特許第6861782号(P6861782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6861782
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】デジタル資産を用いた決済処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20210412BHJP
【FI】
   G06Q40/04
【請求項の数】2
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-213721(P2019-213721)
(22)【出願日】2019年11月26日
【審査請求日】2019年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】500566567
【氏名又は名称】株式会社インタートレード
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−149981(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/087834(WO,A1)
【文献】 特開2008−059292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量あたりの価格の気配値を画面表示し、前記商品等の最小単位量あたりの価格での該商品等の売買注文を受け付ける第1注文受付手段と、
前記第1注文受付手段により受け付けられた前記商品等の売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、価格、注文時刻の順に並べ替えて格納する第1注文情報格納部と、
通貨の1単位量あたりの、前記商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量の気配値を画面表示し、通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量での該商品等トークンの売買注文を受け付ける第2注文受付手段と、
前記第2注文受付手段により受け付けられた前記商品等トークンの売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、該商品等トークンの量、注文時刻の順に並べ替えて格納する第2注文情報格納部と、
前記第1注文情報格納部により格納されている前記商品等の売買注文の注文情報を読み出し、価格ごとに注文数を集計し、集計した注文数が価格順に並ぶ第1板を作成する第1板作成手段と、
前記第2注文情報格納部により格納されている前記商品等トークンの売買注文の注文情報を読み出し、前記商品等トークンの量ごとに注文数を集計し、集計した注文数が前記商品等トークンの量順に並ぶ第2板を作成する第2板作成手段と、
前記第2板作成手段により作成された前記第2板のデータ形式を前記第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成するデータ形式変換手段と、
前記第1板作成手段により作成された前記第1板と前記データ形式変換手段により作成された前記変換第2板とを、注文情報が価格順に並ぶように合成して合成板を作成する合成板作成手段と、
前記合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出する注文数累計値算出手段と、
前記注文数累計値算出手段により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、前記第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分ける注文数累計値仕分け手段と、
前記合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第1対当注文特定手段と、
前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された前記合成板における注文のうち、前記変換第2板に対応する、前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第1データ形式再変換手段と、
前記第1注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された、前記合成板における前記第1板に対応する前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第1注文情報格納部を更新するとともに、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第1データ形式再変換手段によりデータ形式が前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、前記合成板における前記変換第2板に対応する前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第1約定手段と、
前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第1約定手段により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を前記合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して該合成板を更新する合成板更新手段と、
前記合成板更新手段により更新された、前記合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第2対当注文特定手段と、
前記第2対当注文特定手段により対当する注文として特定された前記合成板における注文のうち、前記変換第2板に対応する、前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第2データ形式再変換手段と、
前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第2対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第2データ形式再変換手段によりデータ形式が前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、前記合成板における前記変換第2板に対応する前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第2約定手段と、
を有することを特徴とするデジタル資産を用いた決済処理システム。
【請求項2】
前記商品等が貴金属、エネルギー資源、保存可能な農作物、美術品、飲料水その他の経済的価値をデジタルで表現可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の決済処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経済的な価値をデジタルで表現可能な、デジタル資産を用いて、商品等の取引の決済を行う、決済処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
資産は、経済的価値を有し、経済的価値を各国の発行する通貨等(例えば、日本では円、米国ではドル、ヨーロッパではユーロ等)を尺度として評価され、評価された経済的価値で売却および購入が可能である。
【0003】
世界の主要な商品取引所では、取引対象となる商品等の単位(取引所により異なる)をベースとして、商品等の経済的価値を各国の発行する通貨で表示した取引が行われている。
【0004】
しかるに、近年、デジタル化技術により、資産の経済的価値がデジタルで表現された、デジタル資産が取引され易くなっている。
特に定型化された経済的価値を有する資産、例えば、コモディティ(商品取引所で取引されている商品等)類は、デジタル資産として取引することのできる特性が強い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、商品取引所で取引されているような、取引対象となる商品等の最小単位量(取引所により異なる)をベースとして、商品等の経済的価値を各国の発行する通貨で表示した取引は、注文金額が高額になり易く取引者が限られる傾向にある。
【0006】
また、商品取引所で取引されている商品等は、取引注文の約定後に、通貨と交換する対象が、必ずしも現物の商品等ではなく、商品等の預かり証に相当するものをデジタル化したトークンである場合が多い。
【0007】
商品取引所での取引において、預かり証に相当するものをデジタル化したトークンが用いられていることからすると、商品等の最小単位量未満の数をなすものについてもデジタル化した商品等トークンとして超小口の取引を行うことが可能と考えられる。
【0008】
そこで、本発明者は、多くの人が取引者となって、低額で取引を行うことができる商品等の取引方法として、通貨の1単位量をベースとし、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を商品等トークンの量で表示し、商品等をデジタル資産として超小口の取引を行うことについて調査・検討した。
【0009】
しかし、従来の商品取引所には、通貨の単位をベースとした、商品等の経済的価値を商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量で表示して超小口の取引を行うシステムは、存在しない。
【0010】
ここで、本発明者は、従来の商品取引所の取引と同様、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格を表示して取引を行うための第1板を備えた取引システムと、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示し、商品等をデジタル資産として超小口の取引を行うための第2板を備えた取引システムとを夫々独立して有する、デジタル資産を用いた決済システムを着想し、考察・検討した。
【0011】
考察・検討の結果、第1板を備えた取引システムと、第2板を備えた取引システムの両方のシステムを夫々独立して有する、デジタル資産を用いた決済システムを構築する場合、両板の価格の妥当性や両板の取引の流動性を得るために、HFTによる裁定取引の機能が介在され易く、HFTは、取引手順などを組み込んだプログラムに従って高速、高頻度で自動売買を繰り返す取引であるため、上記両方の取引システムに、HFTによる裁定取引の機能が介在した場合、鞘取りの失敗による小刻みな注文数の繰り返しにより、システム領域にかかる負荷が膨大化し、円滑な取引を阻害するという問題があることが判明した。