(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861773
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】鉛酸電池の無精錬リサイクリングのための改良された装置および方法
(51)【国際特許分類】
C22B 13/00 20060101AFI20210412BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20210412BHJP
C22B 3/16 20060101ALI20210412BHJP
C25C 1/18 20060101ALI20210412BHJP
C25C 7/08 20060101ALI20210412BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
C22B13/00 101
C22B7/00 C
C22B3/16
C25C1/18
C25C7/08 A
H01M10/54
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-170761(P2019-170761)
(22)【出願日】2019年9月19日
(62)【分割の表示】特願2017-526837(P2017-526837)の分割
【原出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2020-33644(P2020-33644A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】PCT/US2014/066142
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517394094
【氏名又は名称】アクア メタルズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUA METALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ドアティー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】キング,マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ロバート ルイス
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,スティーブン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハーウィッツ,マイケル デイヴィッド
【審査官】
河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2018−500459(JP,A)
【文献】
特開昭58−048645(JP,A)
【文献】
特開昭62−004892(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/076547(WO,A1)
【文献】
米国特許第7368073(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
C25C 1/00−7/08
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度の鉛を、鉛イオン濃縮電気処理溶媒から、連続的かつ電気化学的に生成する方法であって、
硫酸鉛を含む活鉛物質を塩基で処理し、酸化鉛および水酸化鉛を含む塩基処理済みの脱硫された活鉛物質並びに可溶性の硫酸塩を含む溶液を生成する工程と、
前記塩基処理済み活鉛物質を電気処理溶媒で溶解して、鉛イオン濃縮電気処理溶媒を生成する工程と、ここで、前記電気処理溶媒は、アルカンスルホン酸を含み、キレート剤を含まず、
付着性の高純度の鉛および再生成された電気処理溶媒を形成するために、前記鉛イオン濃縮電気処理溶媒中の鉛イオンを、カソード上で還元する工程と、ここで、高純度の鉛は、マイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスとして生成され、かつ、前記高純度の鉛は、少なくとも98%の純度を有し、
前記カソードの一部分から、前記付着性の高純度の鉛を除去すると同時に、前記カソードの他の部分上で鉛イオンを還元する工程と、ここで、前記鉛イオンを還元する前記工程中に、前記カソードが前記鉛イオン濃縮電気処理溶媒に対して動かされ、
前記再生成された電気処理溶媒の少なくとも一部を、追加の活鉛物質に接触させ、前記鉛イオン濃縮電気処理溶媒の少なくとも一部を生成する工程と、を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理済み活鉛物質に対して、沈殿、遠心分離またはろ過の工程を施す工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基は、水酸化ナトリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカンスルホン酸は、メタンスルホン酸であり、前記電気処理溶媒中の前記アルカンスルホン酸は、15重量%ないし35重量%の濃度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高純度の鉛は、少なくとも99%の純度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カソードは、回転するディスクとして構成されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カソードは、アルミニウムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記付着性の高純度の鉛は、非剥離の方法でハーベスタ面により除去され、さらに、前記ハーベスタ面は、前記カソードに近接して配置されている請求項1に記載の方法。
【請求項9】
鉛酸電池の鉛ペーストから金属鉛を連続的に回収する方法であって、
再生成された塩基を鉛ペーストに接触させ、それによって、前記塩基に不溶である鉛種と、可溶性の硫酸塩を含む上澄みとを生成する工程と、ここで、前記鉛ペーストは、酸化鉛および硫酸鉛を含んでおり、
前記上澄みから前記鉛種を分離する工程と、
前記鉛種と再生成された酸性溶媒とを混ぜ合わせ、前記鉛種の少なくとも一部を溶解し、それによって鉛イオン濃縮溶媒を形成する工程と、
カソードの一部分上で、前記鉛イオン濃縮溶媒中の前記鉛イオンを金属鉛へ還元すると同時に、前記カソードの他の部分から金属鉛を除去し、それによって前記再生成された溶媒を形成する工程と、
