(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるフライス工具の正面図である。
【
図2】
図1とは90°異なる方向から見たフライス工具の側面図である。
【
図4】ヘッド側から見た
図1のフライス工具の底面図である。
【
図5】シャンク側から見た
図1のフライス工具の平面図である。
【
図6】
図1のフライス工具で用いる上側インサートの正面図である。
【
図11】
図1のフライス工具で用いる下側インサートの背面図である。
【
図12】
図1のフライス工具で用いる先端インサートの正面図である。
【
図13】
図12の先端インサートの先端側から見た斜視図である。
【
図15】
図12の先端インサートの別の角度から見た斜視図である。
【
図16】
図1のフライス工具で加工するリターンフランジを有したワークの一例を示す平面図である。
【
図18】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図19】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図20】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図21】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図22】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図23】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図24】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図25】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図26】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図27】リターンフランジを有したリブを加工する方法を説明するための模式図である。
【
図28】本発明の第2の実施形態によるフライス工具の正面図である。
【
図29】
図28とは90°異なる方向から見たフライス工具の側面図である。
【
図31】ヘッド側から見た
図28のフライス工具の底面図である。
【
図32】
図28のフライス工具で用いる上側インサートの正面図である。
【
図37】
図28のフライス工具で用いる先端インサートの正面図である。
【
図38】
図37の先端インサートの先端側から見た斜視図である。
【
図40】
図37の先端インサートの別の角度から見た斜視図である。
【
図41】底壁とリブの間およびリブとリターンフランジの間にコーナーRを有し
図28のフライス工具で加工するリターンフランジを有したワークの一例を示す端面図である。
【
図42】第2の実施形態によるフライス工具によって、
図41のワークのコーナーRの加工を説明するための模式図である。
【
図43】第2の実施形態によるフライス工具によって、
図41のワークのコーナーRの加工を説明するための模式図である。
【
図44】本発明の第3の実施形態によるフライス工具の正面図である。
【
図45】
図44とは90°異なる方向から見たフライス工具の側面図である。
【
図47】
図44のフライス工具で用いる先端インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1〜
図15を参照すると、本発明のフライス工具の第1の実施の形態によるフライス工具10は、円柱状のシャンク12と、シャンク12の先端に一体的に形成されたヘッド14とを具備している。ヘッド14は、シャンク12に接する基端側から先端方向に直径が拡大する略円錐台形状の拡径部14aと、拡径部14aから更に先端方向に直径が縮小する略円錐台形状の縮径部14bとを有し、概ね算盤玉の形状に形成されている。拡径部14aと縮径部14bとの間に直径が最大となる最大直径部としての遷移部14cが形成されている。ヘッド14は、また、拡径部14aに形成された上側溝16と、縮径部14bに形成された下側溝18と、先端インサート30を取り付ける先端溝13とを有している。
【0012】
上側溝16と下側溝18とはヘッド14の中心軸線O周りに交互に等角度間隔で配置されている。図示する実施形態では、ヘッド14は、2つの上側溝16と、2つの下側溝18とを有している。なお、本実施形態では上側溝16と下側溝18は等角度間隔で配置されているが、びびり振動防止のため不等角度間隔で配置されていてもよい。
【0013】
