特許第6861635号(P6861635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861635
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20210412BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-546467(P2017-546467)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2016078718
(87)【国際公開番号】WO2017068923
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-205591(P2015-205591)
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発/CIS太陽電池モジュール高性能化技術の研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 駿介
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 塁
(72)【発明者】
【氏名】廣井 誉
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151160(JP,A)
【文献】 特開2012−018953(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0326296(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/110093(WO,A1)
【文献】 特表2006−525671(JP,A)
【文献】 特開2014−130858(JP,A)
【文献】 特開2012−235024(JP,A)
【文献】 特開2012−235023(JP,A)
【文献】 特開2012−004287(JP,A)
【文献】 PARK, H. H. et al.,"Atomic layer deposition of Zn(O,S) thin films with tunable electrical properties by oxygen annealing",Applied Physics Letters,2013年,Vol.102,pp.132110-1 - 132110-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、
前記第1電極層上に配置される化合物系光電変換層と、
前記化合物系光電変換層上に配置されるバッファ層であって、ZnOとZnSとの混晶を有しており、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲であり、且つ、前記バッファ層の比抵抗は、1.23×10Ωcm以上2.57×10Ωcm以下であるバッファ層と、
前記バッファ層上に配置される第2電極層と、
を備える光電変換素子。
【請求項2】
前記化合物系光電変換層と前記バッファ層との間に、Znを含むシード層を備える請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記第2電極層と前記バッファ層との間に、ZnOを含み、真性半導体であるZn含有層を備える請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化合物系半導体を光電変換層として備える光電変換素子が知られている。
【0003】
このような光電変換素子として、例えば、化合物系半導体がCd及びTeを含むCdTe系光電変換素子、又は、化合物系半導体がカルコゲン元素(例えば、S又はSe)を含むカルコゲナイド系光電変換素子が知られている。
【0004】
カルコゲナイド系光電変換素子としては、例えば、I−III−VI族化合物半導体を有するCIS系光電変換素子、及び、I−(II−IV)−VI族化合物半導体を有するCZTS系光電変換素子が挙げられる。
【0005】
上述した化合物系半導体は、p型の導電性を有する化合物系光電変換層として用いられ、光電変換素子が、基板上に第1電極層、化合物系光電変換層、バッファ層及び第2電極層が順次積層して形成される。
【0006】
バッファ層は、透明であり、n型の導電性又はi型の導電性(真性)を有している。バッファ層が、n型の導電性を有する場合には、化合物系光電変換層とバッファ層とが積層されて、pn接合が形成される。また、バッファ層が、i型の導電性を有する場合には、化合物系光電変換層とバッファ層とn型の導電性を有する第2電極層が積層されて、pin接合が形成される。
【0007】
バッファ層としては、Cdを含むCd系バッファ層、Znを含むZn系バッファ層、又は、Inを含むIn系バッファ層が知られている。
【0008】
これらのバッファ層の中では、有害物質であるCdを含まず、また、希少金属であるInを含まない観点から、Zn系バッファ層が注目されている。また、Zn系バッファ層は、高い光電変換特性を得る観点からも注目されている。
【0009】
Zn系バッファ層を形成する具体的な材料としては、例えば、ZnO、ZnS、Zn(OH)又はこれらの混晶であるZn(O、S)、Zn(O、S、OH)、及びZnMgO、ZnSnO等が挙げられる。