前記上澄みを処理し、前記再生成された塩基を生成する工程と、を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記塩基は、金属水酸化物溶液または金属炭酸塩溶液である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基は、水酸化ナトリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記鉛種は、酸化鉛と、炭酸鉛および水酸化鉛のうちの少なくとも1つとを含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記再生成された酸性溶媒は、アルカンスルホン酸を含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記再生成された酸性溶媒は、メタンスルホン酸を含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記カソードは、アルミニウムカソードを含む請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記鉛イオンを還元する前記工程は、5g/cm3未満の密度を有するマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスを生成する請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記鉛イオンを還元する前記工程は、少なくとも98%の純度を有する鉛を生成する請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記上澄みを処理する前記工程は、前記上澄みの電解を含む請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記鉛ペーストは、二酸化鉛をさらに含む請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年11月18日に出願されたPCT出願番号PCT/US14/66142に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明の属する技術分野は、鉛酸電池のリサイクル、特に、水溶液を利用し、精錬を必要としない、連続的な方法で実行可能なリサイクルの装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術の記載は、本発明を理解するために有用な情報を含んでいる。ここに提供されているいずれかの情報が、現在クレームされている発明に対する先行技術であること、または関連していること、若しくは、明示的にまたは暗示的に参照された出版物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
鉛酸電池(LAB)は、今日使用されている蓄電池の中で、最大の単一クラスである。これらは、自動車のエンジンの起動用、データセンターの緊急バックアップ電源、フォークリフトやゴルフカートなどの産業用やレクリエーション用車両の電源などとして欠かすことができないものとなっている。他の種類の電池とは異なり、鉛酸電池(LAB)は、ほぼ100%リサイクルされており、この特徴故に、鉛は、最大の単一リサイクル産品となっている。鉛酸電池(LAB)の生産量が世界的に年率平均約5%の割合で増加している一方で、鉛分が豊富な鉱石の埋蔵量は激減しつつあり、鉱石からの新しい鉛の産出は次第に困難になりつつある。新たな、より効率的な鉛のリサイクル法が、焦眉の課題となるのは当然であろう。
【0005】
残念ながら、現在の鉛酸電池(LAB)からの鉛のリサイクルは、そのすべてまたは大半が、2000年以上前に開発された鉱石そのものから鉛を製造する製錬技術に基づいている。鉛の製錬は、鉛、鉛の酸化物、およびその他の鉛化合物を、約1600°Fで加熱したのち、各種の還元剤と混合することにより、様々な酸化物、硫化物、およびその他の鉛以外の材料を除去する高温冶金プロセスである。先行技術文献の
図1は、すり潰された鉛酸電池(LAB)材料からスタートする典型的な製錬の過程を示している。
【0006】
残念ながら、鉛の製錬は、非常に汚染度の高いプロセスであり、多大な大気汚染廃棄物(例えば、鉛の粉塵、CO
2、ヒ素、SO
2)、固形廃棄物(スラグを含む鉛)、液体廃棄物(例えば、硫酸、ヒ素塩)が発生し、さらに、汚染問題は、米国やその他の西欧諸国で、多くの精錬所の閉鎖を余儀なくさせてきた。比較的規制の緩い諸国において、製錬所の移転および拡張が行われた結果、大規模な環境汚染と深刻なレベルの人的鉛汚染が発生した。
【0007】
さらに問題を複雑にしたのは、鉛製錬所の認可を取得することがますます困難になり、製錬所の構築と運用コストが一般的に高価になったことである。その結果、製錬所の収益性は、規模に依存するようになった。したがって、大規模な、集中した精錬所が好まれる傾向を生んだが、それは、鉛酸蓄池(LAB)の使用が集中する地域に近接してリサイクルや生産拠点を持ちたいという鉛酸蓄池(LAB)業界の流通の要望とは相反するものである。結果として、大規模の鉛酸蓄池(LAB)製造業のみが、製錬所の設置と運営を正当化し得ることとなり、その他の企業は二次的な鉛の生産業者に自社の電池のリサイクルを依頼して、鉛を供給して貰わざるを得なくなった。鉛酸蓄池(LAB)生産業者にとって、この状態は、製品の「ゆりかごから墓場まで」の管理を行うべしとする国際規格ISO14000のような厳格な要求に応えることをますます難しくするものであった。
【0008】
さらに技術的なレベルにおいては、鉛製錬は、もともと鉛鉱石(主として、方鉛鉱または硫化鉛)から鉛を生産するために開発されたものであることを認識すべきである。しかしながら、鉛酸電池からリサイクルにより製造された鉛は、鉱石の精錬により生産された鉛とは化学的性質が大幅に異なっている。このような鉛の製錬は、鉛のリサイクルのためには、根本的に非効率的なプロセスである。
【0009】
精錬事業を止め、より環境に優しいソリューションを使用するように、様々な努力が重ねられてきた。例えば、米国特許第4,927,510(OlperとFracchia)は、脱硫プロセス後に得られる蓄電池のスラッジから、ほぼ全てが鉛から成る純金属を回収する方法を教示している。ここに参照されるすべての特許出願および刊行物は、それぞれが具体的かつ個別的に示されているのと同様に、参照されることにより、本特許出願に組み込まれるものとする。ここに組み込まれた参照文献における用語の定義または用途が、ここに記載されている定義と一致しない場合、またはそれと反する場合には、参照文献における用語の定義は適用されることなく、ここに示されている用語の定義が優先されるものとする。残念ながら、’510特許では、同様な問題を含むフッ素含有電解質を使用する必要がある。
【0010】
フッ素含有電解質に関連するいくつかの問題を克服するためには、米国特許第5,262,020(MasanteとSerracane)および米国特許第5,520,794(Gernon)に記載されているように、脱硫処理された鉛活物質を、メタンスルホン酸内で溶解する。しかしながら、硫酸鉛はメタンスルホン酸に溶解しにくいので、上流での脱硫予備処理が必要であり、残留している不溶性の材料は、通常、全体の収量を低下させ、経済的に魅力のないプロセスとなってしまう。硫酸鉛に関連する少なくともいくつかの問題点を改善するために、国際特許出願公開第2014/076544(Fassbenderら)に記載されているように、酸素および/または鉄メタンスルホン酸塩を追加するか、または、国際特許出願公開第2014/076547(Fassbenderら)に教示されているように、混合酸化物を生成することが教示されている。しかしながら、収量を改善しても、いくつかの問題が残る。特に、これらのプロセスにおける溶剤の再利用において、さらなる労力が必要であり、多くの場合、残留硫酸塩は廃棄物として失われてしまう。さらに、プロセスの異常状態、または停電が発生すると(これは電解鉛回収処理では珍しいことではない)、カソードを除去し、鉛を剥がしておかないと、通常の電解液回収処理中にメッキされた金属鉛が電解液に再び溶解してしまい、バッチオペレーションは不可能になるか、少なくとも問題だらけになってしまう。
【0011】
