(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有限要素モデルの複数の要素のそれぞれに関するローカルな体積制約であって、それぞれが、前記複数の要素のそれぞれの要素に関する設計応答である前記ローカルな体積制約を計算することと、
計算されたローカルな体積制約のそれぞれを微分して、前記複数の要素のそれぞれに関して前記寸法設計変数の感度を決定することと、
前記複数の要素のそれぞれに関する前記計算された前記ローカルな体積制約を含む前記決定された釣り合い及び前記決定された設計応答と、前記複数の要素のそれぞれに関する前記寸法設計変数の決定された前記感度を含む前記決定された設計応答感度とを用いて、前記有限要素モデルを反復して最適化し、前記複数の要素のそれぞれに関して前記寸法設計変数の最適化された値を決定することと、
前記複数の要素のそれぞれに関して決定された寸法設計変数の値を反映するように前記複数の要素のそれぞれのプロパティを自動的に更新することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記他の要素の要素重心(elemental centroid)が前記半径の範囲内にある場合、前記他の要素は前記半径の範囲内である、請求項6に記載の方法。
前記実世界のオブジェクトを製造させることには、前記最適化されたモデルに従って前記実世界のオブジェクトを製造する能力を有する製造機械に、前記実世界のオブジェクトの前記最適化されたモデルをデジタル的に伝達することが含まれる、請求項8に記載の方法。
前記他の要素の要素重心(elemental centroid)が前記半径の範囲内にある場合、前記他の要素は前記半径の範囲内である、請求項15に記載のシステム。
実世界のオブジェクトを製造するための最適化された設計を自動的に決定する、プログラム命令を備えるコンピュータプログラムであって、前記プログラム命令は、プロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに対して、
プロセッサのメモリにおいて、実世界のオブジェクトを表現する有限要素モデルであって複数の要素から構成される前記有限要素モデルを規定させることと、
前記有限要素モデルを使用して一組の境界条件に応じて前記実世界のオブジェクトの釣り合いおよび設計応答を決定させることであって、前記有限要素モデルの前記複数の要素の所定要素に関するローカルな体積制約(local volume constraint)であって前記複数の要素の前記所定要素に関する設計応答である前記ローカルな体積制約を計算することを含んで、前記設計応答を決定させ、
前記有限要素モデルを使用して前記一組の境界条件に応じて前記実世界のオブジェクトの設計応答感度を決定させることであって、計算された前記ローカルな体積制約を微分して前記所定要素に関して寸法設計変数の感度を決定することを含んで、前記設計応答感度を決定させ、
計算された前記ローカルな体積制約を含む決定された前記釣り合い及び決定された前記設計応答と、前記寸法設計変数の決定された感度を含む決定された前記設計応答感度とを用いて、前記寸法設計変数に関して前記実世界のオブジェクトを表現する有限要素モデルを反復して最適化させることであって、結果的に、前記有限要素モデルの前記所定要素に関して前記寸法設計変数の最適化された値を生じさせることを含んで、前記反復して最適化させ、
前記寸法設計変数の最適化された値を反映するように前記有限要素モデルの前記所定要素のプロパティを自動的に更新させて、それによって製造する実世界のオブジェクトの最適化されたモデルを生成させる、
コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示の実施形態についての説明は、以下の通りである。
【0024】
本明細書にて言及するすべての特許、公開された出願および参考文献の教授は、参照することによってその全体が援用される。
【0025】
「感度」という用語が本明細書で使用されるが、感度は導関数(derivative)と数学的に均等であり、また感度という用語は通常、多領域最適化で使用されることに留意されたい。
【0026】
概して、実施形態は、感度に基づく寸法最適化を用いて、実世界のオブジェクトを製造するための設計を決定する。実施形態は、物理的性質を強化する、面上設計パターンのローカル制御のための感度に基づく寸法最適化を実施することができる。
図1は、感度に基づく寸法最適化を用いて、実世界のオブジェクトを製造するための最適化された設計を決定する、一つのこうした例示的な方法100を図示する。方法100は、ステップ103において、モデルの幾何学的記述を規定することにより開始される。当該モデルは、当技術分野で公知の任意の原理に従ってステップ103で規定されてもよい。同様に、モデルは、最適化方法で採用できる当該技術分野で公知の任意のこうしたモデルであってもよい。方法100の例示的な一実施形態によれば、ステップ103で規定されるモデルは、有限要素モデルである。続いて、ステップ105で、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を設計応答として用いることによるモデル(ステップ103で規定された)の寸法最適化を、最適化のために、対応する感度、すなわち最大ローカル相対質量の感度または最大ローカル絶対質量の感度、と組み合わせる。一実施形態によれば、最大ローカル相対質量または体積および最大ローカル絶対質量または体積は、計算されたローカルの体積または質量の制約を単一の制約に累積し、考慮された一組の制約の中の最大値を近似することによって得られる。ここで質量および体積は、それらの絶対値で表現することができ、または対応する相対値で、すなわち可能性のある最大値で除算した値で表現することができる。このように、ステップ105で、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量の設計応答が、寸法最適化に含まれる。一実施形態では、最適化は、最小化または最大化されるべき目的関数を最適化することを含む。目的関数は、重要業績評価指標(KPI)であり、すなわち最大化または最小化することが所望される設計応答である。例としては、他の例のうち、実世界のオブジェクトの質量、静剛性、静的強度、モード固有振動数、もしくは定常応答又はこれらの例示的な関数の組合せが挙げられる。したがって、こうした実施形態では、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量は、寸法最適化の目的関数のための寸法最適化に含まれる。別の実施形態では、ステップ105での最適化は、寸法設計変数の最適化の制約に、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を含む。したがって、そのような実施形態は、他の例のうち、表面フライス削り胴体構造(例えば、航空宇宙)、3次元造形による表面構造(例えば、配管)、および外皮構造を補強するための溶接プレート(例えば、船舶設計)を最適化するために用いることができる。
【0027】