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、従来、世界の主要な商品取引所で行われている、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格で表示する第1板を用いた取引と、従来、世界の主要な商品取引所で行われていなかった、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示する第2板を用いた、商品等をデジタル資産とする超小口の取引を行うことができ、かつ、HFTによる裁定取引の機能の介在によるシステム領域にかかる負荷の膨大化を防止し、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保しながら円滑な取引を行うことの可能な、デジタル資産を用いた決済処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明によるデジタル資産を用いた決済処理システムは、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量あたりの価格の気配値を画面表示し、前記商品等の最小単位量あたりの価格での該商品等の売買注文を受け付ける第1注文受付手段と、前記第1注文受付手段により受け付けられた前記商品等の売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、価格、注文時刻の順に並べ替えて格納する第1注文情報格納部と、通貨の1単位量あたりの、前記商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量の気配値を画面表示し、通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量での該商品等トークンの売買注文を受け付ける第2注文受付手段と、前記第2注文受付手段により受け付けられた前記商品等トークンの売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、該商品等トークンの量、注文時刻の順に並べ替えて格納する第2注文情報格納部と、前記第1注文情報格納部により格納されている前記商品等の売買注文の注文情報を読み出し、価格ごとに注文数を集計し、集計した注文数が価格順に並ぶ第1板を作成する第1板作成手段と、前記第2注文情報格納部により格納されている前記商品等トークンの売買注文の注文情報を読み出し、前記商品等トークンの量ごとに注文数を集計し、集計した注文数が前記商品等トークンの量順に並ぶ第2板を作成する第2板作成手段と、前記第2板作成手段により作成された前記第2板のデータ形式を前記第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成するデータ形式変換手段と、前記第1板作成手段により作成された前記第1板と前記データ形式変換手段により作成された前記変換第2板とを、注文情報が価格順に並ぶように合成して合成板を作成する合成板作成手段と、前記合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出する注文数累計値算出手段と、前記注文数累計値算出手段により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、前記第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分ける注文数累計値仕分け手段と、前記合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第1対当注文特定手段と、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された前記合成板における注文のうち、前記変換第2板に対応する、前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第1データ形式再変換手段と、前記第1注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された、前記合成板における前記第1板に対応する前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第1注文情報格納部を更新するとともに、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第1データ形式再変換手段によりデータ形式が前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、前記合成板における前記変換第2板に対応する前記第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第1約定手段と、前記第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第1約定手段により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を前記合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して該合成板を更新する合成板更新手段と、前記合成板更新手段により更新された、前記合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第2対当注文特定手段と、前記第2対当注文特定手段により対当する注文として特定された前記合成板における注文のうち、前記変換第2板に対応する、前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第2データ形式再変換手段と、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、前記第2対当注文特定手段により対当する注文として特定され、前記第2データ形式再変換手段によりデータ形式が前記第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、前記合成板における前記変換第2板に対応する前記第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、前記通貨の1単位量あたりの前記商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、前記第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第2約定手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のデジタル資産を用いた決済処理システムにおいては、前記商品等が貴金属、エネルギー資源、保存可能な農作物、美術品、飲料水その他の経済的価値をデジタルで表現可能なものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来、世界の主要取引所で行われている、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格で表示する第1板を用いた取引とともに、従来、世界の主要取引所で行われていなかった、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示する第2板を用いた、商品等をデジタル資産とする超小口の取引を行うことができ、かつ、HFTによる裁定取引の機能の介在によるシステム領域にかかる負荷の膨大化を防止し、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保しながら円滑な取引を行うことの可能な、デジタル資産を用いた決済処理システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るデジタル資産を用いた決済処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
図2図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1注文受付手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図3図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1注文情報格納部による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図4図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2注文受付手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図5図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2注文情報格納部による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図6図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1板作成手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図7図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2板作成手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図8図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおけるデータ形式変換手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図9図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける合成板作成手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図10図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける注文数累計値算出手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図11図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける注文数累計値仕分け手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図12図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1対当注文特定手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図13図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1データ形式再変換手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図14図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1約定手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図15図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける合成板更新手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図16図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2対当注文特定手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図17図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2データ形式再変換手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図18図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第2約定手段による処理概要の一例を示すフローチャートである。
図19図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける全体の処理の流れの一部を示すフローチャートである。
図20図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける全体の処理の流れの他部を示すフローチャートである。
図21図1のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける全体の処理の流れのさらに他部を示すフローチャートである。
