(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861709
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】特に歯科目的用の二成分混合カプセル
(51)【国際特許分類】
A61C 5/64 20170101AFI20210412BHJP
A61C 5/66 20170101ALI20210412BHJP
【FI】
A61C5/64
A61C5/66
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-529968(P2018-529968)
(86)(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公表番号】特表2019-501698(P2019-501698A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】EP2016080162
(87)【国際公開番号】WO2017097868
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】102015121453.9
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ズッフェル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ウテロト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル エック
(72)【発明者】
【氏名】ライフ ココグル
(72)【発明者】
【氏名】マークス バルケンホール
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04175658(US,A)
【文献】
特開2012−096228(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0134222(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/00
A61C 5/40−5/68
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの組成物を収容しかつ混合するための二成分混合カプセル(1)であって、前端部(2.1)に取出し開口(3.1)を有するカプセルハウジング(2)を備えており、
当該混合カプセル(1)は、前記カプセルハウジング内に回転可能に支持された下側のグリップエレメント(4.1)と、前記カプセルハウジング内に回転可能に支持された上側のグリップエレメント(4.2)を有しており、両グリップエレメント(4.1,4.2)の回転軸線(Y)が、当該混合カプセル(1)の長手方向軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置されており、かつ前記両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントに、第1の混合室(5a)が配置されており、かつ前記カプセルハウジング(2)内に第2の混合室(5b)が配置されている、混合カプセル(1)において、
前記カプセルハウジング(2)内の後端部(2.3)に閉鎖ピストン(6)が配置されており、該閉鎖ピストン(6)は、前記第1の混合室(5a)が当該混合カプセル(1)の前記長手方向軸線(Z)に同軸に向けられているとき、当該混合カプセルの前記長手方向軸線(Z)に沿って、前記第1の混合室(5a)および前記第2の混合室(5b)を通って案内可能であることを特徴とする混合カプセル。
【請求項2】
前記グリップエレメント(4.1,4.2)のそれぞれの回転軸線(Y)が、当該混合カプセル(1)の前記長手方向軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置されている、請求項1記載の混合カプセル。
【請求項3】
前記グリップエレメント(4.1,4.2)のそれぞれの回転軸線(Y)が、互いに同軸に配置されている、請求項2記載の混合カプセル。
【請求項4】
前記両グリップエレメントは、当該混合カプセルの長手方向軸に対してほぼ垂直に配置された1つの共通の回転軸線を中心にして、一緒にしか回転できない、請求項2記載の混合カプセル。
【請求項5】
回転可能に支持された前記両グリップエレメント(4.1,4.2)は、互いに結合されているか、または前記両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントが、前記カプセルハウジングに回転可能に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合カプセル。
【請求項6】
前記カプセルハウジング(2)内に回転可能に支持された前記下側のグリップエレメント(4.1)、および/または、前記ハウジング(2)内に回転可能に支持された前記上側のグリップエレメント(4.2)に、前記第1の混合室(5a)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合カプセル。
【請求項7】
前記カプセルハウジング(2)内に回転可能に支持された前記下側のグリップエレメント(4.1)、および/または、前記ハウジング(2)内に回転可能に支持された前記上側のグリップエレメント(4.2)に、前記第1の混合室(5a)が配置されており、回転可能に支持されたグリップエレメントと、管部分(5.1)としてまたは底を有する一方の側で閉鎖された円筒形のスリーブ(5.1)として形成された前記第1の混合室(5a)とは、一体の部材を形成しており、前記一方の側で閉鎖されたスリーブの前記底は、前記スリーブを通して前記シーリングピストンを押すことが可能なように、前記シーリングピストンによって前記スリーブから取り外し可能である、請求項6記載の混合カプセル。
【請求項8】
回転可能に支持された前記グリップエレメント(4.1,4.2)に結合された前記管部分(5.1)または一方の側で閉鎖された前記円筒形のスリーブ(5.1)は、前記第1の混合室(5a)を形成しており、かつ、a)前記第2の混合室(5b)は前記カプセルハウジング(2)の前側領域(2.1)に位置しているか、または、b)前記第2の混合室(5b)は前記カプセルハウジング(2)の後側領域(2.3)に位置している、請求項7記載の混合カプセル。
【請求項9】
