(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全長のシスタチンA、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、またはSEQ ID NO:31を含むポリペプチドの量の測定を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)で行う、請求項1に記載の方法。
腎疾患を診断するためのキットであって、全長のシスタチンA、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、またはSEQ ID NO:31を含むポリペプチドにそれぞれ特異的に結合する抗体の1つまたは複数を含む、キット。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい態様の説明
本発明について以下に更に具体的に記載するが、本明細書に記載する実施例は単に例証を意図するものであり、多くの改変および変更が当業者には明白である。本明細書および別添の特許請求の範囲における使用では、特に記載しない限り、単数形の記載は複数形も包含する。本明細書で使用する用語は、一般に、本発明の文脈において、また、それぞれの用語が使用される特定の文脈において、当業界での通常の意味を有する。いくつかの用語については、実務者に本発明の説明に関する更なる手引きとなるよう、以下に、より具体的に定義する。
【0015】
他の態様では、本発明は表1に示すポリペプチドを検出する方法を提供し、ここで、開示するポリペプチドの相対レベルによって、腎疾患患者が同定される。これら本発明の方法の適用および実施において、当業界で公知の任意のポリペプチド検出法を用いてもよい。ある態様では、これらの方法は、患者サンプル中の、アポリポタンパク質C-I、アポリ
ポタンパク質C-II、フィブリノーゲンα鎖、またはフィブリノーゲンA-α鎖、CysB1、CysA、キニノゲン、インターαインヒビターH4(ITIH4)、またはケラチン10の完全長タンパク質およびポリペプチドフラグメントの発現レベルの同定によって行われ、ここで、コントロールと比較したタンパク質の示差的発現レベルが、腎疾患の指標となる。別の態様では、腎生検(kidney biopsy)で、免疫組織化学(IHC)法を用いて腎疾患を検出する。
【0016】
特定の態様では、本発明は、患者サンプル中のイノシンレベルおよび他のタンパク質/代謝産物レベルをコントロールと比較して検出する方法を提供する。相対レベルは、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法)によって測定してもよい。あるいはまた、イ
ノシンレベルおよび/またはタンパク質レベルは、特異的抗体を用いて測定してもよい。抗イノシン抗体については、Inouye, H.ら, Biochim Biophys Acta 1971, 240:594-603;Bonavida, B.ら, Immunochemistry 1972, 9:443-49;Inouye, H.ら, J Biol Chem 1973, 23:8125-29を参照されたい。イノシンレベルの低下は、腎臓病/腎疾患を示す。
【0017】
本明細書における使用では、本明細書に開示する方法によって治療すべき「患者」または「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物のいずれをも意味するが、特定の態様では、ヒト、ネコ、またはイヌである。
【0018】
本明細書で使用する「患者サンプル」には、限定される訳ではないが、患者由来の血液、血清、血漿、または尿がある。
【0019】
本明細書で使用する「コントロールサンプル」とは、非罹患個体または非罹患集団、より具体的には、腎疾患に罹患していない個体または集団由来のサンプルを意味する。
【0020】
「ポリペプチド」という用語は、1つまたはそれ以上の、1つのタイプのポリペプチド
(一組のポリペプチド)を意味する。「ポリペプチド」はまた、2つまたはそれ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物(すなわち、限定される訳ではないが、完全長タンパク質、トランケート型タンパク質、またはタンパク質フラグメントを含むポリペプチドの混合物)も意味する。「ポリペプチド(複数)」または「ポリペプチド(単数)」という用語は、それぞれ、「1つまたはそれ以上のポリペプチド」も意味する。
【0021】
本明細書で使用する「完全長」という用語は、インビボで発現されるのと同じ天然型アミノ酸配列を含有するタンパク質またはその変異体をいう。「トランケート型」という用語は、タンパク質のN-またはC-末端からアミノ酸が欠失したタンパク質をいう。「ペプチドフラグメント」という用語は、より大型のタンパク質のうちの一部のアミノ酸配列をいう。特定の態様では、ペプチドフラグメントは10、20、30、40、または50アミノ酸長である。
【0022】
本明細書に開示するように、本発明で同定および提供するポリペプチドは、腎疾患患者において発現が変化する(例えば増加する、または低下する)1つまたは複数のタンパク質を含有する。ある態様では、本明細書に記載するポリペプチドの異常レベルは、腎不全に関係する;それらには、特に、アポリポタンパク質C-Iポリペプチドフラグメントの増
加、アポリポタンパク質C-IIポリペプチドフラグメントの増加、フィブリノーゲンA-α鎖ポリペプチドフラグメントの低下、またはフィブリノーゲンα鎖ポリペプチドフラグメントの低下(特に、本発明のポリペプチドに特異的な抗体によって検出されるもの)がある。ある態様では、更なるポリペプチドおよびタンパク質の異常レベルが含まれ、それらに
は、特に、イノシン代謝産物および以下のタンパク質がある:アポリポタンパク質C-I、
アポリポタンパク質C-II、フィブリノーゲンα鎖、またはフィブリノーゲンA-α鎖、キニノゲン、およびインターαインヒビターH4(ITIH4)。ある態様では、タンパク質は血液
、血清、血漿、または尿中で観察される。特定のポリペプチドの相対レベルは、腎不全の進行度および重篤度を示す。
【0023】
いずれの態様でも、タンパク質発現の変化はコントロール(例えば非腎疾患)サンプルと比較したものであり、本発明はコントロールサンプルに比較した示差的発現レベルを示す。本発明は、患者サンプルにおいて腎疾患を同定し、それによって予後診断および診断を行うための、表1のポリペプチドに特異的な抗体およびその使用法を提供する。本明細書に記載するポリペプチドの発現の変化が当業者に公知の方法を用いて容易に検出できることは、本発明の利点である。
【0024】
特定の態様では、本発明は、哺乳動物、特にイヌ、ネコ、およびヒトにおいて腎疾患を同定するための試薬および方法を提供する。ある態様では、本発明は腎疾患患者の診断および予後診断を行うための方法を提供する。本明細書に開示するように、患者サンプルにおける本発明のポリペプチドの同定は、腎臓病の独自の予測因子または病期(例えば第15期)の同定因子となりうる。有益なことに、本発明によれば、第3期以前の腎臓病を診断および同定することが可能であり、これは患者の年齢または体重によって制約されない。このように、本発明の更なる態様は、本発明のポリペプチドを用いて行われた該腎疾患患者の予後診断を用いて、好適な腎臓療法を選択することに関する。
【0025】
本発明の目的では、「免疫学的試薬」という用語は、抗血清および抗体、特にモノクローナル抗体、並びに、それらのフラグメント(F(ab)、F(ab)2、F(ab)′、およびFvフラグメントなど)を含むことを意図する。また、免疫学的試薬の定義には、キメラ抗体、ヒト化抗体、および組換えによって生成された抗体、そしてそれらのフラグメントも包含される。本発明の試薬に関連して使用される免疫学的方法には、直接および間接(例えばサンドイッチ)標識法、免疫アフィニティーカラム、免疫磁性ビーズ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、並びに、1次抗体を検出するためのペルオキシダーゼ標識2次抗体がある。
【0026】
好ましくは、本発明の免疫学的試薬は検出可能な標識が施与されており、最も好ましくは、それらの標識は、市販の装置(例えば、そして最も好ましくは、蛍光活性化セルソーター)を用いて検出するのに適した励起波長および発光波長を有する蛍光標識である。本発明の実施に有用な蛍光標識の例として、フィコエリトリン(PE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン(RH)、テキサスレッド(TX)、Cy3、ヘキスト33258、および4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)がある。それらの標識を免疫学的試薬、例えば抗体(最も好ましくはモノクローナル抗体)に、標準的な技術によってコンジュゲートさせてもよい(Mainoら, 1995, Cytometry 20: 127-133)。
【0027】
本発明の抗体は、表1に示す本発明のポリペプチド、本発明のポリペプチドの変異体、またはそのフラグメントに特異的に結合する抗体分子である。本発明の抗体は、アポリポタンパク質C-I、アポリポタンパク質C-II、フィブリノーゲンα鎖、またはフィブリノー
ゲンA-α鎖のポリペプチドフラグメントに特異的であってもよく、例えば、SEQ ID NO:3
、7、13、または20の1つまたは複数に特異的な抗体であってもよい。本発明の抗体は、好ましくは、複数のタンパク質産物を認識する。例えば、SEQ ID NO:3に特異的な抗体は、
アポリポタンパク質C-Iの複数のペプチドフラグメント(SEQ ID NO:1-2を含む)並びに完全長タンパク質を認識する。当業者は、抗体が表1のポリペプチドに特異的であるか否かを、本明細書に記載するアッセイを用いて容易に確認することができる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結
合フラグメントであってもよい。抗体の抗原結合フラグメントは、無傷抗体の抗原結合部位または可変領域を含有する、無傷抗体の一部分であって、該部分は該無傷抗体のFc領域の重鎖定常ドメインを含有しない。抗体の抗原結合フラグメントの例には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFvフラグメントがある。
【0028】
本発明の抗体は、任意の抗体クラスであってもよく、それらには例えばIgG、IgM、IgA
、IgD、およびIgEがある。抗体またはそのフラグメントは、本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は、好適な実験動物においてインビボで作製するか、または組換えDNA法を用いてインビトロで作製してもよい。抗体の調製法およびキャラクタリゼーシ
ョン法は、当該分野で公知である。例えばDean, Methods Mol. Biol. 80:23-37 (1998);Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79 (1994);Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88 (1994);Gullick, Methods Mol. Biol. 32:389-99 (1994);Drenckhahnら Methods Cell.