上側溝16の各々には、上側インサート20を取り付ける上側座(図示せず)が形成され、下側溝18の各々には、下側インサート22が取り付けられる下側座(図示せず)が形成されている。図示する実施形態では、拡径部14aに2つの上側インサート20が配置され、縮径部14bに2つの下側インサート22が配置されているが、本発明において上側インサート20および下側インサート22の個数は2に限定されず、少なくとも1つの上側インサート20と、少なくとも1つの下側インサート22が配置されていればよい。従って、拡径部14aおよび縮径部14bの各々も少なくとも1つの上側溝16および下側溝18を備えていればよい。
【0014】
上側座は、該上側座に取り付けられた上側インサート20の直線状の第1の切れ刃20c(
図6〜
図10)が、該フライス工具10の回転方向に次第に遷移部14cに接近する方向に斜めに延びるように形成されている。下側座は、該下側座に取り付けられた下側インサート22の直線状の第1の切れ刃22c(
図11)が、該フライス工具10の回転方向に次第に遷移部14cに接近する方向に斜めに延びるように形成されている。
【0015】
更に、フライス工具10には加工領域にクーラントを供給するためのクーラント通路を形成することができる。該クーラント通路は、フライス工具10の中心軸線Oに沿ってシャンク12を貫通する入口通路24、該入口通路24から半径方向にヘッド14を貫通して各上側溝16に開口する上側半径方向通路26a、および、各下側溝18に開口する下側半径方向通路26bを含むことができる。
【0016】
図6〜
図10を参照すると、上側インサート20は上端部20aと下端部20bとを有している。上側インサート20は、下端部20bが遷移部14cの近傍に配置されるように上側座に取り付けられる。上側インサート20は、また、上側座に取り付けたとき、該上側座とは反対側に配置されるすくい面20eと、半径方向外側に向けられる第1の逃げ面20dとを有している。このように、上側インサート20がヘッド14に取り付けられると、上面20kがシャンク12を臨むように配向され、すくい面20eの反対側の背面20f、および、第1の逃げ面20dの反対側の側面20gがヘッド14に接し、この2つの表面で上側インサート20はヘッド14に対して位置決めされる。
【0017】
すくい面20eと第1の逃げ面20dとによって、上面20kから下面20hへ概ね直線状に延びる第1の切れ刃20cが形成される。また、下面20hは、すくい面20e側から背面20f側に上方へ傾斜して、上側インサート20の第2の逃げ面を形成しており、すくい面20eと第2の逃げ面20hとによって、上側インサート20の下縁部に沿って概ね直線状に延びる第2の切れ刃20jが形成される。
【0018】
図11を参照すると、下側インサート22は上側インサート20と概ね同様に形成されており、上端部22aと下端部22bとを有している。下側インサート22は、上端部22aが遷移部14cの近傍に配置されるように下側座に取り付けられる。下側インサート22は、また、下側座に取り付けたとき、該下側座とは反対側に配置されるすくい面(図示せず)と、半径方向外側に向けられる第1の逃げ面22dとを有している。このように、下側インサート22がヘッド14に取り付けられたとき、下面22kがフライス工具10の先端方向に向けられ、すくい面の反対側の背面22f、および、第1の逃げ面22dの反対側の側面22gがヘッド14に接し、この2つの表面で下側インサート22はヘッド14に対して位置決めされる。
【0019】
すくい面と第1の逃げ面22dとによって、上面22hから下面22kへ概ね直線状に延びる第1の切れ刃22cが形成される。また、上面22hは、すくい面側から背面22f側に下方へ傾斜して、下側インサート22の第2の逃げ面を形成しており、すくい面と第2の逃げ面22hとによって、下側インサート22の上縁部に沿って概ね直線状に延びる第2の切れ刃22jが形成される。
【0020】
先端インサート30は、
図13に示すように、平面視(
図1ではフライス工具10の側面視)において、頂点38を有した略三角形状の板状に形成される。先端インサート30は、頂点38を中心として矢印40の方向に回転する。先端インサート30は、頂点38から上記三角形の2辺に沿って直線状に延びる2つの切れ刃32を有している。2つの切れ刃32は、先端インサート30を先端側(頂点38側)から見たとき(正面視)、概ね同一の直線上に配置される。切れ刃32は、すくい面36と逃げ面34との交線によって形成される。先端インサートを先端側から見たとき、2つのすくい面36の一方(
図12では右側のすくい面)は、該すくい面が形成する切れ刃32の上側に、他方のすくい面36(
