特許第6861712号(P6861712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861712同軸操作ユニット用の取付け装置を備えたクロステーブル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861712
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】同軸操作ユニット用の取付け装置を備えたクロステーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/26 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   G02B21/26
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-536834(P2018-536834)
(86)(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公表番号】特表2019-503511(P2019-503511A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2017050428
(87)【国際公開番号】WO2017121734
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2020年1月10日
(31)【優先権主張番号】102016100659.9
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン クーベク
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−157377(JP,A)
【文献】 実開昭51−088235(JP,U)
【文献】 実開昭50−094927(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸操作ユニット(200)用の取付け装置(100)と、該取付け装置(100)に取り付けられた同軸操作ユニット(200)とを備えるクロステーブル(1)において、
前記取付け装置(100)は、第1の係合構造(111)を備えた、同軸的に内側に位置する内側シャフト(110)と、該内側シャフト(110)を同軸的に取り囲み、第2の係合構造(121)を備えた中空シャフト(120)とを有し、
前記同軸操作ユニット(200)は、第1の対向構造(211)を備えた、同軸的に内側に位置する内側シャフト(210)と、該内側シャフト(210)を同軸的に取り囲み、第2の対向構造(221)を備えた中空シャフト(220)とを有し、
前記第1の係合構造(111)および前記第1の対向構造(211)により、引っ張りにより解除可能な、相対回動不能な第1の連結部(310)が形成されており、
前記第2の係合構造(121)および前記第2の対向構造(221)により、引っ張りにより解除可能ではない、相対回動不能な第2の連結部(320)が形成されており、前記第2の連結部(320)は、引っ張りにより前記第1の連結部(310)が同時に解除されることを阻止していることを特徴とする、クロステーブル(1)。
【請求項2】
前記取付け装置(100)は、
前記取付け装置(100)の前記内側シャフト(110)を同軸的に取り囲み、前記取付け装置(100)の前記中空シャフト(120)により同軸的に取り囲まれた、第3の係合構造(131)を備える支持スリーブ(130)を有し、
前記同軸操作ユニット(200)は、
前記同軸操作ユニット(200)の前記内側シャフト(210)を同軸的に取り囲み、前記同軸操作ユニット(200)の前記中空シャフト(220)により同軸的に取り囲まれた、第3の対向構造(231)を備える支持スリーブ(230)を有し、
前記第3の係合構造(131)および前記第3の対向構造(231)により、引っ張りにより解除可能な、相対回動不能な第3の連結部(330)が形成されており、前記第3の連結部(330)の引っ張りによる解除も、相対回動不能な前記第2の連結部(320)が阻止している、請求項1記載のクロステーブル(1)。
【請求項3】
