(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリエステルが、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸またはこれらの混合物もしくはこれらのコポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載のマルチフィラメント繊維。
前記炭酸カルシウムが、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、修飾炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウムまたはこれらの混合物である、請求項1または2に記載のマルチフィラメント繊維。
前記炭酸カルシウムが、前記マルチフィラメント繊維中に、前記マルチフィラメント繊維の全重量に対して2から50重量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のマルチフィラメント繊維。
建設資材、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生製品、濾過材料、ホース、パワーベルト、ロープ、ネット、糸、タイヤコード、自動車内張り、帆、フロッピーディスクライナーまたはファイバーフィルから選択される、請求項7に記載の繊維製品。
ステップa)の前記混合物が、マスターバッチおよび追加のポリマーの混合物であり、前記マスターバッチがポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む、請求項9に記載の方法。
ポリエステルから成る少なくとも1つのポリマーを含むマルチフィラメント繊維中での充填剤としての炭酸カルシウムの使用であって、前記炭酸カルシウムが前記マルチフィラメント繊維中に、前記マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在し、
前記炭酸カルシウムが表面処理炭酸カルシウムであって、これのアクセス可能な表面積の少なくとも一部上に疎水性化剤を含む処理層を含む表面処理炭酸カルシウムであり、前記疎水性化剤が、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンド、ならびにこれらの混合物から成る群から選択される、使用。
建設資材、防水、断熱、防音、屋根ふき材、消費者向けアパレル、室内装飾材料および衣料品産業、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生用製品、濾過材料、農業用途、建設用途、地質工学用途、工業用途、医療用途、輸送、エコ技術用途、包装用途、人体保護、財産保護またはスポーツ用途での、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのマルチフィラメント繊維ならびに/もしくは請求項7または8に記載の繊維製品の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様により、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含むマルチフィラメント繊維であって、炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する、マルチフィラメント繊維が提供される。
【0017】
別の態様により、本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維を含む繊維製品が提供される。
【0018】
なお別の態様により、
a)ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む混合物を提供するステップ、
b)ステップa)の混合物を溶融させて、これを成形オリフィスに通過させて、マルチフィラメント繊維を形成するステップおよび
c)マルチフィラメント繊維を急冷するステップを含むマルチフィラメント繊維を製造する方法であって、
炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する方法が提供される。
【0019】
なお別の態様により、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含むマルチフィラメント繊維における充填剤としての炭酸カルシウムの使用であって、炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する使用が提供される。
【0020】
なお別の態様により、繊維製品を製造するための本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維の使用が提供される。
【0021】
なお別の態様により、建設資材、防水、断熱、防音、屋根ふき材、消費者向けアパレル、室内装飾材料および衣料品産業、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生用製品、濾過材料、農業用途、建設用途、地質工学用途、工業用途、医療用途、輸送、エコ技術用途、包装用途、人体保護、財産保護またはスポーツ用途における、本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維および/または本発明による繊維製品の使用が提供される。
【0022】
本発明の好都合な実施形態は該当する従属請求項に定義されている。
【0023】
本マルチフィラメント繊維の一実施形態により、ポリエステルは、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸またはこれらの混合物もしくはこれらのコポリマーから成る群から選択され、好ましくは、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである。
【0024】
本マルチフィラメント繊維の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、修飾炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウムまたはこれらの混合物であり、好ましくは表面処理炭酸カルシウムである。
【0025】
本マルチフィラメント繊維のまた別の実施形態により、炭酸カルシウムは、表面処理炭酸カルシウムであって、これのアクセス可能な表面積の少なくとも一部上に疎水性化剤を含む処理層を含む表面処理炭酸カルシウムであり、好ましくは、疎水性化剤は、C
4からC
24の炭素原子の全量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこれの反応生成物、置換基中に少なくともC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る1置換コハク酸無水物および/またはこれの反応生成物、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンド、ならびにこれらの混合物から成る群から選択され、より好ましくは、疎水性化剤は、置換基中に少なくともC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る1置換コハク酸無水物および/もしくはこれの反応生成物ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンドである。
【0026】
本マルチフィラメント繊維の一実施形態により、炭酸カルシウムは、0.1から3μm、好ましくは0.4から2.5μm、より好ましくは1.0から2.3μmおよび最も好ましくは1.2から2.0μmの重量中央粒径d
50を有する。
【0027】
本マルチフィラメント繊維の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して2から50重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは8から35重量%および最も好ましくは10重量%から30重量%の量で存在する。
【0028】
マルチフィラメント繊維のまた別の実施形態により、マルチフィラメント繊維は、0.5から4000dtex、好ましくは1から3000dtex、より好ましくは10から2000dtexおよび最も好ましくは100から1500dtexの線質量密度を有する。
【0029】
本繊維製品の一実施形態により、前記物品は、建設資材、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生製品、濾過材料、ホース、パワーベルト、ロープ、ネット、糸、タイヤコード、自動車内張り、帆、フロッピーディスクライナーまたはファイバーフィルから選択される。
【0030】
マルチフィラメント繊維を製造する本方法の一実施形態により、ステップa)の混合物は、マスターバッチおよび追加のポリマーの混合物であり、マスターバッチは、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含み、好ましくはマスターバッチにおいて、炭酸カルシウムは、マスターバッチの全重量に対して10から85重量%、好ましくは20から80重量%、より好ましくは30から75重量%および最も好ましくは40重量%から75重量%の量で存在する。
【0031】
本方法の別の実施形態により、方法は、マルチフィラメント繊維を延伸するステップd)をさらに含む。
【0032】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである:
本発明の文脈で使用する場合、「結晶化度」という用語は、ポリマー中の秩序化分子の割合を示す。残りの割合は、「アモルファス」と呼ばれる。ポリマーは、溶融物からの冷却時、機械的伸張時にまたは溶媒蒸発時に結晶化し得る。結晶化範囲は一般に、アモルファス範囲よりもより高密度に充填され、結晶化はポリマーの光学特性、機械的特性、熱特性および化学的特性に影響を及ぼし得る。結晶化度はパーセントで規定され、示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。
【0033】
本発明の目的のために、「dtex」という用語は、繊維の線質量密度を示し、10000メートル当たりのグラムでの質量として定義する。
【0034】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然源、例えば石灰石、大理石、ドロマイトまたはチョークから得られ、湿式および/または乾式処理、例えば粉砕、ふるい分けおよび/分画により、例えばサイクロンまたは分級機によって加工された炭酸カルシウムである。
【0035】
用語「固有粘度」は、本発明の文脈で使用する場合、溶解したポリマーが溶液の粘度を向上させる能力の尺度であり、dl/gによって規定される。
【0036】
本発明の意味における「修飾炭酸カルシウム」(MCC)は、内部構造修飾または表面反応生成物を有する天然粉砕または沈降炭酸カルシウム、即ち「表面反応炭酸カルシウム」を特徴とし得る。「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムおよび表面上の不溶性の、好ましくは少なくとも部分的に結晶性の酸のアニオンのカルシウム塩を含む材料である。好ましくは、不溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から延在している。前記アニオンの前記少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、大部分は出発炭酸カルシウム材料から生じる。MCCは、例えばUS 2012/0031576A1、WO 2009/074492A1、EP 2264109A1、EP 2070991A1または2264108A1に記載されている。
【0037】
本発明の意味における「繊維」は、高い縦断面積比および糸様形態を有する長く細い連続物質である。本発明の意味における「フィラメント」は、非常に大きい長さの、連続的と見なされる繊維である。本発明の意味における「マルチフィラメント繊維」は、2つ以上のフィラメントで構成されている繊維である。好ましくは、マルチフィラメント繊維はマルチフィラメントヤーンである。
【0038】
本明細書で使用する場合、「繊維製品」という用語は、層状化、プレーティング、ブレーディング、ノッティング、製織、製編、かぎ針編みまたはタフティングなどの方法によって製造された製品を示す。本発明の目的のために、「織布」という用語は、製織によって製造された繊維製品を示し、「不織布」という用語は、繊維、フィラメントまたはフィルム様フィラメント構造体の層または網目をからみ合せることによって製造された平坦な可撓性多孔質シート構造体を示す。
【0039】
本文書を通じて、炭酸カルシウム充填剤の「粒径」は、粒径の分布によって説明される。値d
xは、粒子のx重量%が有するd
x未満の粒径に対する粒径を表す。このことは、d
20値は全粒子の20重量%がこれより小さい粒径であり、d
98値は全粒子の98重量%がこれより小さい粒径であることを意味する。d
98値は、「トップカット」とも呼ぶ。d
