特許第6861726号(P6861726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861726
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】糖尿病性腎症の治療薬または予防薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20210412BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61K31/427
   A61P3/10
   A61P13/12
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-553003(P2018-553003)
(86)(22)【出願日】2017年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2017042429
(87)【国際公開番号】WO2018097294
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-229972(P2016-229972)
(32)【優先日】2016年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】白倉 尚
(72)【発明者】
【氏名】辻本 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】壷阪 義記
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/119681(WO,A1)
【文献】 KOSUGI, Tomoki et al.,Effect of lowering uric acid on renal disease in type 2 diabetic db/db mice,Am. J. Physiol. Renal Physiol.,2009年 5月20日,Vol. 297, Issue 2,p. F481-F488,ISSN: 1931-857X
【文献】 LIU, Peng et al.,Allopurinol treatment improves renal function in patients with type2 diabetes and asymptomatic hyper,Clinical Endocrinology,2014年12月29日,Vol. 83, Issue 4,p. 475-482,ISSN: 1365-2265
【文献】 KOMERS, Radko et al.,Effects of xanthine oxidase inhibition with febuxostat on the development of nephropathy in experime,British Journal of Pharmacology,2016年 7月27日,Vol. 173, Issue 17,p. 2573-2588,ISSN: 1476-5381
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群から選択される化合物またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、II型糖尿病性腎症の治療薬または予防薬。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性腎症の治療薬または予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性腎症は糖尿病三大合併症の一つであり、その患者数は全世界で経年的に増加している。日本においても近年まで増加の一途をたどっており、新規人工透析導入のもっとも主要な原因疾患となっている。透析導入患者の予後は不良であり、糖尿病性腎症の進展を抑制するあるいは腎症を改善する治療法が求められている。糖尿病性腎症の治療は血糖値管理、食事制限および血圧管理が中心であり、糖尿病性腎症に対する効能を有する治療薬としてはレニンアンジオテンシン系の抑制薬の一部の薬剤が用いられているのみである。
糖尿病性腎症の臨床的な所見としては、慢性腎臓病一般にみられる糸球体ろ過量(GFR)の変化の他、アルブミン尿およびタンパク尿があり、日本の糖尿病性腎症の病気分類にも尿アルブミン値あるいはタンパク値、およびGFRが用いられている。
キサンチンオキシダーゼは核酸代謝においてヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への変換を触媒する酵素である。キサンチンオキシダーゼ阻害薬は、痛風および高尿酸血症の治療薬として臨床応用されている。かかるキサンチンオキシダーゼ阻害薬のうち、トピロキソスタット、アロプリノールおよびフェブキソスタットなどいくつかの化合物が、糖尿病性腎症に対して有効であるとされている(特許文献1、非特許文献1、2および3)。また、前記化合物の他に、キサンチンオキシダーゼ阻害薬として、アゾールベンゼン誘導体が知られている(特許文献2)。なお、高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義され、持続的に改善するためには6mg/dL、ときには5mg/dLまで低下させるべきであるとされている(非特許文献4、および5)。
糖尿病性腎症の一因として、糖尿病で血糖値が高い状態が長期間続くことで、全身の動脈硬化が進行し始め、毛細血管が集まっている腎臓の糸球体でも細かな血管が壊れ、毛細血管により構成されている網の目構造が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなることが知られている。キサンチンオキシダーゼ(XO)により産生される尿酸は、腎臓の尿細管障害を惹起することで腎障害を引き起こし、XO阻害剤は主に尿酸低下作用により尿細管障害を軽減することで糖尿病性腎症を改善する可能性が報告されている(非特許文献6、および7)。一方、糖尿病性腎症に特徴的であるアルブミン尿あるいはタンパク尿は腎臓の糸球体障害によっても惹起されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/060308
【特許文献2】WO2014/119681
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Iranian Journal of Kidney Disease 2010,4(2).pp128−132
【非特許文献2】Nephron Experimental Nephrology2012,121.pp109−121
【非特許文献3】American Journal of Nephrology2014,40.pp56−63
【非特許文献4】Arthritis Care & Reserach Vol.64,No.10,October 2012,pp1431−1446