前記第1の係合構造(111)および前記第1の対向構造(211)、ならびに/または前記第3の係合構造(131)および前記第3の対向構造(231)は、それぞれ互いに対して相補的な溝およびキー、突出部および切欠き、ならびに/または歯列部を有している、請求項2記載のクロステーブル(1)。
【請求項4】
前記第2の係合構造(121)および前記第2の対向構造(221)は、互いに対して相補的なねじ山付きエレメント(122)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のクロステーブル(1)。
【請求項5】
前記内側シャフト(110,210)を介して、前記クロステーブル(1)の第1の線形駆動装置(30)に回動運動が伝達可能であり、
前記中空シャフト(120,220)を介して、前記クロステーブル(1)の第2の線形駆動装置(40)に回動運動が伝達可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載のクロステーブル(1)。
【請求項6】
前記同軸操作ユニット(200)の前記内側シャフト(10)は、第1の操作エレメント(212)に相対回動不能に結合されており、
前記同軸操作ユニット(200)の前記中空シャフト(20)は、第2の操作エレメント(222)に相対回動不動に結合されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のクロステーブル(1)。
【請求項7】
同軸操作ユニット(200)を取り付けるための取付け装置(100)を備えたクロステーブル(1)であって、
前記取付け装置(100)は、
第1の係合構造(111)を備える、同軸的に内側に位置する内側シャフト(110)と、
前記内側シャフト(110)を同軸的に取り囲み、第2の係合構造(121)を備える中空シャフト(120)と、
を有し、
前記第1の係合構造(111)は、引っ張りにより解除可能な、相対回動不能な第1の連結部(310)を第1の対向構造(211)と共に形成するようになっており、
前記第2の係合構造(121)は、引っ張りにより解除可能ではない、相対回動不能な第2の連結部(320)を第2の対向構造(221)と共に形成するようになっており、前記第2の連結部(320)は、引っ張りにより前記第1の連結部(310)が解除されることを阻止していることを特徴とする、同軸操作ユニット(200)を取り付けるための取付け装置(100)を備えたクロステーブル(1)。
【請求項8】
同軸操作ユニット(200)を取り付けるための請求項7に記載の取付け装置(100)が2つ以上設けられていることを特徴とする、クロステーブル(1)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のクロステーブル(1)を備えることを特徴とする、顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念部に記載の形式の同軸操作ユニット用の1つまたは複数の取付け装置を備えたクロステーブルと、相応する顕微鏡とに関する。
【0002】
先行技術
特に顕微鏡のためのクロステーブルは、典型的にはアームに対して水平方向に不動であるベースユニットと、それぞれ水平方向に可動である2つのキャリッジとを有している。これらのキャリッジの運動のために、同軸駆動装置が設けられていてよく、この同軸駆動装置は、同軸的に内側に位置する内側シャフトと、この内側シャフトを同軸的に取り囲む中空シャフトとを有していてよい。内側シャフトと中空シャフトとは、それぞれ操作エレメント、特にローレット目を刻まれた駆動つまみに相対回動不能に結合されている。この駆動つまみによって、それぞれ回動運動が内側シャフトと中空シャフトとに導入され得る。それぞれ内側シャフトと中空シャフトとに相対回動不能に結合された被駆動手段、たとえばピニオンまたは滑車を介して、この回動運動が線形駆動装置において、キャリッジを運動させるための線形運動へと変換され得る。
【0003】
同軸駆動装置は、内側シャフトを同軸的に取り囲み、かつ中空シャフトにより同軸的に取り囲まれる支持スリーブをさらに有していてよい。この支持スリーブは、クロステーブルのベースユニットに相対回動不能に結合されていて、内側シャフトおよび中空シャフトの回動運動により形成されたトルクを支持する。相応する同軸駆動装置は、かなり以前から公知であり、たとえば独国特許発明第3027461号明細書(DE3027461C1)または独国特許発明第10246276号明細書(DE10246276B4)に示されている。
