【文献】
PLOS ONE,2015年 7月 1日,DOI:10.1371/journal.pone.0131177, p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のC末端に少なくとも9アミノ酸を含む、請求項1の組換え免疫グロブリン重鎖。
前記ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも5アミノ酸を含む、請求項1または2の組換え免疫グロブリン重鎖。
前記ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも8アミノ酸を含む、請求項1または2の組換え免疫グロブリン重鎖。
前記ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも5アミノ酸を、そして該配列のC末端に少なくとも9アミノ酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の組換え免疫グロブリン重鎖。
前記ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも8アミノ酸を、そして該配列のC末端に少なくとも9アミノ酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の組換え免疫グロブリン重鎖。
前記ソルターゼ求核剤が、関心対象のタグを含み、そして式(Gly)n−タグを有し、そして式中、nは2、3、4、5または6より選択される、請求項10記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
本明細書および請求項において、免疫グロブリン重鎖Fc領域中の残基の番号付けは、Kabat(本明細書に明白に援用される、Kabat, E.A.ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, 米国国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1991), NIH公報91−3242)のEUインデックスのものである。
【0026】
用語「位」は、ポリペプチドのアミノ酸配列中のアミノ酸残基の位置を示す。位は、連続して、または確立された形式、例えば抗体番号付けのためのKabatのEUインデックスにしたがって、番号付けされてもよい。
【0027】
用語「全長抗体」は、天然抗体に実質的に同一である構造およびアミノ酸配列を有する抗体を示す。
用語「全長抗体重鎖」は、NからC末端方向に、抗体可変ドメイン、第一の定常ドメイン(=CH1ドメイン)、抗体重鎖ヒンジ領域、第二の定常ドメイン(=CH2ドメイン)、および第三の定常ドメイン(=CH3ドメイン)を含むポリペプチドを示す。
【0028】
用語「全長抗体軽鎖」は、NからC末端方向に、抗体可変ドメインおよび定常ドメインを含むポリペプチドを示す。
用語「ヒンジ領域」は、野生型抗体重鎖において、CH1ドメインおよびCH2ドメインを連結する抗体重鎖ポリペプチドの部分を示し、例えばヒトIgG1に関しては、EU番号付け系(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html)にしたがって約216位〜約238位、またはKabat番号付けの約226位〜約243位である。Kabatにしたがった226位は、ヒトIgG1重鎖定常領域の99位に対応する。他のIgGサブクラスのヒンジ領域は、ヒトIgG1サブクラス配列のヒンジ領域システイン残基と整列させることによって決定可能である。
【0029】
ヒンジ領域は、通常、同一アミノ酸配列を持つ2つのポリペプチドからなる二量体性である。ヒンジ領域は、一般的に、約25アミノ酸残基を含み、そして柔軟であって、抗原結合領域が独立に動くことが可能である。ヒンジ領域は、3つのドメイン:上部、中央、および下部ヒンジドメインに細分割可能である(例えば、Rouxら, J. Immunol. 161(1998)4083を参照されたい)。
【0030】
用語、Fc領域の「上部ヒンジ領域」は、例えばヒトIgG1に関して、中央ヒンジ領域に対してN末端のアミノ酸残基ストレッチ、すなわちEU番号付けにしたがってFc領域の残基216〜225を示す。
【0031】
用語「中央ヒンジ領域」は、例えばヒトIgG1に関して、すなわちEU番号付けにしたがってFc領域の残基226〜230は、架橋システイン残基を含むアミノ酸残基ストレッチを示し、プロリンおよびシステインが豊富であり、そして上部および下部ヒンジ領域の間に位置する。
【0032】
用語、Fc領域の「下部ヒンジ領域」は、例えばヒトIgG1に関して、中央ヒンジ領域に対してすぐC末端側のアミノ酸残基ストレッチ、すなわちEU番号付けにしたがってFc領域の残基231〜238を示す。
【0033】
用語「野生型Fc領域」は、天然に見られる典型的なアロタイプ/イソアロタイプのFc領域のアミノ酸配列に同一であるアミノ酸配列を示す。野生型ヒトFc領域には、天然ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、天然ヒトIgG2 Fc領域、天然ヒトIgG3 Fc領域、および天然ヒトIgG4 Fc領域、ならびにその天然存在変異体が含まれる。
【0034】
用語「改変」は、例えば組換え抗体の、親アミノ酸配列における1またはそれより多いアミノ酸残基の突然変異、付加、または欠失を示す。
用語「アミノ酸突然変異」は、親アミノ酸配列のアミノ酸配列における修飾を示す。例示的な修飾には、アミノ酸置換、挿入、および/または欠失が含まれる。
【0035】
用語「位でのアミノ酸突然変異」は、明記する残基の置換または欠失、あるいは明記する残基に隣接した少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を示す。用語「明記する残基に隣接した挿入」は、その1〜2残基以内の挿入を示す。挿入は、明記する残基に対してN末端またはC末端側であることも可能である。
【0036】
用語「アミノ酸置換」は、異なる「置換」アミノ酸残基での、あらかじめ決定した親アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換を示す。単数または複数の置換残基は、「天然存在アミノ酸残基」(すなわち遺伝暗号にコードされるもの)であってもよく、そして:アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile);ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択される。1つの態様において、アミノ酸置換は天然存在アミノ酸による置換である。1つの態様において、置換残基はシステインではない。
【0037】
1またはそれより多い非天然存在アミノ酸残基での置換もまた、本明細書のアミノ酸置換の定義に含まれる。「非天然存在アミノ酸残基」は、ポリペプチド鎖中で、隣接アミノ酸残基(単数または複数)と共有結合可能である、上に列挙する天然存在アミノ酸残基以外の残基を示す。非天然存在アミノ酸残基の例には、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、α−アミノイソ酪酸(Aib)およびEllmanら, Meth. Enzym. 202(1991)301−336に記載されるものなどの他のアミノ酸残基類似体が含まれる。こうした非天然存在アミノ酸残基を生成するため、Norenら(Science 224(1989)182)および/またはEllmanら(上記)の方法を用いてもよい。簡潔には、これらの方法は、サプレッサーtRNAを非天然存在アミノ酸残基で化学的に活性化し、その後、該RNAのin vitro転写および翻訳を伴う。
【0038】
用語「アミノ酸挿入」は、あらかじめ決定した親アミノ酸配列内への1またはそれより多いさらなるアミノ酸残基の取り込みを示す。本発明にしたがって「挿入されるアミノ酸配列」は、通常、少なくとも5つのアミノ酸からなるであろう。挿入されるアミノ酸残基(単数または複数)は、上に定義するように、天然存在であってもまたは非天然存在であってもよい。1つの態様において、挿入されるアミノ酸残基は、天然存在アミノ酸残基である。1つの態様において、挿入されるアミノ酸残基は、天然存在アミノ酸残基であるが、システインではない。1つの態様において、挿入されるアミノ酸残基は、天然存在アミノ酸残基であり、そしてシステインでもまたはプロリンでもない。
【0039】
用語「アミノ酸欠失」は、アミノ酸配列中のあらかじめ決定した位での少なくとも1つのアミノ酸残基の除去を示す。
本出願内で、アミノ酸改変に言及する場合はいつでも、計画的なアミノ酸改変であり、そして無作為なアミノ酸修飾ではない。
【0040】
II.組換え法
VHドメイン、CH1ドメイン、中央ヒンジ領域の最もC末端のシステインまでのヒンジ領域、ソルターゼ・コンジュゲート化ループ、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、組換え免疫グロブリン重鎖をコードする発現ベクターであって、ソルターゼ・コンジュゲート化ループが:a)中央ヒンジ領域の最もC末端のシステインおよび免疫グロブリン重鎖CH2ドメインのN末端のVFX1FPP(配列番号2;式中、X1はLまたはIである)コンセンサス配列の間に位置する、少なくとも16アミノ酸からなり、b)アミノ酸配列LPX1TX2(配列番号01)からなるソルターゼ認識モチーフを含み、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである、c)(b)の配列のN末端に少なくとも2つのアミノ酸を含み、d)(b)の配列のC末端に少なくとも6つのアミノ酸を含み、そしてe)ここで(b)の配列のCおよびN末端のアミノ酸はシステインではない、前記発現ベクターは、現状技術の方法にしたがって製造可能である(例えばSambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1989を参照されたい)。
【0041】