このため、鉛リサイクリング技術においては様々の方法が提案されて来たにもかかわらず、すべての方法またはほとんどすべての方法が、少なくとも一つの欠点を持っているのが現状である。そのため、鉛酸電池の無精錬リサイクリングにおいては、装置と方法の改善の発見に火急の必要性があり、特に永続的な努力が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主題は、溶剤やその他の必要な試薬をプロセス内でリサイクルまたは再使用して、金属鉛を回収するために、電気処理溶媒を使って活物質鉛(例えば、PbO、PbO
2、および特定の実施例の場合、PbSO
4)を選択的に溶解する、鉛蓄電池材料の処理のさまざまなデバイス、システムおよび方法に関する。溶解された鉛は、好ましくは連続的な方法で、電着(電気メッキ)によって回収され、一方、クリーンな固体グリッド鉛は、鉛イオンが濃縮された電気処理溶媒(鉛イオン濃縮電気処理溶媒)から回収される。
【0013】
進歩性のあるコンセプトの1つの実施例では、活物質鉛を電気処理溶媒と接触させることで、溶媒和化合物鉛イオンおよび固体鉛(例えば、蓄電池から得られた鉛グリッド)と共に電気処理溶媒を生成することにより、鉛材料が鉛酸電池から回収される。固体鉛が溶媒から分離され、溶媒和化合物化された鉛イオンがカソード上で還元されることで、高純度の金属鉛が得られる。この鉛イオンの還元からも、電気処理溶媒が再生成される。一部の実施例においては、活物質鉛を塩基材料で処理して、可溶性の硫酸塩を生成することにより、硫黄が抽出される。塩基材料は、この可溶性の硫酸塩から回収され、硫酸塩の抽出プロセスにおいてリサイクルされる。適切な電気処理溶媒は、一般的に、重量比で5%ないし50%のアルカンスルホン酸を含み、一部の実施例においては、重量比で0.5%ないし20%のキレート剤を含む。一部の実施例においては、例えば、鉛イオン濃縮電気処理溶媒に対してカソードを動かすことにより鉛イオンが還元されて、高純度の鉛が分離される。このような高純度の鉛は、5g/cm
3未満の密度を持つマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスの形態になっている。鉛イオンの還元は、電気処理溶媒を鉛材料に接触させることにより、再生成され、プロセスにおいてリサイクルされる電気処理溶媒を提供することになる。一部の実施例においては、硫酸塩および/または鉛以外の金属イオンは、このような再生成された電気処理溶媒から除去される。さらに別の実施例においては、鉛材料を提供し、鉛材料を接触させ、グリッド鉛の少なくとも一部を除去し、かつ鉛イオンを還元する各ステップは、連続的に処理を行うことができるように実施される。
【0014】
進歩性のあるコンセプトの別の実施例は、電気処理溶媒中において溶媒和化合物化した鉛イオンから、高品質鉛(例えば98%以上の純度)を連続的に生成する方法である。カソードは、電気処理溶媒の再生成中に、付着した高純度鉛を生成して、そのような溶媒中の鉛イオンを還元するために使用される。例えば、電気処理溶媒に対してカソードを動かすことによって、高純度鉛がカソードの一部分から分離され、鉛イオンがカソードの別の部分上において還元される。一方では、再生成された溶剤は、鉛材料を処理するために使用され、高品質の鉛を生産するのに適した、鉛イオン濃縮電気処理溶媒が生産される。一部の実施例においては、活物質鉛から塩基材料を使って硫黄が抽出され、可溶性の硫酸塩が生成される。硫黄の除去に使用されている塩基材料は、可溶性の硫酸塩から回収され、このリサイクルされた塩基材料は、活物質鉛から硫黄を抽出するために再使用される。適切な電気処理溶媒は、重量比で5%ないし50%のアルカンスルホン酸を含んでいる。一部の実施例においては、電気処理溶媒は、重量比0.5%ないし20%のキレート剤を含んでいる。高純度鉛は、5g/cm
3未満の密度を持つマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスの形態になっており、カソードの近傍に位置するハーベスタ(収穫器)によって、非剥離方法でカソードから回収される。別の実施例では、硫酸塩および/または鉛以外の金属イオンは、このような再生成された電気処理溶媒から除去される。
【0015】
進歩性のあるコンセプトの別の実施例は、溶解され、塩基処理された活物質鉛、ならびに、溶解されていない固体グリッド鉛を含むアルカンスルホン酸水溶液(重量比で5%ないし50%)を含む中間生成物である。このような塩基処理された活物質鉛は、基本的に、または、完全に脱硫されている。一部の実施例では、アルカンスルホン酸は、メタンスルホン酸であり、重量比で15%ないし30%の間で存在している。
【0016】
進歩性のあるコンセプトの別の実施例は、純度98%以上の金属鉛と、分子状水素と、キレート剤を含まない電気処理溶媒とを含む、鉛化合物である。この鉛化合物は、5g/cm
3未満の密度のマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスの形態になっており、一部の場合では、密度が3g/cm
3未満である。一部の実施例では、電気処理溶媒は、重量比において、5%ないし50%の濃度のアルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸)を含む。
【0017】
進歩性のあるコンセプトの別の実施例は、電気処理溶媒を使用して、高品質鉛を生産するための電解層である。このような電解槽は、アノードと、カソードとを含み、アノードおよびカソードは、鉛イオン濃縮電気処理溶媒と、アノードおよびカソードが接触するよう、電着セル内に配置されている(中間にセパレータを使用しないこともある)。例えば、カソードは、カソード上に設けられるマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスとして付着した高純度鉛の形成を可能にする速度で運動する回転ディスクでもよい。一部の実施例では、カソードは、電気処理溶媒に対して動くことができる。また、カソードの近傍に位置し、カソードの表面に付着した高純度の鉛を剥離式でない方法で収穫するような配置および形状で設置された鉛用のハーベスタを含む。一部の実施例では、アノードはチタン製であり、ルテニウム酸化物で被覆されており、カソードはアルミ二ウム製である。一部の実施例では、電解槽は、電着溶剤から硫酸塩および/または鉛以外の金属イオンを除去するように構成されている溶剤調整ユニットも含んでいる。他の実施例では、電解槽は、可溶性の硫酸塩を貯蔵し、さらに、硫酸と塩基を生成するよう構成された電気化学セルを含む。
【0018】
進歩性のあるコンセプトの別の実施例は、鉛酸電池のリサイクル方法である。そのような方法においては、硫酸鉛を含む鉛ペーストが蓄電池から得られ、塩基と接触され、上澄みと水酸化鉛を含む沈殿物が生成される。その上澄みは、電気化学セル内において処理され、硫酸と再生成された塩基とが生成される。沈殿物が溶剤で処理され、鉛イオン溶液が生成され、その後、鉛イオン溶液が回収用カソードと接触する。回収用カソードに電圧をかけて鉛イオンを還元し、回収用カソード上に金属鉛を沈着させ、同時に溶剤を再生成する。鉛は、回収用カソードから回収され、同時に、再生成された塩基が、追加された鉛ペーストの処理するプロセスにおいてリサイクルされる。同様に、再生成された溶剤は、追加された鉛ペーストから形成された沈殿物を含んでいる水酸化鉛を処理するために使用される。一部の実施例において、溶媒溶液は、アルカンスルホン酸を含んでおり、キレート剤を含んでいない。
【0019】
本発明の主題の様々な目的、機能、特徴、および利点は、以下の好ましい実施例の詳細な説明、並びに、番号を付した各部品を含む添付図面によって、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】先行技術の
図1Aは、すり潰された鉛酸電池材料のための通常の製錬プロセスの概観図である。
【0021】
【
図1B】