Biol. 37:7-56 (1993);Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992);Wrightら Crit. Rev. Immunol. 12:125-68 (1992)参照。例えば、ポリクローナル抗体は、本発明の
ポリペプチドを動物(例えばヒトもしくは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマ)に投与することによって作製してもよい。免疫化した動物由来の血清を回収し、例えば硫酸アンモニウム沈殿後にクロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)を行うことによって、抗体を血漿から精製する。ポリクローナル抗体の作製法および処理法は、当該分野で公知である。
【0029】
「特異的に結合する」または「〜に特異的である」とは、第1の抗原(例えば表1のポリペプチド)が本発明の抗体を、他の非特異的分子に対するより高いアフィニティーで認識および結合することを意味する。また、「特異的に結合する」または「〜に特異的である」とは、第1の抗体(例えばSEQ ID NO:1-59に対して産生させた抗体)がSEQ ID NO:1-59を、他の非特異的分子に対するより高いアフィニティーで認識および結合することを意味する。非特異的分子は、該第1の抗原と共通のエピトープを有さない抗原である。特異的結合は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイを用い、当該分野で公知の方法論によって試験できる。
【0030】
本明細書で使用する「結合を巡って競合する」という用語は、特定のポリペプチド配列または抗原に結合アフィニティーを有し、それが存在する場合に、他の非特異的分子より該ペプチド配列/抗原に優先的かつ特異的に結合するような抗体を示す。この場合も、非特異的分子は、該第1の抗原と共通のエピトープを有さない抗原である。
【0031】
本発明の抗体には、以下のような抗体およびその抗原結合フラグメントが包含される:(a)SEQ ID NO:1-59もしくはその抗原結合フラグメントへの結合を巡って参照抗体と競合する;(b)参照抗体と同じSEQ ID NO:1-59もしくはその抗原結合フラグメントのエピトープに結合する;(c)参照抗体と実質的に同じKdでSEQ ID NO:1-59もしくはその抗原結合フラグメントに結合する;および/または、(d)参照抗体と実質的に同じオフレートでSEQ ID NO:1-59もしくはその抗原結合フラグメントに結合する(ここで、該参照抗体はSEQ ID NO:1-59のポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントにK
a=10
7 l/molまた
はそれ以上の結合アフィニティーで特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである)。
【0032】
分子Xの、そのパートナーYに対するアフィニティーは、解離定数(Kd)で表すことができる。平衡解離定数(Kd)は、k
off/k
onの比で計算される。Chen, Y.ら, 1999, J. Mol. Biol. 293: 865-881参照。親和定数を測定するための種々の方法が当該分野で知られており、そのいずれを本発明の目的に使用してもよい。特定の態様では、参照抗体は、SEQ ID
NO:1-59のポリペプチドに対して特定のK
on速度/会合速度またはK
off速度の結合アフィ
ニティーを有する抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある態様では、本発明の抗体は、K
on=6 x 10
5 M
-1s
-1以上で特異的に結合する;K
off速度=5 x 10
-6 s
-1以上で
特異的に結合する;または500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、40pM、30pM、20pMもしくはそれ以上の結合アフィニティーで特異的に結合する。
【0033】
更に、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープを標的とするモノクローナル抗体も、容易に作製することができる。例えば、本発明のポリペプチドで免疫化した哺乳動物(例えばマウス)由来の正常B細胞を、例えばHAT感受性マウス骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを作製してもよい。ポリペプチド特異的抗体を産生するハイブリドーマを、RIAまたはELISAを用いて同定し、半流動寒天でのクローニングまたは限界希釈によって単離してもよい。特定の抗体を産生するクローンを、更なるスクリーニングによって単離する。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングを、標準的な方法を用いて、例えば本発明のポリペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ、ELISAアッセイに
よってモノクローナル抗体の結合を測定することによって行ってもよい。モノクローナル抗体の作製法および処理法は、当該分野で公知である。例えばKohlerおよびMilstein, Nature, 256:495 (1975)参照。特定のアイソタイプのモノクローナル抗体を、最初の融合体から選択して直接調製してもよく、あるいは、異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから同胞選択(sib selection)法を用いてクラス・スイッ
チ変異体を単離することによって二次的に調製してもよい。Steplewskiら, P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985;Spriaら, J. Immunolog. Meth. 74:307, 1984参照。本発明のモノク
ローナル抗体は、組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば米国特許第4,474,893号;米国特許第4,816,567号参照。本発明の抗体は、化学的に構築してもよい。例えば米国特許第4,676,980号参照。
【0034】
本発明の抗体はキメラ抗体(例えば米国特許第5,482,856号参照)、ヒト化抗体(例え
ばJonesら, Nature 321:522 (1986);Reichmannら, Nature 332:323 (1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992)参照)、イヌ化抗体、イヌ抗体、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば直接的不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはトリメラ(Trimera)法によって作製してもよい(例えばReisener
ら, Trends Biotechnol. 16:242-246 (1998)参照)。
【0035】
SEQ ID NO:1-59に特異的に結合する抗体は、動物由来のサンプル(例えば血清、血液、血漿、細胞、組織、または尿サンプル)中の、腎疾患に特異的なポリペプチドフラグメントの存在の検出に特に有用である。イムノアッセイは1つの抗体または複数の抗体を使用してもよい。イムノアッセイは、例えば1つのエピトープに特異的なモノクローナル抗体(単数)、1つのポリペプチドのエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)の組み合わせ、異なるポリペプチド(複数)のエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)、同じ抗原(単数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、異なる抗原(複数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、または、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組み合わせを使用してもよい。免疫アッセイプロトコルは、例えば競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイ(例えば標識された抗体を使用する)に基づくものであってもよい。本発明の抗体は、当該分野で公知の任意のタイプの標識(例えば蛍光、化学発光、放射能、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光体)で標識してもよい。
【0036】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを支持体に結合させ、これを用いて腎疾患で示差的に生成されるタンパク質の存在を検出してもよい。支持体には、例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(
