(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861637
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】グロビン遺伝子クラスターの制御エレメントを含む真核性の発現ベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20210412BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20210412BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
C12N15/85 ZZNA
C12P21/02 C
C12N5/10
【請求項の数】53
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-548439(P2017-548439)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公表番号】特表2018-510633(P2018-510633A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016056926
(87)【国際公開番号】WO2016156404
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年1月28日
(31)【優先権主張番号】92686
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】LU
(31)【優先権主張番号】15161922.8
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2606
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2605
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2806
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2807
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2856
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 2858
【微生物の受託番号】DSMZ DSM ACC 3078
(73)【特許権者】
【識別番号】509067887
【氏名又は名称】グリコトープ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴレッツ, シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン, ドゥリーン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルチク, アンチェ
【審査官】
中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06524851(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0133934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のポリペプチドを組み換えによって生産するための方法であって、
(a)互いに機能的に連結して、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントを少なくとも含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒトAγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分またはそのホモログを含むプロモーター領域;および
(iii)該目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域
を含む発現カセットを含む宿主細胞を提供する工程と;
(b)該宿主細胞が該目的のポリペプチドを発現する条件の下で該宿主細胞を培養する工程と;
(c)該目的のポリペプチドを単離する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記発現カセットの前記コード領域が、分泌発現のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、工程(b)で、前記目的のポリペプチドが前記宿主細胞によって分泌される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)の後に、
(d)医薬組成物として前記目的のポリペプチドを製剤化する工程
をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントが、配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、配列番号1の741位〜1109位の核酸配列を含む、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位2(HS2)の少なくとも部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)もしくはそれの部分、および/またはヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位4(HS4)もしくはそれの部分を含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発現カセットの前記プロモーター領域が、転写開始部位を含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発現カセットの前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の前記転写開始部位に照らして−384〜+36のヌクレオチド、および/または配列番号1の1123位〜1542位の核酸配列を含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記発現カセットが転写終結領域をさらに含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記転写終結領域が、ポリアデニル化シグナル、および転写終結部位を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発現カセットが、前記発現カセットの他のエレメントに機能的に連結した、前記ヒトAγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域をさらに含む、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記発現カセットの前記エンハンサー領域が配列番号1の2136位〜2881位の核酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記目的のポリペプチドが糖タンパク質またはそれの部分である、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記目的のポリペプチドが、抗体の重鎖または軽鎖を含む抗体またはそれの誘導体もしくは部分;ゴナドトロピン、例えばFSH(濾胞刺激ホルモン)、CG(絨毛ゴナドトロピン)、LH(黄体形成ホルモン)およびTSH(甲状腺刺激ホルモン);エリスロポエチン;ならびに第VII因子、第VIII因子、第IX因子またはフォンウィルブランド因子などの血液凝固因子からなる群から選択される、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記発現カセットが前記宿主細胞に安定的にトランスフェクトされる、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主細胞に、前記発現カセットおよび選択マーカー遺伝子を含むベクターがトランスフェクトされており、工程(b)の培養条件が、細胞培養培地中の対応する選択薬剤の存在を含む、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記選択マーカー遺伝子が、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードし、前記対応する選択薬剤が、抗葉酸剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主細胞が、真核細胞、またはそれに由来する細胞である、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記宿主細胞が、血液細胞、またはそれに由来する細胞である、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
互いに機能的に連結した、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントを少なくとも含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒトAγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分を含むプロモーター領域;
(iii)転写終結領域;および
(iv)ヒトAγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域;
を含み、ヒトAγグロビン全体をコードする核酸配列を含まない、発現カセット。
【請求項22】
前記ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントが、配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有する、請求項21に記載の発現カセット。
【請求項23】
前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントを含む、請求項22に記載の発現カセット。
【請求項24】
前記遺伝子座制御領域が、配列番号1の741位〜1109位の核酸配列を含む、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位2(HS2)の少なくとも部分を含む、請求項23に記載の発現カセット。
【請求項25】
前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)もしくはそれの部分、および/またはヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位4(HS4)もしくはそれの部分を含む、請求項22から請求項24までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項26】
