(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861706
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】接合区域の領域において2つの構成部分を少なくとも1つのレーザービームによって接合する方法ならびに連続した接合シームを形成する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/22 20060101AFI20210412BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20210412BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20210412BHJP
B23K 26/356 20140101ALI20210412BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20210412BHJP
B23K 26/244 20140101ALI20210412BHJP
【FI】
B23K26/22
B23K26/00 M
B23K26/073
B23K26/356
B23K26/21 W
B23K26/244
B23K26/21 G
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-522691(P2018-522691)
(86)(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公表番号】特表2018-537289(P2018-537289A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016001810
(87)【国際公開番号】WO2017076494
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】102015014060.4
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン ブリッテン
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン メールマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー オーロヴィンスキー
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト ギルナー
【審査官】
永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−516147(JP,A)
【文献】
特開2011−045897(JP,A)
【文献】
特開2011−173146(JP,A)
【文献】
特開2014−147962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/22
B23K 26/00
B23K 26/073
B23K 26/21
B23K 26/244
B23K 26/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの構成部分の結合すべき自由面を規定する接合区域の領域において2つの構成部分を少なくとも1つのレーザービームによって接合する方法であって、
前記接合区域の領域に第1の構成部分を、第2の構成部分の厚さ方向で見て、前記第2の構成部分に対して間隔を置いて熱的に分離するように配置して、接合ギャップを形成する方法ステップであって、前記第2の構成部分は、前記第1の構成部分に面した側に金属層を有している、方法ステップと、
第1段階において、前記構成部分の厚さ方向で、前記第1の構成部分の、前記第2の構成部分とは反対側の表面にレーザービームを向ける方法ステップであって、前記レーザービームによって照射される表面積を入射面積(A
L)と呼び、前記第1の構成部分を局所的に、少なくとも前記接合区域に相当する大きさでその厚さ全体にわたって溶融させ、これにより前記レーザービームを介して前記第1の構成部分に吸収されるエネルギ(Q
L,a)を、以下の条件を満たすように選択し、前記条件が、
吸収エネルギ=
【数1】
であって、この場合、
【数2】
第1の構成部分で吸収されるエネルギ、
であって、
Q
B1=ρ
1・A
1・s
B1・c
p1・(T
m1−T
0) 第1の構成部分において局所的な溶融ナゲットを生成するために必要なエネルギ
であって、この場合、
ρ
1=第1の構成部分の密度
A
1=レーザービーム広がり方向で投影される溶融ナゲットの面積
s
B1=第1の構成部分の厚さ
c
p1=第1の構成部分の熱容量
T
m1=第1の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
であって、
【数3】
第1の構成部分における熱伝導損失
dH
M1 第1の構成部分における物質相変化のエンタルピ
Q
B2=ρ
2・A
2・s
B2・c
p2・(T
m2−T
0) 第2の構成部分において局所的な溶融膜を生成するために必要なエネルギ
であって、この場合、
ρ
2=第2の構成部分の密度
A
2=レーザービーム広がり方向で投影される溶融膜の面積
s
B2=第2の構成部分における溶融膜の厚さ
c
p2=第2の構成部分の熱容量
T
m2=第2の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
であって、
【数4】
第2の構成部分における熱伝導損失
dH
M2 第2の構成部分における物質相変化のエンタルピ、であって、
これにより、第1の構成部分において溶融材料から溶融ナゲットが形成される、方法ステップと、
次いで第2段階で、
前記第1の構成部分から前記第2の構成部分
に向かう方向で前記溶融
ナゲットに少なくとも1つの圧力パルスを付与する方法ステップであって、前記圧力パルスは、前記溶融ナゲットが前記圧力パルスにより前記接合ギャップ内へと転移し、前記接合ギャップを橋渡しし、前記第2の構成部分に接触するまで付与され、前記溶融ナゲットと前記第2の構成部分との前記接触により、前記第2の構成部分へのエネルギ伝達が行われ、前記第2の構成部分への前記エネルギ伝達により、前記第2の構成部分の上面で前記第2の構成部分の溶融温度が達成され、溶融膜が形成されるような温度推移が生じ、熱進入深さは、
【数5】
=熱伝導率
によって規定され、
前記第2の構成部分では、前記溶融ナゲットと前記第2の構成部分との最初の接触と、前記溶融ナゲットにおける溶融材料の凝固との間の時間を意味する接触時間(t
Kontakt)に基づき、前記第2の構成部分の所定の深さにおいて、前記第2の構成部分を損傷する損傷温度(T
schaedigung)が超過されないように調節されており、前記第2の構成部分における前記損傷温度(T
schaedigung)は、前記第2の構成部分の厚さ方向で見た前記第2の構成部分の深さ(z