図22】本発明の第2実施形態に係るデジタル資産を用いた決済処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
図23】本発明者が本発明を導出する前段階で当初検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システムの一例の全体構成を概略的に示す説明図である。
図24】本発明者が本発明を導出する前段階で次に検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システムの一例の全体構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯、及び本発明の作用効果について説明する。
【0018】
上述のように、近年、デジタル化技術により、資産の経済的価値をデジタルで表現した、デジタル資産が取引され易くなっている。
特に定型化された経済的価値を有する資産、例えば、コモディティ(商品取引所で取引されている商品等)類は、経済的価値がデジタルで表現された、デジタル資産として取引することのできる特性が強い。
ところで、例えば、商品取引所で取引されているような、取引対象となる商品等の最小単位量(取引所により異なる)をベースとして、商品等の経済的価値を各国の発行する通貨で表示した取引は、注文金額が高額になり易く取引者が限られる傾向にある。
また、商品取引所で取引されている商品等は、取引注文の約定後に、通貨と交換する対象が、必ずしも現物の商品等ではなく、商品等の預かり証に相当するものをデジタル化したトークンである場合が多い。
商品取引所で取引において、預かり証に相当するものをデジタル化したトークンが用いられていることからすると、商品等の最小単位量未満の数をなすものについてもデジタル化した商品等トークンとして超小口の取引を行うことが可能と考えられる。
【0019】
この点に関し、商品としてゴールドを例に挙げて説明する。なお、以下の説明では便宜上、手数料等のスプレッドは除外する。
現在、日本の商品取引所等において、ゴールドは、g単位での売値と買値の価格が公表される。
例えば、500gの現物のゴールドバーの購入を所望する場合、ゴールドバーの価格が例えば1gあたり5000円となっているときは、250万円の円資産(通貨)で購入することができる。
【0020】
ここで、現物のゴールドの経済的価値がデジタルで表現されたものを、デジタル資産として流通できるようにすることを考える。
経済的価値がデジタルで表現された、デジタル資産は、発行対象となる現物資産の保有量に応じた経済的価値をデジタルデータとして発行したもの(例えば、スマートコントラクトを用いた、ブロックチェーン技術を使ったトークン(既存のブロックチェーン上に新たに作られた仮想通貨)類)である。
【0021】
例えば、所有者が現物のゴールドを1000g所有している場合、所有者からゴールドの信託を受けた発行者、または所有者が発行者となって、現物のゴールドの保有量(1000g)に応じた経済的価値と同額になる(経済的価値に相当する)量のトークン(例えば、1トークン=1gと定義する場合、発行量は1000トークンとなる)を発行する。
この例で、現物のゴールドの経済的価値が1gあたり5000円であるとき、5000円でゴールド1トークンを購入でき、ゴールド1トークンは5000円で売ることができる。
【0022】
また、例えば、ゴールドの売買を¥で決済する取引システムを考える。
取引所は、g単位の取引では、g単位での¥を提示する。
取引者は、取引を所望する¥を指定し、指定した¥に相当する経済的価値を有するg単位の整数量のゴールドを購入(もしくは売却)する。
ここで、¥で決済を行うような取引(店舗で商品等を購入するような取引)において、現物のゴールドの預かり証で決済できるのであれば、現物のゴールドの最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値がデジタル化された、デジタル資産としてのゴールド(ゴールドトークン)を用いて決済ができると考えられる。
【0023】
デジタル資産としてのゴールド(ゴールドトークン)を用いて決済を行う場合、¥単位の取引では、¥単位でのゴールドのg数を提示することになる。
例えば、1¥に相当する経済的価値を有するゴールドのg数を表示する場合、1g=5000円となっているとき、1¥=0.0002gとなり、表示されるゴールドのg数は微小なg単位の量となる。
【0024】
ところで、上述したように、従来、主要な商品取引所では、取引対象となる商品等の単位(取引所により異なる)をベースとして、商品等の経済的価値を各国の発行する通貨で表示する第1板を用いた取引が行われている一方、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示して超小口の取引を行うシステムは、存在しない。
【0025】
ここで、本発明者は、従来の商品取引所の取引と同様、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格を表示して取引を行うための第1板を備えた取引システムと、通貨の単位をベースとした、商品等の経済的価値を商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示し、商品等をデジタル資産として超小口の取引を行うための第2板を備えた取引システムとを夫々独立して有する、デジタル資産を用いた決済システムを構築することを着想し、考察・検討した。
なお、デジタル資産の発行体やデジタル資産と現物商品等との交換所は、当該システムに関連して別途設けられていることを前提とする。
【0026】
本発明を導出する前段階で当初検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システム
図23は本発明者が本発明を導出する前段階で当初検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システムの一例の全体構成を概略的に示す説明図である。
図23のデジタル資産を用いた決済処理システムは、第1板側の取引システム50と、第2板側の取引システム60を有している。
【0027】
第1板側の取引システム
第1板側の取引システム50は、従来の世界の主要取引所と同様、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格を表示した第1板を用いた取引(例えば、商品1gあたりの¥を表示した第1板を用いた取引)を行うシステムであり、第1注文受付手段51と、第1注文情報格納部52と、第1板作成手段53と、第1対当注文特定手段54と、第1約定手段55を有している。
【0028】
第1注文受付手段
第1注文受付手段51は、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量(図23の例では便宜上1単位量としてある)あたりの価格の気配値を画面表示し、商品等の最小単位量あたりの価格での商品等の売買注文を受け付けるように構成されている。
なお、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量あたりの価格の気配値は、例えば、世界の主要取引所と、第1板側の取引システム50との間に、大口取引者のHFT裁定取引システムが介在することにより、相互に、裁定取引(アービトラージ:複数の板間において、同一の経済的価値を有する商品等の一時的な価格差(歪み)が生じた際に、割高となっている板における商品等を売り、割安となっている板における商品等を買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を獲得しようとする取引)の機能が働いたときの価格、あるいは、主要取引所で取引されている商品等の価格に基づいて本件システムの提供者が定めた、所定の価格を用いる。
また、第1注文受付手段51における画面表示形式は、売り気配値と買い気配値を含む板形式、売り気配値と買い気配値のみの2WAY方式のいずれでも採用しうる。
【0029】
第1注文情報格納部
第1注文情報格納部52は、例えば、データベースファイルを備えたデータベースシステムからなり、第1注文受付手段51により受け付けられた商品等の売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、価格、注文時刻の順に並べ替えて格納するように構成されている。
【0030】
第1板作成手段
第1板作成手段53は、第1注文情報格納部52により格納されている商品等の売買注文の注文情報を読み出し、価格ごとに注文数を集計し、集計した注文数が価格順に並ぶ第1板を作成するように構成されている。
【0031】
第1対当注文特定手段
第1対当注文特定手段54は、第1板作成手段53により作成された第1板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、対当する注文を特定するように構成されている。
【0032】
第1約定手段
第1約定手段55は、第1注文情報格納部52に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段54により特定された、対当する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順(即ち、売り注文の場合は注文価格の低い順、買い注文の場合は注文価格の高い順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部52に格納されている注文情報を更新するように構成されている。
【0033】
なお、第1板側の取引システム50は、第1注文情報格納部52による注文情報の格納から第1約定手段54による約定及び第1注文情報格納部52の更新までの処理が完了するまでの間、第1注文情報格納部52をロックし、第1約定手段54による第1注文情報格納部52の更新後に、ロックを解除する。そして、小数点以下数秒という非常に短い時間が経過後に、第1注文受付手段51で受け付けた売買注文を新たに加えた、第1注文情報格納部52による注文情報の格納から第1約定手段54による約定及び第1注文情報格納部52の更新までの処理を再び行う。
【0034】
第2板側の取引システム
第2板側の取引システム60は、通貨の単位をベースとした、商品等の経済的価値を前記商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量で表示する第2板を用いた、商品等をデジタル資産とする超小口の取引(例えば、1¥あたりの商品のg数を表示した第2板を用いた取引)を行うシステムであり、第2注文受付手段61と、第2注文情報格納部62と、第2板作成手段63と、第2対当注文特定手段64と、第2約定手段65を有している。
【0035】
第2注文受付手段
第1注文受付手段61は、通貨の1単位量あたりの、商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量の気配値を画面表示し、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量での商品等トークンの売買注文を受け付けるように構成されている。
第2注文受付手段61における画面表示形式は、売り気配値と買い気配値を含む板形式、売り気配値と買い気配値のみの2WAY方式のいずれでも採用しうる。
【0036】
第2注文情報格納部
第2注文情報格納部62は、例えば、データベースファイルを備えたデータベースシステムからなり、第2注文受付手段61により受け付けられた商品等トークンの売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量、注文時刻の順に並べ替えて格納するように構成されている。
【0037】
第2板作成手段
第2板作成手段63は、第2注文情報格納部62により格納されている商品等トークンの売買注文の注文情報を読み出し、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量ごとに注文数を集計し、集計した注文数が通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順に並ぶ第2板を作成するように構成されている。