in vitro翻訳を用いて、本明細書に開示するような組換え免疫グロブリン重鎖を産生することが可能であるが、細胞発現系がルーチンに用いられるであろう。ポリペプチドをコードするベクターのクローニングまたは発現/分泌に適した宿主細胞には、本明細書に記載する原核または真核細胞が含まれる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要とされない場合には、細菌中で産生されてもよい(例えば、大腸菌(E. coli)における抗体断片の発現を記載する、US 5,648,237、US 5,789,199およびUS 5,840,523、Charlton, Methods in Molecular Biology 248(2003)245−254(B.K.C. Lo(監修), Humana Press, ニュージャージー州トトワ)を参照されたい)。発現後、ポリペプチドを可溶性分画中の細菌細胞ペーストから単離してもよいし、または不溶性分画から、いわゆる封入体を単離して、これを可溶化し、そして生体活性型に再フォールディングしてもよい。その後、ポリペプチドをさらに精製してもよい。
【0042】
原核生物に加えて、真核微生物、例えば糸状菌または酵母は、ポリペプチドをコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主であり、これには、グリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的にまたは完全にヒトグリコシル化パターンを持つポリペプチドの産生を生じる真菌および酵母株が含まれる(例えば、Gerngross, Nat. Biotech. 22(2004)1409−1414、およびLiら, Nat. Biotech. 24(2006)210−215を参照されたい)。
【0043】
グリコシル化ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用可能である、多くのバキュロウイルス株が同定されてきている。
【0044】
植物細胞培養物もまた、宿主として利用可能である(例えば、US 5,959,177、US 6,040,498、US 6,420,548、US 7,125,978およびUS 6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES
TM技術を記載する)を参照されたい)。
【0045】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用可能である。例えば、懸濁中で増殖するように適応した哺乳動物細胞株が有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、COS−7細胞株(SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞);HEK293細胞株(ヒト胚性腎臓);BHK細胞株(ベビーハムスター腎臓);TM4マウス・セルトリ細胞株(例えばMather, Biol. Reprod. 23(1980)243−251に記載されるようなTM4細胞);CV1細胞株(サル腎臓細胞);VERO−76細胞株(アフリカミドリザル腎臓細胞);HELA細胞株(ヒト子宮頸癌細胞);MDCK細胞株(イヌ腎臓細胞);BRL−3A細胞株(バッファローラット肝臓細胞);W138細胞株(ヒト肺細胞);HepG2細胞株(ヒト肝臓細胞);MMT 060562細胞株(マウス乳腺腫瘍細胞);TRI細胞株(例えば、Matherら, Anal. N.Y. Acad. Sci. 383(1982)44−68に記載されるもの);MRC5細胞株;およびFS4細胞株である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR陰性CHO細胞株(例えばUrlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77(1980)4216を参照されたい)を含むCHO細胞株(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、ならびに骨髄腫細胞株、例えばY0、NS0およびSp2/0細胞株が含まれる。ポリペプチド産生に適した、特定の哺乳動物宿主細胞株の概説に関しては、例えば、YazakiおよびWu, Methods in Molecular Biology, Antibody Enginieering 248(2004)255−268(B.K.C. Lo(監修), Humana Press, ニュージャージー州トトワ)を参照されたい。
【0046】
抗体重鎖および抗体軽鎖の同時発現は、本開示にしたがった1つの態様に相当する。こうした同時発現を用い、重鎖および軽鎖の両方を含む抗体、例えば本発明にしたがった2つの組換え重鎖および2つの軽鎖からなるIgGクラス抗体が得られうる。
【0047】
III.本明細書に報告するような組換え抗体重鎖およびその使用
本発明記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、ソルターゼ・コンジュゲート化ループの意図的な挿入によって特徴付けられる。
【0048】
本発明記載のソルターゼ・コンジュゲート化ループは、中央ヒンジ領域の最もC末端のシステイン、および免疫グロブリン重鎖CH2ドメインのN末端のVFX1FPP(配列番号2;式中、X1はLまたはIである)コンセンサス配列の間に位置する,人工的なアミノ酸配列である。本発明記載のソルターゼ・コンジュゲート化ループは、さらに、以下の本質的な特性を有する:a)少なくとも16アミノ酸からなり、b)アミノ酸配列LPX1TX2(配列番号01)からなるソルターゼ認識モチーフを含み、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである、c)(b)の配列のN末端に少なくとも2つのアミノ酸を含み、d)(b)の配列のC末端に少なくとも6つのアミノ酸を含み、そしてe)(b)の配列のCおよびN末端のアミノ酸はシステインではない。
【0049】
表1に示すように、多様な免疫グロブリン重鎖の中央ヒンジ領域は、適切な配列整列を通じて、容易に同定可能である。中央ヒンジ領域の最もC末端のシステインを、表1において、太字で示す。表1において、多様な種由来の免疫グロブリン重鎖に関するコンセンサス配列の典型的な配列整列を示す。
【0050】
表1:多様な免疫グロブリン重鎖の例示的なコンセンサス配列
【0052】
表1に示す配列部分を、以下の配列同定子の下に示す:それぞれ、H−IgG1(配列番号4); H−IgG2(配列番号5); H−IgG4(配列番号6); M−IgG1(配列番号7); M−IgG2a(a)(配列番号8); M−IgG2a(b)(配列番号9); M−IgG2b(配列番号10); M−IgG3(配列番号11); Rb−IgG(配列番号12);およびS−IgG(配列番号13)。
【0053】
特殊な場合は、H−IgG3であり、上部/中央ヒンジ領域が、同一配列の3つの複製物および1つのさらなる非常に相同な配列を含む。CH1のC末端は;TKVDKRV(配列番号14)であり;上部および中央ヒンジはELKTPLGDTTHTCPRCP(EPKSCDTPPPCPRPC)3(配列番号15)であり;そしてCH2ドメインのN末端アミノ酸を含む下部ヒンジは、APELLGGPSVFLF(配列番号16)である。
【0054】
抗体のヒンジ領域は、CH1ドメイン(G鎖)の最もC末端のβシートの最後のアミノ酸およびCH2ドメイン(A鎖)の最初のβシートの最初のアミノ酸の間の重鎖配列部分に渡る。
【0055】
上部ヒンジ領域の配列(天然であってもまたは修飾されていても)は、本発明の実施に重要ではない。
中央ヒンジ領域は、2つの免疫グロブリン重鎖の間の分子間システイン架橋の形成に必要なシステイン残基を含む。
【0056】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のC末端に少なくとも7アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0057】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のC末端に少なくとも8アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0058】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のC末端に少なくとも9アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0059】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも3アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0060】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも4アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0061】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも5アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0062】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも6アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0063】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも7アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0064】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも8アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0065】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも5アミノ酸および前記配列のC末端に少なくとも9アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0066】
