特許第6861684号(P6861684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861684多価アミロイドβに結合するD−ペプチド含有ポリマー及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861684
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】多価アミロイドβに結合するD−ペプチド含有ポリマー及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20210412BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20210412BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20210412BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   C07K14/00
   C12P21/02 C
   A61P25/28
   A61K38/10
   A61K38/16
   G01N33/53 D
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-211245(P2018-211245)
(22)【出願日】2018年11月9日
(62)【分割の表示】特願2015-503891(P2015-503891)の分割
【原出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2019-48847(P2019-48847A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】102012102998.9
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012108598.6
(32)【優先日】2012年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012108599.4
(32)【優先日】2012年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599000142
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム ユーリッヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Juelich GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ヴィルボルト
(72)【発明者】
【氏名】スーザン アイリーン フンケ
(72)【発明者】
【氏名】オレクザンダー ブレーナー
(72)【発明者】
【氏名】ルイトガート ナーゲル−シュテーガー
(72)【発明者】
【氏名】ディアク バートニク
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0243949(US,A1)
【文献】 Bioconjugate Chem.,2003年,Vol.14,pp.86-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド−β−オリゴマーに結合する2個の物質(モノマー)を含有しているポリマーであって、その際、前記2個の物質はそれぞれ配列番号65により表されたDB3モノマーである、前記ポリマー。
【請求項2】
前記モノマーがペプチドであり、当該ペプチドは、D−アミノ酸から成ることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーを構成する各々のモノマーは、アミロイド−β−ペプチドのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はフィブリルに、最大で500μMの解離定数(KD値)で結合する、請求項1又は2のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項4】
少なくとも1個のリンカー基を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記モノマーが、共有結合又は非共有結合により互いに結合している、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記モノマーが、リンカー無しで、すなわち直接に互いに結合しているか、又はリンカー基で互いに結合している、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記アミロイド−β−オリゴマーは、最大で1μMの解離定数で結合する、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
