(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861740
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】食薬用真菌を液体静置培養する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20210412BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20210412BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M3/00 Z
C12N1/14 B
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-565822(P2018-565822)
(86)(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公表番号】特表2020-500001(P2020-500001A)
(43)【公表日】2020年1月9日
(86)【国際出願番号】CN2017113782
(87)【国際公開番号】WO2019095437
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2019年2月13日
(31)【優先権主張番号】201711147462.6
(32)【優先日】2017年11月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518439974
【氏名又は名称】チアンナン ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ティン, チョンヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, モンモン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チオン
(72)【発明者】
【氏名】ルアン, ピン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, リーティン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, カオチアン
(72)【発明者】
【氏名】アイ, リエンチョン
(72)【発明者】
【氏名】クー, チョンホア
(72)【発明者】
【氏名】シー, コイヤン
【審査官】
福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第203015495(CN,U)
【文献】
特表2014−527808(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201106049(CN,Y)
【文献】
中国実用新案第202112072(CN,U)
【文献】
中国特許出願公開第1439711(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
C12N 1/00−15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食薬用真菌液体の培養装置であって、
インキュベータ、培養器ユニット、通風装置、温度と湿度制御装置を含み、
前記インキュベータ内に1個または複数の相対的に独立した培養器ユニットが設けられ、
前記培養器ユニットは、横断面が多辺形、円形または楕円形の立体的容器であり、通気口、入液口、排液口が開設され、
前記培養器ユニットは、取り外し可能式であり、培養器主体と上蓋板を含み、
上蓋板に二つのスルーホールが開き、培養器主体の底部に排液口が開き、上蓋板は、透明な材料を採用し、
前記培養器ユニット内にさらに菌体分画装置が設けられ、前記菌体分画装置は、菌糸体と培地を分離するために用いられるが菌体が培地の中から栄養成分を取得することに影響しないことを特徴とする、食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項2】
前記培養器ユニットがインキュベータに内蔵された仕切り板を介して固定され、前記仕切り板に培養器ユニットを固定するための部分が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項3】
前記培養器ユニットは、食品グレードの無菌袋であることを特徴とする、請求項1または2に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項4】
前記培養器主体の材質は、食品グレード、耐熱材料であることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項5】