magletite)がある。
【0037】
更に、本発明の抗体を使用して、免疫アフィニティーカラムによってポリペプチドを単離してもよい。抗体を(例えば吸着または共有結合によって)、その免疫学的選択活性を保持するようにして、固相支持体に固定化してもよい。必要により、抗体の抗原結合部位をアクセス可能な状態に保持するようにして、スペーサー基を含有させてもよい。その後、固定化した抗体を用いて、生体サンプル(限定されるわけではないが、唾液、血清、血液、および尿など)由来の表1のポリペプチドに結合させてもよい。
【0038】
また、本発明の抗体を免疫局在性の研究に使用し、種々の細胞事象または生理学的条件における本発明のポリペプチドの存在および分布を分析してもよい。更に、抗体を使用して、受動免疫に関与する分子の同定、および非タンパク質抗原の生合成に関与する分子の同定を行ってもよい。それらの分子の同定は、ワクチン開発に有用でありうる。本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体および1本鎖抗体)を使用して、腎疾患の寛解の経過を
モニタリングしてもよい。動物由来試験サンプル中の、表1に示すポリペプチドに特異的
な抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の寛解を目的とする特定の治療計画が有効であるか否かを判定してもよい。例えば、直接結合アッセイ、例えばRIA、ELISA、またはウェスタンブロット・アッセイを用いて、抗体の検出および/または定量を行ってもよい。
【0039】
本発明の方法を用いて、表1のポリペプチドフラグメントまたは表1のアミノ酸配列を含有する完全長タンパク質を検出してもよく、ここで、抗体または抗体の抗原結合フラグメントはSEQ ID NO:159に特異的である。生体サンプルには、例えば哺乳動物(イヌ、ネコ
、またはヒトなど)由来の血清、血液、細胞、血漿、唾液、または尿がある。試験サンプルは、未処理であるか、または沈殿、分画、分離、希釈、濃縮、もしくは精製を行ってもよい。
【0040】
ある態様では、本発明の方法は、試験サンプルを、ポリペプチド/抗体複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で、SEQ ID NO:159に特異的な抗体の1つまたは複
数と接触させることを含む。すなわち、本発明の抗体は、サンプル中に存在するSEQ ID NO:159のポリペプチドの1つまたは複数と特異的に結合する。当業者は、抗体/ポリペプチド複合体結合の検出に使用されるアッセイおよび条件に詳しい。サンプル中のポリペプチドおよび抗体間の複合体形成を検出する。抗体/ポリペプチド複合体が形成されれば、患者サンプル中にポリペプチドが存在することを示す。
【0041】
例えば腎疾患に罹患している疑いのあるヒト、ネコ、またはイヌから試験サンプルを採取することによって、腎疾患を診断する方法に、本発明の抗体を使用することができる。試験サンプルを、抗体抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で、本発明の抗体と接触させる。抗原/抗体複合体の形成を可能とし、これに好適な条件は、当業者に公知である。抗体-抗原複合体の量を、当該分野で公知の方法によって測定してもよ
い。
【0042】
本発明の方法は、コントロールと比較した、患者サンプル中の表1のポリペプチドの示差的発現を確認することにより、患者における腎疾患を診断することを含む。これらの方法は、病期(例えば第15期)の診断または同定を含む。本発明は更に、患者サンプル中の本発明の特定のポリペプチドのレベルを測定することによる、患者の健康状態の予後診断、疾病進行のモニタリング、および/または、治療効果の評価/モニタリングのための方法を含む。ある観点では、本発明の方法は、疾病の進行または治療効果を評価するために、複数の時点で実施してもよい。特定の態様では、特定の療法が疾病の進行を低下または改善すべき場合に、診断時および治療後の特定の時点(複数)で該方法を実施してもよ
い。
【0043】
別の態様では、本発明の方法を使用して、腎疾患の進行を改善するための組成物または治療計画(組成物または食事)の有効性を評価する。同様に、本発明の方法を使用して、患者における表1のポリペプチドのレベルに対する組成物または治療計画の活性(activity)の評価を行ってもよい。
【0044】
患者サンプルおよびコントロールサンプル中に存在する抗体複合体レベルの差異が、腎疾患の指標となる。本発明のある態様では、抗体は表1のポリペプチドの1つまたは複数に特異的である。本発明の抗体を試験サンプルと接触させてもよい。試験サンプル中に存在する、該ポリペプチドに特異的な抗体は、好適な条件下で、抗原-抗体複合体を形成する
。抗体-抗原複合体の量は、当該分野で公知の方法によって測定できる。
【0045】
本発明のある態様では、被験体において腎疾患を検出することができる。生体サンプルを被験体から採取する。SEQ ID NO:1-59を含有するポリペプチドまたは他の本発明のポリペプチドに特異的な抗体の1つまたはそれ以上を、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可
能な条件下で生体サンプルと接触させる。ポリペプチド/抗体複合体を検出する。コントロールと比較してポリペプチド/抗体複合体のレベルの差異が検出されれば、該哺乳動物が腎疾患に罹患していることを示す。
【0046】
本発明のある態様では、抗体に結合した指示薬(例えば酵素コンジュゲート)が検出可能な反応を触媒すると、ポリペプチド/抗体複合体が検出される。必要により、シグナル生成化合物を含有する指示薬を、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成が可能な条件下でポリペプチド/抗体複合体に適用してもよい。ポリペプチド/抗体/指示薬を検出する。必要により、ポリペプチド/抗体複合体形成の前に、ポリペプチドまたは抗体を指示薬で標識してもよい。方法は、必要により、陽性コントロールまたは陰性コントロールを含んでもよい。
【0047】
本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を、固相または基材に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体を
添加する。抗体は固相上に使用する抗体と同じであるか、または異なる供与源または異なる種由来であってもよく、指示薬(例えば酵素コンジュゲート)に結合させてもよい。各添加の前に洗浄工程を行ってもよい。発色団(chromophore)または酵素基質を添加し、
呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0048】
本発明の別の態様では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を固相または基材に結合さ
せる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する第2の抗種抗体(anti-species antibodies)を添加する。これら第2の抗体は、固相抗体と異なる種由来である。第2の抗体と特異的に結合し、固相固体とは特異的に結合しない第3の抗種抗体(anti-species antibodies)を添加する。第3の抗体は指示薬(例えば酵素コンジュゲート)を含有してもよ
い。各添加の前に洗浄工程を行ってもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0049】
ある態様では、1つまたはそれ以上の捕捉抗体が、本発明のポリペプチドの1つまたはそれ以上のエピトープに特異的に結合してもよい。捕捉抗体(単数または複数)を使用して、SEQ ID NO:1-59のポリペプチドの1つまたは複数を、例えば固相に、固定化してもよい。1つまたはそれ以上の検出抗体が、本発明のポリペプチドの、同じ1つもしくはそれ以
上のエピトープ、または異なる1つもしくはそれ以上のエピトープに特異的に結合しても
よい。検出抗体を使用して、本発明のポリペプチドの固相への固定化を検出または可視化してもよい。この態様は、1つの抗体だけを使用して捕捉および検出の両方を行うアッセ
イに比較して、より特異的、かつ、より高感度であるため、有利である。
【0050】
本発明のアッセイには、それらに限定されるわけではないが、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものがあり、それらに限定されるわけではないが酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA
)、血球凝集(HA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、およびマイクロタイタープレート・アッセイ(マイクロタイタープレートの1つまたはそれ以上のウェル中で行うアッセ
イ)がある。本発明のあるアッセイは、リバーシブルフロークロマトグラフィー結合アッセイ、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む。例えば米国特許第5,726,010号参照。