図12では左側のすくい面)は、該すくい面が形成する切れ刃32の下側に配置される。こうして、2つのすくい面36は、フライス工具10の回転方向に関して同じ方向に向くように形成される。また、先端インサートを先端側から見たとき、2つの逃げ面34の一方(
図12では右側の逃げ面)は、該逃げ面が形成する切れ刃32の下側に、他方の逃げ面34(
図12では左側の逃げ面)は、該逃げ面が形成する切れ刃32の上側に配置される。
【0021】
本実施形態では、上側インサート20と下側インサート22は、各々の第1の切れ刃20c、22cが、側面視において、フライス工具10の中心軸線Oに一致するように、上側座と下側座に取り付けられている。更に、上側インサート20は、フライス工具10を中心軸線O周りに回転させたときに、全ての上側インサート20の第1の切れ刃20cが1つの円錐面に沿って回転するように上側座に取り付けられる。同様に、下側インサート22は、フライス工具10を中心軸線O周りに回転させたときに、全ての下側インサート22の第1の切れ刃が1つの円錐面に沿って回転するように下側座に取り付けられる。また、上側インサート20と、下側インサート22は、各々の第1と第2の切れ刃20c、20j;22c、22jの交点20m、22mが、フライス工具10の中心軸線Oを中心とした同一の円周上に配置されるように、上側座および下側座に取り付けられる。
【0022】
なお、上側インサート20および下側インサート22は、各々の第1の切れ刃20c、22cが、側面視において、フライス工具10の中心軸線Oに一致していなくてもよい。例えば、側面視において、上側インサート20の第1の切れ刃20cが、フライス工具10の回転方向に対して、交点20mから斜め後方に延びるように傾斜し、下側インサート22の第1の切れ刃22cが、フライス工具10の回転方向に対して、交点22mから斜め後方に延びるように傾斜するように、上側インサート20と、下側インサート22とを上側座および下側座に取り付けるようにしてもよい。この場合、上側インサート20と下側インサート22とは、互い違いに傾斜して取り付けられる。
【0023】
更には、フライス工具10の側面視において、上側インサート20の第1の切れ刃20cが、フライス工具10の回転方向に対して、交点20mから斜め前方に延びるように傾斜し、下側インサート22の第1の切れ刃22cが、フライス工具10の回転方向に対して、交点22mから斜め前方に延びるように傾斜し、上側インサート20および下側インサート22をそれぞれ上側座および下側座に取り付けるようにしてもよい。この場合も、上側インサート20と下側インサート22とは、互い違いに傾斜して取り付けられる。
【0024】
先端インサート30は、
図4に示すように、頂点38がフライス工具10の中心軸線O上に配置されるように、ヘッド14の先端部に形成された先端溝13内に取り付けられる。また、先端インサート30の切れ刃32は、2つの上側インサート20の第1と第2の切れ刃20c、20jの交点20m間の直線に対して一直線となるように配置される。
【0025】
更に、先端インサート30の2つの切れ刃32は、フライス工具10を中心軸線O周りに回転させたときに、下側インサート22の第1の切れ刃が描く円錐面に沿って回転し、頂点38が該円錐面の頂点となるように、ヘッド14の先端溝13に取り付けられる。つまり、先端インサート30の頂点38を挟んだ2つの切れ刃32の間の角度は、2つの下側インサート22の第1の切れ刃22cが描く円錐面の中心軸線(フライス工具10の中心軸線O)を含む平面が、該円錐面と交差する2本の母線間の角度に等しくなっている。
【0026】
図示する実施形態では、フライス工具10が回転するときに上側インサート20と下側インサート22の第1の切れ刃20c、22cが描く2つの円錐面は、該2つの円錐面の間の交線が規定する平面に対して対称となっているが、目的とする加工プロセスやワーク形状によっては非対称でもよい。また、中心軸線Oを含む平面と、上記2つの円錐面との間の交線(各円錐面の母線)は所定の角度で交差する。この角度は、目的とする加工プロセスに応じて種々な値とすることができる。上記2つの交線が形成する角度は、例えば、後述するようにリブと、該リブの上端から張り出したリターンフランジとの間の角度に一致する角度、好ましくは90°または90°よりも小さな角度とすることができる。また、上側インサート20の第1の切れ刃20cは、上記リターンフランジの張り出し寸法(幅)よりも長く形成される。
【0027】