ローカルな質量の感度、すなわち寸法設計変数の感度を含めることにより、本発明の実施形態は、製造する実世界のオブジェクトのための最適化された設計を決定することができる。既存の方法はこうした機能性を提供しない。例えば、既存の方法であって、例えば:(1)J.Wu,N.Aage,R.Westermann,O.Sigmund,Infill optimization for additive manufacturing−Approaching bone−like porous structures,IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics 24(2)(2018)1127−1140;(2)J.Wu,A.Clausen,O.Sigmund,Minimum compliance topology optimization of shell−infill composites for additive manufacturing,Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering 326(2017)358−375;(3)A.Clausen,N.Aage,O.Sigmund,Exploiting additive manufacturing infill in topology optimization for improved buckling load,Engineering 2(2)(2016)250−257;(4)M.Bendsoe,O.Sigmund,Topology Optimization − Theory,Methods and Applications,Springer Verlag,Berlin Heidelberg New York ,(2002);(5)G.G.Tejani,V.J.Savsani,V.K.Patel,P.V.Savsani,Size,shape,and topology optimization of planar and space trusses using mutation−based improved metaheuristics,Journal of Computational Design and Engineering 5(2018)198−214;(6)https://www.plm−europe.org/admin/presentations/2017/2003_PLMEurope_24.10.17−13−30_GUY−WILLS_SPLMM_topology_optimization_for_designers.pdf;(7)2016年10月27日発行のASME AM3Dトレーニング(ASME AM3D Training)、“Design Demonstration Part 2,”https://www.youtube.com/watch?v=921geNgIY5A;および(8)2016年10月27日発行のASME AM3Dトレーニング“Rules of Thumb,”https://www.youtube.com/watch?v=Vjda67dNgDo に記載されるものがあり、この内容は、参照により本明細書に援用されるものであって、実世界のオブジェクトの最適化された設計を決定するための最適化方法において寸法設計変数の感度を含んでいない。また、これら既存の方法は、ローカルな相対質量またはローカルな絶対質量の設計応答を使用して面上の設計パターンのローカル制御を実施する寸法最適化を通して、実世界のオブジェクトの物理的性質を決定するような、感度に基づくソリューションを提供しない。
【0028】
構造最適化のための設計変数のタイプは通常、トポロジー、寸法および形状の三つのカテゴリに分類される。トポロジー最適化の設計変数は、構造材料レイアウトを設計するためのものであり、またオブジェクト内の部材の最適化された空間の秩序および連結性を知るためのものである。寸法最適化の設計変数は、他の例のうち、シートの厚さ並びにトラスおよびフレームの断面寸法など、構造の幾何学的性質を設計するためのものである。形状最適化の設計変数は、オブジェクトの構造的な所定の境界を変更することと関連する。例えば、形状最適化は、面の節点の位置が設計変数として規定される、CAEの連続体モデルに使用され得、または要素の末端節点の位置が設計変数として規定される、CAEの梁およびトラスモデルに使用され得る。
【0029】
図2A〜2Cは、トポロジー最適化方法を用いて設計されたモデル220a〜cをそれぞれ図示する。モデル220a〜cは、ローカルな体積の設計応答(DRESP)制約を実施するトポロジー最適化ソリューションを使用して設計された。これらの既存の最適化方法は、トポロジー最適化のための設計変数に対してローカルな体積設計応答を適用するのみであり、寸法設計変数に対して体積設計応答を適用しない。
【0030】
典型的には、2次元のトポロジー最適化においてローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を使用することで、格子様の設計が得られるが、これは膜構造と比較して剛性に関する機械的性質が乏しい。しかしながら、工業的視点では、2次元構造のソリューションは興味を引くものではない。3次元オブジェクトについてのトポロジー最適化においてローカルな体積の設計応答を使用することで、典型的には複数層の膜構造が得られる。
図3Aおよび3Bは、トポロジー最適化においてローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を使用することで生じる、二つのこうした例示的なオブジェクト設計330aおよび330bをそれぞれ図示する。オブジェクト330aおよび330bは、製造が非常に困難な骨様の多孔性構造を持つ。こうした構造は、鋳造、成形、形成、機械加工(例えば、フライス加工(milling))、および接合など、従来の製造プロセスを使用して製造することが不可能である。同様に、設計330aおよび330bは典型的に、加法的な製造アプローチを使用して製造できない。加法的な製造方法は、オブジェクトのプリントに使用した未使用の粉末を製造完了後に除去できないため、これら複数層状の膜構造の製造は失敗することとなる。さらに、これら複数層状の膜設計を有するオブジェクト上で、丸い孔の穿孔、面の研磨、および支持構造の除去などの通常の製造後プロセスは実施できない。寸法最適化のための本発明の実施形態は、ローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を使用する場合、これら製造における欠点および問題を有しない。
【0031】
ローカルな体積制約を使用して決定したトポロジー最適化設計は、材料の不足に対してより堅牢である。例えば、誤用、不一致、爆発、腐食、疲労破壊、製造誤差などに起因してサブコンポーネントが破損した場合であっても、設計はより堅牢である。第二に、ローカルな体積制約を使用して決定したトポロジー最適化設計は、力の変動および境界条件の変動に対してより堅牢である。第三に、数値的実験は、ローカルな体積制約を用いて決定したトポロジー最適化設計がより大きい座屈荷重を生じるということを示す。同様に、ローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を使用して寸法最適化を実施する本発明の実施形態は、トポロジー最適化を用いて決定した設計と同様の堅牢性の利益、すなわち材料の不足に対する堅牢性、力の変動および境界条件の変動に対する堅牢性、ならびにより大きい座屈荷重に対する堅牢性、の利益を有する。