krit,B2)において、前記第2の構成部分の前記金属層の下方に位置する材料の損傷が生じる、または前記第2の構成部分上の前記金属層が、その下に位置する前記材料から剥離する、温度Tとして規定されている、方法ステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記第2段階における前記レーザービームを介した前記溶融ナゲットへのエネルギ導入を、前記レーザービームが、まず前記第2の構成部分において溶融物を形成することなく前記第1の構成部分を貫通するように行い、前記接合ギャップを橋渡しする前記溶融物の温度はそれ以上高くならず、次いで前記第2の構成部分を、前記接合ギャップ内に位置する前記溶融物内に蓄えられた熱エネルギによって加熱し、表面を溶融させ、これにより前記両構成部分の前記溶融物が互いに接続し、次いで前記第1の構成部分における前記溶融ナゲットへの圧力パルスを材料の蒸発により発動する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2段階で付与される前記圧力パルスを、前記レーザービームの様々な変調により発動する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の構成部分において前記レーザービームによって生じた表面温度を、前記第2段階で、レーザー出力はほぼ同じである状態で前記入射面積の大きさをプロセス段階に応じて拡大および縮小することにより、時間的に変調させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレーザービームに重畳する別のレーザービームによって前記少なくとも1つの圧力パルスを実施し、前記両レーザービームは異なる強度、焦点直径、パルス長さ(ms−パルス、ns−パルス)、および/または波長を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記別のレーザービームは、第1のワークピースの上方で集束させられる、かつ/または前記第1の構成部分の上方の周囲雰囲気/プラズマ雲内での吸収を高める波長を有している、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記接合を、前記溶融ナゲットの所望の表面張力分布に合わせた周囲雰囲気内で行い、選択された前記周囲雰囲気により、前記溶融ナゲットの中心における溶融物の流れが前記第1の構成部分から前記第2の構成部分に向かう方向で発生する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記溶融ナゲットの領域において、前記第1の構成部分の温度、または前記温度に関連するサイズの測定を行い、前記温度の低下、または前記関連するサイズの減少により、前記接合ギャップにおける前記溶融ナゲットと前記第2の構成部分との接触の時点を導き出し、前記時点で、前記第1の構成部分への前記エネルギ(QL,a)のさらなる吸収を減じる、または終了する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1の構成部分の上面に沿った前記溶融ナゲットの動きを前記入射面積の領域において検出し、前記吸収エネルギ(QL,a)の範囲を、前記溶融ナゲットの検出された前記動きに応じて調節する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により形成されたスポット溶接を、オーバラップすることにより組み合わせて1つの連続的な接合シームを形成して、連続的な接合シームを形成する方法であって、前記オーバラップの際に、形成したい接合シームに沿ってレーザービームをステップバイステップ式にずらし、ずらされた位置でその都度スポット溶接を行う、連続的な接合シームを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合区域の領域において2つの構成部分を少なくとも1つのレーザービームによって接合する方法ならびに連続した接合シームを形成する方法に関する。
【0002】
2つの構成部分を接合するために使用される様々な方法が公知である。
【0003】
この文書において「接合」という表現が用いられる場合、それは2つの構成部分が溶融により互いに結合される接合区域の領域における2つの構成部分の結合に関する。
【0004】
従来技術では、構成部分を接合するために様々な方法が用いられる。
【0005】
従来のレーザー溶接では、両接合相手が互いに最も狭い接触状態に置かれる。理想的には両構成部分間にはギャップはない。しかしながらしばしば、構成部分精度によっては、溶接過程により橋絡、つまり、橋渡ししなくてはならないギャップが生じる。従来のレーザービーム溶接では、第1の接合相手を、第2の接合相手が同時に熱伝導により溶融されるようにレーザービームにより加熱し局所的に溶融させることで、両接合相手がレーザービームによって局所的に溶融される。深溶け込み溶接では、レーザービームが第1の構成部分の蒸気毛管を通って進入し、これによりレーザー照射が直接第2の構成部分に当たることにより、第2の構成部分の溶融が行われる。いずれにせよ、従来のレーザービーム溶接では、レーザーエネルギの連続供給により、両構成部分における溶融区域のサイズが規定される。
【0006】
レーザースパイク溶接では、重ね合わせられて配置された薄い金属板同士が溶接される。溶接結合を生成するために必要な材料は上側の接合相手からのみ得られるので、付加的な材料は必要ない。この方法は、上側の接合相手の材料厚の100%までの間隔について接合相手間のギャップの橋渡しを可能にする。このような方法により、鋼構造物の溶接過程で飛沫や不純物が阻止され、同時に接合相手間のギャップ許容誤差を高めることができる。プロセスは2段階で行われる。予熱段階は、上側の接合相手の材料を溶融するために行われる。安定的な溶融ナゲットを得るために、深溶け込み溶接のためのプロセス閾値を超過しないようにパルス出力が選択される。このようにして、材料は上側の接合相手の下面まで溶融し、スパイク段階で付加的に誘導されたエネルギは完全に材料転移のために利用可能である。スパイク段階は、予熱段階に続いて時間的に限定された出力増加によって開始され、溶融された材料を下側の接合相手の方向に転移させるために行われる。蒸発までの温度上昇は、一定の焦点直径のもとで所定のレーザーパルス内での出力上昇により行われる。溶融浴表面の沸点が超過され、材料が蒸発する。このとき、溶融物からの加速された蒸気粒子の反動により、溶融浴表面に対する圧力が生じる。
【0007】
別の公知の方法はレーザードロップ溶接(Laser Droplet Welding:LDW)である。この方法は、このプロセスにワイヤの形態で供給される付加的な材料を使用して行われる無接触式の溶接法である。この方法は、ワイヤから溶け出したはんだボールによって電子部品を接合するために用いられる(隅肉溶接)。相応の装置は、自動化されたワイヤ供給を行うシステムと、プロセス照射を提供するレーザーシステムとから成る。溶接ワイヤは、溶融物の滴下を容易にするために垂直に供給される。溶接ワイヤの均等な加熱を保証するために、エネルギの導入は、互いに120°ずらされてワイヤに集束される3つのレーザービームによって行われる。上方からのレーザービームと側方からのワイヤ供給を含む選択的な構成によれば、デフォーカスされたレーザー照射による基板の予熱が可能である。
【0008】
上述したLDW法の変化態様は、いわゆるレーザードロップろう付けであり、この場合、金属プリフォームがノズル内に予め配置され、レーザービームによって溶融され、窒素ガス圧によってワークピースへと吹き付けられる。
【0009】
別の公知の方法、レーザーインパクト溶接(Laser Inpact Welding:LIW)は、下側の接合相手に向かって上側の構成部分をレーザー誘起により推進することにより、薄板形状の固体の金属構成部品を接合するために用いられる。このような衝撃溶接は、大きな圧力を2つのきれいな表面に加えることにより、堅固な結合が生じるという効果を利用している。一般的な仮説によれば、これは、接合相手の物質的境界を越えた拡散と再結晶の結果である。両材料の融点は関係ない。