【0038】
第2対当注文特定手段
第2対当注文特定手段64は、第2板作成手段63により作成された第2板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、対当する注文を特定するように構成されている。
【0039】
第2約定手段
第2約定手段65は、第2注文情報格納部62に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段64により特定された、対当する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部62に格納されている注文情報を更新するように構成されている。
【0040】
なお、第2板側の取引システム60は、第2注文情報格納部62による注文情報の格納から第2約定手段64による約定及び第2注文情報格納部62の更新までの処理が完了するまでの間、第2注文情報格納部62をロックし、第2約定手段64による第2板格納部62の更新後に、ロックを解除する。そして、小数点以下数秒という非常に短い時間が経過後に、第2注文受付手段61で受け付けた売買注文を新たに加えた、第2注文情報格納部62による注文情報の格納から第2約定手段64による約定及び第2注文情報格納部62の更新までの処理を再び行う。
【0041】
これらの取引システム50、60を有する決済処理システムを構築することにより、夫々板方式で注文が管理され、例えば、商品1gあたりの¥を表示した第1板と、1¥あたりの商品トークンのg数を表示した第2板の2つの板が存在し、夫々の板において、別個に、注文のつき合わせ、対当する注文の特定が行われることになるが、第1板と第2板との間に、価格の乖離が生じ、また、流動性が悪くなる虞が懸念される。
【0042】
そこで、本発明者は、次に、図23のデジタル資産を用いた決済処理システムにおいて、上記の第1板と第2板との間で、裁定取引の機能が働き、相互に流動性の修正を行い、価値が連動するようにする構成を構築することについて検討・考察した。
【0043】
本発明を導出する前段階で次に検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システム
図24は本発明者が本発明を導出する前段階で次に検討・考察した、デジタル資産を用いた決済処理システムの一例の全体構成を概略的に示す説明図である。
図24の決済処理システムでは、図23に示した決済処理システムの構成に加えて、HFT裁定取引システム80を有している。
HFT裁定取引システム80は、第1板側の取引システム50と第2板側の取引システム60との間において、裁定取引の機能が働くように構成されている。
【0044】
しかし、図24の取引システムのようにHFT裁定取引システム80を有した構成とした場合、第2板側の取引システム60で、次のような問題が生じることが判明した。
【0045】
決済は、商品等の購入などの取引がリアルタイムに終了するように処理することが前提となる。
当然ながら、価格の妥当性を担保しながら即時に決済を行う必要があり、「価格の妥当性を担保しながら即時に決済を行うこと」の連続性を維持することが必要となる。
本来の価格の妥当性は、第1板側の取引システム50が、常に主要マーケット(有名取引所)の取引価格(大口取引の価格が妥当であるとする一般的な理論)を参考とすることで得られる。
【0046】
より詳しくは、外部の大手取引所(世界の主要取引所)における夫々の板と、第1板側の取引システム50における第1板との間で、大口取引者のHFT裁定取引システム(不図示)におけるHFT(ミリ秒単位のような極めて短い時間の間に実施する超高頻度(超高速)取引。)による裁定取引の機能が働くことにより、価格は大手取引所に連動し、価格の妥当性が得られる。
この裁定取引の頻度は、第1板側の取引システム50が、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量(図23の例では便宜上1単位量としてある)あたりの価格での取引を行うものであって、第1板側の取引システム50と主要取引所とにおける一注文数あたりの経済的価値の差が殆どなく、第1板側の取引システム50における注文数を膨大化させる必要がないため、第1板側の取引システム50と第2板側の取引システム60との間に介在する、HFT裁定取引システム80による裁定取引の頻度に比べて、非常に少なくなる。
【0047】
ところで、通貨での決済は、通貨自体の経済的価値が国などにより担保されているため、即座に行うことができる。
通貨以外の経済的価値のあるデジタル資産での決済も、通貨での決済と同じように、処理の停止や遅延を起こすことは許されない。
【0048】
「通貨での決済」を行う取引と、「通貨以外の経済的価値のあるもの(デジタル資産)での決済」を行う取引とを可能にするシステムを構築する場合、上述した2種類の板(第1板と第2板)を実装し、その両板の価格の連動性を担保するために、裁定取引システムによる外部の大手取引所における夫々の板と第1板側の取引システム50における第1板との間でのHFTによる裁定取引とは別に、図24に示したような、HFT裁定取引システム80を設けて、双方の板(第1板と第2板)に、超高速に裁定取引を行う機能を介在させる必要がある。
【0049】
しかし、第2板は、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示されるものであって、第1板のような商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格を表示されるものに比べて、一注文数あたりの商品等トークンの経済的価値が極めて小さい。
第1板と同様の一注文数あたりの経済的価値を得るためには、第2板における注文数を膨大化させる必要がある。
【0050】
しかし、商品や商品等トークンの相場は極めて短い時間に変動するため、第2板側の取引システム60において、商品等トークンの注文数を膨大化させて一時期にまとめて発注しても、その注文数の膨大化した商品等トークンの注文の全てを対当・約定させることは難しい。
両板(第1板と第2板)における鞘取のズレ(スリッページ)を無くすため、もしくは価格の急変などにより鞘取が失敗し、ズレが発生するのを防ぐため、HFTの処理において、注文量を最小限(最低取引単位分)として大量の小刻み注文を2板間の取引システム(第1板と第2板との間)で行うことになる。
そして、第1板側の取引システム50と第2板側の取引システム60との間で裁定取引を行う場合、第2板側の取引システム60において微小単位の注文数での発注を膨大な回数繰り返すことになる。
その結果、第2板側の取引システム60における発注に伴う、トランザクションが膨大化し、システムにかかる負担が大きくなるとともに、処理時間の停滞を招く虞が懸念される。
【0051】
しかも、注文を小口化しても、商品や商品等トークンの相場の極めて短い時間の変動に追いつけず、注文した時点の価格と実際に約定された価格に差が出てしまうスリッページを起こし、再注文が繰り返されやすい。
加えて、上述したように、第2板側の取引システムでの取引は最小の通貨を単位とするものであるため、注文数が膨大化し易い。そして、第2板側の取引システムでの決済の量が増えるに従い、2板間(第1板と第2板との間)で膨大なシステムトランザクションが発生するため、それに対応する規模のシステム構築のための投資が必要となり、コスト負担が膨大化する。
【0052】
特に第2板と、第1板の双方に対し、決済における変動と、市場の価格変動の双方が常時発生し、銘柄の流動性が高いほど、膨大な数の最小単位トランザクション(外部の大手取引所における夫々の板と第1板との間でのHFTによる裁定取引とは別のHFTによる裁定取引(図24に示すHFT裁定取引システム80)の動作)が発生し易くなる。
【0053】
本発明者はこのような問題を鑑み、考察、検討した結果、本発明のデジタル資産を用いた決済処理システムを導出するに至った。
【0054】
本発明のデジタル資産を用いた決済処理システムは、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量あたりの価格の気配値を画面表示し、商品等の最小単位量あたりの価格での商品等の売買注文を受け付ける第1注文受付手段と、第1注文受付手段により受け付けられた商品等の売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、価格、注文時刻の順に並べ替えて格納する第1注文情報格納部と、通貨の1単位量あたりの、商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量の気配値を画面表示し、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量での商品等トークンの売買注文を受け付ける第2注文受付手段と、第2注文受付手段により受け付けられた商品等トークンの売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、商品等トークンの量、注文時刻の順に並べ替えて格納する第2注文情報格納部と、第1注文情報格納部により格納されている商品等の売買注文の注文情報を読み出し、価格ごとに注文数を集計し、集計した注文数が価格順に並ぶ第1板を作成する第1板作成手段と、第2注文情報格納部により格納されている商品等トークンの売買注文の注文情報を読み出し、商品等トークンの量ごとに注文数を集計し、集計した注文数が商品等トークンの量順に並ぶ第2板を作成する第2板作成手段と、第2板作成手段により作成された第2板のデータ形式を第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成するデータ形式変換手段と、第1板作成手段により作成された第1板とデータ形式変換手段により作成された変換第2板とを、注文情報が価格順に並ぶように合成して合成板を作成する合成板作成手段と、合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出する注文数累計値算出手段と、注文数累計値算出手段により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分ける注文数累計値仕分け手段と、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第1対当注文特定手段と、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第1データ形式再変換手段と、第1注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された、合成板における第1板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部を更新するとともに、第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第1データ形式再変換手段によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第1約定手段と、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第1約定手段により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して合成板を更新する合成板更新手段と、合成板更新手段により更新された、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する第2対当注文特定手段と、第2対当注文特定手段により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する第2データ形式再変換手段と、第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第2データ形式再変換手段によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部に格納されている注文情報を更新する第2約定手段と、を有する。
