特許第6861723号(P6861723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861723インピーダンスが可変である電気化学セルを有する電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861723
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】インピーダンスが可変である電気化学セルを有する電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20210412BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210412BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20210412BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20210412BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/48 102
   H01M10/613
   H01M10/6554
   H01M2/02 K
   H01M10/0587
   H01M10/0565
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-549372(P2018-549372)
(86)(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公表番号】特表2018-537836(P2018-537836A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】CA2016000310
(87)【国際公開番号】WO2017096463
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】62/266,026
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518203836
【氏名又は名称】ブルー・ソリューションズ・カナダ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・コットン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ルブル−サルズ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ルブラン
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・ゲナ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ヴァレ
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−221816(JP,A)
【文献】 特開2006−335971(JP,A)
【文献】 特開2013−246920(JP,A)
【文献】 特開2001−015162(JP,A)
【文献】 特開2003−173821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/6554
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部、上壁部、及び下壁部を有して筐体を形成する剛体ケーシングに挿入され、共に組み立てられた複数の電気化学セルであって、アノード、カソード、及び電解質を含む複数の電気化学セルと、前記電気化学セルにより発生される過剰熱を放散するための少なくとも1つのヒートシンク経路とを備えるリチウムポリマー電池であって、前記ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた電気化学セルが当該リチウムポリマー電池の他の電気化学セルよりも低いインピーダンスを有するように前記電気化学セルが組み立てられている、リチウムポリマー電池において、
前記ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた前記電気化学セルが、当該リチウムポリマー電池の前記他の電気化学セルよりも高いリチウム塩濃度を有する電解質及びカソードを備えていることを特徴とする、リチウムポリマー電池
【請求項2】
前記ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた前記電気化学セルの前記電解質及び前記カソードはそれぞれ、前記他の電気化学セルよりも劣る5:1のポリマー/リチウム塩の比率を有する、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項3】