当該混合カプセル(1)の前記ハウジング(2)の後端部(2.3)に、可動の押出しピストン(8)が内部に配置されているガイドアダプタ(7)が取付け可能である、請求項8記載の混合カプセル。
【請求項10】
回転可能に支持された前記グリップエレメント(4.1,4.2)に結合された前記管部分(5.1)は、前記第1の混合室(5a)を形成しており、かつ前記第2の混合室(5b)は、前記カプセルハウジング(2)における前側領域(2.1)に位置しており、
当該混合カプセルは、a)前記管部分(5.1)の前記長手方向軸線(Z1)が前記カプセルハウジング(2)の前記長手方向軸線(Z)に対してほぼ90°回転して位置している場合に、少なくとも2つの組成物AおよびBの貯蔵を可能にする第1の位置にあり、これによって、前記第1の混合室(5a)と、前記第2の混合室(5b)とが、互いに隔てられており、または、
当該混合カプセルは、b)前記管部分(5.1)または前記第1の混合室(5a)の前記長手方向軸線(Z1)が前記カプセルハウジング(2)の前記長手方向軸線(Z)に対してほぼ同軸に位置している場合に、第2の位置にあり、これによって、前記第1の混合室(5a)と前記第2の混合室(5b)とが、1つの共通の混合室(5a+5b)を形成しており、または、
c)前記可動の押出しピストン(8)を備えた前記ガイドアダプタ(7)が前記カプセルハウジング(2)の後端部(2.3)に配置されている場合に、前記第2の位置b)にある当該混合カプセルが取出し位置にあり、前記可動の押出しピストン(8)および前記閉鎖ピストン(6)は、前記共通の混合室(5a+5b)を通って、前記カプセルハウジングの前記前端部(2.1)の方向に、または取出し管片(3)内の後側領域(3.3)の方向に移動可能である、
請求項7から9までのいずれか1項記載の混合カプセル。
【請求項11】
前記可動の閉鎖ピストン(6)は、その直径を減じることができ、該閉鎖ピストン(6)は、その外周部に薄板を有しており、該薄板は、弾性材料から形成されているか、またはその幾何学形状に基づいて弾性に形成されている、請求項10記載の混合カプセル。
【請求項12】
前記閉鎖ピストン(6)は、a)前記混合室(5a,5b,5a+5b)に向けられた側(6a)に、少なくとも部分的に、画成された表面粗面化部(6.3)を有しており、かつ/またはb)前記混合室(5a,5b,5a+5b)とは反対の側(6b)に、前記押出しピストン(8)の前側領域(8.1)を収容するための凹部(6.4)を有している、請求項10または11記載の混合カプセル。
【請求項13】
a)前記取出し開口(3.1)は、取出し管片(3)に配置されており、かつ該取出し管片は前記カプセルハウジング(2)の統合された部材であり、または、
b)前記取出し開口(3.1)は、取出し管片(3)であり、かつ前記カプセルハウジング(2)に固定可能である、請求項1から12までのいずれか1項記載の混合カプセル。
【請求項14】
前記取出し管片(3)の内部において、前記取出し開口(3.1)の前の前側領域(3.2)または後側領域(3.3)に、少なくとも1つの抵抗手段(9)が配置されており、該抵抗手段(9)は、前記取出し管片(3)の全直径にわたって延びていない壁または少なくとも1つの突起である、請求項13記載の混合カプセル。
【請求項15】
前記混合室(1)は、少なくとも1つのグリップエレメント(4.1、4.2)と統合された部材を形成しており、または、分離された前記混合室(1)は、一方または両方のグリップエレメント(4.1、4.2)と形状結合式に固定されている、請求項14記載の混合カプセル。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の混合カプセルにおいて、少なくとも2つの組成物AおよびBを1つの組成物Cに混合する方法であって、
(i)前記第1の混合室をa)第1の位置からb)第2の位置に移行させ、少なくとも1つのグリップエレメント(4.1,4.2)をその回転軸線(Y)を中心にして、内部に混合室(5a)および組成物Bが位置している管部分(5.1)と共に回転させることによって、前記管部分(5.1)が、カプセルハウジング(2)の長手方向軸線(Z)の方向に回転し、これによって、前記組成物Bを含む第1の前記混合室(5a)と、前記カプセルハウジング(2)内の、前記組成物Aを含む第2の混合室(5b)とが、1つの共通の混合室(5a+5b)を形成するステップと、
(ii)前記共通の混合室(5a+5b)内で前記組成物AおよびBを互いに混合させるステップと、
(iii)前記組成物Cを得るステップと、
を含む方法。
【請求項17】
(iv)前記組成物Cを前記混合カプセルから取り出すステップを含み、該ステップは、
(iv.1)可動の押出しピストン(8)を備えたガイドアダプタ(7)を、前記カプセルハウジング(2)の後端部(2.3)に固定するステップと、
(iv.2)閉鎖ピストン(6)と一緒に前記押出しピストン(8)を、前記混合カプセル(1)の前記カプセルハウジング(2)内に押し込み、前記押出しピストン(8)によって、前記共通の混合室(5a+5b)を通して前記閉鎖ピストン(6)を移動させるステップと、
を有している、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記混合カプセルは、a)前記管部分(5.1)の前記長手方向軸線(Z1)が前記カプセルハウジング(2)の前記長手方向軸線(Z)に対してほぼ90°回転して位置している場合に、第1の位置にあり、これによって、組成物(B)を含む前記第1の混合室(5a)と、組成物(A)を含む前記第2の混合室(5b)とが、互いに隔てられており、または、
前記混合カプセルは、b)前記管部分(5.1)の前記長手方向軸線(Z1)が前記カプセルハウジング(2)の前記長手方向軸線(Z)に対して同軸に位置している場合に、第2の位置にあり、これによって、前記第1の混合室(5a)と前記第2の混合室(5b)とが、前記組成物(A)および前記組成物(B)を含む1つの共通の混合室(5a+5b)を形成しており、または、
前記混合カプセルは、可動の押出しピストン(8)を備えたガイドアダプタ(7)が前記カプセルハウジング(2)の後端部(2.3)に配置されている場合に、位置b)においても取出し位置(c)にあり、前記可動の押出しピストン(8)および前記閉鎖ピストン(6)は、前記共通の混合室(5a+5b)を通って取出し開口(3.1)の方向に移動可能である、