培養器主体と上蓋板との間に密封性の高いシリコーンパッドが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項6】
前記菌体分画装置は、食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮であることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項7】
前記培養器ユニット内にさらに前記菌体分画装置を支持する支持装置が設けられ、前記支持装置が網であり、または少なくとも二個の交差しまたは交差しない支持バーであることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項8】
インキュベータ内にさらに紫外線消毒装置および/または照明装置が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項9】
さらに培養器ユニットを一定の幅内に揺れさせることができる揺動装置を含み、前記揺動装置は、動力源、伝動装置を含むことを特徴とする、請求項1に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項10】
前記インキュベータの底部に支持足が設けられ、前記支持足は、アーチ形であることを特徴とする、請求項1または2に記載の食薬用真菌液体の培養装置。
【請求項11】
食薬用真菌を培養するための培養器ユニットであって、
取り外し可能式であり、培養器主体と上蓋板を含み、上蓋板に二つのスルーホールが開き、培養器主体の底部に排液口が開き、
上蓋板は、透明な材料を採用し、培養器主体と上蓋板との間に密封装置が設けられ、
前記培養器ユニット内にさらに菌体分画装置が設けられ、前記菌体分画装置は、菌糸体と培地を分離するために用いられるが菌体が培地の中から栄養成分を取得することに影響しないことを特徴とする、食薬用真菌を培養するための培養器ユニット。
【請求項12】
前記培養器ユニット内にさらに前記菌体分画装置を支持する支持装置が設けられ、前記支持装置が網であり、または少なくとも二個の交差しまたは交差しない支持バーであることを特徴とする、請求項11に記載の食薬用真菌を培養するための培養器ユニット。
【請求項13】
(1)食薬用真菌ホモジェネートシード発酵液を用意するステップ、
(2)高温滅菌液体培地を用意するステップ、
(3)培養器ユニットの入液口を介して滅菌液体培地に加え、高温滅菌するステップ、
(4)無菌環境下で、食薬用真菌シード発酵液をアクセスし、培養器ユニットを仕切り板に放置し、適切な温度を制御し、発酵培養を行うステップ、
(5)培養が終了し、培養液を培養器ユニットの下の排液口から収集して使用に備え、培養器ユニットを開け、菌スライスを取り出し、乾燥させて使用に備えるステップ
を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の培養装置を応用して食薬用真菌を静置培養する方法。
【請求項14】
前記食薬用真菌は、霊芝、ベニクスノキタケ、冬虫夏草、ヤマブシタケ、カワラタケ、トレメラオーランティアなどを含むがそれらに限定されないことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
定期的に揺動装置を介してインキュベータを5〜15分、左右に揺らし、左右の揺れの角度が0度よりも大きくて3度を超えないことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
食薬用真菌成長のニーズに応じて暗黒または照射培養を行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食薬用真菌を液体静置培養する方法に関し、生物発酵技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
食薬用真菌の味は、美味しく、蛋白質、ビタミン、鉱物質元素などのたくさんの生物学的活性成分に富み、多い薬用価値および良好な保健機能を有し、大衆に深く好まれる。例えば:シイタケ、シロキクラゲ、霊芝、マイタケなどの食薬用真菌は、いずれも血中脂肪を効果的に低減させることができる;ヒメマツタケは、コレステロール、血圧を低減させることができる;ブクリョウ、キクラゲなどは、脳血栓を効果的に予防することができる;長期間にわかってヤマブシタケを食用すれば各種の胃病を効果的に予防することができる;冬虫夏草と北冬虫夏草は、がんを抵抗することができるだけでなく、さらに細菌と病原性真菌に対して抑制効果を有する。
【0003】