医薬品において使用するための、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
アルツハイマー病の治療のための、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーを含有しているキット。
【請求項11】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーを含有しているプローブ。
【請求項12】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーを含有している、アルツハイマー病を治療するための組成物。
【請求項13】
ペプチド合成法若しくは低分子量化合物用の有機合成法を使用するか、又はタンパク質の組み換え製造によりポリマーを製造することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーを製造する方法。
【請求項14】
アミロイド−β−オリゴマーを同定、定性的及び/又は定量的に決定するためのプローブとしての、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【請求項15】
ポリマー/アミロイド−β−オリゴマーの複合体を形成するための、請求項1からまでのいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既にアミロイドβ結合特性を有する互いに結合した複数の物質から成る新規多価アミロイドβ結合ポリマー物質ならびに以後“ポリマー”と称する物質の、特に医薬品におけるその使用に関する。
【0002】
今後数十年での人口統計的増大に基づき、高齢に条件付けられる疾病を被る人の数は多くなるであろう。ここでは、特にいわゆるアルツハイマー病(AD、Alzheimersche Demenz、ラテン名=Morbus Alzheimer)と称することにする。
【0003】
これまでにADの原因に働く作用物質又は医薬品は存在していない。これまでに使用され、かつ認可されている医薬品はアルツハイマー病の際に生じる症状を僅かに緩和する。しかし、これらは病気の進行を遅らせることが出来ないか又は治療を伴う。動物実験で予防では成功したが、しかし(無条件に)ADの治療では達成されていなかった幾つかの物質が存在する。神経変性疾患に対する作用物質は、DE102006015140A1から公知である。
【0004】
アルツハイマー病の特徴は、アミロイドβ−ペプチド(A−β−ペプチド、Aβ又はAβ−ペプチド)の細胞外沈殿物である。プラークの形のこれらのA−β−ペプチドの沈殿物は、死後AD−患者の脳内に通常は確認される。従って、種々の形のA−β−ペプチド、例えば、フィブリルのようなものは疾患の発生と進行の原因になっていると推定されている。更に数年来、遊離した小さな拡散性A−β−オリゴマーは、ADの発症と進行の主な原因になっているとみなされている。
【0005】
A−β−オリゴマーの構成成分としてのA−β−モノマーは、人体で持続的に生じ、かつ自体は毒性ではないと推定されている。それどころか、モノマーが肯定的な機能を備えている可能性がある。A−β−モノマーは、その濃度により無作為に結合することができる。この濃度は、体内でのその形成速度と分解速度に応じる。年齢が上がるにつれて体内でのA−β−モノマーの濃度が増大するので、A−β−オリゴマーへのモノマーの自発的な結合が常に起こり得る。このように生じるA−β−オリゴマーは、プリオンと同様に増大し、かつ最後にはアルツハイマー病を生じる。
【0006】
ADの予防と治療又は治癒の重要な違いは、初めのA−β−オリゴマーの形成を阻止することにより、すでに予防を達成できるということにある。このために、A−β−オリゴマーに関して僅かに親和性かつ選択的である幾つかの僅かなA−β−リガンドで十分である。
【0007】
多くのモノマーからのA−β−オリゴマーの形成は、高い系統の反応であり、従ってA−β−モノマー濃度の高い能力による。従って、初めのA−β−オリゴマーの形成を阻止するために、活性なA−β−モノマー濃度の僅かな減少が既に生じる。これまでの開発に存在していた予防的治療コンセプトと治療物質は、おそらくこのメカニズムに基づいていると推定される。
【0008】
しかし、ADの治療の場合には、完全に異なる状況から出発する。ここでは、プリオンに似たメカニズムにより増大されるA−β−オリゴマー又は事実上既に大きなポリマー又はフィブリルも存在する。しかし、この増大はより低い系統の反応であり、かつA−β−モノマーの濃度に殆ど依存しない。
【0009】
従来技術から公知の物質は、種々の方法でA−β−モノマー及び/又はオリゴマーの濃度を減少する。従って、例えば、動物実験で予防に使用されたγ−骨格のモジュレーターが公知である。
【0010】