請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記第1の混合室(5a)が、前記混合カプセル(1)のカプセルハウジング(2)の長手方向中心軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置されている、その回転軸線(Y)を中心にした回転によって、貯蔵のための第1の位置と、混合および投与のための第2の位置とに回転可能であり、該第2の位置において、前記第1の混合室(5a)は、第2の混合室(5b)と共に、1つの共通の混合室(5a+5b)を形成する、請求項1から15までのいずれか1項記載の混合カプセルの使用方法。
【請求項20】
請求項1から15までのいずれか1項記載の混合カプセルを使用して、ペースト状から混練可能状までの歯科用の二成分組成物を貯蔵、混合および投与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは粉末状の、または好適にはペースト状のまたは混練可能な、特に好適には歯科用の2つの組成物を収容しかつ混合するための二成分混合カプセルであって、前端部に取出し管片を有するカプセルハウジングを備えている、混合カプセルに関し、混合カプセルは、第1の混合室と第2の混合室とを有しており、両混合室は、貯蔵のためまたは搬送のために互いに隔てられることができ、第1の混合室は、混合カプセルの、好ましくは第2の混合室の長手方向軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置された回転軸線(Y)を有する、回転可能に支持されたグリップエレメントによって、第1の位置に回転することができ、この第1の位置において、第1の混合室は第2の混合室から隔てられており、好ましくは、両混合室の中心軸線は、互いに対してほぼ90°を成して配置されている。第1および第2の混合室の中心軸線がほぼ同軸に配置されている第2の位置への第1の混合室の回転によって、両混合室は1つの共通の混合室を形成し、押出しピストンの装着によって、組成物を混合後に搬出することができる。
【0002】
同様に、本発明の対象は、2つの成分組成物、好ましくは歯科用の2K組成物を混合しかつ投与するための方法、および本発明に係る混合カプセルの使用である。
【背景技術】
【0003】
従来技術に基づいて、歯科分野における混合カプセルが多数公知であり、これらの混合カプセルは、2つの成分組成物を貯蔵および混合するのに適している。歯科分野における混合カプセルにとって特徴的なことは、通常、約32mmのその僅かな長さにあり、これによって公知の混合器具の保持フォーク内への混合カプセルの挿入を可能にすることができる。従来技術による混合カプセルは、通常、目標破損箇所を備えた薄板によって隔てられた2つの室を有しており、両室はそれぞれ、2つの成分組成物の両組成剤のうちの1つを含んでおり、ピストンが混合前にこの薄板を突き通す。混合後に、混合カプセル内に工具を挿入することができ、この工具は、混合カプセル内で押出しピストンを移動させ、かつこれによって混合された組成物を、混合カプセルから搬出することができる。
【0004】
公知の混合カプセルにおける欠点としては、公知の混合カプセルは通常、液体のモノマ成分を粉末状の成分と混合させるように設計されていることにある。従来技術では、ペースト状から混練可能状(knetbar)までの2つの2K成分組成物をも互いに混合させることができる、経済的に製造可能な、または容易に操作可能な混合カプセルは、ほぼ知られていない。さらに、従来技術では、薄板の意図しない突き通しを阻止する種々様々な係止機構をカプセルに設ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、ペースト状から混練可能状までの、および選択的に粉末状の多成分組成物、または好ましくはペースト状から固体までの、および同時に揺変性の多成分組成物の貯蔵および混合を可能にし、場合によっては同様にペースト状の成分を粉末状の成分と混合させることができる、混合カプセルを開発することである。さらに、本発明の課題は、歯科治療において用いられる通常の混合装置に挿入可能であるように、混合カプセルを寸法設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題は、請求項1記載の混合カプセル、請求項13記載の方法および請求項16記載の使用によって解決される。
【0007】
本発明の対象は、少なくとも2つの、特にペースト状の、混練可能状から固体までの、好ましくは揺変性の、かつ好ましくは歯科用の組成物を収容し、特に貯蔵しかつ混合するための、多成分混合カプセルまたは二成分混合(2K)カプセルである。このカプセルは、カプセルハウジングを備え、カプセルハウジングは、その前端部に取出し開口、例えばハウジングに直に設けられた取出し開口、または特に統合されたもしくは取り付けられた取出し管片を有しており、混合カプセルは、カプセルハウジング内に回転可能に支持された下側のグリップエレメントと、カプセルハウジング内に回転可能に支持された上側のグリップエレメントとを有しており、好ましくは、両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントの回転軸線(Y)が、混合カプセルの長手方向軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置されており、両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントに、回転可能に支持された第1の混合室が対応配置されており、かつ好ましくはカプセルハウジング内に第2の混合室が配置されている。好ましくは、グリップエレメントのそれぞれの回転軸線は、それぞれ互いに無関係に、混合カプセルの長手方向軸線に対してほぼ垂直に配置されており、好ましくは、両回転軸線は、互いにほぼ同軸に配置されている。両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントに、回転可能に支持された第1の混合室が対応配置されていてよく、好ましくは、管部分としてまたは一方の側で閉鎖されたスリーブとして存在する混合室が、少なくとも1つのグリップエレメントと共に統合された部材を形成しているか、または別体の混合室が、代替的に形状結合式に、一方のまたは両方のグリップエレメントと固定される。両グリップエレメントのそれぞれの回転軸線は、好ましくは互いに同軸に、混合カプセルの長手方向軸線に対してほぼ垂直に配置されており、好ましくは、両グリップエレメントは単に一緒に、混合カプセルの長手方向軸線に対してほぼ垂直に配置された1つの共通の回転軸線を中心にして回転可能である。さらに好ましくは、両グリップエレメントのうちの少なくとも1つのグリップエレメントに、好ましくは管部分としてまたは一方の側で閉鎖されたスリーブとして存在する第1の混合室が対応配置されており、少なくとも1つのグリップエレメントと共に統合された部材を形成している。代替的に、第1の混合室は、一方または両方のグリップエレメントに形状結合式に固定可能である別体の部材であってもよい。このような構成では、混合室を、例えば少なくとも1つのグリップエレメントに、特にクリップ内で係止することができる。