【0055】
本発明のデジタル資産を用いた決済処理システムのように、データ形式変換手段が、第2板のデータ形式を第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成し、合成板作成手段が、第1板と変換第2板とを合成して合成板を作成し、注文数累計値算出手段が、合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出し、注文数累計値仕分け手段が、売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分け、第1対当注文特定手段が、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定し、第1データ形式再変換手段が、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換し、第1約定手段が、第1注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定された、合成板における第1板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部を更新するとともに、第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第1データ形式再変換手段によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部を更新し、合成板更新手段が、第1対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第1約定手段により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して合成板を更新し、第2対当注文特定手段が、合成板更新手段により更新された、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定し、第2データ形式再変換手段が、第2対当注文特定手段により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換し、第2約定手段が、第2注文情報格納部に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段により対当する注文として特定され、第2データ形式再変換手段によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させるようにすれば、図24に示した、デジタル資産を用いた決済処理システムのような、第2板側のシステム60において必要となる、第1板側のシステム50における1つの注文と対当させるための膨大な数の注文を、合成した一つの板での対当処理を介して約定させることができる。そして、図24に示したHFT裁定システム80による、第1板と第2板の間の価格の連動性を担保するための、膨大な負荷のかかる機能を用いないで済むようになる。
【0056】
このため、本発明によれば、従来、世界の主要取引所で行われている、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格で表示する第1板を用いた取引とともに、従来、世界の主要取引所で行われていなかった、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を商品等トークンの量で表示する第2板を用いた、商品等をデジタル資産とする超小口の取引を行うことができ、かつ、HFTによる裁定取引の機能の介在によるシステム領域にかかる負荷の膨大化を防止し、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保しながら円滑な取引を行うことの可能な、デジタル資産を用いた決済処理システムが得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行うこととする。
【0057】
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係るデジタル資産を用いた決済処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
第1実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムは、第1注文受付手段1と、第1注文情報格納部2と、第2注文受付手段3と、第2注文情報格納部4と、第1板作成手段5と、第2板作成手段6と、データ形式変換手段7と、合成板作成手段8と、注文数累計値算出手段9と、注文数累計値仕分け手段10と、第1対当注文特定手段11と、第1データ形式再変換手段12と、第1約定手段13と、合成板更新手段14と、第2対当注文特定手段15と、第2データ形式再変換手段16と、第2約定手段17と、を有している。これらの構成要素は、図23図24に示した決済処理システムにおける第1板側の取引システム50、第2板側の取引システム60とは異なり、第1板と第2板とを一つに合成させた合成板において対当する注文を特定し、第1板の注文と第2板の注文とが約定できるように構築されている。
【0058】
第1注文受付手段、第1注文情報格納部、第1板作成手段
第1注文受付手段1、第1注文情報格納部2、第1板作成手段5は、図23図24に示した第1側の取引システム50における第1注文受付手段51、第1注文情報格納部52、第1板作成手段53と略同じに構成されている(図2図3図4参照、ステップS1、S2、S3)。
【0059】
第2注文受付手段、第2注文情報格納部、第2板作成手段
第2注文受付手段3、第2注文情報格納部4、第2板作成手段6は、図23図24に示した第2側の取引システム60における第2注文受付手段61、第2注文情報格納部62、第6板作成手段63と略同じに構成されている(図5図6図7参照、ステップS4、S5、S6)。
【0060】
データ形式変換手段
データ形式変換手段7は、第2板作成手段6により作成された第2板のデータ形式を第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成するように構成されている(図8参照、ステップS7)。
第2板のデータ形式の変換は、例えば、1¥あたりの商品のg数を逆数化(商品1gあたりの¥)するとともに、逆数化した数値で注文数を除算(1¥あたりの商品のg数を乗算)することによって行う。
データ形式の変換後に、第1板と同様(昇順)の価格順に並べ替える。
なお、逆数化した数値における小数点以下について所定の桁数の切り上げ又は切り捨てをするように構成してもよい。
【0061】
合成板作成手段
合成板作成手段8は、第1板作成手段5により作成された第1板とデータ形式変換手段7により作成された変換第2板とを、注文情報が(第1板と同様(昇順)の)価格順に並ぶように合成して合成板を作成するように構成されている(図9参照、ステップS8)。
【0062】
注文数累計値算出手段
注文数累計値算出手段9は、合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出するように構成されている(図10参照、ステップS9)。
【0063】
注文数累計値仕分け手段
注文数累計値仕分け手段10は、注文数累計値算出手段9により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外(本例では、小数点以下)の数値となる第2累計値とに仕分けるように構成されている(図11参照、ステップS10)。
【0064】
第1対当注文特定手段
第1対当注文特定手段11は、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定するように構成されている(図12参照、ステップS11−1、S11−2)。
【0065】
第1データ形式再変換手段
第1データ形式再変換手段12は、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換するように構成されている(図13参照、ステップS12)。
【0066】
第1約定手段
第1約定手段13は、第1注文情報格納部2に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された、合成板における第1板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順(即ち、売り注文の場合は注文価格の低い順、買い注文の場合は注文価格の高い順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部2を更新するとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1データ形式再変換手段12によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新するように構成されている(図14参照、ステップS13−1〜S13−4)。
【0067】
合成板更新手段
合成板更新手段14は、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1約定手段13により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して合成板を更新するように構成されている(図15参照、ステップS14)。
【0068】
第2対当注文特定手段
第2対当注文特定手段15は、合成板更新手段14により更新された、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定するように構成されている(図16参照、ステップS15−1、S15−2)。
【0069】
第2データ形式再変換手段
第2データ形式再変換手段16は、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換するように構成されている(図17参照、ステップS16)。
【0070】
第2約定手段
第2約定手段17は、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定され、第2データ形式再変換手段16によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新するように構成されている(図18参照、ステップS17−1、S17−2)。
【0071】
なお、本実施形態の決済処理システムは、第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4による注文情報の格納から第1約定手段13による約定及び第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4の更新、並びに第2約定手段17による約定及び第2注文情報格納部4の更新までの処理が完了するまでの間、第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4をロックし、第1約定手段13、第2約定手段17による第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4の更新後に、ロックを解除する。そして、小数点以下数秒という非常に短い時間が経過後に、第1注文受付手段1で受け付けた売買注文を新たに加えた、第1注文情報格納部2による注文情報の格納、第2注文受付手段3で受け付けた売買注文を新たに加えた、第2注文情報格納部4による注文情報の格納から第1約定手段13による約定及び第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4の更新、並びに第2約定手段17による約定及び第2注文情報格納部4の更新までの処理を再び行う(図19図21参照、ステップS101〜S117)。