また、工具鋼を用いてシャンク12とヘッド14とを一体的に形成し、上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30は、ろう付けのような適当な結合技術を用いてこのヘッド14の上側座および下側座に取り付けることができる。固定ねじ(図示せず)を用いて、上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30をヘッド14に固定するようにしてもよい。
【0028】
上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30を取り付けた後に、上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30に研削加工を施し、上側インサート20の2つの第1の切れ刃20cが同一円錐面を描き、下側インサート22の2つの第1の切れ刃22cと先端インサート30の2つの切れ刃32とが同一円錐面を描き、かつ、上側インサート20の第1と第2の切れ刃20c、20jの交点20mと、下側インサート22の第1と第2の切れ刃22c、22jの交点22mとが同一の円を描くようにすることができる。
【0029】
以下、
図16〜
図27を参照して、フライス工具10を用いたリブ加工(アンダーカット)方法の一例を説明する。
図16〜
図18は、リブ加工を行うワークの一例を示している。加工が完了した製品としてのワーク70は、底壁72、底壁72から垂直に延びる薄壁を形成するリブ74、および、リブ74の上端から底壁72に概ね平行に突出したリターンフランジ76を有している。ワーク70は、例えば、直交3軸の直線送り軸と少なくとも1つの回転送り軸とを有した4軸のマシニングセンタ、好ましくは直交3軸の直線送り軸に2つの回転送り軸を有した5軸のマシニングセンタのような工作機械(図示せず)で、フライス工具10を前記工作機械の主軸(図示せず)の先端に装着して、アルミニウム合金のような金属材料で成る厚板からワーク70が削り出される。なお、フライス工具10は、工具ホルダ(図示せず)を介して工作機械の主軸の先端に取り付けられている。また、ワーク70は工作機械のテーブル(図示せず)に固定される。
【0030】
まず、リターンフランジ76の幅寸法に合わせて、例えば、工具の側面で切削可能なスクエアエンドミルのような回転工具を用いて、
図18に示すような、底壁72、リブ74となる薄壁、リターンフランジ76、および、リターンフランジ76と底壁72との間の除去すべき部分(以下、除去領域と称する)78を残して、前記厚板から材料が除去される(
図18)。
【0031】
次に、リターンフランジ76の仕上げ面に対して仕上げ代δ1が残るようにZ軸方向に位置決めすると共に、除去領域78の表面からの切込み量がΔX1となるようにX軸方向に位置決めして、フライス工具10をY軸方向(紙面に垂直な方向)に送ることによって、リターンフランジ76の下側の除去領域78の一部が第1の荒加工により除去される(
図19)。この第1の荒加工は、上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30の全ての切れ刃によって行われる。
【0032】
ワーク70の全長に亘ってフライス工具10をY軸方向(紙面に垂直な方向)に送り、第1の荒加工が終了すると、主軸の傾きを変更することなく、Z軸に沿ってリターンフランジ76に接近する方向に仕上げ代δ1に相当するピックフィードを主軸に与え、フライス工具10をY軸方向に送りつつ、ワーク70のリターンフランジ76の下面に残した仕上げ代δ1を除去する第1の仕上げ加工が実行される(
図20)。仕上げ加工は、フライス工具10を交換することなく、同じフライス工具10を用いて荒加工よりも高い主軸回転速度で行うことができる。また、第1の仕上げ加工は、主に上側インサート20によって行われる。
【0033】
次いで、
図21に示すように、リターンフランジ76の仕上げ面に対して仕上げ代δ1が残るようにZ軸方向に再び位置決めすると共に、X軸方向に更なる切込み量ΔX2を与え、フライス工具10をY軸方向に送ることによって、除去領域78の更なる一部が、第2の荒加工により除去される(
図21)。このとき、更なる切込み量ΔX2は、リブ74の仕上げ面に対して仕上げ代δ2が残るように決定される。この第2の荒加工は、上側インサート20、下側インサート22および先端インサート30によって行われる。
【0034】
第2の荒加工が完了した後、主軸の傾きを変更することなく、Z軸に沿ってリターンフランジ76に接近する方向に仕上げ代δ1に相当するピックフィードを主軸に与え、フライス工具10をY軸方向に送りつつ、ワーク70のリターンフランジ76の下面に残した仕上げ代δ1を除去する第2の仕上げ加工が実行される(
図22)。第2の仕上げ加工は、上側インサート20によって行われる。
【0035】
