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特許6861714オルトカルボン酸エステルを用いたアミンの還元的アルキル化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861714
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】オルトカルボン酸エステルを用いたアミンの還元的アルキル化
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/46 20060101AFI20210412BHJP
   C07C 211/48 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 229/12 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 229/36 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 229/24 20060101ALI20210412BHJP
   C07D 211/06 20060101ALI20210412BHJP
   C07D 265/30 20060101ALI20210412BHJP
   C07D 207/04 20060101ALI20210412BHJP
   C07D 207/16 20060101ALI20210412BHJP
   C07D 211/42 20060101ALI20210412BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C07C209/46
   C07C211/48
   C07C211/27
   C07C229/12
   C07C229/36
   C07C229/24
   C07D211/06
   C07D265/30
   C07D207/04
   C07D207/16
   C07D211/42
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-540374(P2018-540374)
(86)(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公表番号】特表2019-504092(P2019-504092A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2017051313
(87)【国際公開番号】WO2017133913
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年11月28日
(31)【優先権主張番号】16154092.7
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レナート カディロフ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−067719(JP,A)
【文献】 特表2003−505356(JP,A)
【文献】 特表2009−500380(JP,A)
【文献】 特開昭52−085113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/46
C07C 211/27
C07C 211/48
C07C 229/12
C07C 229/24
C07C 229/36
C07D 207/04
C07D 207/16
C07D 211/06
C07D 211/42
C07D 265/30
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルトカルボン酸エステルとアミン又はアンモニアと水素とを、水素化触媒の存在下で反応させることによりアミン又はアンモニアをN−アルキル化する方法。
【請求項2】
酸の存在下で反応を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される酸とアミンとのモル比0.01:100〜10:100の範囲で反応を実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用される水素化触媒とアミンとのモル比1:10〜1:100000の範囲で反応を実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
0.1bar〜200barの範囲の水素分圧で反応を実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
20℃〜200℃の温度範囲で反応を実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水素化触媒が、不均一系水素化触媒である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
不均一系水素化触媒が、少なくとも1種の活性金属を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
