特許第6861778号(P6861778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6861778
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ワーク把持装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20210412BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20210412BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B23Q3/06 304F
   B23Q7/04 B
   B23Q3/06 303G
   B25J15/00 F
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-200295(P2019-200295)
(22)【出願日】2019年11月1日
【審査請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 康成
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝二
(72)【発明者】
【氏名】石井 正人
(72)【発明者】
【氏名】前田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕司
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−5854(JP,A)
【文献】 特表2005−538854(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104786080(CN,A)
【文献】 特開2010−99820(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093563(WO,A1)
【文献】 特公平5−55260(JP,B2)
【文献】 特開2016−87707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B23Q 7/04
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って貫通する中心穴を有するワークを工作機械のテーブル上で固定するためのワーク把持装置において、
中心軸線周りに等間隔に配置され前記ワークの外周部を固定する少なくとも3つの爪を有するワーク把持部と、
前記中心軸線上に設けられ、中心軸線に沿って前記ワークの中心穴に挿入された棒材の前端を把持する棒材把持部材を有した棒材把持部と、
前記棒材把持部材を前記中心軸線に沿って往復駆動する引き込み機構と、
を具備することを特徴としたワーク把持装置。
【請求項2】
前記ワークは中心軸線周りに回転対称形状を呈し、該ワークの上面における前記中心穴の周囲に形成されたボス部を有し、前記中心穴は該ボス部を貫通して形成されており、
前記棒材は、前記ワークの前記中心穴に挿入したときに、前記ボス部に係合可能なフランジ部を有しており、該棒材を前記中心穴に挿入し、前記棒材のフランジ部を前記ワークの前記ボス部に係合させた状態で該棒材の前端部を前記棒材把持部材によって把持して、前記中心軸線に沿ってテーブル側に引き込むことによって前記ワークを軸方向に固定するようになっている請求項1に記載のワーク把持装置。
【請求項3】
前記ワーク把持部の各爪は前記中心軸線に関して半径方向に往復可能に設けられ、かつ、前記中心軸線に対して垂直な平面からなり前記ワークを載置する支承面と、該支承面に対して垂直に形成され前記ワークの外周部に係合可能に設けられた当接部とを有しており、前記ワークを支承面に載置した状態で各爪を半径方向内側に駆動すると、前記当接部によって前記ワークの外周部を半径方向に押圧、把持するようになっている請求項1または2に記載のワーク把持装置。
【請求項4】
前記ワークは、一方の端部にフランジ部を有したターボチャージャのインペラであり、前記当接部が、前記支承面に載置されたインペラのフランジ部の外周部に半径方向に係合する請求項3に記載のワーク把持装置。
【請求項5】
前記棒材把持部材と軸方向に係合して、該棒材把持部材を半径方向に開閉する係合部を有する請求項に記載のワーク把持装置。
【請求項6】
先端に回転工具を装着する主軸を備えた主軸装置と、前記主軸装置に対面するテーブルとを備えた工作機械でワークを加工する加工システムにおいて、
前記テーブル上に固定された請求項1〜の何れか1項に記載のワーク把持装置と、
前記ワーク把持装置から加工済ワークを取り外し、未加工ワークを取り付けるワーク交換装置を具備することを特徴としたワーク加工システム。
【請求項7】
未加工ワークの中心穴に前記棒材を挿入する棒材挿入装置を更に具備する請求項に記載の加工システム。
【請求項8】
前記ワーク交換装置が、未加工ワークの中心穴に前記棒材を挿入するようにした請求項に記載の加工システム。