前記プロモーター領域が、転写開始部位を含む、請求項21から請求項25までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項27】
前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の前記転写開始部位に照らして−384〜+36のヌクレオチド、および/または配列番号1の1123位〜1542位の核酸配列を含む、請求項21から請求項26までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項28】
前記転写終結領域が、ポリアデニル化シグナル、および転写終結部位を含む、請求項21から請求項27までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項29】
前記エンハンサー領域が配列番号1の2136位〜2881位の核酸配列を含む、請求項21から請求項28までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項30】
制限酵素の少なくとも1つの認識配列を含むクローニング部位をさらに含む、請求項21から請求項29までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項31】
前記コード領域が目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項21から請求項30までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項32】
前記目的のポリペプチドが糖タンパク質またはそれの部分である、請求項31に記載の発現カセット。
【請求項33】
前記目的のポリペプチドが、抗体、抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはそれの部分である、請求項31または請求項32に記載の発現カセット。
【請求項34】
前記コード領域が分泌発現のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項21から請求項33までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項35】
転写の方向において、互いに機能的に連結して、
(i)前記遺伝子座制御領域と、
(ii)前記プロモーター領域と、
(iii)前記コード領域および/またはクローニング部位と、
(iv)前記転写終結領域と、
(v)前記エンハンサー領域と、
を含む、請求項21から請求項34までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項36】
真核細胞における発現のために適応させられている、請求項21から請求項35までのいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項37】
請求項21から請求項36までのいずれか1項に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項38】
1つまたはそれより多くの選択マーカー遺伝子をさらに含む、請求項37に記載のベクター。
【請求項39】
真核細胞への安定的トランスフェクションのために適応させられている、請求項37または請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
請求項21から36のいずれか1項に記載の発現カセットまたは請求項37から請求項39までのいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項41】
真核細胞、またはそれに由来する細胞である、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
血液細胞、またはそれに由来する細胞である、請求項40または請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法における、請求項21から請求項36までのいずれか1項に記載の発現カセットまたは請求項40から請求項42までのいずれか1項に記載の宿主細胞の使用。
【請求項44】
前記発現カセットが請求項21から請求項36までのいずれか1項に記載の発現カセットであり、かつ/または前記宿主細胞が請求項40から請求項42までのいずれか1項に記載の宿主細胞である、請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記宿主細胞が赤血球系列の細胞ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記目的のポリペプチドがグロビンタンパク質ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記遺伝子座制御領域が、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)を含まない、請求項21に記載の発現カセット。
【請求項49】
前記目的のポリペプチドがグロビンタンパク質ではない、請求項21に記載の発現カセット。
【請求項50】
赤血球系列の細胞ではない、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項51】
前記ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントが、配列番号1の742位〜995位の核酸配列を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントが、配列番号1の742位〜995位の核酸配列を有する、請求項23に記載の発現カセット。
【請求項53】
ヒト細胞、またはそれに由来する細胞である、請求項41または42に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は目的のタンパク質の生産収量を向上させるために使用され得る新規の発現カセットに関する。発現カセットは、ヒトグロビン遺伝子クラスターの発現調節エレメント、特にヒト
Aγグロビンのプロモーターおよびヒトβ−グロビンまたはα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域を含む。特に、本発明は、そのようなグロビン発現調節エレメントを含む発現カセットを提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
組み換えタンパク質の生産は、今日の生物工学的産業の主要な側面である。これは、大量の高品質なタンパク質を要求する適用の数が市場で増加するにつれて、ますます重要性を増している。食糧生産および特に薬理学は、組み換えタンパク質に対する要求が着実に増加している2つの主要な領域である。最終産物のより高い生産効率およびその結果的としてのより低い費用が、商業的に実行可能なプロセスを取得するために要求されている。
【0003】
しかし、同時に、高い製品品質およびヒトへの適用との適合性も本質的である。真核細胞における、特に高等真核細胞における、タンパク質の組み換え生産が要求される適用がますます多くなった。特に、糖化のような翻訳後修飾を有するタンパク質(糖タンパク質)は、それらをE.coliのような原核細胞系の中で発現させたとき、またはそれらを特にヒト細胞株のような真核細胞系の中で発現させたときで有意に異なる。多くの場合、これらの違いは、生産されるタンパク質の生物学的活性および免疫原性に顕著に影響を与える。しかし、高等真核細胞株を使用する多くの発現系は、所望のタンパク質のかなり低い発現速度という欠点があり、組み換えタンパク質の低い収量および高い費用をもたらす。
【0004】
したがって、特に真核性の発現細胞株を使用するときには、組み換えタンパク質生産の収量を増加させるための新規の手段および方法を提供することが当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって実証されるように、ヒトグロビン遺伝子クラスターのある特定のエレメントは、真核細胞において目的のポリペプチドの安定的な高い発現を可能にする発現カセットを提供するように組み合わせることができる。特に、β−グロビン遺伝子クラスターまたはα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の特異的部分と
Aγグロビンプロモーター、および必要に応じて
Aγグロビン3’エンハンサーとの組み合わせは、驚くほど高く安定的な発現率の発現カセットを形成する。
【0006】
したがって、第1の局面において、本発明は、目的のポリペプチドを組み換えによって生産するための方法であって、
(a)互いに機能的に連結して、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターまたはヒトα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒト
Aγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分を含むプロモーター領域;および
(iii)該目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域
を含む発現カセットを含む宿主細胞を提供する工程と;
(b)該宿主細胞が該目的のポリペプチドを発現する条件の下で該宿主細胞を培養する工程と;
(c)該目的のポリペプチドを単離する工程と
を含む方法を提供する。
【0007】
第2の局面において、本発明は、互いに機能的に連結した、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターまたはヒトα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒト
Aγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分を含むプロモーター領域;
(iii)必要に応じてコード領域;
(iv)転写終結領域;および
(v)ヒト
Aγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域;
を含み、ヒト
Aγグロビン全体をコードする核酸配列を含まない、発現カセットを提供する。
【0008】
第3の局面において、本発明は、発現カセットを含み第2の局面に従うベクターおよび該発現カセットまたは該ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0009】
本発明の他の目的、特徴、利点および局面は以下の記載および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかになる。しかし、適用の好ましい実施形態を示す以下の記載、添付の特許請求の範囲および具体的な実施例は、単に例証の手段によって与えられていることが理解されるべきである。開示される発明の精神および範囲の中における様々な変更および改変は、以下を読むことから当業者に容易に明らかになる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
目的のポリペプチドを組み換えによって生産するための方法であって、