従来の食薬用真菌は、常に固体栽培方式を採用して培養し、このような培養方式下で、真菌の成長環境条件は、自然の状態に接近するが、固体栽培は、培養周期が長く、生産量が低く、代謝産物の生物学的活性が安定的でなく、細菌が感染しやすいなどの問題が存在する。相対的に言えば、液体発酵は、培養周期が短く、拡大培養しやすく、その製品が豊かである。多くの食薬用真菌、例えばベニクスノキタケ、コリビアマクラタなどは、人工固体栽培方式を採用して大規模な長時間培養を行いにくいが、液体発酵を経て大規模な長時間培養の目的を達成することができる。また、霊芝、マイタケ、ヒメマツタケなどの何十種の食薬用真菌は、さらに液体発酵培養を実現する。このため、液体を採用して食薬用真菌を培養することは傾向になっている。
【0004】
但し、従来の食薬用真菌を液体発酵培養することは、設備要求が高く、かつ、複雑である;かつ、菌体は、主に菌糸体の形式で成長し、発酵が終了する時に固液分離が複雑であり、かつ、相対的に困難である。食薬用真菌を液体静置培養することは、操作がシンプルで、菌体と発酵液を迅速に分離するように実現しやすいが、従来の複数の細胞培養装置は、欠陥が多かれ少なかれ存在し、各種の規模の培養ニーズを満たすことができずまたは迅速固液分離の目的を達成することができない。食薬用真菌の発酵過程において、酸素と栄養物は、菌糸の成長および二次代謝物の生産に対して重要な役割を有する。液体静置培養は効率的な生産方式であり、従来の培養方式と比べ、主な生物学的活性物質(多糖類、霊芝酸など)の生物合成は、液体静置培養方式下でより活発である。研究によると酸素が霊芝菌糸体発酵に影響する時、低い酸素濃度が総霊芝酸の生成に役立つことが発見される;霊芝菌糸体を用いて多糖類を発酵生産する時、栄養制限バーは多糖類の生産量を高めることができることが発見される。中国特許(CN200710030072.0)は、深層と浅層を静態結合して高繊維ナタデコを発酵する生産方法を開示し、高繊維ナタデコの浅層発酵周期を20%−40%短縮させ、かつ、設備の生産利用率を高めることができ、浅層発酵中の雑菌汚染を低減させることに役立ち、大規模な生産に応用すれば巨大な経済的利益を生じることができる。中国特許(CN201510646553.9)は、組み合わせ式液態発酵浅槽モジュールおよび該浅槽を用いる液態発酵装置であり、組み合わせ式液態発酵浅槽モジュールは以下を含む:母槽、子槽;該発明が提供する液態発酵浅槽装置は、操作が簡単で、糸状の真菌菌糸体の成長に役立ち、菌糸体の液態発酵過程における溶存酸素不足の問題を解決することができ、それと共に浅層培養の空間利用率を高め、生産効率を高めることができる。
【0005】
但し、以上の装置は、以下を実現することができない:(1)たくさんの食薬用真菌は、同時に大規模に培養し、装置を効率的に利用する;(2)分離培養し、汚染確率を大幅に下げる;(3)食薬用真菌の生物学的活性物質の含有量を増加させ、生物学的活性を増強する;(4)完全で徹底的な固液分離である。
【発明の概要】
【0006】
以上の技術的欠点を克服するために、本発明は、食薬用真菌を培養するための装置および該装置液体を応用して食薬用真菌を静置培養する方法を提供する。
【0007】
本発明が提供する食薬用真菌を液体静置培養するための装置は、インキュベータ、培養器ユニット、通風装置、温度と湿度制御装置を含む;前記インキュベータ内に1個または複数の相対的に独立した培養器ユニットが設けられる;前記培養器ユニットは、横断面の形状が多辺形、円形または楕円形の立体的容器であり、通気口、入液口、排液口が開設される。
【0008】
前記培養器ユニットがインキュベータに内蔵された仕切り板を介して固定されてもよい。前記仕切り板に培養器を固定するための部分が設けされる。前記インキュベータの材質は全体ステンレス、またはステンレス枠組みと透明なガラスの組み合わせであってもよい。前記仕切り板の材質はステンレスであってもよい。
【0009】
前記培養器ユニットの高さは一般的には20cmを超えず、例えば:6cmまたは10cmである。
【0010】
前記通風装置はインキュベータと周囲空気との交換を実現するために用いられる。前記通風装置は電磁弁により開閉を自動で制御することができる。
【0011】
前記温度と湿度制御装置は、温度センサーと除湿サーモスタットを含む。食薬用真菌の成長に必要とする温度を提供し、かつ、インキュベータ環境の乾燥を保持するために用いられる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記培養器ユニットは食品グレードの無菌袋である。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記培養器ユニットは、取り外し可能式であり、培養器主体と上蓋板を含む;上蓋板に二つのスルーホールが開き、培養器主体の底部に排液口が開き、上蓋板は、透明な材料を採用し、培養器主体の材質は、食品グレード、耐熱材料例えばPPSU(ポリフェニルスルホン)、PP(ポリプロピレン)またはステンレスである。