図1Bは、本発明の主題に係るすり潰された鉛酸電池材料のための非製錬プロセスの例示的な概略図である。
【0022】
【
図1C】
図1Cは、本発明の主題に係る電解槽の例示的な概略図である。
【0023】
【
図2】
図2は、鉛酸電池からの材料回収のためのクローズドループ式非製錬プロセスの例示的な概略図である。
【0024】
【0025】
【
図3B】
図3Bは、ディスク型カソードと、マイクロまたはナノ多孔質混合マトリックス状の鉛生成物と、電解槽の詳細図である。
【0026】
【
図4】
図4A〜4Cは、本発明の主題に係る電解槽を使用した場合の電流効率(CE)を鉛濃度(4A、4C)および電流密度(4B)の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者は、鉛酸畜電池の材料が、理論的にシンプルでありながら、しかも効率的にリサイクル可能であり、その場合、すべての鉛材料が、グリッド鉛材料、特にグリッドと接点/バスバーをクリーン化するのに有用な電気処理溶媒により処理可能なことを発見した。一部の実施例においては、電気処理溶媒は、鉛の酸化物および鉛の硫酸塩を含む、すべての活物質鉛を溶解する。その他の実施例においては、硫酸塩は、電気処理溶媒中に存在する鉛種の溶媒和より前に、塩基処理により、活性鉛物質から抽出され、脱硫されたまたは実質的に脱硫された(すなわち1%より少ない硫酸塩分を有する)塩基処理済み活物質を提供する。活物質の溶解によって鉛イオンが取り込まれると、そのような電気処理溶媒に対して電着プロセスが施され、該電着プロセスは、高純度の金属鉛の連続的生成を可能とし、一方、更なるサイクルのための電気処理溶剤が再生成される。また、塩基処理によって回収された硫酸塩を、電気化学セル内で処理することにより、更なるサイクルのために塩基を再生成することが可能であり、これにより、閉ループシステムが提供される。
【0028】
継続的な鉛の回収に関して特記すべき利点は、電解質から得られた金属鉛が良く知られたプロセスにより、酸性溶液中でカソードにメッキされるということである。さらに、プロセスの異常状態、または停電が発生すると(これは電解鉛回収処理では珍しいことではない)、カソードを抜き取り、メッキされた金属鉛を取り出さないと、メッキされた金属鉛が電解液に再び溶解してしまう。さらに、従来の電解鉛回収方法で電解され、堆積またはメッキにより強固にカソードに付着した鉛の回収は、厄介な作業である。例えば、カソードの表面に付着し、薄いメッキのシートとして生成された鉛は、カソードの表面から剥ぎとることができる。しかしながら、このようなシートは割れてしまったり、フレーク状になったりする傾向があり、そのため、鉛の剥ぎとりは、非効率的および/または面倒な作業となる。これとは対照的に、本発明の主題に係る装置と方法を使用した鉛回収では、高純度の鉛を剥がすことなく回収することができる。例えば、取り外し工具として機能するシンプルなワイパーまたはスクレーパ(好ましくは、スクレーパは、カソードに直接接触することなく、例えば0.5〜5mm程度離れている)を使用することにより、鉛をカソードからシート状ではない材料として(例えば非晶質のマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスとして)、回収することが可能であり、さらに、カソードの一部で回収が行われているときに、カソードの他の部分では還元が行われるので、連続的な作業が可能になる。
【0029】
本発明の主題のいくつかの態様では、電気処理溶媒は、キレート剤、特に好ましくはメタンスルホン酸およびEDTAと組み合わせたアルカンスルホン酸を含む。本発明者らは、驚くべきことに、活物質鉛において見られるすべての関連する鉛の種類が、MSA(メタンスルホン酸)に効率的かつ迅速に溶解すること、および、MSAにおいて、キレート剤の大部分が、ある値の酸性pH(つまりpH7.0以下、pH6.0以下、pH5.0以下、pH4.0以下、またはpH3.0以下)レベルで含まれていることを発見した。例えばMSAおよびEDTAの水溶液は正の活物質(例えば硫酸鉛、特に三/四塩基性硫酸鉛;PbSO4.3PbO.H2O/PbSO4.4PbO.H2O)ならびに負の活物質(例えば、Pb(II)からPb(IV)、ならびに、それらの間の複数の部分的な酸化状態までの鉛の酸化物)を溶解する。また、活物質鉛用の溶解条件の下では、グリッド鉛(例えば、接点、バスバー、電池グリッド用の合金鉛等からの金属鉛)は溶解せず、その代わりに電気処理溶媒によってクリーン化されることが観察された。そのような発見は、MSAでの鉛の溶解プロセスを含む既知の方法では、ほとんど予期できず、MSAにおいてわずかに溶解する硫酸鉛だけに認められていた。したがって、キレート剤(特にEDTA)のMSAでの使用の利点の中でも特に、EDTAは、MSA内における硫酸鉛の溶解性を相乗的、かつ、大幅に強化することに留意されたい。その結果、本発明の主題である電気処理溶媒を使用することにより、事前に脱硫を行う必要なしに、活物質鉛を処理することができることを認識すべきである。
【0030】
また、進歩性のあるコンセプトの他の実施例において、電気処理溶媒は、アルカンスルホン酸(好ましくは、メタンスルホン酸またはMSA)を含むが、キレート剤を含まない。このようなキレート剤を含まない溶剤を使用するプロセスにおいては、活鉛物質を、塩基(例えばLiOH、NaOH、および/またはKOH)で処理し、活鉛物質の硫酸鉛成分から、可溶性硫酸塩および不溶性水酸化鉛を生成する。このような塩基処理済み活鉛物質は、鉛含有沈殿物として収集可能な酸化鉛および水酸化鉛を含む。鉛含有沈殿物の酸化鉛および水酸化鉛は、アルカンスルホン酸(MSAなど)に溶解できるので、そのような方法においては、アルカンスルホン酸とともにキレート剤を使用することは不要である。
【0031】
塩基処理によって生成された可溶性の硫酸塩は、容易に上澄みとして収集され、活鉛物質の処理に使用される塩基種を再生成するために処理可能である(例えば電気化学セルにおいて)。これは、このようなプロセスにおける、塩基のループを閉じるために有効に使用できる。電気化学セル内における上澄みの処理では、硫酸が生成され、それは様々な産業用の用途(新しい鉛酸電池の生産を含む)を生む。
【0032】
さらに、本発明家らは、予期しないことであったが、キレート剤(MSAまたはMSA+EDTAなど)を含む、または含まないアルカンスルホン酸を含む電気処理溶媒が、カソード上での電解処理による鉛の回収に適していることを発見した。特に、このような回収は、電着セル内であっても、セパレータ無しで実行可能であり、その結果、電解槽の設計が大幅に簡素化され得る。そのような発見は、電解質(スラブ)としてMSAを有する鉛酸電池に関する、アノード上に不溶性のPbO
2層が形成され、スラブ蓄電池が機能しなくなるという従来のレポートからは、全く予期されないものであった。
【0033】
EDTAを使用して、鉛塩を選択的に溶解し、さらに、溶液による電気化学的な鉛メッキをサポートする方法は、米国特許No.7,368,043(Mohantaら)に記載されているが、そのようなメッキは、EDTAの破損を防ぐための膜状セパレータを有する複雑で高価な電気化学セルを必要としている。さらに、このようなプロセスは、高いpH(苛性pH)で運用され、鉛酸電池池(LAB)からのあらゆる活物質を、腐食性に変換するので、商業的に非現実的である。これとは対照的に、酸性pHにおけるMSAとEDTAの組み合わせは、ほとんどの鉛種、また特に硫酸鉛の溶解性を向上させるだけでなく、付着性があるがメッキ形態でないイオン性鉛の還元を可能とする。同様に、キレート剤がない場合の、MSAからイオン性鉛の還元(すなわち、活鉛物質と堆積した鉛種のMSA溶媒和の塩基処理に続く処理)も、付着性があるがメッキ形態でない金属鉛の回収を可能としている。
