亜鉛白、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、鉄マンガンブラック、コバルトグリーン、マンガンブルー、マンガンバイオレット、スルホセレン化カドミウム、クロムオレンジ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、亜鉛黄、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーもしくはこれらの混合物の少なくとも1種を含む金属含有顔料を含んでよい。
【0084】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、顔料は有機顔料を含んでよい。
【0085】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液において、有機顔料はフタロシアニンを含んでよい。
【0086】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液は、さらに、分散剤、減水剤、殺真菌性混和剤、殺虫性混和剤または殺菌性混和剤の少なくとも1種を含んでよい。
【0087】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液は、粘土材料を含まなくてもよい。
【0088】
第一または後続の実施形態の着色用液体懸濁液は、セルロース材料を含まなくてもよい。
【0089】
第二の実施形態では、a)液体と、b)ポリカルボキシレート分散剤と、c)顔料と、d)多糖類チキソトロープ添加剤とを含む着色用液体懸濁液が添加された水硬性セメントを含む着色セメント質組成物が提供され、ここで、着色用液体懸濁液は、水要求を増大させずにセメント質組成物の色を改善する。
【0090】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、多糖類はデュータンガムであってよい。
【0091】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、液体は水を含んでよい。
【0092】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、顔料は無機顔料を含んでよい。
【0093】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、無機顔料はカーボンブラックを含んでよいか、または酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、クロム酸鉛、酸化チタン、亜鉛白、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、鉄マンガンブラック、コバルトグリーン、マンガンブルー、マンガンバイオレット、スルホセレン化カドミウム、クロムオレンジ、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、亜鉛黄、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーもしくはこれらの混合物の少なくとも1種を含む金属含有顔料を含んでよい。
【0094】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、顔料は有機顔料を含んでよい。
【0095】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、有機顔料はフタロシアニンを含んでよい。
【0096】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、セメント質バインダーの全乾燥重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量は、約0.0008%〜約0.51%であってよく、顔料固形分の量は、約0.1%〜約10%であってよく、かつチキソトロープ添加剤の量は、約0.00008%〜約0.17%であってよい。
【0097】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、セメント質バインダーの全乾燥重量を基準として、ポリカルボキシレート分散剤固形分の量は、約0.004%〜約0.25%であってよく、顔料固形分の量は、約0.25%〜約6%であってよく、かつチキソトロープ添加剤の量は、約0.0004%〜約0.07%であってよい。
【0098】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、水対セメント比は、約0.25対約0.7であってよい。
【0099】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、セメントは、ポルトランドセメント、改質ポルトランドセメント、メーソンリーセメントまたはこれらの混合物の少なくとも1種を含んでよい。
【0100】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物が、さらに、着色用液体懸濁液以外に、空気連行剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、空気遮断剤、発泡剤、腐食防止剤、収縮低減混和剤、亀裂低減混和剤、減水剤、繊維、ポゾラン、強度向上剤、レオロジー改質剤、撥水剤、湿潤剤、水溶性ポリマー、防湿混和剤、ガス形成剤、透過性低減剤、ポンプ輸送助剤、殺真菌性混和剤、殺菌性混和剤、殺虫性混和剤、骨材、アルカリ反応低減剤、結合混和剤、ポリマー微小球またはこれらの混合物の少なくとも1種を含むセメント混和剤または添加剤を含んでよい。
【0101】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、骨材は、シリカ、石英、粉砕大理石、ガラス球、花崗岩、石灰岩、方解石、長石、漂砂または砂の少なくとも1種を含んでよい。
【0102】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、ポゾランは、天然ポゾラン、メタカオリン、フライアッシュ、シリカフューム、焼成粘土または高炉スラグの少なくとも1種を含んでよい。
【0103】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、着色用液体懸濁液は、粘土材料を含まなくてもよい。
【0104】
第二または後続の実施形態の着色セメント質組成物において、着色用液体懸濁液は、セルロース材料を含まなくてもよい。
【0105】
これらの実施形態は、上記の説明および先の実施例により詳細に説明してきたが、これらの実施例は単に例示を目的としており、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって変更および改良することができると理解される。上記の実施形態は、選択的なだけでなく、組み合わせることもできると理解されたい。