1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖は、配列LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)のN末端に少なくとも8アミノ酸および前記配列のC末端に少なくとも9アミノ酸を含むソルターゼ・コンジュゲート化ループを有する。
【0067】
本開示記載の16アミノ酸の最小長が尊重されている限り、ソルターゼ・コンジュゲート化ループの全長は重要ではないようである。にもかかわらず、1つの態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖中のソルターゼ・コンジュゲート化ループは、最長50アミノ酸である。さらなる態様において、本開示記載の組換え免疫グロブリン重鎖中のソルターゼ・コンジュゲート化ループは、最長45、40、35または30アミノ酸である。
【0068】
さらなる態様において、ソルターゼ・コンジュゲート化ループの全長は、それぞれ、少なくとも17、18、19、20、21または22アミノ酸である。
免疫グロブリン重鎖は、通常、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。当業者が認識するであろうように、本発明記載の組換え免疫グロブリン重鎖において、ソルターゼ・コンジュゲート化ループに加えて、本明細書において上に定義するようなさらなる改変を含んでもよい。名前が示すように、可変配列は、関心対象のターゲットに対する所望の結合特異性が与えられている限り、いかなる方式で多様であってもよい。1つの態様において、本発明記載のソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え抗体重鎖は、対応する天然存在免疫グロブリン重鎖に、少なくとも90%同一であろう(式中、下部ヒンジ領域およびソルターゼ・コンジュゲート化ループは、それぞれ、同一性のこうした評価においては用いられない)。言い換えると、GCG PileUpプログラムを用い、そして可変領域ならびに一方のソルターゼ・コンジュゲート化ループおよび他方の下部ヒンジ領域を除いた、適切な整列後、組換え免疫グロブリン重鎖は、前記免疫グロブリン重鎖に関する(対応する)コンセンサス配列と少なくとも90%同一である。他の態様において、組換え免疫グロブリン重鎖の同一性は、対応するコンセンサス配列と比較した際、各々、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であろう。1つの態様において、本発明記載の組換え免疫グロブリン重鎖のCH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン配列の各々は、対応する天然存在免疫グロブリン重鎖に、少なくとも90%同一であろう。言い換えると、GCG PileUpプログラムを用いた適切な整列後、例えば組換えマウスIgG1重鎖のこうした改変CH1ドメインのアミノ酸の少なくとも90%が、マウスIgG1重鎖CH1ドメインのコンセンサス配列の(対応する)アミノ酸に同一である。他の態様において、修飾CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの同一性は、それぞれ、各々、対応するコンセンサス配列に比較した際、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であろう。
【0069】
上述のように、抗体重鎖および抗体軽鎖の同時発現は、本開示記載の1つの態様に相当する。こうした同時発現を、特に、細胞発現系と関連付けて用いると、重鎖および軽鎖の両方を含む抗体が得られうる。(組換え)免疫グロブリン重鎖およびその対応する軽鎖の同時発現は、所望の抗体の形成ならびに高い産生収量の両方を導く。
【0070】
ヒト抗体の多様なアイソタイプがあり、例えばアルファ免疫グロブリン(=IgA)、ガンマ免疫グロブリン(=IgG)、デルタ免疫グロブリン(IgD)、イプシロン免疫グロブリン(IgE)およびミュー免疫グロブリン(IgM)と称される。1つの態様において、本開示は、本出願に開示するような少なくとも2つの組換え免疫グロブリン重鎖を含む抗体(これらのアイソタイプまたは他の種由来の対応するアイソタイプ、あるいはその対応するサブクラスのいずれか)に関する。
【0071】
1つの態様において、本出願に開示するような、2つの組換え免疫グロブリン重鎖を有するIgGクラス抗体を記載し、そして請求する。
名称がすでに示唆するように、本発明記載のソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え抗体重鎖を、ソルターゼ連結に基づく方法において使用可能である。
【0072】
1つの態様において、本開示は、組換え免疫グロブリン重鎖のソルターゼ切断断片およびソルターゼ求核剤のコンジュゲートを産生するための方法であって、i)各々、ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む少なくとも2つの組換え免疫グロブリン重鎖を含む抗体であって、ソルターゼ・コンジュゲート化ループが、a)中央ヒンジ領域の最もC末端のシステインおよび免疫グロブリン重鎖CH2ドメインのN末端のVFX1FPP(配列番号2;式中、X1はLまたはIである)コンセンサス配列の間に位置する、少なくとも16アミノ酸からなり、b)アミノ酸配列LPX1TX2(配列番号01)からなるソルターゼ認識モチーフを含み、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである、c)(b)の配列のN末端に少なくとも2つのアミノ酸を含み、d)(b)の配列のC末端に少なくとも6つのアミノ酸を含み、そしてe)ここで(b)の配列のCおよびN末端のアミノ酸はシステインではない、前記抗体、ii)ソルターゼ求核剤を含む化合物、ならびにiii)ソルターゼ活性を持つポリペプチドをインキュベーションし、それによって、LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)中のスレオニンの後ろで組換え抗体重鎖を切断し、そして前記スレオニンにソルターゼ求核剤のN末端をコンジュゲート化する工程を含む、前記方法に関する。
【0073】
当業者が容易に認識するであろうように、こうしたインキュベーションは、望ましい結果、すなわち所望のコンジュゲートを達成するために適した緩衝液条件を用いて実行されるであろう。こうした適切な条件は、文献から周知であり、そして標準的なソルターゼ連結緩衝液は、例えばMgCl
2を含む。
【0074】
ソルターゼA(SrtA)は、タンパク質を細菌細胞壁に共有結合させる、膜結合酵素である。特異的「ソルターゼ認識モチーフ」または「ソルターゼ・モチーフ」は、LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである)である。1つの態様において、ソルターゼ認識モチーフは、LPX1TX2であり、式中、X2はGである。1つの態様において、X1は天然存在アミノ酸である。1つの態様において、X1はシステイン残基ではない。1つの態様において、X1は天然存在アミノ酸であり、そしてシステイン残基ではない。
【0075】
多くのグラム陽性細菌は、ソルターゼを用いて、細胞壁(ペプチドグリカン)に、病原性因子を含む多様な表面タンパク質を共有的に係留する。ソルターゼは、膜会合酵素である。野生型黄色ブドウ球菌ソルターゼA(SrtA)は、N末端膜貫通領域を持つ、206アミノ酸のポリペプチドである。第一の段階において、ソルターゼAは、ソルターゼ認識モチーフ(LPX1TX2(配列番号01、式中、X1はいずれのアミノ酸残基であってもよく、そしてX2はGまたはAである))を含有する基質タンパク質を認識する。ソルターゼ酵素は、残基スレオニン(T)およびX2(GまたはA)の間を切断する。Thrの後ろのアミド結合の酵素的切断は、活性部位Cysによる。このペプチド切断反応は、ソルターゼA基質チオエステル中間体を生じる。第二の段階において、チオエステル・アシル酵素中間体が、ソルターゼ連結モチーフを含むソルターゼ基質(ソルターゼ求核剤)中のアミノ基の求核性攻撃によって分解される。天然には、ソルターゼ基質ポリペプチドは、黄色ブドウ球菌中のペプチドグリカンのペンタグリシン単位に対応し、そして求核性攻撃は、共有連結細胞壁タンパク質およびソルターゼAの再生を導く。オリゴグリシン求核剤の非存在下で、アシル酵素中間体は、水分子によって加水分解されうる。
【0076】
「ソルターゼ求核剤」は、「ソルターゼ連結モチーフ」または単に「連結モチーフ」および「関心対象のタグ」または単に「タグ」を含む。ソルターゼ求核剤は、N末端にオリゴグリシンを有し、そして連結モチーフとして少なくとも2つのグリシン残基からなる。言い換えると、ソルターゼ連結モチーフは、少なくとも2つの連続グリシン残基からなる。
【0077】
1つの態様において、式(Gly)n−タグ、式中、nは少なくとも2である、を有する、関心対象のタグを含む、ソルターゼ求核剤を用いて、本出願記載の方法を実施する。ソルターゼ連結モチーフ(Gly)
nは、より長くてもよく、そして3、4、5、または6グリシン残基からなってもよく、すなわち、(Gly)n−タグ中のnは3、4、5、または6である。さらなる態様において、式(Gly)n−タグ、式中、nはそれぞれ3、4、5、または6である、を有する、関心対象のタグを含むソルターゼ求核剤を用いて、本出願記載の方法を実施する。
【0078】