【0010】
光電変換素子は、例えば、太陽光が、透明な第2電極層及びバッファ層を透過して、化合物系光電変換層で吸収されることにより発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−135337号公報
【特許文献2】国際公開第2009/110093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したバッファ層は、光電変換素子の光電変換特性に影響を与えると考えられる。
【0013】
具体的には、バッファ層が有する欠陥等の膜質は、光電変換素子の光電変換特性に影響を与えると考えられる。光電変換素子の光電変換特性としては、例えば、光電変換効率又は漏れ電流等が挙げられる。
【0014】
しかし、バッファ層が有する欠陥等の膜質と、光電変換素子の光電変換特性との関係については、明確になされていない部分が多い。
【0015】
そこで、バッファ層の膜質を制御して、光電変換素子の光電変換特性を向上することが期待されている。
【0016】
本明細書では、上述した問題を解決し得る光電変換素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書に開示する光電変換素子によれば、第1電極層と、上記第1電極層上に配置される化合物系光電変換層と、上記化合物系光電変換層上に配置されるバッファ層であって、ZnOとZnSとの混晶を有しており、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲であるバッファ層と、上記バッファ層上に配置される第2電極層と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
上述した本明細書に開示する光電変換素子によれば、バッファ層が、ZnOとZnSとの混晶を有しており、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲であることにより、光電変換特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本明細書に開示する光電変換素子の一実施形態を示す図である。
図2】本明細書に開示する光電変換素子の製造工程を説明する図(その1)である。
図3】本明細書に開示する光電変換素子の製造工程を説明する図(その2)である。
図4】本明細書に開示する光電変換素子の製造工程を説明する図(その3)である。
図5】本明細書に開示する光電変換素子の製造工程を説明する図(その4)である。
図6】実験例及び比較実験例のバッファ層の比抵抗及び比抵抗変化率を示す図である。
図7】実験例及び比較実験例の光電変換素子の光電変換特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書で開示する光電変換素子の好ましい実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0021】
図1は、本明細書に開示する光電変換素子の一実施形態を示す図である。
【0022】
本実施形態の光電変換素子10は、基板11と、基板11上に配置される第1電極層12と、p型の導電性を有し、第1電極層12上に配置される化合物系光電変換層13と、化合物系光電変換層13上に配置され、n型の導電性を示すシード層14と、シード層14上に配置され、n型の導電性を示し高抵抗を有するバッファ層15と、n型の導電性を有し、バッファ層15上に配置される第2電極層16を備える。
【0023】
化合物系光電変換層13としては、カルコゲナイド系化合物半導体又はCdTe系化合物半導体を用いることができる。カルコゲナイド系化合物半導体としては、I−III−VI族化合物半導体又はI−(II−IV)−VI族化合物半導体が挙げられる。
【0024】
シード層14は、バッファ層15の結晶成長を促す働きを有する。
【0025】
バッファ層15は、ZnOとZnSとの混晶を有している。ZnOは、Zn(亜鉛)とO(酸素)との化合物である。ZnSは、Zn(亜鉛)とS(硫黄)の化合物である。
【0026】
バッファ層15は、光電変換効率又は並列抵抗等の光電変換特性を向上する観点から、Sの原子数のZnの原子数に対する比(Sの原子数/Znの原子数)が、0.290〜0.493の範囲にある。
【0027】
次に、上述した光電変換素子10の製造方法の好ましい一実施形態を、図2〜5を参照しながら、以下に説明する。
【0028】
まず、図2に示すように、基板11上に、第1電極層12が形成される。基板11として、例えば、青板ガラス若しくは高歪点ガラス若しくは低アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス板等の金属基板、又はポリイミド樹脂等の樹脂基板を用いることができる。基板11は、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属元素を含んでいてもよい。
【0029】