【0008】
ペースト状の、混練可能状から固体までの、好ましくは揺変性の、かつ好ましくは歯科用の両組成物は、好ましくはそれぞれ隔てられて第1および第2の混合室内に、ただ1つのペースト状から混練可能状までの組成物として、特に好ましくは一体の組成物として存在している。代替的に、組成物は、複数の成分の形態で存在していてもよく、特に、1つの成分は少なくとも1.5mmの寸法を有している。組成物は、好ましくは粉末状ではない。
【0009】
グリップエレメントには、壁状の凸部または他の形式で成形された凸部が、比較的容易な回転のための追加グリップとして形成されていてよい。カプセルハウジングを備えておりかつガイドアダプタおよび押出しピストンを有しない本発明に係る混合カプセルは、好ましくは10cm以下の長さ、好適には8cm以下、特に好適には5cm以下、または3.5cm以下の長さを有している。混合カプセルの全混合室は、直径が0.5〜2.0cmの場合、特に0.8〜1.2cmの場合に、好ましくは2.0〜4.0cmの長さ、特に2.5〜3.0cmの長さを有している。全混合室の容積は、約20〜200mm
3、特に50mm
3〜135mm
3である。本発明に係る混合カプセルは、汎用のPLT搬出器具またはPLTアプリケータにおいて使用できるように形成されている。
【0010】
回転可能に支持された混合室は、管部分の内部または一方の側で閉鎖された管部分内において、一方の側で閉鎖されたスリーブとして配置されていてよい。好ましくは、第1の混合室は、回転可能に支持されたグリップエレメントに統合的に結合された管部分内に配置されている。第1または第2の混合室は、製造可能な全混合室の一部として理解することができ、かつ好ましくは混合が行われる全混合室を形成することができる。
【0011】
好適な実施形態によれば、カプセルハウジング内で回転可能に支持された両グリップエレメントは、互いに結合されており、好ましくは取り外し可能にまたは持続的にも結合されている。両グリップエレメントは、超音波を用いて互いに接着されており、かつ/またはカプセルハウジングと係止されていてもよいし、または互いに差し嵌められていてもよい。代替的に、一方または両方のグリップエレメントは、カプセルハウジングに回転可能に結合されている。回転可能なグリップエレメントまたは回転可能な混合室、管部分またはスリーブというのは、本発明によれば、上に述べた構成部品が、カプセルハウジングの長手方向軸線に対してほぼ垂直に、または第2の混合室の長手方向軸線に対してほぼ垂直に位置している回転軸線を中心にして、少なくとも30°だけ、好ましくは少なくとも90°だけ回転可能であることと理解され、好ましくは、構成部品は360°回転可能である。構成部品が360°回転可能である場合には、一方のまたは両方のグリップエレメントに、特に第2の混合室に関する第1の混合室の位置を表示するマーキングが設けられていると好適である。好ましくは、グリップエレメントおよび/または混合室は、係止突子を有しており、このように構成されていると、使用者は、混合室の正確な同軸位置をセットしていることを知覚することができる。
【0012】
さらに好ましくは、カプセルハウジング内に回転可能に支持された下側のグリップエレメントおよび/またはカプセルハウジング内に回転可能に支持された上側のグリップエレメントに、第1の混合室が配置されており、特に回転可能に支持されたグリップエレメントと第1の混合室とは、一体の部材を、特に統合された部材を形成している。混合室は、好ましくは、管部分の形態で、または代替形態では、一方の側で閉鎖された管部分として、例えば一方の側で閉鎖された円筒形のスリーブとして存在していてよく、これらは、好ましくはグリップエレメントと共に統合された部材として存在している。管部分は、円筒形、円形、および六角形などの多角形に形成されていてよい。
【0013】
代替的な2つの好適な実施形態によれば、混合カプセルは、回転可能に支持されたグリップエレメントのうちの1つのグリップエレメントに結合された管部分を有しているか、または一方の側で閉鎖された円筒形のスリーブを有しており、管部分またはスリーブは、第1の混合室を形成しており、このとき、a)カプセルハウジング内の前側領域に第2の混合室が位置しているか、またはb)カプセルハウジング内の後側領域に第2の混合室が位置している。好ましくは、管部分またはスリーブは、グリップエレメントと共に統合された部材を形成している。代替的に、別体の部材として存在する混合室を、一方または両方のグリップエレメントと形状結合式に固定することが可能である。
【0014】
本発明に係る混合カプセルは、貯蔵のため、混合のため、または投与のための種々異なった位置に移行することができる。例えば、本発明に係る混合カプセルは、回転可能に支持されたグリップエレメント、特に統合され、結合された管部分によって、第1の混合室を形成することができ、かつカプセルハウジングにおける前側領域に、第2の混合室が配置されており、
混合カプセルは、a)管部分の長手方向軸線(Z1)が好ましくはカプセルハウジングの長手方向軸線(Z)に対してほぼ90°回転して位置している場合に、例えば貯蔵のためまたは搬送のための第1の位置にあり、これによって、特に組成物Bを含む第1の混合室と、特に組成物Aを含む第2の混合室とが、互いに隔てられており、または、混合カプセルは、b)管部分の長手方向軸線(Z1)が好ましくはカプセルハウジングまたは第2の混合室の長手方向軸線(Z)に対してほぼ同軸に位置している場合に、第2の位置、例えば「混合位置 混合」にあり、これによって、第1の混合室と第2の混合室とが、特に組成物Aおよび組成物Bを含む1つの共通の混合室を形成しており、代替的に、混合カプセルは、第1の混合室を含む管部分または一方の側で閉鎖されたスリーブが、第1および第2の混合室が1つの共通の混合室を形成するように回転している場合に、第2の位置にあり、または、混合カプセルは、可動の押出しピストンを備えたガイドアダプタがカプセルハウジングの後端部に配置されている場合に、b)第2の位置において同様に取出し位置c)にあり、可動の押出しピストンは、閉鎖ピストンを、第1の混合室および第2の混合室を通して、カプセルハウジングの前端部の方向に、または取出し管片の後側領域の方向に移動させることができる。押出しピストンによって、閉鎖ピストンを、好ましくはカプセルハウジング内で、取出し開口の方向において移動させることができ、これによって、混合された組成物Cを、閉鎖ピストンによって取出し開口の方向に移動させ、かつ取出し開口から押し出すことができる。