【0004】
同軸駆動装置を用いて長時間にわたって疲労せずに作業することは、特に、ユーザの手が操作中に主に顕微鏡の載置面、またはそのために設けられたアームレストに置かれ、ユーザが同軸駆動装置の操作エレメントをたとえば親指ならびに人差し指および/または中指でつまむことによって確保され得る。しかし、様々な手の大きさ、好みの手の姿勢および場合によっては通常とは異なる操作の癖に基づいて、顕微鏡の全てのユーザによって快適に感じられる操作エレメントの位置を定義することは実際にはほとんど不可能である。操作エレメントの位置は、特に内側シャフトおよび中空シャフトの長さにより決定されるので、位置を簡単に変更することはできない。
【0005】
相応する問題は、クロステーブルが、たとえば顕微鏡における改造に基づいて、同軸駆動装置が本来設けられていた位置よりも、一時的に著しく高いか、または低い位置にもたらされる場合にも生じてしまう。この場合、場合によっては同軸駆動装置の操作エレメントは、もはや上述の疲労しない形ではユーザの手によって到達され得なくなってしまう。
【0006】
さらに最後に、様々なユーザが、たとえば同様に様々な手の大きさおよび/または指の力に基づいて、種々異なる大きさおよび構成の操作エレメントを特に快適であると見なすこともある。しかし操作エレメントは、各シャフトから簡単に分離して交換することはできない。たとえば、独国特許出願公開第102004055397号明細書(DE102004055397A1)に記載されているように、特定のユーザグループは、場合によっては同軸作動装置を全く用いないクロステーブルの操作を好む。このユーザグループにとって、同軸駆動装置は全体的に邪魔であることがわかった。さらに左利きの人にとっては、右利きの人用にクロステーブルの右側に取り付けられた同軸駆動装置では操作が困難である。
【0007】
上述の問題は、基本的には同軸駆動装置用の種々異なる長さの、または種々異なって形成された同軸操作ユニットを提供し、同軸操作ユニットを交換する可能性を提供し、かつ/またはこのような同軸操作ユニットをクロステーブルの種々異なる位置へ取り付ける、または同軸操作ユニットを取り外す可能性を提供することにより扱われる。
【0008】
独国特許出願公開第102004055397号明細書(DE102004055397A1)は、相応する取外し可能な同軸操作ユニットを提案している。
【0009】
同軸操作ユニットとは、ここでは、同軸駆動装置の一部、特に内側シャフトおよび中空シャフトまたはこれらのシャフトの規定された区分を含むユニットであると理解される。しかしこのユニットは、特に、同軸駆動装置により駆動される線形駆動装置からは分離されているか、または手間のかかる機械的な介入なしに、特にユーザによってこの線形駆動装置から分離可能である。同軸操作ユニットは特に上述の操作エレメントも支持する。
【0010】
特に、線形駆動装置の対応するラックに噛み合うピニオンを被駆動手段として使用する場合、同軸操作ユニットの交換時に問題が生じてしまう。典型的には、特にピニオンおよびラックの製造中に実際に存在する公差に基づいて、相応するアセンブリの遊びのない平滑運転を確保するためには、手間のかかる調整作業が必要である。したがって、独国特許出願公開第102004055397号明細書(DE102004055397A1)において提案されている、同軸操作ユニットの交換は、遊びのない平滑運転を達成しようとする場合には、手間のかかる調整作業または極めて小さな公差を必要とする。さらに、交換のために、ここでは六角レンチの形態の工具が必要である。
【0011】
本発明はこの背景から、クロステーブルに設けられた、同軸操作ユニットの形態の同軸駆動装置の部分を簡単かつ調整の必要なしに交換可能にする可能性を提供しようとするものである。
【0012】
発明の開示
この背景から、本発明は、独立請求項に記載の特徴を備える、同軸操作ユニット用の1つまたは複数の取付け装置を備えたクロステーブルと、相応する顕微鏡とを提案する。好適な態様はそれぞれ従属請求項ならびに下記の説明の対象である。
【0013】