天然には、ペプチドグリカン上のソルターゼ連結モチーフは、ペンタグリシン・モチーフである。N末端のトリグリシン、そしてさらにはジグリシンモチーフでさえ、SrtA反応を支持するには十分であることが示されてきている(Clancy, K.W.ら, Peptide Science 94(2010)385−396)。反応は、チオエステル・アシル酵素中間体を通じて進行し、該中間体は、オリゴグリシン由来のアミン求核剤の攻撃によって分解され、ペプチドグリカンはタンパク質基質に共有結合し、そしてSrtAは再生される。SrtAは、例えば、化学的に合成されたペプチドまたは連結モチーフを含むペプチド含有基質を、ソルターゼ認識モチーフを含む組換え的に発現されたタンパク質に共有的にコンジュゲートするために使用可能である。
【0079】
ソルターゼ仲介連結/コンジュゲート化は、多様なタンパク質操作およびバイオコンジュゲート化目的のために適用され始めてきている。この技術は、LPX1TX2タグ化組換えまたは化学合成ポリペプチド内への、天然および合成官能性の導入を可能にする。例には、オリゴグリシン誘導体化ポリマー(例えばPEG)、フルオロフォア、ビタミン(例えばビオチンおよび葉酸)、脂質、炭水化物、核酸、合成ペプチドおよびタンパク質(例えばGFP)の共有結合が含まれる(例えば、Tsukiji, S.およびNagamune, T., ChemBioChem 10 (2009) 787−798; Popp, M.W.L.およびPloegh, H.L., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 50 (2011) 5024−5032を参照されたい)。
【0080】
1つの態様において、in vitroの酵素連結に関しては、膜貫通領域を欠く可溶性一部切除ソルターゼA(SrtA;黄色ブドウ球菌SrtAのアミノ酸残基60〜206)を用いる(配列番号17;Ton−That, H.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (1999) 12424−12429; Ilangovan, H.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001) 6056−6061もまた参照されたい)。
【0081】
ソルターゼ求核剤に含まれる「関心対象のタグ」または単に「タグ」は、結合対、官能基、療法剤(薬剤)、細胞傷害剤(例えばドキソルビシンまたは百日咳毒素などの毒素)および標識(例えばフルオロフォア、例えばフルオレセインまたはローダミンのような蛍光色素、化学発光または電気化学発光標識、放射性標識、画像化または放射療法目的のための金属キレート複合体、酵素あるいはGFPのような蛍光タンパク質)のパートナーであってもよい。
【0082】
1つの態様において、タグは、結合対のパートナーである。本明細書で用いるような結合対は、互いに高いアフィニティ、すなわち1ナノモル・アフィニティまたはそれより優れたアフィニティで結合する、2つのパートナーからなる。結合対に関する態様は、例えば、受容体およびリガンド、ハプテンおよび抗ハプテン抗体からなる結合対、ならびに天然存在高アフィニティ結合対に基づく結合対である。
【0083】
受容体−リガンド結合対の1つの例は、ステロイドホルモン受容体および対応するステロイドホルモンからなる対である。
本発明記載の方法に適した結合対の1つのタイプは、ハプテンおよび抗ハプテン抗体結合対である。ハプテンは、100〜2000ダルトン、好ましくは150〜1000ダルトンの分子量を持つ有機分子である。こうした小分子は、キャリアー分子とカップリングすることによって免疫原性にすることが可能であり、そして抗ハプテン抗体は、標準法にしたがって生成可能である。ハプテンは、ステロール、胆汁酸、性ホルモン、コルチコイド、カルデノリド、カルデノリド−グリコシド、ブファジエノリド、ステロイド−サポゲニンおよびステロイドアルカロイド、カルデノリドおよびカルデノリド−グリコシドを含む群より選択可能である。これらの物質クラスの代表は、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、ギトキシゲニン、ストロファンチジン、ジゴキシン、ジギトキシン、ジトキシン、ストロファンチンである。別の適切なハプテンは、例えばフルオレセインである。
【0084】
天然存在高アフィニティ結合対に基づく結合対の例は、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン、およびアビジンまたはストレプトアビジン、ならびにFimGおよびDsF結合対である。ビオチン−(ストレプト)アビジン結合対は、当該技術分野に周知である。FimG−DsF結合対の基本的原理は、例えば、WO2012/028697に記載される。
【0085】
1つの態様において、結合対は、ハプテンおよび抗ハプテン抗体、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、FimGおよびDsF、ならびに受容体およびリガンドより選択される。
【0086】
1つの態様において、結合対は、ハプテンおよび抗ハプテン抗体およびビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、FimGおよびDsFより選択される。
【0087】
1つの態様において、結合対はビオチン(またはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン)およびアビジンまたはストレプトアビジンである。
【0088】
1つの態様において、結合対は、ビオチンおよびストレプトアビジンからなる。
1つの態様において、タグは、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、アミノ基、ハロゲン、ヒドラジン、ヒドロキシル、スルフィドリル、マレイミド、アルキニル、アジド、イソシアネート、イソチオシアネートおよびホスホロアミダイト、トランス−シクロオクテン、テトラジンからなる群より選択される官能基である。
【0089】
1つの態様において、タグは、カルボン酸、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、アミノ基、ハロゲン、スルフィドリル、マレイミド、アルキニル、アジド、イソシアネート、イソチオシアネートおよびホスホロアミダイトからなる群より選択される官能基である。
【0090】
タグは、療法剤(薬剤)であってもよく、そして例えば抗体またはその抗原結合断片であってもよい。細胞表面分子に対して向けられる多くの療法抗体およびそのリガンドが知られており、例えば、リツキサン/マブテラ/リツキシマブ、2H7/オクレリズマブ、ゼバリン/イブリズモマブ、アルゼラ/オファツムマブ(CD20)、HLL2/エプラツズマブ、イノツゾマブ(CD22)、ゼナパックス/ダクリズマブ、シムレクト/バシリキシマブ(CD25)、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ(Her2/ERBB2)、マイロターグ/ゲムツズマブ(CD33)、ラプティバ/エファリズマブ(Cd11a)、エルビタックス/セツキシマブ(EGFR、上皮増殖因子受容体)、IMC−1121B(VEGF受容体2)、タイサブリ/ナタリズマブ(α4β1およびα4β7インテグリンのα4サブユニット)、レオプロ/アブシキシマブ(gpIIb−gpIIaおよびαvβ3インテグリン)、オルトクローンOKT3/ムロモナブ−CD3(CD3)、ベンリスタ/ベリムマブ(BAFF)、Tolerx/オテリキシマブ(CD3)、ソリリス/エクリズマブ(CD5補体タンパク質)、アクテムラ/トシリズマブ(IL−6R)、パノレックス/エドレコロマブ(EpCAM、上皮細胞接着分子)、CEA−CAM5/ラベツズマブ(CD66/CEA、癌胎児性抗原)、CT−11(PD−1、プログラム死−1 T細胞阻害性受容体、CD−d279)、H224G11(c−Met受容体)、SAR3419(CD19)、IMC−A12/シズツムマブ(IGF−1R、インスリン様増殖因子1受容体)、MEDI−575(PDGF−R、血小板由来増殖因子受容体)、CP−675、206/トレメリムマブ(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)、RO5323441(胎盤増殖因子またはPGF)、HGS1012/マパツムマブ(TRAIL−R1)、SGN−70(CD70)、ベドチン(SGN−35)/ブレンツキシマブ(CD30)、およびARH460−16−2(CD44)がある。
【0091】
タグはまた:(i)微小管阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはDNA挿入剤として機能しうる化学療法剤;(ii)酵素的に機能しうるタンパク質毒素;および(iii)療法性放射性同位体より選択される細胞傷害剤であってもよい。
【0092】
例示的な化学療法剤には、限定されるわけではないが、メイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン、トリコテセン、CC1065、カリケアマイシンおよび他のエンジイン抗生物質、タキサン、アントラサイクリン、および立体異性体、アイソスター、その類似体または誘導体が含まれる。
【0093】
タンパク質毒素には、ジフテリア−A鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖(Vitettaら(1987)Science, 238:1098)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−5)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン(WO 93/21232)が含まれる。
【0094】
療法性放射性同位体には、32P、33P、90Y、125I、131I、131In、153Sm、186Re、188Re、211At、212B、212Pb、およびLuの放射性同位体が含まれる。
【0095】
放射性同位体は、既知の方法(Frakerら(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49−57;「免疫シンチグラフィにおけるモノクローナル抗体」 Chatal, CRC Press 1989)で取り込むことも可能である。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、複合体に放射性核種をコンジュゲート化するための例示的なキレート剤である(WO 94/11026)。