【0015】
隔てられたというのは、両混合室が互いに空間的に隔てられており、かつ組成物Aと組成物Bとが互いに相互作用し得ない場合の、両混合室の状態を意味する。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つのグリップエレメントは、係止突子などの少なくとも1つの係止手段を有しており、選択的に、混合カプセルのカプセルハウジングは、凹部などの少なくとも1つの係止手段を有しており、係止突子および凹部は、好ましくはポジまたはネガとして混合カプセルの第2の位置で互いに係合し、この第2の位置において、第1の混合室と第2の混合室とから、1つの共通の混合室が形成される。これによって、第1の混合室と第2の混合室とが1つの共通の混合室を形成する位置が、係止手段によって固定される。係止手段は、例えば、互いに係合する少なくとも1つの係止突子および対応する凹部であってよい。同様に、少なくとも1つの係止突子が混合カプセルに形成されているか、または少なくとも1つの凹部が少なくとも1つのグリップエレメントに形成されていてもよい。1つまたは複数の係止突子などの係止手段、および係止突子を係止するための1つまたは複数の対応する凹部、好ましくは互いに対してほぼ90°の角度をおいて配置された少なくとも2つの凹部が、第1の混合室の、第1の位置に相当する搬送位置または貯蔵位置を、混合カプセルの長手方向軸線に対してほぼ垂直に調節することを可能にし、かつ第1の混合室の長手方向軸線が混合カプセルの長手方向軸線に対して同軸に係止される、第2の位置に相当する混合位置および/または取出し位置を可能にする。
【0017】
本発明に係る混合カプセルには、ハウジングの後端部にガイドアダプタが取付け可能であり、このガイドアダプタ内には可動の押出しピストンが配置されている。ガイドアダプタ内で可動の、好ましくは係止された押出しピストンは、ある程度の力を加えて係止装置を解除することによって、ガイドアダプタ内で移動することができる。係止装置は、押出しピストンの外周部における少なくとも1つの凸部から成っていてよく、この凸部は、ガイドアダプタの内側に接触し、特に形状結合式にまたは摩擦力結合式に接触している。
【0018】
可動の押出しピストンを備えたガイドアダプタは、好ましくはバヨネットジョイント、ねじ結合またはクリップ結合、または当業者に公知の他の手段を用いて、カプセルハウジングの後端部に固定することができる。好ましくは、ガイドアダプタを固定する前に、押出しピストンを閉鎖ピストンの凹部内に挿入し、かつ閉鎖ピストンを第1の混合室に沿ってカプセルハウジング内に押し込むことができ、これによって、次いでガイドアダプタを、カプセルハウジングの後端部に固定することが可能になる。本発明によれば、押出しピストンを備えたガイドアダプタを差し込むことによって、閉鎖ピストンは、カプセルハウジング内に取出し開口の方向に移動する。この位置において、PLT用の汎用のアプリケータ(Compulen)内に混合カプセルを挿入することができる。ガイドアダプタの差込み時における閉鎖ピストンの移動によって、混合カプセルにおける行程を、汎用のアプリケータの最大行程に比べて増大させることができる。
【0019】
同様に、本発明の対象は、カプセルハウジングを備えた混合カプセルであり、カプセルハウジングにおいて、カプセルハウジングの後端部に、閉鎖ピストンが配置されており、閉鎖ピストンは、特に混合カプセルをその後端部で閉鎖し、好ましくは気密にかつ/または湿分を通さないように閉鎖している。好ましくは、閉鎖ピストンは、第1の混合室または管部分が混合カプセルの長手方向軸線(Z)に対してほぼ同軸に向けられており、好ましくは第1および第2の混合室が1つの共通の混合室を形成している場合に、混合カプセルの長手方向軸線(Z)に沿って第1の混合室または中空の管部分および第2の混合室を通って、好ましくは共通の混合室を通って貫通案内可能である。閉鎖ピストンは、好ましくはハウジングの後端部において内部に配置されている。閉鎖ピストンは、好ましくは混合カプセルの長手方向軸線に沿って移動可能に配置されており、かつ混合カプセルをその後端部において、好ましくは気密にかつ/または湿分を通さないように閉鎖している。
【0020】
第2の混合室は、好ましくはカプセルハウジングの前側の中央領域における一つの領域によって形成される。代替的に、第2の混合室は、カプセルハウジングの後側領域に配置されていてもよい。第1の混合室は、回転可能に支持された管部分内に、または底部を備え一方の側で閉鎖された、回転可能に支持されたスリーブ内に位置しており、一方の側で閉鎖されたスリーブの底部は、閉鎖ピストンを用いてスリーブから引き離し可能であり、これによって、閉鎖ピストンを、スリーブを通して移動させることができる。第1の混合室が、回転可能に支持された管部分内に、特に中空の管部分内に位置している限り、第1の混合室、特に中空の管部分の軸線が、混合カプセルの長手方向軸線に対して同軸に向けられている場合に、第2の位置において、閉鎖ピストンを、管部分を通して、かつ選択的に第2の混合室を通して移動させることができる。
【0021】
同様に、本発明の対象である混合カプセルにおいて、可動の閉鎖ピストンは、代替形態ではその直径を減らすことができ、特に閉鎖ピストンの直径(D1)は、ほぼ直径(D2)に減じることができる。そのために、閉鎖ピストンは、好ましくはその外周部に薄板を有している。別の代替形態では、閉鎖ピストンは不変の直径を有していてもよい。本発明に係る閉鎖ピストンは、好ましくは、混合室とは反対の側に凹部を有しており、この凹部内に、押出しピストンの前側領域が差込み可能である。さらに、閉鎖ピストンは、その外周部に、少なくとも1つの、好ましくは半径方向に突出する薄板を有している。好適な代替形態によれば、閉鎖ピストンは、2つ以上の薄板を外周部に有している。薄板は、好ましくは、例えばTPE(熱可塑性エラストマ)などの弾性材料から形成されていてもよいし、またはその幾何学形状に基づいて弾性に形成されていてもよい。薄板は、好ましくは閉鎖ピストンと共に統合された部材を形成している。さらに、薄板は、外周部において一方の側にまたは両方の側に、相を備えて形成されていてよい。薄板は、閉鎖ピストンと同じ材料から製造されていてもよいし、またはシリコンまたは他の適宜な材料から製造されていてもよい。