【非特許文献5】Ann Rheum Dis 2016;0:1−14
【非特許文献6】American Journal of Physiology Renal Physiology:2009:297:pp.481−488
【非特許文献7】NephronExperimental Physiology:2012:121:pp.109−121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、新規な糖尿病性腎症の治療薬または予防薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは鋭意研究を行った結果、下記式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
で表される化合物、すなわち、3つの置換基を有するベンゼン構造であり、1位に2−チアゾール環を有し、3位に1,3−含窒素アゾール環を有するアゾールベンゼン誘導体が糖尿病性腎症の治療または予防に有用であることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] 式(I)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する糖尿病性腎症の治療薬または予防薬;
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、
は、OR、環を形成していてもよいNRR’、またはSRを表し、ここで、RおよびR’は独立して、水素原子、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
、X、およびXは、独立して、CRもしくは窒素原子であるか、またはXがCRもしくは窒素原子であり、XとXが一緒になってベンゼン環を形成する。ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。]
[2] RがORである、[1]に記載の治療薬または予防薬;
[3] RがSRである、[1]に記載の治療薬または予防薬;
[4] Rが、環を形成していてもよいNRR’である、[1]に記載の治療薬または予防薬;
[5] RおよびR’が、独立して、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基である、[1]〜[4]のいずれかに記載の治療薬または予防薬;
[6] RおよびR’が、独立して、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基である、[5]に記載の治療薬または予防薬;
[7] Rが、ORまたはSRであり、Rが、イソプロピル基、イソブチル基またはネオペンチル基である、[6]に記載の治療薬または予防薬;
[8] Rが、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である、[1]〜[7]のいずれかに記載の治療薬または予防薬;
[9] Rがメチル基である、[8]に記載の治療薬または予防薬;
[10] X、X、およびXが、独立して、CRまたは窒素原子である、[1]〜[9]のいずれかに記載の治療薬または予防薬;
[11] Xが窒素原子であり、XがCRまたは窒素原子であり、XがCRである、[10]に記載の治療薬または予防薬;
[12] Rが水素原子である、[1]〜[11]のいずれかに記載の治療薬または予防薬;
[13] 式(I)で表される化合物が、以下の群から選択される化合物またはその製薬学的に許容される塩である、[1]に記載の治療薬または予防薬;および
【0012】
【化3】
【0013】
[14] 糖尿病性腎症が、II型糖尿病性腎症である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の治療薬または予防薬;
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明で用いられる式(I)の化合物またはその製薬学的に許容される塩は、糖尿病性腎症の治療薬または予防薬として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で単独または組み合わせて用いられる用語を以下に説明する。特段の記載がない限り、各置換基の説明は、各部位において共通するものとする。なお、いずれかの変数が、任意の構成要素においてそれぞれ存在するとき、その定義はそれぞれの構成要素において独立している。また、置換基および変数の組み合わせは、そのような組み合わせが化学的に安定な化合物をもたらす限り許される。
【0016】
本発明において「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を意味する。
【0017】
本発明において「アルキル基」とは、1価の飽和の直鎖、環状または分岐状脂肪族炭化水素基を意味し、「炭素数1〜8のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、およびシクロヘプチルメチル基等が挙げられる。「炭素数1〜3のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0018】
本発明において「アルコキシ基」とは、1価の飽和の直鎖、環状または分岐状脂肪族炭化水素オキシ基を意味する。「炭素数1〜8のアルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキサオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオシキ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルメトキシ基、シクロブチルメトシキ基、シクロペンチルメトキシ基、およびシクロヘキシルメトキシ基等が挙げられる。
【0019】
本発明において「アリール基」とは、炭素数が6〜10個の単環性または二環性の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、およびアズレニル基等が挙げられる。
本発明において「ヘテロアリール基」とは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子より選択される1〜5個のヘテロ原子を有する単環性または二環性の芳香族複素環基を意味する。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピラニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基等が挙げられる。
【0020】