【0051】
アッセイは、固相もしくは基材を使用するか、または、免疫沈降もしくは固相を使用しない他の任意の方法で実施してもよい。固相または基材を使用する場合、1つまたはそれ
以上の本発明のポリペプチドを、以下のような固相支持体または基材に直接または間接的に結合させる:マイクロタイター・ウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、マトリクス、膜、合成もしくは天然ファイバー(例えばガラスもしくはセルロースを主成分とする物質、または、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)から成る繊維性のマット、粒子物質(例えばガラスまたは種々の熱可塑性ポリマー)から成る焼結構造、または、ニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(性質上、一般に合成である)から成るキャスト膜フィルム。本発明のある態様では、基材は焼結した微細ポリエチレン粒子であり、これは、一般に多孔性ポリエチレンとして知られている(例えばChromex社(ニューメキシコ州アルバカーキ)製、10-15ミクロン多孔性ポリエチレン)。これらの基材物質はすべて、好適な形状(例えばフィルム、シート、またはプレート)で使用することができ、あるいは、好適な不活性キャリア(例えば紙、ガラス、プラスチックフィルム、または織物)上にコーティングするか、またはそれに結合もしくはラミネートさせてもよい。抗体を固相上に固定化するための好適な方法には、イオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などがある。
【0052】
あるアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の抗体を固相または基材上にコーティングしてもよい。表1のポリペプチドまたはそのフラグメントを含有する疑いのある試験サンプルを、該ポリペプチドに特異的な抗体または抗体フラグメントにコンジュゲートしたシグナル生成化合物を含む指示薬と共に、固相の抗体が試験サンプルのポリペプチドに結合するか、またはポリペプチドに特異的な抗体にコンジュゲートした指示薬化合物が固相の抗体に結合するかのいずれかによって抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下でインキュベートする。抗ポリペプチド抗体にコンジュゲートした指示薬の固相への結合を、定量的に測定してもよい。コントロールサンプルから生成されるシグナルと比較して、測定可能なシグナル変化があれば、これは本発明のポリペプチド(SEQ ID NO:1-59)の存在を示す。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中のポリペプチドを定量化できる。
【0053】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を支持体または基材上にコーティングする。本発明の抗体を指示薬にコンジュゲートさせ、試験サンプルに添加する。この混合物を支持体または基材に適用する。本発明のポリペプチドが試験サンプル中に存在すれば、それらは指示薬にコンジュゲートした抗体の1つまたはそれ以上、
および、支持体上に固定化された抗体の1つまたはそれ以上に結合する。その後、このポ
リペプチド/抗体/指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中のポリペプチドを定量化できる。
【0054】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を支持体または基
材上にコーティングする。試験サンプルを支持体または基材に適用し、インキュベートする。洗浄溶液で固相支持体を洗浄することにより、サンプル由来の未結合成分を除去する。表1のポリペプチドが試験サンプル中に存在すれば、それらは固相上にコーティングされた抗体に結合する。このポリペプチド/抗体複合体を、指示薬にコンジュゲートした第2の種特異的抗体(species-specific antibody)を用いて検出できる。その後、ポリペ
プチド/抗体/抗種抗体指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中のポリペプチドを定量化できる。
【0055】
ポリペプチド/抗体複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成は、例えば放射測定、比色測定、蛍光測定、サイズ分離、または沈殿法によって検出できる。必要により、ポリペプチド/抗体複合体を、シグナル生成化合物を含む指示薬に結合した二次抗体を添加することによって検出する。ポリペプチド/抗体複合体に結合したシグナル生成化合物(標識)を含む指示薬は上記の方法で検出できるが、それらには発色剤、触媒(例えば酵素コンジュゲート)、蛍光化合物(例えばフルオレセインおよびローダミン)、化学発光化合物(例えばジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノール)、放射性元素、直接目視できる標識、並びにコファクター、阻害剤、磁気粒子などがある。酵素コンジュゲートの例としてアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどがある。特定の標識を選択することが重要な訳ではないが、それ自体によって、または1つもしくはそれ以上の更なる物質とコンジュゲートすることによって、シグナルを生成することができる。
【0056】
コントロールと比較して複合体の形成レベルが異なれば、腎疾患の存在を示す。このように、本発明の方法を使用して、動物における腎疾患を診断できる。
【0057】
本明細書で使用する「量の測定」という用語は、患者サンプル中の1つまたは複数のポリペプチドのレベルを測定または同定することをいう。特定の態様では、完全長タンパク質、トランケート型タンパク質、およびタンパク質フラグメントを含む、複数の長さのポリペプチド中の特定のエピトープが同定される。これは、当該分野で公知の、抗体の使用を伴うポリペプチド検出のための方法論によって行うことができ、それらには、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、または免疫組織化学がある。あるいはまた、本発明のポリペプチド、SEQ ID NO:1-59は、質量分析法、または当業者に公知の同様の方法によって測定してもよい。患者サンプル中に存在するポリペプチドの量の測定は、例えばインビトロの分析および実験操作によって行うことができる。存在するポリペプチドの量は、単なる検査で評価することはできない。
【0058】
別の態様では、患者サンプル中に存在する1つまたは複数の表1のポリペプチド転写産物のレベルの上昇または低下を、本発明のポリペプチドに選択的にハイブリダイズする核酸プローブがハイブリダイズする過程によって検出する。検出手段として使用する核酸プローブと、本発明のポリペプチド転写産物を、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズさせ、ここで、核酸複合体の形成および検出レベルは、サンプル中の転写産物のレベルを示す。ポリペプチドのレベルの上昇または低下は、腎疾患を示す。ポリペプチド転写産物に特異的な核酸プローブの作製法は、当該分野で公知である。
【0059】
本発明の方法により、試験サンプル中の、表1のポリペプチドまたは表1のポリペプチド配列を含む完全長タンパク質の総量または数量を明らかにすることもできる。ある態様では、特定のポリペプチドの総量または数量は、病期(例えば第15期)、疾病の進行、および/または予後診断の指標となる。多くの指示薬(例えば酵素コンジュゲート)で、存在するポリペプチドの総量は生成されるシグナルと正比例する。試験サンプルのタイプに基づき、好適なバッファー試薬で希釈するか、濃縮するか、または処理を行わずに固相と
接触させることができる。例えば、ポリペプチドの存在および/または量を測定するため、予め希釈した血清もしくは血漿、または高濃度の標本(例えば尿)を試験するのが通常好ましい。
【0060】
本発明のポリペプチドおよびアッセイを、腎疾患の存在を検出するための他のポリペプチドまたはアッセイと組み合わせてもよい。例えば、本発明のポリペプチドおよびアッセイを、クレアチニンまたは一般のタンパク質レベルを測定するための試薬(reagents that creatinine or general protein levels)と組み合わせてもよい。
【0061】
本発明はまた、本明細書に開示する方法を実施するためのキットを提供する。ある態様では、本発明のキットは、表1のポリペプチドの1つまたは複数に特異的な1つまたは複数の抗体を含み、特定の態様では、該抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の抗原結合フラグメント、または1本鎖抗体である。必要により、本発明のキットの特