【請求項9】
前記テーブルは、上下反転し、前記棒材把持部を解放したとき、前記棒材が前記ワークの中心から落下するように反転機構を有する請求項6〜8れか1項に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械にワークを固定するワーク把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャのインペラを加工する際には、把持可能なフランジ部が薄く脆弱なために工作機械のテーブルに固定することが難しい。特許文献1に記載の加工装置では、工作機械の回転送り軸の軸線とワークの軸穴の軸線とを一致するようにワークを回転テーブル上に配置し、上部クランパによって、該ワークを上方から当接部材で回転テーブルに押圧して固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−87707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の加工装置では、上部クランパによってワークの上部を押圧するようになっているので、ワークの加工時に上部クランパが工具、工具ホルダ、主軸等と干渉しないような工具経路を選択しなければならなかったり、干渉回避のため工具長を長くする必要が生じ、工具剛性不足による加工能率の低下が問題であった。また上部クランパには、ワークとともに追随する動作機構を設ける必要があるためコストが上がり、ベアリング等の精密部品を含んでいるために、そのメンテナンスが必要となる。
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、ターボチャージャのインペラのように、把持する部位が脆弱なワークを簡単かつ確実に固定できるワーク把持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、中心軸線に沿って貫通する中心穴を有するワークを工作機械のテーブル上で固定するためのワーク把持装置において、中心軸線周りに等間隔に配置され前記ワークの外周部を固定する少なくとも3つの爪を有するワーク把持部と、前記中心軸線上に設けられ、中心軸線に沿って前記ワークの中心穴に挿入された棒材の前端を把持する棒材把持部材を有した棒材把持部と、前記棒材把持部材を前記中心軸線に沿って往復駆動する引き込み機構とを具備するワーク把持装置が提供される。
【0006】
更に、本発明によれば、先端に回転工具を装着する主軸を備えた主軸装置と、前記主軸装置に対面するテーブルとを備えた工作機械でワークを加工する加工システムにおいて、前記テーブル上に前記ワーク把持装置を固定し、前記ワーク把持装置から加工済ワークを取り外し、未加工ワークを取り付けるワーク交換装置を具備するワーク加工システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークの外周部を把持することに加え、中心軸線に沿ってワークに挿入された棒材を把持して、これをテーブル側に引き込むようにしたので、ターボチャージャのインペラのようなワークであっても簡単かつ確実に、ほとんど工具との干渉を気にせずに固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のワーク把持装置を備えた工作機械による加工システムの一例を示す略図である。
図2】ワークおよび該ワークに挿入された棒材とともに示すロボットハンドの略示拡大図である。
図3】本発明のワーク把持装置を備えた工作機械による加工システムの他の例を示す略図である。
図4】加工済ワークから棒材を取り外す方法の一例を示す略図である。
図5】ワーク把持装置の第1の実施形態を示す略示断面図である。
図6】ワーク把持装置の第2の実施形態を示す略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるワーク把持装置10を備えた工作機械100を示している。図1において、工作機械100は、ワーク把持装置10を固定したテーブル114と、該テーブル114に対面するように配置された主軸装置106と、テーブル114と主軸装置106とをX、Y、Zの直交3軸方向に相対移動させる送り軸装置(図示せず)と、2つの回転送り軸装置(図示せず)とを備えた立形加工機となっている。
【0010】
主軸装置106は、主軸ハウジング108に回転可能に支持された主軸110を備えている。主軸110は、主軸ハウジング108内または主軸ハウジング108の外部に配置された駆動モータにより回転駆動される。主軸110において、テーブル114に対面する端面には、工具装着穴(図示せず)が形成されており、該工具装着穴に、工具ホルダ112を介してエンドミルのような回転工具Tが装着される。
【0011】
図1において、テーブル114は、X軸方向またはY軸方向に延びる揺動軸線Osを中心として揺動可能に設けられたワーク取付板116を有したクレードルタイプのテーブルとすることができる。ワーク取付板116上には、ワーク90を着脱可能に把持するワーク把持装置10が固定されている。揺動可能に設けられたワーク取付板116は、テーブル114の反転機構である。