次いで、X軸に沿ってリブ74に接近する方向に仕上げ代δ2に相当するピックフィードを主軸に与え(図示する実施形態では、フライス工具10を左方へ送り込む)フライス工具10をY軸方向に送りつつ、ワーク70のリブ74の表面に残した仕上げ代δ2を除去する第3の仕上げ加工が実行される(
図23)。第3の仕上げ加工は、下側インサート22と、先端インサート30とによって行われる。
【0036】
次いで、
図24に示すように、底壁72の仕上げ面に対して仕上げ代δ3が残るように、フライス工具10をZ軸方向に再び位置決めすると共に、除去領域78の表面からX軸方向に切込み量ΔX3を与え、フライス工具10をY軸方向に送ることによって、除去領域78を更に除去する第3の荒加工が実行される。このとき、この第3の荒加工は、下側インサート22および先端インサート30によって行われる。
【0037】
次いで、X軸に沿って更なる切込み量ΔX4(
図24)を与え、フライス工具10をY軸方向に送ることによって、除去領域78を更に除去する第4の荒加工が実行される。このとき、この第4の荒加工は、下側インサート22および先端インサート30によって行われる(
図25)。切込み量ΔX4は、リブ74の仕上げ面に対して仕上げ代δ4が残るように決定される。
【0038】
第4の荒加工が完了した後、X軸に沿ってリブ74に接近する方向に仕上げ代δ4に相当するピックフィードを主軸に与え、フライス工具10をY軸方向に送りつつ、ワーク70のリブ74の表面に残した仕上げ代δ4を除去する第4の仕上げ加工が実行される(
図26)。第4の仕上げ加工は、下側インサート22と、先端インサート30とによって行われる。
【0039】
次いで、X軸に沿ってリブ74から離反する方向に仕上げ代δ4に相当するピックフィードを主軸に与えた後に、Z軸に沿って底壁72に接近する方向に仕上げ代δ3に相当するピックフィードを主軸に与え、フライス工具10をY軸方向に送りつつ、ワーク70のリブ74の表面に残した仕上げ代δ3を除去する第5の仕上げ加工が実行される(
図27)。第5の仕上げ加工は、下側インサート22と、先端インサート30とによって行われる。最後に、底壁72とリブ74との間の隅部に残った部分74aが、フライス工具10の先端インサート30によって除去される。
【0040】
こうして、底壁72、底壁72から垂直に延びるリブ74、および、リブ74の上端から底壁72に概ね平行に突出したリターンフランジ76を有したワーク70がアルミニウム合金等の金属製厚板材料から削り出すことが可能となる。ワーク70は、例えば航空機の翼の部品とすることができる。
【0041】
既述の加工方法では、リターンフランジ76を有したリブ74の加工(アンダーカット)において、リブ74の先端側から徐々に、除去領域78を加工することによって、リブ加工の間にリブ74の剛性が、なるべく高く維持されるようにして、リブ74が振動することを防止している。
【0042】
このように、本実施形態は、三角柱状の先端インサート30の2つの切れ刃32が直線状に形成され、かつ、1つの頂点38で交差しているので、リブ74とリターンフランジ76との間の隅部や、底壁72とリブ74との間のように、コーナーRを有しない隅部の加工に特に有利である。
【0043】
また、本実施形態によれば、フライス工具10は、短い突き出し長さで主軸に装着して、リターンフランジ76を有したリブ74の加工を行うことができる。突き出し長さを短くすることによって、通常、工具は湾曲や倒れに対する静剛性も、振動に対する動剛性も高くなるので、工具の回転速度や送り速度を高くすることが可能となる。従って、本実施形態によるフライス工具10を用いることによって、従来のT形カッタ等の工具を用いた場合よりも、高効率にワーク70を加工することが可能となる。また、びびり振動が発生しにくく、加工面品位も向上する。
【0044】
本実施形態では、上側インサート20の第1の切れ刃20cが描く円錐面の母線と、下側インサート22の第1の切れ刃22cが描く円錐面の母線との間の角度が、リブ74とリターンフランジ76の各々の仕上げ面の交差角度(上側インサート20と下側インサート22の第1の切れ刃の交差角度)と等しく、かつ、先端インサート30の2つの切れ刃32がなす角度(先端インサート30の頂角)が底壁72とリブ74の各々の仕上げ面の交差角度と等しくなっているが、本発明は、これに限定されない。上側インサート20と下側インサート22の第1の切れ刃の交差角度は、リブ74とリターンフランジ76の各々の仕上げ面の交差角度以下であればよい。また、先端インサート30の頂角は、底壁72とリブ74の各々の仕上げ面の交差角度以下の角度であればよい。
【0045】
図28〜
図40を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。
