【課題を解決するための手段】
【0030】
方法に関する目的は、眼鏡レンズを製造するための、特許請求項1の特徴を有する方法によって実現される。製品に関する目的は、特許請求項3〜5の何れかの特徴を選択的に有する眼鏡レンズによって実現される。本発明の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項の主題である。
【0031】
本発明によるすべての変形形態に共通することは、それぞれの眼鏡レンズが少なくとも2つの
立体要素群、すなわち複数の第一の
立体要素を含む第一の
立体要素群を含み、複数の第一の
立体要素は、幾何学グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第一の部分グリッドを形成し、第一の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第一の部分を形成し、眼鏡レンズの前記第一の部分は、第一の物体距離で見るための屈折力を有する。さらに、眼鏡レンズは、第二の
立体要素群を含み、これは、対応して複数の第二の
立体要素群を含み、複数の第二の
立体要素は、幾何学的グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第二の部分グリッドを形成し、第二の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第二の部分を形成し、眼鏡レンズの前記第二の部分は、第一の物体距離と異なる第二の物体距離で見るための屈折力を有する。本発明による眼鏡レンズのすべての変形形態において、第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドは、(例えば、変位されるか又はずらされて)相互内に配置され、それぞれの場合に相互に貫入する。
【0032】
幾何学において、グリッドは、グリッドセルの集合による空間領域の完全であり且つ重複しない区分化である。グリッドセルは、(架空の又は想像上の)グリッドポイントを(架空の又は想像上の)グリッド線によって相互に接続したものによって画定される。
【0033】
第一及び第二部分グリッドが相互に貫入するとは、第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドが、全体が一致することなく、共通の空間を有することを意味する。本発明の範囲内において、相互内で貫入式に変位されるとは、例えば、閃亜鉛鉱型構造の状態の配置を意味し、これは、相互に関して斜めに空間の1/4だけ変位させて配置されている、相互内に設置された2つの立方面心部分格子の組合せと説明することができる。さらに、層表面内にあるベクトルの特定の寸法だけ相互に関して変位された(単層の)層格子も含まれるべきである。第一及び第二の2つの部分グリッドは、同じ形状である必要もない。むしろ、決定的であるのは、第一及び第二の2つの部分グリッドが、異なる物体距離で見るための屈折力の巨視的な空間的分離を提供しないことである。
【0034】
第一の物体距離で見るための屈折力を提供する眼鏡レンズの第一の部分は、例えば、従来の眼鏡レンズの近用領域に対応し得、第二の物体距離で見るための屈折力を提供する眼鏡レンズの第二の部分は、遠用領域に対応し得る。したがって、第一及び第二の部分グリッドの本発明による配置は、3次元構造を提供し、その中の遠用及び近用領域は、いわば、事実上、一方がその中にある入れ子状に存在する。当然のことながら、第一の物体距離は、通常の眼−スクリーン距離でもあり得、第二の物体距離は、慣例的な読書距離であり得る。このような眼鏡レンズは、オフィスワーク等に適している。
【0035】
したがって、眼鏡レンズの第一の部分及び第二の部分は、それを通じて眼鏡の装用者が見る眼鏡レンズの一致した表面領域を表す。これらの領域の典型的な表面寸法は、0.3cm
2〜7cm
2、好ましくは0.5cm
2〜6cm
2、さらに好ましくは0.8cm
2〜5cm
2、最後にはるかにより好ましくは1cm
2〜4cm
2である。
【0036】
適当な実施形態の場合、眼鏡レンズは、
− 目に見える二焦点又は三焦点領域が存在せず、
− 可変焦点眼鏡の累進帯が不要となり、したがって、それに関連するすべての個別化パラメータが使用されなくなり(累進帯の長さ、内寄せ、フレーム形状、可変焦点プロファイル、従来の可変焦点レンズの場合に避けることができない像収差分布のバランス)、