WO02/081505A2からは、A−β−ペプチドに結合するD−アミノ酸の種々の配列が公知である。D−アミノ酸からのこれらの配列は、4μMの解離定数(KD値)でアミロイド−β−ペプチドに結合する。
【0011】
WO2011/147797A2からは、A−β−オリゴマー化を阻止するアミノピラゾールとペプチドから成るハイブリッド化合物が公知である。
【0012】
A−β−ペプチドと相互作用する化合物は、DE102008037564A1、DE69621607T2又はDE102010019336A1から公知である。2個の結合相手への多価ポリマーの結合は、WO2008/116293A1に記載されている。
【0013】
動物実験でプラスの結果を示した多くの物質では、この作用をヒトにおける臨床実験では証明できなかった。臨床実験では、フェーズIIとIIIは明らかにADと診断されたヒトだけに処置できた。ここでは、例えばプリオンに類似したメカニズムにより、既に存在するA−β−オリゴマーから更なる形成を阻止するためにA−β−モノマー濃度を僅かに減少するだけでは十分ではない。しかし、疾患の経過に影響を与えるために、A−β−オリゴマーの増大、なお良好にはその破壊又は無害化は無条件に必要である。
【0014】
これまでに、アルツハイマー病は、痴呆の症状が認知されたヒトでの試験により主に神経−心理試験により診断されている。しかし、A−β−オリゴマー及び更にそれに続くフィブリル及びプラークは、該症状が生じる前に患者の脳内で20年間まで遡って生じていて、かつ既に不可逆的な障害を引き起こし得たことが公知である。しかし、これまでにADが該症状の発症前に診断された可能性はない。
【0015】
従って、極めて特異的かつ高い親和性でA−β−オリゴマーに結合して、それらの増大を阻止する新規化合物(作用物質)の必要性が更にある。これらの化合物は、不所望な副作用を有する効果を示すべきではなく、特に免疫反応を妨げてはならない。該化合物は、更に毒性A−β−オリゴマー、ひいては遊離した小さな拡散性オリゴマーが低濃度でさえも検出され、完全に根絶する及び/又はそれらの(プリオンに類似した)増大を阻止すべきである。
【0016】
更に、特にこれらのオリゴマーが初めて低濃度で生じた場合に、A−β−オリゴマーの検出とマーキング用のプローブとして使用可能な新規化合物が必要とされている。
【0017】
この課題は、アミロイド−β−オリゴマーに結合する少なくとも2個の物質(モノマー)を含有する本発明によるポリマーにより解決された。
【0018】
本発明の意味で、A−β−オリゴマーという用語は、A−β−凝集体とA−βオリゴマー、また遊離する小さな拡散性A−β−オリゴマーの両方を意味する。本発明の意味で、ポリマーとは、既にアミロイド−βに結合する物質(モノマー)用に、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個又はその数倍から形成される物質である。
【0019】
1実施態様では、ポリマーとはペプチドである。これらは有利には実質的にD−アミノ酸から成る。
【0020】
本発明の意味で、“実質的にD−アミノ酸から成る”という用語は、使用すべきモノマーが、少なくとも60%、有利には75%、80%、特に有利には85%、90%、95%、特に96%、97%、98%、99%、100%がD−アミノ酸から構成されていることを意味する。
【0021】
本発明の1変法では、A−β−モノマー及び/又はA−β−オリゴマー及び/又はA−β−ペプチドのフィブリルが、最大で500μM、有利には250、100、50μM、特に有利には25、10、6μM、とりわけ4、2、1μMの解離定数(KD値)で結合するモノマーが使用される。
【0022】
本発明によるポリマーは、上記モノマーの2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上を含有する。
【0023】
もう1つの実施態様では、モノマーは次のもの:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79ならびにそれらの相同体;から成る群から選択される。
【0024】
もう1つの変法では、本発明によるポリマーは、アミロイドβ−ペプチドの一部分と結合する。
【0025】
もう1つの変法では、モノマーは、所定の配列から3個までのアミノ酸が異なる配列を有する。更にモノマーとして上記配列を含有する配列も使用される。
【0026】
もう1つの変法では、モノマーは上記配列の断片を有するか、又は上記配列に相同の配列を有する。
【0027】