【0012】
工作機械100は、更に、加工に用いる複数の工具を収納した工具マガジン(図示せず)、工具マガジンと主軸110との間で工具を交換する自動工具交換装置(図示せず)、工作機械100の加工領域にクーラントを供給するクーラント供給装置(図示せず)とを備えたマシニングセンタとすることができ、これら周辺機器は、工作機械100とともにカバー102内に収容されている。
【0013】
工作機械100は、また、主軸装置106の駆動モータおよび送り軸装置の駆動モータを制御するNC装置、および、工具マガジン、自動工具交換装置、クーラント供給装置等の周辺機器を制御する機械制御装置を備えている。
【0014】
図1において、カバー102は、1つの側壁に開口部104と、該開口部104を開閉するドア104aとを有している。開口部104は、カバー102内の工作機械100において、主軸110とテーブル114との間の加工領域に外部からアクセス可能な位置に配置されている。
【0015】
図2を参照すると、ワーク90は、中心軸線Ow周りに回転対称形状に形成されており、中心軸線Owに沿って貫通する中心穴92を有している。また、ワーク90は、一方の端部に軸方向に突出した円柱状のボス部94と、ボス部94とは反対側において半径方向に広がる円筒状の薄いフランジ部96とを有している。フランジ部96は、ワーク90を軸方向に見たときに円形を呈している。より具体的には、ワーク90は、ターボチャージャの圧縮側または膨張側のインペラとすることができる。尚、ワーク90は、フランジ部96を有さない形状であってもよい。
【0016】
カバー102の外部には、ワーク交換装置200を配設することができる。図1の例では、ワーク交換装置200は、台車204上に取り付けられたロボットにより形成されている。該ロボットは、ロボットアーム202を有した多関節ロボットとすることができる。ロボットアーム202の先端には、ワーク90の一部を把持可能な一対のフィンガ206aを有したロボットハンド206が取り付けられている。一対のフィンガ206aは、互いに接近離反可能に設けられており、特に、ワーク90のボス部94を半径方向に把持できるようになっている。ワーク交換装置200は、工作機械100の機械制御装置によって制御することができる。また、ロボットハンドはダブルハンドのものを用い、未加工ワーク90と加工済ワーク90とを同時に交換してもよい。
【0017】
カバー102の外部には、また、複数の未加工ワーク90および加工済ワークを載置可能なワークステーション210を配設することができる。更に、図1の例では、ワークステーション210の近傍に複数の棒材260を保持する棒材ステーション212が配設されている。
【0018】
図2を参照すると、棒材260は、基端部262と先端部264との間に形成された、フランジ部266を有した棒状の部材である。棒材260は、ワーク90の中心穴92に挿入可能な直径を有している。棒材260のフランジ部266は、ワーク90のボス部94の端面に係合または当接可能な直径を有し、ワーク90の中心穴92に棒材260を挿入させたときに、棒材260がそのまま中心穴92を通り抜けないようになっている。
【0019】
本例では、ロボットハンド206のフィンガ206aは、棒材260の基端部262を把持可能な突起部206bを有している。棒材260は、市販のブラインドリベットを用いることができる。棒材260は、市販の釘を用いてもよい。この場合には、フィンガ206aは、突起部206bを備えていない。また、ロボットハンド206には、ワークステーション210に載置されたワーク90や棒材ステーション212に収納された棒材260の位置や向きを認識するためのカメラ208を有している。
【0020】
図1、2の例では、ワーク交換装置200によって、棒材ステーション212からワークステーション210に載置されている未加工ワーク90に棒材260を挿入するようにできる。棒材ステーション212への棒材260の供給は、オペレータによって行うことができる。
【0021】
未加工ワーク90への棒材260の挿入は、ワーク交換装置200ではなく、図3に示すように、専用の棒材挿入装置300によって行ってもよい。棒材挿入装置300は、カバー102内に配設したロボットにより形成することができる。棒材挿入装置300は、カバー102内に配設された棒材ステーション220から棒材260を把持し、ワーク把持装置10上に載置されている未加工ワーク90の中心穴92内に挿入する。棒材挿入装置300もまた工作機械100の機械制御装置によって制御することができる。
【0022】
工作機械100によって、ワーク90の加工が終了したのち、開口部104のドア104aが開いているときに、ワーク交換装置200は、未加工ワーク90と加工済ワーク90を、一旋回動作により短時間に、取り外しと取り付けを同時に行うことができる。ワークステーション210への未加工ワーク90の搬入およびワークステーション210からの加工済ワーク90の搬出は、オペレータによって行ったり、自動ワーク搬送装置(図示せず)によって行うことができる。自動ワーク搬送装置は、工作機械100の機械制御装置によって制御することができる。