(a)互いに機能的に連結して、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターまたはヒトα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒトAγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分またはそのホモログを含むプロモーター領域;および
(iii)該目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域
を含む発現カセットを含む宿主細胞を提供する工程と;
(b)該宿主細胞が該目的のポリペプチドを発現する条件の下で該宿主細胞を培養する工程と;
(c)該目的のポリペプチドを単離する工程と
を含む方法。
(項目2)
前記発現カセットの前記コード領域が、分泌発現のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、工程(b)で、前記目的のポリペプチドが前記宿主細胞によって分泌される、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(c)の後に、
(d)医薬組成物として前記目的のポリペプチドを製剤化する工程
をさらに含む、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントを含む、項目1から項目3までのいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の742位〜995位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、配列番号1の741位〜1109位の核酸配列を含む、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位2(HS2)の少なくとも部分を含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の310位〜735位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)もしくはそれの部分、および/または好ましくは配列番号1の13位〜294位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位4(HS4)もしくはそれの部分を含む、項目4から項目6までのいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記発現カセットの前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号5の24位〜278位の核酸配列を有する、ヒトα−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位40(HS40)またはそれの部分を含む、項目1から項目3までのいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記発現カセットの前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の転写開始部位および必要に応じて5’非翻訳領域の少なくとも部分を含む、項目1から項目8までのいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記発現カセットの前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の前記転写開始部位に照らして−384〜+36のヌクレオチド、および/または配列番号1の1123位〜1542位の核酸配列を含む、項目1から項目9までのいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記発現カセットが転写終結領域をさらに含む、項目1から項目10までのいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記転写終結領域が、好ましくは配列番号1の1725位〜1730位の核酸配列を含む、ポリアデニル化シグナル、および転写終結部位を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記発現カセットが、前記発現カセットの他のエレメントに機能的に連結した、前記ヒトAγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域をさらに含む、項目1から項目12までのいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記発現カセットの前記エンハンサー領域が配列番号1の2136位〜2881位の核酸配列を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記目的のポリペプチドが糖タンパク質またはそれの部分である、項目1から項目14までのいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記目的のポリペプチドが、抗体の重鎖または軽鎖を含む抗体またはそれの誘導体もしくは部分;ゴナドトロピン、例えばFSH(濾胞刺激ホルモン)、CG(絨毛ゴナドトロピン)、LH(黄体形成ホルモン)およびTSH(甲状腺刺激ホルモン);エリスロポエチン;ならびに第VII因子、第VIII因子、第IX因子またはフォンウィルブランド因子などの血液凝固因子からなる群から選択される、項目1から項目15までのいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記発現カセットが前記宿主細胞に安定的にトランスフェクトされる、項目1から項目16までのいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記宿主細胞に、前記発現カセットおよび選択マーカー遺伝子、好ましくは増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むベクターがトランスフェクトされており、工程(b)の培養条件が、細胞培養培地中の対応する選択薬剤の存在を含む、項目1から項目17までのいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記選択マーカー遺伝子が、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、好ましくは抗葉酸剤耐性DHFRバリアントをコードし、前記対応する選択薬剤が、抗葉酸剤、好ましくはメトトレキセートである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記宿主細胞が、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞、またはそれに由来する細胞である、項目1から項目19までのいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記宿主細胞が、血液細胞、好ましくは白血球、血液前駆細胞または白血病細胞、またはそれに由来する細胞である、項目1から項目20までのいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
互いに機能的に連結した、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターまたはヒトα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒトAγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分を含むプロモーター領域;
(iii)必要に応じてコード領域;
(iv)転写終結領域;および
(v)ヒトAγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域;
を含み、ヒトAγグロビン全体をコードする核酸配列を含まない、発現カセット。
(項目23)
前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントを含む、項目22に記載の発現カセット。
(項目24)
前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の742位〜995位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のM1−コア−M2エレメントを含む、項目23に記載の発現カセット。
(項目25)
前記遺伝子座制御領域が、配列番号1の741位〜1109位の核酸配列を含む、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位2(HS2)の少なくとも部分を含む、項目24に記載の発現カセット。
(項目26)
前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号1の310位〜735位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)もしくはそれの部分、および/または好ましくは配列番号1の13位〜294位の核酸配列を有する、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位4(HS4)もしくはそれの部分を含む、項目23から項目25までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目27)
前記遺伝子座制御領域が、好ましくは配列番号5の24位〜278位の核酸配列を有する、ヒトα−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位40(HS40)またはそれの部分を含む、項目22に記載の発現カセット。
(項目28)
前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の転写開始部位および必要に応じて5’非翻訳領域の少なくとも部分を含む、項目22から項目27までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目29)
前記プロモーター領域が、前記ヒトAγグロビン遺伝子の前記転写開始部位に照らして−384〜+36のヌクレオチド、および/または配列番号1の1123位〜1542位の核酸配列を含む、項目22から項目28までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目30)
前記転写終結領域が、好ましくは配列番号1の1725位〜1730位の核酸配列を含む、ポリアデニル化シグナル、および転写終結部位を含む、項目22から項目29までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目31)
前記エンハンサー領域が配列番号1の2136位〜2881位の核酸配列を含む、項目22から項目30までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目32)