− 加入度(2つの焦点間の差)がそのままとされ、焦点の数が、個別に設定される異なるボクセル(第一、第二及び任意選択でそれを超える
立体要素群)の数によってのみ制限され、
− とりわけ、以下のパラメータ、すなわち頂点間距離(ドイツ語の省略形はHSAである)、装用時前傾角及びフロント角が必要に応じてそのままとすることができる点において区別され得る。
【0037】
そのままにするとは、加入度、頂点間距離、装用時前傾角及びフロント角等のこれらのパラメータが、本発明による眼鏡レンズの設計時、先行技術による従来の眼鏡レンズの場合とまったく同じ方法で考慮されることを意味する。
【0038】
可変焦点及び多焦点レンズの分野におけるこれらの明白な用途に加えて、本明細書に記載の実施形態は、単焦点レンズの審美的な問題の軽減方法も提供する。このために、光学的補正をもはや排他的でなく光学面の相対位置によって導入することが可能であり、先行技術における前述のタイプの従来の眼鏡レンズの場合のように一定の屈折率が考慮される。
【0039】
本発明による
立体要素群は、付加製造方法を用いて製造される。具体的には、本発明による眼鏡レンズを製造する方法は、
− 第一の
立体要素群を付加製造するステップであって、第一の
立体要素群は、複数の第一の
立体要素を含み、複数の第一の
立体要素は、幾何学的グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第一の部分グリッドを形成し、第一の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第一の部分を形成し、眼鏡の前記第一の部分は、第一の物体距離で見るための屈折力を有する、ステップと、
− 第二の
立体要素群を付加製造するステップであって、第二の
立体要素群は、複数の第二の
立体要素を含み、複数の第二の
立体要素は、幾何学的グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第二の部分グリッドを形成し、第二の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第二の部分を形成し、眼鏡の前記第二の部分は、第一の物体距離と異なる第二の物体距離で見るための屈折力を有する、ステップと
を含む。
【0040】
本発明によれば、この方法は、第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドが、付加製造中、(例えば、変位されるか又はずらされて)相互内に配置され、それぞれの場合に相互に貫入することを特徴とする。
【0041】
第一の
立体要素群の付加製造及び第二の
立体要素群の付加製造の方法ステップでは、第一の
立体要素群を最初に完成させ、その後、第二の
立体要素群を完成させることが必要とならないはずである。むしろ、第一の
立体要素群の1つ又は複数の
立体要素をまず加法的に製造でき、その後、第二の
立体要素群の1つ又は複数の
立体要素、次に再び第一の
立体要素群の1つ又は複数の
立体要素等と続け、最終的に、2つの
立体要素群は、2つの部分グリッドが相互内で貫入式に変位されることに対応するような本発明による配置で完成される。
【0042】
付加製造(AM)又は付加製造方法は、以前にはラピッドプロトタイピングと呼ばれることが多かった、モデル、パターン、プロトタイプ、ツール及び最終製品の高速且つ費用対効果の高い製造方法の総称である。この製造は、無形態の(例えば、液体、粉末等)又は形態中立(帯型、ワイヤ型)材料から化学的及び/又は物理的プロセスにより、コンピュータ内部データモデルに基づいて直接実行される。これらは、基本的に成形方法であるが、特殊な製品のために被加工物のそれぞれの形状を記憶した特殊なツール(例えば、鋳型)は必要とされない。現在の先行技術は、VDI Statusreport AM 2014によって伝えられている。現行の3Dプリンティング方法は、2016年7月13日に検索されたhttps://3druck.com/grundkurs−3d−drucer/teil−2−uebersicht−der−aktuellen−3d−druckverfahren−462146/によって提供される。
【0043】