第1電極層12として、例えば、Mo、Cr、Ti等の金属を材料とする金属導電層を用いることができる。金属導電層を形成する材料は、S等のVI族元素との反応性の低い材料を用いることが、後述するセレン化法又は硫化法を用いて光電変換層を形成する時に、第1電極層12の腐食を防止する観点から好ましい。光電変換素子10が、他の光電変換素子の上に配置されて、いわゆるタンデム型の光電変換素子積層体を形成する場合には、光電変換素子10は、透明な基板11及び透明な第1電極層12を有することが好ましい。ここで、基板11及び第1電極層12が透明であるとは、下に配置される他の光電変換素子が吸収する波長の光を透過することを意味する。なお、光電変換素子10は、基板を有していなくてもよい。また、透明な第1電極層12の材料としては、III族元素(Ga,Al,B)がドープされた酸化亜鉛や、ITO(Indium Tin Oxide)などが好適である。第1電極層12の厚さは、例えば、0.1〜1μmとすることができる。第1電極層12は、例えば、スパッタリング(DC、RF)法、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition法:CVD法)、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いて形成される。
【0030】
次に、図3に示すように、第1電極層12上に、p型の導電性を有する化合物系光電変換層13が形成される。
【0031】
化合物系光電変換層13として、例えば、I−III−VI族化合物(I−III−VI族化合物とも表現され得る)により形成されるCIS系化合物半導体、又は、I−(II−IV)−VI族化合物半導体(I2−(II−IV)−VI4族化合物半導体とも表現され得る)により形成されるCZTS系化合物半導体を用いることができる。
【0032】
化合物系光吸収層13の厚さは、例えば、1〜3μmとすることができる。
【0033】
CIS系化合物半導体の場合、I族元素としては、例えば、銅(Cu)又は銀(Ag)又は金(Au)を用いることができる。III族元素として、例えば、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)又はAl(アルミニウム)を用いることができる。VI族元素として、例えば、セレン(Se)又は硫黄(S)又は酸素(O)又はテルル(Te)を用いることができる。具体的には、CIS系化合物半導体として、Cu(In、Ga)Se2、Cu(In、Ga)(Se、S)2、CuInS2等が挙げられる。
【0034】
CIS系化合物半導体を形成する方法として、例えば、(1)I族元素及びIII族元素のプリカーサ膜を形成し、プリカーサ膜とVI族元素との化合物を形成する方法(セレン化法又は硫化法)と、(2)蒸着法を用いて、I族元素及びIII族元素及びVI族元素を含む膜を成膜する方法(蒸着法)が挙げられる。
【0035】
(セレン化法又は硫化法)
プリカーサ膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はインク塗布法が挙げられる。スパッタリング法は、ターゲットであるスパッタ源を用いて、イオン等をターゲットに衝突させ、ターゲットから叩き出された原子を用いて成膜する方法である。蒸着法は、蒸着源を加熱して気相となった原子等を用いて成膜する方法である。インク塗布法は、プリカーサ膜の材料を粉体にしたものを有機溶剤等の溶媒に分散して、第1電極層上に塗布し、溶剤を蒸発して、プリカーサ膜を形成する方法である。
【0036】
I族元素であるCuを含むスパッタ源又は蒸着源としては、Cu単体、Cu及びGaを含むCu−Ga、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。III族元素であるGaを含むスパッタ源又は蒸着源としては、Cu及びGaを含むCu−Ga、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。III族元素であるInを含むスパッタ源又は蒸着源としては、In単体、Cu及びInを含むCu−In、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。
【0037】
Cu及びIn及びGaを含むプリカーサ膜は、上述したスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される膜を単体又は積層して構成され得る。
【0038】
プリカーサ膜の具体例として、Cu−Ga−In、Cu−Ga/Cu−In、Cu−In/Cu−Ga、Cu−Ga/Cu/In、Cu−Ga/In/Cu、Cu/Cu−Ga/In、Cu/In/Cu−Ga、In/Cu−Ga/Cu、In/Cu/Cu−Ga、Cu−Ga/Cu−In/Cu、Cu−Ga/Cu/Cu−In、Cu−In/Cu−Ga/Cu、Cu−In/Cu/Cu−Ga、Cu/Cu−Ga/Cu−In、Cu/Cu−In/Cu−Ga等が挙げられる。また、プリカーサ膜は、これらの膜を更に積層した多重積層構造を有していてもよい。
【0039】
ここで、上述したCu−Ga−Inは、単体の膜を意味する。また、「/」は、左右の膜の積層体であることを意味する。例えば、Cu−Ga/Cu−Inは、Cu−Ga膜とCu−In膜との積層体を意味する。Cu−Ga/Cu/Inは、Cu−Ga膜とCu膜とIn膜との積層体を意味する。
【0040】