制限酵素の少なくとも1つの認識配列を含むクローニング部位をさらに含む、項目22から項目31までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目33)
前記コード領域が目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、項目22から項目32までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目34)
前記目的のポリペプチドが糖タンパク質またはそれの部分である、項目33に記載の発現カセット。
(項目35)
前記目的のポリペプチドが、抗体、抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはそれの部分である、項目33または項目34に記載の発現カセット。
(項目36)
前記コード領域が分泌発現のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、項目22から項目35までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目37)
転写の方向において、互いに機能的に連結して、
(i)前記遺伝子座制御領域と、
(ii)前記プロモーター領域と、
(iii)前記コード領域および/またはクローニング部位と、
(iv)前記転写終結領域と、
(v)前記エンハンサー領域と、
を含む、項目22から項目36までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目38)
真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞における発現のために適応させられている、項目22から項目37までのいずれか1項に記載の発現カセット。
(項目39)
項目22から項目38までのいずれか1項に記載の発現カセットを含むベクター。
(項目40)
1つまたはそれより多くの選択マーカー遺伝子をさらに含む、項目39に記載のベクター。
(項目41)
真核細胞への安定的トランスフェクションのために適応させられている、項目39または項目40に記載のベクター。
(項目42)
項目22から38のいずれか1項に記載の発現カセットまたは項目39から項目41までのいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目43)
真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞、またはそれに由来する細胞である、項目42に記載の宿主細胞。
(項目44)
血液細胞、好ましくは白血球、血液前駆細胞もしくは白血病細胞、またはそれに由来する細胞である、項目42または項目43に記載の宿主細胞。
(項目45)
項目1から項目21までのいずれか1項に記載の方法における、項目22から項目38までのいずれか1項に記載の発現カセットまたは項目42から項目44までのいずれか1項に記載の宿主細胞の使用。
(項目46)
前記発現カセットが項目22から項目38までのいずれか1項に記載の発現カセットであり、かつ/または前記宿主細胞が項目42から項目44までのいずれか1項に記載の宿主細胞である、項目1から項目21までのいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
本明細書中で使用されるとき、以下の表現は、それらが使用される文脈がそうではないと示す範囲以外では、以下で説明される通りの意味を好ましくは有することが概して意図されている。
【0011】
「含む」という表現は、本明細書中で使用されるとき、その文字通りの意味に加えて、また「本質的にからなる」および「からなる」という表現を含み、そして具体的にこれを指す。したがって、「含む」という表現は、具体的にリストされた要素を「含む」目的物がさらなる要素を含まない実施形態、および具体的にリストされた要素を「含む」目的物がさらなる要素を含包してもよく、そして/または実際に含包する実施形態を指す。同様に、「有する」という表現は、「含む」という表現として理解されるべきであり、また「本質的にからなる」および「からなる」という表現を含み、そして具体的にこれを指す。
【0012】
「核酸」という用語は、本明細書中で使用されるとき、リボヌクレオチドまたはデゾキシリボヌクレオチドポリマーを指す。核酸は、RNAまたはDNAであってよい。それは、単一のポリマー鎖で構成されてもよく、またはそれは2本鎖であってもよい。核酸は、天然、組み換えまたは合成起源であってもよい。好ましい実施形態では、核酸は2本鎖DNAである。
【0013】
「発現カセット」とは核酸構築物であって、そのような配列と適合する宿主における構造遺伝子の発現に影響を与え得る核酸エレメントを用いて生成されたか、または合成された構築物である。発現カセットは、少なくともプロモーターを含み、そして必要に応じて転写終結シグナルを含む。典型的には、この発現カセットは、転写されるべき核酸およびプロモーターを含む。発現に影響を与えるのに役立つ追加の因子もまた、本明細書中に記載される通り使用され得る。例えば、発現カセットは、発現されたタンパク質の宿主細胞からの分泌を方向付けるシグナル配列をコードするヌクレオチド配列もまた含み得る。好ましくは、発現カセットは発現ベクターの部分である。転写されるべき核酸の発現のために使用されるべき宿主細胞は、発現ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされる。この構築物を含む形質転換細胞の選択を可能とするために、従来的には、選択マーカー遺伝子が発現ベクターの中に含められ得る。当業者は、このベクターの構成要素が、その機能に実質的に影響を与えずに改変され得ることを認識する。
【0014】
「機能的に連結する」という表現は、発現カセットの2つまたはそれより多くのエレメントが、それらの機能が協調し、そしてそのコード配列(例えば、コード領域)を発現させるような方法で、互いに連結していることを意味する。例えば、コード配列の発現を確認することができるとき、プロモーターは該コード配列と機能的に連結している。本発明に従う発現カセットの構築およびそれの様々なエレメントのアセンブリは、当業者に周知の技術を使用して遂行され得、この技術には特にSambrook et al.(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Nolan C.ed.,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press)の中で記載されるものがある。
【0015】
「上流」および「下流」という用語は、本明細書中で使用されるとき、核酸分子上のある核酸エレメントまたは配列の、該核酸分子上の別の核酸エレメントまたは配列に対する位置を指す。「上流」は核酸分子の5’末端により近い位置を指し、「下流」は核酸分子の3’末端により近い位置を指す。2本鎖核酸、特にDNAの場合は、核酸の5’末端および3’末端を決定するために、mRNAなどのRNAの転写のためのマトリクスとして使用される核酸の鎖、すなわちセンス鎖が使用される。したがって、「上流」はセンス鎖の5’末端の方向であり、「下流」はセンス鎖の3’末端の方向である。
【0016】
標的核酸配列またはアミノ酸配列の「ホモログ」は、該標的核酸配列またはアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のホモロジーまたは同一性を共有する。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「ホモロジー」または「同一性」は、好ましくは、標的配列の全長にわたってか、または標的配列の示される部分の全長にわたって本発明に従って決定される。特定の核酸配列またはアミノ酸配列に言及するとき、概して、本発明は、それぞれ、該核酸配列またはアミノ酸配列のホモログも包含する。標的核酸配列またはアミノ酸配列のホモログは、特に、それが由来する標的核酸配列またはアミノ酸配列の同じまたは実質的に同じ機能および活性を有する機能的ホモログである。
【0017】
「プロモーター」は、それに機能的に連結した核酸配列、特にコード配列の転写を可能にし、制御する核酸配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼに結合するための認識配列を含有し、転写開始部位を含むかそれに機能的に連結している。プロモーターは、特異的シグナルの存在下(または不在下)でだけ活性である誘導可能なプロモーターであってよいし、またはそれは恒常的に活性であってもよい。プロモーターの活性は、遺伝子座制御領域およびエンハンサーエレメントなどの調節エレメントによってさらに調節され得る。
【0018】
「コード配列」は、ポリペプチドまたはRNAなどの遺伝子産物をコードする核酸配列である。
【0019】
核酸エレメントの「部分」は、特に、該核酸エレメントの少なくとも5個の核酸、好ましくは少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または少なくとも50個の核酸を含む。核酸エレメントの「部分」は、特に、該核酸エレメントの少なくとも5個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または少なくとも50個の連続するヌクレオチドを含む。特に、それは該核酸エレメントの少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも25%を含む。核酸エレメントの「機能的部分」は、エレメントの意図された機能を実行することが可能である該エレメントの部分である。例えば、遺伝子座制御領域、プロモーターまたは3’エンハンサーの機能的部分は、それが機能的に連結したコード領域の発現を調節すること、特に増強することが可能である。核酸エレメントの部分は、該核酸エレメントの機能的部分を特に指す。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、少なくとも5個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖を指す。好ましくは、ペプチドは、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個または少なくとも35個のアミノ酸を含む。本明細書中で使用されるとき、「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語はまたタンパク質をも指し、翻訳後修飾されたペプチドおよびタンパク質を含む。特に、ペプチドまたはポリペプチドという用語は糖化ペプチドおよび糖タンパク質を含む。「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は本明細書において互換可能に使用される。
【0021】
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の部分は、好ましくは、該ペプチドまたはタンパク質の連続するアミノ酸少なくとも3個を含み、好ましくは、該タンパク質の連続するアミノ酸少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個または少なくとも20個を含む。