【0072】
このように構成された第1実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システム1における、各処理段階での板のデータ形態を、表を用いて例示する。
本例では、第1板作成手段5が第1注文情報格納部2により格納されている商品等の売買注文の注文情報を読み出して第1板を作成したときの第1板のデータ構成が表1に示された状態にあり、第2板作成手段6が第2注文情報格納部4により格納されている商品等トークンの売買注文の注文情報を読み出して第2板を作成したときの第2板のデータ構成が表2で示された状態にあるものとする。また、ここでは第1板として示される取引対象をなす商品はゴールドとし、第2板として示される取引対象をなすデジタル資産はゴールドトークンとする。
【0073】
【表1】
表1の例では、1gのゴールドに対し、売り気配は¥5000、買い気配は¥4999となっており、対当する注文がない状態となっている。
【0074】
【表2】
表2の例では、1¥に対し、売り気配は0.0002000gのゴールドトークン、買い気配は0.0001996gのゴールドトークンとなっており、0.0002000gにおいて対当する注文が存在する状態となっている。
【0075】
このような状態にあるときに、データ形式変換手段7が、第2板作成手段6により作成された表2の第2板のデータ形式を第1板のデータ形式と同じ形式に変換する(図8参照、ステップS7)。
より詳しくは、データ形式変換手段7は、まず、1¥あたりの商品のg数を逆数化(商品1gあたりの¥)するとともに、逆数化した数値で注文数を除算する。
このときの第2板のデータ形態を表3に示す。
【0076】
【表3】
第2板(1¥あたりの商品のg数を逆数化(商品1gあたりの¥)するとともに、逆数化した数値で注文数を除算)
【0077】
データ形式変換手段7は、次に、昇順の価格順に並べ替える。これにより、変換第2板の作成が完了する。
このときの変換第2板のデータ形態を表4に示す。
【0078】
【表4】
変換第2板(第1板と同じく昇順の価格順に並べ替え)
【0079】
次に、合成板作成手段8が、第1板作成手段5により作成された第1板とデータ形式変換手段7により作成された変換第2板とを、注文情報が(第1板と同様(昇順)の)価格順に並ぶように合成して合成板を作成する(図9参照、ステップS8)。
次に、注文数累計値算出手段9が、合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出する(図10参照、ステップS9)。
次に、注文数累計値仕分け手段10が、注文数累計値算出手段9により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1板における最小取引単位の整数倍の数値(本例では、1以上の整数値)となる第1累計値と、該第1累計値以外(本例では、小数点以下)の数値となる第2累計値とに仕分ける(図11参照、ステップS10)。
このときの合成板のデータ形態を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
次に、第1対当注文特定手段11が、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する(図12参照、ステップS11−1、S11−2)。
本例では、第1対当注文特定手段11は、まず、表5に示す合成板における売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯として、5000.0000000円から5002.501251円までの価格帯を特定する。
次に、第1対当注文特定手段11は、上記価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文として、5000円で、第1累計値“2”の注文数のうちの注文数“1”の売り注文と、5000.0000000円で、第1累計値“1”と同じ注文数“1”の買い注文を特定する。
【0082】
次に、第1データ形式再変換手段12は、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する(図13参照、ステップS12)。
本例では、第1データ形式再変換手段12は、5000.0000000円で、注文数“1”の買い注文のデータ形式を0.0002000gで、注文数“5000”に再変換する。
データ形式の再変換は、合成板における変換第2板に対応する注文の価格を逆数化することで、第2板の注文における商品トークンの量に再変換され、合成板における変換第2板に対応する注文の価格を注文数に乗算することで、第2板の注文における注文数に再変換される。
なお、データ形式再変換手段12によるデータ形式の再変換時の数値に、第2板における注文数の最小単位“1”に満たない端数が生じた場合は、切り捨てる。あるいは、端数の注文は、本件システムの提供者が自ら対当する発注を行って処理するようにしてもよい。
【0083】
次に、第1約定手段13が、第1注文情報格納部2に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された、合成板における第1板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順(即ち、売り注文の場合は注文価格の低い順、買い注文の場合は注文価格の高い順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部を更新するとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1データ形式再変換手段12によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新する(図14参照、ステップS13−1〜S13−4)。
本例では、第1約定手段13は、第1注文情報格納部2に格納されている注文情報のうち、表5に示す合成板における第1板に対応する5000円で、注文数“1”の売り注文を、注文時刻の早い順に約定させるとともに、第1注文情報格納部2に格納されている注文情報を更新する。
また、本例では、第1約定手段13は、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、表5に示す合成板における変換第2板に対応する5000.0000000円で、注文数“1”の買い注文であって、第1データ形式再変換手段12によりデータ形式が0.0002000gで、注文数“5000”に再変換された買い注文を、注文時刻の早い順に約定させるとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新する。
【0084】
次に、合成板更新手段14が、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1約定手段13により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して合成板を更新する(図15参照、ステップS14)。
このときの合成板のデータ形態を表6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
次に、第2対当注文特定手段15が、合成板更新手段14により更新された、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定する(図16参照、ステップS15−1、S15−2)
本例では、第2対当注文特定手段15は、まず、表6に示す合成板における売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯として、5000.0000000円から5002.501251円までの価格帯を特定する。
次に、第2対当注文特定手段15は、上記価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文として、5000.0000000円で、第2累計値“0.0024000”と同じ注文数 “0.0024000”の売り注文と、5002.501251円で、第2累計値“0.0457771”の注文数のうちの注文数“0.0024000”の買い注文を特定する。
【0087】
次に、第2データ形式再変換手段16が、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換する(図17参照、ステップS16)。
本例では、第2データ形式再変換手段16は、5000.0000000円で、注文数“0.0024000”の売り注文のデータ形式を0.0002000gで、注文数“12”に再変換する。
また、第2データ形式再変換手段16は、5002.501251円で、注文数“0.0024000”の買い注文のデータ形式を0.0001999gで、注文数“12”に再変換する。
データ形式の再変換は、合成板における変換第2板に対応する注文の価格を逆数化することで、第2板の注文における商品トークンの量に再変換され、合成板における変換第2板に対応する注文の価格を注文数に乗算することで、第2板の注文における注文数に再変換される。
なお、データ形式再変換手段12によるデータ形式の再変換時の数値に、第2板における注文数の最小単位“1”に満たない端数が生じた場合は、切り捨てる。あるいは、端数の注文は、本件システムの提供者が自ら対当する発注を行って処理するようにしてもよい。
【0088】
次に、第2約定手段17が、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定され、第2データ形式再変換手段16によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させるとともに、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新する(図18参照、ステップS17−1、S17−2)。
本例では、第2約定手段17は、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、表6に示す合成板における変換第2板に対応する5000.0000000円で、注文数“0.0024000”の売り注文であって、第2データ形式再変換手段16によりデータ形式が0.0002000gで、注文数“12”に再変換された売り注文、5002.501251円で、注文数“0.0024000”の買い注文であって、第2データ形式再変換手段16によりデータ形式が0.0001999gで、注文数“12”に再変換された買い注文を、注文時刻の早い順に約定させるとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新する。
【0089】
その後、本実施形態の決済処理システムは、第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4のロックを解除する。そして、小数点以下数秒という非常に短い時間が経過後に、第1注文受付手段1で受け付けた売買注文を新たに加えた、第1注文情報格納部2による注文情報の格納、第2注文受付手段3で受け付けた売買注文を新たに加えた、第2注文情報格納部4による注文情報の格納から第1約定手段13による約定及び第1注文情報格納部2、第2注文情報格納部4の更新、並びに第2約定手段17による約定及び第2注文情報格納部4の更新までの処理を再び行う(図19図21参照、ステップS101〜S117)。
【0090】
表1〜表6の例で示したように、第1板における¥5000での注文数“1”の買い注文は、第2板における0.0002000gでの注文数“5000”の買い注文に相当する。
即ち、第2板での取引は、通貨の単位をベースとした商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を、商品等トークンの量で表示した超小口の取引であり、第1板の商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格を表示されるものに比べて、一注文数あたりの商品等トークンの経済的価値が極めて小さい。