マルチジェットモデリング又はポリジェットプリンティングの方法が特に適切であることがわかった。この方法は、例えば、それぞれ2016年7月13日に検索されたURL https://de.wikipedia.org/wiki/Multi_Jet_Modeling、URL http://www.materialise.de/3d−druck/polyjet又はURL http://www.stratasys.com/de/3d−drucker/technologies/polyjet−technologyに記載されている。ポリジェットは、強力な3Dプリンティング技術であり、それによって平滑で精密なコンポーネント、プロトタイプ及び製造補助具を製造できる。顕微鏡レベルの層分解能及び0.1mmまでの精度のために、各技術について利用可能な最も幅広い種類の材料から薄い壁及び複雑な形状をそれによって製造できる。ポリジェット3Dプリンタは、インクジェットプリンタのものと同様の動作を有する。しかしながら、インク小滴を紙上に噴霧する代わりに、ポリジェット3Dプリンタは、架橋性の液体フォトポリマーでできた層を構成土台上に噴霧する。この方法は、比較的単純であり、第一の準備ステップにおいて、準備ソフトウェアが3D CADファイルに基づいてフォトポリマー及び支持材料(すなわち3Dプリンティング中にフォトポリマーを位置決めし、それが硬化するまで支持する役割のみを果たす材料)の位置を自動的に計算する。実際の製造中、3Dプリンタは、液体フォトポリマーの微細な小滴を噴霧し、その後、直ちにUV光によってこれらを架橋させる。そのため、極薄い層が構築土台上に堆積され、それから1つ又は複数の精密3Dモデル又は3D部品が得られる。懸下するか又は複雑な形状を支持しなければならない場合、3Dプリンタは、除去可能な支持材料を噴霧する。使用者は、支持材料を手で、水で又は溶剤槽内で容易に除去できる。モデル及びコンポーネントは、好ましくは、後硬化を行わずに3Dプリンタから直接加工し、使用できる。
【0044】
特に、ストラタシス(Objet)Eden 260 V 3Dプリンタが本発明による用途に適している。本明細書の導入部で既に述べられ、且つ特に国際公開第2014/179780A1号パンフレット及び国際公開第2015/014381A1号パンフレットの文献に明記された材料は、本発明による方法で使用するのに適している。例えば、第一及び第二の
立体要素に適したポリマーは、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系ポリマー、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレメート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート等のポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリカーボネート、ポリアリル、ポリスルフィド、ポリビニル、ポリアクリレン、ポリオキシド及びポリスルフォン並びにそれらの混合物である。オレフィン系ポリマー、アクリル、エポキシド、有機酸、カルボキシル酸、スチレン、イソシアネート、アルコール、ノルボネン、チオール、アミン、アミド、無水物、アリル、シリコーン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド及びエピスルフィドは、第一及び第二の
立体要素を製造するための印刷材料として適したモノマー又はプレポリマーと考えることができる。モノマー又はプレポリマーは、熱硬化性又は放射誘導式に硬化可能であり得る。放射誘導硬化には、光重合開始剤及び任意選択によりコフォトイニシエータを使用できる。
【0045】
前述のように、第一及び第二の
立体要素は、ナノ粒子が付加されている有機マトリクスでも構成できる。有機マトリクスは、例えば、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(SU8)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン及びポリ[(2,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロテトラヒドロフラン−2,3−ジイル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチレン)](CYTOP)で構成できる。ナノ粒子に使用できる材料は、例えば、ZnS、ZrO