【0022】
「医薬組成物」という用語および類似の用語は、特に、ヒトに投与するために適した組成物、すなわち薬学的に受容可能である構成要素を含む組成物、を指す。好ましくは、医薬組成物は、担体、希釈剤または医薬品添加物(例えば、緩衝剤、保存料および浸透圧調整剤)と一緒に活性化合物またはそれの塩もしくはプロドラッグ、を含む。
【0023】
本発明は、ヒトグロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも部分およびヒト
Aγグロビンプロモーターを含む発現カセットに関する。
【0024】
ヘモグロビンは、酸素および二酸化炭素の輸送を可能にするヒトおよび動物の血液中の金属タンパク質である。ヘモグロビンは、鉄イオンを担持するヘム基に緊密に関連したポリペプチド鎖から各々なる4つのサブユニット(グロビン)で構成される、多サブユニット球状タンパク質である。いくつかの異なるタイプのグロビンサブユニットがあり、ヘモグロビンのサブユニット組成は生涯を通して変化する。例えば、ヒト胎児は、2つのグロビンαおよび2つのグロビンγ(α
2γ
2)で構成されるヘモグロビンFを有するが、成人では、2つのグロビンαおよび2つのグロビンβ(α
2β
2)を有するヘモグロビンAが優位を占める。ヒトの異なる発達状態で異なるサブユニットの発現の役割を担うヒトグロビン遺伝子クラスターによって、異なるグロビンポリペプチドが発現される。ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターは、遺伝子座制御領域および5つの異なるグロビン遺伝子、すなわち、ε−、
Gγ−、
Aγ−、δ−およびβ−グロビン遺伝子を含む。同様に、α−グロビン遺伝子クラスターはまた、遺伝子座制御領域およびζ−、α2−、α1−およびθ−グロビン遺伝子を含む。
図1は、ヒトα−およびβ−グロビン遺伝子クラスターの構造を示す。遺伝子クラスターの中の別個の各グロビン遺伝子は、それぞれのグロビンサブユニットのコード配列の発現を制御するそれ独自の特異的プロモーターおよびエンハンサー配列を有する。しかし、これらのプロモーターは、それ自身、遺伝子座制御領域によって調節される。特に、遺伝子座制御領域は、プロモーターを活性化または不活性化することが可能であり、この活性化パターンは生涯を通して変化する。したがって、両方の遺伝子座制御領域(1つはα−グロビン遺伝子クラスターにおけるものであり、1つはβ−グロビン遺伝子クラスターにおけるものである)は、発達の間に異なるグロビン遺伝子の発現を指揮し、異なるヘモグロビンタンパク質の特異的サブユニット組成をもたらす。
【0025】
遺伝子座制御領域は、プロモーターの活性化および不活性化の役割を担ういくつかのDNアーゼI過敏性部位(HS)を含む。例えば、β−グロビン遺伝子クラスターのHS2は、
Aγグロビンプロモーターの活性を制御することが見出されている。β−グロビン遺伝子クラスターのHS2は、コア領域および調節サブドメインにさらに細分化することができる。コア領域が、グロビンプロモーターの活性化の役割を主に担うHS2の部分である。調節性サブドメインM1〜M5は、コアドメインの作用を正または負に調節する。コア領域は調節性サブドメインM1とM2との間に位置付けられ、M3〜M5はその後ろに続く。特に、M1およびM2は、
Aγグロビンプロモーターに対するコア領域の活性化作用をさらに増強する。
【0026】
ヒトグロビン遺伝子クラスターの発現エレメントの使用が、真核細胞、特にヒト血液細胞またはそれに由来する細胞における、目的のポリペプチドなどの標的産物の安定的な高い発現を提供することが今や見出された。本発明は、ヒト
Aγグロビンプロモーターの少なくとも機能的部分およびヒトα−グロビンまたはβ−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む発現カセットを提供する。発現カセットは、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含有するコード領域および/またはそのようなコード領域の導入のためのクローニング部位をさらに含む。発現カセットは、ヒト
Aγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むエンハンサー領域をさらに含むことができる。遺伝子座制御領域、プロモーターおよび3’エンハンサーは、全て、コード領域の発現を調節することができるように、特にそれを可能にし、増強することができるように発現カセットに位置付けられる。発現カセットは、コード領域の転写が終了する転写終結領域を含むこともできる。発現カセットのエレメントは、特に、互いに機能的に連結している。
【0027】
発現カセットの具体例は、配列番号1〜5の任意の1つの核酸配列を含むか、またはそれからなる。それぞれの発現エレメントは
図2にも示され、そこでは、発現カセットの異なるエレメントが表示されている。特に、HS4、HS3、HS2およびHS40は、ヒトα−グロビンまたはβ−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の部分である。この遺伝子座制御領域に続いて、ヒト
Aγグロビンプロモーター(
Aγ−Prom)の機能的部分が表示されている。その後に、コード配列またはコード配列(CS)の導入のためのクローニング部位、およびポリアデニル化シグナル(γpA)を含む転写終結領域が続く。発現カセットの末端に、ヒト
Aγグロビン遺伝子の3’エンハンサー(
Aγ−Enh)の機能的部分が位置付けられる。
【0028】
ある特定の実施形態では、発現カセットはβ−グロビンイントロン2、特にβ−グロビン遺伝子またはいかなる他のグロビン遺伝子のいかなるイントロンも含まない。
ヒト
Aγグロビンプロモーター
【0029】
発現カセットは、コード領域、特に目的のポリペプチドの発現を可能にし、制御するために、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分を使用する。ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、特に、コード領域の上流に位置付けられる。それはコード領域に機能的に連結しており、その転写を可能にし、制御する。ある特定の実施形態では、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、未成熟mRNAの転写が開始する転写開始部位を包含する。さらに、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、5’非翻訳領域(5’UTR)の少なくとも部分、特にヒト
Aγグロビン遺伝子の5’UTRの少なくとも部分を含むこともできる。具体的な実施形態では、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、ヒト
AγグロビンmRNAの転写を可能にするヒト
Aγグロビン遺伝子の部分を少なくとも包含する。ある特定の実施形態では、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、CCAATボックスを含む。特に、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、ヒト
Aγグロビン遺伝子の転写開始部位に照らして、−299〜−26のヌクレオチド、特に−299〜+36のヌクレオチド、−384〜−26のヌクレオチドまたは−384〜+36のヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。特に、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分は、配列番号1の1123位〜1542位の核酸配列を含み、特にそれからなる。依然として機能的であるヒト
Aγグロビンプロモーターのより短い断片を使用することも可能である。当業者は、ヒト
Aγグロビンプロモーターの適切な機能的部分を決定することができる。特に、プロモーター配列の活性を決定する方法は当技術分野で公知であり、下の実施例で記載される。
【0030】
あるいは、ヒト
Aγグロビンプロモーターの該機能的部分のホモログを、本発明に従って使用することができる。該ホモログは、好ましくは、上で規定される核酸配列の1つと、その全長にわたって少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である。ある特定の実施形態では、ホモログは、それが由来する
Aγグロビンプロモーターの機能的部分と同じまたは実質的に同じ機能および/または活性を有し、特に、それが由来する
Aγグロビンプロモーターの機能的部分を同じ条件の下で使用して到達される発現率の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%に到達するコード領域の発現率を提供する。
遺伝子座制御領域
【0031】
遺伝子座制御領域はプロモーター領域に機能的に連結しており、ヒト
Aγグロビンプロモーターの機能的部分の活性を調節、特に増強することが可能である。遺伝子座制御領域は、特にプロモーター領域の上流に位置付けられる。
【0032】
ある特定の好ましい実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域またはその機能的部分が使用される。当技術に従うと、ヒトβ−グロビン遺伝子座制御領域は、この遺伝子クラスターの第1のグロビン遺伝子、すなわちε−グロビン遺伝子の6〜20kbp上流に位置する、HS1〜HS4と呼ばれる4つの赤血球特異的DNアーゼI過敏性部位を包含する。特に、HS2はグロビン遺伝子の発現を制御する役割を担っており、遺伝子座制御領域の主要な機能的成分を構成すると考えられる。ヒトβ−グロビン遺伝子座制御領域のHS2はコアエレメントおよびさらなる調節性サブドメインに細分化され、そこでは、コアエレメントは調節性サブドメインM1とM2の間に位置付けられる。コアエレメントは、ヒト
Aγグロビンプロモーターのプロモーター活性を増強することが可能である、β−グロビン遺伝子座制御領域の最小限の領域である。
【0033】
好ましい一実施形態では、遺伝子座制御領域は、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのDNアーゼI過敏性部位2(HS2)のコアエレメントを含む。特に、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2のコアエレメントは、配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有する。ある特定の実施形態では、遺伝子座制御領域は、HS2のコアエレメントならびに2つの隣接した調節性サブドメインM1およびM2、すなわちヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2のM1−コア−M2エレメントを含むか、またはそれからなる。該M1−コア−M2エレメントは、配列番号1の742位〜995位の核酸配列を有することができる。したがって、それは、配列番号1の906位〜939位の核酸配列を有するHS2のコア領域を含む。
【0034】