本発明の意味では、“相同配列”又は“相同性”とは、1つのアミノ酸配列が、モノマーの上記アミノ酸配列のうち1つと少なくとも50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の同一性を有することを意味する。“同一性”という用語の代わりに、本記載では、“相同”又は“相同体”も同じ意味で使用される。2個の核酸配列又はポリペプチド配列の間の同一性は、Smith,T.F.及びWaterman,M.S(Adv.Appl.Math.2:482〜489(1981))のアルゴリズムに基づくプログラムBESTFITを用いる比較により、アミノ酸に関して以下のパラメーター:ギャップクリエーションペナルティー:8及びギャップ伸長ペナルティー:2;及び核酸に関して以下のパラメーター:ギャップクリエーションペナルティー:50及びギャップ伸長ペナルティー:3の調整下に算定した。
【0028】
2個の核酸配列又はポリペプチド配列の間の同一性は、それぞれ全体の配列長さにわたる核酸配列/ポリペプチド配列の同一性により定義付けるのが有利であり、これは例えばNeedleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol.48:443〜453)のアルゴリズムに基づくプログラムGAPを用いる比較により、アミノ酸に関して以下のパラメーター:キャップクリエーションペナルティー:8及びギャップ伸長ペナルティー:2;及び核酸に関して以下のパラメーター:ギャップクリエーションペナルティー:50及びギャップ伸長ペナルティー:3の調整下に算定した。本発明の意味で、2個のアミノ酸配列が同じアミノ酸配列を有する場合には、これらは同一である。
【0029】
1変法で相同体とは、上記モノマーの相応するretro−inverse配列を意味すると解釈される。“retro−inverse配列”という用語は、本発明によればエナンチオマー型のアミノ酸から組成されるアミノ酸配列を指し(invers:α−炭素原子のキラリティーが逆になっている)及びその際に更に配列順序は元のアミノ酸配列とは逆になっている(retro=逆方向)。
【0030】
本発明によるポリマーは同一のモノマーから構成されるか、又は種々のモノマーを含有している。
【0031】
代替方法では、本発明によるポリマーは、上記モノマーの2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の任意の組合せから各々構成される。
【0032】
1実施態様では、本発明によるポリマーは、2個のD3−モノマーから成るダイマー(配列番号13)である。
【0033】
もう1つの実施態様では、本発明によるポリマーは、2個のRD2−モノマーから成るダイマー(配列番号76)である。
【0034】
ダイマーは、例えば化学合成又はペプチド合成により製造できる。
【0035】
本発明の1実施態様では、モノマーは共有結合により互いに結合する。もう1つの実施態様では、モノマーは非共有結合により互いに結合する。
【0036】
本発明の意味では、ペプチドが頭−頭、尾−尾又は頭−頭でその間にリンカー又はリンカー基を使用せずに互いに直線状に結合する場合には、モノマー単位の1つの共有結合又は結合が存在する。
【0037】
本発明の意味では、モノマーがビオチン及びストレプトアビジンを介して、特にストレプトアビジンテトラマーを介して互いに結合する場合には非共有結合が存在する。
【0038】
本発明のもう1つの変法では、特に上記のようにモノマーは直線状に互いに結合できる。もう1つの他の変法では、モノマーは本発明によるポリマーに分枝状に互いに結合する。
【0039】
分枝ポリマーは、本発明によればデンドリマーであることができ、その際、モノマーは共有結合又は非共有結合により互いに結合する。
【0040】
二者択一的に、モノマーはプラットフォーム分子(例えば、PEG又は糖のようなもの)と一緒に結合することもでき、かつこのように分枝ポリマーが形成される。
【0041】
二者択一的に、これらの任意選択の組合せも可能である。
【0042】
本発明によるポリマーは、アミロイド−β−オリゴマーが、最大で1μM、有利には800、600、400、200、100、10nM、特に有利には1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50pM、特に最大で20pMの解離定数で結合することに特徴付けられる。もう1つの実施態様では、本発明によるポリマーは、アミロイド−β−オリゴマーが最大で1mM、有利には800、600、400、200、100、10μM、特に有利には1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50nM、特に有利には1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50pM、最も有利には最大で20pM、特に15、10、9、8、7、6、5pMの解離定数で結合することに特徴付けられる。
【0043】
本発明によるポリマーは医薬品で使用するために適切である。
【0044】
1実施態様では、これはアルツハイマー病を治療するためのポリマーである。もう1つの実施態様では、これはパーキンソン、CJD(クロイツフェルトヤコブ病)、又は糖尿病の治療に使用できるポリマーである。
【0045】