前記剛体ケーシングは、さらなるヒートシンク経路を提供する内壁部をさらに備え、前記内壁部に隣接して位置決めされた前記電気化学セルは、当該リチウムポリマー電池の前記他の電気化学セルよりもインピーダンスが低い、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項4】
前記ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた前記電気化学セルの前記電解質及び前記カソードはそれぞれ、前記他の電気化学セルの前記電解質及び前記カソードより劣る5:1のポリマー/リチウム塩の比率を有する、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項5】
前記電気化学セルは、個々のラミネートからなる多層アセンブリで構成されており、複数の電気化学セルが、相互に積層されてバンドルを形成している、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項6】
前記電気化学セルは、円筒状電気化学セルを形成するようにらせん状に複数回巻かれた単一のラミネートで構成されている、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項7】
前記少なくとも1つのヒートシンク経路は、前記剛体ケーシングの壁部によって提供されている、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【請求項8】
当該リチウムポリマー電池が冷却システムをさらに備え、前記少なくとも1つのヒートシンク経路が前記冷却システムによって提供されている、請求項に記載のリチウムポリマー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な温度で動作するリチウムポリマー電池に関し、より詳細にはこれらの動作温度を管理するように構成された電気化学セル構成を有する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムポリマー電池は、電気自動車において、遠隔通信ステーション、データセンタ等の送電網停電に対応できない用途に対して継続性を確保するためのバックアップ用の定置用途において、または工業用建物もしくは居住用建物にピークシェービング用の代替電源を与えるために使用するための、20kWh以上の大型電池として典型的に作製される。
【0003】
リチウムポリマー電池は、電気化学セルを保護する剛体ケーシング内に囲まれた直列接続された複数の電気化学セルからなる。各電気化学セルは、並列接続された複数の基本セルラミネートを備える。各ラミネートは、アノード電極すなわち負極と、カソード電極すなわち正極と、負極から正極を隔て電極間にイオン伝導性を与えるポリマーおよびリチウム塩を含む固体電解質とを備える。負極は、ポリマーバインダ中に炭素またはLi4Ti5O12などのリチウムイオンを挿入および脱挿入することが可能なリチウムもしくはリチウム合金金属シートまたは活性材料であってもよく、一方で、正極は、LiFePO4、LiMnO2、LiMn2O4等の電気化学活性材料粒子と、導電性添加剤と、結合剤として作用し正極の電気化学活性材料粒子と固体電解質セパレータとの間に所要のイオン経路を形成する固体ポリマー電解質とからなる。
【0004】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池とは対照的に、リチウムポリマー電池は、この技術を極めて安全なものにする固体電解質を使用する。しかし、最適なイオン伝導性およびしたがって最適な性能を実現するために、電気化学セルは、60℃〜80℃の温度まで加熱されなければならない。したがって、リチウムポリマー電池は、40℃の公称温度に電池を維持するために、および放電モードの開始時に60℃〜80℃の間まで電気化学セルの温度を急速に上昇させて電池から最適な性能を引き出すために、加熱システムを備える。最適温度が実現されると、放電動作が、十分な熱を発生させて電池をその最適温度に維持する。
【0005】
動作において、電池を構成する複数の電気化学セルが発生する過剰熱は、電池ケーシングの壁部を通して放散される。好ましくは、電池ケーシングは、電池ケーシングの外部に過剰熱を効率的に伝導するアルミニウムまたはアルミニウム合金などの剛体かつ伝熱性の材料から作製され、必要な場合には放熱を加速させるために電池ケーシングの外部に冷却システムが存在してもよい。
【0006】
正常な放電動作において、上述のような電池ケーシング内に囲まれた電気化学セルのスタック内では、電池ケーシングの壁部に隣接して配置された電気化学セルが放電終止電圧に最初に到達し、それにより電池の全体的な放電容量をわずかに低下させることが判明した。この現象は、これらの特定の電気化学セルが電池ケーシングの壁部からさらに離れて配置された他の電気化学セルに比べて電池ケーシングの壁部を通してより迅速に熱を損失していることによって、これらの特定の電気化学セルが若干より低い動作温度で動作するという事実に起因していた。
【0007】