培養器主体と上蓋板との間に密封性の高いシリコーンパッドが設けられてもよく、例えば食品グレードのポリテトラフルオロエチレン材質または食品グレードのシリコーンパッドである。前記培養器ユニット内にさらに菌体分画装置が設けられ、前記菌体分画装置は、菌糸体と培地を分離するために用いられるけれど菌体が培地の中から栄養成分を取得することに影響せず、食品グレードのフィルタ膜にであってもよく、例えば食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮である。前記培養器ユニット内にさらに前記菌体分画装置を支持する支持装置が設けられ、前記支持装置が網であり、または少なくとも二個の交差しまたは交差しない支持バーであってもよい。前記支持装置の材質はステンレス材質であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記培養器ユニットは円筒状、取り外し可能式であり、直径が50〜500mm前後であり、高度が60〜100mm前後である。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記食薬用真菌を培養するための装置は、さらに紫外線消毒装置を含む。前記紫外線消毒装置は紫外線ランプであってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記食薬用真菌を培養するための装置の内部にさらに照明装置が取り付けられる。前記照明装置はLEDランプであってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記食薬用真菌を培養するための装置は、さらに培養器ユニットを一定の幅内に揺れさせることができる揺動装置を含む;前記揺動装置は、動力源、伝動装置を含む;前記動力源は電動機であってもよく、前記伝動装置はギア伝動装置である。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記食薬用真菌を培養するための装置の底部に支持足を有し、前記支持足は、アーチ形である。前記食薬用真菌を培養するための装置に一定の力を加える時、インキュベータは軽い揺動運動をする。
【0019】
本発明は、さらに食薬用真菌を培養するための培養容器ユニットを提供し、取り外し可能式であり、培養器主体と上蓋板を含む;上蓋板に二つのスルーホールが開き、培養器主体の底部に排液口が開き、上蓋板は、透明な材料を採用し、培養器主体の材質は、食品グレード、耐熱材料例えばPPSU(ポリフェニルスルホン)、PP(ポリプロピレン)またはステンレスである。培養器主体と上蓋板との間に密封性の高いシリコーンパッドが設けられてもよく、例えば食品グレードのポリテトラフルオロエチレン材質または食品グレードのシリコーンパッドである。前記培養器ユニット内にさらに菌体分画装置が設けられ、前記菌体分画装置は、食品グレードのフィルタ膜にであってもよく、例えば食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮である。前記培養器ユニット内にさらに前記菌体分画装置を支持する支持装置が設けられ、前記支持装置が網であり、または少なくとも二個の交差しまたは交差しない支持バーであってもよい。前記支持装置の材質はステンレス材質であってもよい。
【0020】
本発明は、前記装置液体を応用して食薬用真菌を静置培養するステップは以下のとおりである:
(1)食薬用真菌ホモジェネートシード発酵液を用意する(発酵液はガラスビーズと回転子によってホモジェネート状態にばらばらにする);
(2)高温滅菌液体培地を用意する;
(3)高温滅菌培養容器ユニットを用意する;
(4)無菌環境下で、培養容器ユニットの入液口を介して滅菌液体培地に加え、食薬用真菌シード発酵液をアクセスし、培養容器ユニットを仕切り板に放置し、適切な温度を制御し、発酵培養を行う;
(5)菌株が無菌インキュベータの表面に生い茂る時、かつ、コロニーが完全で、菌糸体が繊細で、壮健で、色つやが良好であれば、即ち培養が終了し、培養液を培養容器ユニットの下の排液口から収集して使用に備え、培養容器ユニットを開け、菌スライスを取り出し、乾燥させて使用に備えることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記食薬用真菌は、霊芝、ベニクスノキタケ、冬虫夏草、ヤマブシタケ、カワラタケ、トレメラオーランティアなどを含むがそれらに限定されない。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記液体発酵培地は本分野に常用される液体培地である。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記接種は20mLごとの発酵液に0.5mLのホモジェネートシード発酵液を接種する。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記発酵は好気性発酵であり、発酵過程において外界と気体を交換する必要がある。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記発酵は液体静置発酵であるが、定期的に(12−48hごとに)揺動装置を介してインキュベータを5−15min左右揺れさせ、左右揺れの角度が0度よりも大きくて3度を超えない。