【0010】
衝突溶接は一種の衝撃溶接である。衝突溶接では、一方の軽量の接合相手は高い加速度をかけられ、高速でその対応相手にぶつかる。この場合に生じる圧力は、両接合相手を溶接するのに十分である。軽量の接合相手を加速させるために、集束された電磁波によりプラズマが生成されるならば、これはレーザーインパクト溶接(LIW)と言われる。使用される圧力は、10
9Paの範囲にある。
【0011】
はんだジェットバンプ(Solder Jet Bumping)は、はんだボールによる微小光学システムの接合(隅肉溶接)のために使用され、レーザードロップろう付けと同様に、はんだ溶融物の窒素吹き付けにより行われる。
【0012】
LIFT法(Laser Induced Forward Transfer:レーザー誘起前方転写)は、レーザー照射を利用して、ドナー層からギャップを越えてアクセプタ層に材料を転写する。この場合、ドナー層は、処理レーザーの波長に対して高い透過率を有する支持層の上に作製される。ドナー材料を転写するために、レーザービームは支持層を通ってドナー層との界面に集束される。ドナー層への照射により導入されたエネルギによりドナー層は加熱される。これによりこの個所で材料が溶融し始める。溶融フロント部は、材料蒸発により界面の圧力が、支持層からドナー材料が放出され、アクセプタ層の方向へと加速するのに十分となるまで、ドナー材料の開放表面の方向に広がる。
【0013】
本発明の課題は、厚い金属構成部分を、金属層、特に薄い金属被覆を有する敏感な構成部分(比較的薄い下側の接合層)に、下側の構成部分を損傷することなく接合する方法を提供することである。特にこの方法は、構成部分を繊細な基板上の金属層に接合するために使用可能であるのが望ましい。さらに、相応の利点を有する接合シームを形成することができる方法が提供されるのが望ましい。
【0014】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法ならびに請求項10の特徴を有する方法により解決され、この場合、請求項10の特徴を有する方法は、連続的な接合シームを形成するために用いられる。本方法の好適な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0015】
繊細な基板とは、高い温度勾配およびこれに生じる応力により、亀裂が形成される傾向がある、または局所的な高温により劣化するような基板を意味する。第1の場合は例えば半導体およびセラミック上の薄い金属膜が考えられ、第2の場合は例えばプラスチック上の金属層が考えられる。
【0016】
接合区域の領域において2つの構成部分を接合する本発明による方法によれば、少なくとも1つのレーザービームを使用しながら、以下の方法ステップが実施される。
【0017】
まず、第1の構成部分を接合区域の領域で、第2の構成部分に対して間隔を置いて熱的に分離するように配置し、このとき構成部分の厚さ方向で見て、第1の構成部分と第2の構成部分との間には接合ギャップが残される。接合ギャップの(構成部分の厚さ方向での)幅は、第1の構成部分で生じた溶融物が、蒸気圧により第2の構成部分へと転移されて、この第2の構成部分に接触しなければならないということに基づき決められる。この場合、移動可能性および移動特性は、構成部分それぞれの厚さ、溶融物の温度、ひいては粘性、非溶融状態と比較した溶融物の表面張力によって影響される。
【0018】
第1段階では、少なくとも1つのレーザービームを構成部分の厚さ方向で見て、第1の構成部分の、第2の構成部分とは反対側の表面へと向ける。レーザービームによって照射される表面積は、入射面積A
Lと呼ばれる。
【0019】
本明細書でレーザービームの方向について言及する場合、この方向は、集束光学系から来て構成部分へ向かうビーム方向に関する。
【0020】
このようなレーザービームにより、第1の構成部分は局所的に、少なくとも接合区域に相当する大きさで、その厚さ全体にわたって溶融される。重要であるのは、Q
L,aと記される、レーザービームを介して第1の構成部分で吸収されるエネルギを、以下の条件が満たされるように選択することである。
【数1】
この場合、
【数2】
第1の構成部分で吸収されるエネルギ、であって、
Q
B1=ρ
1・A
1・s
B1・c
p1・(T
m1−T
0) 第1の構成部分において局所的な溶融ナゲットを生成するために必要なエネルギ
であって、この場合、
ρ
1=第1の構成部分の密度
A
1=レーザービーム広がり方向で投影される溶融ナゲットの面積
s
B1=第1の構成部分の厚さ
c
p1=第1の構成部分の熱容量
T
m1=第1の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
であって、
【数3】
第1の構成部分における熱伝導損失
dH
M1 第1の構成部分における物質相変化のエンタルピ
Q
B2=ρ
2・A
2・s
B2・c
p2・(T
m2−T
0) 第2の構成部分において局所的な溶融膜を生成するために必要なエネルギ
であって、この場合、
ρ
2=第2の構成部分の密度
A
2=レーザービーム広がり方向で投影される溶融膜の面積
s
B2=第2の構成部分における溶融膜の厚さ
c
p2=第2の構成部分の熱容量
T
m2=第2の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
であって、
【数4】
第2の構成部分における熱伝導損失
dH
M2 第2の構成部分における物質相変化のエンタルピ、である。
【0021】
第1の構成部分において溶融材料から溶融ナゲットが形成される。
【0022】
次いで第2段階で、第2の構成部分の方向で前記溶融物に少なくとも1つの圧力パルスを付与し、この圧力パルスは、溶融ナゲットがこの圧力パルスにより接合ギャップ内へと転移し、接合ギャップを橋渡しし、第2の構成部分に接触するまで付与される。溶融ナゲットと第2の構成部分との接触により、第2の構成部分へのエネルギ伝達が行われ、このエネルギ伝達により、第2の構成部分の上面で第2の構成部分の溶融温度に達するような温度推移が第2の構成部分で生じる。重要な点は、第2の構成部分への熱進入深さを、t
Kontaktと記される接触時間に基づき、第2の構成部分の所定の深さにおいて、第2の構成部分を損傷する、T
schaedigungと記される損傷温度が超過されないように、調節することである。
【0023】
接触時間t
Kontaktは、第2の構成部分との溶融ナゲットの最初の接触と、溶融ナゲット内の溶融材料の凝固との間の時間である。
【0024】
第2の構成部分における損傷温度T
schaedigungは、第2の構成部分の厚さ方向で見た第2の構成部分の深さz
krit,B2において、第2の構成部分の金属被覆の下方に、もしくは金属層の下方に位置する材料の損傷が生じる、または第2の構成部分の上面上の金属層が、その下に位置する、第2の構成部分の材料から剥離する、温度Tとして規定されている。
【0025】
本発明による方法により、厚い金属の構成部分を、薄い金属層を有した敏感な構成部分上に接合することができ、この場合、第2の構成部分、すなわち下方の構成部分で損傷が生じることはない。特に、第2の構成部分のための繊細な基板の場合に、本発明による方法が使用可能である。
【0026】