【0022】
混合室に向けられた側に、閉鎖ピストンは、好ましくは少なくとも部分的に、画成された表面粗面化部を有している。好ましくは、混合室に向けられた側は、表面粗面化部を備えた画成された大きさの面、好ましくは円形の面を有している。表面粗面化部は、侵食、サンドブラストなどのストリッピング方法を用いてエッチングすることができ、または付加製造方法(aufbauende Verfahren)等を用いても製造することができる。表面粗面化部は、好ましくは3.5μm(マイクロメートル)〜30μm、好ましくは6μm〜24μm、好適には8μm〜20μm、特に好適には10〜20μm、代替的に10μm+/−2.5μmの粗さ(平均粗さ)Raを有している。代替的に、侵食構造体の粗さは、VDI123400によれば特性値30、33、36、39または42を有することができる。同様に、カプセルハウジングまたは管部分もまた、必要な場合には、少なくとも部分的にないし全体的に、画成された表面粗面化部を備えていてよい。
【0023】
さらに、混合カプセルは、そのハウジングにa)取出し開口を有している。この取出し開口は、好ましくはカプセルハウジングの統合された部材としての取出し管片に形成されている。代替的に、取出し開口は、b)カプセルハウジングに固定可能な取出し管片に配置されていてもよい。取出し管片は、好ましくはそれ自体曲げられており、かつ公知の混合カプセルまたはカープル(Carpul)のような形状を有しており、取出し管片は、例えば歯空所に歯科材料を投与することができる形状を有している。
【0024】
別の代替形態によれば、好ましくは、取出し管片の内部において、前側領域または後側領域で出口の前に、少なくとも1つの抵抗手段が一体成形されており、この抵抗手段は好ましくは、抵抗手段が取り出すべき組成物の粘性を変化させることができるように、かつ/または取り出すべき組成物のさらなる混合を生じさせることができるように構成されている。好適な実施形態では、抵抗手段は、全直径にわたって延びていない壁、または少なくとも1つの突起である。
【0025】
カプセルハウジング、取出し管片、グリップエレメント、管部分、スリーブ、閉鎖ピストン、ガイドアダプタ、押出しピストンおよび/または抵抗手段などの、混合カプセルの個別部材が製造される材料は、好ましくは、PBT-POM、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、PC(ポリカーボネート)などの減摩性に改質されたプラスチック、および例えばシリコンオイル、グラファイト(GR)、フルオロカーボン(TF)、カーボンファイバ(CF)、MoS2(MO)、ポリオレフィンワックスまたは他の固体潤滑剤などの添加物のような、有機充填剤および/または無機充填剤を含有するプラスチックを含む。上述したカプセル構成部分を製造するために同様に適した材料は、ポリマ材料、充填されたポリマ材料、繊維強化ポリマ、ハイブリッド材料から選択することができ、ポリマ材料は、ポリカーボネート、ポリアミド、フルオロポリマ、ポリスルフィドを含有するポリマ、ポリスルホンを含有するポリマ、ポリアリールエーテルケトン、ポリイミド、PAEK(ポリアリールエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEKK(ポリ(エーテルケトンケトン))、PEEEK(ポリ(エーテルエーテルエーテルケトン))、PEEKK(ポリ(エーテルエーテルケトンケトン))、PEKEKK(ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン))、PES(ポリアリールスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PSU(ポリスルホン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PFA(ペルフルオロアルコキシ-ポリマ)、PFE(ポリ(フルオレニレンエチニレン)ポリマ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)から選択することができる。押出しピストンは、好ましくはポリカーボネートから製造されている。閉鎖ピストンは、好ましくは、60〜100のショアA硬度、好ましくは70〜90のショアA硬度を有するTPE(熱可塑性エラストマ)から製造することができる。好適なTPEは、SEBS、すなわちスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン−ブロックコポリマなどのTPE-Sを含み得る。
【0026】
別の実施形態によれば、本発明の対象は、本発明に係る混合カプセルにおいて少なくとも2つの組成物Aおよび組成物B、特にペースト状の、混練可能状から固体までの、好ましくは揺変性の組成物、特に好ましくは、歯科用の組成物を、1つの組成物Cに混合する方法であり、この方法は、
(i)混合カプセルをa)第1の位置からb)第2の位置に移行させ、グリップエレメントをその回転軸線(Y)を中心にして、内部に第1の混合室および組成物Bが位置している管部分と共に回転させることによって、管部分が、特にその長手方向軸線がカプセルの長手方向軸線に対して同軸でない位置から、好ましくは長手方向軸線に対してほぼ垂直に配置された位置から、カプセルハウジングの長手方向軸線(Z)の方向に、特にカプセルハウジングの長手方向軸線(Z)に対してほぼ同軸の位置に回転し、これによって、組成物Bを含む第1の混合室と、カプセルハウジング内の、組成物Aを含む第2の混合室とが、1つの共通の混合室を形成するステップと、
(ii)組成物Aおよび組成物Bを互いに混合させ、特に混合カプセルは第2の位置b)に位置しているステップと、
(iii)組成物Cを得るステップと、
を含む。
【0027】
混合カプセルからの組成物Cの取出し(iv)は、好ましくは、可動の押出しピストンを備えたガイドアダプタを、カプセルハウジングの後端部に固定するステップ(iv.1)によって行われ、かつ選択的に、押出しピストンを閉鎖ピストンと一緒に混合カプセルのカプセルハウジング内に押し込むステップ(iv.2)によって行われ、この押し込むステップは、好ましくは閉鎖ピストンがカプセルハウジングの前側の内壁に圧着するまで続けられ、これによって閉鎖ピストンは、押出しピストンによって、共通の混合室を通して移動する。