活性金属が、元素の周期表のVII B族及び/又はVIII B族の金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶媒中で反応を実施する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶媒が、炭化水素、塩化炭化水素、エーテル、エステル及びアルコールからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒を使用せずに反応を実施する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び水素化触媒の存在下で、オルトカルボン酸エステルによりアミン又はアンモニアを還元的アルキル化することによるアミンの製造方法に関する。
【0002】
アミンは、多数の複雑な天然物質、例えばアルカロイド、ビタミン又はアミノ酸において主要な役割を果たしており、化学物質、医薬品及び産業上の重要性は紛れもない。アミンは中間体として、とりわけ医薬品、農薬、食品添加物、染料又は化粧品の合成において使用される。有効成分の分野では、アミノ酸は、この点に関して優れた役割を果たしている。
【0003】
アミンはとりわけ、対応するカルボキサミドの還元によって、例えばカルボキサミドの触媒水素化によって(M. Stein and B. Breit, Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 2231−2234;国際公報第2015/067450号A1(WO 2015/067450 A1))、又はアミドアセタール、ケテンN,O−アセタール又はエステルイミドの触媒水素化によって(国際公報第2015/067448号A1(WO 2015/067448 A1))製造することができる。
【0004】
他の方法として、アルデヒド及びケトンによるアンモニア又は第一級もしくは第二級アミンの還元的アルキル化は、水素及び不均一系金属触媒の存在下で、アミノ基のアルキル化を導く。アミンの還元的アルキル化は、アミンの製造のための最も重要な方法に属する(W. S. Emerson, The preparation of amines by reductive alkylation, in Organic Reactions, Vol. 4, 1948, pp. 174−255, Wiley, N.Y.; Catalytic Hydrogenation over Platinum Metals, Academic Press, New York, 1967, p. 291 ff; Catalytic Hydrogenation in Organic Synthesis, Academic Press, New York, 1979, 165 ff ; F. Mueller and R. Schroeter in Methoden Org. Chem. (Houben−Weyl), 1957, XI/1, p. 602−671; S. Nishimura, Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis 2001, pp. 406−411, Wiley, N.Y.)。しかしながら、水素及び不均一系触媒の存在下でのアルデヒド又はケトンとアンモニア又は第一級もしくは第二級アミンとの反応は、一般に、圧力及び温度に関する厳しい反応条件を要求する。対照的に、Riermeierら(国際公法第01/05741号A1(WO 01/05741 A1))は、より穏やかな反応条件を観察できる均一系金属触媒を使用するこの反応の変法を提唱している。
【0005】
しかしながら、水素の存在下での不均一系触媒によるアミンの還元的アルキル化は、他の欠点を有する。第一級アミンと高反応性アルデヒドとの反応による第二級アミンの合成中には一般的にモノアルキル化段階で反応を止めることができない。これは、しばしば比較的複雑な生成物混合物につながる。さらに、ホルムアルデヒドによる還元的アルキル化によるアミンのメチル化は一般に水溶液中で実施することができるにすぎない。それというのも、ホルムアルデヒドは、もっぱら水溶液として(その水和物の形で)得られるからである。これは、アミノ酸の還元的メチル化中に大きな問題を生じる。それというのも、水中で容易に溶解するアミノ酸は、水溶液から単離することが困難であるからである。
【0006】
したがって本発明の課題は、前記のとおりアルキル化剤としてアルデヒドを使用する場合にこれまでに生じていた欠点を有していない、アミンのアルキル化のための新たなタイプの方法を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、水素及び通常の水素化触媒の存在下で、オルトカルボン酸エステルによりアミンをアルキル化できることが見出された。
【0008】
したがって前記課題は、オルトカルボン酸エステルとアミンと水素とを、水素化触媒の存在下で反応させることによりアミンをN−アルキル化する方法により解決される。
【0009】
したがって本発明による方法は、水素化触媒の存在下で、オルトカルボン酸エステルと第一級又は第二級アミンと水素とを反応させることによる第二級又は第三級アミンの製造方法である。同様の方法で、水素化触媒の存在下で、オルトカルボン酸エステルとアンモニア、及び水素とを反応させることにより第一級アミンを合成することも可能である。