特に本発明の方法は、比較的厚い、(レーザービーム方向で見て)上側の接合相手を、比較的薄い下側の接合相手の上に接合する際に使用され、この場合、下側の構成部分では最小限のエネルギ蓄積しか行われない。すなわち、上側の構成部分と下側の構成部分とが熱的に分離されていることに基づき、下側の構成部分では、薄いが、両構成部分を材料接続的に結合するのに十分な溶融膜厚さが第2の構成部分で形成されるようなエネルギ導入しか行われない、もしくはそのようなエネルギQ
L,aしか吸収されない。したがって、熱的分離を実現するギャップが両構成部分間にあることが重要である。本発明による方法では、第2の構成部分の溶融は主に、第1の構成部分の溶融物に含まれるエネルギにより行われる。レーザービーム出力は、溶融物と第2の構成部分とが接触する時点として見なされる実際の接合時点で減じられる。接合プロセスのために必要なエネルギが減じられる、もしくは最小にされることも有利である。1つの方法ガイドでは、第1の構成部分へのエネルギ導入の制御は、レーザービームにより溶融ナゲットが形成され、場合によっては溶融物に圧力パルスも加えられるが、レーザービームは溶融ナゲットを通り抜けないように行われる。これにより、第2の構成部分の表面がレーザービームによるエネルギ導入により負荷されないことが保証される。
【0027】
しかしながら、第2段階における溶融ナゲットへのエネルギ導入を、レーザービームが、まず第2の構成部分において溶融物を形成することなく、または最大でも第2の構成部分を極めて僅かにしか溶融せずに、第1の構成部分を貫通するように行い、ギャップを橋渡しする溶融物の温度はそれ以上高くならないように行うことも考えられる。第1の構成部分において形成された溶融ナゲットへの圧力パルスは第2段階における材料の蒸発により発動される。このような圧力パルスにより、第1の構成部分から離れていない溶融ナゲットが、第2の構成部分の方向へと搬送され、その結果、第1の構成部分の溶融ナゲットと、第2の構成部分の、第1の構成部分の方に向いた上面とが接触する。第2の構成部分は次いで、ギャップ内に存在する溶融物内に蓄えられた熱エネルギにより加熱され、表面上で溶融し、両構成部分の溶融物が互いに接続する。
【0028】
このような圧力パルスは、第1の構成部分において溶融ナゲットを形成するレーザービームによって発生させることができる。しかしながら、このような圧力パルスは、例えば電子ビームのようなビームツール、中空チャンバ放電、ガス圧もしくは流体圧、機械的なパルス、電界、静電気的な吸引、ベルヌーイ効果の利用により、加えることも考えられる。
【0029】
さらに、第1の構成部分からギャップを越えて第2の構成部分へと溶融物を低エネルギで引き渡すために所定の変調技術を使用することが考えられる。プロセス経過は好適には、レーザービームの溶融ナゲットの通過を阻止する、または少なくとも減じるように調節される。
【0030】
適合された変調技術により、溶融ナゲットの領域における第1の構成部分の材料の蒸発が時間的かつ/または場所的に分配され、この溶融ナゲットを所望のようにギャップを介して転移させる。相応の変調技術によるこのような時間的かつ/または空間的な蒸発の制御により、第1の構成部分の材料の時間的かつ空間的蒸発が、ひいては溶融物における圧力分配が制御されて、これにより従来技術による方法が必要とするよりも僅かなエネルギしか必要ではなく、これが接合相手に供給される。
【0031】
これに対して、3次元的な蒸発分配および圧力分配は、蒸発領域を著しく局所化し、レーザービームに第1の構成部分を通り抜けさせ、かつ/または第2の構成部分に対する溶融物の結合が既に達成されているにもかかわらず、下側の第2の構成部分内への付加的なエネルギ導入を行わせる。
【0032】
第2段階で付与される前記圧力パルスを、レーザービームの様々な変調により発動することが考えられる。
【0033】
レーザー照射およびレーザービーム焦点の時間的な出力変調の他、レーザービームの場所的な出力変調、時間的な集束変調、またはこれらの組み合わせも考えられる。
【0034】
第1の構成部分の表面における時間的な温度変調のために、レーザービームにより第1の構成部分で吸収されたエネルギQ
L,aを、第2段階で、レーザー出力はほぼ同じである状態で入射面積の大きさを拡大または縮小することにより、時間的に変調させる。このような縮小は、集束レンズと構成部分との距離を変更することにより、またはレーザービームの開きを変更することにより、ビーム半径が変調されるように行われる。
【0035】
さらに、レーザー照射の第1の構成部分への入射面積と、入射するレーザー出力とを同時に変更することも考えられる。この場合、以下の関係、
【数5】
を考慮されたい。この場合、P
Lはレーザー出力、A
Sはレーザー照射に対する第1の構成部分の吸収率、t
Pはプロセス時間、すなわち、第1の構成部分の加熱時間と溶融時間、第2の構成部分への接触時間および熱伝導時間の合計を成す時間を示している。この関係に基づき、入射面積は、第1に、溶融物が形成される第1の構成部分の領域が、ひいてはこの溶融物内のエネルギ量が調節されるように、第2に、蒸気段階を発生させる表面温度が制御されるように変化させられる。
【0036】
特に好適には、第1の構成部分に吸収されるエネルギQ
L,aに関連する、第1の構成部分に入射するレーザー出力と、入射面積A
L(第1の構成部分上のレーザービーム面積)との比が一定に維持されるのが望ましく、第1の構成部分における伝導損失による減少に基づき入射面積A
Lの中心においてより高い温度を発生させるために入射面積A
Lの縮小化が行われる。
【0037】
入射面積を拡大させる入射面積の変更の特別な利点は、所要エネルギが減じられ、第2段階のための移動ダイナミクスが制御されることにある。すなわち、入射面積を拡大することにより、第1の構成部分において比較的小さな表面張力勾配が生じ、したがって安定的な溶融ナゲットが形成される。
【0038】
時間的な出力変調は、入射面積A
Lは不変の状態で、レーザー照射により第1の構成部分に導入されたエネルギ(吸収されたエネルギQ
L,a)の、溶融物の動力学に適合された出力斜面を伴う、レーザー照射の時間的変調により行うことができる。出力斜面とは、パルス・静止比の連続的な拡大または縮小、または変更も意味する。
【0039】
時間的な変調は、ギャップにおける溶融ナゲットの転移段階における、レーザー照射の段階的に増大される複数回の出力上昇、または出力減少により行うことができる。溶融段階における溶融ナゲットの拡大につながる付加的な中間強度が得られるが、これは、レーザー照射が溶融ナゲットを通り抜けることを阻止するように調節される。
【0040】
第2の構成部分に向かう溶融物の移動を発動させるために溶融ナゲットに加えられる少なくとも1つの圧力パルスは、方法の1つの態様では、少なくとも1つのレーザービームに重畳された別のレーザービームによって加えられてよい;両レーザービーム、すなわち少なくとも第1の構成部分において溶融ナゲットを形成するレーザービームと、溶融ナゲットに圧力パルスを付与するレーザービームとは、異なる強度、焦点直径、パルス長(例えばms−パルス、ns−パルス)、および/または波長を有しているべきであって、これにより2つの重畳するレーザービームの時間的に重畳されたこのような強度変調により、溶融物形成および蒸気形成の独立的な制御が可能である。
【0041】
短期的な出力低減を介して、溶融ナゲットの溶融膜厚さの拡大が達成される。なぜならば、蒸発圧力低下の際に、溶融物ダイナミクスにより、蒸気毛管が遮断されるからである。このような出力低減は、溶融物の振動を励起するために行われるのではなく、レーザー照射が溶融ナゲットを通って第2の構成部分へと到るのを阻止すると同時に溶融段階において溶融物浴を拡大するために行われる。