50値はこのため重量中央粒径であり、即ちすべての粒子の50重量%がこの粒径より大きいまたは小さい。本発明の目的のために、別途指摘しない限り、粒径は重量中央粒径d
50として規定する。重量中央粒径d
50値またはトップカット粒径d
98値を測定するために、米国、マイクロメリティックス社(Micromeritics)のセディグラフ5100または5120装置を使用することができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は一般に、ホモポリマーおよびコポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーならびにこれのブレンドおよび修飾物を含む。
【0041】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境における二酸化炭素とカルシウムヒドロキシド(水和石灰)との反応後の沈降によってまたは水中でのカルシウム源およびカーボネート源の沈降によって得られる合成材料である。さらに、沈降炭酸カルシウムは、水性環境への例えばカルシウム塩およびカーボネート塩、カルシウムクロリドおよびナトリウムカーボネートの導入の生成物であることもできる。PCCは、ファーテライト、カルサイトまたはアラゴナイトであってよい。PCCは、例えばEP 2447213A1、EP 2,524,898A1、EP 2371766A1または未公開の欧州特許出願第12164041.1号に記載されている。
【0042】
本発明の意味において、「表面処理炭酸カルシウム」は、処理層またはコーティング層、例えば疎水性化剤、脂肪酸、界面活性剤、シロキサンまたはポリマーの層を含む粉砕、沈降または修飾炭酸カルシウムである。
【0043】
「含む(comprising)」という用語を本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、これは他の要素を排除しない。本発明の目的のために、「より成る(consisting of」という用語は、用語「より構成される(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下で群が少なくとも幾つかの実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみから成る群を開示すると理解されるものとする。
【0044】
単数名詞を参照するとき、不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」を使用する場合ほかの明確な規定がない限り、その名詞の複数が含まれる。
【0045】
「得られる」または「定義できる」および「得られた」または「定義した」などの用語は、同義で使用される。このことは例えば、文脈上明確に別に指示されない限り、「得られた」という用語は、例えば「得られた」という用語に続く一連のステップによって得られなければならないということを示すものではないということを意味するが、このような限定された理解は、「得られた」または「定義された」という用語によって、好ましい実施形態として常に含まれる。
【0046】
本発明のマルチフィラメント繊維は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む。炭酸カルシウムは、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する。以下では、本発明の製品の詳細事項および好ましい実施形態をより詳細に述べる。これらの技術的詳細事項および実施形態は、本発明の前記マルチフィラメント繊維を製造する方法ならびに本発明のマルチフィラメント繊維および炭酸カルシウムの使用にも適用されることを理解すべきである。
【0047】
少なくとも1つのポリマー
本発明のマルチフィラメント繊維は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含む。
【0048】
ポリエステルは、これの主鎖中にエステル官能基を含有し、一般に重縮合反応によって得られるポリマーのクラスである。ポリエステルとしては、クチンなどの天然型ポリマーならびにカーボネートまたはポリブチレートなどの合成ポリマーが挙げられ得る。これらの構造に応じて、ポリエステルは生分解性であり得る。本発明の意味の範囲内で「生分解性」という用語は、細菌または他の生物の助けによって破壊または分解できるため、環境汚染を回避することができる、物質または物体に関する。
【0049】
一実施形態により、ポリエステルは、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸またはこれらの混合物もしくはこれらのコポリマーから成る群から選択される。これらのポリマーのいずれも、純粋な形態、即ちホモポリマーの形態であり得るか、または共重合によっておよび/または主鎖もしくは主鎖の側鎖への1つ以上の置換基の付加によって修飾され得る。
【0050】
本発明の一実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、ポリエステルから成る。ポリエステルは、1つの特定の種類のポリエステルのみから、または1種類以上のポリエステルの混合物から成り得る。
【0051】
少なくとも1つのポリマーは、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%および最も好ましくは少なくとも90重量%の量で存在することができる。一実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、不織布中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して、50から98重量%、好ましくは60から95重量%、より好ましくは65から92重量%、最も好ましくは(most preferable)70から90重量%の量で存在する。
【0052】
一実施形態により、ポリエステルは、0.2から2dl/g、好ましくは0.3から1.5dl/gおよびより好ましくは0.4から1dl/g、例えば0.4から0.7dl/gまたは0.7から1dl/gの固有粘度、IVを有する。
【0053】
一実施形態により、ポリエステルは、テレフタル酸またはこれのポリエステル形成誘導体の1つおよびジオールの重縮合から得られる。テレフタル酸の好適なポリエステル形成誘導体は、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジプロピルテレフタレート、ジブチルテレフタレートまたはこれらの混合物である。好適なジオールの例は、アルカンジオール、例えば炭素鎖中に2から12個の炭素原子を有するアルカンジオール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオールまたはこれらの混合物である。
【0054】
一実施形態により、ポリエステルはポリアルキレンテレフタレートである。
【0055】
ポリアルキレンテレフタレート中のテレフタル酸またはこれのポリエステル形成誘導体の1つの一部を、他のジカルボン酸によって置き換えることができる。好適なジカルボン酸の例は、イソフタル酸、フタル酸、
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸またはデカンジカルボン酸である。一実施形態により、最大5mol%、好ましくは最大10mol%、より好ましくは最大20mol%および最も好ましくは最大30mol%の、ポリアルキレンテレフタレート中のテレフタル酸またはこれのポリエステル形成誘導体の1つが他のジカルボン酸によって置き換えられる。
【0056】
ポリアルキレンテレフタレート中のアルカンジオールの一部を、他のジオールによって置き換えることができる。好適な他のジオールの例は、ネオペンチルグリコール、1,4−または1,3−ジメチロールシクロヘキサンである。一実施形態により、最大5mol%、好ましくは最大10mol%、より好ましくは最大20mol%および最も好ましくは最大30mol%の、ポリアルキレンテレフタレート中のアルカンジオールが他のジオールによって置き換えられる。
【0057】
本発明により、ポリアルキレンテレフタレートは、未修飾および修飾テレフタレートを含む。ポリアルキレンテレフタレートは、直鎖ポリマー、分枝ポリマーまたは架橋ポリマーであってよい。例えばグリセロールを二酸またはこれの無水物と反応させる場合、各グリセロール単位は分枝点を生成する。例えば同じまたは異なる分子のヒドロキシル基と分枝からの酸官能基との反応により内部カップリングが発生すると、ポリマーが架橋されるようになる。場合により、ポリアルキレンテレフタレートを好ましくはC
1−C
10アルキル基、ヒドロキシル基および/またはアミン基によって置換できる。一実施形態により、ポリアルキレンテレフタレートは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシル基および/またはアミン基によって置換される。
【0058】
本発明の好ましい実施形態により、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである。
【0059】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は縮合ポリマーであり、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートのどちらかとエチレングリコールとの縮合物を形成することによって工業的に製造され得る。同様に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートのどちらかをブチレングリコールと縮合することによって得ることができる。
【0060】
PETは、ジエチルテレフタレートモノマーおよびエチレングリコールモノマーを用いるエステル交換またはテレフタル酸モノマーおよびエチレングリコールモノマーを用いることによる直接エステル化によって重合され得る。エステル交換法および直接エステル化法はどちらも、重縮合法とバッチ式でまたは連続的に組み合わされる。バッチ式システムには2個の反応容器が必要であり、1個はエステル化またはエステル交換用、1個は重合用である。連続システムは、少なくとも3個の容器が必要であり、1個はエステル化またはエステル交換用であり、もう1個は過剰なグリコールを低減するためであり、また別の1個は重合用である。
【0061】
または、PETは、固相重縮合によって製造され得る。例えばこのような方法では、溶融重縮合をプレポリマーが1.0−1.4dl/gの固有粘度を有するまで継続し、この時点でポリマーをキャストして固体フィルムとする。プレ結晶化は、ポリマーの所望の分子量が得られるまで、例えば200℃超で加熱することによって行う。
【0062】
一実施形態により、PETは、連続重合法、バッチ式重合法または固相重合法から得られる。PBTは、PETについて記載したのと同じ方法で得られ得る。
【0063】
本発明により、「ポリエチレンテレフタレート」または「ポリブチレンテレフタレート」という用語は、未修飾および修飾ポリエチレンまたはポリブチレンテレフタレートをそれぞれ含む。ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートは、直鎖ポリマー、分枝ポリマーまたは架橋ポリマーであってよい。例えばグリセロールを二酸またはこれの無水物と反応させる場合、各グリセロールは分枝点を生成する。例えば同じまたは異なる分子のヒドロキシル基と分枝からの酸官能基との反応により内部カップリングが発生すると、ポリマーが架橋されるようになる。場合により、ポリエチレンテレフタレートを好ましくはC
1−C
10アルキル基、ヒドロキシル基および/またはアミン基によって置換できる。一実施形態により、ポリエチレンテレフタレートは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシル基および/またはアミン基によって置換される。ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートは、例えばシクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸との共重合によって修飾することもできる。
【0064】
PETおよび/またはPBTは、これの加工および熱履歴に応じて、アモルファスポリマーおよび半結晶性ポリマーの両方として、即ち結晶性部分およびアモルファス部分を含むポリマーとして存在し得る。半結晶性材料は、これの結晶構造および粒径に応じて透明または半透明および白色に見えることがある。
【0065】
一実施形態により、PETおよび/またはPBTはアモルファスである。別の実施形態により、PETおよび/またはPBTは半結晶性であり、好ましくはPETおよび/またはPBTは、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%および最も好ましくは少なくとも50%の結晶化度を有する。なお別の実施形態により、PETおよび/またはPBTは、10から80%、より好ましくは20から70%および最も好ましくは30から60%の結晶化度を有する。結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)で測定され得る。