【0096】
1つの態様において、タグは標識である。ソルターゼ連結モチーフアミノ酸配列に共有結合可能ないずれの標識部分が使用可能である(例えば、Singhら(2002) Anal. Biochem. 304:147−15; Harlow E.およびLane, D.(1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー; Lundblad R. L.(1991) Chemical Reagents for Protein Modification, 第2版 CRC Press, フロリダ州ボカラトンを参照されたい)。標識は:(i)検出可能シグナルを提供するか;(ii)第二の標識と相互作用して、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を生じる第一または第二の標識によって提供される検出可能シグナルを修飾するか;(iii)電荷、疎水性、形状、または他の物理的パラメータによって、移動度、例えば電気泳動移動度または細胞浸透性に影響を及ぼすか、あるいは(iv)捕捉部分を提供して、例えばイオン性複合体化を調節するように機能しうる。
【0097】
多くの標識が利用可能であり、これらは一般的に、以下のカテゴリーに分類可能である:
(a)蛍光色素、化学発光色素(Briggsら 「官能化蛍光色素の合成、ならびにアミンまたはアミノ酸へのそのカップリング」 J. Chem. Soc., Perkin−Trans. 1 (1997) 1051−1058)および電気化学発光標識は、検出可能シグナルを提供し、そして一般的に標識のために適用可能である。
【0098】
蛍光標識またはフルオロフォアには、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、FITC、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型標識;TAMRAを含むローダミン型標識;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;およびその類似体が含まれる。例えばCurrent Protocols in Immunology、上記に開示される技術を用いて、蛍光標識をソルターゼ連結モチーフにコンジュゲート化してもよい。蛍光色素および蛍光標識試薬には、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene、米国オレゴン州)およびPierce Biotechnology, Inc.(イリノイ州ロックフォード)より商業的に入手可能なものが含まれる。
【0099】
化学発光標識の異なるクラスには、ルミノール、アクリジニウム化合物、セレンテラジンおよび類似体、ジオキセタン、過酸化シュウ酸およびその誘導体に基づく系が含まれる。免疫診断法には、主にアクリジニウムに基づく標識が用いられる(詳細な概説は、Dodeigne C.ら, Talanta 51(2000)415−439に提供される)。
【0100】
電気化学発光標識として主に適しているタグは、それぞれ、ルテニウムおよびイリジウムに基づく電気化学発光複合体である。電気化学発光(ECL)は、高感度で、そして選択的な方法として、分析適用において非常に有用であることが立証された。これは、化学発光分析の分析上の利点(バックグラウンド光学シグナルが存在しない)と、電極電位を適用することによる反応調節の容易さを組み合わせている。一般的に、ルテニウム複合体、特に液相または液体−固体界面で、TPA(トリプロピルアミン)で再生する[Ru(Bpy)3]2+(〜620nmで光子を放出する)が、ECL標識として用いられる。近年、イリジウムに基づくECL標識もまた記載されてきている(WO2012107419(A1))。
【0101】
(b)放射性標識は、放射性同位体(放射性核種)、例えば3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Gn、86Y、89Zr、99TC、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、または131Biを利用する。
【0102】
(c)画像化および療法目的のための標識として適した金属キレート複合体は、当該技術分野に周知である。(US 2010/0111856; US 5,342,606; US 5,428,155; US 5,316,757; US 5,480,990; US 5,462,725; US 5,428,139; US 5,385,893; US 5,739,294; US 5,750,660; US 5,834,456; Hnatowichら, J. Immunol. Methods 65 (1983) 147−157; Mearesら, Anal. Biochem. 142 (1984) 68−78; Mirzadehら, Bioconjugate Chem. 1 (1990) 59−65; Mearesら, J. Cancer (1990), Suppl. 10:21−26; Izardら, Bioconjugate Chem. 3 (1992) 346−350; Nikulaら, Nucl. Med. Biol. 22 (1995) 387−90; Cameraら, Nucl. Med. Biol. 20 (1993) 955−62; Kukisら, J. Nucl. Med. 39 (1998) 2105−2110; Verelら, J. Nucl. Med. 44 (2003) 1663−1670; Cameraら, J. Nucl. Med. 21 (1994) 640−646; Rueggら, Cancer Res. 50 (1990) 4221−4226; Verelら, J. Nucl. Med. 44 (2003) 1663−1670; Leeら, Cancer Res. 61 (2001) 4474−4482; Mitchellら, J. Nucl. Med. 44 (2003) 1105−1112; Kobayashiら Bioconjugate Chem. 10 (1999) 103−111; Miedererら, J. Nucl. Med. 45 (2004) 129−137; DeNardoら, Clinical Cancer Research 4 (1998) 2483−90; Blendら, Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18 (2003) 355−363; Nikulaら J. Nucl. Med. 40 (1999) 166−76; Kobayashiら, J. Nucl. Med. 39 (1998) 829−36; Mardirossianら, Nucl. Med. Biol. 20 (1993) 65−74; Roselliら, Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals, 14 (1999) 209−20)。
【0103】
(d)酵素もまた、ソルターゼ求核剤中のタグ/標識として使用可能である。多様な酵素−基質標識系が利用可能である。酵素は、一般的に、多様な技術を用いて測定可能である色素原基質の化学改変を触媒する。例えば、酵素は基質中の色変化を触媒可能であり、こうした変化は分光光度的に測定可能である。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を改変可能である。化学発光基質は、化学反応によって電気的に励起され、そして次いで、測定可能な(例えば化学発光系を用いる)光を放出することも可能であるし、またはエネルギーを蛍光受容体に供与する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えばホタル(firefly)ルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばセイヨウワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が含まれる。
【0104】
酵素基質の組み合わせの例(US 4,275,149; US 4,318,980もまた参照されたい)には、例えば、以下が含まれる:
(i)セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)と、基質としての過酸化水素、ここで、過酸化水素は、色素前駆体(例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、色素原基質としてのパラ−ニトロフェニルリン酸;および
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と、色素原基質(例えばp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光原基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ。
【0105】
1つの態様において、本発明は、本明細書開示の方法いずれかにしたがって産生されるコンジュゲートに関する。
1つの態様において、本明細書に記載するような方法にしたがって産生されるコンジュゲートは、VHドメイン、CH1ドメイン、中央ヒンジ領域の最後のシステインまでのヒンジ領域、中央ヒンジ領域の最もC末端のシステイン、配列LPXT(配列番号03、式中、Xはいずれのアミノ酸残基であってもよい)の間の2またはそれより多いアミノ酸および少なくとも2つのグリシン残基を含む、組換え免疫グロブリン重鎖断片を含むであろう。
【0106】