したがって、電池ケーシングと、電池ケーシングのヒートシンクを通した熱損失を補償するように構成された電気化学セル構成とが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、先行技術において存在する不都合の少なくともいくつかを改善することである。
【0009】
一態様では、本発明は、共に組み立てられた複数の電気化学セルと、電気化学セルにより発生される過剰熱を放散するための少なくとも1つのヒートシンク経路とを備えるリチウム電池であって、複数の電気化学セルが、剛体ケーシングに挿入され、剛体ケーシングが、側壁部、上方壁部、および下方壁部を有して筐体を形成し、ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた電気化学セルが電池の他の電気化学セルよりも低いインピーダンスを有するように電気化学セルが組み立てられた、リチウム電池を提供する。
【0010】
さらなる一態様では、ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた電気化学セルがラミネートを備え、そのラミネートにおいて、電解質及びカソードがバンドルの他の電気化学セルよりも多い塩を有する。
【0011】
さらなる一態様では、ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた電気化学セルの電解質及びカソードがそれぞれ、他の電気化学セルよりも劣る約5:1のポリマー/塩の比率を有する。
【0012】
本発明の実施形態はそれぞれ、上述の目的および/または態様の中の少なくとも1つを有するが、それらの全てを必ずしも有するわけではない。上述の目的を達成する試みの結果として得られた本発明のいくつかの態様が、これらの目的を満たさない場合があり、および/または本明細書において具体的には挙げられない他の目的を満たしてもよい点を理解されたい。
【0013】
本発明の実施形態の追加的なおよび/または代替的な特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【0014】
本発明ならびに本発明の他の態様およびさらなる特徴をより良く理解するために、添付の図面と組み合わせて使用されることとなる以下の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】複数の電気化学セルを備える電池の一例の斜視図である。
図2】単一の電気化学セルラミネートの概略図である。
図3】剛体ケーシング内に囲まれた、1番から14番の電気化学セルのバンドルを有する電池の一実施形態の概略図である。
図4図3に示す電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧のグラフである。
図5】剛体ケーシング内に囲まれた1番から14番の電気化学セルの2つのバンドルを有する電池の第2の実施形態の概略図である。
図6図5に示す電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧のグラフである。
図7】修正された構成を有する図3に示す電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧を示すグラフである。
図8】修正された構成を有する図5に示す電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧を示すグラフである。
図9】剛体ケーシング内に囲まれた1番から18番の電気化学セルの3つのバンドルを有する電池の第3の実施形態の概略図である。
図10図9に示す電池の放電終止における1番から18番の各電気化学セルの電圧のグラフである。
図11a】剛体ケーシング内に囲まれた複数の円筒状電気化学セルを有する電池の別の実施形態の概略上面図である。
図11b】剛体ケーシング内に囲まれた複数の円筒状電気化学セルを有する図11aに示す電池の概略側方立面図である。
図12】単一の円筒状電気化学セルの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、内部構成要素を示す破断部分を伴った、リチウム金属ポリマー電池10の一実施形態を示す。この具体例では、電池10は、相互に積層され、共に直列接続され、電池ポール14および15に接続された複数の電気化学セル12を備える。電気化学セル12のスタックは、電気化学セル12の充電モードおよび放電モードを制御し、常時的な各個別の電気化学セル12の起電力または電圧および電池10の温度を含む電池10の様々なパラメータをモニタリングする電子制御基板16に接続される。
【0017】