本発明により構成されたポリマーは、それ自体がA−β−オリゴマーに結合したモノマーから成り、モノマーと比べてA−β−オリゴマーに対するその選択性と親和性に関して著しい共同作用を示す。言い換えると、本発明によるポリマーはモノマーよりも優れている。本発明の意味での相乗効果とは、A−β−オリゴマーに関して高い選択性と親和性を示す効果であり、特にモノマー単体として又はその付加においてAβ−オリゴマーへの結合に関するKD値の効果である。
【0046】
リンカーとは、共有結合によりモノマーに結合した1個又は複数の分子を意味すると解釈され、その際、このリンカーは互いに共有結合により結合していてもよい。
【0047】
本発明のもう1つの代替方法では、リンカーによって、モノマーにより予め与えられたポリマーの特性、すなわち、Aβ−オリゴマーへの結合は変化しない。
【0048】
もう1つの代替方法では、リンカーはモノマーにより予め与えられたポリマーの特性の変化に作用する。このような実施態様では、本発明によるポリマーの選択性及び/又は親和性は、Aβ−オリゴマーに関して強くなる及び/又は解離定数が下がる。もう1つの実施態様では、リンカーは、これが特定の大きさのA−β−オリゴマーだけに選択的に結合し、本発明によるポリマーの立体作用を変化させるように選択されるか又は構成できる。
【0049】
リンカーの限定されない例は、アミノ酸配列“nwn”である。
【0050】
本発明によるポリマーの立体作用のこのような変化は、本発明による分枝ポリマーの構成によっても、特殊な構造のデンドリマーによって又はモノマー及びプラットフォーム分子によるポリマーの相応する構造又はこれらの任意選択の組合せによって達成できる。
【0051】
本発明の対象は、特にアルツハイマー病を治療するための、本発明によるポリマーを含有している組成物でもある。
【0052】
更に本発明の対象は、特に毒性A−β−オリゴマーを阻止するための、又はそれから形成されるポリマー又はフィブリルを分解するための本発明によるポリマーを含有している組成物である。
【0053】
本発明による“組成物”は、専門知識に基づき製造すべき調製物中に、本発明によるポリマーを含有している例えば、ワクチン、医薬品(例えば、タブレット型)、注射溶液、栄養又は栄養補助剤であることができる。
【0054】
本発明によるポリマーは、A−β−オリゴマー又はそこから形成されるポリマー又はフィブリルを、これらに結合し、かつ無毒性化合物に変換することにより解毒する。フィブリルの形成を阻害できる物質は、必ずしも予め形成されたフィブリルを分解できなくてもよい。それというのも、予め形成されたA−β−フィブリルは極めて安定であり、かつ極めて分解し難く、かつ緩慢にしか再分解できないからである。
【0055】
従って、本発明の対象はA−β−オリゴマー、そこから形成されるポリマー又はフィブリルを解毒する方法でもある。
【0056】
遊離する小さな拡散性A−β−オリゴマー、結合してフィブリルになるまでのより大きなA−β−オリゴマーのその特性に基づき、ADの全ての段階で本発明によるポリマーが使用可能である。本発明の教示に基づき、種々の形のA−β−オリゴマーに選択的に結合するポリマーを製造できる。
【0057】
更に本発明の対象は、本発明によるポリマーの製法でもある。有利な方法は、例えば、ペプチド合成法(Peptide)、タンパク質の組み換え製造及びいわゆる任意の低分子量化合物用の容認されている有機合成法である。
【0058】
本発明は、アミロイド−β−オリゴマーを同定、定性的及び/又は定量的に決定するためのプローブとしてのポリマーの使用にも関する。また本発明の対象は、アミロイド−β−オリゴマーを同定、定性的及び/又は定量的に決定するための本発明によるポリマーを含有するプローブである。
【0059】
このようなプローブは大変重要である。それというのも、これによりアルツハイマー病の早期診断が可能になるからである。よって病気を極めて早期の段階で抑えるはたらきをすることができる。
【0060】
このような分子のプローブは、本発明によるポリマーを含有し、かつ患者に例えば静脈内に注入できる。プローブの更なる構成成分は以下のものである:染料、蛍光染料、放射線アイソトープ(例えば、PET)、ガドリニウム(MRI)及び/又は画像でプローブに使用される成分である。血液脳関門の経過後に、プローブはA−β−オリゴマー及び/又はプラークに結合することができる。このようにマークされたA−β−オリゴマー及び/又はプラークは、イメージング法、例えば、SPECT、PET、CT、MRT、プロトン−MR−分光法などにより目視可能にすることができる。
【0061】
本発明の更なる対象は、毒性アミロイド−β−オリゴマーの増大を阻止するためのポリマーの使用である。
【0062】
本発明によるポリマーは、更に無毒性ポリマー・アミロイド−β−オリゴマーの複合体の形成にも使用される。
【0063】