本明細書において、上記に言及するように、完全抗体、すなわち本明細書に開示するような組換え免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖の両方を有する抗体を産生することが好適である。こうした抗体が、本開示にしたがった方法において(「ソータギング」において)用いられた場合、F(ab’)2様断片が得られる。これらのF(ab’)2様断片は、標準法を通じて得られるF(ab’)2断片とよく似ている。本明細書に開示するような組換え重鎖を含む同じ抗体を、標準的方法またはソータギング法において、用いる場合、配列は最後のシステインまでは同一であろうが、中央ヒンジ領域の最後のシステインのC末端側のアミノ酸に関しては有意に異なり、すなわち一方の方法は、標準的なF(ab’)2断片を生じ、もう一方(ソータギング)は、非常に類似であるが、同一でない、F(ab’)2様断片を生じる。ソータギング後、これらのF(ab’)2様断片は、明らかに、少なくとも最小必須ソルターゼ連結モチーフ、すなわち2つのグリシン残基もまた含有するであろう。
【0107】
1つの態様において、本明細書に開示するようなコンジュゲートは、システイン結合を通じて互いに結合した、VHドメイン、CH1ドメイン、中央ヒンジ領域の最後のシステインまでのヒンジ領域、中央ヒンジ領域の最もC末端のシステイン、配列LPXT(配列番号03、式中、Xはいずれのアミノ酸残基であってもよい)の間の2またはそれより多いアミノ酸および少なくとも2つのグリシン残基を含む、2つの組換え免疫グロブリン重鎖断片を含む。
【0108】
1つの態様において、本明細書に開示するようなコンジュゲートは、システイン結合を通じて互いに結合した、VHドメイン、CH1ドメイン、中央ヒンジ領域の最後のシステインまでのヒンジ領域、中央ヒンジ領域の最もC末端のシステイン、配列LPXT(配列番号03、式中、Xはいずれのアミノ酸残基であってもよい)の間の2またはそれより多いアミノ酸および少なくとも2つのグリシン残基を含む、2つの組換え免疫グロブリン重鎖断片;ならびに2つの免疫グロブリン軽鎖を含むであろう。
【0109】
本明細書に報告するような標識を含むコンジュゲートは、例えば全血、血漿または血清試料中の関心対象の抗原を検出するための診断アッセイにおいて、有用でありうる。本明細書に報告するような標識コンジュゲートは、いずれの既知のアッセイ法、例えばELISA、競合結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイで使用可能である(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques (1987) pp. 147−158, CRC Press, Inc.)。
【0110】
あるいは、本明細書に報告するような標識コンジュゲートは、例えば以下のような生物医学的および分子画像化の多様な方法および技術によって、画像化バイオマーカーおよびプローブとしてもまた有用であろう:(i)MRI(磁気共鳴画像化);(ii)マイクロCT(コンピュータ断層撮影);(iii)SPECT(単一光子放射断層撮影);(iv)PET(ポジトロン断層撮影) Tinianow, J.ら, Nuclear Medicine and Biology, 37(3) (2010) 289−297; Chenら, Bioconjugate Chem. 15 (2004) 41−49; US 2010/0111856 (v)生物発光;(vi)蛍光;および(vii)超音波。免疫シンチグラフィは、放射性物質で標識したコンジュゲートを動物またはヒト患者に投与し、そしてコンジュゲートが局在する体の部位の写真を撮影する、画像化法である(US 6,528,624)。画像化バイオマーカーは、正常生物学的プロセス、病的プロセス、または療法介入に対する薬理学的反応の指標として、客観的に測定および評価可能である。
【0111】
1つの態様において、ソルターゼ求核剤は、ソルターゼ連結モチーフおよびタグからなる。さらなる態様において、ソルターゼ求核剤は、ソルターゼ連結モチーフ、リンカーおよびタグからなる。用語「リンカー」は、本明細書において、第一の部分と第二の部分をコンジュゲート化する(連結する)ために用いられていることも可能な、二官能性または多官能性部分を示す。リンカーを含むソルターゼ求核剤は、2つの反応性官能基を有するリンカーを用いて、好適に調製可能である。
【0112】
リンカーは、ソルターゼ連結モチーフをタグに連結するアミノ酸残基を含んでもよい。アミノ酸残基は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドまたはドデカペプチド単位を形成してもよい。アミノ酸残基には、天然存在のもの、ならびに非天然存在アミノ酸類似体、例えばシトルリンまたはβ−アミノ酸、例えばβ−アラニン、またはω−アミノ酸、例えば4−アミノ酪酸が含まれる。
【0113】
典型的には、ペプチド型リンカーは、2またはそれより多いアミノ酸および/またはペプチド断片間にペプチド結合を形成することによって調製可能である。こうしたペプチド結合は、例えば、ペプチド化学分野に周知である、液相合成法(E. SchroderおよびK. Lubke ”The Peptides”, 第1巻(1965) 76−136, Academic Press)にしたがって調製可能である。
【0114】
別の態様において、リンカーは、可溶性または反応性を調節する基を含むか、こうした基からなるか、またはこうした基で置換されていてもよい。例えば、リンカー中の荷電置換基、例えばスルホネート(SO
3−)またはアンモニウムは、ソルターゼ求核剤の水溶性を増加させうる。PEG等のポリマーからなるリンカーもまた、有益な効果を示す可能性があり、例えば非特異的結合の減少を導きうる。
【0115】
以下の実施例に示すように、本発明記載の方法で産生されるF(ab’)2様コンジュゲートは、現状技術の方法によって得られるF(ab’)2コンジュゲートに比較した際、有意な利点を示す。
【0116】
以下の実施例、図および配列は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は付随する請求項に示される。示す方法において、本発明の精神から逸脱することなく修飾を行うことが可能であることが理解される。
【0117】
前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示および例によって、ある程度詳細に記載されているが、説明および例は、本発明の範囲を限定するとみなされてはならない。
【実施例】
【0118】
組換えDNA技術
Sambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1989に記載されるような標準法を用いて、DNAを操作した。製造者の指示にしたがって、分子生物学試薬を用いた。
【0119】
遺伝子およびオリゴヌクレオチド合成
Geneart GmbH(ドイツ、レーゲンスブルグ)で、化学合成によって、所望の遺伝子セグメントを調製した。合成した遺伝子断片を、増幅/拡大のため、大腸菌プラスミド内にクローニングした。サブクローニングした遺伝子断片のDNA配列をDNA配列決定によって検証した。あるいは、化学的に合成したオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって、またはPCRを通じて、短い合成DNA断片を組み立てた。metabion GmbH(ドイツ、プラネック−マルティンスリート)によって、それぞれのオリゴヌクレオチドを調製した。
【0120】
基本的/標準哺乳動物発現プラスミドの説明
所望の遺伝子/タンパク質(例えば全長抗体重鎖、全長抗体軽鎖、またはN末端にオリゴグリシンを含有するFc鎖)の発現のため、以下の機能要素を含む転写単位を用いる:
−イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の極初期エンハンサーおよびプロモーター(P−CMV)、
−ヒト重鎖免疫グロブリン5’非翻訳領域(5’UTR)、
−ネズミ免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
−発現しようとする遺伝子/タンパク質(例えば全長抗体重鎖)、および
−ウシ成長ホルモン・ポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0121】
発現しようとする所望の遺伝子を含む発現単位/カセットに加えて、基本的/標準的哺乳動物発現プラスミドは、以下を含有する
−大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
−大腸菌においてアンピシリン耐性を与える、ベータ−ラクタマーゼ遺伝子。
【0122】
タンパク質決定
ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて計算したモル消光係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を決定することによって、精製ポリペプチドのタンパク質濃度を決定した。
【0123】
実施例1
可溶性黄色ブドウ球菌ソルターゼAの発現プラスミドの生成
ソルターゼ遺伝子は、N末端一部切除黄色ブドウ球菌ソルターゼA(60〜206)分子(配列番号17のアミノ酸配列)をコードする。
【0124】
HEK293細胞における可溶性ソルターゼの一過性発現のための発現プラスミドは、可溶性ソルターゼ発現カセットに加えて、大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるベータ−ラクタマーゼ遺伝子を含んだ。
【0125】
可溶性ソルターゼの転写単位は、以下の機能性要素を含んだ:
−イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の極初期エンハンサーおよびプロモーター(P−CMV)、
−ヒト重鎖免疫グロブリン5’非翻訳領域(5’UTR)、
−ネズミ免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
−精製タグをコードする核酸、
−N末端一部切除黄色ブドウ球菌ソルターゼAをコードする核酸、および
−ウシ成長ホルモン・ポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0126】
成熟可溶性ソルターゼのアミノ酸配列は、