【0028】
本発明に係る方法では、好ましくは、混合カプセルは、a)管部分の長手方向軸線(Z1)が好ましくは、カプセルハウジングの長手方向軸線(Z)に対してほぼ少なくとも30°、好ましくはほぼ90°回転して位置している場合に、第1の位置にあり、これによって、特に組成物Bを含む第1の混合室と、特に組成物Aを含む第2の混合室とが、互いに隔てられており、または、
混合カプセルは、b)管部分の長手方向軸線が好ましくは、カプセルハウジングの長手方向軸線に対してほぼ同軸に位置している場合に、第2の位置、例えば混合位置にあり、これによって、第1の混合室と第2の混合室とが、特に組成物Aおよび組成物Bを含む1つの共通の混合室を形成しており、または、
混合カプセルは、可動の押出しピストンを備えたガイドアダプタがカプセルハウジングの後端部に配置されている場合に、位置b)においてまた取出し箇所c)に位置しており、可動の押出しピストンは、共通の混合室を通して閉鎖ピストンを出口または取出し開口の方向に移動させることができ、または閉鎖ピストンを、カプセルハウジングの前側の内壁へと移動させることができる。好ましくは、閉鎖ピストンによって、組成物Cは取出し開口の方向に移動し、取出し開口を通して投与されることができる。
【0029】
混合時に、混合カプセルは、少なくとも、混合カプセルまたはカプセルハウジングの長手方向軸線の一部に沿って、往復動する。好ましくは、混合カプセルの長手方向軸線の一部は、半径を有する円形軌道に沿って往復動する。
【0030】
組成物Aおよび組成物Bを混合するために、可動の押出しピストンを備えたガイドアダプタは、好ましくはまだカプセルハウジングの後端部に固定されていない。
【0031】
代替形態では、管部分は、底部を備え一方の側で閉鎖されたスリーブとして形成されており、このスリーブ内には、第1の混合室および組成物Bが位置しており、スリーブの底部は、混合後に、閉鎖ピストンによってスリーブ内に移動させることができ、特に底部は、カプセルハウジングの前端部内にまで移動させることができる。スリーブの底部は、薄板状に形成されていてよく、かつ目標破損箇所を有することができる。好適な実施形態によれば、第1の混合室は、両側において開放された管部分によって形成される。
【0032】
同様に、本発明の対象は、混合カプセルの使用であり、この混合カプセルでは、第1の混合室が、混合カプセルのカプセルハウジングの長手方向中心軸線(Z)に対してほぼ垂直に配置されている、その回転軸線(Y)を中心にした回転によって、好ましくは少なくとも2つの組成物を貯蔵するための第1の位置と、組成物を混合するためおよび混合された組成物を投与するための第2の位置とに回転可能であり、第2の位置において、第1の混合室は、カプセルハウジングの前側領域または後側領域に配置されていてよい第2の混合室と共に、1つの共通の混合室を形成する。第1の混合室は、好ましくは、その回転軸線(Y)を中心にしたその長手方向軸線(Z1)の回転によって旋回する。
【0033】
さらに、本発明の対象は、ペースト状から混練可能状または固体までの歯科用の2つの成分組成物を、貯蔵、混合および投与(取出し)するための混合カプセルの使用である。混合可能な組成物は、好ましくは揺変性の歯科用組成物である。
【0034】
以下の図面に示す実施形態は、本発明に係る対象を例示するものであるが、本発明は、これらの対象に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】ガイドアダプタ7および前方に向かって移動した閉鎖ピストン6を備えた本発明に係る混合カプセル1(空)を、断面して示す図である。
【
図2】
図2aは、
図1に示した混合カプセルを示す断面図であり、
図2bは、
図1に示した混合カプセルを示す平面図である。
【
図3】
図3a、
図3a
*、
図3bおよび
図3b
*は、組成物Aおよび組成物Bを備えた第1の位置(貯蔵位置)における混合カプセル1を、ガイドアダプタ7および固定されていない押出しピストン8と共に示す断面図である。
【
図4】
図4a、
図4bおよび
図4cは、第1の混合室5aと第2の混合室5bとが互いに同軸に向けられた第2の位置における混合カプセル1を示す断面図である。
【
図5】
図5a、
図5bおよび
図5cは、ガイドアダプタ7および押出しピストン8が装着されており、既に投与のために混合された組成物Cを有する混合カプセル1を示す図であり、
図5dおよび
図5eは、閉鎖ピストンおよび押出しピストンが完全に前方に向かって移動しており、組成物Cの投与が既に行われている位置における混合カプセルを示す図である。
【
図6】
図6a、
図6bおよび
図6cは、管部分を備えたグリップエレメントを示す図である。
【
図9】押出しピストンおよびバヨネットジョイントを備えたガイドアダプタ7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、ガイドアダプタ7および押出しピストン8を備えた本発明に係る空の混合カプセル1が、前方に向かって移動した閉鎖ピストン6と共に、断面図で示されている。混合カプセル1は、取出し管片3を備えたカプセルハウジング2を有している。さらに、回転可能に支持されたグリップエレメント4.1,4.2が示されている。
図2aおよび
図2bには、
図1に示した混合カプセルが、断面図および平面図で示されている。
図2aにおいて、第1の混合室5aは、第2の混合室5bと共に混合カプセル1内に同軸に配置されているので、閉鎖ピストン6は、ガイドアダプタ7内に可動に支持されている押出しピストン8によって、第1の混合室5aを通って第2の混合室5bのところまで押し込まれて示されている。この位置で、第1および第2の混合室は、共通の混合室を形成している。取出し管片3には、この取出し管片の内部における後側領域3.3および中央領域3.2、ならびに取出し開口3.1が示されている。グリップエレメント4.1,4.2は、回転軸線Yを中心にして回転することができ、同時に、第1の混合室5aを含む管部分5.1もまた一緒に回転する。好ましくは、少なくとも1つのグリップエレメントが外表面にリブを有しており、特に好ましくは、両グリップエレメントが、外表面にリブのような凸部および/または凹部を有しており、これらの凸部および/または凹部によって、中心軸線を中心にしたグリップエレメントの旋回が使用者にとって容易になる。混合カプセルの長手方向軸線Zが、