【0042】
上述した別のレーザービーム、または少なくとも1つのレーザービームに重畳される他のビーム源は、方法の1つの態様では、第1のワークピースの上方で集束させられる、かつ/または前記第1の構成部分の上方の周囲雰囲気/プラズマ雲内での吸収を高める波長を有している。このような手段により、プラズマ雲により、または周囲雰囲気内に溶け込んだ異物粒子により、吸収力が高められ、これにより転移段階におけるワークピースの上方で温度上昇および圧力上昇が生じ、レーザー出力、パルス継続時間、パルス周波数の変更により、レーザービームを、レーザービームの溶融物の通過を阻止するように調節することができる。
【0043】
場所的な出力変調のためには、第1の構成部分の加熱および溶融と、これによるギャップ内への溶融物の、少なくとも1つのレーザービームのビーム軸線に対して垂直方向の円形のビーム運動、例えば、第1の構成部分の平面における少なくとも1つのレーザービームを有するリング状のビーム運動、8の字型のビーム運動またはリサージュ図形状のビーム運動による転移が有利である。このような手段により、局所的に温度が上昇し、これにより第1の構成部分の材料の蒸発が生じる。
【0044】
この場所的な出力変調も、第1の構成部分の溶融段階の所要エネルギを減じ、続く段階で、第2の構成部分へのエネルギ伝達を低減させ、これにより第2の構成部分は僅かなエネルギ伝達しか必要ない。
【0045】
第1の構成部分における入射面積の領域におけるレーザービームの強度分布の最適化は、レーザービームのビームプロファイルのガウシアン分布から、ビームプロファイルのドーナツ型分布またはビームプロファイルのトップハット型分布へと行うことができる。ガウシアン分布を起点とするビームプロファイルのこのような変更により、場所的な蒸発圧の制御が行われ、結合横断面と、第2の構成部分へと流れ出す溶融物のフランク角とを変更することができる。フランク角はこの場合、第2の構成部分上の表面法線と、両構成部分間で再凝固した溶融物との間の角度である。このフランク角は、第2の構成部分の表面と、再凝固した溶融物との間の僅かな角度を含む0〜90°の範囲にあるのが望ましい。
【0046】
接合を、溶融ナゲットの所望の表面張力分布に合わせた周囲雰囲気内で行うことができ、選択された前記周囲雰囲気により、溶融ナゲットの中心における溶融物の流れが、周囲のガスに応じて、溶融ナゲットの真ん中に向かって、または溶融ナゲットの縁部に向かって発生する。これにより、さらなる出力変更なしに、中心温度の上昇、または溶融ナゲットの拡大が達成され、これにより、直接的な蒸気圧発生または結合横断面の拡大も得られる。
【0047】
周囲雰囲気の変更により、第1の構成部分の吸収を高め、ひいては第1の構成部分において吸収されるエネルギQ
L,aを高めることも考えられる。このためには材料に応じて、酸素または窒素が使用される。
【0048】
第1の構成部分上には、入射面積の側にレーザービームを透過するカバー層を設けることができ、これにより、この透過性のカバー層と第1の構成部分との間には圧力キャビティが形成される。この圧力キャビティにより、カバー層の下側で構成部分が溶融され、この層の下側での蒸発の際に蒸気は膨張できないのでこれにより圧力が高められる。
【0049】
第1の構成部分は2つの層、すなわち上側の層と下側の層とから成っていてよい。レーザービームのビーム軸線方向で見て、レーザービームが向けられる上側の層は、下側の層の蒸発温度よりも低い蒸発温度を有しているが、この蒸発温度は下側の層の溶融温度よりも高いので、下側の層がまだ液状のときに既に上側の層は蒸発する。このような材料の組み合わせによりエネルギ導入は材料側で最小化される。
【0050】
既に説明したように、接合ギャップ内に形成された溶融ナゲットが第2の構成部分の表面に達する時点は、重要な時点である。この時点を特定する、または付加的に検出するために、第1の構成部分の温度の測定、またはこの温度に関連する、溶融ナゲットの領域における第1の構成部分のサイズの測定が行われる。温度の低下、または関連するサイズの減少により、ギャップ内の溶融物もしくは溶融ナゲットと第2の構成部分との接触時点を導き出し、この時点で、第1の構成部分へのエネルギ導入、すなわちエネルギQ
L,aのさらなる吸収を減じる、または終了する。
【0051】
転移段階におけるエネルギ供給に関するこのような遮断時点は、溶融ナゲット上面温度の高温測定を介しても求めることができる。この場合、溶融物と下側の構成部分との接触の際に突然の温度降下が検出される。
【0052】
第1の構成部分の溶融の際に必要なエネルギの低減、および溶融ナゲットの拡大を達成するために、第1段階における接合過程の開始時に、第1の構成部分をレーザービームの円形のビーム運動にさらすこともできる。この場合、円直径は50〜1000μmの範囲にあってよい。
【0053】
ビーム運動の円直径に関するパラメータ、円軌道に沿ったレーザービームの送り速度に関するパラメータ、円の数に関するパラメータは、特に、材料の特性およびレーザービームのパラメータに合わせられる。
【0054】
マイクロリングの形態のビーム偏向による溶融物転移(場所的な出力変調)により、溶融段階の所要エネルギはさらに減じられ、後続の段階で構成部分に伝達されるエネルギを低減する。第2段階では、レーザービームの円形のビーム運動の直径は0〜100μmの直径に減じられてよく、これにより伝導による熱の流出は減じられ、その結果、溶融ナゲットの中心における温度は上昇し、これにより溶融ナゲットにおける圧力パルスが形成される。
【0055】
溶融物運動の検出は、溶融ナゲットの上面の絶対ジオメトリの測定、すなわち第1の構成部分の表面の平面に対して溶融ナゲット中心の表面の測定、第1の構成部分で生じる蒸気毛管の測定、および溶融物を通るレーザービームの通過によっても行うことができ、これによりレーザービームを介して第1の構成部分に導入されるエネルギの制御により、入射期間、レーザー出力、レーザー強度を制御することにより、偏向を調節することができる。入射面の領域における第1の構成部分の上面に沿った溶融ナゲットの動きを検出することにより、吸収エネルギQ
L,aの範囲を、溶融ナゲットの検出された動きに応じて、場所選択的な測定技術により求めることができる。
【0056】
このために例えば、溶融ナゲット上面の干渉法による位置測定が行われる。溶融ナゲット上面の絶対位置測定および生じた蒸気毛管の測定により、溶融物を通るレーザービームの通過と、溶融物の転移とが検出され、これに合わせてレーザー出力が調整される。
【0057】
ギャップ内への溶融ナゲットの転移の測定は、第1の構成部分と第2の構成部分との間の抵抗変化または容量変化を介して電気的に行うこともできる。ギャップ内に転移する溶融物により、構成部分間の抵抗変化または容量変化が生じ、これにより溶融ナゲットによるギャップの橋渡しを、この変化に基づき監視することができる。
【0058】
接合過程を音響的に監視し、音響エミッションの閾値の超過により、溶融ナゲットと第2の構成部分との接触時点を導き出すことも考えられる。この場合、大音量を発生させて、第1の構成部分へのエネルギ導入を減じるために、または終了するために利用することができる。このために音響センサを使用して、検出された音響信号から溶融物の形成を監視することができる。なぜならば、音響信号は、第1の構成部分における蒸気毛管の状態に依存して変化し、第2の構成部分への溶融物の転移を変化させるからである。