さらなる実施形態では、遺伝子座制御領域は、配列番号1の741位〜1109位の核酸配列を含む、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位2(HS2)の少なくとも機能的部分を含む。HS2のこの機能的部分は、M1−コア−M2エレメントおよびその直ぐ下流の追加の核酸配列を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域は、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)の少なくとも部分をさらに含む。特に、HS3またはそれの部分は、発現カセットの遺伝子座制御領域中でHS2またはそれの部分の上流に位置付けられる。HS3またはそれの部分は、特に、配列番号1の310位〜735位の核酸配列を含むか、またはそれからなる。さらに、遺伝子座制御領域は、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位4(HS4)またはそれの部分を含むこともでき、それは、特に、存在する場合、HS2およびHS3の上流に位置付けられる。ある特定の実施形態では、HS4またはそれの部分は、配列番号1の13位〜294位の核酸配列を含むか、またはそれからなる。したがって、本発明に従う発現カセットの遺伝子座制御領域は、下流方向に、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの、必要に応じてHS4の少なくとも部分、必要に応じてHS3の少なくとも部分およびHS2の少なくとも機能的部分を含むことができる。代わりの実施形態では、遺伝子座制御領域は、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位3(HS3)を含まない。
【0036】
特定の実施形態では、遺伝子座制御領域は、配列番号1の13位〜1109位、配列番号2の20位〜819位、配列番号3の18位〜386位および配列番号4の13位〜266位からなる群から選択される核酸配列を有する。
【0037】
別の実施形態では、遺伝子座制御領域は、ヒトα−グロビン遺伝子クラスターの過敏性部位40(HS40)の少なくとも機能的部分を含む。HS40のこの部分は、特に、配列番号5の24位〜278位の核酸配列を有することができるHS40のコアエレメントを含むか、またはそれからなる。特に、HS40またはその該部分は、配列番号5の7位〜372位の核酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0038】
さらに、ある特定の実施形態では、上記の遺伝子座制御領域のうちの1つのホモログである核酸配列を含むか、またはそれからなる、遺伝子座制御領域を使用することができる。特に、該ホモログは、上記の遺伝子座制御領域の1つと、その全長にわたって少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ/またはそれが由来する遺伝子座制御領域と同じもしくは実質的に同じ機能を有する。好ましい実施形態では、ホモログ遺伝子座制御領域は、それが由来する遺伝子座制御領域を同じ条件の下で使用して到達される発現率の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%に到達するコード領域の発現率を提供する。
コード領域
【0039】
発現カセットのコード領域は、発現カセットによって発現される目的の産物、特に目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。コード領域の核酸配列の発現は、プロモーター領域によって調節され、したがってそれに機能的に連結している。必要に応じてベクターに存在する、発現カセットが適切な宿主細胞に導入されているとき、該宿主細胞は、コード領域の核酸配列によってコードされる産物、特にポリペプチドを生産する。
【0040】
発現カセットのコード領域は、特に、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含有するか、またはそれからなる。
【0041】
目的のポリペプチドは、タンパク質を含む任意のポリペプチドであってよい。ポリペプチドは、哺乳類およびヒト由来のポリペプチドならびに人工ポリペプチドを含む、任意の起源であってよい。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは1つまたはそれより多くのグリコシル化部位を含み、特に、グリコシル化ポリペプチド、例えば糖タンパク質またはそれの部分、抗体またはそれの誘導体もしくは部分;ペプチドホルモン、ゴナドトロピン、例えばFSH(濾胞刺激ホルモン)、CG(絨毛ゴナドトロピン)、LH(黄体形成ホルモン)およびTSH(甲状腺刺激ホルモン)(その全てのアイソフォームおよびバリアントを含む);エリスロポエチン;第VII因子、第VIII因子、第IX因子またはフォンウィルブランド因子などの血液凝固因子;リソソーム酵素およびサイトカインである。さらに、目的のポリペプチドは、サイトカインおよびそれらの受容体の群のタンパク質分子のいずれか、例えば腫瘍壊死因子TNF−アルファおよびTNF−ベータ;レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−抗トリプシン;インスリンA鎖およびB鎖;ゴナドトロピン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(thyrotrophin)およびヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG);カルシトニン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、第VII因子、組織因子およびフォンウィルブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ、ヒト尿および組織型プラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;エンケファリナーゼ;ヒトマクロファージ炎症性タンパク質;ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンA鎖およびB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;血管内皮細胞増殖因子;ホルモンまたは増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインAおよびD;リウマチ因子;骨由来の神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4、−5、−6および神経成長因子−ベータなどの神経栄養因子;血小板由来増殖因子;線維芽細胞成長因子;上皮増殖因子;TGF−アルファおよびTGF−ベータなどのトランスフォーミング増殖因子;インスリン様増殖因子−Iおよび−II;インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD−3、CD−4、CD−8およびCD−19などのCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;免疫毒素;骨形成タンパク質;インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ、−ベータおよび−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−12;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;抗体およびイムノアドヘシン;グリコフォリンA;ならびにMUC1などのムチンタンパク質からなる群から選択することができる。
【0042】
ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、抗体またはそれの部分もしくは誘導体である。特に、目的のポリペプチドは、抗体またはそれの部分の重鎖または軽鎖であってよい。さらに、目的のポリペプチドは、(i)Fab断片、可変領域と各重鎖および軽鎖の第1の定常ドメインとからなる一価の断片;(ii)F(ab)
2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)可変領域および重鎖の第1の定常ドメインCH1からなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームの重鎖および軽鎖可変領域からなるFv断片;(v)scFv断片、単一のポリペプチド鎖からなるFv断片;(vi)共有結合している2つのFv断片からなる(Fv)
2断片;(vii)重鎖可変ドメイン;ならびに(viii)重鎖および軽鎖可変領域の会合が分子間だけで起こるが分子内で起こり得ないように共有結合した重鎖可変領域および軽鎖可変領域からなるマルチボディからなる群から選択される抗体の部分または誘導体であってよい。発現カセットが抗体またはそれの部分もしくは誘導体をコードするコード領域を含む実施形態では、遺伝子座制御領域は、特に、ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2の少なくとも部分、好ましくはヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2の少なくとも部分およびHS3の少なくとも部分、またはヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2の少なくとも部分およびHS4の少なくとも部分、特にヒトβ−グロビン遺伝子クラスターのHS2の少なくとも部分およびHS3の少なくとも部分およびHS4の少なくとも部分を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、コード領域は1を超えるポリペプチド、特に2つのポリペプチドをコードする。これらの実施形態では、コード領域は、それ自身の転写開始部位、転写終結部位およびポリアデニル化シグナルを各々有する別個のmRNAに転写される、2つまたはそれを超える別個の核酸配列を含有することができる。あるいは、コード領域は、別個のポリペプチドを各々コードする2つまたはそれを超える別個のコード核酸配列を含むmRNAに転写される核酸配列を含有することができる。これらの実施形態では、コード領域は、1つまたはそれより多くの内部リボソームエントリー部位を第1のものに加えて各コード核酸配列のために1つ含むことができる。これらの内部リボソームエントリー部位は、単一の転写物からの1を超えるポリペプチドの翻訳を可能にする。ある特定の実施形態では、コード領域は、2つのポリペプチド、特に抗体の重鎖および軽鎖をコードする。
【0044】