本発明において「置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基」とは、置換可能な位置に1または複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基の置換基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基が挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0021】
本発明において「置換されていてもよいアリール基」とは、置換可能な位置に1または複数の置換基を有していてもよいアリール基を意味する。アリール基の置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0022】
本発明において「置換されていてもよいヘテロアリール基」とは、置換可能な位置に1または複数の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を意味する。ヘテロアリール基の置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0023】
前記式(I)中、Rは、OR、環を形成していてもよいNRR’、またはSRを表す。ここで、R及びR’は独立して、水素原子、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、好ましくは、ORである。RがORまたはSRのとき、Rは、好ましくは、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基である。より好ましくは、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。特に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基である。Rが環を形成していてもよいNRR’において、「NRR’が環を形成する」とは、RおよびR’が、それらが結合する窒素原子と一緒になって含窒素飽和環を形成することをいう。Rが環を形成していてもよいNRR’のとき、RおよびR’は、独立して、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、RおよびR’が、独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基であるか、またはRおよびR’が、それらが結合する窒素原子と一緒になってピロリジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、モルホリン−1−イル基を形成する場合がより好ましい。
【0024】
前記式(I)中、Rは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。「炭素数1〜8のアルキル基」の具体例は、前記の定義の通りである。好ましくは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。より好ましくは、水素原子およびメチル基である。特に好ましくは、メチル基である。
【0025】
前記式(I)中、X、X、およびXは、独立して、CRもしくは窒素原子であるか、またはXがCRもしくは窒素原子であり、XとXが一緒になってベンゼン環を形成する。Rは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。XがCRもしくは窒素原子であり、XとXが一緒になってベンゼン環を形成する場合、以下の構造式で表すことができる。
【0026】
【化4】
【0027】
、X、およびXは、独立して、CRもしくは窒素原子であることが好ましい。より好ましくは、Xは窒素原子であり、XはCRもしくは窒素原子であり、XはCRである組み合わせである。いずれの組み合わせにおいても、Rは水素原子であることが好ましい。Xは窒素原子であり、XはCHもしくは窒素原子であり、XはCHである場合、以下の構造式で表すことができる。
【0028】
【化5】
【0029】
前記式(I)において、RがOR、環を形成していてもよいNRR’、またはSR、いずれの場合でも、好ましいR、R’、R、X、X、およびXの組み合わせは、それぞれについて上述した好ましい基同士を組み合わせたものであり、ここでRは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。かかる好ましいR、R’、R、X、X、およびXの組み合わせにおいて、Rが水素原子であることがより好ましい。
【0030】
より好ましいR、R’、R、X、X、およびXの組み合わせは、より好ましいとした基を組み合わせたものであり、ここでRは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。かかるより好ましいR、R’、R、X、X、およびXの組み合わせにおいて、Rが水素原子であることがより好ましい。
【0031】
さらに好ましいR、R’、R、X、X、およびXの組み合わせは、Rがイソプロピル基、イソブチル基またはネオペンチル基であり、Rがメチル基であり、Xは窒素原子であり、XはCRもしくは窒素原子であり、XはCRである組み合わせであり、ここで、Rは水素原子である。
【0032】
上述のR、R’、R、X、X、およびXの好ましい組み合わせ、より好ましい組み合わせ、およびさらに好ましい組み合わせのいずれについても、RがORであることが好ましい。
【0033】
本発明による式(I)における、R、R、R’、R、X、X、およびXの好ましい組み合わせの具体的なものとして、下記の組み合わせ1)〜9)を挙げることができる。
1)RがORであり;Rが、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であり;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
2)RがORであり;Rが1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
3)RがORであり;Rがイソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基であり;Rが水素原子およびメチル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
4)RがSRであり;Rが、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または1もしくは複数の炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であり;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
5)RがSRであり;Rが1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