第1板と同様の一注文数あたりの経済的価値を得るためには、第2板における注文数を膨大化させる必要がある。
【0091】
しかし、商品や商品等トークンの相場は極めて短い時間に変動するため、第2板側の取引システム60において、商品等トークンの注文数を膨大化させて一時期にまとめて発注しても、その注文数の膨大化した商品等トークンの注文の全てを対当・約定させることは難しい。
【0092】
ここで、図24に示した決済処理システムのように、第1板側の取引システム50と、第2板側の取引システム60とが独立して設けられ、また、第1板と第2板との間において、裁定取引の機能が働くHFT裁定取引システム80を備えた構成の場合、HFT裁定取引システム80が、第1板側の取引システム50における第1板の1つの注文と対当させるために、第2板側の取引システム60における第2板の売り注文、買い注文に対当しうる膨大な数の小刻みな買い注文、売り注文を超高速に行うことになる。
そして、第1板側の取引システム50と第2板側の取引システム60との間で裁定取引を行う場合、第2板側の取引システム60において微小単位の注文数での発注を膨大な回数繰り返すことになる。
その結果、第2板側の取引システム60における発注に伴う、トランザクションが膨大化し、システムにかかる負担が大きくなるとともに、処理時間の停滞を招く虞が懸念される。
【0093】
しかも、注文を小口化しても、商品や商品等トークンの相場の極めて短い時間の変動に追いつけず、注文した時点の価格と実際に約定された価格に差が出てしまうスリッページを起こし、再注文が繰り返されやすい。
なお、スリッページを起こさないようにするための方策としては、第1約定手段53による約定及び第1注文情報格納部52の更新と、第2約定手段63による約定及び第2注文情報格納部62の更新とが完了するまでの間、第1注文情報格納部52と第2注文情報格納部62の両方をロックすることが考えられる。しかし、第1板側の取引システム50と、第2板側の取引システム60は互いに独立して構成されており、夫々、別個に稼働しているため、第1の注文情報格納部52、第2の注文情報格納部62の双方をロックするタイミングが難しい。第1の注文情報格納部52、第2の注文情報格納部62へのロックするタイミングがずれると、注文量が多く過負荷状態でのシステム稼働時にデッドロックとなって、一方の板側の取引システムにおいて実行途中の処理が他方の板側の取引システムにおける約定及び注文情報格納部の更新処理待ちとなり、システムを構成するプログラムが待機状態のまま動作しなくなり、大障害となる虞がある。また、ロックすることにより双方の板側の取引システムにおけるレスポンスが悪化する。
加えて、上述したように、第2板側の取引システムでの取引は最小の通貨を単位とするものであるため、注文数が膨大化し易い。そして、第2板側の取引システムでの決済の量が増えるに従い、2板間(第1板と第2板との間)で膨大なシステムトランザクションが発生するため、それに対応する規模のシステム構築のための投資が必要となり、コスト負担が膨大化する。
【0094】
特に第2板(本実施形態では、1¥単位でのg表示の板)と、第1板(本実施形態では、1g単位での¥表示の板)の双方に対し、決済における変動と、市場の価格変動の双方が常時発生し、銘柄の流動性が高いほど、相当数の最小単位トランザクション(外部の大手取引所に備わる夫々の板と第1板との間でのHFTによる裁定取引とは別のHFTによる裁定取引(図24に示すHFT裁定取引システム80)の動作)が発生し易くなる。
【0095】
これに対し、第1実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムによれば、データ形式変換手段7が、第2板のデータ形式を第1板のデータ形式と同じ形式に変換して変換第2板を作成し、合成板作成手段8が、第1板と変換第2板とを合成して合成板を作成し、注文数累計値算出手段9が、合成板における売り注文と買い注文の夫々の価格ごとに注文数の累計値を算出し、注文数累計値仕分け手段10が、売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分け、第1対当注文特定手段11が、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定し、第1データ形式再変換手段12が、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換し、第1約定手段13が、第1注文情報格納部2に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定された、合成板における第1板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1注文情報格納部2を更新するとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1データ形式再変換手段12によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4を更新し、合成板更新手段14が、第1対当注文特定手段11により対当する注文として特定され、第1約定手段13により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、第1累計値、第2累計値から減算して合成板を更新し、第2対当注文特定手段15が、合成板更新手段14により更新された、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定し、第2データ形式再変換手段16が、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第2板に対応する、第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換し、第2約定手段17が、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第2対当注文特定手段15により対当する注文として特定され、第2データ形式再変換手段16によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第2累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順、かつ、注文時刻の早い順に約定させるようにしたので、図24に示した、デジタル資産を用いた決済処理システムのような、第2板側のシステム60において必要となる、第1板側のシステム50における1つの注文と対当させるための膨大な数の注文を、合成した一つの板での対当処理を介して約定させることができる。そして、図24に示したHFT裁定システム80による、第1板と第2板の間の価格の連動性を担保するための、膨大な負荷のかかる機能を用いないで済むようになる。
【0096】
このため、本実施形態によれば、従来、世界の主要取引所で行われている、商品等の単位をベースとした、商品等の経済的価値を、通貨を尺度として評価した価格で表示する第1板を用いた取引とともに、従来、世界の主要取引所で行われていなかった、通貨の単位をベースとした、商品等の最小単位量未満の数をなすものについての経済的価値を商品等トークンの量で表示する、第2板を用いた、商品等をデジタル資産とする超小口の取引を行うことができ、かつ、HFTによる裁定取引の機能の介在によるシステム領域にかかる負荷の膨大化を防止し、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保しながら円滑な取引を行うことの可能な、デジタル資産を用いた決済処理システムが得られる。
【0097】
なお、本実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムにおいては、便宜上、商品等の単位量としてg(グラム)、価格の尺度となる通貨として¥(円)を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、oz(オンス)−$(ドル)等、世界の取引所で用いられている単位量、価格の尺度となる通貨を適用することができる。
【0098】
また、本実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムにおいては、便宜上、第1板を構成する注文情報の価格を、取引手数料やスプレッドを含めないで示したが、取引手数料やスプレッドを含めてもよい。例えば、第1板における価格は、注文者の指値にスプレッド相当量を加算(買い注文)又は減算(売り注文)したものであってもよい。
【0099】
また、本実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムにおいては、便宜上、第1板における最小取引単位を“1”としたが、例えば、“100”や“1000”のような超大口取引となる単位を、画面入力等により設定可能な最小取引単位設定手段(不図示)を設けてもよい。
【0100】
また、第1注文受付手段1、第2注文受付手段3は、画面表示する情報として、最良気配の売り注文と買い注文のみを表示するように構成してもよい。
【0101】
第2実施形態
図22は本発明の第2実施形態に係るデジタル資産を用いた決済処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
本実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムは、商品等の単位量、価格の尺度となる通貨として、例えば、g(グラム)と¥(円)、oz(オンス)と$(ドル)等、世界の取引所で用いられている複数の単位量、価格の尺度となる通貨を用いることができるように構成した例である。
【0102】
第2実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムは、第1(1)注文受付手段21(1)〜第1(n)注文受付手段21(n)と、第1(1)注文情報格納部22(1)〜第1(1)注文情報格納部22(n)と、第2注文受付手段23と、第2注文情報格納部24と、第1(1)板作成手段25(1)〜第1(n)板作成手段25(n)と、第(n)データ形式変換手段25’(n)と、第2板作成手段26と、データ形式変換手段27と、合成板作成手段28と、注文数累計値算出手段29と、第(1)注文数累計値仕分け手段30(1)〜第(n)注文数累計値仕分け手段30(n)と、第1(1)対当注文特定手段31(1)〜第1(n)対当注文特定手段31(n)と、第1(1)データ形式再変換手段32(1)〜第1(n)データ形式再変換手段32(n)と、第1(1)約定手段33(1)〜第1(n)約定手段33(n)と、第(1)合成板更新手段34(1)〜第(n)合成板更新手段34(n)と、第(n+1)注文数累計値仕分け手段35と、第2対当注文特定手段36と、第2データ形式再変換手段37と、第2約定手段38と、を有している(但し、nは2以上の整数)。
【0103】
本実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1(1)注文受付手段21(1)、第1(1)注文格納部22(1)、第1(1)板作成手段25(1)、第2注文受付手段23、第2注文情報格納部24、第2板情報作成手段26、データ形式変換手段27、注文数累計値算出手段29、第(1)注文数累計値仕分け手段30(1)、第1(1)対当注文特定手段31(1)、第1(1)データ形式再変換手段32(1)、第1(1)約定手段33(1)、第1(1)合成板更新手段34(1)、第2対当注文特定手段36、第2データ形式再変換手段37、第2約定手段38は、図1に示した第1実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムにおける第1注文受付手段1、第1注文格納部2、第1板作成手段5、第2注文受付手段3、第2注文情報格納部4、第2板情報作成手段6、データ形式変換手段7、注文数累計値算出手段9、注文数累計値仕分け手段10、第1対当注文特定手段11、第1データ形式再変換手段12、第1約定手段13、第1合成板更新手段14、第2対当注文特定手段15、第2データ形式再変換手段16、第2約定手段17と略同じである。