【0066】
本発明の一実施形態により、PETおよび/またはPBTは、0.2から2dl/g、好ましくは0.3から1.5dl/gおよびより好ましくは0.4から1dl/g、例えば0.4から0.7dl/gまたは0.7から1dl/gの固有粘度、IVを有する。
【0067】
本発明の別の実施形態により、PETおよび/またはPBTは、50から200℃、好ましくは60から180℃およびより好ましくは70から170℃のガラス転移温度T
gを有する。
【0068】
本発明の一実施形態により、PETおよび/またはPBTは、5000から100000g/mol、好ましくは10000から50000g/molおよびより好ましくは15000から20000g/molの数平均分子量を有する。
【0069】
ポリエステルは、バージンポリマー、リサイクルポリマーまたはこれらの混合物であってよい。リサイクルポリエチレンテレフタレートは、消費後のPETボトル、プリフォームPETスクラップ、復元PETまたは再生PETから得てよい。
【0070】
一実施形態により、ポリエステルは、ポリエステルの全重量に対して、10重量%、好ましくは25重量%、より好ましくは50重量%および最も好ましくは75重量%のリサイクルポリエステルを含む。
【0071】
一実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、ポリエチレンテレフタレートから成る。PETは、1つの特定の種類のPETのみまたは2種類以上のPETの混合物から成り得る。別の実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、ポリブチレンテレフタレートから成る。PBTは、1つの特定の種類のPBTのみからまたは2種類以上のPBTの混合物から成り得る。なお別の実施形態により、少なくとも1つのポリマーはPETおよびPBTの混合物から成り、PETは、1つの特定の種類のPETのみまたは2種類以上のPETから成り得て、PBTは、1つの特定の種類のPBTのみまたは2種類以上のPBTから成り得る。
【0072】
一実施形態により、少なくとも1つのポリマーはさらなるポリマー、好ましくはポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリベンゾイミダゾールまたはこれらの混合物またはこれらのコポリマーを含む。このようなポリマーの例は、ポリヘキサメチレンジアジポアミド、ポリカプロラクタム、芳香族または部分芳香族ポリアミド(「アラミド」)、ナイロン、ポリプロピレンスルフィド(PPS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンゾイミダゾールまたはレーヨンである。
【0073】
一実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つのポリマーの全量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%および最も好ましくは少なくとも95重量%のポリエステルを含む。別の実施形態により、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つのポリマーの全量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%および最も好ましくは少なくとも95重量%のPETおよび/またはPBTを含む。
【0074】
少なくとも1つの充填剤
本発明により、マルチフィラメント繊維は、炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む。少なくとも1つの充填剤は、少なくとも1つのポリマー内に分散させた。
【0075】
ポリエステル系マルチフィラメント繊維中での炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤の使用は、従来のマルチフィラメント繊維と比較してある利点を有する。例えばマルチフィラメント繊維の疎水性特性および親水性特性は、適切な炭酸カルシウム充填剤を使用することによって、所期の用途に適合させることができる。さらに、炭酸カルシウム充填剤の使用により、マルチフィラメント繊維の品質に著しく影響を及ぼさずに、マルチフィラメント繊維の製造におけるポリエステルの低減が可能となる。さらに本発明者らは、驚くべきことに、炭酸カルシウムを充填剤としてPETなどのポリエステルに添加する場合、ポリマーは、ポリマーのより高い冷却速度を生じる、より高い熱伝導率を示すことを見出した。さらに、いずれの理論にも拘束されることなく、炭酸カルシウムは、PETの核化剤として作用し、このためPETの結晶化温度を上昇させると考えられる。結果として、結晶化速度が上昇し、これにより例えば溶融加工中のサイクリング時間を短縮できる。本発明者らは、炭酸カルシウム充填剤を含むポリエステルから製造されたマルチフィラメント繊維から製造された繊維製品が、ポリエステルのみから作られたマルチフィラメント繊維を含む繊維製品と比較して、機械的強度の改善、熱伝導率および不透明度の上昇を示すことも見出した。
【0076】
一実施形態により、炭酸カルシウムは粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、修飾炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウムまたはこれらの混合物である。一実施形態により、炭酸カルシウムは粉砕炭酸カルシウムである。別の実施形態により、炭酸カルシウムは表面処理炭酸カルシウムである。
【0077】
粉砕(または天然)炭酸カルシウム(GCC)は、石灰石もしくはチョークなどの堆積岩からまたは変成大理石岩から採掘される炭酸カルシウムの天然形態であると理解される。炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイトおよびファーテライトの3種類の結晶多形として存在することが知られている。最も一般的な結晶多形であるカルサイトは、炭酸カルシウムの最も安定な結晶形態であると考えられる。あまり一般的でないのはアラゴナイトであり、アラゴナイトは離散したまたはクラスター化した針状斜方晶系結晶構造を有する。ファーテライトは、最も稀な炭酸カルシウム多形であり、一般に不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、ほぼ例外なくカルサイト多形であり、カルサイト多形は三方菱面体と言われ、最も安定な炭酸カルシウム多形となる。炭酸カルシウム「源」という用語は、本出願の意味において、炭酸カルシウムが得られる天然型鉱物材料を示す。炭酸カルシウム源は、炭酸マグネシウム、アルミノシリケートなどの天然型構成成分をさらに含み得る。
【0078】
本発明の一実施形態により、粉砕炭酸カルシウム(GCC)源は、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石またはこれらの混合物から選択される。好ましくは、粉砕炭酸カルシウム源は大理石から選択される。本発明の一実施形態により、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態により、GCCは湿式粉砕、場合により後続の乾燥によって得られる。
【0079】
本発明の意味における「ドロマイト」は、CaMg(CO
3)
2(「CaCO
3・MgCO
3」)の化学組成を有する炭酸系(carbonatic)カルシウム−マグネシウム鉱物である。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの全重量に対して少なくとも30.0重量%のMgCO
3、好ましくは35.0重量%を超える、より好ましくは40.0重量%を超えるMgCO
3を含有する。
【0080】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムおよびカーボネートイオン源の沈降によって、またはカルシウムイオンとカーボネートイオン、例えばCaCl
2とNa
2CO
3との溶液からの沈降によって一般に得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる考えられる方法は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイトおよびファーテライトの3種類の主な結晶形態として存在し、これらの結晶形態それぞれについて多くの異なる多形(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六方晶柱状、卓面体晶系、コロイド晶系(C−PCC)、立方晶系および柱状(P−PCC)などの代表的晶癖を有する、三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、六方晶柱状系双晶、ならびに薄い細長柱状、湾曲ブレード状、鋭利な角錐状、チゼル形状結晶、分枝樹およびサンゴまたはワーム様形状の多様な組合せの代表的晶癖を有する斜方晶系構造である。ファーテライトは六方晶結晶系に属する。得られたPCCスラリは、機械的に脱水および乾燥することができる。
【0081】
本発明の一実施形態により、炭酸カルシウムは1つの沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態により、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態および異なる多形から選択される2つ以上の沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの沈降炭酸カルシウムは、S−PCCから選択される1つのPCCおよびR−PCCから選択される1つのPCCを含み得る。
【0082】
修飾炭酸カルシウムは、内部構造修飾を有するGCCもしくはPCCまたは表面反応GCCもしくはPCCを特徴とし得る。表面反応炭酸カルシウムは、水性懸濁物の形態のGCCまたはPCCを提供し、前記懸濁物に酸を添加することによって調製され得る。好適な酸は、例えば硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸またはこれらの混合物である。次のステップにおいて、炭酸カルシウムをガス状二酸化炭素によって処理する。硫酸または塩酸などの強酸を酸処理ステップで使用する場合、二酸化炭素がその場で自動的に生成する。代替的にもしくはさらに、二酸化炭素を外部源から供給することができる。表面反応炭酸カルシウムは、例えばUS 2012/0031576A1、WO 2009/074492A1、EP 2264109A1、EP 2070991A1またはEP 2264108A1に記載されている。
【0083】
一実施形態により、修飾炭酸カルシウムは、好ましくは硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸またはこれらの混合物および二酸化炭素との反応から得られた表面反応炭酸カルシウムである。
【0084】
表面処理炭酸カルシウムは、処理層またはコーティング層をこれの表面に含むGCC、PCCまたはMCCを特徴とし得る。例えば炭酸カルシウムは、疎水化表面処理剤、例えば脂肪族カルボキル酸、これの塩およびエステルまたはシロキサンによって処理またはコーティングされ得る。好適な脂肪族酸は、例えばC
4からC
28脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸またはこれらの混合物である。炭酸カルシウムはまた、例えばポリアクリレートまたはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(polyDADMAC)によって、カチオン性またはアニオン性となるように処理またはコーティングしてもよい。表面処理炭酸カルシウムは、例えばEP 2159258A1に記載されている。
【0085】
一実施形態により、表面処理炭酸カルシウムは、これのアクセス可能な面積の少なくとも一部上に、疎水性化剤を含む処理層を含む。
【0086】
一実施形態において、疎水性化剤は、C
4からC
24の炭素原子の全量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこれの反応生成物である。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面積の少なくとも一部は、C
4からC
24の炭素原子の全量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこれの反応生成物を含む処理層によって被覆される。材料の「アクセス可能な」表面積という用語は、水溶液、懸濁物、分散物または反応性分子、例えば疎水性化剤の液相と接触している材料表面の一部を示す。
【0087】
本発明の意味における脂肪族カルボン酸の「反応生成物」という用語は、少なくとも1つの炭酸カルシウムを少なくとも1つの脂肪族カルボン酸と接触させることによって得られる生成物を示す。前記反応生成物は、適用された少なくとも1つの脂肪族カルボン酸の少なくとも一部と炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間で形成される。