【0010】
本発明による水素化触媒の存在下でのオルトカルボン酸エステルとアミンと水素との反応において使用される水素化触媒とアミンとのモル比は、1:10〜1:100000の範囲である。水素分圧は、0.1bar〜200barの範囲である。温度は、20℃〜200℃の範囲で設定される。
【0011】
触媒量の酸の存在で本発明による方法を実施することが有利である。
【0012】
本発明による方法において、例えば、一般式(I)を有するアミンと式(II)のオルトカルボン酸エステルと
【化1】
を反応させて、N−アルキル化アミンを得ることができ、
前記式中、基R及びR1は、互いに独立して、H、又は直鎖であるか、任意の所望の炭素原子上で1つ以上の置換基で提供される(C1〜C24)−アルキル基、(C3〜C20)−シクロアルキル基、(C2〜C13)−ヘテロシクロアルキル基、(C6〜C14)−アリール基もしくは(C3〜C13)−ヘテロアリール基からなる群から選択され、但し、RおよびR1は同時にHではなく、基RとR1は、任意に、飽和又は一不飽和もしくは多不飽和の(C2〜C18)−アルキレン又は(C2〜C18)−ヘテロアルキレン架橋を形成して、合計3〜20個の環原子を有する環を形成することができ、かつ
2は、H、(C1〜C24)−アルキル、(C3〜C20)−シクロアルキル、(C2〜C13)−ヘテロシクロアルキル、(C6〜C14)−アリール、(C3〜C13)−ヘテロアリールからなる群から選択され、かつ
3、R4及びR5は、互いに独立して、H、(C1〜C24)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル又は(C6〜C14)−アリールからなる群から選択され、
ここで、基R2とR3、及びR3とR4の双方は、互いに独立して、飽和又は一不飽和もしくは多不飽和の(C2〜C18)−アルキレン又は(C2〜C18)−ヘテロアルキレン架橋を形成して、合計3〜20個の環原子を有する環を形成することができる。
【0013】
2は、好ましくは、H、(C1〜C24)−アルキル、フェニルからなる群から選択される。
【0014】
2は、特に好ましくは、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、フェニルから選択される。
【0015】
3、R4及びR5は、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル及びフェニルからなる群から選択される。
【0016】
環は、好ましくは基R2とR3との間又は基R3とR4との間で形成され、該環は、好ましくは脂肪族であり、かつ環が合計4、5、6、7又は8個の環原子を含むように、アルキレン基 プロパンジ−1,3−イル、ブタンジ−1,4−イル、ペンタンジ−1,5−イル又はヘキサンジ−1,6−イルを有する。
【0017】
式(I)のアミンの基R及びR1上の任意の置換基は、ハロゲン、例えばF、Cl、Br、I、及びN、O、P、S又はSiからなる群から選択される1つ以上の原子を含有するヘテロ原子含有官能基からなる群から選択され、一置換又は多置換が可能である。ヘテロ原子含有官能基の例は、カルボニル基、カルボキシル基、スルホネート基、ホスホネート基、ヒドロキシル基、アミノ基、アンモニウム基であり、例えば、
−OH、
−(C1〜C8)−アルキルオキシ
−COOH、
−NH({C1〜C8}−アシル)、
−NH({C1〜C8}−アシルオキシ)、
−N((C1〜C20)−アルキル)({C1〜C8}−アシル)、
−N({C6〜C14}−アリール)({C1〜C8}−アシル)、
−N({C6〜C14}−アラルキル)({C1〜C8}−アシル)、
−N({C1〜C8}−アシル)2
−NH3+
−NH({C1〜C20}−アルキル)2+
−NH({C6〜C14}−アリール)2+
−NH({C6〜C14}−アラルキル)2+
−NH({C1〜C20}−アルキル)({C6〜C14}−アリール)+
−N({C6〜C14}−アリール)({C1〜C20}−アルキル)2+
−N({C6〜C14}−アリール)2({C1〜C20}−アルキル)+
−O−C(=O)−O−{C1〜C20}−アルキル、
−O−C(=O)−O−{C6〜C14}−アリール、
−O−C(=O)−O−{C6〜C14}−アラルキル、
−NH−C(=O)−O−{C1〜C20}−アルキル、
−NH−C(=O)−O−{C6〜C14}−アリール、
−NH−C(=O)−O−{C6〜C14}−アラルキル、
−O−C(=O)−NH−{C1〜C20}−アルキル、
−O−C(=O)−NH−{C6〜C14}−アリール、
−O−C(=O)−NH−{C6〜C14}−アラルキル、
−CN、
−SO2−O−{C1〜C20}−アルキル、
−SO2−O−{C6〜C14}−アリール、
−SO2−O−{C6〜C14}−アラルキル、
−SO2−{C1〜C20}−アルキル、
−SO2−{C6〜C14}−アリール、
−SO2−{C6〜C14}−アラルキル、
−SO−{C1〜C20}−アルキル、
−SO−{C6〜C14}−アリール、
−SO−{C6〜C14}−アラルキル、
−Si({C1〜C20}−アルキル)3
−Si({C6〜C14}−アリール)3
−Si({C6〜C14}−アリール)({C1〜C20}−アルキル)2
−Si({C6〜C14}−アリール)2({C1〜C20}−アルキル)、
−{C1〜C20}−ペルフルオロアルキル、