本発明は、たとえば独国特許出願公開第102004055397号明細書(DE102004055397A1)において提案されている、クロステーブルもしくは相応する線形駆動装置のラックと、対応するピニオンとの間で、クロステーブルから同軸操作ユニットを分離することとは異なり、内側シャフトと、中空シャフトと、相応する部材の連結部との互いに対する分割が特に有利である、という知識に基づいている。相応する同軸操作ユニットを交換するための本発明により提供された可能性では、手間のかかる調整は不要である。特に、以下にさらに詳細に説明するように、交換は付加的な工具なしに実施され得る。
【0014】
本発明は、同軸操作ユニット用の取付け装置と、この取付け装置に取り付けられた同軸操作ユニットとを備えた、特に顕微鏡用のクロステーブルを提案する。取付け装置は、本発明によれば、第1の係合構造を備えた、同軸的に内側に位置する内側シャフトと、この内側シャフトを同軸的に取り囲み、第2の係合構造を備えた中空シャフトとを有している。つまり、たとえば独国特許出願公開第2004055397号明細書(DE2004005397A1)において提案されるような先行技術による取付け装置とは異なり、本発明により提案された取付け装置自体が、同軸操作ユニットの取外し時にも対応する線形駆動装置内に継続的に係合する対応する軸区分を有している。
【0015】
したがって、取付け装置もしくはこの取付け装置に取り付けられたピニオンまたは滑車のような被駆動手段は、同軸操作ユニットの交換時にクロステーブルまたは線形駆動装置の相応する対向構造から分離される必要がない。この形式によって、これらの構成要素は、たとえば工場において調整された位置に持続的に留まることができ、同軸操作ユニットの交換時に調整作業は必要ではない。本発明は、この形式により常に同軸駆動装置の回動運動もしくはこの同軸駆動装置に接続されている線形駆動装置の遊びのない伝達を調整なしに確保している。
【0016】
取付け装置に設けられた係合構造は、相応する線形駆動装置に係合する被駆動手段に対して、内側シャフトおよび中空シャフトのそれぞれ他方に端部に取り付けられている。この場合、特に、中空シャフトの第2の係合構造は、以下にさらに詳しく説明するように、内側シャフトの第1の係合構造を同軸的に取り囲んでいてよい。
【0017】
既に述べたように、取付け装置には同軸操作ユニットが取り付けられ得る。同軸操作ユニットは、同様に同軸的に内側に位置する内側シャフトならびにこの内側シャフトを同軸的に取り囲む中空シャフトを有している。同軸操作ユニットの内側シャフトは、第1の対向構造を有しており、同軸操作ユニットの中空シャフトは第2の対向構造を有している。第1の係合構造と第1の対向構造とはそれぞれ、第1の係合構造と第1の対向構造の係合時に、これらの構造によって、引っ張りもしくは軸方向に互いに離れる方向への運動によって解除可能である、相対回動不能な第1の連結部が形成されるように、構成されている。これに対して第2の係合構造と第2の対向構造とは、第2の係合構造と第2の対向構造の係合時に、これらの構造によって、引っ張りにより解除可能ではない、相対回動不能な第2の連結部が形成されるように、構成されている。第2の連結部は、この場合、引っ張りもしくは軸方向に互いに離れる方向への運動による第1の連結部の解除を阻止する。
【0018】
引っ張りにより解除可能な、相対回動不能なこれらの連結部は、先行技術から種々異なる構成で知られている。この場合、連結部構造、つまり第1の係合構造および第1の対向構造が、専ら相応するシャフトの回転軸線に沿った軸方向に互いに離れる方向への運動によって係合が解除され得る場合、「引っ張りにより」もしくは「軸方向で互いに離れる運動により」連結部は解除可能である。連結エレメントは、換言すると、互いに対して引っ張り耐性に結合されていない。相応する連結部は、専門分野において、「軸方向に可動な」連結部とも呼ばれる。軸方向に可動な連結部のための公知の例は、単に噛み合いエレメントが互いに離れる方向に運動することによって分離され得る噛み合いクラッチである。
【0019】