図2bに略示されている。押出しピストンの前側領域8.1は、閉鎖ピストン6内で凹部6.4内に差し込まれている。押出しピストン8の中央領域8.2は、混合室内でピストンを案内するように作用する。後側領域8.3は、外部の器具によって混合室の方向にさらに移動させることができる。閉鎖ピストン6の薄板6.1,6.2は、内部で混合室に接触している。
【0037】
図3a、
図3a
*および
図3b、
図3b
*には、第1の混合室5a内の組成物Bと第2の混合室5b内の組成物Aとを含む、第1の位置(販売位置/貯蔵位置)における混合カプセル1が断面図で示されている。第1の混合室または管部分の長手方向軸線Z1が、カプセルまたはカプセルハウジングの長手方向軸線Zに対してほぼ垂直に示されている。カプセルには、例えばバヨネットジョイント2.4などの閉鎖手段2.4が後側領域に一体成形されている。さらに、
図3aおよび
図3bには、ガイドアダプタ7が、差し込まれた押出しピストン8と共に示されている。押出しピストンは、この押出しピストンの上側領域において外周部に設けられた、凸部または係止突子もしくは突起8.4などの環状の係止手段8.4によって、アダプタに係止されている。
図3bには、第1の混合室5aを備えた管部分5.1が示されており、この管部分5.1の長手方向軸線Z1は、カプセルの長手方向軸線Zに対して90°だけ回転している。第2の混合室5b内には、組成物Aが示されている。
図4a、
図4bおよび
図4cには、混合カプセル1の第2の位置が示されており、この第2の位置では、第1の混合室5aと第2の混合室5bとは互いに同軸に配置されている。第2の位置において、組成物Aと組成物Bとは、形成された全混合室5a,5b内で互いに混合することができる。この実施形態では、管部分5.1は、グリップエレメント4.2と共に統合された部材を形成している。グリップエレメント4.1,4.2は、カプセルハウジング2に、かつ/またはそれ自体互いに、回転可能に係止されている。好ましくは、グリップエレメント4.1,4.2は、それ自体互いに係止されており、かつ一緒にしか回転できないようにカプセルハウジング2内で支持されている。
図4cには、閉鎖ピストン6の前側の環状の薄板6.1が示されている。
【0038】
図5a、
図5b、
図5c、
図5dおよび
図5eには、混合された組成物Cを備えた混合カプセル1が断面図で示されている。押出しピストン8は、閉鎖ピストン6の凹部6.4内に差し込まれており、第1の混合室5aを通って第2の混合室5bのところまで移動している。組成物Cは、いまや押出しピストン8および閉鎖ピストン6のさらなる前進によって混合カプセル1から投与することができる。閉鎖ピストンは、この位置においてなお、突出する薄板による直径D1を備えて存在している(
図5c参照)。閉鎖ピストンがさらに前進すると、薄板は閉鎖ピストン6の外側に接触し、閉鎖ピストンの直径は、
図5dおよび
図5eに示されているように、直径D2に減少する。
【0039】
図6a、
図6b、
図6cには、グリップエレメント4.1,4.2が示されている。グリップエレメント4.2は、第1の混合室5aを形成する管部分5.1を有している。好ましくは、グリップエレメントは外表面にリブを有している。これらのリブによって、グリップエレメント4.1,4.2の回転が使用者にとって容易になる。好ましくは、リブは第1の混合室の位置を示している。リブがカプセルハウジングの長手方向軸線に対して同軸に向けられている場合には、第1の混合室5aもまた、カプセルハウジングの長手方向軸線に対して同軸に向けられている。これによって、第2の位置、つまり混合位置および/または取出し位置が示される。リブがカプセルハウジングの長手方向軸線に対して垂直に向けられている場合には、これによって、第1の位置、つまり搬送位置および/または貯蔵位置が示される。
【0040】
図7a、
図7b、
図7cおよび
図7dには、閉鎖ピストン6が示されており、
図7aおよび
図7cには、混合室とは反対の側6bにおける凹部6.4が示されている。
図7bには、第1の混合室5aに向く側6aにおける閉鎖ピストンの表面粗面化部6.3が示されている。
図7dには、1つまたは2つの相を有する(phasig)薄板6.1,6.2が示されている。
図8a、
図8bおよび
図9には、前側領域8.1、中央領域8.2および後側領域8.3を備えた、好ましくはPC(ポリカーボネート)から製造可能な押出しピストン8が示されており、
図8bには、ガイドアダプタ7の内側に接触している突子が平面図で示されている。
図9には、バヨネットジョイント7.1などの、混合カプセルのハウジング2にガイドアダプタを固定するための手段7.1が示されている。
図10aおよび
図10bには、抵抗手段9が示されており、これらの抵抗手段9は、部分的な壁、または内側に向かって突出しており混合室の方向に向く1つまたは複数の突起として形成されていてよい。
【符号の説明】
【0041】
1 混合カプセル
2 カプセルハウジング; 2.1 前端部; 2.2 中央領域; 2.3 カプセルハウジング2の後端部; 2.4 バヨネットジョイントなどの閉鎖手段
3 取出し管片、 3.1 取出し開口; 3.2,3.3 出口における内部; 3.2 前側領域、 3.3 内側の取出し管片3の後側領域
4.1,4.2 回転可能に支持された下側のグリップエレメント4.1、およびハウジング内で回転可能に支持された上側のグリップエレメント4.2
5a 回転可能に支持された第1の混合室; 5b 第2の混合室; 5a+5b 全混合室; 5.1 管部分、特に円筒形のスリーブまたは一方の側で閉鎖された円筒形のスリーブ5.1
6 閉鎖ピストン、 6a 混合室5aに向けられた側、 6b 混合室とは反対の側
6.1 混合室に向く側6aにおける薄板、 6.2 混合室5とは反対の側6bにおける薄板
6.3 閉鎖ピストン上の表面粗面化部
6.4 混合室とは反対の側6bにおける凹部
7 ガイドアダプタ、 7.1 バヨネットジョイントなどの、固定のための手段
8 押出しピストン、 8.1 押出しピストン8の前側領域、 8.2 中央領域、 8.3 押出しピストン8の後側領域、 8.4 凸部などの係止手段
9 抵抗手段、 部分的な壁または1つまたは複数の突起またはピン
D1,D2 閉鎖ピストンの直径D1は実質的に直径D2に減少可能である
Y グリップエレメント(4.1,4.2)および/または混合室5aの回転軸線
Z カプセルの長手方向軸線、Z1 管部分の長手方向軸線
A ペースト状のまたは混練可能な歯科用組成物(成分A)
B ペースト状のまたは混練可能な歯科用組成物(成分B)
C 混合されたペースト状のまたは混練可能な歯科用組成物(成分AとBとの混合物)