化合物系光電変換層13は、上述したプリカーサ膜を、VI族元素と反応させて形成される。例えば、VI族元素の硫黄及び/又はセレンを含む雰囲気において、プリカーサ膜を加熱することにより、プリカーサ膜と硫黄及び/又はセレンとの化合物が形成(硫化及び/又はセレン化)されて、化合物系光電変換層13が得られる。なお、VI族元素を含むようにプリカーサ膜を形成してもよい。
【0041】
(蒸着法)
蒸着法では、I族元素の蒸着源及びIII族元素の蒸着源及びVI族元素の蒸着源又はこれら複数の元素を含む蒸着源を加熱し、気相となった原子等を第1電極層12上に成膜して、化合物系光電変換層13が形成される。蒸着源としては、上述したプリカーサ法で説明したものを用いることができる。
【0042】
CZTS系化合物半導体の場合、I族元素としては、例えば、銅(Cu)又は銀(Ag)又は金(Au)を用いることができる。II族元素としては、例えば、亜鉛(Zn)を用いることができる。IV族元素としては、例えば、スズ(Sn)を用いることができる。VI族元素としては、例えば、セレン(Se)又は硫黄(S)又は酸素(O)又はテルル(Te)を用いることができる。具体的には、CZTS系化合物半導体として、Cu2(Zn、Sn)Se4、Cu2(Zn、Sn)S4、又はこれらの混晶であるCu2(Zn、Sn)(Se、S)4等が挙げられる。
【0043】
CZTS系化合物半導体を形成する方法として、CIS系化合物半導体と同様に、(1)I族元素及びII族元素及びIV族元素のプリカーサ膜を形成し、プリカーサ膜とVI族元素との化合物を形成する方法(プリカーサ法)と、(2)蒸着法を用いて、I族元素及びII族元素及びIV族元素及びVI族元素を含む膜を成膜する方法(蒸着法)が挙げられる。
【0044】
CZTS系化合物半導体をプリカーサ法を用いて形成する場合には、上述したI族元素のスパッタ源又は蒸着源と共に、II族元素及びIV属元素のスパッタ源又は蒸着源を使用して、プリカーサ膜が形成された後、プリカーサ膜とVI族元素との反応物であるCZTS系化合物半導体が形成される。
【0045】
また、CZTS系化合物半導体を蒸着法を用いて形成する場合には、上述したI族元素及びVI族元素の蒸着源と共に、II族元素及びIV属元素の蒸着源を使用して、CZTS系化合物半導体が形成される。
【0046】
次に、図4に示すように、光電変換層13上に、n型の導電性を有するシード層14が形成される。シード層14は、光電変換層13が吸収する波長の光を透過することが好ましい。シード層14は、バッファ層15の結晶成長を促す働きを有しており、シード層14を配置することにより、欠陥の少ないバッファ層15を形成することができる。また、シード層14は、バッファ層15の成長速度を促進する働きを有する。
【0047】
シード層14として、例えば、Zn及びVI属元素を含む化合物を用いることができる。Zn及びVI属元素を含む化合物としては、例えば、ZnO、ZnS、Zn(OH)又はこれらの混晶であるZn(O、S)、Zn(O、S、OH)が挙げられる。
【0048】
シード層14の形成方法としては、溶液成長法(Chemical Bath Deposition法:CBD法)、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)、スパッタリング法、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。なお、CBD法とは、プリカーサとなる化学種を含む溶液に基材を浸し、溶液と基材表面との間で不均一反応を進行させることによって薄膜を基材上に析出させるものである。
【0049】
シード層14の厚さは、例えば、1nm〜50nmとすることができる。
【0050】
次に、図5に示すように、シード層14上に、n型の導電性を示し高抵抗を有するバッファ層15が形成される。
【0051】
バッファ層15は、上述したように、ZnOとZnOSとの混晶を用いて形成される。バッファ層15は、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲となるように形成される。
【0052】
バッファ層15は、上述したシード層14と共に、化合物系光電変換層13と、pn接合を形成する。また、バッファ層15は、高抵抗及び所定の厚さを有することにより、シード層14と共に、化合物系光電変換層13と第2電極層16との間にシャントパスが形成されることを防止して、漏れ電流を低減すると共に、並列抵抗を高める働きを有する。更に、バッファ層15が、化合物系光電変換層13の伝導帯の下端のエネルギー準位と、第2電極層16の下端のエネルギー準位との間に、所定の大きさのスパイクを有するようにして、光電変換特性(例えば開放電圧)を高めるようにすることが好ましい。
【0053】
バッファ層15の形成方法としては、例えば、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、溶液成長法(Chemical Bath Deposition法:CBD法)等を用いることができる。
【0054】
バッファ層15におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、バッファ層15を形成する時に使用される硫黄源(S源)、亜鉛源(Zn源)及び酸素源(O源)からの各元素の供給量を調整することにより制御される。
【0055】
硫黄源としては、例えば、硫化水素(HS)又は硫黄の蒸気(例えば、硫黄を加熱して生成される)を用いることができる。