本発明の枠内では、取付け装置の内側シャフトと同軸操作ユニットの内側シャフトとが、それぞれの中空シャフトに対して軸方向に位置不動である、つまり内側シャフトは中空シャフトに対してその回転軸線を中心として回動され得るが、その回転軸線に沿って並進的に運動することはできないか、小さな範囲でしか並進運動され得ない。したがって、取付け装置の中空シャフトの第2の係合構造と、同軸操作ユニットの中空シャフトの第2の対向装置とが、引っ張りにより解除可能ではない、相対回動不能な、第1の連結部を同軸的に取り囲む第2の連結部を形成する場合、これによって取付け装置の内側シャフトの第1の対向構造と、同軸操作ユニットの内側シャフトの第1の対向構造との互いに離れる方向への運動も阻止される。したがって相応する第1の連結部も、第2の連結部により係合したままとなるか、もしくは分離を阻止され得る。
【0020】
このことは、この形式により第1の連結部を、専ら第1の係合構造と第1の対向構造との入れ子式の運動によってのみ形成することができ、かつ第2の連結部のみが、堅固な結合部を形成しながら形成されなければならないので特に有利である。この形式によって、同軸操作ユニットと相応する取付け装置との簡単かつ特に工具の不要な結合が可能である。
【0021】
既に述べたように、公知のクロステーブルでは、内側シャフトが支持スリーブにより取り囲まれていてよく、この支持スリーブ自体も中空シャフトにより取り囲まれている。このようなクロステーブルでも、本発明を使用することができる。この場合、取付け装置は、有利には取付け装置の内側シャフトを同軸的に取り囲み、かつ取付け装置の中空シャフトにより同軸的に取り囲まれた、第3の係合構造を備えた支持スリーブを有している。この場合、同軸操作ユニットは、同軸操作ユニットの内側シャフトを同軸的に取り囲み、かつ同軸操作ユニットの中空シャフトにより同軸的に取り囲まれた、第3の対向構造を備えた支持スリーブを有している。内側シャフトと外側シャフトとは、それぞれ互いに対して独立して、支持スリーブの内側もしくは外側で回動可能であるが、支持スリーブに対して軸方向には移動可能ではないか、もしくはほとんど移動可能ではない。相応する同軸操作ユニットが取付け装置に取り付けられている場合、第3の係合構造および第3の対向構造により、引っ張りにより解除可能な、相対回動不能な第3の連結部が形成される。この連結部の引っ張りによる解除も、相対回動不能な第2の連結部により阻止される。
【0022】
相対回動不能な第3の連結部のためには、相対回動不能な第1の連結部のための上記の説明がほぼ適用される。特に、第3の係合構造は第1の係合構造を同軸的に取り囲むことができる。第3の係合構造は、同時に第2の係合構造の内部に同軸的に配置されていてよい。相応することが、各対向構造にも当てはまる。したがって、第2の連結部は第3の連結部を同軸的に取り囲み、第3の連結部は同様に第1の連結部を同軸的に取り囲むことができる。
【0023】
本発明は、このような形式で、簡単かつ工具不要の形式で、つまり単に第1の連結部および第3の連結部の構成要素を互いに内外に嵌め込み、かつ第2の連結部を固定することによって、同軸駆動装置の機械的に関連する上述の全ての構成要素を互いに対して結合することを可能にする。
【0024】
第1および第3の連結部の特に簡単な形成のためには、第1の係合構造および第1の対向構造、ならびに/または存在している場合には第3の係合構造および第3の対向構造が、有利にはそれぞれ互いに対して相補的な溝およびキー、突出部および切欠き、ならびに/または歯列部を有している。この場合、基本的には、係合している場合に、上記の構成要素の互いに対する相互の回動運動を阻止する全ての公知の機械的な構造が適している。特に、本発明の枠内では、第1の係合構造および第1の対向構造が、溝アセンブリおよびキーアセンブリの形態で形成されていてよい。この場合、組付け時にユーザは、たとえば溝を簡単かつ手間のかかる視覚的な検査を要せずに、キーに「嵌め込む」。第3の係合構造および第3の対向構造は、この場合、有利な形式でリングギアとして形成されていてよく、これらのリングギアは、第1の連結部の形成後に互いに内外に噛み合う。この場合、リングギアは、互いに向かい合って方向付けられていて、入れ子式に移動するにつれ、相応する支持スリーブの回転軸線に沿って回転しながら、互いに内外にガイドされる。したがって、第1の係合構造と第1の対向構造とが互いに係合されるや否や、または第2の係合構造と第2の対向構造とが互いに係合されるや否や、第3の係合構造と第3の対向構造との互いに対する手間のかかる位置決めはもはや不要となる。第1の係合構造および第1の対向構造もしくは第2の係合構造および第2の対向構造は、取付け装置のシャフトおよび支持スリーブの軸線を軸方向で互いに対して位置決めする。