2、ZnO、BeO、AlN、TiO
2及びSiO
2である。
【0046】
冒頭に示した方法に基づく問題は、眼鏡レンズを製造するための本発明によるこのような方法によってすべて解決される。
【0047】
これらの文言で、本発明は、2つの部分グリッドの貫入的配置にのみ限定されないことに留意されたい。むしろ、異なる物体距離に対応する3つ以上の部分グリッドを実現することも可能である。しかしながら、異なる部分グリッドの数を5以下、好ましくは4以下又は他に3以下に限定すると有利であることがわかっており、なぜなら、そうでなければ人の脳が焦点の合った認識を行えないか、又はそれが非常に困難となるからである。
【0048】
前述の製品に関する問題は、以下に明示される変形形態の1つによって解決でき、開始製品は、常に下記の特徴を有する眼鏡レンズである:本発明による眼鏡レンズは、複数の第一の
立体要素を含む第一の
立体要素群を含み、複数の第一の
立体要素は、幾何学的グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第一の部分的グリッドを形成し、第一の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第一の部分を形成し、眼鏡レンズの前記第一の部分は、第一の物体距離で見るための屈折力を有する。さらに、眼鏡レンズは、複数の第二の
立体要素を含む第二の
立体要素群を含み、複数の第二の
立体要素は、幾何学的グリッドのグリッドポイントの状態で配置されて、第二の部分的グリッドを形成し、第二の
立体要素は、共同で眼鏡レンズの第一の部分を形成し、眼鏡レンズの前記第二の部分は、第一の物体距離と異なる第二の物体距離で見るための屈折力を有する。第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドは、(例えば、変位されるか又はずらされて)相互内に配置され、それぞれの場合に相互に貫入する。
【0049】
本発明の第一の変形形態は、3次元の実施形態を有する第一の部分グリッド及び3次元の実施形態を有する第二の部分グリッドからなる。両方の部分グリッドの3次元設計の結果として第一及び第二の部分間の層の数を増大させる相互作用があり、前記相互作用は、異なる物体距離で焦点の合った状態で見えるように設計されることが意図される。詳細は、
図4に関する説明に関して後に解説される。しかしながら、原則として実現されるものは、光が眼鏡レンズを通過する際に前面及び後面で2回屈折するのではなく、より小さい角度ではあるが、部分グリッド間の各界面において毎回繰返し屈折することである。その結果、眼鏡レンズを通過する光の経路を個別に使用者に合わせて最適化することが可能となる。ここで、光の経路は、局所レベルで影響を受け得、従来のシステムでは緊密に接続されたままである比較的大きい光ビームを分割し、より小さいビームにおいてより精密に制御することができる。
【0050】
本発明の第二の変形形態は、以下の構成から得られる:
(i)第一の
立体要素は、第一の材料からなり、及び第二の
立体要素は、第一の材料と異なる第二の材料からなる。
【0051】
本発明によれば、第一の
立体要素の1つと、第二の
立体要素の隣接する1つとの間の移行について、隣接する第一及び第二の
立体要素の材料の漸次的変化によって実現されるようになされる。原則として、1つの焦点から次の焦点への変化は、本発明のこの変形形態では漸次的である。さらなる詳細は、本明細書の最後の4つの部分にまとめられている。しかしながら、原則として、実現されるものは、光学的に有効な表面内に残る縁をこの実施形態ではさらに軽減でき、したがって審美的特性においてさらなる改良が得られることである。加えて、
立体要素群間の漸次的変化は、
立体要素群間の様々な界面における迷光の生成を軽減させることにつながる。個々の
立体要素群の計算と、それぞれの屈折率の設定とは、離散的移行の場合よりはるかに複雑となり、そのため、設計のためにより多くの演算力が利用できなければならない。
【0052】
一般に、平滑ハードコートを配置できる。平滑ハードコートとは、眼鏡レンズ表面の表面粗さ及び表面構造物を減少させる層を意味すると理解される。
【0053】