【0026】
本発明の一実施形態において、食薬用真菌成長のニーズに応じて暗黒または照射培養を行うことができる。
【0027】
有益な効果は以下のとおりである:
本発明が提供する食薬用真菌を培養するための装置は、以下の利点を有する:
(1)本発明が提供する装置は、成長酸素需要量が大きくないけれど剪断力に敏感な食薬用真菌の大規模培養および実験室規模培養に広く適用され、研究または実際の生産ニーズを満たす。使用者は、必要に応じ、培養器ユニットの数量を選択することができる。いずれの規模下で培養しても、各培養器ユニットは、終始単独した培養空間として、小さい規模培養から大きい規模培養までの過程は、新しい拡大培養の条件を探る必要がない。
(2)培養器ユニット内に菌体分画装置が設けられ、菌体が培地の中から栄養を取得することに影響せず、菌株の迅速成長を実現することができ、かつ、徹底的な固液分離を実現するように保証する。得られた菌糸体が純潔で、成長速度が速く、菌糸体は、さらにキノコ類の香りを有し、直接食用することができる。
(3)LEDランプ照明装置は、暗黒または照射培養を実現することができ、菌株を培養して生物活性と栄養価値を指向性に高めることができる。
(4)除湿サーモスタットと温度センサーは、食薬用真菌の成長に必要な温度を満たすことができ、その成長を加速することができる。
(5)大型コッレフラスコまたは相応の培養容器を利用し、培養面積を拡大し、生産量を高め、生産ニースに適応することができる。
(6)芽生え点が多く、菌糸カバー面が早いという利点を有する。
(7)本実用新案が提供する液体静置培養装置は、複数回重複して利用し、食薬用真菌を大規模に培養することができ、その低コスト、高い栄養価値、高い活性の食薬用真菌製品のニーズを実現することができ、それが食品、医薬、化粧品などの分野で広く応用するために基礎を提供する。
(8)一つ一つの独立した培養空間を設け、各独立した培養空間に異なる菌株を培養することができ、生産ニーズに応じてたくさんの食薬用真菌を培養し、装置の効率的な利用を実現することができる。
(9)菌体分画装置は食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮という耐熱で、通気性が高く、かつ、食用することができる材質を採用する時、菌体と膜を分離する必要がなく、共に乾燥して食用することができる。
【0028】
本発明が提供する食薬用真菌を培養する方法は、以下の利点を有する:
(1)得られた菌糸体が純潔で、成長速度が速く、菌糸体の生物量と活性物質の含有量は、いずれも高まり、生物量は、液体発酵より約60%を高め、細胞内多糖類は、約40−50%を高め、細胞外多糖類は、基本的に変化しない;
(2)菌糸体は、さらにキノコ類の香りを有し、直接食用することができる;
(3)流動が速く、増殖が急速で、菌糸カバー面が早いという利点を有する;
(4)発酵終了時の固液分離の操作ステップを減少し、工業生産時間を減少すると共に、コストを低減させる;
(5)生産過程は、高価の設備を必要とせず、生産設備集積装置は、場所を節約し、生産コストを節約する。
総じて言えば、本発明は、複数回重複して利用することができる無菌液体発酵装置を採用して大規模な食薬用真菌の液体静置培養を行い、その低コスト、高い栄養価値、高い活性の食薬用真菌製品のニーズを実現することができ、それが食品、医薬、化粧品などの分野で広く応用するために基礎を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態における食薬用真菌を培養するための装置の立面図である;
【
図2】
図2は本発明の一実施形態における食薬用真菌を培養するための装置の側面図である;
【
図3】
図3は本発明の一実施形態における食薬用真菌を培養するための装置の上面図である;
【
図4】
図4は本発明の一実施形態における培養器ユニットの立面図である;
【発明を実施するための形態】
【0030】
生物量の測定:菌糸スライスを取り出し、60℃で恒量に乾燥させる。
細胞外多糖類の測定:培養容器ユニットの排液口から一定の体積の培養液を収集し、4倍の体積の95%のアルコールを加えて一晩アルコールを沈殿し、遠心した後に上澄み液を除去し、75%のアルコールで洗浄して沈殿した後にさらに一定の体積の蒸留水で沈殿物を溶解し、フェノール−硫酸法を採用して細胞外多糖類を測定する。