本発明の更なる対象は、本発明によるポリマーを含有しているキットである。このようなキットでは、本発明によるポリマーは容器中に場合によりバッファー又は溶液と一緒にパッキングできる。キットの全ての成分は、この容器中に又は互いに別々にパッケージングされてもよい。更に、キットはその実用のための指示書を含んでいてもよい。このようなキットは、例えば、本発明によれば注射用ボトル中にストッパー及び/又は隔膜を含んでいてもよい。更に、その中に例えば使い捨てシリンジを含んでいてもよい。
【0064】
本発明により使用可能である配列は以下に示されている通りである:
【数1】
【0065】
【数2】
【0066】
【数3】
【0067】
A−β−に結合する抗体は以下に示されている通りである:
a)アミロイドβ−ペプチド又はアミロイドβ−ペプチド−部分断片のretro−inverse配列に結合する及び/又は
b)アミロイドβ−ペプチドの多量体化ドメインに結合し、かつアミロイドβ−ペプチドにも結合する及び/又は
c)次の群:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79又はそれらの相同配列;
から選択される本発明による上記配列のうち1つに結合する抗体。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】D3もしくはD3多量体の存在でA−β(1〜42)の凝集挙動を分析するためのThT試験の結果を示す図である。
図2】D3とD1もしくはD3D1多量体の存在でA−β(1〜42)の凝集挙動を分析するためのThT試験の結果を示す図である。
図3】凝集体の大きさを示す図である。
図4】ThT蛍光の吸収を示す図である。
図5】A−β(1〜42)フィブリルへのD3結合を示す図である。
図6】A−β(1〜42)フィブリルへのD3D3結合を示す図である。
【0069】
実施例:
例1:以下の4つのD3−ダイマーを製造した:
D3D3:rprtrlhthrnrrprtrlhthrnr(配列番号13)
D3nwnD3:rprtrlhthrnrnwnrprtrlhthrnr(配列番号14)
二重−D3−遊離N末端:(rprtrlhthrnr)2−PEG3(配列番号15)
二重−D3−遊離C末端:PEG5−(rprtrlhthrnr)2(配列番号16)
【0070】
更に、D3とD1から成る(配列qshyrhispaqv、配列番号6)か、又はD3とV1から成るダイマーを製造した(化学合成又はペプチド合成による)。その際、V1はN−末端の1番目のアミノ酸が欠失したD1の変異体である(配列shyrhispaqk、配列番号62)
D3D1
D3V1
V1D3
【0071】
例2
チオフラビンT−試験
例1で製造したD3−ダイマーならびにD3−モノマーを通常の当業者に公知のオチオフラビンT(ThT)試験で比較した。ThTは通常のフィブリルに結合する際に高い蛍光を有する染料であるので、フィブリル化の指標として使用される。D3−ダイマーはD3−モノマーよりもはるかに効率的にA−β−フィブリル化を低減する。
【0072】
図1には、D3もしくはD3−多量体の存在でA−β(1〜42)の凝集挙動を分析するためのThT試験の結果が示されている。A−β−ペレットを一晩HFIPと一緒に予備インキュベートし、引き続き真空遠心分離を用いるエバポレーションにより製造した(HFIP中にAβが222μM)。A−βペレットをPBS(pH7.4)250μL中(10μM ThT及び10μM D3又はD3−多量体を含めて)で再懸濁し、かつ4回測定するためにアリコート化した。ThTの蛍光をλex440nmとλem=490nmで蛍光スペクトロメーター中で測定した。
【0073】
例3
例1で製造したD3D1−ダイマーならびにD1−モノマーとD3モノマーを当業者に公知の通常のThT試験ChTThT試験において比較した。D3D1−ダイマーは、D3−モノマーよりもはるかに効率的にA−β−フィブリル化を減少させた。
【0074】
図2には、D3とD1もしくはD3D1−多量体の存在でA−β(1〜42)の凝集挙動を分析するためのThT試験の結果が示されている。A−βを一晩HFIP中で予備インキュベートした(HFIP中A−β222μM)。引き続き、13.5μgのアリコートを製造し、かつ一晩HFIPを留去した。A−βペレットをPBS(pH7.4)270μL中(10μM ThTを含めて)で再懸濁し、引き続き相応する濃度D3もしくはD3D1−多量体(5μM、10μM、50μMもしくは100μM、)に添加し、その後に5回測定用にアリコート化した。ThTの蛍光をλex440nmとλem=490nmで蛍光スペクトロメーター中で測定した。
【0075】
例4
例1で製造したD3−ダイマーならびにD3−モノマーをAβ(1〜42)と混合し、及び密度勾配遠心分離に課した。この場合に、溶液中のA−βとA−β−ペプチド混合物のサイズ分布は、イオジキサノール勾配(5〜50%)における沈殿分析により試験した。
【0076】