【0032】
オブジェクトの別の既存のコンピュータベースの設計方法は、幾何学的設計検討および発見的設計ルールに依存する。2016年10月27日発行のASME AM3Dトレーニング(ASME AM3D Training)“Design Demonstration Part 2,”https://www.youtube.com/watch?v=921geNgIY5Aおよび2016年10月27日発行のASME AM3Dトレーニング“Rules of Thumb,”https://www.youtube.com/watch?v=Vjda67dNgDoで説明される方法は、シート構造におけるパターンを設計および生成するための厳密な幾何学的設計の検討ならびに発見的設計ルールに依存する。
図4Aおよび4Bは、これら方法により得られるシート構造440aおよび440bをそれぞれ図示する。これら幾何学的設計検討による方法は、機械的性質が、CAEモデリングおよび感度に基づく最適化によって直接考慮されないものである実験的かつ経験的アプローチである。さらに、これら幾何学的設計検討による方法は、幾何学的パターンを導くためにターゲット面に亘って滑らかなUVマッピングが存在していることに依存する。したがってこれら既存の方法は、より複雑な面上では信頼性がない。
【0033】
幾何学的な検討に依存することは、本発明の実施形態と基本的に異なる。説明のために、対照的に、実施形態は、設計が機械的モデリング(CAE)と、設計応答、すなわち最適化設定において規定される機械的性質の感度最適化とによって、同時に直接的に決定される、感度に基づく寸法最適化アプローチを利用する。ある実施形態では、「最適化設定(optimization setup)」は、最大化または最小化することが所望される設計応答を規定し、拘束されている設計応答を規定し、かつ、設計変数上の境界を規定する。実施形態において、最適化設定において規定される機械的性質には、例えばシート構造、シェル構造、または膜構造である構造上のパターンを生成するための幾何学的検討のための設計応答(DRESP)が含まれる。
【0034】
本明細書に記載されるように、実施形態は、ローカルな体積制約(体積制約、材料密度制約、および材料質量制約を含みうる)を採用する。既存の方法は、最適化で使用される類似の最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を規定している。ただし、既存の方法では、寸法最適化において最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を利用しない。
図5Aは、半径(radius)r553の内側に含有されたそれらの要素重心、例えば重心554、を有する要素(Nel
radius)を用いて、半径r553を有する円552の中心にある要素551に関してローカルな相対質量またはローカルな絶対質量が計算される、典型的な構造CAEモデルの部分550aを図示する。最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量は、要素551に関するローカルな相対質量またはローカルな絶対質量を規定したことに基づいて、
図5Bに示す構成要素全体550bのうちの有限要素(Nel)555のそれぞれに関してまたは構成要素550bの急な分割(sudden partition)に関して計算可能である。そのような実施形態では、要素毎に、ローカルな相対質量またはローカルな絶対質量が決定され、その後、Nel 555に関するローカルな相対質量またはローカルな絶対質量の全てに対するサンプリングによって最大値が決定される。ローカルな絶対質量とは、例えば、グラム又はキログラム又はポンドでの絶対数を指す。ローカルな絶対質量の例は、半径10cmにおいて最大0.1kgである。反対に、ローカルな相対質量は単位を持たない。したがって、ローカルな相対質量は、初期設計(設計変更前)に対してマッピングされる。例えば、初期設計が半径10cmにおいて0.1kgであり、その値を維持することが望ましい場合、ローカルな相対質量は100%である。
【0035】
実施形態は、製造する実世界オブジェクトの最適化設計を決定するために、寸法最適化においてローカルな制約、すなわちローカルな体積制約(体積制約、材料密度制約および材料質量制約を含みうる)、を活用する。ローカルな体積制約を利用する実施形態は、オブジェクトの面上の設計パターンのローカルな制御を提供することができる。実施形態において、オブジェクトをモデル化するシート構造における設計パターン、すなわち寸法、のローカル制御は、質量、剛性、強度および動的性質に対する最適化のために通常の機械的性質に対処する標準のシート寸法最適化定義に関する相補的な制約または目的としてローカルな体積又はローカルな質量の設計応答を使用して達成される。言い換えれば、実施形態では、ローカルな体積の制約/目的が、従来的なプロパティ、例えば剛性、の最適化に組み込まれる。このように、ローカルな制約を使用して、通常のプロパティ、すなわち質量、剛性および強度についてのみならず、例えばシートの厚さである寸法のプロパティについても最適化される設計を決定する。ある実施形態によれば、従来のプロパティは、最適化対象のKPI、すなわち設計応答である。
【0036】
一意に、実施形態は、寸法設計方法において、オブジェクトの面上のパターンを含めて、オブジェクトの設計をローカルに制御又は強化することができるローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を導入する。さらに、実施形態は、幾何学的検討にローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を単に導入するのではなく、静剛性、静的強度、モード固有振動数、定常応答などに関する機械的性質に加えて、最適化においてローカルな体積またはローカルな質量の設計応答を考慮する。
【0037】
高度に効率的な数値的最適化の手法で、寸法設計された面上の設計パターンの幾何学的なローカルな制御を強化し、また他の検討事項のうち、質量、剛性、強度、および動的性質の最適化に対処することもできる、シート構造(CAEではしばしばシェル又は膜構造とも呼ばれる)の寸法最適化の形態で、機械的最適化のためのソリューションは存在しない。実施形態はこうしたソリューションを提供する。
【0038】
数学的プログラミング、すなわち最適化計算、の入力としての感度に基づいた最適化方法では、最適化のための設計応答を規定して、設計変数の幾何学的レイアウトを制御することもできるということが非常に重要である。例えば、堅牢性および製造性を検討するとき、最適化のための設計応答は、設計応答が幾何学的レイアウトと、例えば剛性である従来のプロパティ(設計応答)とを制御するように規定される。実施形態においては、このことは、全般的な寸法最適化を、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量と組み合わせることによって行われる。
【0039】