電池10は、押出成形アルミニウムから作製された剛体ケーシング30を備え、この剛体ケーシング30は、側壁部32、上方壁部34、および下方壁部36を有して筐体37を形成する。電気化学セル12のスタック同士は、共に組み立てられてバンドル38を形成し、このバンドル38が、保護のためにおよびバンドル38を熱的に隔離することにより電気化学セル12の最適温度を維持するために、剛体ケーシング30により形成された筐体37に挿入される。図1の例示の実施形態では、剛体ケーシング30は、内壁部40をさらに備え、この内壁部40は、剛体ケーシング30の全長にわたって延在してケーシング30に追加的な剛性を与え、それにより2つの別個の筐体37および39を形成する。それにより、電池10が備える電気化学セル12の2つのバンドル38が、各筐体37および39にそれぞれ挿入される。各バンドル38は、バンドル38に均一な圧力を印加するプレート43上に力を加える一連のばね44からなる圧力システム42によって圧力下に維持される。
【0018】
電池10は、剛体ケーシング30の側壁部32に沿って配置された加熱システム(図示せず)を備える。加熱システムは、剛体ケーシング30の側壁部32を通してバンドル37および39に熱を与えることにより、フローティングモードでは40℃の公称温度に電池10を維持し、放電モードの開始時には60℃〜80℃の間にまで電気化学セル12の温度を急速に上昇させる。
【0019】
放電温度に到達すると、剛体ケーシング30の上方壁部34、下方壁部36、および内壁部40が、電気化学セル12のバンドル37および39によって発生した過剰熱を放散させて電気化学セル12のオーバーヒートを防止するためのヒートシンク経路を形成する。
【0020】
各電気化学セル12は、図2に概略的に示されるように個々のラミネート20からなる多層アセンブリで構成されている。各ラミネート20は、リチウム源として機能するアノード22と、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な電気化学活性材料を有するカソード26と、カソード26からアノード22を分離しリチウムイオンキャリアとして機能する電解質24とを備える。アノード22およびカソード26は、リチウムイオンの可逆的挿入が可能である材料から作製される。アノード22は、金属リチウムフォイル、または例えば炭素ベース層間化合物と金属集電板(図示せず)上に支持されたポリマーバインダ、コポリマーバインダ、もしくはターポリマーバインダとを含む複合材料であってもよい。カソード26は、典型的には、集電板28上に支持された、遷移金属酸化物またはリン酸塩と、中に35:1の比率で溶解したリチウム塩を含有するポリマーバインダ、コポリマーバインダ、またはターポリマーバインダとの複合混合物である。電解質24は、ポリマー、コポリマー、またはターポリマー中に30:1の比率で溶解したリチウム塩から主になる。
【0021】
典型的には、電気化学セル12のバンドルは、同一個数のラミネート20を有ししたがって同一の容量を有する複数の同一の電気化学セル12を備える。図3は、側壁部32、上方壁部34、および下方壁部36を有する剛体ケーシング30内に囲まれた、1番から14番の14個の電気化学セル12を備える単一のバンドル38を有する電池の一実施形態を概略的に示す。各電気化学セル12は、同一個数のラミネート20と、同一の容量とを有する。
【0022】
図4は、電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セル12の電圧を示すグラフである。図4のグラフからは、1番、2番、13番、および14番の電気化学セルが、3番から12番の電気化学セルよりも迅速に放電終止電圧に達していることを示すプロファイルが見て取れる。電池は、バンドル38の電気化学セル12の中の1つが放電終止に到達すると、放電終止電圧に達したため、電池は動作を停止し、一方で、その電気化学セル12の中の複数が依然として電圧放電動作ウィンドウ内にとどまった。電池は、容量を残した状態で動作を事実上停止した。
【0023】
図5は、2つの筐体37および39を画成する側壁部32、上方壁部34、下方壁部36、および内壁部40を有する剛体ケーシング30内に囲まれた2つのバンドル38を有する電池の一実施形態を概略的に示す。筐体37内に配置された第1のバンドル38は、1番から7番の7個の電気化学セル12を備え、筐体39内に配置された第2のバンドル38は、8番から14番の7個の電気化学セル12を備える。図3を参照として説明された前述の実施形態と同様に、2つのバンドル38の各電気化学セル12は、同一個数のラミネート20および同一の容量を有する。
【0024】
図6は、電池の放電終止における1番から7番および8番から14番の各電気化学セル12の電圧を示すグラフである。図6のグラフからは、1番、2番、6番から9番、13番、および14番の電気化学セルが、3番から5番、および10番から12番の電気化学セルよりも迅速に放電終止電圧に達していることを示すプロファイルが見て取れる。電池は、バンドル38の電気化学セル12の中の1つが放電終止電圧に到達すると、放電終止電圧に達するため、電池は動作を停止し、一方で、その電気化学セル12の中の複数が依然として電圧放電動作ウィンドウ内にとどまった。やはり電池は、容量を残した状態で動作を事実上停止した。
【0025】