この平滑化ハードコートにより、眼鏡レンズは、好ましくは、10nm未満の表面粗さRaを有する。さらに好ましくは、それぞれのすべての光学表面にわたる眼鏡レンズの表面粗さRaは、1.0nm〜8.0nmの範囲内、特に好ましくは3.0nm〜7.0nmの範囲内、非常に特に好ましくは4.0nm〜6.0nmの範囲内である。各場合の表面粗さRaの上記の値は、眼鏡レンズの前面及び裏面に関する。完成した眼鏡レンズに関する表面粗さRaは、好ましくは、白色干渉法により、好ましくはNew View 7100(Zygo Corporation)装置を用いて特定される。
【0054】
平滑ハードコートの組成は、少なくとも1つのシラン誘導体、(R
4O)(Si(OR
1)(OR
2)(OR
3)を含むことができ、ここで、R
1、R
2、R
3、R
4は、相互に同じでも異なっていても、また置換されていてもいなくてもよく、R
1、R
2、R
3、R
4は、アルキル、アシル、アルキレンアシル、シクロアルキル、アリル及びアルキレンアリルからなる群から選択され得る。代替的に又は追加的に、平滑ハードコートの組成は、少なくとも1つのシラン誘導体R
6R
73−nSi(OR
5)
nを含むことができ、ここで、R
5は、アルキル、アシル、アルキレンアシル、シクロアルキル、アリル及びアルキレンアリルからなる群から選択され得、R
5は、置換されていてもいなくてもよく、R
6は、エポキシド基を含む有機ラジカルであり、R
7は、アルキル、シクロアルキル、アリル及びアルケニルアリルからなる群から選択され得、R
7は、置換されていてもいなくてもよい。このような平滑ハードコートの別の例は、欧州特許出願公開第2578649A1号明細書、独国特許出願公開第102005059485A1号明細書及び欧州特許出願公開第2385086A1号明細書に記載されている。原則として、これにより、異なる
立体要素からなる構造は、外部から見た観察者にとって見えなくなるか又は目立ちにくくなる一方、眼鏡レンズに耐擦傷性が提供される。この変形形態の審美性平滑特性は、光学システムが2番の変形形態に記載されているような鮮明な縁及び飛躍的な変化を有するパラメータに基づいている場合、特に重要である。さらに別の利点は、コーティングされた表面のクリーニングしやすさが改良されていることにあり、なぜなら、埃が堆積する可能性のある溝がより少ないからである。コーティングされていない変形形態と比べて、さらなる利点は、任意選択により、パッドブリンティング又はインクジェットプリンティング方法によって眼鏡レンズ表面にさらに印刷できるスタンプ図形(センタリングクロス、測定円等)を適用する範囲内にある。
【0055】
本発明の第三の変形形態は、第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が、(空間的な)屈折率勾配を有する担体表面に配置されることを特徴とする。本明細書の導入部に記載したように、屈折率の勾配により、その幾何学形状にほとんど依存しない本体の所望の屈折力を生成することが可能となる。それにより、眼鏡レンズは、空間的に一定の屈折率を有する担体を使用した場合よりも全体的に薄い実施形態を有することができる。第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が配置されている領域において、担体の厚さは、好ましくは、0.1〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、最も好ましくは1〜2mmである。
【0056】
冒頭に挙げた製品に関する問題は、上述の3つの変形形態の各々によって完全に解決される。
【0057】
以下に記載の本発明の変形形態は、例として後に詳細に説明するように、任意の方法で組み合わせることもできる。
【0058】
原則として、第一及び第二の
立体要素は、同じ材料からなり得る。したがって、異なる物体距離において鮮鋭な視野を得るための異なる屈折力の提供は、個々の第一及び第二の
立体要素のそれぞれの表面形状、並びに/又は個々の第一及び第二の
立体要素の相互に関する相対位置及び整列、並びに/又は2つの第一及び第二の部分グリッドを含むグリッドの外形によって特定又は設定される。まず、表面形状という用語は、それぞれの
立体要素の表面積及び表面形状の両方、特にまた表面の局所的曲率を含む。
【0059】
上述の説明によれば、代替的に、第一の
立体要素は、第一の材料からなり、及び第二の