【0025】
有利には、第2の係合構造および第2の対向構造が、引っ張りにより解除可能ではない第2の連結部を形成するために、互いに対して相補的なねじ山付きエレメントを有している。たとえば、この場合、袋ナットが設けられていてよく、特に第2の係合構造および第2の対向構造が、第2の連結部を形成するために互いに対して必要となる位置にもたらされた場合に、この袋ナットは、それぞれ別のエレメントのねじ山にねじ被せることができる。対応する袋ナットの対応する寸法設計および構成、たとえばローレット目により、この袋ナットはユーザにより工具なしにねじ被せられ、手でしっかりと取り付けられ得る。対応する同軸駆動装置を介して伝達される比較的に小さな力に基づいて、このように手でしっかりと取り付けることで十分である。しかし当然ながら、必要に応じて適切な工具を使用することもできる。ねじ山エレメントはこの場合、有利な形式で、部分的にまたは完全にねじ締結された状態で第1の連結部および第3の連結部の構成要素の確実な係合を確保する位置へともたらされる。
【0026】
係合構造および対向構造が、有利な形式でセンタリング手段、たとえば円錐体および対応する円錐形の孔を含んでいてよく、これらの円錐体および孔は、各連結部の形成時に、シャフトおよび支持スリーブの軸線の互いに対する正確な配向を確保する。たとえば、ねじ山を支持する第2の対向構造が、付加的に相応する中空円錐体を備えていてよく、この中空円錐体に、第1の係合構造に設けられた円錐形の切欠きが被せ嵌められる。この場合、中空円錐体と円錐形の切欠きの中心軸線は、取付け装置と同軸操作ユニットの中空シャフトの回転軸線に一致する。
【0027】
既に述べたように、顕微鏡用の公知のクロステーブルは、一般的には線形駆動装置、たとえば同軸駆動装置により駆動され得るピニオンラックおよび/または滑車を有している。同様に既に述べたように、本発明のクロステーブルの取付け装置において、シャフトが取り付けられている(内側シャフトおよび中空シャフト)。これらのシャフトは、相応する線形駆動装置に接続されているか、もしくはピニオンおよび滑車のような適切な被駆動手段を介して継続的に、このような線形駆動装置の対応する相補的な構成要素に係合している。これにより、同軸操作ユニットの交換後の調整は不要である。特に、相応するクロステーブルにおいて、内側シャフトを介して、回動運動が第1の線形駆動装置に伝達可能であり、中空シャフトを介して、回動運動がクロステーブルの第2の線形駆動装置に伝達可能であると有利である。
【0028】
有利な形式で、同軸操作ユニットにおいて、内側シャフトが第1の操作エレメントに接続されていて、中空シャフトが第2の操作エレメントに接続されている。この場合、操作エレメントは、たとえば、ユーザにより操作され得る回転つまみとして形成されている。この場合、種々異なる同軸操作ユニットは、種々異なる長さを有している、かつ/または種々異なる幾何学形状および寸法設計を備えた操作エレメントを備えていてよい。
【0029】
取付け装置、およびこの取付け装置に取り付けられた同軸操作ユニットを備えるクロステーブルの他に、本発明は、クロステーブルであって、対応する同軸操作ユニットを取り付けるようになっているが、対応する同軸操作ユニットを支持しない取付け装置を備えるクロステーブルにも関する。この場合、取付け装置に取付け可能な同軸操作ユニットは、上記で説明したように構成されている。つまり同軸操作ユニットは、第1の対向構造を備える、同軸的に内側に位置する内側シャフトと、この内側シャフトを同軸的に取り囲み、第2の対向構造を備える中空シャフトとを有している。取付け装置の第1の係合構造は、同軸操作ユニットの第1の対向構造との、引っ張りにより解除可能な回動固定された第1の連結部を形成するようになっており、第2の係合構造は、同軸操作ユニットの第2の対抗構造との、引っ張りにより解除可能ではない回動固定された第2の連結部を形成するようになっている。この場合、第2の連結部は、対応する連結部が形成されている場合に、第1の連結部の解除を阻止する。対応するクロステーブルおよび上述の構成要素の特徴および利点に関しては、上述の説明を参照することができる。
【0030】