図4および図6のグラフからは、上方壁部34および下方壁部36によりならびに内壁部40により形成されたヒートシンクの付近に配置された電気化学セルが、それらのヒートシンクからさらに離れて配置された電気化学セルよりも迅速に放電終止電圧に達することが見て取れる。電気化学セル12の放電容量は、電気化学セル12の温度によるため、ヒートシンクすなわち上方壁部34および下方壁部36および/または内壁部40の付近に配置された電気化学セルは、それらがヒートシンクの近傍に位置することにより動作温度にとどまることがより困難となり、したがってヒートシンクからさらに離れて配置された電気化学セルよりも冷たく、事実上、容量が小さいことが当然となる。
【0026】
この問題を緩和するために、本発明者らは、上方壁部34および下方壁部36により形成されたヒートシンクおよび/または内壁部40の付近の電気化学セルが、ヒートシンクからさらに離れて配置された他の電気化学セルよりも低いインピーダンスを有する新たなバンドルアセンブリを試験した。
【0027】
本発明者らにより予期される、上方壁部34、下方壁部36、および内壁部40によって提供されるヒートシンクの付近に又は隣接して配置された電気化学セル12の時期尚早なサイクル終止の問題に対する解決策は、それらの電気化学セルのより低温での放電容量を増大させ、電解質24及びカソード26内のリチウム塩濃度を増加させることによってそれらの電気化学セルのインピーダンスまたは内部抵抗を低下させることであった。
【0028】
1つの具体的な実施形態では、電気化学セル12のインピーダンスは、カソード26がヒートシンク付近のそれらの電気化学セル12の各ラミネート20の中の電解質24内に及びカソード26内にリチウム塩を添加することによって低減される。
【0029】
各構成要素であるラミネート20が、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1である電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1であるカソード26とから作製されているか、或いは、ポリマー/塩の比率がバンドルの他の電気化学セルのラミネートの電解質およびカソードよりも劣る約5:1である、電気化学セル12は、他の電気化学セルと同じ容量を有するが、より低温での放電モードにおいて、そのインピーダンスがより低いことに起因してより良好に機能し、この放電容量の上昇は、ヒートシンクの付近の電気化学セルが被る、より低い温度を補償することになる。
【0030】
したがって、本発明者らは、上方壁部34および下方壁部36のヒートシンク付近の、および/または内壁部40付近の電気化学セル12が、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1である電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1であるカソード26とから作製されたラミネート20を備える新たなバンドル構成を試験した。図3に戻ると、新たなバンドル38は、n個のラミネート20を有する1番から14番の電気化学セルで構成されて組み立てられたが、1番、2番、13番、および14番の電気化学セルは、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1である電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1であるカソード26とから作製されたラミネート20を備える。
【0031】
図7は、電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧を示すグラフである。このグラフは、1番から14番の電気化学セルの放電終止電圧のプロファイルが、図4のグラフのプロファイルと比較した場合に平坦化している点と、1番、2番、13番、および14番の電気化学セルが、3番から12番の電気化学セルとほぼ同時に放電終止電圧に達していることとを示し、これは、それらの電解質及びカソードにおける塩濃度の増加に起因するより低温での1番、2番、13番、および14番の電気化学セルの放電容量上昇が、ヒートシンクの付近の電気化学セルが被るより低い温度を補償していることを実証する。
図5に戻ると、同様に、2つの新たなバンドル38を構成し組み立てた。第1のバンドル38は、n個のラミネート20を有する1番から7番の電気化学セルで構成し組み立てられたが、1番、2番、6番、および7番の電気化学セルは、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1になっている電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1になっているカソード26とから作製されたラミネート20を備える。第2のバンドル38は、n個のラミネート20を有する8番から14番の電気化学セルで構成し組み立てられたが、8番、9番、13番、および14番の電気化学セルは、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1になっている電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1になっているカソード26とから作製されたラミネート20を備える。