【0034】
本明細書で使用される「付着性」および「弱く結合」という用語は、イオン性鉛の還元によって形成された金属鉛と併せて、カソード表面上の密着したフィルムでない鉛の形態を意味するが、それらは非晶質であり、カソードから拭き取ることができる。換言すれば、弱く結合または付着する鉛生成物は、カソードと鉛生成物との間で、マクロ的な次元での金属間結合を形成せず、したがって、カソード上に密着した鉛フィルムを形成しない。例えば、カソードに弱く付着したスポンジ状低密度層状に形成された鉛が、スタティック・プレート・カソードから遊離浮上し、電解液の循環が激しい場合にカソードの回転表面から洗い流されることが、ほとんどの実験で観察された(例えば、以下の実験の説明を参照)。さらに、キレート材無しのアルカンスルホン酸(例えば、MSA)、および、アルカンスルホン酸とキレート剤(例えば、MSA+EDTA)の組合せは、アルカンスルホン酸(例えば、MSA)またはキレート剤(例えば、EDTA)の有意な破壊なく、鉛の安定した電解回収を可能にした。アルカンスルホン酸またはアルカンスルホン酸+キレート剤の電気処理溶媒によるこの再生成は、進歩性のあるコンセプトにおいて、電気処理溶媒の閉ループを有利に閉じることにより、それらのプロセスの継続的な再使用を可能とした。
【0035】
そのため、鉛酸電池および電池材料は、典型的に
図1Bに示されるように、最初に比較的小さな寸法(例えば、0.1cmから1cmまで、1cmから3cmまで、もしくは、3cmから5cmまでの平均粒径、または、最大粒径ではそれ以上)に押し潰されるか、すり潰され、その後、プラスチック部品やバッテリー液(これらはさらにリサイクルまたは処理され得る)を除去することによって、処理され得ることを理解すべきである。このようにして得られた鉛スクラップ材料は、主にグリッド鉛および活物質鉛を含み、その後、グリッド鉛をクリーン化し、活物質鉛を溶解するため、電気処理溶媒の入った容器中で処理される。鉛溶解の適切な時間が経過した後(または、活物質鉛が完全に溶解すると)、残存するクリーン化された固体グリッド鉛が溶液から抽出され、必要に応じて洗浄され、鉛のチップ/インゴット状にプレスされ、そのまま直接再使用されるか、または、さらに精製され得るグリッド鉛となる。ここで、値の範囲の列挙は、その範囲内にある各個別の値を個々に参照する簡易表記法として役立つことを意図されているに過ぎない。本明細書において他に記載がない限り、各個々の値は明細書に記載されているかのように本書に組み込まれるものとする。
【0036】
このようにして得られた鉛イオンが濃縮された溶液(鉛イオン濃縮溶液)は、その後、他の非鉛イオン(例えば、亜鉛、カルシウム、錫、銀等)を除去するために処理されてもよく、その処理は、選択性イオン交換樹脂、他の選択性吸着剤、選択的電着、液体クロマトグラフィー、および/または沈殿を用いて行われ得る。当然ながら、このような工程は、鉛を電解回収した後にも、実施できることに留意すべきである。任意の選択的な事前処理の如何に関わらず、金属状の鉛を回収するために、鉛イオン濃縮溶液が電解槽に供給される。任意のタイプの電解槽が一般的に検討されるが、特に、好ましい電解槽は、カソードとアノードの間のセパレータまたは膜を含まず、電解液に対して動くカソードを含む。鉛イオンの還元後、プロセスは高純度(すなわち、少なくとも98%の純度、または少なくとも99%の純度、または少なくとも99.5%の純度)の鉛を生成する。電解槽が1つ以上の可動電極、特に回転するディスク電極を有する場合、鉛は、付着性のある、しかし膜形成されていない鉛として堆積される。
【0037】
進歩性のあるコンセプトの方法の別の実施例として、キレート剤を利用しないものを
図2に示す。図示したように、使用済みの鉛酸電池が、最初に分解される。そのような分解は、たとえば、半割にするか、ケースのエッジおよび/または合わせ目に沿って割るか切断し、固体成分と液体成分に分離する。代替的には、粉砕、磨り潰し、破壊、および/または切断して、砕片が上記のようなサイズの範囲になるように、分解を実施する。液体と固体(例えば、プラスチック、鉛、鉛ペースト)成分は、傾斜法、または密度を利用して分別される。硫酸、プラスチック、および金属鉛などの一部の成分は、実質的に再使用が容易な様態で直接回収される。活物質鉛(例えば硫酸鉛や酸化鉛)を含む不溶性の鉛ペーストは、さらなる処理を行うために、塩基処理容器210内に回収される。
【0038】
塩基処理容器210内では、鉛ペーストが、塩基(この場合、NaOH)と接触させられ、硫酸鉛成分から、水酸化鉛および可溶性硫酸塩を生成するよう反応する。目的に適切な塩基としては、金属水酸化物(M
x(OH)
y)が挙げられ、それに対しては対応する金属硫酸塩(M
a(SO4)
b)が溶解可能である。適切な例としては、グループIの金属水酸化物(例えばLiOH、NaOH、およびKOH)が含まれる。可溶性硫化塩を提供するその他の塩基(すなわち10、25、50、75、100、200、400、または800g/Lまたはそれ以上で可溶)、およびPb(SO
4)との反応で不溶性(すなわち10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01g/Lまたは以下で不溶反応)を示す鉛塩、たとえば炭酸塩(たとえばNa
2(CO
3)およびK
2(CO
3))も適している。また、当然ながら、それらの塩基は、鉛酸電池から回収されたプラスチックおよび金属鉛部品のリンスまたはクリーン化のためにも使用可能であり、分解作業の一部として、付着した硫酸鉛含有ペーストを取り除き、回収することができる。
【0039】
塩基処理容器210からは、可溶性硫酸塩(この例においては、硫酸ナトリウムとして示されている)を含む上澄み220と、水酸化鉛および酸化鉛を含む沈殿物240とが分離され、個別に回収される。硫酸塩含有上澄み220の鉛含有沈殿物240からの分離は、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、上澄み220は、沈殿物240から、沈殿、遠心分離(例えば、遠心分離機によるもの)、および/またはろ過によって分離することができる。適切なフィルターとしては、ろ過膜およびメッシュ、ベッドフィルタ、プレスフィルタ、およびベルトフィルタが挙げられる。好ましい分離法としては、固体沈殿物240を、上澄み220から効率的に分離し、同時に、それ以後の処理のための沈殿物の回収を容易とするものが選ばれる。
【0040】
上澄み220は、処理され、それにより、硫酸を生成し、さらに、リサイクルされた電池から回収された鉛ペーストの処理で使用される塩基を再生成することができる。この処理は、電気化学セル230の利用を通じて、達成することができる。例えば、NaOHが塩基として利用された場合は、カソード上へのナトリウム金属のメッキにより、水との反応の結果、NaOHが生成される。この再生成されたNaOHは回収され、閉ループシステムの一部として、鉛ペーストの抽出のために、塩基処理容器210に戻される。同様に、H
2SO
4はアノードから回収され、その後、さまざまな産業プロセスで使用可能である。好ましい実施例においては、回収された硫酸は、鉛酸電池の製造に用いられる。その目的には、任意の適切な構成を持つ電気化学セルを使用することができる。好ましい実施例においては、電気化学セルは、その長手に沿って配置された分割されたアノードと分割されたカソードとを含む筒として構成されており、それら個々の電極のペアが、それぞれ個別制御可能である(米国特許第8,580,414(Clarke)に記述されている)。そのような構成によって、高効率でのシングルパスプロセスが可能になっている。
【0041】