実施形態は、構造最適化のための寸法決定のソリューションに対処しているように記載されているが、実施形態は、構造最適化の統制に限定されず、他の例のうち、計算−流体−力学等のマルチフィジックスな最適化、熱−機械的最適化、電気−機械的最適化、および流体−構造−相互作用最適化においても実施できることに留意されたい。
【0040】
図6は、ローカルな体積制約を使用して実世界のオブジェクトを製造するための最適化された設計を自動的に決定する寸法最適化を実施する実施形態にかかる方法660を示す。方法660は、ステップ661で、プロセッサのメモリにおいて、実世界のオブジェクトを表現する有限要素モデルであって複数の要素から構成される有限要素モデルを規定することによって開始される。ある実施形態によれば、「要素」は、有限要素モデルのうちのモザイク状要素である。ただし、実施形態は限定されず、三角形もしくは四辺形の膜またはシェルなどの任意の要素に関連して使用してもよい。方法660の実施形態によれば、有限要素モデルは、当技術分野で公知の任意の方法に従ってステップ661で規定されてもよい。また実施形態において、ステップ661で規定される有限要素モデルは、当技術分野で公知であるような任意のかかる有限要素であってもよい。例えば、例示的な実施形態では、ステップ661で規定される有限要素モデルは、実世界のオブジェクトの面のシートモデルである。ある実施形態によれば、ステップ661でモデルを規定することは、例えば寸法、材料等のオブジェクトのプロパティ全てを反映する、メモリ内のある有限要素モデルを規定することを含み、このモデルは、例えばプレート厚さである複数の設計変数を表現し、また該モデルは当該複数の設計変数を含む。さらに、有限要素モデルの挙動は、当技術分野で公知の方程式によって支配され、該方程式は、例えばプレート厚さであるような設計変数に関するそれぞれの感度方程式を含む。こうした実施形態では、モデルを規定することは、モデルの挙動を支配する方程式を規定すること、すなわち、モデルが表現するオブジェクトを規定することを含み得る。
【0041】
ステップ661において、方法660のコンピュータ実装実施形態によれば、メモリは、方法660を実行するコンピューティング装置に対して通信可能に結合されるかまたは通信可能に結合する能力を有する、任意のメモリである。同様に、プロセッサは、当技術分野で公知の任意のプロセッサであり、また分散コンピューティング配置内の任意の数のプロセッサを含んでもよい。
【0042】
ステップ662において、有限要素モデルを使用して一組の境界条件に応じて実世界のオブジェクトの釣り合いおよび設計応答、すなわち設計応答値、を決定することによって、方法660が続行する。ある実施形態によれば、釣り合い(equilibrium)は、系が、すなわちオブジェクトが平衡となるような外力に関する様々な構成を規定する。これら所与の平衡のそれぞれに対して、剛性、強度、モード固有振動数などのような複数の設計応答を規定できる。他の設計応答は、釣り合いに対して独立しており、例えば質量である。ステップ662において設計応答を決定することは、有限要素モデルの複数の要素の所定要素に関するローカルな体積制約を計算することを含むものであって、該ローカルな体積制約は、複数の要素の所定要素に関する設計応答である。ある実施形態では、境界条件は、荷重、外的な制約、他の構成要素に相互に面する剛性など、当技術分野で知られている任意のそのような境界条件であってもよい。
【0043】
ある実施形態によれば、ステップ662で計算されるローカルな体積制約は、体積制約、材料密度制約、および材料質量制約を含む。このように、実施形態は、材料の体積、ならびに材料のタイプを考慮に入れてもよい。さらに、実施形態では、有限要素モデルの異なる部分は、異なる制約に従う場合がある。さらにまた、方法660のある実施形態では、ローカルな体積制約を、所定要素と、該所定要素を包囲する半径の範囲内にある有限要素モデルの他の要素とに適用する。かかる一実施形態では、上記他の要素の要素重心が上記半径の範囲内にある場合、他の要素は該半径の範囲内である。さらに、ある実施形態では、体積制約は、
図5Aおよび5Bに関連して上述したように規定されてもよい。
【0044】
次に、ステップ663において、有限要素モデルを使用して、上記一組の境界条件に応じた実世界のオブジェクトの設計応答感度が決定される。ステップ663において設計応答感度を決定することは、計算されたローカルな体積制約を微分して、所定要素に関して寸法設計変数の感度を決定することを含む。方法660では、寸法設計変数は、当該技術分野で公知の実世界のオブジェクトの任意のこうした寸法変数を表してもよい。例えば、方法660の例示的な実施形態では、寸法設計変数は、厚さ、格子構造、および実世界のオブジェクトの断面寸法のうちの少なくとも一つを表す。ある実施形態によれば、ステップ663は、最適化に必要または所望される、他のもののうち剛性、応力、および変位などの他の設計応答のすべての値ならびに対応する感度を実施および計算することをさらに含む。
【0045】
方法660は続いて、ステップ664において、実世界のオブジェクトを表現する有限要素モデルが反復して最適化される。ステップ664では、有限要素モデルが、決定された釣り合い及び決定された設計応答(計算されたローカルな体積制約を含む)と、決定された設計応答感度(寸法設計変数の決定された感度を含む)とを用いて、寸法設計変数について最適化される。ステップ664において反復して最適化されることにより、結果的に、有限要素モデルの所定要素に関して寸法設計変数の最適化された値が生じる。ある実施形態によれば、ステップ664の反復最適化、すなわち反復設計プロセスは、最適化の反復ごとに新規の改善された解(設計応答を通じて規定される目的および制約に対して)を選択するプロセスである。
【0046】
ステップ664における反復最適化後、有限要素モデルの所定要素のプロパティが、ステップ665において寸法設計変数の最適化された値を反映するように自動的に更新される。このようにして、方法665は、製造する実世界のオブジェクトの最適化されたモデルを生成する。最適化された設計変数、すなわち設計変数の最適化された値が決定されたとき、最適化された有限要素モデルはその後、あるフォーマットに変換されて、また面上の設計パターンのローカルな制御が製造上の制約を満足させるために重要であり且つ得られた設計がそのまま製造されるものである実際の製造プロセスに提出されることが可能である。実施形態において、ローカルな体積制約を制御することによって、製造プロセスの実世界の制限に従う、設計に関する制約を設定することが可能であり、それにより実施形態が、実世界のオブジェクトの製造のための最適化された設計を決定する。
【0047】