定の態様では、使用説明書、並びに、特に当業者によって理解されるサンドイッチアッセイに有用な2次抗体を含んでもよい。該キットの識別可能に標識した抗体コンポーネント、並びに、該抗体を標識するための試薬および方法も、本発明のキットの、便宜に提供されるコンポーネントである。
【0062】
更なる態様では、本発明のキットは、示差的タンパク質発現をする表1のポリペプチドの1つまたは複数に特異的に結合する1つまたは複数の抗体を含む。ある態様では、該抗体は固相(非限定的な例として、チップ、マイクロアレイ、ビーズなどがある)上で提供される。必要により、本発明のキットの特定の態様では、使用説明書、並びに、特に当業者によって理解されるサンドイッチアッセイに有用な2次抗体を含んでもよい。該キットの識別可能に標識した抗体コンポーネント、並びに、該抗体を標識するための試薬および方法も、本発明のキットの、便宜に提供されるコンポーネントである。
【0063】
本発明のキット(例えば製品)は、患者サンプル中の表1のポリペプチドまたはそのタ
ンパク質フラグメントを検出するためのものである。キットは、1つまたはそれ以上の本
発明の抗体、および、サンプル中に存在する表1のアミノ酸配列を含有する完全長タンパク質またはタンパク質フラグメントへの該抗体の結合を測定する方法を含んでもよい。また、キットまたは製品は、1つまたはそれ以上の本発明の抗体または抗体フラグメント、
および、サンプル中のポリペプチドへの該抗体または抗体フラグメントの結合を測定する方法を含んでもよい。キットは、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドまたは抗体
を含有する装置、および、(例えば哺乳動物における腎疾患の同定のための)該1つまた
はそれ以上のポリペプチドまたは抗体の使用説明書を含んでもよい。また、キットは、キットの該1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体を腎不全の同定に使用することが
できることを示したラベルを含む包装材料を含んでもよい。当業者に公知の他のコンポーネント(例えばバッファー、コントロールなど)がそれらの試験キットに含まれてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば患者における腎疾患の個々の症例を診断するのに有用である。
【0064】
本発明のキットは、腎疾患、特にイヌ腎疾患の診断、予後診断、または治療のモニタリングに有用である。
【0065】
ある態様は、SEQ ID NO:1-59を含有する精製ポリペプチドを提供し、該ポリペプチドは、約50、40、35、30、25、20、15、10(または約31から約175の間の任意の範囲)未満の
連続する天然型アミノ酸から成る。本発明のある態様では、精製ポリペプチドは約10、15、20、25、30、35、40、50、60以上の連続する天然型アミノ酸から成る。
【0066】
ポリペプチドSEQ ID NO:1-59が完全長タンパク質より小さいということは重要であり、
これは、ポリペプチドが小さいほど、完全長ポリペプチドのアッセイに比較して特異度および/または感度が高くなりうるためである。これらの、より小さいポリペプチドは、完全長ポリペプチドに比較して、製造がより安価であり、より高い純度で得られうる。更に、サンプル中に存在する、より小さいフラグメントおよびより小さいフラグメントのレベルは、疾病状態の指標となる。断片化されたタンパク質の示差的発現は、腎疾患のマーカーである。
【0067】
変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-59のポリペプチド配列と少なくとも約80%、もしくは約81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し、これらもまた、本発明のポリペプチドである。例えば、SEQ ID NO:1-59の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-59と少なくとも約97%、94%、90%、87%、84%、または81%の同一性を有する。変異型ポリペプチドは、1つもしくはそれ以上の保存的アミノ酸変化または他のマイナーな変更を有しつつ、生体活性を保持している、すなわち、生物学的機能性を有する同等物である。生物学的に活性な同等物は、相当する野生型ポリペプチドに比較して、実質的に同等の機能を有する。本発明のある態様では、ポリペプチドは約1、2、3、4、5、10、20、またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0068】
配列同一性%は、当業界で認識される意味を有し、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の同一性を測定するための多くの方法がある。例えば以下参照:Lesk編, Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988);Smith編, Biocomputing: Informatics And Genome Projects, Academic Press, New York, (1993);GriffinおよびGriffin編, Computer Analysis Of Sequence Data, Part I, Humana
Press, New Jersey, (1994);von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology,
Academic Press, (1987);および、GribskovおよびDevereux編, Sequence Analysis Primer, M Stockton Press, New York, (1991)。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのア
ラインメント法はコンピュータプログラムに体系化されており、それらには、GCGプログ
ラム・パッケージ(Devereuxら, Nuc. Acids Res. 12:387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら, J. Molec. Biol. 215:403 (1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711) (これはSmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム(Adv. App. Math., 2:482-489 (1981))を使用する)がある。例えば、FASTAアルゴリズムを使用するコンピュータ・プログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティ=-12、ギャップ伸長ペナルティ=-2のアフィン・
ギャップ検索を用いて使用してもよい。
【0069】
いずれかの配列アラインメント・プログラムを使用して、特定の配列が、例えば参照配列と約95%の同一性を有するか否かを判定する場合、参照ポリヌクレオチドの全長にわたって同一性%が計算され、同一性のギャップが参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド総数の5%まで許容されるように、パラメータを設定する。
【0070】
一般に、変異型ポリペプチドの同定は、本発明のポリペプチド配列の1つを改変し、改
変されたポリペプチドの特性を評価してそれが生物学的同等物であるか否かを判定することによって行うことができる。変異体が、アッセイ(例えば免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウェスタンブロット・アッセイ)で本発明のポリペプチドと実質的に同様に反応すれば(例えば元のポリペプチドの90-110%の活性を有すれば)、その変異体は生物学的同等
物である。ある態様では、アッセイは競合アッセイであり、生物学的に同等のポリペプチドは、相当する反応性抗原または抗体への本発明のポリペプチドの結合を約80、95、99、または100%低下させる能力を有する。相当する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、変異型ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0071】
保存的置換とは、あるアミノ酸が類似した特性を持つ別のアミノ酸で置換されたもので、ペプチド化学分野の当業者によってそのポリペプチドの二次構造およびヒドロパシーが実質的に変更されないと予想されるものである。一般に、以下のアミノ酸群は保存的変更である:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0072】
本発明のポリペプチドは、翻訳と同時に、または翻訳後にタンパク質の輸送を指示するシグナル(またはリーダー)配列を更に含有してもよい。ポリペプチドはまた、ポリペプチドの合成、精製、もしくは同定を容易にする(例えばポリHis)、または固相支持体へ