フライス工具100は、円柱状のシャンク102と、シャンク102の先端に一体的に形成されたヘッド104とを具備している。ヘッド104は、シャンク102に接する基端側から先端方向に直径が拡大する略円錐台形状の拡径部104aと、拡径部104aから更に先端方向に直径が縮小する略円錐台形状の縮径部104bとを有し、概ね算盤玉の形状に形成されている。拡径部104aと縮径部104bとの間に直径が最大となる最大直径部としての遷移部104cが形成されている。ヘッド104は、また、拡径部104aに形成された上側溝106と、縮径部104bに形成された下側溝108と、先端インサート50を取り付ける先端溝103とを有している。
【0046】
上側溝106と下側溝108とは、ヘッド104の中心軸線O周りに交互に等角度間隔で配置されている。図示する実施形態では、ヘッド104は、2つの上側溝106と、2つの下側溝108とを有している。なお、本実施形態では上側溝106と下側溝108は等角度間隔で配置されているが、びびり振動防止のため不等角度間隔で配置されていてもよい。
【0047】
上側溝106の各々には上側座(図示せず)が形成され、下側溝108の各々には下側座(図示せず)が形成されている。上側座の各々には上側インサート120が取り付けられ、下側座の各々には下側インサート122が取り付けられる。図示する実施形態では、拡径部104aに2つの上側インサート120が配置され、縮径部104bに2つの下側インサート122が配置されているが、本発明において上側インサート120および下側インサート122の個数は2に限定されず、少なくとも1つの上側インサート120と、少なくとも1つの下側インサート122が配置されていればよい。従って、拡径部104aおよび縮径部104bの各々も少なくとも1つの上側溝106および下側溝108を備えていればよい。
【0048】
更に、フライス工具100には加工領域にクーラントを供給するためのクーラント通路を形成することができる。該クーラント通路は、フライス工具100の中心軸線Oに沿ってシャンク102を貫通する入口通路(図示せず)、該入口通路24から半径方向にヘッド104を貫通して各上側溝106に開口する上側半径方向通路126a、および、各下側溝108に開口する下側半径方向通路126bとを含むことができる。
【0049】
図32〜
図36を参照すると、上側インサート120は上端部120aと下端部120bとを有している。上側インサート120は、下端部120bが遷移部104cの近傍に配置されるように上側座に取り付けられる。上側インサート120は、また、上側座に取り付けたとき、該上側座とは反対側に配置される逃げ面120dとを有している。
【0050】
このように、上側インサート120がヘッド104に取り付けられると、上面120kがシャンク102を臨むように配向され、すくい面120eの反対側の背面120f、および、逃げ面120dの反対側の側面120gがヘッド104に接し、この2つの表面で上側インサート120はヘッド104に対して位置決めされる。
【0051】
すくい面120eと逃げ面120dとによって、上端部120aから概ね直線状に延びる第1の切れ刃120cと、下端部120bに隣接して設けられ、第1の切れ刃120cに連結される円弧状の第2の切れ刃120jが形成される。
下側インサート122も概ね同様に形成される。
【0052】
図29〜
図30を参照すると、上側インサート120は、フライス工具100を中心軸線O周りに回転させたときに、全ての上側インサート120の第1の切れ刃120cが1つの円錐面に沿って回転するように、上側座に取り付けられる。同様に、下側インサート122は、フライス工具100を中心軸線O周りに回転させたときに、全ての下側インサート122の第1の切れ刃122cが1つの円錐面に沿って回転するように、下側座に取り付けられる。
【0053】
先端インサート50は、
図38に示すように、平面視(
図28ではフライス工具100の側面視)において、頂点62を有した略三角形状の板状に形成される。先端インサート50は、頂点62から上記三角形の2辺に沿って直線状に延びる2つの切れ刃を有している。該2つの切れ刃は、平面視(
図28ではフライス工具100の側面視)において、概ね直線状に延びる主切れ刃52aと、頂点62と主切れ刃52aとの間に設けられた円弧状の副切れ刃52bとを有している。2組の切れ刃52a、52bの各々は、すくい面56と、逃げ面54との交線によって形成される。
【0054】
矢印40の方向に回転する先端インサート50を先端側から見たとき、2つのすくい面56の一方(