方法660の実施形態は、有限要素モデルの複数の要素に関する寸法設計変数について最適化された値を決定する。このように、かかる実施形態は、実世界のオブジェクト全体を製造するための最適化された設計を決定することができる。こうした例示的な実施形態は、ステップ662において、有限要素モデルの複数の要素のそれぞれに関するローカルな体積制約であって、それぞれが、複数の要素のそれぞれの要素に関する設計応答である当該ローカルな体積制約を計算することと、ステップ663において、計算されたローカルな体積制約のそれぞれを微分して、複数の要素のそれぞれに関する寸法設計変数の感度を決定することとをさらに含む。続いて、ステップ664において、かかる実施形態が、決定された釣り合い及び決定された設計応答(複数の要素それぞれについての計算されたローカルな体積制約を含む)と、決定された設計応答感度(複数の要素のそれぞれの寸法設計変数の決定された感度を含む)とを用いて、有限要素モデルを反復して最適化する。次に、ステップ665において、複数の要素のそれぞれのプロパティが、複数の要素のそれぞれについて決定された寸法設計変数の値を反映するように自動的に更新される。この追加的な機能性を通して、こうした実施形態は、複数の要素のそれぞれに関する寸法設計変数の最適化された値を決定し、製造する実世界のオブジェクトの最適化されたモデルを生成する。
【0048】
方法660の別の実施形態は、最適化されたモデルに従って、実世界のオブジェクトを製造させることで続行される。一つのこうした実施形態では、モデルがステップ665で更新された後、更新されたモデルは、最適化されたモデルに従って実世界のオブジェクトを製造することができる製造機械にデジタル的に伝達される。ある実施形態では、デジタルモデルは、当技術分野で公知の任意の通信方法を使用して伝達され、加法的な製造機械またはコンピュータ数値制御(CNC)機械などの当技術分野で公知の任意の製造機械に伝達されうる。
【0049】
実施形態は、寸法設計変数に基づく最適化設定における体積制約に関する設計応答(DRESP)および対応する感度を含むことに基づいている。ある実施形態は、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量の制約に関する設計応答および対応する感度を利用する。また、本明細書において体積または質量の語を使用するが、制約は質量、体積、および密度の任意の組み合わせを含みうるということに留意されたい。こうした実施形態では、ローカル相対質量およびローカル絶対質量は、
図7に示す定義770に従って、例えば有限要素モデルである、
図5Aに関連して上述したCAEモデルに対して規定される。
【0050】
ローカル相対質量およびローカル絶対質量が、
図7に示される定義770に従って規定されると、
図8を参照されたいが、次いでP−平均ノルムを適用して、最適化のために設計応答(DRESP)を規定する有限要素に亘って例えば質量である制約の対応する最大値を近似する。
図8は、P平均ノルム(P−mean norm)アプローチにより近似される、最大ローカル相対質量および最大ローカル絶対質量を規定する定義880を示す。実施形態においては、P平均ノルムを適用して、
図5Bに示し上記に記載したように、構成要素全体、すなわちオブジェクト全体、またはオブジェクトの分割(partition)を規定する有限要素に亘って制約の最大値を近似してもよい。
【0051】
さらに、
図8の定義880は、最大ローカル相対質量および最大ローカル絶対質量を近似するためにP平均ノルムを適用するが、実施形態はそれに限定されない。あるいは、実施形態は、同時に最大値が微分可能であることを要求しつつ(すなわち、所与の設計応答に関して、最大値の導関数を数学的に表現できる)、p−ノルム、滑らかな最大値などの最大値を近似するための他の関数およびその他の類似したアプローチを用いてもよい。
【0052】
実施形態は、定義880に従って規定される最大ローカル相対質量および最大ローカル絶対を利用して、感度最適化に使用される感度、すなわち寸法設計変数の導関数、を決定する。実施形態によれば、感度は、
図9に示す数学的演算990を使用して決定される。数学的演算990は、トポロジー最適化に関連する設計変数および寸法最適化に関連する設計変数に関して、近似された最大ローカル相対質量および最大ローカル絶対質量を微分する。寸法設計変数のタイプを変更している場合、数学的な偏導関数、991a〜bおよび992a〜bのみを規定する必要がある。数学的演算990に示すように、トポロジー最適化設計変数991aおよび991bは要素密度(elemental density)に直接結合し、一方寸法設計変数992aおよび992bは要素体積(elemental volume)に直接結合する。
【0053】
本発明の実施形態とは対照的に、トポロジー最適化および寸法最適化における質量特性の設計応答を含む従来的な方法は、
図10に示す数学的定義1010によって示されるようなグローバル相対質量(Global Relative mass)またはグローバル絶対質量(Global Absolute mass)を適用する。グローバル合計(global summation)に関するこの従来の方法では、
図10に示される従来の定義1010において、半径rは適用されないため、Nel
radiusではなくNelが適用される。
【0054】
本発明の実施形態は、既存の方法と比較して多くの利点を提供し、工業的設計方法を大幅に強化する。近年、設計プロセスは、典型的な試行錯誤の設計プロセスから、設計プロセスの早期にシミュレーションの導入を含み、且つ、より重要なことには自動化された感度に基づく最適化の導入を含む現在の設計プロセスへと移行した。自動車および航空宇宙用途などの工業的用途は、構造部品に対して感度に基づく寸法最適化を使用する。これら感度に基づく最適化は、多くの場合、グローバル相対質量またはグローバル絶対質量と組み合わせた、ほとんど荷重がないケースに基づいている。通常、グローバル相対質量を用いることまたはグローバル絶対質量を使いることで、高度に最適化された設計が得られる。しかしながら、これら高度に最適化された設計は、(i)荷重条件の変動、(ii)境界条件の変動、および(iii)製造および構造的安定性に起因する材料位置の変動に対して堅牢性が低い。実施形態におけるように、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を適用することで、感度に基づく寸法最適化を使用するときに設計の堅牢性が増加する。最大ローカル相対質量を用いてまたは最大ローカル絶対質量を用いて決定された寸法最適化設計はしばしば、リブパターンの形態で幾何学的詳細を増加させるが、寸法のアプローチは、従来のフライス加工または加法的製造プロセスを使用して設計が簡単に製造可能であることを確実にする。
【0055】
寸法最適化においてローカルな体積の設計応答を使用することの他の利点は、例えば、剛性および強度など、他の設計要件を使用して寸法最適化を実施する能力である。別の利点は、制約を設定して、例えばフライス加工、成形など従来の製造方法、または例えば粉体層技術である加法的な製造における深絞りやプリントなどのより新規の製造方法を使用して簡単に製造することができるようなある構造、例えばリブ構造、を持つ部品をもたらす能力である。また別の利点は、例えば組立プロセスまたは製造プロセスにおける変動に対して堅牢である設計である、堅牢な寸法設計を決定することである。さらにまた、別の利点は、設計が質量、剛性、強度、および動的性質などの他のプロパティに関しても最適化されるような効率的な方法で、薄いパネルおよびシートについての構造的に安定な設計(例えば、座屈に対して)を達成することである。
【0056】
以下では、
図11〜14に関連して、実用的な例を、実施形態の利点を説明するために記載している。
図11は、最大ローカル相対質量の制約(