【0088】
本発明の意味における脂肪族カルボン酸は、1つ以上の直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または脂環式カルボン酸から選択され得る。好ましくは、脂肪族カルボン酸はモノカルボン酸であり、即ち脂肪族カルボン酸は、1個のカルボキシル基が存在することを特徴とする。前記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置されている。
【0089】
本発明の一実施形態において、脂肪族カルボン酸は飽和非分枝カルボン酸から選択され、即ち脂肪族カルボン酸は、好ましくはペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸およびこれらの混合物から成るカルボン酸の群から選択される。
【0090】
本発明の別の実施形態において、脂肪族カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびこれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの混合物から成る群から選択される。例えば、脂肪族カルボン酸はステアリン酸である。
【0091】
加えてもしくは代替的に、疎水性化剤は、置換基中にC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る少なくとも1つの1置換コハク酸無水物であることができる。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面積の少なくとも一部は、置換基中にC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る少なくとも1つの1置換コハク酸無水物および/またはこれの反応生成物を含む処理層によって被覆される。分枝基は、置換基および/またはこれの反応生成物中にC
3からC
30の炭素原子の全量を含み得る。環式基は、置換基および/またはこれの反応生成物中にC
5からC
30の炭素原子の全量を含み得る。
【0092】
本発明の意味における1置換コハク酸無水物の「反応生成物」という用語は、炭酸カルシウムを少なくとも1つの1置換コハク酸無水物と接触させることによって得られる生成物を示す。前記反応生成物は、適用された少なくとも1つの1置換コハク酸無水物の少なくとも一部と炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間で形成される。
【0093】
例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、置換基中にC
2からC
30、好ましくはC
3からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する直鎖アルキル基または置換基中にC
3からC
30、好ましくはC
3からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する分枝アルキル基またはC
5からC
30、好ましくはC
5からC
20および最も好ましくはC
5からC
18の炭素原子の全量を有する環式基である1個の基によって1置換されたコハク酸無水物から成る。
【0094】
例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、置換基中にC
2からC
30、好ましくはC
3からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する直鎖アルキル基である1個の基によって1置換されたコハク酸無水物から成る。加えてもしくはまたは、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、置換基中にC
3からC
30、好ましくはC
3からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する分枝アルキル基である1個の基によって1置換されたコハク酸無水物から成る。
【0095】
本発明の意味における「アルキル」という用語は、炭素および水素で構成される直鎖または分枝飽和有機化合物を示す。即ち、「アルキル1置換コハク酸無水物」は、ペンダントコハク酸無水物基を含有する直鎖または分枝飽和炭化水素鎖で構成されている。
【0096】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、少なくとも1つの直鎖または分枝アルキル1置換コハク酸無水物である。例えば、少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、エチルコハク酸無水物、プロピルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、トリイソブチルコハク酸無水物、ペンチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0097】
例えば「ブチルコハク酸無水物」という用語が直鎖および分枝ブチルコハク酸無水物を含むことが認識される。直鎖ブチルコハク酸無水物の具体的な一例は、n−ブチルコハク酸無水物である。分枝ブチルコハク酸無水物の具体例は、イソブチルコハク酸無水物、sec−ブチルコハク酸無水物および/またはtert−ブチルコハク酸無水物である。
【0098】
さらに、例えば「ヘキサデカニルコハク酸無水物」という用語が直鎖および分枝ヘキサデカニルコハク酸無水物を含むことが認識される。直鎖ヘキサデカニルコハク酸無水物の具体的な一例は、n−ヘキサデカニルコハク酸無水物である。分枝ヘキサデカニルコハク酸無水物の具体例は、14−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、13−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、12−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、11−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、10−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、9−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、8−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、7−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、6−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、5−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、4−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、3−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、2−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、
1−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、13−エチルブタデカニルコハク酸無水物、12−エチルブタデカニルコハク酸無水物、11−エチルブタデカニルコハク酸無水物、10−エチルブタデカニルコハク酸無水物、9−エチルブタデカニルコハク酸無水物、8−エチルブタデカニルコハク酸無水物、7−エチルブタデカニルコハク酸無水物、6−エチルブタデカニルコハク酸無水物、5−エチルブタデカニルコハク酸無水物、4−エチルブタデカニルコハク酸無水物、3−エチルブタデカニルコハク酸無水物、2−エチルブタデカニルコハク酸無水物、1−エチルブタデカニルコハク酸無水物、2−ブチルドデカニルコハク酸無水物、1−ヘキシルデカニルコハク酸無水物、
1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸無水物、2−ヘキシルデカニルコハク酸無水物、6,12−ジメチルブタデカニルコハク酸無水物、2,2−ジエチルドデカニルコハク酸無水物、4,8,12−トリメチルトリデカニルコハク酸無水物、2,2,4,6,8−ペンタメチルウンデカニルコハク酸無水物、2−エチル−4−メチル−2−(2−メチルペンチル)−ヘプチルコハク酸無水物および/または2−エチル−4,6−ジメチル−2−プロピルノニルコハク酸無水物である。
【0099】
さらに、例えば「オクタデカニルコハク酸無水物」という用語が直鎖および分枝オクタデカニルコハク酸無水物を含むことが認識される。直鎖オクタデカニルコハク酸無水物の具体的な一例は、n−オクタデカニルコハク酸無水物である。分枝ヘキサデカニルコハク酸無水物の具体例は、16−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、15−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、14−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、13−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、12−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、11−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、10−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、9−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、8−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、7−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、
6−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、5−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、4−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、3−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、2−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、1−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、14−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、13−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、12−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、11−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、10−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、9−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、8−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、7−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、
6−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、5−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、4−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、3−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、2−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、1−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、2−ヘキシルドデカニルコハク酸無水物、2−ヘプチルウンデカニルコハク酸無水物、イソオクタデカニルコハク酸無水物および/または1−オクチル−2−デカニルコハク酸無水物である。