図37では右側のすくい面)は、該すくい面が形成する切れ刃52a、52bの上側に、他方のすくい面56(
図37では左側のすくい面)は、該すくい面が形成する切れ刃52a、52bの下側に配置される。こうして、2つのすくい面36は、フライス工具10の回転方向に関して同じ方向に向くように形成される。また、先端インサートを先端側から見たとき、2つの逃げ面54の一方(
図37では右側の逃げ面)は、該逃げ面が形成する切れ刃52a、52bの下側に、他方の逃げ面54(
図12では左側の逃げ面)は、該逃げ面が形成する切れ刃52a、52bの上側に配置される。
【0055】
また、2本の直線状の主切れ刃52aは、互いに平行に延設されており、頂点62では交差していない。2本の円弧状の副切れ刃52bの各々は、直線状の主切れ刃52aに接するように形成されている。2本の円弧状の副切れ刃52bは、頂点62の近傍において、フライス工具100が中心軸線O周りに回転したときに、共通の球面を描くように形成されている。つまり、先端インサート50の平面視において、2本の副切れ刃52bは、共通の円弧上に配置される。
【0056】
先端インサート50は、また、主切れ刃52aの各々に隣接して設けられた1本の切り屑排出溝58を有している。先端インサート50は、また、頂点62の近傍に設けられた2本の逃げ溝60を有している。2本の逃げ溝60の間に、2本の副切れ刃52bが配置されている。
【0057】
先端インサート50は、
図28、29に示すように、頂点62がフライス工具100の中心軸線O上に配置されるように、ヘッド104の先端部に形成された先端溝103内に取り付けられる。更に、先端インサート50の2つの主切れ刃52aは、フライス工具100を中心軸線O周りに回転させたときに、下側インサート122の第1の切れ刃22cが描く円錐面に沿って回転するように、ヘッド104の先端溝103に取り付けられる。つまり、先端インサート50の頂点62を挟んだ2つの主切れ刃52aの間の角度は、2つの下側インサート22の第1の切れ刃22cが描く円錐面の中心軸線(フライス工具100の中心軸線O)を含む平面が、該円錐面と交差する2本の母線間の角度に等しくなっている。
【0058】
図示する実施形態では、フライス工具100が回転するときに上側インサート120および下側インサート122の第1の切れ刃120c、122cが描く2つの円錐面は、該2つの円錐面の間の交線が規定する平面に対して対称となっているが、目的とする加工プロセスやワーク形状によっては非対称でもよい。また、中心軸線Oを含む平面と、上記2つの円錐面との間の交線(各円錐面の母線)は所定の角度で交差する。この角度は、目的とする加工プロセスに応じて種々な値とすることができる。上記2つの交線が形成する角度は、例えば、後述するようにリブと、該リブの上端から張り出したリターンフランジとの間の角度に一致する角度、好ましくは90°または90°よりも小さな角度とすることができる。また、上側インサート120の第1の切れ刃120cは、上記リターンフランジの張り出し寸法(幅)よりも長く形成される。
【0059】
更に、上側インサート120および下側インサート122は、フライス工具100を中心軸線O周りに回転させたときに、第2の切れ刃120j、122jが、ヘッド104の半径方向に膨出する1つの円弧をフライス工具100の中心軸線O周りに回転させときの軌跡である回転体形状に沿って移動するように、上側座および下側座に取り付けられる。この回転体形状は、上記のフライス工具100が回転するときに、上側インサート120および下側インサート122の第1の切れ刃120c、122cが描く2つの円錐面の双方に内接する形状とすることができる。
【0060】
また、工具鋼を用いてシャンク102とヘッド104とを一体的に形成し、上側インサート120、下側インサート122および先端インサート50は、ろう付けのような適当な結合技術を用いてこのヘッド104の上側座および下側座に取り付けることができる。固定ねじ(図示せず)を用いて、上側インサート120、下側インサート122および先端インサート50をヘッド104に固定するようにしてもよい。
【0061】
上側インサート120、下側インサート122および先端インサート50を取り付けた後に、上側インサート120、下側インサート122および先端インサート50に研削加工を施し、上側インサート20の2つの第1の切れ刃120cが同一円錐面を描き、下側インサート22の2つの第1の切れ刃122cと先端インサート30の2つの切れ刃32とが同一円錐面を描くようにすることができる。また、上側インサート20のの第1の切れ刃120cと、下側インサート22の第1の切れ刃122cが描く上記2つの円錐面の各々の母線が、ワークのリブと、該リブの上端から張り出したリターンフランジとの間の角度に一致する角度となり、かつ、第2の切れ刃120j、122jの描く回転体形状が前記2つの円錐面の双方に内接するようにできる。