図8の定義880に従って規定される)を有する数値的な実施を使用した構造的構成要素1120を設計するための寸法最適化に関する実用的な例の寸法1121a〜cを示す。構成要素1120は、境界条件1122aおよび1122bに従い、且つ、荷重1123aおよび1123bに従う。
図11では、寸法最適化の設計変数は、要素シェル厚さであり、構造1120をモデル化する各シェル要素が、設計変数として規定される。最適化の目的は、二つの荷重ケースの合計コンプライアンスを最小化し、それによって二つの荷重ケースの構造的剛性を最大化することである。最大ローカル相対質量を持つ寸法最適化は、初期設計の100%であるように拘束される。最適化は、
図7および8に示す数学的定義/演算770および880をそれぞれ使用するものであって、半径(
図5Aに関して上記において説明したとおり)は2.5に設定され、また構造1120の全体寸法1121a〜cは
図11に示すとおりに規定される。
【0057】
ローカルな体積制約を有する
図11に示す構造1120についての本発明のある実施形態の原理に従った寸法最適化の結果が、
図12Bに示す構造1220bである。これら結果を達成するために、
図15に図示したワークフロー1550を使用して最適化が実行されるが、以下にさらに詳細に説明する。目的における変化に関する収束基準が0.1%未満であり、且つ、設計要素の変化も0.1%未満である場合、最適化ワークフローは停止する。
【0058】
図12Aは、初期厚さが1.0である5136シェル要素(Abaqus S3シェル要素)からなる初期モデル1220aを図示する。ヤング率は210000.0であり、ポアソン比は0.3であり、また線形有限要素モデリングが適用される。モデル1220aは、
図11に図示した境界条件および荷重、すなわち境界条件1122a〜bおよび荷重1123a〜b、に従う。境界条件1122a〜bは完全に固定されており、平行移動および回転に関する三つの自由度の全てが拘束されている。
図11に示されるように、荷重は、荷重ケース1の荷重F
11123aと荷重ケース2の荷重F
21123bとを有する二つの荷重ケースからなる。
【0059】
図12Bは、前述の条件下で最大ローカル相対質量を使用して得られた設計1220bを示す。
図12Cは、
図10に規定されるように従来のグローバル相対質量制約を使用して実行された最適化により決定された、結果的に得られる構造設計1220cを示す。結果的に得られる構造1220cを得るために使用した最適化では、グローバル相対質量が設定されていたため、この最適化された構造1220cの質量は、最大ローカル相対質量を使用して決定した最適化構造1220bの質量と類似する。
【0060】
最大ローカル相対質量を使用して得られた設計1220bは、グローバル相対質量を使用して得られた設計1220cと比較してリブパターンの形態で幾何学的詳細が増加したことが観察できるが、寸法のアプローチは、従来のフライス加工または加法的製造プロセスを使用して設計1220cが簡単に製造可能であることを確実にする。
【0061】
図13Aおよび
図13Bはそれぞれ、構造1220bをもたらす最適化プロセスの最適化反復収束履歴を示すプロット1330および1331である。プロット1330および1331は、各連続最適化反復サイクルに関して、荷重ケースに対する柔軟性を表現する二つの荷重ケースのコンプライアンスの値(すなわち、目的関数)と、ローカル相対質量(すなわち、制約)とを示す。
【0062】
図14は、最大ローカル相対質量制約を有する設計1440b、1450b、および1460bと、従来のグローバル相対質量制約を有する設計1440c、1450c、および1460cとに関する二つの荷重ケースの変位を比較する。説明文の変位の限界が異なることに留意されたい。当該比較は、理想設計1440bおよび1440cについて、境界条件の堅牢性(例えば、組立プロセスにおける変動に対する)1450bおよび1450cに関して、および製造不良の堅牢性(例えば、製造プロセスの材料変動に対する)1460bおよび1460cに関して、行われる。
【0063】
図14に示す寸法最適化の結果は、
図11に示すような二つの荷重ケースに基づく。工業的視点では、典型的には1〜20の荷重ケースが適用される。ほとんど荷重がないケースをグローバル相対質量またはグローバル絶対質量での最適化に適用する場合、これは最大ローカル相対質量を使用してまたは最大ローカル絶対質量を使用して得られた設計と比較して高度に最適化された設計をもたらすことが多い。これは、
図14の第一列1443に示されている。列1443に示すように、グローバル相対質量を使用して最適化された場合の、荷重ケース1に関する荷重点のひずみ(deflection)1446aはu
1=0.0022であり、荷重ケース2に関するひずみ1446bはu
2=0.0004である。したがって、設計1440cの剛性は、u
1=0.0054であるひずみ1446cおよびu
2=0.0025であるひずみ1446dを持つ最大ローカル相対質量を使用して得られた設計1440bよりも、60%および86%高い。両設計は同じ質量を持つことを想起されたい。しかしながら、グローバル相対質量を使用して得た高度に最適化された設計1440cは、列1444および1445に示される外的な変動に対して堅牢ではない。
【0064】
図14の列1444は、設計1450bおよび1450cに関する境界条件におけるずれの変位(displacement)における構造応答を示す。工業的観点では、これは、他の例のうち、組立プロセスにおける誤整列、または構成要素の外的な誤用によって引き起こされる可能性がある。ここで、設計1450cの剛性は、設計1450bと比較して荷重ケース1で151%低く、荷重ケースで2%低いことが観察される。ここでも、両設計は同じ質量を持つ。したがって、最大ローカル相対質量を使用して決定した設計1450bは、グローバル相対質量を使用して決定した設計1450cと比較して、組立プロセスまたは構成要素の外的な誤用における変動に対してより堅牢である。
【0065】
図14の列1445は、材料が不足している設計1460bおよび1460cの変位における構造応答を示す。工業的視点では、加法的製造プロセスでの材料の不正確な堆積もしくは溶融によって、またはフライス加工プロセスでの不正確な切削によって材料の不足が引き起こされる可能性がある。ここで、設計1460cの剛性は、設計1460bと比較して荷重ケース1で337%低く、荷重ケース2で74%低いことが観察される。ここでも、両設計は同じ質量を持つ。したがって、最大ローカル相対質量を使用して決定した設計1460bは、グローバル相対質量を使用して決定した設計1460cと比較して、製造プロセスにおける変動に対してより堅牢である。
【0066】
図15は、ある実施形態による感度に基づく反復寸法設計プロセス1550を示す。プロセス1550は、制約の目的関数に関する寸法最適化における最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量の設計応答(DRESP)を説明する。反復設計プロセスのスキーム1550は、例えば、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)システムの所定のワークフローにおいて実施できる。方法1550は、ステップ1501において、最適化のために、釣り合いのための種々の荷重および境界条件を含む初期モデルを生成することで開始される。ある実施形態では、モデルは設計者によって規定される。次に、モデルは、ステップ1501〜1515により反復寸法設計プロセスに供される。