【0104】
第1(n)注文受付手段
第1(n)注文受付手段1(n)は、主要取引所で取引されている商品等と同じ商品等の最小単位量あたりの価格の気配値を、第1(1)注文受付手段1(1)・・・第1(n-1)注文受付手段1(n-1)とは異なる単位量、価格の尺度となる通貨を用いて画面表示し、商品等の最小単位量あたりの価格での商品等の売買注文を受け付けるように構成されている。
【0105】
第1(n)注文情報格納部
第1(n)注文情報格納部22(n)は、例えば、データベースファイルを備えたデータベースシステムからなり、第1(n)注文受付手段1(n)により受け付けられた商品等の売買注文の注文情報を、売り注文と買い注文の夫々の注文ごとに、価格、注文時刻の順に並べ替えて格納するように構成されている。
【0106】
第1(n)板作成手段
第1(n)板作成手段25(n)は、第1(n)注文情報格納部22(n)により格納されている商品等の売買注文の注文情報を読み出し、価格ごとに注文数を集計し、集計した注文数が価格順に並ぶ第1(n)板を作成するように構成されている。
【0107】
第(n)データ形式変換手段
第(n)データ形式変換手段25’(n)は、第1(n)板作成手段25(n)により作成された第1(n)板のデータ形式を第1(1)板のデータ形式と同じ形式に変換して、変換第1(n)板を作成するように構成されている。
例えば、第1(1)板のデータ形式が、商品等の単位量:1g、価格の尺度となる通貨:¥であり、第1(n)板のデータ形式が、商品等の単位量:1oz、価格の尺度となる通貨:$である場合、第1(n)板の1ozあたりの商品等の価格$の1gあたりの¥への変換は、商品等の価格に1$あたりの¥の相場価格を乗算したものを、31.1034768で除算することにより求める。また、第1(n)板の1ozあたりの商品等の価格$での注文数の、1gあたりの¥での注文数への変換は、第1(n)板の注文数に31.1034768を乗算したものを、1$あたりの¥の相場価格で除算することにより求める。
なお、逆数化した数値における小数点以下について所定の桁数の切り上げ又は切り捨てをするように構成してもよい。
【0108】
合成板作成手段
合成板作成手段28は、第1(1)板作成手段25(1)により作成された第1(1)板と、第(n)データ形式変換手段25’(n)により作成された変換第1(n)板と、データ形式変換手段27により作成された変換第2板とを、注文情報が(第1(1)板と同様(昇順)の)価格順に並ぶように合成して合成板を作成するように構成されている。
【0109】
第(n)注文数累計値仕分け手段
第(n)注文数累計値仕分け手段30(n)は、注文数累計値算出手段29により算出された売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1(n)板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1(n)累計値と、該第1(n)累計値以外の数値となる第2(n)累計値とに仕分けるように構成されている。
【0110】
第1(n)対当注文特定手段
第1(n)対当注文特定手段31(n)は、合成板における売り注文と買い注文とをつき合わせて、売り注文の価格と買い注文の価格とが合致する価格帯を特定し、特定した価格帯において、第1(n)累計値のうちの重複する注文数分の売り注文と買い注文を対当する注文として特定するように構成されている。
【0111】
第1(n)データ形式再変換手段
第1(n)データ形式再変換手段32(n)は、第1(n)対当注文特定手段31(n)により対当する注文として特定された合成板における注文のうち、変換第1(n)板に対応する、第1(n)累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第1(n)板のデータ形式と同じ形式に再変換するとともに、変換第2板に対応する、第1(n)累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、第2板のデータ形式と同じ形式に再変換するように構成されている。
【0112】
第1(n)約定手段
第1(n)約定手段33(n)は、第1(n)注文情報格納部2(n)に格納されている注文情報のうち、第1(n)対当注文特定手段31(n)により対当する注文として特定され、第1(n)データ形式再変換手段32(n)によりデータ形式が第1(n)板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第1(n)板に対応する第1(n)累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、注文価格順(即ち、売り注文の場合は注文価格の低い順、買い注文の場合は注文価格の高い順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第1(n)注文情報格納部2(n)を更新するとともに、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報のうち、第1(n)対当注文特定手段31(n)により対当する注文として特定され、第1(n)データ形式再変換手段32(n)によりデータ形式が第2板のデータ形式と同じ形式に再変換された、合成板における変換第2板に対応する第1(n)累計値のうちの重複する注文数分の売り注文又は買い注文を、通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量順(即ち、売り注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の多い順、買い注文の場合は通貨の1単位量あたりの商品等トークンの量の少ない順。)、かつ、注文時刻の早い順に約定させ、約定させた売り注文及び買い注文に対応する注文情報が約定済となるように、第2注文情報格納部4に格納されている注文情報を更新するように構成されている。
【0113】
第(n)合成板更新手段
第(n)合成板更新手段34(n)は、第1(n)対当注文特定手段31(n)により対当する注文として特定され、第1(n)約定手段33(n)により約定させられた、売り注文及び買い注文の注文数を合成板における当該売り注文及び買い注文の注文数、注文数の累計値から減算して合成板を更新するように構成されている。
【0114】
第(n+1)注文数累計値仕分け手段
第(n+1)注文数累計値仕分け手段35は、第(n)合成板更新手段34(n)により更新された合成板の売り注文と買い注文の夫々の価格ごとの注文数の累計値を、第1(1)板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値(第1(1)累計値)と、該第1(1)累計値以外の数値となる第2累計値(第2(1)累計値)とに仕分けるように構成されている。
【0115】
世界の主要な取引所では、価格を夫々の国が発行する通貨を尺度として示している。また、商品等の単位量も国によって異なる。
第2実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムによれば、主要な取引所において異なる価格の尺度となる通貨や商品等の単位量を、統一でき、より価格の妥当性を担保し易くなる、しかも、複数の取引所での通貨や商品の単位量を用いた大量の取引を合成した一つの板で処理する結果、HFTによる裁定取引の機能の介在によるシステム領域にかかる負荷の膨大化を防止し、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保しながら円滑な取引を行うことができる効果がより一層増大する。
その他の構成及び作用効果は、第1実施形態のデジタル資産を用いた決済処理システムと略同じである。
【0116】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
また、本発明の決済システムでは、商品等の最小単位量あたりの価格での該商品等の売買注文の注文数で第1板、通貨の1単位量あたりの、前記商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量での該商品等トークンの売買注文の注文数で第2板を作成したが、商品等の最小単位量あたりの価格での該商品等の売買注文の注文数で第2板、通貨の1単位量あたりの、前記商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量での該商品等トークンの売買注文の注文数で第1板を作成する決済システムを構成することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のデジタル資産を用いた決済処理システムは、貴金属、非鉄金属、石油・ガス・電力などのエネルギー類、コメ・砂糖などの保存可能な農作物、美術品、飲料水など、広範囲に販売されているものや、その他の経済的価値をデジタルで表現された、デジタル資産として取引を扱う分野に有用である。
【符号の説明】
【0118】
1 第1注文受付手段
2 第1注文情報格納部
3、23 第2注文受付手段
4、24 第2注文情報格納部
5 第1板作成手段
6、26 第2板作成手段
7、27 データ形式変換手段
8、28 合成板作成手段
9、29 注文数累計値算出手段
10 注文数累計値仕分け手段
11 第1対当注文特定手段
12 第1データ形式再変換手段
13 第1約定手段
14 合成板更新手段
15、36 第2対当注文特定手段
16、37 第2データ形式再変換手段
17、38 第2約定手段
21(1) 第1(1)注文受付手段
21(n) 第1(n)注文受付手段
22(1) 第1(1)注文情報格納部
22(n) 第1(n)注文情報格納部
25(1) 第1(1)板作成手段
25(n) 第1(n)板作成手段
25’(n) 第(n)データ形式変換手段
30(1) 第1(1)注文数累計値仕分け手段
30(n) 第1(n)注文数累計値仕分け手段
31(1) 第1(1)対当注文特定手段
31(n) 第1(n)対当注文特定手段
32(1) 第1(1)データ形式再変換手段
32(n) 第1(n)データ形式再変換手段
33(1) 第1(1)約定手段
33(n) 第1(n)約定手段
34(1) 第(1)合成板更新手段
34(n) 第(n)合成板更新手段
35 第(n+1)注文数累計値仕分け手段
50 第1板側の取引システム
51 第1注文受付手段
52 第1注文情報格納部
53 第1板作成手段
54 第1対当注文特定手段
55 第1約定手段
60 第2板側の取引システム
61 第2注文受付手段
62 第2注文情報格納部
63 第2板作成手段
64 第2対当注文特定手段
65 第2約定手段
80 HFT裁定取引システム
【要約】
【課題】HFTによる裁定取引の機能を用いることなく、第1板と第2板の間の価格の連動性、両板の取引の流動性を担保可能な、デジタル資産を用いた決済処理システムの提供。
【解決手段】通貨の1単位量あたりの、商品等の最小単位量未満の数をなす商品等トークンの量での注文数を有する注文情報が並ぶ第2板のデータ形式を、商品等の最小単位量の、通貨を尺度とした価格と該価格での注文数とを有する注文情報が並ぶ第1板のデータ形式に変換して合成して合成板を作成し、合成板において、売りと買いの夫々の注文数の累計値を算出し、第1板における最小取引単位の整数倍の数値となる第1累計値と、該第1累計値以外の数値となる第2累計値とに仕分け、売り注文と買い注文とをつき合わせ第1累計値、第2累計値の順に対当する売り注文と買い注文を約定させるように構成されている。
【選択図】図1
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