【0031】
細胞内多糖類の測定:サンプルに得られた乾燥粉末約1gを正確に秤取し、三角フラスコに入れ、30mLの水を加え、90℃で1.5h水浴し、遠心し、沈殿して上のステップを二回重複し、遠心した後に得られた上澄み液を三回合併し、100mLに定容する。一定の体積の抽出液を取り、4倍の体積の95%のアルコールを加え、4℃の冷蔵庫で一晩静置沈殿し、遠心し、上澄み液を除去し、75%のアルコールで洗浄して沈殿した後にさらに蒸留水で沈殿物を溶解し、100mLに定容し、一定の体積を取って適切に希釈した後にフェノール−硫酸法を採用して細胞内多糖類を測定する。
【0032】
霊芝酸の測定:菌糸体粉末を秤取し、アルコールを加えて抽出する。遠心した後に上澄み液を取得し、真空で乾燥させてアルコールと水を除去する。水で残留物を溶解し、かつ、クロロホルムで分散後の水相を二回抽出してクロロホルム層を取り、5%の重曹水を加えた後に均一にかき混ぜ、かつ、抽出し、水層を取る。2Mの塩酸で水層のpHを3に調節し、クロロホルムを加えて霊芝酸を抽出する。クロロホルム相を取って真空で乾燥させた後、無水アルコールで溶解する。245mnで吸光値を測定し、続いて標準的曲線に従って対応する霊芝酸の含有量を計算する。
【0033】
コルジセピン、アデニンとアデノシンの測定:発酵が完了した発酵液4,000r/minを20min遠心し、上澄み液を収集し、かつ、一定の濃度に希釈し、0.45μmのフィルタ膜を経て濾過し、HPLCでコルジセピン、アデニンとアデノシンの含有量を検出する。HPLC検出クロマトグラム条件:クロマトグラフカラムは、逆相C18恵傑型高速液体クロマトグラフカラムを採用する(フィラー:hypersil ODS 5μm、カラムの長さが150mmで、管径が4.6mmである);流動相は、10mmol KH2PO4でありメタノール/再蒸留水(6:94)に溶解される;検出波長が254nmである;カラム温度が45℃である;流速が0.80mL/minである;サンプリング量が20μLである。
【0034】
実施例1
菌株:霊芝
液体シード培地(g・L−1):ジャガイモ200、ブドウ糖20、自然pH。
液体静置培地(g・L−1):ブドウ糖20、トリプトン5、YNB(無アミノ基イースト)5、KH
2PO
4 4.5,MgSO
4・7H
2O 2、pH 6.0。
【0035】
無菌培養容器の仕様:培養器ユニットが円柱体であり、半径が50mmであり、高さが60mmであり、菌体分画装置が容器内部に容器底部から25mmを離れる箇所にある。
【0036】
霊芝斜面保存菌株を80mLの液体シード培地が入った250mLの無菌三角フラスコにアクセスし、30℃で、150rpmで7日間培養し、即ちシード液となり、それを新しい回転子とガラスビースが置かれた250mLの無菌三角フラスコに移して粉砕してホモジェネートシード液を得る。培養容器ユニット内に230mLの液体静置培地を加え、液体ホモジェネートシード液5.75mLを接種し、恒温インキュベータに入れて30℃で培養し、24hごとに揺動装置を介してそれを10min左右揺れさせ、その左右揺れ各度が2度であり、6日間静置培養して終了する。培養容器ユニットの下方開口から培養液を収集し、菌体は、食用可能膜に残って菌スライスを形成する。
【0037】
培養結果は
図5に示すとおり、霊芝菌体の成長が急速で良好であり、菌株はインキュベータの表面に生い茂り、かつ、素地が均一であり、菌糸体が密集し、かつ、コロニーが完全であり、色つやが正常である。生物量、多糖類と霊芝酸の生産量は液体振盪発酵より明らかに高まり、培養が終了した後に菌体4.16g、発酵液約0.2Lを取得し、ここで活性物質霊芝酸の含有量は、3.72mg/100mg(乾燥重量)に達することができ、細胞外多糖類の含有量が0.53g/Lであり、細胞内多糖類の含有量が269.72mg/gである。
【0038】
対照実施例1
菌株:霊芝
液体シード培地(g・L−1):ジャガイモ200、ブドウ糖20、自然pH。
液体静置培地(g・L−1):ブドウ糖20、トリプトン5、YNB(無アミノ基イースト)5、KH
2PO
4 4.5,MgSO
4・7H
2O 2、pH 6.0。
【0039】
無菌培養容器の仕様:培養器ユニットが円柱体であり、半径が50mmであり、高さが60mmであり、菌体分画装置が容器内部に容器底部から25mmを離れる箇所にある。
【0040】
霊芝斜面保存菌株を80mLの液体シード培地が入った250mLの無菌三角フラスコにアクセスし、30℃で、150rpmで7日間培養し、即ちシード液となり、それを新しい回転子とガラスビースが置かれた250mLの無菌三角フラスコに移して粉砕してホモジェネートシード液を得る。培養容器ユニット内に230mLの液体静置培地を加え、液体ホモジェネートシード液5.75mLを接種し、恒温インキュベータに入れて30℃で培養し、6日間静置培養して終了する。