【0059】
上述したような方法は、連続的な接合シームを形成するためにも適しており、この場合、上述した方法により形成された個々のスポット溶接を、オーバラップすることにより、または互いに並べることにより、組み合わせて1つの連続的な接合シームを形成する。この場合、形成したい接合シームに沿ってレーザービームをステップバイステップ式にずらし、ずらされた位置でその都度このようなスポット溶接を行う。
【0060】
この方法は、第2の構成部分の基礎基板が、セラミック、ケイ素、ゲルマニウム、プラスチック化合物/エポキシ樹脂/FR4プリント基板材料、または一種のガラス、特に石英ガラスから成っていて、その基板上に接合相手としての金属層が設けられている構成部分の接合に特に適している。
【0061】
本発明のさらなる詳細および特徴は、添付の図面により得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】2つの構成部分を接合する本発明による方法を説明するための概略図である。
【
図2】第2の構成部分への進入深さzに関する温度Tを示すグラフである。
【
図3】200μmの厚い銅基板と、Si基板上の35μmの薄い金属被覆との間で行われている接合を示す図である。
【
図4】場所的な出力変調を利用して行う2つの構成部分の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)を示す図である。
【
図5】時間的な集束変調を利用し、入射面積の変更を介して行われる、2つの構成部分の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)を示す図である。
【
図6】温度上昇と、蒸発により生じる圧力パルスとを伴う、時間的な出力変調を利用して行われる、2つの構成部分の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)を示す図である。
【
図7】レーザー照射の時間的出力変調に関する3つの可能な出力プロファイル(a)、(b)、(c)を示す図である。
【0063】
図1には、2つの構成部分、すなわち上側の第1の構成部分1と下側の第2の構成部分2とを接合する本発明による方法に相当する接合過程が概略的に示されている。使用されるサイズのところで、上側の構成部分1には指数B1が付与されており、下側の構成部分2には指数B2が付与されている。
【0064】
接合過程の開始のために2つの構成部分1,2は間隔を置いて熱的に互いに分離されて配置されているので、構成部分1,2の間には方向矢印3で示した厚さ方向で、接合ギャップ4が残されている。第2の構成部分2は、第1の構成部分1に面した側に金属層5を有しており、この金属層5は、第1の構成部分の溶融物と材料接続的な結合を形成する。接合ギャップ4の幅6は、接合相手、すなわち、構成部分1と構成部分2との熱的な分離が達成される最小限の寸法を有するように決められる。
【0065】
次いで、レーザービーム7が構成部分1,2の厚さ方向で、第1の構成部分1の、第2の構成部分2とは反対側の表面8へと向けられる。レーザービーム7またはより多数のレーザービームによって照射される表面は入射面積A
Lと呼ばれ、第1の構成部分1の表面8にぶつかるレーザービーム7の直径に依存している。第1の構成部分1に導入され吸収されるエネルギQ
L,aにより、第1の構成部分1は局所的に、その厚さ全体にわたって溶融される。接合ギャップ4による構成部分1,2の熱的な分離により、上側の構成部分1の溶融段階で必要なエネルギは全体として比較的僅かである。なぜならば、第1には、第1の構成部分1から第2の構成部分2への熱伝導は行われず、第2には、第2の構成部分が第1の構成部分1の溶融により熱的に影響を受けないからである。
【0066】
溶融区域のサイズは、第1の構成部分1の表面8の方向で見て、少なくとも形成したい接合区域のサイズに相当する。
【0067】
接合区域は、両構成部分1,2が溶融により互いに接続される、2つの構成部分1,2の領域である。
【0068】
少なくとも1つのレーザービームによる第1の構成部分1で吸収されるエネルギQ
L,aは、以下の条件を満たすように調節される。
吸収エネルギ=
【数6】
【数7】
第1の構成部分で吸収されるエネルギ
Q
B1=ρ
1・A
1・s
B1・c
p1・(T
m1−T
0) 第1の構成部分において局所的な溶融ナゲットを生成するために必要なエネルギ
ρ
1=第1の構成部分の密度
A
1=レーザービーム広がり方向で第1の構成部分に投影される溶融ナゲットの面積
s
B1=第1の構成部分の厚さ
c
p1=第1の構成部分の熱容量
T
m1=第1の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
【数8】
第1の構成部分における熱伝導損失
dH
M1 第1の構成部分における物質相変化のエンタルピ
Q
B2=ρ
2・A
2・s
B2・c
p2・(T
m2−T
0) 第2の構成部分において局所的な溶融膜を生成するために必要なエネルギ
ρ
2=第2の構成部分の密度
A
2=レーザービーム広がり方向で第2の構成部分に投影される溶融膜の面積
s
B2=第2の構成部分における溶融膜の厚さ
c
p2=第2の構成部分の熱容量
T
m2=第2の構成部分の溶融温度
T
0=周囲温度
【数9】
第2の構成部分における熱伝導損失
dH
M2 第2の構成部分における物質相変化のエンタルピ
これで、方法の第1段階が終了する。
【0069】
次に第2段階では、少なくとも1つの圧力パルスが、この圧力パルスの結果として溶融ナゲット10が接合ギャップ4内へと転移するまで、第2の構成部分2の方向(方向矢印3)で、溶融材料9もしくは溶融ナゲット10に加えられる。こうして接合ギャップ4は溶融ナゲット10によって橋渡しされて、
図1に示したように、第2の構成部分2に接触する。溶融ナゲット10と第2の構成部分2との接触により、第2の構成部分2へのエネルギ伝達が行われる。第2の構成部分2に移されたエネルギQ
B2により、ひいては第2の構成部分2へのエネルギ伝達により、金属層5で被覆された第2の構成部分の上面が溶融温度に到達するような温度推移が第2の構成部分2で生じる。次いで金属層5の溶融膜は、溶融ナゲット10に材料接続する。この接続は冷却時に凝固し、両構成部分を結合させる。
【0070】
第2の構成部分2内への熱進入深さは、溶融ナゲット10と第2の構成部分2との最初の接触と、溶融ナゲット10内の溶融材料9の凝固との間の時間である接触時間t
Kontaktにより、第2の構成部分2の所定の深さにおいて、第2の構成部分2を損傷する損傷温度T
schaedigungが超過されないように調節される。この場合、第2の構成部分2における熱伝導損失
【数10】
が考慮される。
【0071】
第2の構成部分2における損傷温度T
schaedigungは、第2の構成部分2の厚さ12の方向で見て第2の構成部分2における深さz
kritで、第2の構成部分の金属層5の下方に位置する材料の損傷が生じる、または第2の構成部分2上の金属層5がその下にある材料13(ベース材料)から剥離する温度であると規定される。
【0072】
レーザー照射による上側の接合相手、すなわち上側の構成部分1の溶融は、接合相手、すなわち構成部分1,2に合わせた、溶融温度と蒸発温度との間の範囲での溶融物の規定された過熱により行われる。規定された過熱とは、第1の構成部分1に吸収されたエネルギQ