のポリペプチドの結合を促進するための、リンカーまたは他の配列を含有してもよい。例えばポリペプチドを免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミンにコンジュゲートさせてもよい。
【0073】
ポリペプチドは、天然では通常結合していないアミノ酸配列、すなわち異種アミノ酸配列に共有結合または非共有結合していてもよい。異種アミノ酸配列は、異なる生物由来の配列、合成配列、または、通常本発明のポリペプチドのカルボキシもしくはアミノ末端に位置しない配列であってもよい。更に、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子(例えば指示薬)に共有結合または非共有結合していてもよい。ポリペプチドはアミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらを組み合わせたものに共有結合または非共有結合していてもよい。また、ポリペプチドは免疫応答を亢進する部分(すなわち官能基(ポリペプチドまたは他の化合物であってもよい))(例えばIL-2のようなサイトカイン)、精製を容易にする部分(例えば6-ヒスチジン・タグ、trpE、グルタチオン、マルトース結合タンパク質のようなアフィニティー・タグ)、またはポリペプチドの安定性を向上する部分(例えばポリエチレングリコール;アミノ末端保護基(例えばアセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、またはt-ブチルオキシカルボニル);カルボキシル末端保護基(例えばアミド、メチルアミド、およびエチルアミド))に結合していてもよい。本発明のある態様では、タンパク質精製リガンドは、(例えば本発明のポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、またはその両方に位置する)1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーは、天然では本発明のポリ
ペプチドと結合していないアミノ酸配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1,000個のアミノ酸を含有してもよい。
【0074】
必要により、本発明のポリペプチドは融合タンパク質の一部であってもよく、この融合タンパク質は他のアミノ酸配列(例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)、およびタンパク質の精製に有用なリガン
ド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌
プロテインA)を更に含有してもよい。1つより多い本発明のポリペプチドが、本発明の
融合タンパク質中に存在してもよい。本発明のポリペプチドは、異なる生物のタンパク質に機能的に結合するか、または融合タンパク質を形成してもよい。本発明の融合タンパク質は1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、そのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含有してもよい。融合タンパク質は天然に存在しない。「機能的に結合した」という用語は、本発明のポリペプチドと他のポリペプチドが、本発明のポリペプチドのN
末端またはC末端のいずれかにインフレームで融合していることを意味する。
【0075】
本発明のポリペプチドは多量体であってもよい。すなわちポリペプチドは、本発明のポリペプチドのコピーを1つもしくはそれ以上含有するか、またはそれらの組み合わせを含有してもよい。多量体ポリペプチドは多抗原ペプチド(MAP)であってもよい。例えばTam
, J. Immunol. Methods, 196:17-32 (1996)を参照されたい。
【0076】
本発明のポリペプチドは、SEQ ID NO:1-59のポリペプチドに特異的な抗体に認識される抗原を含有してもよい。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープ(すなわち抗原決定基)を含有してもよい。エピトープは直鎖状エピトープ、連続エピトープ(sequential epitope)、またはコンフォメーショナルエピトープであってもよい。本発明のポリペプチド中のエピトープはいくつかの方法によって同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf, CABIOS 4:181-186(1988)を参照されたい。例えば、本発明のポリペプチドを単離およびスクリーニングしてもよい。合わせるとポリペプチド配列全体を網羅するような一連の短鎖ペプチドを、タンパク質切断によって調製してもよい。例えば30アミノ酸長のポリペプチド・フラグメント(またはより小さいフラグメント)から開始して、各フラグメントについてELISAによって認識されるエピトープの存在を試験してもよい
。例えばELISAアッセイにおいて、本発明のポリペプチド(例えば30アミノ酸長ポリペ
プチド・フラグメント)を固相支持体(例えばプラスチック製マルチウェル・プレートのウェル)に結合させる。一群の抗体を標識して固相支持体に付加し、非特異的吸着が阻害されるような条件下で未標識の抗原に結合させ、未結合の抗体および他のタンパク質を洗浄除去する。抗体の結合を、例えば無色の基質を有色の反応生成物に変化させる反応によって、検出する。その後、同定された30アミノ酸長から徐々により小さな、オーバーラップしているフラグメントを試験し、目的のエピトープをマッピングしてもよい。
【0077】
本発明のポリペプチドは組換えによって作製してもよい。当該分野で公知の技術を使用して本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに導入し、それを好適な発現ホスト細胞系で発現させてもよい。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫発現系が当該分野で利用可能であるが、それらの発現系のいずれを使用してもよい。必要により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを無細胞翻訳系で翻訳してもよい。ポリペプチドは化学的に合成するか、または患者のサンプルもしくは細胞から得てもよい。
【0078】
本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-59に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントを含有してもよい。免疫原性ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-59を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞応答)を惹起
することができる。本発明の免疫原性ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-6に示すアミノ酸配
列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約10、15、20、25、30、40、50、またはそれ以上のアミノ酸長であってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約50、40、30、20、15、10、またはそれ未満のアミノ酸長であってもよい。
【0079】
本発明について本明細書に適宜、例証的に記載するが、これを任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)(それらについては本明細書に具体的に開示していない)を欠いた状態で実施してもよい。従って、例えば本明細書に記載するそれぞれの例で、「を含む」、「本質的に…から成る」、および「から成る」という用語は、それぞれ他の2つの用語のいずれかと置換してもよく、それでもなお、その慣例的な意味を保持する。使用した用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであって、それらの用語および表現の使用において、表示および記載する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく、認識されるように、種々の改変が本発明の特許請求の範囲内で可能である。従って、本発明について態様、必要に応じた特長によって具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示するコンセプトの改変および変更を実施してもよく、それらの改変および変更は記述および添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされることは理解されるべきである。
【0080】
上記の特長を含む本発明の方法の態様は、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【実施例】
【0081】
実施例
以下の実施例は、本発明の具体的な態様、および、その種々の使用法について例証する。それらは単に説明を目的とするものであって、本発明を制限するものと解釈すべきではない。