【0100】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0101】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、1種類のアルキル1置換コハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物である。または、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ヘキシルコハク酸無水物である。または、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ヘプチルコハク酸無水物またはオクチルコハク酸無水物である。または、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ヘキサデカニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、直鎖ヘキサデカニルコハク酸無水物、例えばn−ヘキサデカニルコハク酸無水物または分枝ヘキサデカニルコハク酸無水物、例えば1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸無水物である。または、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、オクタデカニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、直鎖オクタデカニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデカニルコハク酸無水物または分枝オクタデカニルコハク酸無水物、例えばイソオクタデカニルコハク酸無水物もしくは1−オクチル−2−デカニルコハク酸無水物である。
【0102】
本発明の一実施形態において、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物、例えばn−ブチルコハク酸無水物である。
【0103】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、2種類以上のアルキル1置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、2または3種類のアルキル1置換コハク酸無水物の混合物である。
【0104】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、置換基中にC
2からC
30、好ましくはC
3からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する直鎖アルケニル基または置換基中にC
3からC
30、好ましくはC
4からC
20および最も好ましくはC
4からC
18の炭素原子の全量を有する分枝アルケニル基である1個の基によって1置換されたコハク酸無水物から成る。
【0105】
本発明の意味における「アルケニル」という用語は、炭素および水素で構成される直鎖または分枝不飽和有機化合物を示す。前記有機化合物は、置換基中に少なくとも1個の二重結合、好ましくは1個の二重結合をさらに含有する。即ち、「アルケニル1置換コハク酸無水物」は、ペンダントコハク酸無水物基を含有する直鎖または分枝不飽和炭化水素鎖で構成されている。本発明の意味における「アルケニル」という用語がシスおよびトランス異性体を含むことが認識される。
【0106】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、少なくとも1つの直鎖または分枝アルケニル1置換コハク酸無水物である。例えば、少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、エチニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、トリイソブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0107】
従って、例えば「ヘキサデセニルコハク酸無水物」という用語が直鎖および分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物を含むことが認識される。直鎖ヘキサデセニルコハク酸無水物の具体的な一例は、n−ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えば14−ヘキサデセニルコハク酸無水物、13−ヘキサデセニルコハク酸無水物、12−ヘキサデセニルコハク酸無水物、11−ヘキサデセニルコハク酸無水物、10−ヘキサデセニルコハク酸無水物、9−ヘキサデセニルコハク酸無水物、8−ヘキサデセニルコハク酸無水物、7−ヘキサデセニルコハク酸無水物、6−ヘキサデセニルコハク酸無水物、5−ヘキサデセニルコハク酸無水物、4−ヘキサデセニルコハク酸無水物、3−ヘキサデセニルコハク酸無水物および/または2−ヘキサデセニルコハク酸無水物である。分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物の具体例は、14−メチル−9−ペンタデセニルコハク酸無水物、14−メチル−2−ペンタデセニルコハク酸無水物、1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物および/またはイソヘキサデセニルコハク酸無水物である。
【0108】
さらに、例えば「オクタデセニルコハク酸無水物」という用語が直鎖および分枝オクタデセニルコハク酸無水物を含むことが認識される。直鎖オクタデセニルコハク酸無水物の具体的な一例は、n−オクタデセニルコハク酸無水物、例えば16−オクタデセニルコハク酸無水物、15−オクタデセニルコハク酸無水物、14−オクタデセニルコハク酸無水物、13−オクタデセニルコハク酸無水物、12−オクタデセニルコハク酸無水物、11−オクタデセニルコハク酸無水物、10−オクタデセニルコハク酸無水物、9−オクタデセニルコハク酸無水物、8−オクタデセニルコハク酸無水物、7−オクタデセニルコハク酸無水物、6−オクタデセニルコハク酸無水物、5−オクタデセニルコハク酸無水物、4−オクタデセニルコハク酸無水物、3−オクタデセニルコハク酸無水物および/または2−オクタデセニルコハク酸無水物である。分枝オクタデセニルコハク酸無水物の具体例は、16−メチル−9−ヘプタデセニルコハク酸無水物、16−メチル−7−ヘプタデセニルコハク酸無水物、1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物および/またはイソオクタデセニルコハク酸無水物である。
【0109】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、ヘキセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0110】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物である。例えば、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、ヘキセニルコハク酸無水物である。または、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、オクテニルコハク酸無水物である。または、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、ヘキサデセニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、直鎖ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えばn−ヘキサデセニルコハク酸無水物または分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えば1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物である。または、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、オクタデセニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル1置換コハク酸無水物は、直鎖オクタデセニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデセニルコハク酸無水物または分枝オクタデセニルコハク酸無水物、例えば(such)イソオクタデセニルコハク酸無水物または1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物である。
【0111】
本発明の一実施形態において、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、直鎖オクタデセニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデセニルコハク酸無水物である。本発明の別の実施形態において、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物は、直鎖オクテニルコハク酸無水物、例えばn−オクテニルコハク酸無水物である。
【0112】
少なくとも1つの1置換コハク酸無水物が1つのアルケニル1置換コハク酸無水物である場合、1つのアルケニル1置換コハク酸無水物が、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物の全重量に対して95重量%以下および好ましく96.5重量%以下の量で存在することが認識される。
【0113】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、2種類以上のアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、2または3種類のアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である。
【0114】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、直鎖ヘキサデセニルコハク酸無水物および直鎖オクタデセニルコハク酸無水物を含む、2種類以上のアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物および分枝オクタデセニルコハク酸無水物を含む、2種類以上のアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、1つ以上のヘキサデセニルコハク酸無水物は、n−ヘキサデセニルコハク酸無水物などの直鎖ヘキサデセニルコハク酸無水物および/または1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物などの分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物である。加えてもしくはまたは、1つ以上のオクタデセニルコハク酸無水物は、n−オクタデセニルコハク酸無水物などの直鎖オクタデセニルコハク酸無水物ならびに/またはイソオクタデセニルコハク酸無水物および/もしくは1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物などの分枝オクタデセニルコハク酸無水物である。
【0115】
少なくとも1つの1置換コハク酸無水物が少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物であり得ることも認識される。
【0116】