L,aが溶融ナゲットの完全な蒸発をもたらすのではなく、溶融ナゲット10が第2の構成部分の金属層5と接触し、これに伴い第2の構成部分2へとエネルギが導入された後、溶融ナゲットが直ちに凝固せずに、両構成部分の材料接続的な結合が行われて初めて固化するような大きさであることを意味する。
【0073】
伝達技術による、すなわち、例えばレーザー照射の変調による下側の構成部分2への接合ギャップ4を介した溶融物9もしくは溶融ナゲット10の転移は、溶融物9へとエネルギを導入しながら、溶融ナゲット10の下側領域が、第2の構成部分2の上面に接触し、溶融物伝達が達成されるように、行われる。溶融ナゲット10と第2の構成部分2の上面との間の界面へのエネルギ導入および界面における温度上昇は、溶融物9もしくは溶融ナゲット10の転移後、第2の構成部分2との接触後に、第2の構成部分2上の金属層とそれぞれの基板材料との間の界面における臨界温度が超過されることなく、接合相手の十分な混合が行われるように減じられる。
【0074】
本発明による方法は、接合相手としての下側の構成部分2の加熱のために、溶融温度T
m2を上回る規定された溶融物過熱を利用する。溶融ナゲットにおける必要なエネルギ超過はこの場合、E
m=ρc
pVΔTにより計算される。この場合、E
mは、第2の構成部分2の金属層に薄い溶融膜を生成するために必要なエネルギ、ρは構成部分2の金属層の密度、c
pは構成部分2の金属層の比熱、Vは溶融膜の体積、そしてΔTは、熱伝導による熱損失と下側の接合相手における溶融エンタルピを補償するためにΔT=(Tm,
unter Fuegepartner + Temperaturueberhoehung)により求められる。溶融物(溶融材料)9は、必要な溶融体積と、下側の金属被覆(金属層5)の溶融に必要なエネルギE
mに合わせて過熱される。金属層5は例えば、温度に敏感な基板上の20μmの厚さの金属被覆であってよい。下側の接合相手、第2の構成部分2は、方法によれば、溶融物9内に含まれるエネルギQ
B2によってのみ溶融される。
【0075】
転移段階におけるエネルギ導入を最小にするために、溶融物転移が、選択されたギャップを介して下側の構成部分への溶融物の結合を可能とする最も小さな転移であるようにプロセスを制御する。
【0076】
下側の構成部分への溶融物の結合、したがって接合プロセスは、実質的に溶融物9内にあるエネルギによってのみ達成されるので、両構成部分へのエネルギ導入全体および下側の第2の構成部分2へのエネルギ導入は最小値に維持される。
【0077】
本発明による方法により、溶融ナゲット10を接合ギャップ4へと第2の構成部分2の方に転移させるために使用される変調技術は、I2と記載されるレーザー照射の強度が、転移段階において、I
Grenzwertと記載される境界値を下回るように(I2<I
Grenzwert)行われる。さもないと、レーザービームもしくはレーザー照射が溶融ナゲット10を通って著しく流れ、下側の構成部分2のエネルギ的負荷限界を超えてしまう。境界値I
Grenzwertはとりわけ、接合相手1,2のジオメトリおよび材料と、変調技術/ビームガイドに依存する。
【0078】
転移された溶融物は、結合段階で、第2の構成部分2の金属層を含む溶融物を濡らし、接合ギャップ4を超えて両構成部分1,2を接合させる。レーザー照射による極端なエネルギ導入は、既に上述したように、溶融物と下側の第2の構成部分2との接触により、または接触直後に終了し、これにより下側の構成部分2へのエネルギ導入は主として溶融物9に含まれるエネルギ(Q
B2)によってのみ行われる。
【0079】
図2に示したグラフは、第2の構成部分2への進入深さzに関する(第2の構成部分2における)温度Tを示している。このグラフでは、t
Kontaktと記された破線の曲線により、溶融ナゲット10と第2の構成部分2との最初の接触以降の第2の構成部分2への進入深さzの時間的経過を示されている。その他の両曲線、t
maxと記された実線と、t
minと記された点線とは、第1には、第2の構成部分の表面において溶融温度に達するために最小限維持すべき時間、もしくは第2には、第2の構成部分における深さZkrにおいて臨界損傷温度に達するまでに最大限維持できる時間を示している。
【0080】
これらの曲線は1次元の熱方程式から導かれる。
【数11】
この場合、
T(z,t):時点tでの深さzにおける第2の構成部分における温度推移
T
∞:周囲温度
ierfc:積分誤差関数補数(integral error function complement)
q
F:第2の構成部分2への熱導入、この場合、
【数12】
I
L,t:溶融物9を透過するレーザー照射7の強度
α:第1および第2の構成部分1,2の間の熱伝達係数
T
1:第2の構成部分2に溶融物9が接触する時点におけるI
Grenzwert第1の構成部分1の温度
T
2:第2の構成部分2に溶融物9が接触する時点における第2の構成部分2の温度
t:第2の構成部分2への溶融物9の最初の接触以降の時間
A
Kontakt:溶融物9と構成部分2上の金属層との間の接触面積
k:下側の(第2の)構成部分2の熱伝導率
ρ:下側の(第2の)構成部分2の密度
c
p:下側の(第2の)構成部分2の熱容量
z:第2の構成部分2の上面から測定された構成部分における深さ。
【0081】
温度軸には、温度T
schaedigung,B2(z=z
krit,B2)と、T
schmelz,B2(z=0)とが示されている。温度T
schaedigung,B2(z=z
krit,B2)は、第2の構成部分2で、第2の構成部分2の上面から測定された、
図1に示された深さz
krit(z
krit,B2)で損傷が生じる温度を示しており、T
schmelz,B2(z=0)は、第2の構成部分2の表面における、すなわち深さz=0における溶融温度を示している。
【0082】
熱導入q
Fと接触時間t
Kontaktとを構成部分深さに関して調節することにより、Q(t)=const,;Q
B2(t=t
Kontakt)=Q
B2(t=t
Erstarrung)である伝導損失のない最大の場合に、任意の時点tにおける冷却段階でも、第2の構成部分2の厚さ方向で見て第2の構成部分2の構成部分深さz
krit,B2において損傷温度T
schaedigungは超過されないことがわかる。
図2によればさらに、構成部分2の深さへの温度勾配が、構成部分2の金属層の加熱後のどの任意の時点でも臨界損傷温度は超過されないように調節されていることもわかる。構成部分2へのエネルギ導入は、熱伝導を介して、構成部分2における温度が、金属被覆と基板との間の界面における臨界温度を超過せずに補償されるように分配される。
【0083】
図3には、上側の第1の構成部分1と下側の第2の構成部分2との間に本発明の方法により形成された接合ギャップ4における接合部が概略的に示されている。上側の第1の構成部分1は、200μmの厚さの銅コンタクトであり、下側の第2の構成部分2はシリコン基板であり、このシリコン基板の上面は35μmの厚さの銅から成る金属被覆(金属層5)が設けられている。この図面には、厚い接続コンタクトと、熱に敏感な基板上の薄い金属被覆との融解接触のためには、接続コンタクトにおける溶融物形成のための主なエネルギの割合を、薄い金属被覆との熱接触なしに導入することによりエネルギ伝達を最小にしていることが示されている。溶融物と金属被覆との接触の際には、高温の溶融物により金属層は確かに溶融されるが、溶融物内に導入されたエネルギは次いで行われる冷却の際に接続コンタクト内に入り、熱に敏感な構成部分には入らない。
【0084】