立体要素は、第一の材料と異なる第二の材料からなるようにすることができる。したがって、異なる物体距離において鮮鋭な視野を得るための異なる屈折力の提供は、個々の第一及び第二の
立体要素のそれぞれの表面形状、並びに/又は個々の第一及び第二の
立体要素の相互に関する相対位置及び整列、並びに/又は2つの第一及び第二の部分グリッドを含むグリッドの外形だけでなく、それぞれの第一及び第二の
立体要素の異なる光屈折特性によって特定又は設定される。特に、第一の材料が第一の屈折率を有し、及び第二の材料が、第二第一の屈折率と異なる第二の屈折率を有する場合に役割を果たすのは、
立体要素の光学的に有効な面の向きだけでなく、その屈折力でもある。審美的認識の点における成形の制限は、ほとんどなくなるか又は従来の眼鏡レンズと比較して少なくとも大幅に緩和される。付加製造方法の採用、特にマルチジェット又はポリジェットプリンティング/モデリングの採用により、ほとんど費用をかけずに、不連続の及び/又は不連続的に区別される光学面を実現できる。例えば、近用領域及び遠用領域の巨視的な空間的分離(一般に、第一の物体距離範囲及び第二の物体距離範囲)がなくなり、それに関して、従来のタイプの可変焦点レンズの場合に縁に向かって発生する非点収差によるひずみがなくなる。
【0060】
第一及び第二の
立体要素を実現するために異なる屈折率の材料を利用した場合、第一及び第二の
立体要素を、これらが共同で平滑な、任意選択によりさらには平坦な面を形成し、本発明による眼鏡レンズ又は眼鏡レンズを用いる眼鏡が所期の通りに使用されたときに物体の方向(すなわち任意選択によりコーティングが設けられ、眼鏡レンズの前面を形成する)及び/又は眼の方向(すなわち任意選択によりコーティングが設けられ、眼鏡レンズの裏面を形成する)の何れかに整列されるように配置することにより、異なる物体距離のための屈折力を生成することができる。それに対して、第一及び第二の
立体要素を実現するために同じ屈折率の材料が利用された場合又はさらには同じ材料が利用された場合、第一及び第二の
立体要素の表面は、異なる物体距離のために領域の巨視的な空間的一体化を提供するという本発明による特性を得るために、2つの異なる
立体要素が相互に隣接する場所において、相互に関して異なる向きを有する。特に、この場合、本発明は、第一の
立体要素がそれぞれ第一の表面要素を有することと、第二の
立体要素がそれぞれ第二の表面要素を有することと、相互に隣接する第一の表面要素のそれぞれ1つ及び第二の表面要素のそれぞれ1つが相互に斜めに配置されることとを特徴とする。
【0061】
要約すれば、第一の
立体要素と第二の
立体要素との間の移行は、材料における飛躍的な変化及び/又は隣り合う
立体要素の相互に隣接するそれぞれの表面要素の向きの飛躍的な変化により、不連続的に実施できる。
【0062】
代替として、第一の
立体要素と第二の隣接する
立体要素との間の移行は、漸次的に又はスムーズに実施することもでき、従来の可変焦点レンズにおける累進帯と同様の特性を有する。これは、したがって、材料の漸次的変化及び/又は隣接する
立体要素のそれぞれの光学面の向きの漸次的変化によって実施できる。
【0063】
第一の部分グリッドは、2次元実施形態を有することができる。代替として又は追加的に、第二の部分グリッドは、2次元実施形態を有することができる。本願の範囲内において、(部分)グリッドの2次元実施形態とは、1層グリッドを意味すると理解すべきである。別の表現をすれば、(部分)グリッドを形成するすべての
立体要素が同一平面内にあるべきである。部分グリッドが何れも2次元実施形態を有する場合、第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドを含むグリッドも2次元グリッドを形成し、すなわち、これは、2つの部分グリッドが上述の平面内で相互に関して変位される場合である。例えば、2つの部分グリッドは、チェス盤のような構造の状態で存在でき、この場合、チェス盤の白いマスは、第一の部分グリッドの第一の
立体要素に対応すると想像され、チェス盤の黒いマスは、第二の
立体要素に対応すると想像される。
【0064】
第一の部分グリッド及び第二の部分グリッドの両方が2次元実施形態を有していたとしても、これらは、必ずしも
立体要素が配置される平面内で相互に関して変位される必要はない。2つの部分グリッドを、相互に関して、この平面に垂直方向にのみ整列する方向と任意の空間的方向との両方に変位させることが可能である。