少なくとも1つの1置換コハク酸無水物が少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である場合、少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物のアルキル置換基および少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物のアルケニル置換基が好ましくは同じであることが認識される。例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、エチルコハク酸無水物およびエチニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、プロピルコハク酸無水物およびプロペニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物およびブテニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、トリイソブチルコハク酸無水物およびトリイソブテニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ペンチルコハク酸無水物およびペンテニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ヘキシルコハク酸無水物およびヘキセニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ヘプチルコハク酸無水物およびヘプテニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、オクチルコハク酸無水物およびオクテニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ノニルコハク酸無水物およびノネニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、デシルコハク酸無水物およびデセニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ドデシルコハク酸無水物およびドデセニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ヘキサデカニルコハク酸無水物およびヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、直鎖ヘキサデカニルコハク酸無水物および直鎖ヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物または分枝ヘキサデカニルコハク酸無水物および分枝ヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物である。または、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、オクタデカニルコハク酸無水物およびオクタデセニルコハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、直鎖オクタデカニルコハク酸無水物および直鎖オクタデセニルコハク酸無水物の混合物または分枝オクタデカニルコハク酸無水物および分枝オクタデセニルコハク酸無水物の混合物である。
【0117】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの1置換コハク酸無水物は、ノニルコハク酸無水物およびノネニルコハク酸無水物の混合物である。
【0118】
少なくとも1つの1置換コハク酸無水物が少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物の混合物である場合、少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物と少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物との間の重量比は、90:10から10:90(重量%/重量%)の間である。例えば、少なくとも1つのアルキル1置換コハク酸無水物と少なくとも1つのアルケニル1置換コハク酸無水物との間の重量比は、70:30から30:70(重量%/重量%)の間または60:40から40:60の間である。
【0119】
加えてもしくはまたは、疎水性化剤はリン酸エステルブレンドであり得る。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面積の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む処理層によって被覆されている。
【0120】
本発明の意味におけるリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルとの「反応生成物」という用語は、炭酸カルシウムを少なくとも1つのリン酸エステルブレンドと接触させることによって得られた生成物を示す。前記反応生成物は、適用されたリン酸エステルブレンドの少なくとも一部と炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間で形成される。
【0121】
本発明の意味における「リン酸モノエステル」という用語は、アルコール置換基中にC
6からC
30、好ましくはC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1個のアルコール分子によってモノエステル化されたo−リン酸分子を示す。
【0122】
本発明の意味における「リン酸ジエステル」という用語は、アルコール置換基中にC
6からC
30、好ましくはC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する同じまたは異なる、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2個のアルコール分子によってジエステル化されたo−リン酸分子を示す。
【0123】
「1つ以上の」リン酸モノエステルという表現は、1種類以上のリン酸モノエステルがリン酸エステルブレンド中に存在し得ることを意味することが認識される。
【0124】
従って、1つ以上のリン酸モノエステルが1種類のリン酸モノエステルであり得ることに留意されたい。または、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類以上のリン酸モノエステルの混合物であり得る。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類のリン酸モノエステルなどの、2または3種類のリン酸モノエステルの混合物であり得る。
【0125】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC
6からC
30の炭素原子の全量を有する、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1つのアルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1つのアルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。
【0126】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0127】
例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルである。
【0128】
「1つ以上の」リン酸ジエステルという表現は、1種類以上のリン酸ジエステルが炭酸カルシウムおよび/またはリン酸エステルブレンドのコーティング層中に存在し得ることを意味することが認識される。
【0129】
従って、1つ以上のリン酸ジエステルが1種類以上のリン酸ジエステルであり得ることに留意されたい。または、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類以上のリン酸ジエステルの混合物であり得る。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類のリン酸ジエステルなどの、2または3種類のリン酸ジエステルの混合物であり得る。
【0130】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC
6からC
30の炭素原子の全量を有する、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2つのアルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2つの脂肪族アルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。
【0131】
リン酸のエステル化に使用される2つのアルコールが、アルコール置換基中にC
6からC
30の炭素原子の全量を有する、同じまたは異なる、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから独立して選択され得ることが認識される。即ち、1つ以上のリン酸ジエステルが同じアルコールに由来する2個の置換基を含み得るか、またはリン酸ジエステル分子が異なるアルコールに由来する2個の置換基を含み得る。
【0132】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC
6からC
30、好ましくはC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する同じまたは異なる、飽和および直鎖および脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。または、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC
6からC
30、好ましくはC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する同じまたは異なる、飽和および分枝および脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールによってエステル化されたo−リン酸分子から成る。
【0133】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0134】
例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルである。
【0135】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択され、ならびに1つ以上のリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0136】
例えば、炭酸カルシウムのアクセス可能な表面積の少なくとも一部は、1つのリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物ならびに1つのリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。この場合、1つのリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステルおよび2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、1つのリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステルおよび2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0137】
リン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物を、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物に対する特定のモル比で含む。特に、処理層および/またはリン酸エステルブレンド中の、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物の、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはこれの反応生成物に対するモル比は、1:1から1:100、好ましくは1:1.1から1:60、より好ましくは1:1.1から1:40、またより好ましくは1:1.1から1:20および最も好ましくは1:1.1から1:10である。
【0138】
本発明の意味における「1つ以上のリン酸モノエステルおよびこれの反応生成物の、1つ以上のリン酸ジエステルおよびこれの反応生成物に対するモル比」という表現は、リン酸ジエステル分子の分子量の和および/またはこれの反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の和に対する、リン酸モノエステル分子の分子量の和および/またはこれの反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の和を示す。
【0139】
本発明の一実施形態において、炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部を被覆したリン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸トリエステルおよび/もしくはリン酸ならびに/またはこれの反応生成物をさらに含み得る。
【0140】
本発明の意味における「リン酸トリエステル」という用語は、アルコール置換基中にC
6からC
30、好ましくはC
8からC
22、より好ましくはC
8からC
20および最も好ましくはC
8からC
18の炭素原子の全量を有する同じまたは異なる、不飽和または飽和、分枝または直鎖、脂肪族または芳香族アルコールから選択される3個のアルコール分子によってトリエステル化されたo−リン酸分子を示す。
【0141】
「1つ以上の」リン酸トリエステルという表現は、1種類以上のリン酸トリエステルが炭酸カルシウムのアクセス可能な表面積の少なくとも一部に存在し得ることを意味することが認識される。
【0142】
従って、1つ以上のリン酸トリエステルが1種類以上のリン酸トリエステルであり得ることに留意されたい。または、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類以上のリン酸トリエステルの混合物であり得る。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類のリン酸トリエステルなどの、2または3種類のリン酸トリエステルの混合物であり得る。