図4には、場所的な出力変調を利用する2つの構成部分1,2の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)が示されている。この図面では、第2の構成部分2の上面上の金属層5は図示されていない。接合過程の開始時(段階(a))では、両構成部分1,2は、これらの構成部分間に規定された間隔6(接合ギャップの幅)を有した接合ギャップ4が形成されるように離間される。使用されるレーザービーム7もしくは使用されるレーザー照射は、軸線14に関して円形運動を行いながら第1の構成部分1の表面8の上方をガイドされるので、第1の構成部分1の材料は円形に溶融される。したがって、溶融材料13の区域は、軸線14近くの真ん中領域よりも、軸線14に対して垂直方向で見て外側の領域において早期に進行する。円形運動に応じて複数回レーザーが回転運動することによりエネルギ導入が進むにつれ、熱伝導を介して内側領域も溶融されるので、均等な溶融相が生じる。段階(b)では、レーザービーム7の円形運動の半径が、段階(a)の半径と比較して縮小されるので、溶融物中心における温度が突然上昇し、蒸発閾値が超過される。
【0085】
溶融物転移は、マイクロリング状のレーザービーム7の運動による温度上昇に基づく蒸発と、円形運動の直径の連続的変化により(段階(a)から段階(b)への移行)達成される。段階(a)では、例えば200μmの大きな円直径のビーム運動により予熱を行うことができ、段階(b)では、50μmの直径の円形運動の小さくなる直径により、溶融材料9の転移が生じる。したがって、もともとの円形運動の直径は約1/4に減じられる。制御されない蒸発が生じないようにするためにレーザービームの強度は段階(a)と段階(b)との間で一定に保持され、または転移段階(段階(b))において予熱段階(段階(a))と比較して減じられる。これにより溶融物を接合ギャップ内へと引き渡す制御された圧力形成により、溶融物形成と蒸発との間の均一な移行が達成される。
【0086】
溶融材料9が、第1の構成部分1の下面に達すると、溶融材料9は、溶融ナゲット10が第2の構成部分2の上面に当たるまで接合ギャップ4を橋渡しする。この時点は、上述したように様々な方法により検出されるので、この時点でレーザービームの出力は減じられる、または完全に遮断される。これにより、溶融材料9は、第2の構成部分2を僅かにしか溶融させず、この第2の構成部分2の溶融物に結合するので、冷却後、
図4の段階(c)で示されているような接合部が生じる。
【0087】
図5には、レーザー照射の時間的な集束変調を利用し、入射面積の変更を介して行われる、2つの構成部分1,2の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)が示されている。この場合も、段階(a)は予熱段階で、段階(b)は転移段階で、段階(c)は結合段階である。
【0088】
本質的には時間的な集束変調の際には、レーザー照射の出力は一定のまま、例えば電磁的なテレスコープを介した焦点の動的な変化によりレーザー照射7の強度が変化される。
【0089】
予熱段階(a)では、構成部分1はレーザー照射7の大きなビーム直径により照射されるので、照射直径と熱伝導により規定された溶融ナゲット10が形成され、この際にレーザービーム7の直径15は、表面8で蒸発が生じず、毛管も生じないように、調節される。さらに第1の構成部分1において溶融した材料13が、構成部分1の下面に達するまで形成される。
【0090】
それに続く転移段階(b)では、レーザー照射7の直径15は、蒸発温度に達する強度が達せられ、構成部分1の上方に、溶融物(溶融ナゲット10)に蒸気圧を加える蒸発雲16が形成されるように、減じられる。選択的にはこのことは、レーザービーム7の拡大、およびこれに伴う側方への熱排出の減少によっても行うことができ、これによりこの場合も、溶融ナゲット10の中心には、構成部分2の方向に溶融物を押す蒸発ローブが形成される。
【0091】
溶融ナゲット10が接合ギャップ4を橋渡しする結合段階(c)では、蒸気毛管の発生を回避するために、レーザー照射7の直径15が再び拡大される。さもないと毛管により構成部分2に熱的な影響が与えられる。接合ジオメトリと材料に応じて、接合部はさらに短時間、両構成部分1,2の間の界面に、レーザービーム7の遮断後凝固する均等な融解区域が生じるまで、レーザー照射が行われる。第1の構成部分1へのレーザー照射7の入射面積の変更によるこのような時間的な集束変調には、レーザー照射7の一定の出力により作動され、第1の構成部分1の上面にレーザー照射7が当接する強度の局所的な分配が、焦点の動的な変更により行われるという利点を有している。
【0092】
図6には、温度上昇と、蒸発により生じる圧力パルスとを伴う、時間的な出力変調を利用して行われる、2つの構成部分1,2の接合の3つの段階(a)、(b)、(c)が、再び示されている。段階(a)では、レーザー照射7が第1の構成部分1の表面8に向けられ、これにより、
図5につき上述した段階(a)に相当するものとして、溶融材料9が第1の構成部分1に形成される。レーザービーム7は接合過程全体にわたって、サイズに関しては変更なく維持される。
【0093】
段階(b)では、蒸発温度を上回るために出力を上げ、これにより形成された蒸気圧によって溶融ナゲット10を構成部分2に向かって動かし、これにより接合ギャップ4を橋渡しする。
【0094】
段階(c)では、両構成部分1,2間の界面に、レーザービームの遮断後凝固する均等な融解区域が生じるまで、接合部にさらに短時間レーザー照射7が行われる。
【0095】
図7には、構成部分1に均一な溶融物を形成するために、構成部分2の様々な熱排出条件を考慮しなければならない場合に好適に行われる、レーザー照射の時間的な出力変調に関する3つの可能な出力プロフィール(a)、(b)、(c)が示されている。これらのプロフィールでは、レーザー照射の出力が、時間、すなわち接合過程の時間に関して記載されている。
【0096】
プロフィール(a)は、長方形のプロフィールが示されていて、このプロフィールは、予熱段階における一定の出力と、結合段階のための出力の1つの段階的な上昇を含んでおり、この上昇した出力は結合段階で一定に維持されている。
【0097】
プロフィール(b)は、ピークプロフィールと呼ぶことができ、予熱段階における一定の出力と、結合段階中に次第に上昇する複数の出力ピークとを含む。
【0098】
プロフィール(c)は、斜面プロフィールを示しており、このプロフィールでは、レーザー照射の出力が、
図5および
図6の段階(a)に相当する予熱段階(VWP)にわたって一定に維持されるが、予熱段階に続く結合段階では出力は斜面状に上昇する。
【0099】
これらのプロフィールのうち、プロフィール(a)は、構成部分1のジオメトリが、構成部分2の金属被覆よりも僅かにしか大きくなくて、これに伴う構成部分2へのエネルギ導入は、構成部分2における臨界温度を超過しない場合に、使用される。これに対し、ピークプロフィール(b)は、構成部分2における高い熱排出により、溶融ナゲットの均一かつ十分な形成が可能ではない場合に有利である。この場合、増大するピーク出力を有する高速の出力変調により、レーザービームが第1の構成部分の溶融ナゲットを通ることなく、制御されたエネルギ蓄積と制御された蒸発とが可能である。斜面プロフィール(c)は、プロセスの制御に測定技術的な機器が使用される場合、または構成部分2との溶融ナゲットの接触後に構成部分2における熱排出が、溶融物の凝固が速すぎて十分な混合と接合強度とが得られないほどに高い場合に好適である。この場合、付加的なエネルギ蓄積により、必要なエネルギが調量される。