塩基処理容器210から回収される沈殿物240(すなわち塩基処理済み活物質鉛)は、アルカン硫酸(本例の場合、MSA)内に溶解している。当然ながら、活物資鉛類からの硫酸塩の除去により、鉛ペーストの適切な塩基処理の際のキレート材は不要となる。上述のように、溶媒和化された鉛イオンを含むMSAは、電着セル250内において処理される。アルカン硫酸溶媒からの鉛イオンの消費は、その溶媒を効果的に再生成し、塩基処理済み活物質鉛の溶媒和化における再使用を可能とする。電着によって回収される金属鉛(Pb(0))は、電着セル250の回収カソードから回収(たとえばスクレーピングにより回収)され、さまざまな産業用用途に使用される。
図2に示すように、古い鉛酸電池から回収された材料は、塩基またはアルカンスルホン酸溶剤のいずれかを消費しないかまたは実質的に消費することなく、新しい鉛酸電池の製造に利用することができ、精錬工程を利用しないそのような電池のリサイクルのための閉ループシステムを提供する。統合プロセスおよび装置の更なる態様は、2015年5月13日に出願された、同時係属中の米国仮出願(発明の名称:鉛酸電池をリサイクルするための閉ループシステムおよび方法)に教示されている。
【0042】
驚くべきことに、本発明者らは、進歩性を有するコンセプトのプロセスによって、金属鉛を、マイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスの形態で回収することができ、該形態において、電気処理/電着溶媒の一部および分子状水素(すなわちH
2)の相当量を捕捉するマイクロまたはナノメートルサイズの構造(典型的に、針/ワイヤー)の鉛が形成されることを見出した。最も着目すべきは、そのようなマトリックスは、黒色の外観と、著しく低い嵩密度を有することである。実際、実験的なテストランのほとんどにおいて、マトリックスが溶媒中に浮上し、1g/cm
3未満の密度であったことが観察された。マトリックスをプレスするか、他の力を印加すると、密度は増加(例えば、1〜3g/cm
3、または3〜5g/cm
3、またはそれ以上に増加)し、金属の銀色の光沢が出現した。
【0043】
さらに、還元された鉛イオンは、カソード上に強固に接着された膜を形成せず、鉛が付着可能な材料(例えば、プラスチック、鉛フィルム等)で単に拭き取ることで、カソードから容易に除去され得ることが予期せず観察された。したがって、鉛回収は、連続的な方法で実施され得る。特に、ここで、回転または往復運動する電極が使用され、電極または電極アセンブリの一部分で鉛イオンを還元させつつ、同時に、金属鉛を電極または電極アセンブリの別の部分から除去することができる。特に、このような態様に適したカソードが、2015年5月13日に出願された、同時係属中の米国仮出願(発明の名称:アルミニウムカソード上の金属の電着のための装置および方法)によって教示されている。
【0044】
上述のように、還元によって十分な量の鉛が除去された後、電気処理溶媒を再利用することができる。アルカンスルホン酸+キレート剤の電気処理溶媒を利用したプロセスにおいては、金属鉛の電着の結果、溶媒内に硫酸塩が堆積されることを認識する必要がある。機械的処理(例えば、フィルター、遠心分離機、液体サイクロンなど)、および/または、化学的処理(例えば、カルシウムまたは硫酸ストロンチウムを生成するための硫酸塩の沈殿による化学的処理)によって、電解処理溶媒から固形物を除去することが可能であり、および/または、吸着的処理(例えば、活性炭、イオン交換樹脂等)によって、堆積された硫酸塩を還元または除去することが可能である。したがって、電着プロセスで使用された電気処理溶媒は、アルカンスルホン酸+キレート剤の両方の溶媒のシステムにおける鉛材料処理の次のサイクルにおいて再利用され得る。
【0045】
アルカンスルホン酸に関して、多くの種類のアルカンスルホン酸が、ここでの使用に適切であると見做されることに留意すべきである。しかしながら、MSAは、環境に優しく、用いられる電解条件下で安定しているので、特に好ましい。しかしながら、他の適切なアルカンスルホン酸として、エチルスルホン酸、プロピレンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸(トリフリック酸)、スルファミン酸などを挙げることができる。ほとんどの状況で、MSAまたは他のアルカンスルホン酸は、かなりの濃度、典型的には、電気処理溶媒の少なくとも1〜5重量%、より典型的には5〜15重量%、さらにより典型的には20〜50重量%、そして、最も典型的には15重量%から35重量%までの間の濃度で存在する。したがって、適切な濃度は、典型的には、電気処理溶媒の5重量%から50重量%までの間、または、20重量%から30重量%までの間である。電気処理溶媒のpHは、上述のように、最も好ましくは酸性であり、最も典型的にはpH5からpH7までの間、またはpH1からpH3までの間、またはpH3からpH5までの間である。異なる視点から見ると、電気処理溶媒のpHは7未満、または5以下、または3以下である。
【0046】
同様に、キレート剤の性質は、かなり異なり得る。しかしながら、一般に、キレート剤は、二価カチオンに対して選択的または優先的であるキレート剤であることが好ましい。したがって、EDTAは、部分的または完全に、NTA(ニトリロ三酢酸)、IDA(イミノ二酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)等のような他のキレート剤等で置き換えられてもよい。キレート剤の特定の種類とは関係なく、キレート剤は、典型的には、電気処理溶媒に対して、少なくとも0.1〜1重量%、より典型的には1〜3重量%、さらにより典型的には3〜10重量%、最も典型的には2重量%から8重量%までの量で存在することが好ましい。さらに、キレート剤は、酸性溶液中(例えば、Na
2−EDTA)での溶解度を低下させる塩の形態でも提供され得ることに留意すべきである。また、このような濃度は、キレート剤の溶解限度をも超え得ることに留意すべきである。適切な溶媒は、好ましくは水溶性であり、最も好ましくは脱イオン水から調製される。しかしながら、追加の共溶媒も適切と見做され、アルコール類、種々のポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)などを含んでいる。
【0047】
当然ながら、電解質セルの特定のサイズ/寸法を大幅に変更してもよく、さらに、特定のプロセス条件および動作パラメータは、少なくとも部分的に、電解質セルの大きさおよび体積を決定することに留意すべきである。しかしながら、特に好ましい態様では、電解質セルは、膜セパレータを必要とせずに動作可能である。別の観点から見ると、セルは、カソード区画とアノード区画とに流体的に分離される必要はない。また、電解質セルは、その内部において鉛材料または塩基処理済み活鉛物質が溶解されている容器に流体的に接続されることだけを必要とすることを理解すべきである。電気処理溶媒の処理が考慮される場合、処理の種類がそのような処理ユニットの位置を決定し、当業者であれば容易に適切な位置を判断することができることに留意すべきである。しかしながら、好ましい位置とは、鉛イオンが濃縮された溶媒(鉛イオン濃縮溶媒)または少なくとも部分的に消耗された溶媒に対して処理が行われる場所である。本明細書中で使用され、文脈上明らかに別の意味を示さない限り、「〜に接続」という用語は、(互いに接続された2つの要素が互いに接触する)直接接続、および(少なくとも1つの付加的な要素が二つの要素の間に配置される)間接的な接続の両方を含むことが意図されるものとする。したがって、用語「〜に接続」および「〜と接続」は同義的に使用される。
【0048】