【0143】
一実施形態により、表面処理炭酸カルシウムは、これのアクセス可能な表面積の少なくとも一部上に疎水性化剤を含む処理層を含み、好ましくは、疎水性化剤は、C
4からC
24の炭素原子の全量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこれの反応生成物、置換基中に少なくともC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る1置換コハク酸無水物および/またはこれの反応生成物、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンド、ならびにこれらの混合物から成る群から選択され、より好ましくは、疎水性化剤は、置換基中に少なくともC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る1置換コハク酸無水物および/もしくはこれの反応生成物ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンドである。
【0144】
一実施形態により、炭酸カルシウムは、0.1から3μm、好ましくは0.4から2.5μm、より好ましくは1.0から2.3μmおよび最も好ましくは1.2から2μmの重量中央粒径d
50を有する。加えてもしくはまたは、炭酸カルシウムは、1から10μm、好ましくは5から8μm、より好ましくは4から7μmおよび最も好ましくは6から7μmのトップカット粒径d
98を有する。
【0145】
本発明により、炭酸カルシウムは、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する。炭酸カルシウムは、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して2から50重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは8から35重量%および最も好ましくは10%から30重量%の量で存在する。一実施形態により、炭酸カルシウムは、少なくとも1つのポリマー中に分散され、少なくとも1つのポリマーの全重量に対して、2から50重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは8から35重量%および最も好ましくは10から30重量%の量で存在する。
【0146】
一実施形態により、少なくとも1つの充填剤は炭酸カルシウムから成る。炭酸カルシウムは、1つの特定の種類の炭酸カルシウムのみまたは2種類以上の炭酸カルシウムの混合物から成り得る。
【0147】
別の実施形態により、少なくとも1つの充填剤はさらなる鉱物顔料を含む。さらなる顔料粒子の例としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、粘土、焼成粘土、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、珪灰石、マイカ、ベントナイト、硫酸バリウム、石膏または酸化亜鉛が挙げられる。
【0148】
一実施形態により、少なくとも1つの充填剤は、少なくとも1つの充填剤の全量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%および最も好ましくは少なくとも95重量%の炭酸カルシウムを含む。
【0149】
一実施形態により、少なくとも1つの充填剤は、マルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して、0.1から50重量%、好ましくは0.2から40重量%およびより好ましくは1から35重量%の量で存在する。
【0150】
別の実施形態により、少なくとも1つの充填剤は、少なくとも1つのポリマー中に分散され、少なくとも1つのポリマーの全重量に対して、1から50重量%、好ましくは2から40重量%およびより好ましくは5から35重量%の量で存在する。
【0151】
本発明の一態様により、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーを含むマルチフィラメント繊維における充填剤としての炭酸カルシウムの使用であって、炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する使用が提供される。本発明の好ましい一実施形態により、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを含む繊維製品中での充填剤としての炭酸カルシウムの使用であって、炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する使用が提供される。
【0152】
マルチフィラメント繊維
本発明により、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含むマルチフィラメント繊維であって、炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する、マルチフィラメント繊維が提供される。
【0153】
マルチフィラメント繊維のフィラメントは、考えられるいずれの断面積形状も有することができる。考えられる断面積形状の例は、円形、楕円形、角形、例えば三角形または長方形、葉形、例えば三葉形、五葉形、六葉形もしくは八葉形、鋸歯状、ダンベル形状、豆形状、腎臓形状、リボン様または不規則である。マルチフィラメント繊維のフィラメントは、中実もしくは中空および/または多成分フィラメント、例えば二成分フィラメントおよび/または三成分フィラメントであることもできる。
【0154】
一実施形態により、マルチフィラメント繊維は、マルチフィラメント糸、好ましくは合糸、ケーブル糸、合撚糸、交絡糸、撚糸および/またはトウ糸である。
【0155】
マルチフィラメント繊維のフィラメントの数は大幅に変化することが可能であり、所望の用途に応じて当業者によって好適に選択される。一実施形態により、マルチフィラメント繊維は、少なくとも2本のフィラメント、好ましくは少なくとも10本のフィラメント、より好ましくは少なくとも50本のフィラメント、またより好ましくは少なくとも100本のフィラメントおよび最も好ましくは少なくとも200本のフィラメントで構成される。
【0156】
マルチフィラメント繊維は、1から600μm、好ましくは3から400μm、より好ましくは5から300μmおよび最も好ましくは8から200μmの直径を有することができる。
【0157】
本発明の一実施形態により、マルチフィラメント繊維は、0.5から4000dtex、好ましくは1から3000dtex、より好ましくは10から2000dtexおよび最も好ましくは100から1500dtexの線質量密度を有する。
【0158】
少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填剤に加えて、マルチフィラメント繊維はさらなる添加剤、例えばワックス、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、光沢改良剤、界面活性剤、天然油または合成油を含み得る。
【0159】
マルチフィラメント繊維は、無機繊維、好ましくはガラス繊維、炭素繊維または金属繊維もさらに含み得る。代替的にもしくは加えて、天然繊維、例えば綿、麻、絹または羊毛を添加してよい。
【0160】
一実施形態により、マルチフィラメント繊維は、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤から成る。別の実施形態により、マルチフィラメント繊維は、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを含む少なくとも1つのポリマーならびに炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む。なお別の実施形態により、マルチフィラメント繊維は、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートならびに炭酸カルシウムから成る。一実施形態により、炭酸カルシウムは粉砕炭酸カルシウムである。別の実施形態により、炭酸カルシウムは、これのアクセス可能な表面積の少なくとも一部上に、疎水性化剤を含む処理層を含む表面処理炭酸カルシウムである。好ましくは、疎水性化剤は、置換基中に少なくともC
2からC
30の炭素原子の全量を有する直鎖、分枝、脂肪族および環式基から選択される基によって1置換されたコハク酸無水物から成る1置換コハク酸無水物および/もしくはこれの反応生成物ならびに/または1つ以上のリン酸モノエステルおよび/もしくはこれの反応生成物ならびに1つ以上のリン酸ジエステルおよび/もしくはこれの反応生成物のリン酸エステルブレンドである。
【0161】
例示的な実施形態により、マルチフィラメント繊維は、マルチフィラメント繊維の全重量に対して、50から98重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび2から50重量%の量の少なくとも1つの充填剤、好ましくは60から95重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび5から40重量%の量の少なくとも1つの充填剤、より好ましくは65から92重量%の量の少なくとも1つのポリマーおよび8から35重量%の量の少なくとも1つの充填剤ならびに最も好ましくは70から90重量%の少なくとも1つのポリマーおよび10から30重量%の少なくとも1つの充填剤を含む。
【0162】
本発明により、
a)ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む混合物を提供するステップ、
b)ステップa)の混合物を溶融させて、これを成形オリフィスに通過させて、マルチフィラメント繊維を形成するステップおよび
c)マルチフィラメント繊維を急冷するステップを含むマルチフィラメント繊維を製造する方法であって、
炭酸カルシウムがマルチフィラメント繊維中に、マルチフィラメント繊維の全重量に対して少なくとも2重量%の量で存在する方法が提供される。
【0163】
方法ステップa)で提供されるポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤の混合物は、当分野で既知のいずれの方法によっても調製できる。例えば、少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填剤は、ドライブレンド、メルトブレンドおよび場合により細粒もしくはペレットに形成してよく、または少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの充填剤のマスターバッチを予備混合し、場合により細粒またはペレットに形成して、追加のポリマーまたは充填剤と混合してよい。
【0164】
一実施形態により、ステップa)の混合物は、マスターバッチおよび追加のポリマーの混合物であり、マスターバッチは、ポリエステルを含む少なくとも1つのポリマーおよび炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの充填剤を含む。一実施形態により、炭酸カルシウムは、マスターバッチ中に、マスターバッチの全重量に対して、10から85重量%、好ましくは20から80重量%、より好ましくは30から75重量%、および最も好ましくは40重量%から75重量%の量で存在する。
【0165】
方法ステップb)の溶融温度は、ポリマーの溶融温度によって変わる。加えてまたはもしくは、圧力を印加してよい。好適な温度および圧力は、当業者に知られている。一実施形態により、ステップb)は、150から300℃の間、好ましくは200から290℃の間およびより好ましくは250から280℃の間の温度で行う。
【0166】
オリフィスの形状は、マルチフィラメント繊維のフィラメントの所望の断面形状によって変わり、例えば円形、楕円形、角形、例えば三角形または長方形、葉形、例えば三葉形、五葉形、六葉形もしくは八葉形、鋸歯状、ダンベル形状、豆形状、腎臓形状、リボン様または不規則であることができる。オリフィスの数は、フィラメントの所望の数によって変わり、例えば少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも200であることができる。
【0167】
成形オリフィスを出た後、フィラメントを固化させるために急冷する。通例、得られたフィラメントを、フィラメントを冷却して、これらを固化させる、横向きの空気流または不活性ガス流によって急冷する。
【0168】
本発明の方法で形成されたマルチフィラメント繊維は延伸または延長され得て、分子配向が誘発され、結晶性に影響が及ぼされる。これにより直径が縮小され、物性が改善され得る。
【0169】