上記で説明したような同軸操作ユニットを取り付けるための2つ以上の取付け装置を有するクロステーブルが特に有利である。この形式により、選択的に左または右側で操作位置において対応する取付け装置が設けられていることにより、対応するクロステーブルのたとえば左利きおよび右利きによる操作が可能にされる。同軸駆動装置を完全に用いない対応するクロステーブルの操作を望むユーザの場合、同軸操作ユニットは完全に取り除かれてよい。
【0031】
これに関しても、かつ対応するクロステーブルにより優れている本発明により提案された顕微鏡に関しても、上述の説明を参照することができる。
【0032】
本発明の別の利点および態様は、詳細な説明および添付の図面から明らかである。なお、上述で挙げられた特徴および以下で説明される特徴は、本発明の枠を逸脱することなしに、それぞれ記載された組み合わせだけではなく、他の組み合わせでも、単独でも使用可能である。
【0033】
本発明を実施例につき図面に概略的に図示し、以下に図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態による同軸操作ユニットを備えた取付け装置を示す図である。
図2】A〜Dは、本発明の実施形態の詳細を示す図である。
図3】A〜Bは、本発明の実施形態によるクロステーブルを示す図である。
【0035】
図面の詳細な説明
図1には、本発明の特に好適な実施形態による、取り付けられた同軸操作ユニットを備える取付け装置が示されている。この取付け装置は、全体的に符号100で示されていて、同軸操作ユニットは全体的に符号200で示されている。
【0036】
取付け装置100は、クロステーブル1のベースユニット50に取り付けられている。このクロステーブル1は、図3Aおよび図3Bに関連して説明される。取付け装置100は、内側に位置する内側シャフト110と、この内側シャフトを同軸的に取り囲む中空シャフト120とを有している。内側シャフト110と中空シャフト120との間には、図示の実施例では支持スリーブ130が設けられている。支持スリーブ130は、クロステーブルのベースユニット50内に相対回動不動に取り付けられている。内側シャフト110と中空シャフト120とは、支持スリーブ130内で回転するか、もしくは支持スリーブ130の周囲で回転するようになっている。
【0037】
内側シャフト110には、第1の係合構造111が形成されていて、中空シャフト120には、第2の係合構造121が形成されていて、支持スリーブには第3の係合構造131が形成されている。図示の実施例では、第1の係合構造は溝として形成されており、第2の係合構造121は、袋ナット122の支持体として形成されており、第3の係合構造は冠スリーブ(Kronenhuelse)として形成されている。内側シャフト110は、被駆動エレメント112に結合されており、この被駆動エレメント112は、ここでは著しく簡略化されて図示されている線形駆動装置30に係合する。中空シャフト120は、被駆動エレメント123、たとえばリングギアを備えていてよく、このリングギアは相応する線形駆動装置40に係合する。
【0038】
同軸操作ユニット200も、内側シャフト210、中空シャフト220および支持スリーブ230を有している。同軸操作ユニット200の内側シャフト210には、第1の対向構造211が結合されていて、同軸操作ユニット200の中空シャフト220には、第2の対向構造221が結合されていて、同軸操作ユニット200の支持スリーブ230には、第3の対向構造231が結合されている。
【0039】
第1の対向構造211は、ここでは、歯付きスリーブとして形成された第3の対向構造231によって同軸的に取り囲まれているキーユニットとして形成されている。第1の対向構造211および第3の対向構造231は、ねじ山付きユニットとして形成され、かつ袋ナット122にねじ締結することができる第2の対向構造221によって形成されている。袋ナット122を第2の対向構造221のねじ山構造にねじ被せることにより、取付けユニット100の中空シャフト120と同軸操作ユニット200の中空シャフト220とが互いに結合され得る。相応する結合により、取付け装置100の内側シャフト110に設けられた第1の係合構造111の、同軸操作ユニット200の内側シャフト210の第1の対向構造211内への係合が同時に確立される。相応のことが、取付け装置の支持スリーブ130に設けられた第3の係合構造131と、同軸操作ユニットの支持スリーブ230に設けられた第3の対向構造231にも当てはまる。