−PO(O−{C1〜C20}−アルキル)2
−PO(O−{C6〜C14}−アリール)2
−PO(O−{C1〜C20}−アルキル)(O−{C6〜C14}−アリール)、
−PO({C1〜C20}−アルキル)2
−PO({C6〜C14}−アリール)2
−PO({C1〜C20}−アルキル)({C6〜C14}−アリール)
である。
【0018】
一般式(I)のアミンは、例えばアミノ酸、例えば12個のタンパク質構成アミノ酸の1つ又はアミノ酸誘導体、例えばアミノ酸エステル、例えばグリシン、アラニン、バニリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファンもしくはプロリンのメチルエステル又はエチルエステルである。
【0019】
一般式(II)のオルトカルボン酸エステルは、例えば、オルトギ酸トリメチル又はオルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル又はオルト酢酸トリエチル、オルトプロパン酸トリメチル又はオルトプロパン酸トリエチル、オルトブタン酸トリメチル又はオルトブタン酸トリエチルである。
【0020】
オルトカルボン酸エステルは安価であり、かつその製造方法がよく確立されている(H. Lebel, M. Grenon in Science of Synthesis, Vol. 22, 2005, pp. 669−747; G. Simchen in Methoden Org. Chem. (Houben−Weyl), 1985, E5/1, p. 3−192; R. DeWolf, Synthesis, 1974, 153−172)。例えば、それらは、酸触媒下でアルコールを用いたニトリルのアルコール分解により合成することができる:
【化2】
【0021】
オルトギ酸エステルは、クロロホルムと、相応のアルコールのナトリウムアルコラートとから製造することができる(W. E. Kaufmann, E. E. Dreger: Ethylorthoformate [Ethyl orthoformates]. In: Organic Syntheses. 5, 1925, p. 55)。
【0022】
異なったアルコール基(R3≠R4≠R5)を有するオルトカルボン酸エステルを、例えばエステル交換反応により製造することができる。
【0023】
選択される水素化触媒は、本発明の目的のために当業者により考慮される全ての水素化触媒であってよい。
【0024】
少なくとも1つの活性金属を含む不均一系水素化触媒を使用することが好ましい。好ましくは、活性金属は、元素の周期表のVII B族及び/又はVIII B族のものであり、貴金属及びNiが好ましく、Ru、Rh、Pd、Pt、Re及びNiが特に好ましい。金属は水素化触媒中で、(a)金属自体として、もしくは金属酸化物の形で、又は(b)金属錯体として、存在してよい。
【0025】
(a)の場合、金属又は金属酸化物は、担体に適用されるか、又は粒子として使用されてよい。担体材料について制限はない。通常は、慣用の担体、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、炭素、又は水素化の分野において当業者に公知の同様の担体が使用される。担体に対する金属又は金属酸化物の含有量は、触媒の合計質量を基準として1質量%〜25質量%の範囲内で選択される。好ましくは、担体に対して金属又は金属酸化物1質量%〜5質量%の含有量が選択される。
【0026】
かかる水素化触媒の例は、Pt/C、Pd/C、Ru/C、Rh/C、Pd/CaCO3、Pd/Al23、Ru/Al23、Rh/Al23、Pd/Re/C、Pt/Re/C、RuO2である。
【0027】
(b)の場合、金属は、水素化触媒として金属錯体の形で使用されてもよい。それらの例は、金属Rh、Ir又はRuの金属錯体であり、例えばウィルキンソン触媒ClRh(PPh33又は[(dppb)Rh(cod)]BF4、[Ir(PCy3(C55N)(cod)]PF6、[Cl2Ru(PPh33]及び[(dppb)Ru(metallyl)2]である。
【0028】
好ましくは、水素化触媒は、Pd/C、Pd/Al23、Pd/CaCO3、Pt/C、Ru/Al23、Ru/C、Rh/C及び[(dppb)Rh(cod)]BF4からなる群から選択される。特に好ましくは、水素化触媒は、5%Pd/C、5%Pd/Al23、5%Pd/CaCO3、5%Pt/C、5%Ru/Al23、5%Ru/C、5%Rh/C及び[(dppb)Rh(cod)]BF4からなる群から選択される。
【0029】
水素化触媒の量は、水素化触媒とアミンのモル比が1:10〜1:100000の範囲であるように、当業者により自由に選択されてよい。1:20〜1:10000の範囲がさらに好ましく、1:50〜1:2000の範囲が特に好ましい。
【0030】
原則として、当業者は、本発明による方法において使用したい溶媒を自由に選択できる。これに関して、出発材料はしばしば液体の形で存在することから、溶媒を使用しないことも可能である。しかしながら、本発明による方法において溶媒の使用が望まれる場合は、使用される反応の構成成分をそれに応じて容易に溶解する溶媒の使用が有利であり、本発明による反応に対して不活性であるべきであることが証明されている。例えば、極性又は非極性溶媒、とりわけ炭化水素、塩化炭化水素、エーテル、エステル及びアルコールが含まれる。ここでは、アルカン、ハロアルカン、一価アルコール、多価アルコール、環状エーテル、非環式エーテル、及びエステルが好ましい。