6)RがSRであり;Rがイソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基であり;Rが水素原子およびメチル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
7)Rが環を形成していてもよいNRR’であり;RおよびR’は、独立して、1もしくは複数の炭素数1〜8のアルコキシ基もしくは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
8)Rが環を形成していてもよいNRR’であり;RおよびR’が、独立して、メチル基、エチル基もしくはイソプロピル基であるか、またはRおよびR’が、それらが結合する窒素原子と一緒になってピロリジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、モルホリン−1−イル基を形成し;Rが水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である;
9)Rが環を形成していてもよいNRR’であり;RおよびR’が、独立して、メチル基、エチル基もしくはイソプロピル基であるか、またはRおよびR’が、それらが結合する窒素原子と一緒になってピロリジン−1−イル基、ピぺリジン−1−イル基、モルホリン−1−イル基を形成し;Rが水素原子およびメチル基であり;Xが窒素原子であり;XがCRまたは窒素原子であり;XがCRであり:Rが水素原子である。
【0034】
本発明の化合物は優れたキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示す化合物である。また、本発明の化合物は、優れた尿酸低下作用を有する。さらに、本発明の化合物は、長時間にわたる持続的な尿酸低下作用を有する。
式(I)の具体的な化合物としては、WO2014/119681に記載の化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、以下の表に記載の化合物が挙げられる。
【0035】
【化6】
【0036】
本発明の式(I)の化合物は、WO2014/119681記載の方法など、公知の方法により製造することができる。前記式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物およびその製薬学的に許容される塩としては、製薬学的に許容される塩であれば特に限定されないが、かかる塩としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸などの無機酸との塩;マレイン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、安息香酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸などの有機酸との塩;グリシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸との塩;ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アルミニウム、亜鉛、鉄などの金属との塩;テトラメチルアンモニウム、コリンなどのような有機オニウムとの塩;アンモニア、プロパンジアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、エタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、4−ヒドロキシピペリジン、t−オクチルアミン、ジベンジルアミン、モルホリン、グルコサミン、フェニルグリシルアルキルエステル、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、グアニジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、ジエタノールアミン、N−ベンジルフェニルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
【0037】
さらに、式(I)で表される化合物およびその塩には、各種の水和物や溶媒和物が包含される。溶媒和物の溶媒としては、特に限定されないが、メタノ−ル、エタノ−ル、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノ−ル、t−ブタノ−ル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエ−テル、t−ブチルメチルエ−テル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
本発明の化合物には、式(I)で表される化合物およびその塩の立体異性体、ラセミ体、および可能なすべての光学活性体も含まれる。
【0038】
本発明において、式(I)で表される化合物、およびその製薬学的に許容される塩は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤として臨床で応用可能な糖尿病性腎症(「糖尿病性腎臓病」ともいう)の治療または予防のための医薬として使用することができる。また、本発明には、式(I)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を投与することによる、糖尿病性腎症の治療方法または予防方法も含まれる。具体的な糖尿病性腎症としてはI型およびII型糖尿病に起因する糖尿病性腎症であり、好ましくは、II型糖尿病に起因する糖尿病性腎症(「II型糖尿病性腎症」、「2型糖尿病における糖尿病性腎症」、または「2型糖尿病に伴う糖尿病性腎症」ともいう)である。また、式(I)で表される化合物、およびその製薬学的に許容される塩は、糸球体障害によって惹起される糖尿病性腎症に有用であることから、糖尿病性腎症の1つである糖尿病性糸球体硬化症にも有用であると考えられる。
【0039】
本発明において、「予防」とは、未だ罹患または発症をしていない個体において、罹患または発症を未然に防ぐことであり、「治療」とは既に罹患または発症した個体において、疾患や症状を治癒、抑制または改善させることをいう。
【0040】
前記式(I)で表される化合物、およびその製薬学的に許容される塩は、製薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに、医薬組成物とすることができる。この医薬組成物は種々の剤形に成形して、経口的または非経口的に投与することができる。非経口投与としては、例えば、静脈、皮下、筋肉、経皮、または直腸内への投与が挙げられる。
【0041】
本発明の式(I)で表される化合物またはその塩の1種または2種以上を有効成分として含有する製剤は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。製剤用の担体や賦形剤としては、固体または液体いずれでも良く、例えば乳糖、ステアリン酸マグネシウム、スターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用のものが挙げられる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0042】