【0040】
この場合、第1の係合構造111と第1の対向構造211とによって、引っ張りにより解除可能な連結部310が形成され、この連結部310は本明細書において第1の連結部と呼ばれる。第3の係合構造131と第3の対向構造231とによって、引っ張りにより解除可能な連結部330が形成され、この連結部330は本明細書において第3の連結部と呼ばれる。引っ張りによる第1の連結部および第3の連結部の解除は、同軸操作ユニット200の中空シャフト220に設けられた第2の対向構造221と袋ナット122とのねじ締結により阻止される。第2の係合構造121と第2の対向構造221とによって、もしくは袋ナット122を使用しながら、本明細書において第2の連結部と呼ばれる、ねじ締結されているがゆえに引っ張りにより解除可能ではない連結部320が形成される。連結部310,320および330は、図2Cおよび2Dに示されている。
【0041】
説明された連結部310〜330とは反対に位置する側に、同軸操作ユニット200は操作エレメントを有している。この場合、同軸操作ユニット200の内側シャフト110には、第1の操作エレメント212が結合されていて、同軸操作ユニット200の中空シャフト220には、第2の操作エレメント222が結合されている。取付けのために、それぞれ相応する固定部213もしくは214が設けられていてよい。これらの固定部213,214は、操作エレメント212もしくは222の相対回動不能な取付け部を形成し、同時に支持スリーブ230に対する内側シャフト210もしくは中空シャフト220の軸方向の運動を阻止する。取付け装置100の中空シャフト120および同軸操作ユニット200の中空シャフト220の、各支持スリーブ130もしくは230に対する改善された可動性のために、適切な転がり軸受け140,240が設けられていてよい。
【0042】
図2A図2Dには、図1に図示した構成要素の詳細がもう一度示されているが、相応する参照符号は部分的にしか付されていない。ここで、図2Aは取付け装置100を示し、図2Bは同軸操作ユニット200を示し、図2Cは第1の連結部310を示し、図2Dは第3の連結部330を示している。図2A図2Dにそれぞれ示された構成要素は、既に図1に関連して説明されているので、図1での説明を参照することができる。
【0043】
図3Aおよび図3Bには、本発明の好適な実施形態によるクロステーブルがそれぞれ示されており、全体として符号1で示されている。同軸操作ユニット用の取付け装置は、図3でも符号100で示されており、対応する同軸操作ユニットは符号200で示されている。クロステーブル1は、移動可能な第1のユニット10と、移動可能な第2のユニット20とを有していて、これらの移動可能なユニット10,20は、図1で概略的に示され、図1において符号30もしくは40で示されているような線形駆動装置にそれぞれ連結されていてよく、これによって同軸駆動装置もしくは同軸駆動装置の同軸操作ユニット200により移動され得る。ユニット10もしくは20は、ベースユニット50上に移動可能に取り付けられている。この場合、図3Aは、取り付けられた同軸操作ユニット200を有する取付けユニット100を備えるクロステーブル1を示しており、図3Bでは、同軸操作ユニット200は取り除かれている。
【符号の説明】
【0044】
1 クロステーブル
30,40 線形駆動装置
10 移動可能な第1のユニット
20 移動可能な第2のユニット
50 ベースユニット
100 同軸操作ユニット用の取付け装置
200 同軸操作ユニット
110,210 内側シャフト
120,220 中空シャフト
130,230 支持スリーブ
111 第1の係合構造
112,123 被駆動エレメント
121 第2の係合構造
122 袋ナット
131 第3の係合構造
140,240 転がり軸受け
211 第1の対向構造
212 第1の操作エレメント
213,214 固定部
221 第2の対向構造
222 第2の操作エレメント
231 第3の対向構造
310 第1の連結部
320 第2の連結部
330 第3の連結部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B