【0031】
好ましい溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジメチルグリコールエーテル(DMGE)、1,4−ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ジブチルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジクロロメタン及び1,2−ジクロロエタンからなる群から選択されるものである。メタノール及びエタノールが特に好ましい。
【0032】
反応中、反応の水素分圧は、0.1〜200bar、好ましくは0.1〜100bar、及び特に好ましくは0.1〜60barの範囲で確立される。
【0033】
反応中に確立されるべき温度は、当業者により決定されてよく、通常0℃〜250℃の範囲である。該温度は、予想される反応が十分に速い時間で進行するために十分に高くあるべきであるが、水素化中の副生成物スペクトルをできるだけ低く維持するようにできるだけ低くあるべきである。好ましくは、20℃〜200℃の範囲、好ましくは20℃〜150℃の範囲の温度が確立されている。特に好ましくは、100℃〜130℃の範囲の温度が確立されており、さらに特に好ましくは110℃〜130℃の範囲の温度が確立されている。
【0034】
本発明による方法の特定の実施形態において、水素化触媒は活性金属を含む。
【0035】
本発明のさらに特定の実施形態において、活性金属は、元素の周期表のVII B族及び/又はVIII B族である。
【0036】
本発明のさらに特定の実施形態において、反応は、さらに酸の存在下で実施する。酸の量は、当業者により自由に選択されてよい。しかしながら、酸は、好ましくは、アミンに対して0.01:100〜10:100の範囲のモル比で使用される。
【0037】
原則として、当業者は、適した酸を自由に選択できる。しかしながら好ましくは、費用対効果の高い無機酸又は有機酸が使用される。鉱酸、カルボン酸、アリールスルホン酸、アルカンスルホン酸、フルオロスルホン酸からなる群から選択される酸が好ましい。これに関して、p−トルエンスルホン酸(4−MeC64SO2OH)、CF3SO2OH、CH3SO2OH、CF3COOH、ClCH2COOH、CH3COOH及びHCOOHからなる群から選択される酸が特に好ましい。
【0038】
本発明による方法の特定の実施形態は、反応を溶剤中で実施することである。
【0039】
溶剤は、好ましくは、炭化水素、塩化炭化水素、エーテル、エステル及びアルコールからなる群から選択される。
【0040】
本発明による方法のさらなる実施形態は、溶剤を使用せずに反応を実施することである。
【0041】
水の不在下で作業することが有利である。したがって、本発明は、さらに、無水アミンと無水オルトカルボン酸エステルと任意に無水溶媒を使用する、本発明による方法を提供する。
【0042】
本発明による方法において、その手順は一般に、オートクレーブ中で、アミンとオルトカルボン酸エステルと触媒とを一定のモル比で、適切な量の溶媒と一緒に混合することを含む。そして、オートクレーブを、数回水素で洗い流し、そして反応温度に加熱して、その混合物を適切な圧力で水素化する。冷却後に、水素圧を緩め、反応混合物を濾過し、そしてその濾過物を、当業者に公知の方法で後処理する。
【0043】
本発明による方法の好ましい実施形態において、その手順は一般に、オートクレーブ中で、アミンとオルトカルボン酸エステルとを、適切な量の溶媒及び酸と一緒に混合することを含む。そして、触媒を一定のモル比で添加し、オートクレーブを数回水素で洗い流し、そしてその混合物、適切な温度及び適切な圧力で水素化する。冷却後に、水素圧を緩め、反応混合物を濾過し、そしてその濾過物を、当業者に公知の方法で後処理する。
【0044】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、その手順は一般に、オートクレーブ中で、アミンとオルトカルボン酸エステルとを、適切な量の酸と一緒に混合することを含む。そして、触媒を一定のモル比で添加し、オートクレーブを数回水素で洗い流し、そしてその混合物、適切な温度及び適切な圧力で水素化する。冷却後に、水素圧を緩め、反応混合物を濾過し、そしてその濾過物を、当業者に公知の方法で後処理する。
【0045】
実施例
オルトカルボン酸エステルによるアミンの還元的アルキル化のための一般的方法
オートクレーブを、触媒(アミンのモル量に対して1mol%)で満たし、アルゴンで洗い流し、そしてメタノール10ml中のアミン(0.1mol)およびオルトカルボン酸エステル(0.11〜0.3mol)の溶液、及びメタノール(又はエタノール)中0.2Mの無水p−トルエンスルホン酸の溶液0.5mlを供給した。その混合物を120℃まで加熱し、水素を40barまで注入し、そしてその混合物を、水素吸収が検出されなくなるまで(0.2〜6時間)一定圧力で撹拌した。触媒から濾別した後、その濾過物を蒸留した。
【0046】
収率は表1に記載されている。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】