【0056】
亜鉛源としては、例えば、ジエチル亜鉛((CZn)、トリエチル亜鉛((CZn)、トリメチル亜鉛((CH)Zn)又はその他の有機亜鉛化合物、又は無機亜鉛化合物を用いることができる。
【0057】
酸素源としては、例えば、水(HO)、一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)等の酸化物、又は酸素(O)、オゾン(O)等を用いることができる。
【0058】
例えば、ALD法を用いて、バッファ層15を形成する場合には、硫黄源として硫化水素(HS)を使用し、亜鉛源としてジエチル亜鉛((CZn)を使用し、酸素源として水(HO)を使用することができる。
【0059】
バッファ層15の厚さは、例えば、10〜200nm、特に20〜150nmとすることが好ましい。
【0060】
また、上述したバッファ層15と同様の機能又は一部の機能を有し、ZnOとZnSとの混晶以外の材料を用いて形成される他のバッファ層を、バッファ層15と積層して配置してもよい。
【0061】
次に、バッファ層15上に、第2電極層16が形成されて、図1に示す光電変換素子10が得られる。
【0062】
第2電極層16は、n型の導電性を有し、禁制帯幅が広く且つ低抵抗の材料によって形成されることが好ましい。また、第2電極層16は、化合物系光電変換層13が吸収する波長の光を透過することが好ましい。
【0063】
第2電極層16は、例えば、III族元素(B、Al、Ga、In)がドーパントとして添加された酸化金属を用いて形成される。具体的には、B:ZnO、Al:ZnO、Ga:ZnO等の酸化亜鉛、ITO(酸化インジウムスズ)及びSnO(酸化スズ)が挙げられる。また、第2電極層16として、ITiO、FTO、IZO又はZTOを用いてもよい。
【0064】
第2電極層16の形成方法としては、例えば、スパッタリング(DC、RF)法、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0065】
第2電極層16の厚さは、例えば、1〜3μmとすることができる。
【0066】
また、バッファ層15上に第2電極層16を形成する前に、実質的にドーパントを添加していない真性な酸化亜鉛膜(i-ZnO)を形成し、この真性な酸化亜鉛膜上に、第2電極層16を形成してもよい。真性な酸化亜鉛膜の厚さは、100〜1000nm、特に200〜500nmとすることが好ましい。真性な酸化亜鉛膜の形成方法としては、例えば、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0067】
なお、化合物系光電変換層13として、Cd及びTeを含むCdTe系化合物半導体を用いてもよい。この場合、各層を形成する順番が上述したのとは逆となってもよい。
【0068】
上述した実施形態の光電変換素子によれば、バッファ層15におけるSの原子数のZnの原子数に対する比が0.290〜0.493の範囲にあることにより、優れた光電変換特性が得られる。具体的には、実験例及び比較実験例の説明において後述するが、バッファ層15におけるSの原子数のZnの原子数に対する比が0.290〜0.493の範囲にあることにより、光電変換効率及び並列抵抗が向上する。
【0069】
以下、本明細書に開示するバッファ層及び光電変換素子について、実験例を用いて更に説明する。ただし、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0070】
(実験例1)
ガラス板である基板上に、ALD法を用いて、ZnOとZnSとの混晶であるバッファ層を形成して、実施例1のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比(図6中S/Znと示す)は、0.290であった。バッファ層におけるSの原子数及びZnの原子数は、蛍光X線分析法(XRF法)を用いて測定した。以下に示す実験例及び比較実験例のS及びZnの原子数の測定も同様にして行った。
【0071】
(実験例2)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例2のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.290であった。
【0072】
(実験例3)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例3のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.307であった。
【0073】
(実験例4)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例4のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.310であった。
【0074】
(実験例5)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例5のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.310であった。
【0075】