【0067】
各設計の反復サイクルは、モデルの釣り合いを解くことによって、ステップ1503においてモデルの設計応答を決定する。さらに、方法1550は、ステップ1507において、設計応答として最大ローカル相対質量および/または最大ローカル絶対質量を決定する。
【0068】
次に、方法1550は、ステップ1503および1507それぞれにおいて決定された設計応答についての寸法設計変数に関して、ステップ1505および1509で一貫した解析感度を計算する。ある設計応答が、所与の最適化反復の現在の解析モデルのための応答を規定する。それに関して、設計応答は、モデルからの直接の測定値とすることが可能であるか(例えば、質量、重力中心等)、またはモデルの釣り合いに関する主要な解の結果によって決定される(例えば、応力、変位、反応力等)、一つのスカラー値を抽出する。
【0069】
次に、設計応答を適用して、満足させる必要がある制約と最適化される目的関数とからなる最適化問題を規定する。ステップ1511において、数学的プログラミングを使用して最適化問題が解かれる。数学的プログラミング、すなわち最適化計算は、ユーザが規定した設計ターゲット、設計応答、および設計応答の感度の値に厳密に基づいている。したがって、最大ローカル相対質量および/または最大ローカル絶対質量の設計応答ならびに感度が、反復寸法設計プロセスに含まれていれば、これらが設計寸法の面上の設計パターンのローカルな制御を強化し、同時に最適化設定に適用される他の設計応答に関する物理的性質も強化する。
【0070】
数学、コンピュータサイエンス、および演算の研究において、数学的プログラミングは、代替的に数学的最適化または単に最適化と名付けられ、また利用可能な代替物のいくつかの組から最良の解(一部の基準に対して)を選択するプロセスである。方法1550の実施形態は、当技術分野で公知である任意のかかる数学的プログラミングを使用しうる。
【0071】
ステップ1511での数学的プログラミングの後、ステップ1511で決定された設計変数に基づいて、ステップ1513において次の最適化反復のための新しい物理モデルを生成する。反復設計プロセスは、最適化の反復ごとに新規の改善された解(一部の目的および制約に対して)を選択するプロセスである。しばしば、ステップ1511で決定した設計変数、およびステップ1513で更新される物理モデル変数は、例えば、寸法最適化のための要素厚さ設計変数と同じである。物理モデル変数および設計ドメイン変数が同じであれば、ステップ1513での物理モデルは単に数学的プログラミングの出力として得られる。そうでなければ、当技術分野で公知のように、フィルターを使用して、設計変数が物理モデル変数であると解釈するための追加的なステップが必要である。
【0072】
続いて、最適化が収束しているか否かが判断される。最適化が収束していなかった場合、新しい最適化サイクルを開始し、方法1550はステップ1503および1507に戻る。最適化が収束していた場合、ステップ1515において最終の設計を生成する。収束した設計では、設計応答に関する制約を満足している必要があり、また目的関数が最適化されている必要がある。
【0073】
方法1550およびその出力である最終の設計1515は、様々な実世界のオブジェクトに採用されて、製造のための最適化設計を決定することができる。二つの実用的な実施例は、
図16A〜Eで示すような、航空宇宙用のフライス加工設計されたリブ補強シェル構造体である。例えば
図11〜
図14に関して上記において説明したものである本明細書に記載される反復最適化プロセスを使用して得られた最適化設計は、例えば、
図16A〜Eに示すような当該製造される航空宇宙用のフライス削りされたリブ補強シェル構造タイプに関する典型的な設計を表現することが可能である。
図16A〜Eの設計に関しては、胴体用にフライス削りされたリブが、完全な航空宇宙用構造体に組み立てたときに胴体用シェル構造体の物理的性能および特性、例えば総質量、剛性、強度、安定性、堅牢性等において重要な役割を果たす。これらリブは、従来的に、試行錯誤による設計アプローチにより決定されている。しかしながら、本発明の実施形態は、最大ローカル相対質量または最大ローカル絶対質量を含む反復最適化アプローチを提供して、フライス削り面のための補強用リブの設計パターンのローカルな制御をもたらす。
【0074】
本発明の実施形態の原理がどのように採用可能であるかを説明するために、以下に、航空宇宙用途のシェル構造を設計するための実施例を説明する。
【0075】
図16Aおよび
図16Dは、フライス削りされ、例えば航空機の外側である航空宇宙用途用のシェルを形成することができる初期ブロック1660aおよび1660dを図示している。所与のフライス盤の最大の初期ブロックサイズが、厚さの設計変数における上限を規定し、また厚さの設計変数における下限は、フライス盤の工具設定に依存する。次に、
図16B、16C、および16Eにそれぞれ示される設計1660b、1660cおよび1660eに示されるように、初期ブロックからリブがフライス加工可能である。しかしながら、問題は、製造可能であるようにしたまま、リブが例えば応力である航空機の物理的要件に適合するように、どのようにこれらリブの設計を最適化するかである。本発明の実施形態を使用すると、フライス削りされた構成要素が、リブの設計パターンを制御するさらなる最大ローカル相対質量制約または最大ローカル絶対質量制約により完全な航空宇宙構造体に組み立てられる場合の所与の一組の最適化要件に関して、リブを設計することができる。このように、実施形態は、製造プロセスだけでなく、完全に組み立てた航空宇宙構造体の設計要件の両方に対処する。例えば
図16Bに示すフライス盤1661である所与のフライス盤については、最小リブ幅を製造することが可能であり、この最小リブ幅を使用して、幾何学的有限要素モデルに基づいて例えば半径553である半径を規定することができる。次に、リブの設計は、
図6に関連して説明した方法660または
図15に関連して説明した方法1550など、本明細書に記載される方法を使用して最適化される。こうした実施では、構造の荷重点の剛性が最大化され、またローカルなリブ設計が対処される。その後、フライス加工製造の制約のみならず堅牢性要件を満足する、最終の最適化されたリブの設計が決定される。前述の説明は、フライス加工プロセスを考えているが、加法的製造などの任意の様々な製造プロセスのための最適化設計を決定するために、実施形態を使用してもよいことに留意されたい。
【0076】