ある特定の実施形態では、コード領域は、細胞外局在シグナルを特に含むシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。シグナルペプチドをコードする核酸配列は、コード領域の唯一のコード配列であってもよいし、または上記のポリペプチドをコードする核酸配列などのさらなるコード配列に加えて存在してもよい。シグナルペプチドは、特に、コード領域によってコードされる目的のポリペプチドの分泌発現を誘導する。シグナルペプチドは、発現の間に残りのポリペプチドから切り離されてもよい。シグナルペプチドは、特に、コード領域に含まれる他のコード核酸配列の上流、またはクローニング部位の上流、特にコード領域の初めに位置付けられる。さらに、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、コード領域に含まれる他のコード核酸配列とインフレームで位置付けられる。
【0045】
特定の実施形態では、コード領域は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、コード領域は、リポーター遺伝子または選択マーカー遺伝子を含まない。さらなる実施形態では、コード領域は、グロビンタンパク質またはグロビンタンパク質の少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むそれの部分をコードする核酸配列を含まない。
クローニング部位
【0047】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、核酸配列を組み込むためのクローニング部位を含む。クローニング部位は、コード領域の代わりに発現カセットに存在してもよく、発現カセットに該核酸配列を導入する役目をしてもよい。さらに、特にコード領域がシグナルペプチドをコードする核酸配列を含むだけである実施形態では、コード領域に加えて、クローニング部位が発現カセットに存在してもよい。
【0048】
発現カセットに存在するクローニング部位は、コード領域、特に目的のポリペプチドをコードする核酸を発現カセットに導入するのに適している。別の核酸分子、例えば、発現カセットまたはベクター、の中に核酸断片を導入するための適切なクローニング部位および方法は当技術分野において一般的に知られている。特定の実施形態では、このクローニング部位は、少なくとも1箇所、特に、少なくとも2箇所、少なくとも3箇所、少なくとも4箇所または少なくとも5箇所、の制限酵素の認識配列を含む。適切な制限酵素およびそれらの認識配列は当技術分野において公知である。代表的な制限酵素は、EcoRI、EcoRV、HindIII、BamHI、XbaI、PvuI、KpnI、BstXI、XmaI、SmaI、NotI、XhoIおよびClaIである。多重クローニング部位の例示的な核酸配列は、配列番号1の1559位〜1664位の核酸配列によって表される。
転写終結領域
【0049】
ある特定の実施形態では、発現カセットは転写終結領域を含む。転写終結領域はプロモーター領域に機能的に連結され、コード領域の転写を終了する。それは、コード領域および/またはクローニング部位の下流に位置付けられる。
【0050】
具体的な実施形態では、転写終結領域は、転写終結部位および/またはポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化シグナルは、真核細胞、特にヒト細胞において未成熟mRNAのポリアデニル化を誘導することが可能である任意のポリアデニル化シグナルであってよい。それは、配列番号1の1725位〜1730位の核酸配列またはそのホモログを含むか、またはそれからなることができる。
エンハンサー領域
【0051】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、エンハンサー領域、特に3’エンハンサー領域を含む。3’エンハンサー領域は、コード領域および/またはクローニング部位の下流、そして存在する場合、転写終結領域の下流に位置付けられる。それはプロモーター領域に機能的に連結されており、コード領域の発現を増強する。エンハンサー領域は、特に、ヒト
Aγグロビン遺伝子の3’エンハンサーの少なくとも機能的部分を含むか、またはそれからなる。ある特定の実施形態では、エンハンサー領域は、配列番号1の2136位〜2881位の核酸配列またはそのホモログを含むか、またはそれからなる。ある特定の実施形態では、ホモログエンハンサー領域は、それが由来するエンハンサー領域を同じ条件の下で使用して到達される発現率の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%に到達するコード領域の発現率を提供する。
【0052】
発現カセットを含むベクター
一つの局面において、本発明は、本発明に従う発現カセットを含むベクターに関する。このベクターは、宿主細胞の中にこの発現カセットを移入させるのに適した任意のベクターであり得る。それぞれのベクターは当技術分野において公知である。特に、このベクターは、真核細胞、例えば哺乳類細胞、特にヒト細胞、の中への移入のために適応させられる。
【0053】
発現カセットに加え、ベクターはさらなるエレメントを含み得る。例えば、このベクターは1つまたは複数の選択マーカーを含み得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの選択マーカーは、このベクターを含まない宿主細胞に対してこのベクターを含む宿主細胞を選択するために適しており、この宿主細胞は、特に真核宿主細胞、例えば哺乳類宿主細胞、特にヒト宿主細胞である。この選択マーカーの適切な例には、抗生物質化合物に対する抵抗性を提供する遺伝子がある。さらに、このベクターは、E.coli細胞のような原核宿主細胞の中でこれを増幅するのに適したエレメントを含み得る。例えば、このようなエレメントは、Col E1 Oriのような複製の起点と、殺菌剤(例えば、アンピシリン)に対しての抵抗性を提供する遺伝子のような原核生物の選択マーカーと、を含む。
【0054】
特定の実施形態では、ベクターは、環状または直鎖状の2本鎖DNAであり、特に環状2本鎖DNAである。
【0055】
特定の実施形態において、ベクターは、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域を有する発現カセットを含む。
選択マーカー遺伝子
【0056】
ある特定の実施形態では、ベクターは選択マーカー遺伝子をさらに含む。選択マーカー遺伝子は、発現カセットのエレメントと機能的に連結している必要はない。選択マーカー遺伝子は、ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする。ベクターを含有する細胞は、好ましくは、選択マーカー遺伝子を含まない細胞の増殖を低減または阻害する適切な選択薬剤の存在下で培養される。
【0057】
具体的な実施形態では、選択マーカー遺伝子は、マーカー遺伝子の増幅および同じベクターの上に存在する発現カセットの同時増幅を可能にする増幅可能な選択マーカー遺伝子である。増幅可能な選択マーカー遺伝子を使用するときは、トランスフェクション細胞における発現カセットの増幅は、特に、漸増濃度の選択薬剤の存在下での細胞の段階的培養によって達成される。ある特定の実施形態では、選択マーカー遺伝子は、抗葉酸剤耐性DHFRバリアントなどのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードし、対応する選択薬剤はメトトレキセートなどの抗葉酸剤である。
【0058】
適切な増幅可能な選択マーカー遺伝子およびそれらの対応する選択薬剤のさらなる例は、ネオマイシン耐性遺伝子(例えばアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ)およびゲネチシン(G418);ピューロマイシンN−アセチル−転移酵素およびピューロマイシン;メタロチオネインおよびカドミウム;CAD(カルバモイルリン酸シンセターゼ:アスパルテートトランスカルバミラーゼ:ジヒドロオロターゼ)およびN−ホスホアセチル−L−アスパラギン酸;アデノシンデアミナーゼおよびXyl−A−またはアデノシン、2’デオキシコホルマイシン;AMP(アデニレート)−デアミナーゼおよびアデニン、アザセリン、コホルマイシン;UMP−合成酵素および6−アザウリジン、ピラゾフラン;IMP5’−デヒドロゲナーゼおよびミコフェノール酸;キサンチン−グアニン−ホスホリボシル転移酵素およびミコフェノール酸と制限的キサンチン;変異体HGPRTアーゼまたは変異体チミジンキナーゼおよびヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT);チミジレートシンセターゼおよび5−フルオロデオキシウリジン;P−糖タンパク質170(MDR1)およびアドリアマイシン、ビンクリスチン、コルヒチン;リボヌクレオチド還元酵素およびアフィジコリン;グルタミンシンセターゼおよびメチオニンスルフォキシミン(MSX);アスパラギンシンセターゼおよびβ−アスパルチルヒドロキサメート、アルビジーン、5’アザシチジン;アルギニノスクシネートシンセターゼおよびカナバニン;オルニチン脱炭酸酵素およびα−ジフルオロメチル−オルニチン;HMG−CoA−還元酵素およびコンパクチン;N−アセチルグルコサミニル転移酵素およびツニカマイシン;トレオニルtRNAシンセターゼおよびボレリジン;ならびにNa
+K
+−ATPアーゼおよびウアバインである。
【0059】
発現カセットまたはベクターを含む宿主細胞
さらなる局面において、本発明は、本発明に従う発現カセットまたは本発明に従うベクターを含む宿主細胞を提供する。この宿主細胞は、この発現カセットまたはベクターを用いるトランスフェクションのために適しており、そして特に、目的のポリペプチドの生産のために適した任意の細胞であり得る。特定の実施形態では、この宿主細胞は、確立された発現細胞株に由来する。この宿主細胞は、特に、真核細胞、例えば哺乳類細胞、特にヒト細胞、またはそれに由来する細胞である。特に、宿主細胞は、血液細胞、例えば白血球、血液前駆細胞または白血病細胞、またはそれに由来する細胞である。ある特定の実施形態では、宿主細胞は白血球起源の細胞である。
【0060】
特定の実施形態において、この宿主細胞はヒト骨髄性白血病細胞に由来する。宿主細胞の具体的な例は、K562、NM−F9、NM−D4、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、NM H9D8−E6Q12、GT−2X、GT−5sおよび該宿主細胞のいずれか1つに由来する細胞である。K562は、American Type Culture Collection(ATCC CCL−243)において存在するヒト骨髄性白血病細胞株である。残りの細胞株は、K562細胞に由来し、そして特定の糖化の特徴について選択されている。K562に由来する細胞株は、周知のK562に適した環境下で培養され、そして維持され得る。K562細胞以外の全てのこれらの細胞株はブダペスト条約に従って寄託された。この寄託についての情報は、本明細書の最後に見出され得る。
【0061】
代表的な宿主細胞は、例えば、国際公開第2008/028686号においてもまた記載されている。特定の実施形態において、この宿主細胞は、特定の糖化パターンを有する糖タンパク質の発現のために最適化される。特に、コード領域および/またはプロモーターならびに発現カセットまたはベクターのさらなるエレメント、におけるコドン出現頻度は、使用される宿主細胞の型に適合し、そして特に、使用される宿主細胞の型ために最適化される。
【0062】
特定の実施形態において、この宿主細胞は単離された宿主細胞である。特定の実施形態では、この宿主細胞はヒトまたは動物の体の中に存在しない。