さらに、本発明の主題の他の考えられる態様における電解槽/電着ユニット内の電極に関して、多数の電極がここでの使用に適すると見做されることを理解すべきである。実際、それらの導電性材料は、プロセス中に電気化学的な条件での使用と互換性がある材料である限り、すべての導電性材料は、本発明の教示と併せた使用に適切であると考えられる。したがって、他の考えられる材料の中で、適切なアノードは、種々の金属、炭素(典型的にはグラファイト、グラッシーカーボン、グラフェン)アノード、少なくとも1つのポリマーおよび炭素の一形態を含むマトリックスを含み、特に好ましいアノードは、ルテニウム酸化物(または他の金属酸化物)で被覆され得るチタンアノードである。とりわけ、酸化ルテニウム等の導電性かつ非不動態化材料によって被覆されているアルミニウムがアノード材料として考えられているので、アルミニウムが、鉛イオンが濃縮された電気処理溶媒(鉛イオン濃縮電気処理溶媒)で溶解されないことが見出された。代替的に、チタニウムのマグネリ相亜酸化物(式:TixO(2x−1)、xは4から11までの整数)は、電気処理溶媒と同様の組成の電解質中で安定したアノード材料であることが見出され、アノード材料およびアノード上の耐不動態化コーティングとしての使用することが考えられる。
【0049】
しかしながら、本発明者らは、特にここに開示された鉛イオン濃縮電気処理溶媒を使用すると、鉛回収プロセスによって、非常に高い純度で鉛を含み、かつ、一部の溶媒およびカソードで生成される水素を含む密度の低い鉛組成物の形成をもたらされることを見出した。最も注目すべきことは、全てではないが、ほとんどの場合、そのようにして形成された鉛の組成物は黒色で、電気化学的に結合された膜としてカソード上にメッキまたは結合せず、むしろ、溶剤の緩やかな強さの撹拌によって表面に浮上した。より小さな体積にプレスすると、水素と電気処理溶媒が放出され、残存する鉛は、金属的な外観に戻った。予想外なことに、このカソードに形成された鉛全体の10%未満(例えば、5〜9%の間)、より典型的には7%未満(例えば、2〜6%の間)、さらにより典型的には5%未満(例えば、1〜4%の間)、最も典型的には3%未満(例えば、0.01〜2%の間)は、メッキされ、カソード上に強く付着した鉛として見出され、一方、残りの鉛は、低密度の様態で残っていた。理論または仮説に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、低い密度の鉛材料中の鉛が、マイクロメートルまたはさらにナノメートルサイズの鉛フィラメントを含むマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックスを形成し、その内部において水素および溶媒を捕捉する多孔質材料を形成したと考えている。
【0050】
さらなる検討により、本発明者らは、カソード形状、または、カソードに対する溶媒の相対的な運動にかかわらず、低密度で高純度の鉛が、複数のカソード材料から得られることに気付いた。しかしながら、激しい攪拌または電気処理溶媒に対するカソードの相対的な動きは、浮かんでいる低密度鉛組成物の「収穫(harvest)」を簡素化した。このため、他の適切な複数の選択肢の中から、好ましいカソード材料は、さまざまな金属、特にアルミニウムを含む。代替的に、少なくとも1つのポリマーと、炭素の一形態とを含む炭素(例えば、グラファイト、ダイヤモンド様態のカーボン、グラフェンなど)マトリックス、チタニウムのマグネリ相亜酸化物(式:TixO(2x−1)、xは4から11までの整数)は、電気処理溶媒中で安定したカソード材料であることが見出され、これらのカソード表面としての使用が考えられる。
【0051】
メッキがないことは、全てまたはほとんどの電解採取プロセスにおいて、一般的には好ましくないが、本発明者らは、今、そのようなメッキの欠如は、カソードの1つの部分上から連続して鉛が除去され、同時に、カソードの他の部分上で追加の鉛が形成される、連続した鉛リサイクリルプロセスを可能にすることを発見した。付着性のある/弱く結合した鉛の除去は、典型的には、機械的な手段(例えば、払拭面、ブレード、またはカソードに近接した他のツールなど)を使用するが、除去は、非機械的ツール(例えば、カソードに対する電気処理溶媒の噴射、またはカソードに対するガスの散布など)によっても行われ得る。さらに、除去は、器具を全く使用せずに、単に、低密度鉛材料のカソードからの受動的な離脱、および電気化学セルの表面への浮上(越流堰または収穫により鉛材料が回収される)によって行われ得ることに留意すべきである。
【0052】
したがって、少なくともいくつかの好ましい態様では、カソードは、1つ以上のディスク形状のアルミニウムカソードを含み、カソードに近接している電解質セルに回転可能に接続されている。
図3Aは、蒸解タンク(digestion tank)内で鉛酸電池のスクラップ材料(主に、グリッド鉛と活物質鉛)が互いに接触している小規模の実験的な電気化学装置の写真である。固形材料は、必要に応じて除去され、鉛イオン濃縮電気処理溶媒は、その後、低密度の鉛材料がディスク形状のカソード上にメッキされる電解質セル内に供給される。
【0053】
アルカンスルホン酸+キレート剤の電気処理溶媒を使用するが、活鉛種から硫酸塩を除去するための塩基処理ステップを使用しないプロセスにおいて、電気処理溶媒の少なくとも一部は、回収ユニットに供給され、回収ユニット内において、イオン交換樹脂および沈殿ステージが、周期的に、硫酸イオンおよび他の非金属イオンを除去する。
【0054】
図3Bは、一対のディスク形状のカソード、および、非剥離の方法(すなわち、密着した鉛シートまたは密着した鉛フィルムを、引っ張る動きでカソードから引き上げない方法)でカソード表面から低密度の鉛材料を拭き取るためにカソードに近接して配置されたワイパー面をより詳細に示す写真である。
図1Cは、電解槽100が鉛イオン濃縮電気処理溶媒112を収納しているセル110を有している、進歩性のある本発明の主題に係る電解槽/電着ユニットの例示的な概略図である。アノード120および回転するディスク形状のカソード130は、鉛イオン濃縮電気処理溶媒112と少なくとも部分的に接触するように、そして、鉛ハーベスタ140(典型的にプラスチックワイパー、または他の場合では近接して設置された面)によって取り込まれる低密度鉛生成物142の形成を促進するように、セル内に配置される。
【0055】
当然ながら、進歩性のある本発明の主題は、ディスク形状の電極の使用に限定されないことを理解すべきであるが、実際には、カソードから高純度の鉛の(例えば、ワイピングブレードまたは面を用いた)能動的または(例えば、泡、溶剤噴射、または浮上による)受動的な除去を可能とする全ての電極が適切であると見做される。したがって、適切な電極は、溶媒に関して不活性な、もしくは、往復形式で動かされる単純なプレート、または、連続的に動かされ得、一部分上での鉛イオンの還元を可能とし、さらに、他の部分上で鉛除去を可能とするように構成された電極として構成され得る。例えば、適切な電極構成は、導電性のディスク、円筒、球、帯状等を含んでいる。同様に、カソードの数は、大幅に変化し得ることを認識する必要があり、さらに、最も典型的には、複数のカソードは、並行して(または連続的に、カソードが溶媒に対して不活性である場合は特に)作動する。
【0056】