【0127】
【化1】
【0128】
である。
精製タグは、アミノ酸配列MRGSHHHHHHGS(配列番号18)を有する。
【0129】
実施例2
ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え免疫グロブリン重鎖の一過性発現および分析特徴付け
F17培地(Invitrogen社)中で培養したHEK293細胞(ヒト胚性腎臓細胞株293由来)の一過性トランスフェクションによって、組換え体産生を行った。トランスフェクションには、「293−フェクチン」トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いた。製造者の指示に明記されるように、トランスフェクションを行った。トランスフェクションの3〜7日後、細胞培養上清を採取した。低温(例えば−80℃)で、上清を保存した。
【0130】
例えばHEK293細胞におけるヒト免疫グロブリンの組換え体発現に関する一般的な情報は:Meissner, P.ら, Biotechnol. Bioeng. 75 (2001) 197−203に提供される。
【0131】
ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含むM−IgG1サブクラスの組換え免疫グロブリン重鎖は、わずかに塩基性条件(例えばpH8.0)のプロテインA Sepharoseクロマトグラフィベッド材料(例えばMabSelect Sure、GE Healthcare)上で捕捉することによって精製されている。IgGは、クエン酸緩衝液(100mM、pH4.0)を用いて、ベッド材料から溶出され、そして最終的に、適切なクロマトグラフィ条件(例えば100mMリン酸緩衝液、pH7.4)の下で、GPCカラム(例えばSuperdex 200 Increase、GE Healthcare)上の精錬(polish)工程で精製されている。
【0132】
アミノ酸配列に基づいて計算したモル消光係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を測定することによって、精製ポリペプチドのタンパク質濃度を決定した。GPCクロマトグラフィ、ならびに還元剤(5mM 1,4−ジチオスレイトール)の存在下および非存在下のSDS−PAGEおよびクーマシーブリリアントブルーでの染色によって、純度を分析した。
【0133】
組換え免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の両方の理論的および実験的に決定された分子量の比較に関して、ESI TOF MSによって、ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む発現された組換え免疫グロブリン重鎖の同一性を確認した。
【0134】
実施例3
組換え免疫グロブリンのためのベクターの合成および産生
Sambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1989に記載されるように、標準法を用いて、DNAを操作した。製造者の指示にしたがって、分子生物学試薬を用いた。
【0135】
詳細には、ソルターゼ・コンジュゲート化ループをコードする配列を含む組換え免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の両方の所望の遺伝子セグメントを、慣用的PCRに基づくクローニング技術によって生成した。したがって、所望の抗体の軽鎖および重鎖をコードする遺伝子のcDNAを、分子クローニング用の制限部位を含有する遺伝子特異的オリゴヌクレオチド/プライマーで増幅した。遺伝子特異的プライマーと組み合わせて、プライマーを含有するソルターゼ・コンジュゲート化ループを用いた2工程PCR戦略で、ソルターゼ・コンジュゲート化ループをコードする配列を導入した。metabion GmbH(ドイツ、プラネック−マルティンスリート)またはThermoFisherによって、それぞれのオリゴヌクレオチドを調製した。
【0136】
あるいは、ソルターゼ・コンジュゲート化ループをコードする配列を含む組換え免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の両方の所望の遺伝子セグメントのいずれかを、GeneArt(登録商標)ThermoFisherでの化学合成によって、調製した。
【0137】
合成した遺伝子断片を、大腸菌における拡大/増幅、およびHEK293細胞における一過性発現のため、大腸菌シャトルベクター内にクローニングした。サブクローニングした遺伝子断片のDNA配列をDNA配列決定によって検証した。
【0138】
所望の遺伝子/タンパク質(例えばソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む全長抗体重鎖、全長抗体軽鎖)の発現のため、以下の機能要素を含む転写単位を用いる:
−ヒトサイトメガロウイルス由来の極初期エンハンサーおよびプロモーター(P−CMV)
−イントロンを含む免疫グロブリン重鎖シグナル配列
−発現しようとする遺伝子/タンパク質(ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含むもの、全長抗体重鎖)、および
−ウシ成長ホルモン・ポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0139】
発現しようとする所望の遺伝子を含む発現ユニット/カセットに加えて、基本的/標準的哺乳動物発現プラスミドは
−大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
−大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるベータ−ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
【0140】
実施例4
グルコースデヒドロゲナーゼおよびビオチン化オリゴグリシンのソルターゼ仲介性融合
以下に概略するような方法で、レポーター酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを、ソルターゼアミノ酸モチーフ(LPETGまたはLPETA)に融合させ、そしてこれを第一の基質として用いることによって、ソルターゼ仲介性酵素コンジュゲート化/カップリング反応の活性を測光的に決定可能である。第二の基質としてビオチン化オリゴグリシンまたはオリゴアラニンを用いる(求核剤)。第一および第二の基質を含有する溶液にソルターゼを添加した際、ビオチン化レポーター酵素である、第一および第二の基質のソルターゼ仲介性コンジュゲート化によって、コンジュゲートが形成される。ストレプトアビジン・コーティング磁気ビーズを用いて、ビオチン化レポーター酵素を回収してもよい。レポーター酵素のための基質を添加する場合、光学密度の変化によって、産物を検出可能である。
【0141】
200mM NaClを含有する50mM Tris緩衝液pH7.5中、精製ソルターゼを、その基質、すなわちLPETGまたはLPETAモチーフを含有するグルコース・デヒドロゲナーゼ(20μM)およびN末端グリシンまたはアラニンを含有するビオチン誘導体(330μM)と混合した。反応混合物を37℃で2時間インキュベーションした。10〜20倍過剰の阻害緩衝液(50mM Tris、pH7.5、200mM NaCl,10mM CaCl2、5mMヨードアセトアミド)を添加することによって、反応を停止した。停止した反応混合物を5000xgで10分間遠心分離した。上清(50μL)を、200mM NaCl、10mM CaCl2を含む50mM Tris緩衝液(pH7.5)100μLに添加し、そしてストレプトアビジン・コーティング磁気ビーズを添加し、そして200rpm、30℃で30分間インキュベーションした。その後、V底マルチウェルプレート中で、磁石および真空ポンプを用いて、各300μL洗浄緩衝液(50mM Tris、pH7.5、200mM NaCl、10mM CaCl2、5mg/mL BSA、0.1%Triton X−100)で、磁気ビーズを5回洗浄した。その後、ビーズを100μLクエン酸試験緩衝液中に再懸濁し、そしてその10〜80μLを新規ウェルにトランスファーした。そこに150μL試験緩衝液(0.2Mクエン酸ナトリウム、pH5.8、0.3g/L 4−ニトロソアニリン、1mM CaCl2、30mMグルコース)を添加した。
【0142】
レポーター酵素の動力学を、620nmで、5分間の期間に渡って測定する。レポーター酵素の活性は、固定される酵素の量に比例し、これは、ビオチン化酵素の量に比例し、そしてこれは、ソルターゼの活性に比例する。
【0143】
実施例5
ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む、組換え免疫グロブリンのソルターゼ仲介性融合
以下に概説する方法を用いて、ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含むIgG(基質1)の酵素切断、およびそれに続くビオチンタグ(基質2)のコンジュゲート化/カップリング反応を行う。ソルターゼを、第一および第二の基質を含有する溶液に添加すると、第一および第二の基質のソルターゼ仲介性コンジュゲート化によって、C末端ビオチン化F(ab’)2断片が形成される(
図2を参照されたい)。
【0144】
標準法にしたがって、IgG免疫グロブリンの重鎖中のソルターゼ・コンジュゲート化ループのアミノ酸配列を設計する。マウス免疫グロブリンG1重鎖の例示的な配列は以下の通りであった:
(VHドメイン)−(CH1ドメイン)−(挿入されたソルターゼ・コンジュゲート化ループを含むヒンジ領域=VPRDCGCKPCICTGSGSGGVLPETGVGSGSGGAGSGSS)(配列番号19)−(CH2ドメイン)−(CH3ドメイン)
式中、配列19(配列番号19)は以下の部分を含む:
VPRDCGCKPCICT(配列番号20)=上部および中央ヒンジ領域ならびにソルターゼ・コンジュゲート化ループGSGSGGVLPETGVGSGSGGAGSGSS(配列番号21)。
【0145】