図16Dに示す構造1660dなどの航空宇宙構造体の設計を説明するために、方法1550を使用する例示的な実施形態を、以下に記載する。ステップ1501において、有限要素モデルが、厚さの設計変数の上限および下限と同様に規定される。これら限界は、製造に使用される機械のサイズ、コントローラ、および工具によって決定されうる。この例では、剛性は構造の荷重点の設計応答であり、厚さを制御しながら剛性が最大化される。ステップ1503において、有限モデルを解いて釣り合いを決定する。ステップ1505において、厚さの設計変数に関して、設計応答と、設計応答の感度とが決定される。このような方法で、ステップ1503および1505では、有限要素モデルの釣り合いに基づいて、設計応答およびそれらの感度を計算する。続いて、ステップ1507において、製造され得る最小リブ幅が、幾何学的有限要素モデルに関連して半径を規定するために使用され、またステップ1509において、厚さの設計変数に関して設計応答と設計応答の感度とが決定される。ステップ1507および1509では、釣り合いを解くことで得られた剛性および強度のような状態変数ではなく、厳密に有限要素モデルの幾何学的記述を使用してローカルな質量の設計応答を計算する。 続いて、1511において、1505および1509の設計応答および感度が、最適化反復のために新規の一組の新規の厚さ設計変数を生じる数学的プログラミング(Karush−Kuhn−Tucker条件に基づくアプローチなど)において適用される。次に、ステップ1511において、仮想有限要素モデルにおける厚さが更新される。続いて、結果として生じる厚さが、収束してない設計であり、設計応答または設計厚さの変化が前回の最適化反復と比較して依然として有意であるならば、方法は現在の新しい更新された厚さ設計レイアウトを伴ってステップ1503および1507に続く。設計が収束しているならば、最適化された厚さ分布を有する最終の設計1515が達成される。
【0077】
図17は、本明細書に記載される本発明の任意の様々な実施形態による、実世界のオブジェクトを製造するための最適化設計を決定するために使用されうるコンピュータベースのシステム1770の概略ブロック図である。システム1770は、バス1773を備える。バス1773は、システム1770のさまざまな構成要素間の相互接続として機能する。バス1773には、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどのさまざまな入力および出力デバイスをシステム1770に接続するための入力/出力デバイスインタフェース1776が接続されている。中央処理ユニット(CPU)1772は、バス1773に接続され、実施形態を実施するコンピュータ命令を実行する。メモリ1775は、
図6および15に関して先に説明したそれらの方法など、本明細書に記載される実施形態を実施するコンピュータ命令の実行に使用されるデータのための揮発性記憶装置を提供する。格納部1774は、オペレーティングシステム(図示せず)および実施形態の構成などのソフトウェア命令のための不揮発性記憶装置を提供する。システム1770はまた、広域エリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当技術分野で公知の任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインタフェース1771を備える。
【0078】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実施されうることが理解されるべきである。一部の例では、本明細書に記載される様々な方法および機械は、それぞれ、コンピュータシステム1770などの物理的、仮想的、もしくはハイブリッド型の汎用コンピュータ、または
図18に関して本明細書において以下で説明されるコンピュータ環境1880などのコンピュータネットワーク環境によって、実施されてもよい。コンピュータシステム1770は、例えば、CPU1772によって実行するためにメモリ1775または不揮発性記憶装置1774のいずれかにソフトウェア命令を搭載することによって、本明細書に記載した方法を実行する機械に変形されてもよい。当業者であれば、システム1770およびその様々な構成要素が、本明細書に記載した本発明の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実行するように構成されてもよいことをさらに理解するべきである。さらに、システム1770は、システム1770に対して、内部的または外部的に、動作可能に連結されたハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアのモジュールの任意の組み合わせを利用して本明細書に記載した様々な実施形態を実施してもよい。さらに、システム1770は、本明細書に記載されるように装置を制御して物理的なオブジェクトを生成するために、製造装置に通信可能に接続されるか、または製造装置内に埋め込まれてもよい。
【0079】
図18は、本発明の実施形態を実装し得る、コンピュータネットワーク環境1880を図示する。コンピュータネットワーク環境1880では、サーバ1881は、通信ネットワーク1882を通してクライアント1883a〜nに接続される。当該環境1880を用いて、クライアント1883a〜nに対して、単独でまたはサーバ1881と組み合わせて、本明細書に記載される方法のいずれかを実行できるようにする。非限定的な例では、コンピュータネットワーク環境1880は、クラウドコンピューティングの実施形態、サービス型ソフトウェア(SAAS)の実施形態などを提供する。
【0080】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実施することができる。ソフトウェアで実施される場合、そのソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはその命令のサブセットを搭載できるように構成される任意の非一時的コンピュータ可読媒体に格納されてもよい。その後そのプロセッサは命令を実行して、本明細書に記載された方法で作動するかまたは装置を作動させるように構成される。
【0081】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行することとして本明細書に記載されている可能性がある。しかしながら、当然のことながら、本明細書に含まれるかかる記載は、単に便宜的なものであり、かつ実際のかかる動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラまたは他のデバイスに起因するものである。
【0082】
フロー図、ブロック図およびネットワーク図は、より多数もしくはより少数の要素を含むものであってもよく、異なる方法で配置されていてもよく、または異なる方法で表現されていてもよいことが理解されるべきである。しかし、特定の実施が、ブロック図およびネットワーク図と、特定の方法で実施される実施形態の実行を図示するブロック図およびネットワーク図の数とを規定しうることをさらに理解するべきである。
【0083】
したがって、さらなる実施形態は、さまざまなコンピュータ構成、物理的、仮想的、クラウドのコンピュータ、および/またはそれらの一部の組み合わせに実装されてもよく、従って、本明細書に記載されるデータプロセッサは、説明の目的のみを意図しており、実施形態の限定として意図するものではない。
【0084】
例示的な実施形態を具体的に示し説明してきたが、形態および詳細の様々な変更が、添付の請求項によって網羅される実施形態の範囲から逸脱することなく、実施形態になされてもよいことは、当業者に理解されるであろう。