【0041】
培養結果は
図5に示すとおり、霊芝菌体の成長が急速で良好であり、菌株はインキュベータの表面に生い茂り、かつ、素地が均一であり、菌糸体が密集し、かつ、コロニーが完全であり、色つやが正常である。生物量、多糖類と霊芝酸の生産量は液体振盪発酵より明らかに高まり、培養が終了した後に菌体3.70g、発酵液約0.2Lを取得し、ここで活性物質霊芝酸の含有量は、2.63mg/100mg(乾燥重量)に達することができ、細胞外多糖類の含有量が0.52g/Lであり、細胞内多糖類の含有量が254.72mg/gである。
【0042】
実施例2
菌株:冬虫夏草
液体シード培地(g・L−1):ジャガイモ200、ブドウ糖20、pH自然。
液体静置培地(g・L−1):スクロース20、ペプトン20、KH
2PO
4 1、MgSO
4・7H
2O 0.5、pH自然。
【0043】
無菌培養容器の仕様:培養器ユニットが円柱体であり、半径が50mmであり、高さが60mmであり、菌体分画装置が容器内部に容器底部から25mmを離れる箇所にある。
【0044】
冬虫夏草斜面保存菌株を80mLの液体シード培地が入った250mLの無菌三角フラスコにアクセスし、25℃で、150rpmで5日間培養し、即ちシード液となり、それを新しい回転子とガラスビースが置かれた250mLの無菌三角フラスコに移して粉砕してホモジェネートシード液を得る。無菌円形培養容器内に230mLの液体静置培地を加え、液体ホモジェネートシード液5.75mLを接種し、恒温インキュベータに入れて25℃で照射培養し、48hごとに回転装置を介してそれを15min左右揺れさせ、その左右揺れ各度が3度であり、12日間静置培養して終了する。培養器の下方開口から培養液を収集し、菌体は、食用可能膜に残って菌スライスを形成する。
【0045】
培養結果は
図5に示すとおり、冬虫夏草菌体の成長が急速で良好であり、菌株はインキュベータの表面に生い茂り、かつ、素地が均一であり、菌糸体が密集し、かつ、コロニーが完全であり、色つやが正常である。培養が終了した後に菌体3.53g、発酵液約0.2Lを取得し、ここで活性物質コルジセピン、アデニンとアデノシンの含有量は、液体振盪発酵より明らかに高まり、コルジセピンの生産量が65mg/Lであり、アデニンの含有量が8mg/gであり、アデノシンの生産量が7mg/Lである。
【0046】
対照実施例2
菌株:冬虫夏草
液体シード培地(g・L−1):ジャガイモ200、ブドウ糖20、pH自然。
液体静置培地(g・L−1):スクロース20、ペプトン20、KH
2PO
4 1、MgSO
4・7H
2O 0.5、pH自然。
【0047】
無菌培養容器の仕様:培養器ユニットが円柱体であり、半径が50mmであり、高さが60mmであり、菌体分画装置が容器内部に容器底部から25mmを離れる箇所にある。
【0048】
冬虫夏草斜面保存菌株を80mLの液体シード培地が入った250mLの無菌三角フラスコにアクセスし、25℃で、150rpmで5日間培養し、即ちシード液となり、それを新しい回転子とガラスビースが置かれた250mLの無菌三角フラスコに移して粉砕してホモジェネートシード液を得る。無菌円形培養容器内に230mLの液体静置培地を加え、液体ホモジェネートシード液5.75mLを接種し、恒温インキュベータに入れて25℃で暗黒培養し、48hごとに回転装置を介してそれを15min左右揺れさせ、その左右揺れ各度が3度であり、12日間静置培養して終了する。培養器の下方開口から培養液を収集し、菌体は、食用可能膜に残って菌スライスを形成する。
【0049】
冬虫夏草菌体の成長が急速で良好であり、菌株はインキュベータの表面に生い茂り、かつ、素地が均一であり、菌糸体が密集し、かつ、コロニーが完全であり、色つやが正常である。培養が終了した後に菌体3.78g、発酵液約0.2Lを取得し、コルジセピンの生産量は、照射培養よりやや低下し、アデニンの生産量は、大幅に低下するが、アデノシンの含有量は、上昇し、コルジセピンの生産量は、58mg/Lに達し、アデニンの含有量は、3.5mg/gに達し、アデノシンの生産量は9.8mg/Lに達する。
【0050】
実施例3
菌株:霊芝
液体シード培地(g・L−1):ジャガイモ200、ブドウ糖20、自然pH。
【0051】
液体静置培地(g・L−1):ブドウ糖20、トリプトン20、YNB(無アミノ基イースト)5、KH
2PO
4 4.5,MgSO
4・7H
2O 2、pH6.0。
【0052】
無菌培養容器の仕様:培養器ユニットが長方体であり、取り外し可能式であり、長さと幅が200mmであり、高さが100mmであり、菌体分画装置が容器内部に容器底部から45mmを離れる箇所にある。