【0023】
また、ワーク90の加工が完了したときに、図4に示すように、加工済ワーク90をワーク把持装置10によって把持させた状態でワーク取付板116を揺動軸線Os周りに反転させて、棒材260をワーク90の中心穴92から脱離または落下させるようにできる。工作機械100に提供される加工プログラムに、ワーク取付板116を回転させ棒材260を廃棄するためのMコードを準備できる。
【0024】
工作機械100のテーブル114の周辺に溜まった棒材260は、定期的にオペレータが収集するようにできる。棒材260をワーク90と同一の材料から形成する場合には、ワーク90を加工したときに生成される加工屑とともに工作機械100の外部に排出するようにできる。
【0025】
図5を参照すると、ワーク把持装置10は、ワーク把持部20と、棒材把持部30とを有している。ワーク把持部20は、圧力室22と、押圧部材24と、少なくとも3つの爪12とを有している。3つの爪12は、ワーク90の中心軸Owがワーク把持部20の中心軸線Ocと一致して位置決めされるよう心出しの作用をする。
【0026】
爪12は、中心軸線Ocを中心として周方向に等間隔に、かつ、中心軸線Ocに関して半径方向に往復可能に配設されている。爪12は、支承面12aと、当接部12bとを有している。支承面12aは、中心軸線Ocに対して垂直な平面よりなり、該支承面12aにワーク90が載置される。当接部12bは、支承面12aから中心軸線Oc方向に立ち上がった段差部よりなり、ワーク90のフランジ部96の外周部または外周面に係合可能な面を有している。該面は、中心軸線Ocに平行に形成することができる。爪12は、また、押圧部材24に係合可能な斜面14を有している。
【0027】
押圧部材24は、軸方向に往復可能に圧力室22内に配設されている。圧力室22内において、押圧部材24の下側の空間を油圧または空圧によって加圧することによって、押圧部材24は、中心軸線Ocに沿って上方へ、つまり、爪12が把持するワーク90側へ移動する。反対に押圧部材24の下側の空間の圧力を減じるまたは解放する、もしくは押圧部材24の上側に用意した空間を加圧することによって、押圧部材24は中心軸線Ocに沿って下方へ移動する。
【0028】
押圧部材24は、爪12の斜面14に対面する斜面26を有している。爪12の斜面14と、押圧部材24の斜面26は、相補形または同じ傾斜角に形成されている。斜面14、26は、押圧部材24が中心軸線Ocに沿って上動して、爪12に係合したときに、爪12が中心軸線Ocに関して半径方向内側に移動するように形成されている。
【0029】
爪12は、押圧部材24が係合したときに、その押圧力によってワーク把持部20の本体部分から脱離しないように、半径方向に延びるアリ溝(図示せず)のような抜け止め方法によって取り付けることができる。また、押圧部材24が爪12から離反したときに、爪12が半径方向外側へ移動できるように、爪12を半径方向外側へ付勢するばね18を配設することができる。
【0030】
棒材把持部30はワーク把持部20の下側に配置されている。棒材把持部30は、圧力室32と、ピストン34と、棒材把持部材38と、係合部46aとを有している。ピストン34は、軸方向に往復可能に圧力室32内に配設されている。ピストン34は、中心軸線Ocに沿って延びる軸部36を有している。軸部36は、ワーク把持部20を軸方向に貫通して延在する中空のスリーブ40の内周面に対して摺動可能となっている。
【0031】
圧力室32内において、ピストン34の下側の空間を油圧または空圧によって加圧することによって、ピストン34は、中心軸線Ocに沿って上方へ、つまり、爪12が把持するワーク90側へ移動(上動)し、反対にピストン34の上側の空間を加圧することによって、中心軸線Ocに沿って下方へ移動(下動)する。
【0032】
棒材把持部材38は軸部36の先端(上端)に取り付けられている。軸部36の先端には、棒材把持部材38を軸部36から脱離させることなく、軸方向に移動可能に取り付ける固定具44が取り付けられている。固定具44は、中空部材よりなり、内部に棒材把持部材38が配設される。棒材把持部材38は、把持すべき棒材260の外径、特に先端部264の外径よりもわずかに小さな内径を有した中空の部材よりなる。
【0033】
固定具44は、軸部36と同じ外径を有し、軸部36とともにスリーブ40の内周面に対して軸方向に摺動する。棒材把持部材38は、ばね50によって軸部36から軸方向に離反する方向、または、ワーク把持部20が把持するワーク90に接近する方向に付勢されている。棒材把持部材38は、また、固定具44によって、その内周面の中心が、ワーク把持装置10の中心軸線Ocに一致するように軸部36の先端に取り付けられる。
【0034】
スリーブ40の上端、つまり、ワーク把持装置10が把持するワーク90に隣接する端部には、キャップ46が取り付けられる。キャップ46は、ワーク把持装置10の中心軸線Ocを中心とする中心穴が形成されている。棒材260を挿入したワーク90がワーク把持装置10によって把持されるとき、該中心穴を通して、棒材260が棒材把持部30内に受容される。