一実施形態により、方法はさらに、マルチフィラメント繊維を延伸するステップd)をさらに含む。繊維は、ゴデットホイールによって延伸または延長され得る。マルチフィラメント繊維が延伸される長さは、所望の特性に依存する。より高い靭性のために、マルチフィラメント繊維をより大きい程度(extend)まで延伸してよい。一実施形態により、マルチフィラメント繊維は、これの元の長さの2倍、3倍、4倍、5倍または6倍まで延伸される。
【0170】
一実施形態により、本発明の方法によって得たマルチフィラメント繊維は、好ましくは100℃から250°、好ましくは140℃から220℃の温度にて加熱硬化される。加熱硬化は、巨大分子をこれらの平衡状態に近づけて、撚糸の熱収縮、寸法変化、カールもしくはもつれまたは布のしわ形成に対する耐性が得られるようにすることにより、マルチフィラメント繊維に寸法安定性を付与し得る。
【0171】
一実施形態により、本発明の方法によって得られたマルチフィラメント繊維をテクスチャード加工する。テクスチャード加工は、マルチフィラメント繊維のボリュームおよび弾性を上昇させるために使用する手順である。テクスチャード加工すると、平坦なフィラメントはボリュームおよびバルクを得ることができる。テクスチャード加工ステップは、個別に行うことができるか、または延伸ステップd)が存在する場合、マルチフィラメント繊維を延伸ステップd)の間または後にテクスチャード加工することができる。
【0172】
別の実施形態により、本発明の方法によって得られたマルチフィラメント繊維を撚り加工する。フィラメントの撚糸は、マルチフィラメント繊維の凝集および耐久性を改善し得る。撚り方向は、Z撚りと記載される右回りであるか、またはS撚りと記載される左回りであってよい。フィラメントを一方向に撚ることによって、単糸を形成することができる。諸撚糸は、通常、一方向に撚った単糸を反対方向に撚った諸撚糸と組み合わせて、2本以上の単糸を共に撚ることによって作製できる。撚りひも、コードまたはロープは、各撚りが先の撚りと反対方向である(S/Z/SまたはZ/S/Z)ケーブル撚りを用いて、または単糸および第1層撚りが一方向であり、第2層撚りが反対方向である(S/S/ZまたはZ/Z/S)ホーザー撚りを用いて作製できる。糸における単位長さごとの巻き数は、この糸から作製された布の外観および耐久性に影響を及ぼす。ソフト表面布に使用する糸は、スムーズ表面布に使用する糸よりも撚りが少ない。クレープ布が作製される糸は、最大の撚りを有する。テクスチャード加工ステップは、個別に行うことができるか、または延伸ステップd)が存在する場合、マルチフィラメント繊維を延伸ステップd)の間または後に撚ることができる。
【0173】
本発明のさらなる態様により、本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維を含む繊維製品が提供される。
【0174】
繊維製品は、層状化、プレーティング、ブレーディング、ノッティング、製織、製編、かぎ針編み、タフティングまたは不織材料であることができる。さらに、前記材料は、補強スレッドによって繊維製品表面構造の形態で、好ましくは布、層状化、製編布、ニットウェアまたは不織布の形態で補強することができる。一実施形態により、繊維製品は製織または不織布である。
【0175】
一実施形態により、繊維製品は、建設資材、消費者向けアパレル、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生製品、濾過材料、ホース、パワーベルト、ロープ、ネット、糸、タイヤコード、自動車内張り、帆、フロッピーディスクライナーまたはファイバーフィルから選択される。
【0176】
本発明の別の態様により、繊維製品を製造するための本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維の使用が提供される。繊維製品は、少なくとも1つのマルチフィラメント繊維から層状化、プレーティング、ブレーディング、ノッティング、製織、製編、かぎ針編みまたはタフティングによって製造され得る。不織繊維製品または不織布は、マルチフィラメント繊維を表面または担体、例えば移動スクリーンまたは形成ワイヤ上に収集して、任意の接合ステップを続けることによって形成され得る。接合方法の例としては、熱点接合、カレンダ加工、超音波接合、水流交絡、ニードリングおよびスルーエア接合(through−air bonding)が挙げられる。一実施形態により、不織材料は、乾式または湿式レイングによって形成される。
【0177】
さらに、製造された繊維製品は、後処理ステップ、例えば方向配向、クレーピング、水流交絡またはエンボス加工に供することができる。
【0178】
本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維および/または本発明による繊維製品は、多くの異なる用途で使用することができる。一実施形態により、本発明による少なくとも1つのマルチフィラメント繊維および/または本発明による繊維製品は、建設資材、防水、断熱、防音、屋根ふき材、消費者向けアパレル、室内装飾材料および衣料品産業、工業用アパレル、医療製品、家庭用備品、防護用品、包装用材料、化粧用製品、衛生用製品、濾過材料、農業用途、建設用途、地質工学用途、工業用途、医療用途、輸送、エコ技術用途、包装用途、人体保護、財産保護またはスポーツ用途に使用される。
【0179】
建設資材の例は、ハウスラップ、アスファルトオーバーレイ、道路および鉄道の路床、ゴルフコートおよびテニスコート、壁装材の裏地、音響用壁装材、屋根材およびタイルの下張り、土壌安定材および道路の下敷き、基礎安定材、侵食防止製品、運河建設、排水系統、ジオメンブレン保護および防霜製品、農業用マルチ、池および運河の防水壁または暗渠排水用の砂侵入防止壁である。建設資材の他の例は、埋め立て用の固定材または補強材である。
【0180】
消費者向けアパレルの例は、芯地、衣類および手袋の絶縁材、ブラジャーおよび肩のパッド、ハンドバッグ部材または靴部材である。工業用アパレルの例は、タープ、テント、または輸送(材木、鋼)用の覆いである。
【0181】
医療製品の例は、保護衣、フェイスマスク、隔離用ガウン、手術用ガウン、手術用ドレープおよびカバー、外科用手術着、帽子、スポンジ、包帯材、ふき取り材、整形外科用詰め物、包帯、テープ、歯科用胸当て、酸素供給器、透析器、静脈注射用溶液もしくは血液用のフィルターまたは経皮薬物送達部材である。家庭用備品の例は、枕、クッション、キルトまたは掛け布団の詰め物、ほこりよけカバー、絶縁材、ウィンドートリートメント、毛布、カーテン地部材、カーペットバッキング材またはカーペットである。
【0182】
防護用品の例は、コート布、強化プラスチック、保護衣、実験用白衣、吸収剤または耐火壁である。包装材料の例は、乾燥剤パッキング、吸収剤パッケージング、ギフトボックス、ファイルボックス、各種不織袋、ブックカバー、郵送用封筒、速達用封筒またはメッセンジャーバッグである。濾過材料の例は、濾液カートリッジおよびバッグフィルターを含むガソリン、オイルおよび空気のフィルター、
真空バッグ、または不織層を備えるラミネートである。
【0183】
本発明の範囲および重要性は、本発明のある実施形態を例証するためであり、非限定的である以下の実施例に基づいてより良好に理解される。
【実施例】
【0184】
1.測定方法および材料
以下では、実施例で行った測定方法および材料について説明する。
【0185】
粒径
炭酸カルシウム充填剤の粒径分布は、米国のマイクロメリティックス社(Micromeritics)のセディグラフ(Sedigraph)5120を使用して測定した。方法および機器は当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を決定するためによく使用されている。測定は、0.1重量%Na
4P
2O
7を含む水溶液中で行った。高速撹拌機および超音波を使用してサンプルを分散させた。
【0186】
タイター、即ち線密度
タイター、即ち線密度[dtex]はEN ISO 2062に従って測定し、10,000m紡糸1グラムの重量に相当する。25または100メートルの試料を0.5cN/texの予張力で標準リールに巻き付け、分析用天秤で秤量した。次に10,000m紡糸長当たりのグラム数を計算した。
【0187】
靭性、最大力および最大荷重時伸び
靭性は、破断荷重および線密度から計算して、dtex当たりのセンチニュートン[cN/dtex]で表した。試験は、動力計で一定の引張速度で行った。最大力は、糸に最大限に印加できる力であり、ニュートン[N]で表す。伸びは、糸をこれの最大荷重まで引っ張ることによって生じた長さの増加であり、糸の最初の長さのパーセンテージ[%]として表す。本試験に適用可能な規格はEN ISO 5079およびASTM D 3822である。
【0188】
灰分
繊維およびマスターバッチ中の灰分[%]は、570℃の焼却炉に2時間入れた焼却るつぼ内のサンプルの焼却によって求めた。灰分は残りの無機残留物の合計量として測定する。
【0189】
2.材料
PET: ポリエチレンテレフタレート4060、ドイツのINVISTA Resins&Fibres GmbHから市販(固有粘度:0.66−0.68dl/g;カルボキシル末端基<50meq/kg;ジエチレングリコール≦1.1重量%;アモルファスポリマー;140−180℃にて30−60分で結晶化)。供給者のテクニカルデータシート(TDS)から得たデータ。
【0190】
PBT: ポリブチレンテレフタレート、Valox 315、オランダのSabic Innovative Plastics BVから市販(溶融粘度:7500ポイズ;250℃/1.2kgにおけるメルトボリュームレート、MVR:6cm
3/10分)。供給者のテクニカルデータシート(TDS)から得たデータ。
【0191】
CC1: スイスの粉砕炭酸カルシウム、スイスのオミヤインターナショナル(Omya International)AGより市販(d
50:1.7μm;d
98:6μm、未処理)。
【0192】
CC2: 粉砕炭酸カルシウム、スイスのオミヤインターナショナル(Omya International)AGより市販(d
50:1.7μm;d
98:6μm)、粉砕炭酸カルシウムの全重量に対して1重量%のステアリン酸(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、クローダ(Croda)から市販)で表面処理。
【0193】
CC3: 粉砕炭酸カルシウム、スイスのオミヤインターナショナル(Omya International)AGより市販(d
50:1.7μm;d
98:6μm)、粉砕炭酸カルシウムの全重量に対して1.1重量%のポリメチル水素シロキサン(Silres BS94、ドイツのワッカーケミー(Wacker Chemie)AGから市販)で表面処理。
【0194】
CC4: 粉砕炭酸カルシウム、スイスのオミヤインターナショナル(Omya International)AGより市販(d
50:1.7μm;d
98:6μm)、粉砕炭酸カルシウムの全重量に対して0.7重量%のコハク酸無水物(Hydrores AS 1000、ドイツのKemira Germany GmbHから市販)で表面処理。
【0195】
3.実施例
[実施例1]
マスターバッチの調製
PBTまたはPETおよび炭酸カルシウム充填剤CC1からCC4の1つを含有するマスターバッチを実験室規模のバスニーダー(Buss kneader)(PETではMKS 30およびPBTではPR46、スイスのバス(Buss)AG製)で調製した。ポリマーPETを加工前に160℃のオーブンで4時間、事前乾燥させた。調製したマスターバッチの組成物含有率および充填剤含有率を下の表1にまとめる。正確な充填剤含有率を灰分によって求めた。
【0196】
【表1】
【0197】
[実施例2]
マルチフィラメント繊維の調製
実施例1に従って製造した異なる量のマスターバッチをさらなるPBTまたはPETと混合し、PETは加工前に160℃のオーブンで4時間、事前乾燥させたマルチフィラメント繊維は、得られた混合物からCollin Multifilament Lab Line CMF 100(Dr.Collin GmbH、ドイツ)を使用して製造し、Collin Multifilament Lab Line CMF 100は、溶融ポンプを有する、34フィラメントの50mm直径紡糸口金、直径0.3mmの一軸スクリュー押出機を装備していた。紡糸システムは、マルチフィラメント繊維を急冷するための冷却チャンバならびに引張ゴデットおよび巻取り機も装備していた。リマノール(Limanol)35F/1(ドイツのシル+ザイラッハ(Schill+Seilacher)GmbHから市販)を紡糸油として使用した。機械的条件を下の表2に示す。製造したマルチフィラメント繊維の組成を下の表3にまとめる。
【0198】
試験サンプルの機械的特性は、上記の最大力時伸び試験および靭性試験を使用して求めた。機械的試験の結果を下の表4に示す。
【0199】
【表2】
【0200】
【表3】
【0201】
【表4】
【0202】
表4に示した結果により、各種の充填剤量および延伸比で、品質および機械的特性が良好な、炭酸カルシウム充填剤を含むポリブチレンおよびポリエチレンマルチフィラメント繊維を製造できることが明らかになる。さらに表4から、炭酸カルシウム含有マルチフィラメント繊維は、炭酸カルシウムを含まないマルチフィラメント繊維と比べて、より小さい最大力時の伸びおよびより小さい靭性、即ち機械的硬度の改善を示すことが推論できる。