【0065】
第一の部分グリッドは、3次元実施形態を有することもできる。代替として又は追加的に、第二の部分グリッドは、3次元実施形態を有することもできる。再び、2つの部分グリッドは、相互に関して任意の空間的方向に変位できる。特に、3次元実施形態の場合、2つの異なる焦点距離での焦点は、各層で相互に影響を与える。別の表現をすれば、部分グリッドの3次元設計の場合、第一及び第二の部分間の層の数と共に増大する相互作用があり、前記相互作用は、異なる物体距離で焦点の合った視野を得るように設計されることが意図される。詳細は、
図4に関する説明に関して後に解説される。
【0066】
第一の物体距離は、第二の物体距離と、5cmより大きく、又は10cmより大きく、又は15cmより大きく、又は20cmより大きく、又は30cmより大きく、さらには50cmより大きく異なることができる。別の表現をすれば、第一及び第二の
立体要素を含む部分がそれぞれそれに合わせて設計される焦点面は、相互に上述の値だけ離間される。眼鏡の装用者は、同じ視線方向に沿って、これらの焦点面に配置された物体を焦点の合った状態で見ることができる。従来の多焦点レンズで必要であったような視界の変更は、本発明による種類の眼鏡レンズを用いることで不要になる。
【0067】
原則として、眼鏡レンズを第一及び第二の
立体要素群のみからなり得、又はそれによってのみ形成され得る。また、第一及び第二の
立体要素群に対応する種類の1つ又は複数の別の
立体要素が存在し、眼鏡レンズは、異なる種類のこれらの
立体要素群のみからもなり得、その各々は、同じ又は異なる物体距離で見るための屈折力を提供する眼鏡レンズの部分を形成する。本発明による眼鏡レンズの特に有利な実施形態の変形形態は、第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が担体の表面上に配置されることを特徴とする。例えば、担体は、鋳造又はブランクからの砥粒加工等の方法を用いて製造されていることができる。しかしながら、本発明はまた、本発明による方法が、任意選択により、以下の方法ステップによって特徴付けられるようにする:
− 表面であって、その上に第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が配置される表面を有する担体を付加製造するステップ。
【0068】
例えば、担体は、物体側の球面、又はトーリック面、又はフリーフォーム面を有することができ、表面であって、その上に第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が配置される表面は、担体の眼側面であり得る。代替的に、担体は、眼側の球面、又はトーリック面、又はフリーフォーム面を有することもでき、表面であって、その上に第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が配置される表面は、担体の物体側面であり得る。上述の変形形態の両方において、眼鏡レンズの全体的な効果は、球面、又はトーリック面、又は回転対称の非球面、又はフリーフォーム面の屈折力と、第一及び第二の
立体要素群の
立体要素の光屈折特性とからなる。
【0069】
最後に、表面であって、その上に第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群が配置される表面は、担体の眼側及び/又は物体側面でもあり得る。したがって、眼鏡レンズの全体的な効果は、実質的に、第一及び第二の
立体要素群の
立体要素の光屈折特性からなる。
【0070】
さらに、担体が屈折率勾配を有するようにすることができる。本明細書の導入部に記載したように、屈折勾配により、その幾何学形状にほとんど依存しない本体の所望の屈折力を生成することが可能となる。
【0071】
追加的に、第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群上にコーティングを配置できる。特に、本明細書の導入部において述べたすべての機能層構造は、コーティングとして考慮される。特に、反射防止コーティング、銀化、偏光、着色、調光等の光学特性、及び硬化、埃の付着しやすさの低減化若しくは曇り軽減等の機械的特性、並びに/又は電磁放射の遮断、電流の伝導等の電気的特性、並びに/又は眼鏡レンズの他の物理的又は化学的特性に影響を与えるか又はこれらを変化させるものについて言及すべきである。