連結モチーフ(GGGG)およびタグ(ビオチン)を含むソルターゼ求核剤の構造は、必要に応じて設計可能である(こうした構造の例を
図3に提供する)。
150mM KClおよび5mM CaCl2を含有する50mM Tris緩衝剤pH8.0中、精製ソルターゼ(20μM)を、その基質、すなわちソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え免疫グロブリン(30μM)およびN末端GGGG求核剤モチーフを含有するビオチン誘導体(1500μM)と混合した。反応混合物を37℃で17時間(一晩)インキュベーションした。0.5M EDTA、pH7.5を、反応混合物中、5mMまで添加することによって、反応を停止した。
【0146】
GPCクロマトグラフィ(GFC300 Tosoh; 100mMリン酸緩衝剤、pH7.0; 1ml/分; 280nmで検出)ならびにSDS PAGEによって、切断反応の進行を監視した。全長IgGの残量は、反応混合物にソルターゼを添加した後、それぞれ、6時間以内に5%未満に減少し、そして15時間以内に3.6%未満に減少した((エラー! 参考文献は見出されない)を参照されたい)。
【0147】
わずかに塩基性の条件(例えばpH8.0)で、プロテインA Sepharoseクロマトグラフィベッド材料(例えばMabSelect Sure、GE Healthcare)を用いて、切断され、そしてビオチン・コンジュゲート化されたF(ab’)2断片を精製した。残存するIgGならびにFc部分は、ベッドマテリアル上に捕捉されている。ビオチン化F(ab’)2のフロースルー分画は、限外濾過膜(15MWCO、Amicon−Ultra)によって濃縮され、そして最終的に、適切なクロマトグラフィ条件(例えば50mMリン酸緩衝剤、150mM KCl、pH7.4)下、GPCカラム(例えばSuperdex 200 Increase、GE Healthcare)上の精錬工程で精製した。
【0148】
ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え免疫グロブリンの切断/ビオチン化F(ab’)2へのコンジュゲート化の同一性を、理論的および実験的に決定した分子量の比較に関して、ESI TOF MSによって確認した。ビオチン取り込み率は正確に2である(各重鎖は、切断され、そしてC末端ビオチン化された型である)。切断/コンジュゲート化/精製法の収率は、およそ33%(最大理論収率はおよそ60%)であるのに比較して、NHSコンジュゲート化モノビオチン化F(ab’)2断片の収率はおよそ10〜15%である。機能試験を、それぞれ実施例7および8に記載する。
【0149】
実施例6
ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換えウサギ免疫グロブリンのソルターゼ仲介性融合
実施例5に概説する方法を用いて、ウサギ/マウスIgGキメラ、ソルターゼ・コンジュゲート化ループを含むクローンB(基質1)の酵素切断およびそれに続くビオチンタグ(基質2)のコンジュゲート化/カップリング反応を試験した。
【0150】
IgG免疫グロブリンの重鎖中のソルターゼ・コンジュゲート化ループのアミノ酸配列を、本質的に実施例5に記載するように、設計する。
150mM KClおよび5mM CaCl2を含有する50mM Tris緩衝剤pH8.0中、精製ソルターゼ(40μM)を、その基質、すなわちソルターゼ・コンジュゲート化ループを含む組換え免疫グロブリン(60μM)およびN末端GGGG求核剤モチーフを含有するビオチン誘導体(3000μM)と混合した。反応混合物を37℃で17時間(一晩)インキュベーションした。0.5M EDTA、pH7.5を、反応混合物中、5mMまで添加することによって、反応を停止した。
【0151】
GPCクロマトグラフィ(GFC300 Tosoh; 100mMリン酸緩衝剤、pH7.0; 1ml/分; 280nmで検出)ならびにSDS PAGEによって、切断反応の進行を監視した。全長、すなわち非ソルターゼ切断IgGの残量は、15時間以内に10%未満に減少した。F(ab’)2産物は、2のビオチン取り込み率で、完全にビオチン化された(データ未提示)。
【0152】
実施例7
慣用的なF(ab’)2断片および実施例5において産生されるようなF(ab’)2様断片を用いたイムノアッセイデータ
提示されるソルターゼ仲介プロトコル(実施例5を参照されたい)にしたがって調製されたビオチン化F(ab’)2コンジュゲートを、同じモノクローナル抗体のNHSコンジュゲート化モノビオチン化ペプシン調製F(ab’)2断片と比較した。
【0153】
第一の場合、ビオチンは、ソルターゼ・コンジュゲート化ループからなる重鎖のC末端に部位特異的に結合され、コンジュゲート化断片の定義される均質な集団を提供する(実施例5を参照されたい)。
【0154】
第二の場合、ビオチンは、標準的なプロトコルにしたがってF(ab’)2断片の異なるリジン上に、化学量論的に付着する。モノビオチン化抗体コンジュゲートを得るため、0.5〜1Mの硫酸アンモニウムをコンジュゲート溶液に添加した。50mMリン酸カリウム(pH7.5)、150mM KCl、0.5〜1M硫酸アンモニウムで平衡化したストレプトアビジン・ムテイン吸着剤(DE19637718を参照されたい)に溶液を通過させた。いかなるビオチンもカップリング/結合していない抗体は、吸着剤に結合不能であり、そして洗い流された。モノビオチン化抗体コンジュゲートは、50mMリン酸カリウム(pH7.5)、150mM KClおよび2%DMSOで溶出された。抗体あたり1より多いビオチンを含む抗体コンジュゲートは、その後、50mMリン酸カリウム(pH7.5)、150mM KClおよび2mMビオチンで溶出された。得られるモノビオチン化分画は、異なるモノビオチン化F(ab’)2断片の異種集団を含む。
【0155】
実験TSH電気化学発光アッセイを用いて、比較評価を行った。Rocheのcobas(登録商標)e411分析装置上で、サンドイッチアッセイ形式で測定を行った。cobas(登録商標)e411分析装置におけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。このサンドイッチアッセイにおいて、ビオチン−コンジュゲート(すなわち捕捉抗体)は、ストレプトアビジン・コーティング磁気ビーズ表面上に固定される。検出抗体は、シグナル伝達部分として、錯体化ルテニウム陽イオンを所持する。分析物の存在下で、色素原ルテニウム複合体は固相に架橋され、そしてcobas(登録商標)e601分析装置の測定セル中に含まれる白金電極での励起後、620nmで光を放出する。シグナル出力は、恣意的光単位である。TSHをスパイク処理された標準物質、ならびにいくつかの供給源から購入したヒト血清試料で測定を行った。
【0156】
実験TSHアッセイを以下のように行った。50μlのヒト血清試料またはスパイク処理した標準物質、35μlの2μg/ml捕捉抗体−ビオチン・コンジュゲートおよび50μlの1μg/ml検出抗体ルテニウム標識コンジュゲートを、9分間一緒にインキュベーションした後、40μlのストレプトアビジン・コーティング常磁性微粒子を添加した。混合物をさらに9分間インキュベーションした。その後、(これらの実験において生じる電気化学発光シグナルを通じて)TSHを検出した。
【0157】
実験TSH Elecsysで得た結果または標準物質を以下の表に要約する。結果は、F(ab’)2断片のC末端部位特異的ビオチン化が、未結合リジンを通じて化学量論的にコンジュゲート化されたモノビオチン化F(ab’)2断片よりも有益であることを立証する。アッセイ動力学は、それぞれ、標準物質6に関しては92から145に、そして標準物質2に関しては6.8から10.2に増加した(
図5を参照されたい)。ブランク値は影響を受けないままであった。
【0158】
【表2】
【0159】
実施例8
実施例5で産生されるようなF(ab’)2断片および慣用的IgGコンジュゲートを用いたイムノアッセイデータ
提示するソルターゼ仲介プロトコル(実施例5を参照されたい)にしたがって調製したビオチン化F(ab’)2コンジュゲートを、同じモノクローナル抗体のNHSコンジュゲート化モノビオチン化IgGと比較した。
【0160】
第一の場合、ビオチンは、ソルターゼ・コンジュゲート化ループからなる重鎖のC末端に部位特異的に結合され、コンジュゲート化断片の定義される均質な集団を提供する(実施例5を参照されたい)。
【0161】
第二の場合、ビオチンは、標準的なプロトコルにしたがってIgGの異なるリジン上に、化学量論的に付着する。モノビオチン化抗体を得るため、実施例6に記載する慣用的コンジュゲートの調製法を適用している。
【0162】
実験pTau電気化学発光アッセイを用いて、比較評価を実行した。Rocheのcobas(登録商標)e601分析装置上で、サンドイッチアッセイ形式で測定を行った。cobas(登録商標)e601分析装置におけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。サンドイッチアッセイの技術的実現を、実施例6に記載する。
【0163】
実験ホスホ−Tau(181P)アッセイを以下のように実行した。55μlのヒト血清試料またはスパイク処理した標準物質、50μlの1μg/ml捕捉抗体−ビオチン・コンジュゲート、および60μlの2μg/ml検出抗体ルテニウム標識コンジュゲートを、9分間一緒にインキュベーションした後、35μlのストレプトアビジン・コーティング常磁性微粒子を添加した。混合物をさらに9分間インキュベーションした。その後、(これらの実験において生じる電気化学発光シグナルを通じて)ホスホ−Tauを検出した。
【0164】
実験ホスホ−Tau Elecsysで得た標準物質に関する結果を以下の表に要約する。結果は、F(ab’)2断片のC末端部位特異的ビオチン化が、未結合リジンを通じて化学量論的にコンジュゲート化されたモノビオチン化IgGよりも有益であることを立証する。アッセイ動力学は、それぞれ、標準物質7に関しては57から86に、そして標準物質3に関しては3.0から4.1に増加した(
図6を参照されたい)。ブランク値は影響を受けないままであった。
【0165】
【表3】