図8は、電池の放電終止における1番から14番の各電気化学セルの電圧を示すグラフである。このグラフは、1番から7番および8番から14番の電気化学セルの放電終止電圧のプロファイルが、図6のグラフのプロファイルと比較した場合に平坦化している点と、ヒートシンク経路に隣接して位置決めされた電気化学セルの電解質及びカソードがそれぞれ、バンドルの他の電気化学セルのラミネートの電解質及びカソードよりも劣る約5:1のポリマー/塩の比率を有する1番、2番、6〜9番、13番、および14番の電気化学セルが、3番から12番の電気化学セルとほぼ同時に放電終止電圧に達していることとを示し、これは、それらの電解質及びカソードにおける塩濃度の増加に起因するヒートシンクの付近の電気化学セルのより低温での放電容量上昇が、それらの電気化学セルが被るより低い温度を補償していることを実証する。
【0032】
図9は、3個の筐体64、65、および66を画成する側壁部32、上方壁部34、下方壁部36、ならびに2個の内壁部62および63を有する剛体ケーシング30内に囲まれた3個のバンドル60を有する電池の別の実施形態を概略的に示す。筐体64内に配置された第1のバンドル60は、1番から6番の6個の電気化学セル12を備え、筐体65内に配置された第2のバンドル60は、7番から12番の6個の電気化学セル12を備え、筐体66内に配置された第3のバンドル60は、13番から18番の6個の電気化学セル12を備える。図3および図5を参照として説明した前述の実施形態におけるように、2個のバンドル60の各電気化学セル12は、同一個数のラミネート20および同一の容量を有する。
【0033】
図10は、電池の放電終止における1番から6番、7番から12番、および13番から18番の各電気化学セル12の電圧を示すグラフである。図14のグラフからは、1番、2番、5番から8番、11番から14番、17番、および18番の電気化学セルが、3〜4番、9〜10番、および15〜16番の電気化学セルよりも迅速に放電終止電圧に達していることを示すプロファイルが見て取れる。電池は、バンドル38の電気化学セル12の中の1つが放電終止電圧に到達すると、その電気化学セル12の過放電を防止するために放電終止電圧に達したため、電池は動作を停止し、一方で、その電気化学セル12の中の複数が依然として電圧放電動作ウィンドウ内にとどまった。やはり電池は、容量を残した状態で動作を事実上停止した。
図10のグラフからは、上方壁部34および下方壁部36によりならびに内壁部62および63により形成されたヒートシンクの付近に配置された電気化学セルが、それらのヒートシンクからさらに離れて配置された電気化学セルよりも迅速に放電終止電圧に達することが再び見て取れる。電気化学セル12の放電容量は、電気化学セル12の温度によるため、ヒートシンクの付近に配置された電気化学セルは、それらがヒートシンクの近傍に位置することにより動作温度にとどまることがより困難となり、したがってより低温となり、事実上、ヒートシンクからさらに離れて配置された電気化学セルよりも容量が小さいことが当然となる。
前述の同一の解決策が、この問題を緩和するために2つの内壁部62および63を有する剛体ケーシング30内に囲まれた3つのバンドル60を備える図9の電池の実施形態に対して適用される。本発明者らは、ヒートシンクの付近の電気化学セルが、より低温での放電容量が増加するラミネート20であって、それらのラミネート20の電解質24及びカソード26におけるリチウム塩濃度を増加させることによってインピーダンスまたは内部抵抗が低下したラミネート20で作製される、新たなバンドルアセンブリを考案した。
具体的には、ヒートシンクの付近に位置する1番、2番、5〜8番、11〜14番、17番、および18番の電気化学セルが、電解質24内のポリマー/リチウム塩の比率を30:1から25:1へと低減させると共にカソード26内のポリマー/リチウム塩の比率を35:1から30:1へと低減させるによって、ヒートシンクからさらに離れて配置された電気化学セルよりも低いインピーダンスを有するように構成されており、それによって、1番、2番、5〜8番、11〜14番、17番、および18番の電気化学セルの、より低温での放電容量を効果的に増大させると共に、それらの電気化学セルが被る熱損失を補償する。
【0034】
また、電池のケーシングの壁部により形成されたヒートシンクに隣接して配置された電気化学セルの時期尚早なサイクル終止の問題に対する同じ解決策が、複数の円筒状電気化学セルまたは複数の角柱状電気化学セルを有する電池に対して適用される。
【0035】
図11aおよび図11bを参照すると、剛体ケーシング54に挿入された円筒状電気化学セル52のアレイを備える電池50が示される。ヒートシンクとして機能する剛体ケーシング54の壁部に最も近いまたは隣接する電気化学セル52は、ヒートシンクから離れて配置された電気化学セル52が放電終止電圧に達する前に放電終止電圧に達する同じ問題を被る。電池50は、電気化学セル52の中の1つが放電終止電圧に達すると、放電終止電圧に達するため、電池50は動作を停止し、一方で、その電気化学セル52の中の複数が依然として電圧放電動作ウィンドウ内にとどまった。したがって、電池50は、容量を残した状態で動作を停止した。