【0072】
最後に、第一の
立体要素群及び第二の
立体要素群は、埋伏構造として実施することも可能である。一方では、これにより、その後のハードコーティング又は反射防止コーティングが実質的に単純化され(例えば、従来の平滑ハードコートシステムを使用できる)、他方では、相互に隣接する
立体要素の表面の不連続性又は屈曲又は飛躍が、後に完成した眼鏡レンズの表面に埃が集まるような空洞を形成することがない。埋伏構造とは、基板材料中に埋め込むことを意味すると理解される。
【0073】
本発明による眼鏡レンズの上述の屈折力は、それぞれ1000μm
3〜1mm
3の体積を有する第一の
立体要素及び/又はそれぞれ1000μm
3〜1mm
3の体積を有する第二の
立体要素で得ることができる。
立体要素の可能な限り最小の体積は、製造方法により、例えばマルチジェット又はポリジェットモデリングの場合の小滴の大きさにより、及び例えばSLA方法におけるレーザの焦点の大きさにより予め決められる。
【0074】
例えば、第一の
立体要素は、それぞれ100μm
2〜1mm
2の物体側表面を有することができ、及び/又は第二の
立体要素は、それぞれ100μm
2〜1mm
2の物体側表面を有することができる。代替として又は追加的に、第一の
立体要素は、それぞれ100μm
2〜1mm
2の眼側表面を有することができ、及び/又は第二の
立体要素は、それぞれ100μm
2〜1mm
2の眼側表面を有することができる。
【0075】
第一の部分を形成する第一の
立体要素の数は、好ましくは、50〜10
9、さらに好ましくは100〜10
8、最後にさらに好ましくは200〜10
7、最後にさらにより好ましくは500〜10
6にある。
【0076】
第二の部分を形成する第二の
立体要素の数は、好ましくは、50〜10
9、さらに好ましくは100〜10
8、最後にさらに好ましくは200〜10
7、最後にさらにより好ましくは500〜10
6にある。
【0077】
好ましくは、第一の
立体要素の数と第二の
立体要素の数とは、同じ桁の大きさである。これは、第一の
立体要素の数と第二の
立体要素の数とが相互に10倍を超えて、好ましくは8倍を超えて、さらに好ましくは5倍を超えて、最後にさらに好ましくは2倍を超えて異ならないことを意味する。
【0078】
本発明による技術的解決策は、特に発明的な概念の上述の有利な実施形態及び発展形態によるそれを考慮した場合、下記の利点を有する:可変焦点及び多焦点レンズの分野における上述の用途、並びに特に単焦点レンズの場合の審美的な問題を軽減する同様に上述した手法に加えて、さらに、平面レンズ又はさらには物理的に平坦なプレートが眼鏡レンズとして生成される、純粋に屈折率勾配光学系に基づくシステム(上述の公報国際公開第2015/102938A1号パンフレット及び国際公開第2014/179780A1号パンフレットを参照されたい)を選択することができない。光学的に活性な表面を基板材料の屈折率勾配と好都合に組み合わせることにより、非常に良好な結果が得られる。近視という眼の障害を矯正する際、屈折率が眼鏡レンズの縁に向かって増大するとき、眼鏡レンズの縁の厚さを薄くすることができる。プラスチックが使用される場合、最大の屈折率上昇は、1.48〜1.80であり、基本の化学的性質の必然的な変化の結果として実現が難しい。ミネラルガラスは、増大の可能性がより高くなる。
【0079】
眼鏡レンズの設計において、現行の技術の様々な制約が取り除かれる。球面又は非球面の回転対称の前面への制約と、曲率に関する提供範囲の制約とが取り除かれることは特に有利である。本明細書に記載の技術を用いた場合、レンズの光学パワーに関する結果を生じても生じなくても、任意の曲率及び曲率変化を実現できる。必要に応じて、曲率の変化は、屈折率の変化によって補償できる。
【0080】
さらに有利な特性は、利用可能な半完成品の直径に対する制約による眼鏡レンズの大きさの制約が取り除かれることである。製造上の理由により、約80〜90mmの直径に制約された半完成品の場合と異なり、既にそれよりかなり大きく、有利な点として200×200×200mmを超える3Dプリンタの構成空間の最大の大きさが製造限度を表す。この空間が利用されれば、眼鏡、シールド等の全体を1ピースでプリントすることが可能である。
【0081】
図面を参照しながら本発明を以下により詳細に説明する。