【0082】
実施例1 血液サンプルの同定および精製
患者血液サンプルをイヌ(複数)から回収した。これらのイヌは単一の家族のメンバーであり、1997年からテキサスA&M大学で飼育されていたものである。より具体的には、こ
の家族は、X連鎖性遺伝性ニューロパチー(XLHN)を有するヘテロ接合(キャリア)のメ
スのコロニーである。XLHNは、COL4A5遺伝子中の変異によって起こり、メス・イヌでは、IV型コラーゲンペプチドのモザイク状発現が起こり、3から6ヶ月齢で、糸球体性タンパク尿が発症する。Nabityら, J Vet Intern Med 2007; 21:425-430。コントロール対被験(
疾患)を選択し、コントロールは健常なイヌ、被験群または疾患群はクレアチニンレベルの上昇を示しているイヌとした。
【0083】
実験解析のための患者サンプルの調製には、以下の手順を用いた。0.5mLのProtein LoBindエッペンドルフチューブを使用し、110μLの血清を、200μLのN,N-ジメチルアセトア
ミドの添加によって沈殿させ、その後、ボルテックスで10秒間撹拌し、サンプルを室温で30分間インキュベートした。得られた沈殿を、13000rpm、30分間、10℃で遠心分離した。上清を、5.0mLの0.1%ギ酸/水を含むホウケイ酸培養管中にデカントし、均質となるまで混合した。
【0084】
その後、希釈した抽出物を、以下のようにCaliper Life Science Rapid trace自動固相抽出装置を用いて、更に分画した:1mL(30mg)のWaters OASIS(登録商標)HLB固相抽出カートリッジを0.5mL/秒で、まず1.0mLの0.1%ギ酸/水、次いで1.0mLの0.1%ギ酸/ア
セトニトリル、そして最後に2.0mLの0.1%ギ酸/水で平衡化(conditioned)した。流速0.015mL/秒でサンプルをロードした後、1.25mLの0.1%ギ酸/水で洗浄した(流速0.015mL/秒)。次いで、1.25mLずつの画分を、5μLの20mg/mL N-ノニル-β-グルコピラノシド水溶液を含有するホウケイ酸ガラス管に回収した。画分を連続的に溶出し、まず0.1%ギ
酸/(35%アセトニトリル/水)、次に0.1%ギ酸/(65%アセトニトリル/水)を用い
て、流速0.015mL/秒で個別に回収した。それぞれの送液(run)の間に、カニューレお
よび溶媒移送ラインを3.0mLの0.1%ギ酸/アセトニトリル、次いで3.0mLの0.1%ギ酸/水
を用いて、流速0.5mL/秒でパージおよび洗浄した。
【0085】
画分を半分に分け、Savant Speed Vac Concentrator モデルSVC-100Hを用いて室温で
乾燥状態となるまでエバポレートした。次いで、乾燥サンプルを2つのバッチに分け、-80℃で保存した。分析には、60μLの0.1%ギ酸/5%アセトニトリル(画分の35%)または0.1%ギ酸/35%アセトニトリル(画分の65%)でサンプルを再構築し、液体クロマトグ
ラフィー/質量分析(LC/MS)で分析した。
【0086】
実施例2 液体クロマトグラフィー/質量分析による疾患イヌ中のポリペプチドの同定
被験サンプルおよびコントロールサンプルを液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に施与し、示差的に生成されるポリペプチドを質量によって同定した。その後、既存
のデータベースのペプチドID検索を行うことによって、同定されたポリペプチドの質量のアノテーションを行い、相当するタンパク質名を判定した。ペプチドアノテーションのた
めのユニークなデータベースをNCBI、Swissprot、Uniprotから作製した。
【0087】
得られたデータから、表1に示すポリペプチドを得た。SEQ ID NO:1-59は、腎疾患に罹
患したイヌで示差的に生成されたポリペプチドである。従って、これらのポリペプチドは、イヌにおける腎疾患の検出のためのユニークなバイオマーカーとなる。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
LC/MSの実施法は当該分野で公知であるが、本発明の研究に使用した具体的な液体クロ
マトグラフィー/質量分析法を以下に示す:
液体クロマトグラフィーのパラメータ
溶媒A:0.1%ギ酸/水;溶媒B:0.1%ギ酸/アセトニトリル;カラム:Acquity UPLC BEH130 C18 1.7μM 内径2.1 x 長さ150mm;ガードカラム:vanguard BEH 300 C18 1.7uM;注入量:25μL;トレイ温度:10℃;カラムオーブン温度:45℃;MS分析時間:60分;流路切
替バルブ(divert valve):無し
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
上記の分析から得られた質量スペクトルデータを、SIEVE 1.3ソフトウェアを用い、以
下のパラメータで、ペプチドの示差的発現について解析した:
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】
【表13】
【0103】
【表14】
【0104】
【表15】
【0105】
【表16】
【0106】
【表17】
【0107】
【表18】
【0108】
【表19】
【0109】
【表20】
【0110】
【表21】
【0111】
【表22】
【0112】
【表23】
【0113】
【表24】
【0114】
【表25】
【0115】
【表26】
【0116】
【表27】
【0117】
【表28】
【0118】
【表29】
【0119】
【表30】
【0120】
【表31】
【0121】
Proteome Discoverer 1.1を用い、以下のワークフローで、示差的に発現されたペプチ
ドを同定した:
【0122】
【表32】
【0123】
【表33】
【0124】
【表34】
【0125】
ペプチドアノテーションのためのデータベースを、NCBI、Swissprot、およびUniprotから作製した。タンパク質のアノテーションの結果を表1に示す。
【0126】
実施例3:腎疾患に罹患したイヌにおけるイノシン濃度
イヌ血清を、IDEXX Reference Laboratoriesに提出された野外標本から得た。イヌの品種および年齢は種々であった。血清クレアチニンが<1.8 mg/dLである25サンプルを低ク
レアチニン群とし、血清クレアチニンが>1.8 mg/dLである25サンプルを高クレアチニン
群とした。この場合も、高クレアチニンは腎疾患と関係するため、イノシンレベルを評価し、イノシンが腎機能の低下のバイオマーカーとなり得るか否かを判定した。
【0127】
高クレアチニンおよび正常クレアチニン・イヌ集団由来の血清サンプルをLC/MSで分析
し、示差的に生成される質量特性を、前記のインフォマティクスによって同定した。LC/MSは、各サンプル(すなわちイヌ)毎に、個別に実行した。SIEVEソフトウェア(Thermo Scientific社、マサチューセッツ州ウェルサム)を用いてLC/MSデータの統計解析を行った。LC/MSの生データをSIEVEに読み込ませ、ピークを同定した。統計解析を実施して、低クレアチニンおよび高クレアチニン・サンプルのピークを比較した。イノシンに相当する示差的ピークを同定した。高血清クレアチニンのイヌ25検体中13検体で、血清イノシンの枯渇が観察された。イノシンのイオン強度(LC/MSで測定)を
図1に示す。図中、「腎疾患
」は高クレアチニンかつイノシン枯渇のイヌ13検体を示し、「コントロール」は低血清クレアチニンのイヌ25検体すべてを示す。
【0128】
図1に示すLC/MS初期分析に使用したプロトコルは以下の通りである:0.5mLのProtein LoBindエッペンドルフチューブ中で血漿抽出を行った。110μLのイヌ血清に200μLのアセトニトリルを添加して沈殿を行った。10秒間ボルテックスを行い、サンプルを室温に30分間放置した後、卓上遠心分離器を用い、13,000rpmで30分間、室温で沈殿を遠心分離した
。その後、上清をLC/MSで分析した。SIEVEおよびRを用いて、示差的レベルで存在する分
子の同定を行った(p値<0.05)。
【0129】
LC法は、溶媒A:0.1%ギ酸/水、および溶媒B:0.1%ギ酸/アセトニトリルを用いて行った。
【0130】
【表35】
カラム:Acquity UPLC BEH130 C18 1.7μM 内径2.1x 長さ150mm
ガードカラム:vanguard BEH 300 C18 1.7uM
注入量:25μL
トレイ温度:10℃
カラムオーブン温度:45℃
MS分析時間:60分
流路切替バルブ:廃液へ 0-5、ソースへ 5-55、廃液へ 55-60
【0131】
質量分析法は、以下のパラメータに従って実施した:
MSスキャンイベント1:FTMS;分解能30000;スキャン範囲100.0-500.0
MSスキャンイベント2:FTMS;分解能30000;スキャン範囲500.0-2000.0
MSチューンファイル値
ソースタイプ:ESI
キャピラリー温度(℃):250.00
シースガス流:24.00
Auxガス流:13.00
スイープガス流:0
イオントラップMSn AGC Target:10000