(実験例6)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例6のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.327であった。
【0076】
(実験例7)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例7のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.327であった。
【0077】
(実験例8)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例8のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.462であった。
【0078】
(実験例9)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例9のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.477であった。
【0079】
(実験例10)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例10のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.480であった。
【0080】
(実験例11)
実験例1と同様にバッファ層を形成して、実験例11のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.493であった。
【0081】
(実験例12)
まず、ガラス板である基板上に、スパッタリング法を用いて、Moを含む複数の層を有する第1電極層が形成された。次に、Cu、In、Gaからなるプリカーサ膜が、第1電極層上にスパッタリング法を用いて形成された。そして、このプリカーサ膜を硫黄含有雰囲気中で加熱処理(硫化)することにより、Cu(In、Ga)Sからなる化合物系光電変換層を形成した。次に、シード層として、CBD法を用いて形成されたCds膜と、MOCVD法を用いて形成されたZnO膜とが、化合物系光電変換層上に積層して形成された。次に、ALD法を用いて、Sの原子数のZnの原子数に対する比が実験例5と同様になるように、バッファ層がシード層上に形成された。次に、MOCVD法を用いて、真性な酸化亜鉛膜(i-ZnO)が、バッファ層上に形成された。次に、第2電極層として、イオンプレーティング法を用いて、ITO膜が酸化亜鉛膜上に形成されて、実験例12の光電変換素子を得た。実験例12の光電変換素子のバッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は測定していないが、実験例5と同様の0.310程度であると推定される。
【0082】
(比較実験例1)
ガラス板である基板上に、ALD法を用いて、ZnOであるバッファ層を形成して、比較実施例1のバッファ層を得た。バッファ層は、Sを含まないので、Sの原子数のZnの原子数に対する比を求めることはできない。
【0083】
(比較実験例2)
ガラス板である基板上に、ALD法を用いて、ZnMgOであるバッファ層を形成して、比較実施例2のバッファ層を得た。バッファ層は、Sを含まないので、Sの原子数のZnの原子数に対する比を求めることはできない。
【0084】
(比較実験例3)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例3のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.186であった。
【0085】
(比較実験例4)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例4のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.186であった。
【0086】
(比較実験例5)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例5のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.189であった。
【0087】
(比較実験例6)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例6のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.189であった。
【0088】
(比較実験例7)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例7のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.192であった。
【0089】
(比較実験例8)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例8のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.192であった。
【0090】
(比較実験例9)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例9のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.192であった。