本発明の式(I)で表される化合物、またはその製薬学的に許容される塩は、疾患の種類、投与経路、患者の症状、年齢、性別、体重等により異なるが、通常成人1日あたり、0.01〜1000mgの範囲で、1回または数回に分けて、投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。
【実施例】
【0043】
本発明を以下、具体的な実施例に基づいて説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(化合物1)の糖尿病性腎症に対する改善作用を確認する目的で、Zucker Diabetic Fatty(ZDF)ラット(日本チャールスリバー株式会社)を用いて、尿中アルブミン排泄量、および血中尿酸値、腎臓XO活性に対する効果を検討した。ZDFラットはII型糖尿病を発症し、糖尿病性腎症のモデルとして用いられている。
8週齢の雄性ZDFラットに化合物1(1および3mg/kg)を1日1回、13週間経口投与した(1および3mg/kg群)。対象群として、血糖値が正常なZDF−Leanラット(日本チャールスリバー株式会社)に溶媒である0.5%メチルセルロースを1日1回、13週間経口投与した群(Control群)及びZDFラットに溶媒を1日1回、13週間経口投与した群(Vehicle群)を設定した。投与開始から2週間に1回、投与12週まで24時間の蓄尿を行い、尿中アルブミン濃度および尿量を、レビス尿中アルブミン ラット(株式会社シバヤギ)を用い、自動分析装置Hitachi7180により測定した。測定した結果から尿中への1日アルブミン排泄量を算出した。投与開始後、各時点の尿中アルブミン排泄量および投与開始12週間後までの尿中アルブミン排泄量の累積量(AUC0−12wks)を算出し、薬剤の効果を検討した。また、投与開始から13週間投与を継続し、最終投与の24時間後)に採取した腎臓のXO活性および血漿中の尿酸濃度を測定した。
腎臓のXO活性は、pterinがキサンチンオキシドレダクターゼにより酸化された蛍光物質であるisoxanthopterinが生成される反応を用いて測定した。腎臓を組織濃度が5mg/mLとなるように、1mMEDTAおよびプロテアーゼ阻害剤を含んだpH7.4のリン酸カリウム溶液でホモジナイズし、4℃、12000rpmで15分遠心した。組織ホモジネートの上清を50μM pterinを含んだ溶液と混合し37℃で反応させた。コントロールとしてオキシダーゼ型キサンチンオキシドレダクターゼ(バターミルク由来、Calbiochem社製)と50μM pterinを含んだ溶液を同様の方法で反応させた。生成されたisoxanthopterinの蛍光強度を測定し、コントロールの酵素活性およびタンパク濃度で補正しXO活性として算出した。
血漿中尿酸値はLC−MS/MS法を用いて測定した。
血糖値が正常なControl群と比較して、II型糖尿病を発症するZDFラットに溶媒を投与したVehicle群では経時的に尿中アルブミン排泄量が増加した。これに対し、化合物1を投与した群では、1mg/kgおよび3mg/kgのいずれの用量でもVehicle群に比較して尿中アルブミン排泄量が有意に減少した(表1および表2)。
また、糖尿病を発症したZDFラットに溶媒を投与したVehicle群では正常動物であるControl群と比較して腎臓中XO活性が有意に高かった。腎臓中XOは糖尿病性腎症の病態に関与すると考えられる活性酸素種および尿酸を生成することから、ZDFラットの糖尿病性腎症の発症および進展に腎臓XO活性の亢進が関与していることが考えられる。これに対し、化合物1を投与した群では1mg/kgおよび3mg/kgの用量により、投与開始から13週間時点(最終投与24時間後)においてもVehicle群に比較して腎臓中XO活性が有意に阻害されていた(表3)。
一方、糖尿病を発症したZDFラットに溶媒を投与したVehicle群では正常動物であるControl群と比較して血漿中尿酸濃度は有意に低かった。これに対し、化合物1を投与した群では1mg/kgおよび3mg/kgのいずれの用量でもVehicle群に比較して血漿尿酸濃度が有意に低下していた(表4)。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
[実施例2]
II型糖尿病を発症し、糖尿病性腎症のモデル動物として知られるZDFラットを用い、化合物1の尿中アルブミン排泄量に対する作用のほか、糸球体障害および尿細管障害に対する作用を検討した。糸球体障害のマーカーとしてPodocalyxyn、尿細管障害マーカーとしてKidney Injury Marker−1(KIM−1)を、それぞれPodocalyxin rELISA Kit(EXOCELL社)およびRat TIM−1/KIM−1/HAVCR Qauntikine ELISA Kit(R&D Systems社)を用いた。
8週齢の雄性ZDFラットに化合物1(0.1、0.3および1mg/kg)を1日1回、12週間経口投与した。対照群として、ZDFラットに溶媒(0.5%メチルセルロース)を1日1回、12週間経口投与した群(Vehicle群)を設定した。投与12週時点で24時間の蓄尿を行い、尿中アルブミン濃度、尿中Podocalyxyn濃度、尿中KIM−1濃度および尿量を測定した。また、投与開始から13週間時点(最終投与24時間後)に採取した腎臓のXO活性を測定した。測定した結果から尿中への1日アルブミン、Podocalyxyn、KIM−1排泄量を算出し、各群の値を比較することで薬剤の効果を検討した。 検討の結果、化合物1を投与した群では、0.3mg/kgおよび1mg/kgの用量でVehicle群に比較して尿中アルブミン排泄量が減少した(表5)。また、化合物1を投与した群では、すでにXO阻害剤で改善作用が報告されている尿細管障害のマーカーであるKIM−1だけではなく糸球体障害のマーカーであるPodocalyxynも低下しており、化合物1は尿細管障害および糸球体障害両方を改善することが示された(表6および表7)。腎臓中XOは糖尿病性腎症の病態に関与すると考えられる活性酸素種および尿酸を生成するため、化合物1の糖尿病性腎症の治療効果を確認する目的で腎臓中XO活性を測定した。その結果、化合物1を投与した群では0.3mg/kgおよび1mg/kgの用量により、投与開始から13週間時点(最終投与24時間後)においてもVehicle群に比較して腎臓中XO活性が有意に阻害され(表8)、糖尿病性腎症の治療効果が示唆された。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0053】
式(I)で表される化合物、およびその製薬学的に許容される塩は、糖尿病性腎症の治療薬または予防薬として使用することができる。