FTMS Injection waveforms:オフ
FTMS AGC Target:500000
ソース電圧(kV):4.50
ソース電流(μA):100.00
キャピラリー電圧(V): 68.28
チューブレンズ(V): 130.00
スキマーオフセット(V): 0.00
多重極RF増幅器(Multipole RF Amplifier)(Vp-p)):550.00
多重極00オフセット(V):-1.60
レンズ0電圧(V):-2.70
多重極0オフセット(V):-5.80
レンズ1電圧(V):-11.00
ゲートレンズオフセット(V):-60.00
多重極1オフセット(V):-10.50
フロントレンズ(V):-5.18
FTMSフルマイクロスキャン:1
FTMSフルMax Ion Time (ms):500
イオントラップMSnマイクロスキャン:3
イオントラップMSn Max Ion Time:100
【0132】
イノシンが腎疾患のバイオマーカーとなることを証明するために、X連鎖性遺伝性ニュ
ーロパチー(XLHN)を有するイヌで、補足研究を行った。XLHNは、遺伝子COL4A5中の変異によって起こる(詳細は実施例1参照)。これらのXLHNイヌは、糸球体異常から始まって尿細管障害に進行する腎疾患のモデルとなる。XLHNを有する4検体のオス仔イヌからの血
清および尿サンプル(表11)を、疾患前、疾患の中期、および疾患の後期に回収し、下記の腎臓LC/MSアッセイに記載するように、イノシンの分析を行った。
【0133】
LC/MS移動相の調製:
1.移動相A:1リットルの水に1mlの酢酸を添加し、十分撹拌する。
2.移動相B:1リットルのアセトニトリルに1mlの酢酸を添加し、十分撹拌する。
【0134】
内部標準(IS溶液)の調製
1.5mgの重水素化クレアチニンおよび6-クロロプリンリボシドを20mlのバイアルに秤取
する。
2.5mlの水を添加して希釈する(1mg/ml溶液)。
3.#2の5mlを2リットルのフラスコに移し、水を2リットルの印まで添加する(2.5μg/ml溶液)。
4.#3を内部STD添加溶液(spiking solution)として使用する。
【0135】
STD曲線の作成
1.10mgのクレアチニンおよび10mgのイノシンを2mlバイアルに秤取し、10mlの水を添加
して溶解する(1mg/ml溶液)。
2.345mgのウシ血清アルブミン(BSA)を5mlのリン酸バッファー溶液中に秤取する。十
分撹拌する。必要により、スケールアップまたはスケールダウンする(PBS-BSA溶液)。
3.5μlの1mg/ml溶液を990μlのPBS-BSA溶液中に移す(5μg/ml 標準点1)。
4.#3から一連の1/1希釈液を11段階調製する(標準点2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、およびブランク)。
【0136】
サンプルの調製
1.血清サンプルを解凍する。
2.サンプルを10秒間ボルテックスした後、室温、3000xgで10分間遠心分離を行う。
3.50μlのサンプルおよびSTD曲線点をマイクロチューブまたは96ウェルプレートに移す。
4.50μlのIS溶液を各サンプルに添加する。
5.100μlのアセトニトリルを添加する。
6.ボルテックスで混合する。
7.水浴中、20分間超音波処理を行う。
8.25℃、3000xgで20分間遠心分離を行う。
9.0.4ミクロンのナイロンフィルターを用いて、褐色バイアル/96ウェルプレート中に
上清をろ過する。
10.サンプルをLC/MSで分析する。
【0137】
LC/MS法
【0138】
【表36】
【0139】
【表37】
【0140】
【表38】
【0141】
上記の分析結果として同定されたイノシン濃度を表11に示す(ここで、血清イノシンおよび尿中イノシンはμg/dLで示し、クレアチニンはmg/dLで示す)。各動物で、腎疾患
の進行と共にイノシンの有意な低下が見られる。これらのデータは、イノシンが腎疾患および尿細管障害のバイオマーカーの役割を果たすことを立証している。
【0142】
【表39】
【0143】
実施例4 XLHNにおける腎疾患の進行
実施例1に記載するように、ヘテロ接合性メスXLHNイヌから患者血液サンプルを採取した。サンプルは、実施例1に記載するように調製した。ただし、すべての画分は0.1%ギ酸/(35%アセトニトリル/水)で溶出し、サンプルは、0.1%ギ酸/(3.5%アセトニトリル/水)で再構築した。
【0144】
その後、上記実施例2に示すように、サンプルをLC/MSに施与した。ただし、トレイ温
度は10℃とし、MS分析時間は60分とした。表12に、4検体のヘテロ接合性メスXLHNイヌにおける、一定時間にわたる5つのペプチド(SEQ ID NO:1(アポリポタンパク質C1);SEQ ID NO:31(シスタチンA);SEQ ID NO:18(フィブリノーゲンα鎖);SEQ ID NO:25(
インターαインヒビターH4(ITIH4));SEQ ID NO:23(キニノゲン)のLC/MS測定の結果を示す。表12において、「NF」は「不検出(not found)」(すなわち検出限界未満)
の略語であり、「ND」は「未測定(not determined)」の略語である。腎疾患の進行に伴い、ApoC1およびインターαインヒビターH4(ITIH4)レベルは上昇し、一方、フィブリノーゲンαのレベルは低下した。キニノゲンレベルは、コントロールイヌよりXLHNイヌでの方が高かった。シスタチンAレベルは、4検体のXLHNイヌ中少なくとも3検体で、コント
ロールイヌに比較して高かった。
【0145】
【表40】
【0146】
実施例5 腎不全誘導モデルイヌ
種々の種およびサイズのイヌに二クロム酸塩を注射し、具体的には尿細管障害による、腎障害を誘導した。Rueggら, Toxicol Appl Pharmacol. 1987, 90(2):261-7;Pedraza-Chaverriら, BMC Nephrology 2005, 6:4;Chiusoloら, Toxicol Pathol. 2010, 38:338-45
参照。具体的には、イヌに0.2mL/kgの二クロム酸カリウム(5mg/ml)を注射した。種々の時点で回収した血液サンプルから血清を調製した。イヌNGAL ELISAキット(BioPorto Diagnostics社、デンマーク ゲントフテ)を用い、製造者の説明書に従って、NGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)のアッセイを行った。二クロム酸塩注射後の種々の時点で採取した血液サンプル由来の血清中のイノシン濃度を測定した。前記の実施例(腎臓アッセイLC/MS)に記載したように、イノシンおよびクレアチニンをLC/MSで測定した。
【0147】
単一イヌにおける二クロム酸塩注射後のイノシン、クレアチニン、およびNGALレベルの経時変化を
図2に示す。イノシン濃度は、二クロム酸塩処理の2時間以内に低下した。処
理後約60から70時間の間に、イノシンレベルは回復し始めた。Fatimaら, Hum Exp Toxicol 2005, 24:631-8参照。クレアチニンおよびNGALを、参照マーカーとして含めた(
図2)。概して、これらのデータは、イノシンレベルの低下が腎不全および尿細管障害のマーカーとなることを示している。
【0148】
更なる研究で、二クロム酸塩処理を行ったイヌ由来の血清サンプルを調製し、上記実施例4に記載するように、LC/MSを行った。
図3に、2検体のイヌにおける、3つのペプチド(SEQ ID NO:1(アポリポタンパク質C1);SEQ ID NO:23(キニノゲン);SEQ ID NO:25(
インターαインヒビターH4(ITIH4)))の相対濃度の測定値の経時変化を示す。
【0149】
SEQ ID NO:1(アポリポタンパク質C1)のレベルは、二クロム酸塩処理の約4時間後から約48時間後の間に増加した(
図3A)。処理後約84時間から108時間で、ペプチドSEQ ID NO:1(アポリポタンパク質C1)レベルは回復(低下)し始めた。これらのデータは、SEQ ID NO:1(アポリポタンパク質C1)レベルの上昇が腎不全および尿細管障害のマーカーとなることを示している。
【0150】
SEQ ID NO:23(キニノゲン)レベルは、一般的に、二クロム酸塩処理の最初の1-2日以
内に低下し、後の時点で回復(増加)した(
図3B)。これらのデータは、SEQ ID NO:23
(キニノゲン)レベルの低下が腎不全および尿細管障害のマーカーとなることを示している。
【0151】
SEQ ID NO:25(インターαインヒビターH4(ITIH4))レベルは、一般に、二クロム酸
塩処理の2日目までに低下し、2日目以降、回復(増加)した(
図3C)。これらのデータ
は、SEQ ID NO:25(インターαインヒビターH4(ITIH4))レベルが腎不全および尿細管
障害のマーカーとなることを示している。
【0152】
更に、本発明は、開示した本発明の態様に限定されることを意図しない。前述の開示は、本発明の特定の具体的な態様を強調するものであり、それらと同等の改変または変更は全て、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の意図および範囲内に含まれることは理解されるべきである。