【0091】
(比較実験例10)
上述した実験例1と同様にバッファ層を形成して、比較実施例10のバッファ層を得た。バッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は、0.192であった。
【0092】
(比較実験例11)
バッファ層が、上述した比較実験例1と同様に形成されたことを除いて、上述した実験例12と同様にして、比較実験例11の光電変換素子を得た。
【0093】
(比較実験例12)
バッファ層が、上述した比較実験例2と同様に形成されたことを除いて、上述した実験例12と同様にして、比較実験例12の光電変換素子を得た。
【0094】
(比較実験例13)
バッファ層が、上述した比較実験例5と同様に形成されたことを除いて、上述した実験例12と同様にして、比較実験例13の光電変換素子を得た。比較実験例13の光電変換素子のバッファ層におけるSの原子数のZnの原子数に対する比は測定していないが、比較実験例5と同様の0.189程度であると推定される。
【0095】
上述した実験例1〜11及び比較実験例1〜10のバッファ層の比抵抗を測定した。比抵抗の測定は、バッファ層に対して疑似太陽光(1000W/m)を一定時間(15時間)照射する前と、照射した後について測定した。バッファ層の比抵抗は、4端子法を用いて測定した。また、疑似太陽光の照射前の比抵抗と照射後の比抵抗の比を、1から減じた値(1−(照射後の比抵抗/照射前の比抵抗))を、比抵抗変化率として求めた。比抵抗及び比抵抗変化率を、図6に示す。
【0096】
実験例1〜11のバッファ層の比抵抗は、比較実験例1〜10よりも大きな値を示している。例えば、同じZnOとZnSとの混晶を用いてバッファ層が形成されている比較実験例3〜10と、実験例1〜11とを比較すると、実験例1〜11の比抵抗は、比較実験例3〜10よりも2桁以上の大きな値を示している。
【0097】
また、実験例1〜11の比抵抗変化率は0.10以下であるのに対して、比較実験例1〜10は、0.12以上の高い値を示している。特に、バッファ層がZnOとZnOSとの混晶以外の材料を用いて形成される比較実験例1及び2の比抵抗変化率は、それぞれ0.29及び0.98という非常に高い値を示しており、疑似太陽光の照射による比抵抗の変化が大きいことが分かる。
【0098】
バッファ層は、漏れ電流を抑制して、並列抵抗を向上する働きを有しており、高い比抵抗及び低い比抵抗変化率を有することが求められる。
【0099】
出願人は、実験例1〜11のバッファ層が、比較実験例1〜10よりも高い比抵抗及び低い比抵抗変化率を示す理由として、実験例1〜11のバッファ層が有する欠陥の数が、比較実験例1〜10よりも少ないことが一因であると推定した。
【0100】
そして、実験例1〜11のバッファ層が有する欠陥の数が、比較実験例1〜10よりも少ない理由として、バッファ層が、ZnOとZnSとの混晶を有しており、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲にあるためと考えた。
【0101】
このように、ZnOとZnSとの混晶を有しており、Sの原子数のZnの原子数に対する比が、0.290〜0.493の範囲になるようにバッファ層を形成することにより、欠陥の少ない良好な膜質のバッファ層が得られると考える。
【0102】
次に、実験例12及び比較実験例11〜13の光電変換素子に対して、疑似太陽光(1000W/m)を一定時間(15時間)照射した後、光電変換効率、短絡電流、開放電圧、曲線因子、直列抵抗及び並列抵抗を測定した。測定結果を、図7に示す。
【0103】
実験例12の光電変換素子は、16%を超える光電変換効率と、1000Ωcmを超える並列抵抗の値を示しており、比較実験例11〜13よりも優れた光電変換効率及び並列抵抗を示している。
【0104】
実験例12の光電変換素子のバッファ層は、欠陥に起因する再結合中心の数が少ないので、キャリアが再結合する確率及び再結合電流が低減するため、光電変換効率を向上し、且つ並列抵抗を大きくなったものと推定される。並列抵抗は、例えば漏れ電流が少ない程大きくなると考えられる。
【0105】
本発明では、上述した実施形態の光電変換素子は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0106】
例えば、上述した実験例の光電変換素子は、化合物系光電変換層として、CIS系化合物半導体を有していたが、光電変換素子は、CZTS系化合物半導体又はCdTe系化合物半導体等の他の化合物系光電変換層を有していてもよい。
【0107】
本出願は2015年10月19日に出願した日本国特許出願2015−205591号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2015−205591号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0108】
10 光電変換素子
11 基板
12 第1電極層
13 化合物系光電変換層
14 シード層
15 バッファ層
16 第2電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7