特に、本発明者らは、膜や他のセパレータが無くても、セル110が、アルカンスルホン酸+キレート剤の電気処理溶媒の有意なアノード破壊(例えば、連続運転12時間あたり10%未満のキレート剤の損失)なしで作動され得ることを実現した。硫酸塩の除去用の溶媒調整ユニット150は、堆積された硫酸塩の電気処理溶剤からの除去が必要となるような実施例において、セルに流体的に接続され、溶媒を受入れ、調整された溶媒を戻す。溶媒処理は、数多くの方法で実行され得、連続的またはバッチ方式であってもよい。最も典型的には、溶媒処理は、微粒子の少なくとも一部を除去するためのフィルタリングのステップ、硫酸塩除去(例えば、石灰沈殿、逆浸透法、イオン交換、電気浸透、塩分解、液体クロマトグラフィー、液/液抽出などによるもの)のステップ、および/または、非鉛金属イオンの除去(例えば、イオン交換)のステップを含む。プロセスがバッチモードで作動される場合、溶媒の複数の流れの回収が特に好ましく、したがって、サージまたは保持タンクがシステムに追加される。一方、システムが連続的に作動される場合、冗長性およびプロットスペースを減らすために、複数のストリームが接続され、次いで処理されてもよい。
【0057】
最後に、鉛イオン濃縮溶媒から回収されたグリッド鉛に関して、グリッド鉛は、洗浄され(例えば塩基またはアルカンスルホン酸+レート剤溶剤で)、圧縮され、および、凝固もしくは必要な場合には純度を上げるためにさらに精製され得ることに留意すべきである。残留プラスチック材料は、好ましくは、廃棄作業によって収集され、従来のプラスチックのリサイクル方法を用いて別のプロセスの流れでリサイクルされる。
【0058】
当然ながら、上述のプロセスは、バッチ方式で行うことも可能であり、その場合、一塊の鉛ペーストを処理して、別々の可溶性の硫酸塩と、別々の鉛を含む沈殿物をつくることもできる。しかし、適切な分離方法によれば、進歩性のあるコンセプトのプロセスを連続的に実施し、鉛ペーストの流れを処理して、硫酸の流れと沈殿物の流れを生成することができる。進歩性のあるコンセプトの一部の実施例においては、例えば、別々の鉛の塊を次々に供給して、半連続的な作業を行うことも可能である。
【0059】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書中に別段の記載がなく、文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。いずれかもしくはすべての実施例の使用、または、本明細書の特定の実施形態のために提供される例示的な言語(例えば、「など」)は、単に、本発明をより明確にすることを意図しており、本発明または請求項に係る本発明の範囲を限定するものではない。本明細書の文言は、本発明の実施に必須の請求されていない要件を示すものと解釈されるべきではない。
【0060】
第1セットの実験では、本発明者らは、鉛酸電池のさまざまな構成成分を蒸解する溶媒の能力を調査し、さらに、第2セットの実験では、電気メッキする能力または溶解した鉛(必要に応じてろ過後のもの)を還元する能力を調査した。種々の構成成分の蒸解は、当初は、1〜50重量%の濃度のMSAのみを使用して実施された。鉛酸化物の大部分は、すべての濃度において可溶性が高かった。しかしながら、硫酸鉛(PbSO
4)があまりよく蒸解されないことがすぐに明白となったので、本発明者らは、最初の作業において、PbO
2の不溶性形態を単離せず、テストを実施した。可溶性であっても、硫酸鉛の全体的な濃度(溶液濃度による測定)は低く、蒸解の速度も遅く(24時間超)、蒸解には、攪拌および加熱が必要であった。二ナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することで、濃度および蒸解速度の両方が大幅に改善された。濃度は、1.2g/cm
3から、2.1g/cm
3を上回るまで増加した。さらに重要であり、予期しなかったこととして、酸性条件下で膜を必要とせずに、鉛が、この溶液から容易に電気メッキ/還元された。
【0061】
実験の好ましいセットでは、MSA濃度は、約25(±5)重量%であり、MSAと、約5重量%の二ナトリウムEDTAとの組合せであった。例として、典型的な溶液は、次のように作成される。溶液は、100Lの98%MSAと、20kgの二ナトリウムEDTAと、総容量を450Lにするための残りの水で作成された。しかしながら、実際に使用される量は、10%程度変動することがある。注目すべきことに、この溶液は、加熱または激しい撹拌をせずに、12時間で約33kgの混合電池材料を蒸解することができた。開始時の濃度は、1.1g/cm
3であり、達成された最大濃度は1.6g/cm
3であった。EDTAのいくつかは、(おそらく酸性溶液中で飽和濃度に達したため)溶解しなかったことを理解すべきであり、略2〜5kgの二ナトリウムEDTAは、完全に溶解せず、再循環時にタンクスケーリングとして、あるいはフィルターで捕捉されたものと推定される。そのため、ほとんどの実際の例では、好ましい電気処理溶媒は、20〜30%のMSAと、2〜8%のEDTAと、残りの脱イオン水(残余分)を含んでいる。
【0062】
注目すべきことに、酸化鉛と硫酸塩の大部分は、検討された電気処理溶媒に対して高い可溶性を示し、一方、金属鉛(および鉛グリッドから固体鉛合金)は、溶解せずに、混成(コンタミネーション)の無い状態に剥がされて回収され、ほとんどの実験条件下で、必要とされる低電圧において、60〜90%の電流効率が観察された。正と負の活物質(PAMおよびNAM)の選択的溶解によって、全体的な鉛のリサイクルのために、実質的により少ないエネルギーが要求される。
【0063】
図3Aに示す再生利用のための回収装置、ならびに、合計0.252m
2の拭き取られるカソード領域およびタンクサイズ10米ガロンを用いて、表1および2のデータが得られた。
メッキの効率は
図4A〜4Cに示されており、
図4Aは、鉛生産の電流効率を、電流密度790A/m
2並びにディスクカソード回転数1rpmにおける200Aでの、最初の鉛濃度の関数として表している。
図4Bは、電流効率を電極の電流密度の関数として示しており、
図4Cに電流効率が鉛の濃度に対してプロットしてある。
【0064】
下表3に示すように、高純度鉛は、濃度が1g/cm
3未満の密度を持つマイクロまたはナノ多孔質混合マトリックス(溶媒表面に浮かんでいる)として、カソードにおいて得られた。さらに、鉛組成物は、カソードに固体としてメッキされず、多晶質の柔らかい、かつ、ウレタンスルフォン酸および水素を含む圧縮可能な混合材質としてとして得られた。
【0065】
注目すべきことに、このようにして得られた混合材料は、前もって精製された液体鉛の冷却中に、発泡剤またはガス注入を用いて普通に製造される従来のスポンジ鉛とは異なっていた。
【0066】
進歩性のあるコンセプトの方法と反応は、鉛酸電池のリサイクルに関連して説明されたが、他の発生源からの硫酸塩の回収にも適用できることを忘れてはならない。妥当な代替発生源としては、硫酸塩含有の塩と、それに対応する不溶性水酸化物、または、その代わりに、不溶性の酸化物を形成する不安定な水酸化物を挙げることができる。硫酸塩を抽出可能な硫酸塩含有材料としては、第2族元素の硫酸塩を含む材料、遷移金属、アルミニウム等が挙げられる。
【0067】
本分野における当業者にとって、ここに説明された本発明の進歩性のあるコンセプトから有意に離れることなく、既に詳述されたもの以外の数多くの変更が可能であることは明らかであろう。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨を除き、限定されるものではない。また、明細書および特許請求の範囲の両方を解釈する際、すべての用語は文脈と整合可能な限り最も広範囲な方法によって解釈されるべきである。特に、用語「含む」および「含んでいる」は、要素、成分、ステップを参照して非排他的に解釈されるべきであり、参照した要素、成分、ステップが存在し得、利用され得、明示的に参照されていない他の要素、成分、ステップと組み合わされ得ることを示している。本明細書がA、B、C....およびNからなるグループから選択される少なくとも一つを参照する場合、テキストは、AとNまたはBとN等でなく、グループから1つの要素のみが必要とされると解釈されるべきである。