【0062】
フライス工具100は、
図16〜
図27を参照して説明したフライス工具10と同様の手順でリターンフランジを有したリブの加工を行うことができる。フライス工具10は、上述のように、コーナーRを有しない隅部の加工に適しているが、フライス工具100は、
図41に示すようにコーナーRを有した隅部の加工に適している。
【0063】
図41において、ワーク80は、底壁82と、底壁82から垂直に延びる薄壁を形成するリブ84、および、リブ84の上端から底壁82に概ね平行に両側に突出したリターンフランジ86を有している。底壁82とリブ84の間の隅部およびリブ84とリターンフランジ86との間の隅部はコーナーRとなっている。
【0064】
本実施形態では、底壁82とリブ84の間のコーナーRは、先端インサート50の副切れ刃52bによって加工され、リブ84とリターンフランジ86の間のコーナーRは、上側インサート120および下側インサート122の第2の切れ刃120j、122jによって加工される。
【0065】
次に、
図44〜
図47を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。
図44〜
図46を参照すると、第3の実施形態によるフライス工具200は、第2の実施形態によるフライス工具100と概ね同様に構成されており、円柱状のシャンク202と、シャンク202の先端に一体的に形成されたヘッド204とを具備している。ヘッド204は、シャンク202に接する基端側から先端方向に直径が拡大する略円錐台形状の拡径部204aと、拡径部204aから更に先端方向に直径が縮小する略円錐台形状の縮径部204bとを有し、概ね算盤玉の形状に形成されている。
【0066】
拡径部204aと縮径部204bとの間に直径が最大となる最大直径部としての遷移部204cが形成されている。ヘッド204は、また、拡径部204aに形成された上側溝206と、縮径部204bに形成された下側溝208と、先端インサート230を取り付ける先端溝203とを有している。上側溝206と下側溝208とは、ヘッド204の中心軸線O周りに交互に等角度間隔で配置されている。図示する実施形態では、ヘッド204は、2つの上側溝206と、2つの下側溝208とを有している。
【0067】
上側溝206と下側溝208とは、ヘッド204の中心軸線O周りに交互に等角度間隔で配置されている。図示する実施形態では、ヘッド204は、2つの上側溝206と、2つの下側溝208とを有している。なお、本実施形態では上側溝206と下側溝208は等角度間隔で配置されているが、びびり振動防止のため不等角度間隔で配置されていてもよい。上側溝206の各々には上側インサート220が取り付けられ、下側溝208の各々には下側インサート222が取り付けられる。上側インサート220および下側インサート222は、第2の実施形態の上側インサート120および下側インサート122と同様である。
【0068】
先端インサート230は、
図47に示すように、頂点242を有した略三角形状の板状に形成される。先端インサート230は、頂点242から上記三角形の2辺に沿って直線状に延びる2つの切れ刃を有している。該2つの切れ刃は、平面視(
図44ではフライス工具200の側面視)において、概ね直線状に延びる第1の切れ刃232aと、頂点242と第1の切れ刃232aとの間に設けられた円弧状の第2の切れ刃232bとを有している。2組の切れ刃232a、232bの各々は、すくい面236と、逃げ面234との交線によって形成される。
【0069】
本実施形態では、先端インサート230は、固定ねじ212によってヘッド204に固定される。そのため、ヘッド204は、その先端部に切欠き部210を有している。切欠き部210には、固定ねじ212をねじ込むねじ穴(図示せず)が形成されており、先端インサート230は、固定ねじ212の先端形状と類似したくぼみ240が形成されている。
【0070】
なお、既述の実施形態では、フライス工具10、100、200について、上側インサート20、120、220および下側インサート22、122、222は各々2つ、先端インサート30、50、230は各々1つ備えていたが、本発明は、これに限定されず、上側インサート、下側インサートは、それぞれ少なくとも1つ備えられていればよい。また、上側インサートの主切れ刃、最大径部周辺の副切れ刃、下側インサートの主切れ刃、先端インサートの主切れ刃および先端切れ刃のそれぞれの役割を、複数に分割または統合した切れ刃を備えているインサート式またはソリッド式の工具であってもよい。