【0063】
宿主細胞は、本発明に従う発現カセットまたはベクターが一過性にまたは安定的にトランスフェクトされていてもよい。特に宿主細胞のゲノムへの発現カセットの組込みによる安定的トランスフェクションが好ましい。安定的または一過性トランスフェクションのためのトランスフェクション方法は、当技術分野で公知である。特定の実施形態において、宿主細胞は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域を有する発現カセットを含むベクターを用いてトランスフェクトされている。
【0064】
生産方法
さらなる局面によると、本発明は、目的のポリペプチドを組み換えによって生産するための方法であって、
(a)互いに機能的に連結して、
(i)ヒトβ−グロビン遺伝子クラスターまたはヒトα−グロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の少なくとも機能的部分を含む遺伝子座制御領域;
(ii)ヒト
Aγグロビン遺伝子のプロモーターの少なくとも機能的部分を含むプロモーター領域;および
(iii)該目的のポリペプチドをコードする核酸配列を含むコード領域
を含む発現カセットを含む宿主細胞を提供する工程と;
(b)該宿主細胞が該目的のポリペプチドを発現する条件の下で該宿主細胞を培養する工程と;
(c)該目的のポリペプチドを単離する工程と
を含む方法を提供する。
【0065】
宿主細胞は、特に、本明細書に規定されるエレメントの1つまたはそれより多くを有する、本明細書に規定される発現カセットを含む。
【0066】
この宿主細胞を培養し、そして目的のポリペプチドを発現させるのに適した条件は、この方法において使用される特定の宿主細胞、ベクターおよび発現カセットに依存する。当業者は、適切な条件を容易に決定することができ、そしてそれらは、複数の宿主細胞について当技術分野においてまたすでに公知でもある。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、発現カセットを含み、選択マーカー遺伝子をさらに含むベクターがトランスフェクトされている。これらの実施形態では、工程(b)の培養条件は、細胞培養培地における対応する選択薬剤の存在を含むことができる。
【0067】
目的のポリペプチドの単離とは、特に、細胞培養物の残りの成分からの目的のポリペプチドの分離を指す。ある特定の実施形態では、発現カセットのコード領域は分泌発現のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、工程(b)にいて、目的のポリペプチドが宿主細胞によって分泌される。これらの実施形態では、工程(c)は、特に、例えば、遠心分離によって、この宿主細胞から目的のポリペプチドを含む細胞培養培地を分離することと、例えば、クロマトグラフ的な方法によって、この細胞培養培地のいくらかまたは大部分の構成要素からこの目的のポリペプチドを分離することと、を含む。この目的のポリペプチドを単離するのに適した方法および手段は当技術分野において公知であり、そして当業者によって容易に適用され得る。
【0068】
ある特定の実施形態では、目的のポリペプチドを生産する方法は、工程(c)の後に、
(d)医薬組成物として目的のポリペプチドを製剤化する工程をさらに含む。
【0069】
目的のポリペプチドを医薬組成物として製剤化することは、特に、目的のポリペプチドを含む組成物の緩衝液または緩衝液中構成要素を交換することを含む。さらに、この製剤化の工程は、この目的のポリペプチドの凍結乾燥を含み得る。特に、この目的のポリペプチドは、薬学的に受容可能な成分のみを含む組成物の中に移入される。
【0070】
本明細書中に記載される数的範囲は、その範囲を規定する数を含む。本明細書中に提供される表題は、本発明の様々な局面または実施形態の限定ではなく、それらはその全体が本明細書への参考として読まれ得る。一つの実施形態に従うと、方法の場合には特定の工程を含むように本明細書中に記載される目的物、または組成物の場合には特定の成分を含むように本明細書中に記載される目的物は、それぞれの工程または成分からなる目的物を指す。本明細書中に記載される具体的な局面および実施形態を選択し、そして組み合わせることは好ましく、そして具体的な実施形態のそれぞれの組み合わせから生じる特定の目的物もまた本開示に属する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、異なるDNアーゼ過敏性部位(HS)を有する遺伝子座制御領域(LCR)および異なるグロビン遺伝子を含むヒトグロビン遺伝子クラスターの構造を示す。A:第11染色体上のヒトβ−グロビン遺伝子クラスター;B:第16染色体上のヒトα−グロビン遺伝子クラスター。
【0072】
【
図2】
図2は、ベクターpHBG1 A〜Eで使用された例示的な発現カセットのエレメントを示す。HS:DNアーゼ過敏性部位;
Aγ−Prom:
Aγグロビン遺伝子のプロモーター;CS:コード配列/クローニング部位;γpA:
Aγグロビン遺伝子のポリアデニル化シグナル;
Aγ−ENh:
Aγグロビン遺伝子の3’エンハンサー。
【0073】
【
図3】
図3は、第VII因子のコード配列を含む異なるベクターの一過性トランスフェクションの後に得られた第VII因子タンパク質の収量を示す。クローニング部位に導入された第VII因子のコード配列および増幅可能な選択マーカーとしてDHFRをコードする遺伝子を有する、
図2に示す発現カセットを含むベクターを、NM−H9D8細胞に一過性にトランスフェクトした。培養の後に、第VII因子の全収量を決定した。pEFdhfrmut(−):第VII因子コード配列を有する対照ベクター。3つの独立した実験の結果が示される。
【0074】
【
図4】
図4は、本発明に従うベクターおよび抗体をコードする対照ベクターの安定的トランスフェクションの比較を示す。NM−H9D8−E6Q12細胞は、対照ベクターpEFまたは本発明に従うベクターpHBが安定的にトランスフェクトされた。両方のベクターが、抗体のコード配列および増幅可能な選択マーカーとしてDHFRをコードする遺伝子を含む。細胞におけるベクターの増幅のために、選択圧、すなわち培養培地中の選択薬剤メトトレキセートの濃度を、段階的に増加させた。グラフは、所与の培養時間の後にそれぞれのベクターで可能であった最大選択圧を示す。より高い可能な選択圧(メトトレキセート濃度)は、トランスフェクション細胞におけるベクターのより強い増幅を示し、これは目的のタンパク質のより高い生産をもたらすはずである。
【0075】
【
図5】
図5は、
図4の安定的にトランスフェクトされた細胞のプール生産性を示す。本発明に従うベクターおよび対照ベクターについての異なる選択圧のために、抗体産生を1日あたりの1細胞あたりのピコグラムで示す。
【0076】
【
図6】
図6は、選択圧に起因するベクターの増幅による、
図4の安定的にトランスフェクトされた細胞の生産性の増加を示す。出発細胞プール、増幅後の細胞プールおよび増幅後の単一細胞クローンについての異なる選択圧のために、抗体産生を1日あたりの1細胞あたりのピコグラムで示す。A:対照ベクターpEF;B:本発明に従うベクターpHB。
【実施例】
【0077】
(実施例1):ヒト
Aγグロビンプロモーターおよびヒトグロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域のエレメントを含むベクターの構築
グロビンベクターの構築のために、親ベクター(例えば、選択マーカーとしてピューロマイシンもしくはネオマイシン耐性遺伝子またはdhfr遺伝子を有するpEF)のエンハンサーおよびプロモーター領域を取り除いた。ヒト
Aγグロビンプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよび3’エンハンサー領域およびヒトグロビン遺伝子クラスターの遺伝子座制御領域の異なる構築物を合成し、適当な部位でベクターの中にクローニングした。
図2は、構築されたベクターの発現カセットの例示的構築物を示す。次に、目的のポリペプチドをコードする核酸配列をクローニング部位に導入した。
【0078】
(実施例2):グロビンベクターの一過性トランスフェクション
一過性トランスフェクションは、製造業者の説明書に従ってLipofectamine(登録商標)LTXおよびPlus(商標)試薬で実行した。簡潔には、それらの対数増殖期の間に2×10
5個の細胞を6ウェルプレートに播種した。プラスミドDNAを、Opti−MEM I還元血清培地およびPlus(商標)試薬に希釈した。インキュベーション時間(15分間)の後、Lipofectamine(登録商標)LTXを溶液に添加した。さらなるインキュベーション(30分間)の後、混合物を細胞懸濁液に滴下した。72時間後に、発現をELISAによって解析した。ベクターpEFdhfrmut(−)と比較して、より高いタンパク質力価がベクターpHBG1Cdhfr、pHBG1DdhfrおよびpHBG1Edhfrによって達成された(
図3)。
【0079】
(実施例3):グロビンベクターの安定的トランスフェクション
細胞株NM−H9D8のトランスフェクションは、製造業者の説明書に従って抗体の重鎖および軽鎖をそれぞれコードする2つの発現プラスミド(両方とも直鎖状)のプラスミドDNAを使用して、ヌクレオフェクション(Nucleofector(商標)技術、Amaxa)によって実行した。抗体産生プールの選択および増幅のために、メトトレキセートおよびピューロマイシンを漸増濃度で添加し、活性な抗体分子の分泌についてプールをスクリーニングした。
【0080】
pHBプラスミドをトランスフェクトしたプールは、より短い時間で増幅することができ(
図4)、より高いタンパク質レベル(
図5)をもたらしたが、これは結果として生じた単一細胞クローンについてそれぞれ確認できた(
図6)。
【0081】
寄託された生物学的材料の特定
細胞株DSM ACC 2606およびDSM ACC 2605は、2003年8月14日にNemod Biotherapeutics GmbH & Co.KG,Robert−Roessle−Str.10,13125 Berlin(DE)によってDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Mascheroder Weg 1b,38124 Braunschweig(DE)に寄託された。これらはNemod Biotherapeutics GmbH & Co.KGからGlycotope GmbHへ譲渡されている期間であったので、グリコトープはこれらの生物学的材料を参照する権利を与えられていた。
【0082】
細胞株DSM ACC 2806、DSM ACC 2807、DSM ACC 2856、DSM ACC 2858およびDSM ACC 3078は、以下の表に示す日にGlycotope GmbH,Robert−Roessle−Str.10,13125 Berlin (DE)によってDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Inhoffenstraβe 7B,38124 Braunschweig(DE)に寄託された。
【表1】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]