霊芝斜面保存菌株を80mLの液体シード培地が入った250mLの無菌三角フラスコにアクセスし、30℃で、150rpmで7日間培養し、即ちシード液となり、それを新しい回転子とガラスビースが置かれた250mLの無菌三角フラスコに移して粉砕してホモジェネートシード液を得る。培養容器ユニット内に2Lの液体静置培地を加え、液体ホモジェネートシード液50mLを接種し、恒温インキュベータに入れて30℃で培養し、12hごとに揺動装置を介してそれを8min左右揺れさせ、その左右揺れ各度が1度であり、8日間静置培養して終了する。培養容器ユニットの下方開口から培養液を収集し、菌体は、食用可能膜に残って菌スライスを形成する。
【0053】
霊芝菌体の成長が急速で良好であり、菌株はインキュベータの表面に生い茂り、かつ、素地が均一であり、菌糸体が密集し、かつ、コロニーが完全であり、色つやが正常である。培養が終了した後に菌体35.7g、発酵液約1.7Lを取得し、ここで活性物質霊芝は、3.85mg/100mg(乾燥重量)に達することができ、細胞外多糖類の含有量が0.61g/Lであり、細胞内多糖類の含有量が280.72mg/gである。
【0054】
実施例4
1〜4に示すとおりである:
前記食薬用真菌を培養するための装置は一個の長方体形インキュベータ1を含む。
【0055】
インキュベータ1の内部に複数の仕切り板17が設けられ、仕切り板17に培養器ユニット3が配置され、仕切り板の下方17にLEDランプが設けられる。
【0056】
インキュベータ1の最上部に排気管4が設けられ、排気管の4に電磁弁5が設けられ、インキュベータと周囲空気との交換を実現するために用いられる。
【0057】
インキュベータ1の底部外側に電源コネクタ8と電動機11が設けられ、電動機11に周波数変換器9、揺動コントローラ10が取り付けられ、インキュベータ1の揺動周波数と幅を制御するために用いることができ、電動機11が連結軸装置を介して(例えばジャンクションボックス)ギア伝動装置を連動して左右揺動させ、大ギアにリミットスイッチを有する。揺動周波数は菌株の異なりによって設け、揺動角度を3度を超えないように制御する。
【0058】
インキュベータ1の側壁に温度センサー6と除湿サーモスタット7が設けられ、インキュベータ1内の温度と湿度を制御するために用いられ、それを培養物の成長に適合させる。
【0059】
培養器ユニット3は取り外し可能式の円筒状であり、培養器主体と上蓋板を含む;上蓋板に入液口12、通気口13が開き、培養器主体の底部に排液口16が開く;上蓋板は、食品グレードの透明な材料を採用する;培養器主体と上蓋板との間に密封性の高いシリコーンパッドが設けられ、密封するために用いられる;培養器主体内に菌体分画装置−食用可能膜14が設けられ、培養器主体内にさらに前記食用可能膜膜14を支持するための支持装置15が設けられ、前記支持装置は孔径が2−3cmの薄いステンレスである。培養器ユニット3の底部の突出した排液口16は、仕切り板17の孔中に係止される。排液口16は、ゴム管などに接続して培養液を排出し、収集するために用いることができる。前記食用可能膜14は、さらに食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮に取り替えることができ、菌体を付着して成長させ、菌スライスを形成させ、菌体を食品グレードのコラーゲンタンパク質ソーセージの皮から分離する必要がない。
【0060】
前記装置を応用して食薬用真菌を培養する時、まず培養器主体中に配合された液体培地を加え、上蓋板を被せ、培養器ユニットを滅菌し、滅菌した後、培地の液面は、菌体分画装置の高さより0.1−0.5cmを超える。インキュベータに紫外線ランプが配置されると、紫外線ランプを開け、インキュベータの内部を一定の時間消毒する。続いて、無菌条件下で、培養対象となる食薬用真菌の種子を上蓋板上の入液口からアクセスし、菌体分画装置の上面に落下させる。適切な温度で食薬用真菌を培養し、定期的にインキュベータを揺動し、空気流通、酸素の溶解を促進する。照射を必要とする食薬用真菌に対し、インキュベータに内蔵されたLEDランプを開けて光源として、またはステンレス枠組みと透明なガラスを組み合わせるインキュベータを選択して自然光を利用することができる。培養が終了した後、発酵液を培養器主体の底部の排液口から収集し、一面に生い茂る菌スライスは、菌体分画装置から取り外すことができる。発酵液と菌スライスは、更なる加工を経て、対応する製品を取得することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:インキュベータ、2:培養器ユニット、3:LEDランプ、4:排気管、5:電磁弁、6:温度センサー、7:除湿サーモスタット、8:電源コネクタ、9:周波数変換器、10:揺動コントローラ、11:電動機、12:入液口、13:通気口、14:食用可能膜、15:支持装置、16:排液口、17:仕切り板。