【0036】
図12を参照すると、円筒状電気化学セル52は、複数回にわたりらせん状に巻かれた単一のラミネート20で構成されており、単一のラミネート20の長さが、らせん状ロール56の層数または巻き数を決定し、またこの層数または巻き数が、円筒状電気化学セル52の容量を決定する。したがって、剛体ケーシング54の壁部の付近にまたは隣接する電気化学セル52のインピーダンスまたは内部抵抗を低下させるために、電リチウム塩濃度が増加した電解質24及びカソード26で作製されたラミネート20を有する円筒状電気化学セル52を製造し、それによって、より低温での放電容量が増大した円筒状電気化学セル52を製造することが可能である。
前述したとおり、ラミネート20は、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1である電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1であるカソード26を備えるので、剛体ケーシング54の壁部のヒートシンクに隣接する電気化学セルの、より低温での放電容量を効果的に増大させると共に、それらの電気化学セルが被る熱損失を補償し、それらの放電終止電圧が、ヒートシンクから離れて配置された電気化学セル52がそれらの放電終止電圧に到達する前に到達するという課題を解決する。
【0037】
同様に、剛体ケーシングに挿入された複数の角柱状電気化学セルを備える電池が、同じ問題に直面し、ヒートシンクとして機能する剛体ケーシングの壁部に最も近いまたは隣接する角柱状電気化学セルは、ヒートシンクから離れて配置された電気化学セルが放電終止電圧に達する前に、放電終止電圧に達し、したがって電池は、電気化学セルの中の1つがその放電終止電圧に達すると、放電終止電圧に達することになる。電池は、動作を停止し、一方で、その角柱状電気化学セルの中の複数が依然として電圧放電動作ウィンドウ内にとどまる。したがって、角柱状電池は、容量を残した状態で動作を停止した。
【0038】
円筒状電気化学セル52を参照して説明したように、角柱状電気化学セルは、平らせん状ロールに複数回平巻きされた単一のラミネートからなり、単一のラミネートの長さが、平らせん状ロールの層数または巻き数を決定し、またこの層数または巻き数が、角柱状電気化学セルの容量を決定する。したがって、剛体ケーシングの壁部の付近にまたは隣接して角柱状電気化学セルのインピーダンスまたは内部抵抗を低下させるために、リチウム塩濃度が増加した電解質24及びカソード26で作製されたラミネート20を有する角柱状電気化学セルを製造し、それよって、より低温での放電容量が増大した角柱状電気化学セルを製造することが可能である。前述したように、ラミネート20は、ポリマー/リチウム塩の比率が30:1ではなくて25:1である電解質24と、ポリマー/リチウム塩の比率が35:1ではなくて30:1であるカソード26とを備えるので、ヒートシンクに隣接する電気化学セルの、より低温での放電容量を効果的に増大させると共に、それらの電気化学セルが被る熱損失を補償し、それらの放電終止電圧が、ヒートシンクから離れて配置された他の電気化学セルがそれらの放電終止電圧に到達する前に到達するという課題を解決する。
【0039】
同じ問題が、所定の温度しきい値未満に電気化学セルの温度を維持するために冷却システムを使用する電池にも当てはまる。ヒートシンクとして機能する冷却流体の経路に最も近くに配置された電気化学セルは、ヒートシンクから離れて配置された電気化学セルの前に放電終止電圧に達する。本発明の前述の実施形態を参照して説明したように、この問題は、冷却システムのヒートシンク経路に隣接して位置決めされる電気化学セルが、電気化学セルを構成するラミネート20の電解質24及びカソード26における塩濃度を増加させることによって、より低いインピーダンスを有するように、電池内の電気化学セルを再構成することによって解消される。
【0040】
本発明の上述の実施形態に対する修正および改良は、当業者には明らかであろう。前述の記載は、限定ではなく例示として意図される。したがって、本発明の範囲は、専ら添付の特許請求の範囲のみによって限定されるように意図される。
【符号の説明】
【0041】
10 リチウム金属ポリマー電池
12 電気化学セル
14 電池ポール
16 電子制御基板
20 ラミネート
22 アノード
24 電解質
26 カソード
30 剛体ケーシング
32 側壁部
34 上方壁部
36 下方壁部
37 筐体
38 バンドル、第1のバンドル、第2のバンドル
39 筐体
40 内壁部
42 圧力システム
43 プレート
50 電池
52 円筒状電気化学セル
54 剛体ケーシング
56 らせん状ロール
60 バンドル、第1のバンドル、第2のバンドル、第3のバンドル
62 内壁部
64 筐体
65 筐体
66 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12