混合物は、80μM A−β及び20μM(D3)又は10μM(D3D3)ペプチドを含有していた。遠心分離の後、それぞれ140μlの15フラクションを連続したピペッティングにより表面から獲得し、かつ変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により及び引き続く銀染色により分析した。結果(図3)は、ペプチドがA−β−オリゴマーの含有量を著しく減少(フラクション4〜10)させ、D3D3が試験した時点でD3よりも相当に高いレベルで減少させたことを示した。フラクション12〜15で検出可能である大きな凝集体が生じた。更なる段階では、D3−A−β−オリゴマーが沈降し、かつ非晶質で無毒性の大きな凝集体に変化することが判明した(Funkeら、ACS Chem.Neurosci.2010)。
【0077】
例5
本発明による物質は、フィブリルの形成を阻害し、かつ予備成形されたフィブリルを分解することができる。チオフラビンT(ThT)−脱フィブリル化アッセイでインヒビター−ダイマー(D3D3配列番号13、RD2RD2配列番号76、D3(Δ)デルタ−hthD3(Δ)デルタ−hth配列番号75)を相応するインヒビター−モノマー(D3配列番号:66、RD2配列番号1、D3(Δ)デルタ−hth配列番号69)と比較し、どの程度効率的であるのかを試験した。
【0078】
この場合に、予備形成されたどのフラクションのThT陽性フィブリルが一定のインキュベーション時間の後に減少するのかを試験した。チオフラビンT(ThT)は、アミロイドとの相互作用の際に変化し、ThT陽性フィブリルは、その分光学的特性が測定可能である。測定されたThT蛍光の吸収(λem:450nm、λex:490nm)は、A−β−フィブリルの特徴であるβ−折り畳み構造の吸収を反映した。予備形成されたA−β−フィブリルを製造するために、合成されたA−β(1〜42)33μMを10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)及び8.5%DMSO中、37℃で6日間インキュベートした。これにより生じたAβフィブリルを、各々の物質(D3D3、RD2RD2、D3デルタ−hthD3デルタ−hth、D3、RD2、D3Δhth)0.1μg/μlと20μMにし、かつ10μM ThTと一緒にした。各反応混合物50μLを384個のウェルを有する黒いマイクロタイタープレートのウェルに満たした(Nunc,Langenselbold)。TgT−蛍光を17.5時間にわたり追跡測定した。その際に、マイクロタイタープレートを各々の測定前に30秒間振盪した。全てのプローブを5回測定した。評価の際に、中間値、標準偏差及び有意(モノマーとダイマーエフェクターの間)を算出した。エフェクターのThT蛍光をインヒビター物質の不在でAβ−フィブリルのTh−蛍光に関して標準化した。
【0079】
試験した全てのインヒビター物質は、ThT蛍光の吸収を示した(図4)。これは、予備形成されたAβ−フィブリルを非繊維性Aβ−種に変換できたことを示している。その際に、ダイマー物質D3D3、RD2RD2及びD3デルタhthD3デルタ−hthは、モノマーペプチドD3、RD2及びD3デルタ−Δhthに対して著しく強い効果を示した。有意は、Mann−Whitney試験により算出し、及び図中に星印で表示してある:*、p<0.05;**、p<0.01。
【0080】
例6
D3とD3D3に関して比較による定量的アフィニティーデータを得るために、例6に記載したようにAβ(1〜42)−フィブリルを調製した。これとは異なり、Aβ(1〜42)90%と、アミノ末端をビオチニル化しておいたAβ(1〜42)10%から成る混合物をフィブリル化試験に使用した。
【0081】
可能性としてあり得る他のAβ構造体、例えばモノマー及び非晶質オリゴマーのフラクションからこのフィブリルを分離するために、例4に記載されているようにフィブリル調製物に濃度勾配遠心分離の行程を課した。フラクション11と12で得られたフィブリルだけは、引き続きリガンドとして表面プラズモン共鳴分析に使用した。この場合に、これはストレプトアビジンを被覆したチップ(Sensor Chip SA)上に固定化した。引き続き、分析D3とD3D3のアフィニティーを“シングルサイクル動的”分析により決定した。使用した分析濃度、得られたセンサーグラム(太線)、得られたフィット−曲線(細い破線)及び得られた解離定数は、図5図6に含まれている。
【0082】
結果から、1.1μMと0.12μMの解離定数で2個の僅かに異なる結合部位にD3−モノマーが結合していることが明らかである。また、D3−ダイマーは2個の異なる結合部位で結合し、そのうち1つはD3−モノマーと似た0.17μMの解離定数を有するが、もう一方は、数桁少ない8.8pMの解離定数を有する。この事は、多価物質(ここではD3D3)が、相応する一価の物質(ここではD3)よりも、およそ10000倍強くその標的に結合することを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]