【0035】
キャップ46は、また、中心軸線Ocを中心として、棒材把持部材38に対面するように設けられた係合部46aを有している。係合部46aは、キャップ46の下面から中心軸線Ocに沿って下方に突出しており、棒材把持部材38がピストン34とともに中心軸線Oに沿って上動したときに、該棒材把持部材38の先端部に係合可能となっている。
【0036】
棒材把持部材38は、係合部46aに係合、押圧されることによって、半径方向外側へ開く、つまり内径が拡大し、これにより把持している棒材260が開放されたり、或いは、爪12によって把持されているワーク90に挿入されている棒材260が棒材把持部38内に進入可能となる。
【0037】
反対に棒材把持部材38は、係合部46aから離反することによって、半径方向内側に閉じる、つまり内径が縮小(縮径)し、これにより棒材把持部38内に進入している棒材260が把持またはクランプされる。
【0038】
次に、図6を参照して、ワーク把持装置の他の実施形態を説明する。
図6において、ワーク把持装置10は、ワーク把持部20と、棒材把持部60とを有している。ワーク把持部20は、図5のワーク把持装置10のワーク把持部20と同様に形成されており、以下では詳細な説明を省略する。
【0039】
棒材把持部60はワーク把持部20の下側に配置されている。棒材把持部60は、圧力室62と、ピストン64と、棒材把持部材68と、係合部としてのテーパー面72とを有している。ピストン64は、軸方向に往復可能に圧力室62内に配設されている。ピストン64は、中心軸線Ocに沿って延びる軸部66を有している。軸部66は、ワーク把持部20を軸方向に貫通して延在する中空のスリーブ70の内周面に対して摺動可能となっている。
【0040】
圧力室62内において、ピストン64の下側の空間を油圧または空圧によって加圧することによって、ピストン64は、中心軸線Ocに沿って上方へ、つまり、爪12が把持するワーク90側へ移動(上動)し、反対にピストン64の上側の空間を加圧することによって、中心軸線Ocに沿って下方へ移動(下動)する。
【0041】
棒材把持部材68は、コレットよりなり、軸部66の先端(上端)に取り付けられている。棒材把持部材68は、軸部66の先端に螺合する等の手段により、軸部66から離反しないように固定されている。
【0042】
スリーブ70の先端(上端)に形成した係合部としてのテーパー面72は、軸部66の先端の棒材把持部材68の外周部に係合可能に、中心軸線Ocに沿って下方、つまり、ワーク把持装置10が把持するワーク90から離反する方向に内径が小さくなるようにテーパー状に形成されている。
【0043】
棒材把持部材68は、ピストン64が下動して、テーパ面72に係合、押圧されることによって、半径方向内側に閉じる、つまり内径が縮小(縮径)し、これにより棒材把持部38内に進入している棒材260が把持またはクランプされる。反対に、ピストン64が上動して、テーパ面72から離反することによって、半径方向内側に広がる、つまり内径が拡大し、これにより把持している棒材260が開放されたり、或いは、爪12によって把持されているワーク90に挿入されている棒材260が棒材把持部材68内に進入可能となる。
【0044】
工作機械100は、ワーク把持装置10へ空圧または油圧を供給する空圧源(図示せず)または油圧源(図示せず)を備えることができる。空圧源は、圧縮空気を生成するコンプレッサ(図示せず)、圧縮空気を貯留するタンク(図示せず)、ワーク把持装置10とタンクとの間の配管、該配管に設けられた遮断弁、圧力逃し弁、圧力調整弁等を含むことができる。油圧源は、作動油を貯留するタンク(図示せず)、タンクから作動油を吸い込み加圧するポンプ(図示せず)、ワーク把持装置10とポンプおよびタンクとの間の配管、該配管に設けられた遮断弁、圧力逃し弁、圧力調整弁等を含むことができる。該空圧源または油圧源は、工作機械100の機械制御装置によって制御することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 ワーク把持装置
12 爪
20 ワーク把持部
30 棒材把持部
38 棒材把持部材
60 棒材把持部
68 棒材把持部材
90 ワーク
92 中心穴
96 フランジ部
100 工作機械
110 主軸
114 テーブル
200 ワーク交換装置
202 ロボットアーム
【要約】
【課題】ターボチャージャのインペラのようなワークであっても簡単かつ確実に固定することが可能なワーク把持装置を提供すること。
【解決手段】工作機械100のテーブル114上でにワーク90を固定するためのワーク把持装置10が、中心軸線Oc周りに等間隔に配置されワークの外周部を固定する少なくとも3つの爪12を有するワーク把持部20と、中心軸線上Ocに設けられ、中心軸線Ocに沿ってワーク90に挿入された棒材260を把持する棒材把持部材38と、棒材把持部材38を中心軸線Oに沿ってテーブル側に引き込む引き込み機構64とを具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6