【文献】
MESTAS, J.L., et al.,"DEVELOPMENT OF A CONFOCAL ULTRASOUND DEVICE USING AN INERTIAL CAVITATION CONTROL FOR TRANSFECTION IN-VITRO.",JOURNAL OF PHYSICS: CONFERENCE SERIES,英国,INSTITUTE OF PHYSICS PUBLISHING,2015年12月 3日,Vol.656, No.1,012003(pp.1-4),URL,http://dx.doi.org/10.1088/1742-6596/656/1/012003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のレザバーが、96個のレザバー、384個のレザバー、1536個のレザバー、3456個のレザバー、または3456個よりも多くのレザバーを含む、請求項1に記載の方法。
前記音響放射発生器が、集束素子を含み、ステップ(c)が、前記レザバー内へと指向させた音響放射が集束音響放射になるように、ステップ(c)で発生させた音響放射を集束させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記システムが、前記マイクロバブルから前記細胞への音響放射の移転を可能にするように、前記マイクロバブルが前記宿主細胞と十分に接近することを確実にするための手段をさらに含む、請求項17に記載の方法。
前記リボ核タンパク質が、ガイドRNA、およびCRISPR関連RNA−プログラム可能な(programmable)DNAまたはRNAヌクレアーゼタンパク質またはタンパク質複合体を含む、請求項30に記載の方法。
前記リボ核タンパク質が、ガイドRNA、および触媒的に不活性なCRISPR関連RNA−プログラム可能なDNAまたはRNAヌクレアーゼタンパク質またはタンパク質複合体を含む、請求項32に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
トランスフェクションは、細菌細胞、哺乳動物細胞、および他の細胞タイプを含む宿主細胞内に外来性物質を組み込むことを指す。バイオテクノロジーの領域では、トランスフェクションは、遺伝子改変細胞を産生するために、外来性DNAまたはRNAを細胞内に導入するのに使用される非常に重要なツールとなっている。トランスフェクションは、安定または一過性のいずれでもよい。安定トランスフェクションでは、導入された遺伝物質は、細胞および核膜を通過することにより宿主細胞核に送達され、宿主ゲノム内に統合され、すべての娘細胞は、付加された物質を有する。対照的に、一過性トランスフェクション(「形質転換」とも呼ばれる)では、核酸は、宿主細胞内に挿入されるが、そのゲノムには統合されない。その結果、外来性遺伝物質は、一時的に発現されるが、トランスフェクトされた細胞の将来世代には受け継がれない。したがって、大規模タンパク質産生、遺伝子療法、創薬、化合物スクリーニング、および長期研究には、安定トランスフェクションが必要であることが理解されると予想される。しかしながら、安定細胞株の開発は、複雑であり、時間および労力がかかり、高価である。
【0003】
生物学的、化学的、および物理的媒介技法を含む、外来性遺伝物質を真核生物宿主細胞内に導入するための種々の方法が存在する。研究に最も一般に使用されるトランスフェクション法は、生物学的であり、キャリアとしてウイルスを使用することを含む。哺乳動物細胞培養およびin vivoでは、アデノウイルス、レンチウイルス、およびオンコレトロウイルスベクターが、遺伝子送達に広く使用されている。ウイルス媒介性トランスフェクションまたはウイルス性「形質導入」は、トランスフェクトするのが難しい細胞タイプの場合でさえ、効率的であり、使用が比較的簡単である。しかしながら、選択したウイルスの免疫原性および細胞傷害ならびにウイルスベクター産生に伴う困難および時間を含む顕著な欠点がある。また、レンチウイルスベクターは、例えば、ユーザーに対して生物学的に有害であり、バイオセーフティレベル2(BSL−2、米国疾病管理予防センターにより定められている)またはエンハンスドBSL−2(BSL−2+)作業条件が必要である。
【0004】
化学的トランスフェクション法が広く使用されている。それらは、外来遺伝子を哺乳動物宿主細胞内に導入するために最初に使用された方法である。一般に使用されている化学的方法としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:緩衝生理食塩水/リン酸塩溶液と組み合わせたリン酸カルシウム;ジエチルエタノールアミンおよびデキストランのコンジュゲート(または「DEAE−デキストラン」)またはポリエチレンイミンなどの陽イオン性ポリマー;商標名Lipofectamine(登録商標)として市販されているものなどの陽イオン性脂質処方物(追加の陽イオン性脂質処方物は、関連する本文および文献、例えばFelgnerら(1994年)J. Biol. Chem. 269巻(4号):2550〜61頁に記載されている);および、ポリアミドアミンデンドリマーなどの活性化デンドリマー(Huddeら(1999年)Gene Therapy 6巻(5号):939〜943頁を参照)。化学的トランスフェクション効率は、細胞タイプ、遺伝物質/化学的トランスフェクション剤比、溶液pH、および他の条件に応じて様々である。化学的トランスフェクション法は、ウイルス性トランスフェクション剤の潜在的な免疫原性および細胞傷害とは関連性がないが、一般的に不良なトランスフェクション効率を示す。さらに、前述の化学的トランスフェクション試薬の多くは、極めてわずかな細胞株、ロバストであり、特に感受性でないもの、例えば、HeLa細胞またはHEK−293細胞でしか使用することができない。
【0005】
物理的トランスフェクション法は、ウイルス性または化学的トランスフェクションのいずれよりも最近の方法であり、エレクトロポレーション、レーザに基づくトランスフェクション、微粒子銃粒子送達、細胞スクイージング(cell squeezing)、および直接マイクロインジェクションなどの技法が挙げられる。こうした方法は、トランスフェクションを達成するように確立されているが、試料に対する広範な物理的損傷の可能性を含む、多数の関連する問題が存在する。
【0006】
前述の方法で遭遇する問題の一部を克服するために、「ソノポレーション」技法を使用してトランスフェクションを達成するための努力がなされている。ソノポレーションは、超音波または音響エネルギーを使用して、宿主細胞による高分子の取込みを可能にするのに十分な細胞膜透過性の一過性変化を誘導することを含み、そうした高分子は、そうでなければ細胞膜を通過することができない。現在までこの領域で行われた研究は、超音波造影剤(UCA)の使用に着目している。ほとんどのUCAは、浮揚性気体が充填されたマイクロバブルであり、医学的超音波検査に使用して、後方散乱による音響反射率を増加させるように設計されている。UCAをソノポレーションに使用することが提案されており、ソノポレーションは、UCAが、まず膨張し、しかしながらその後急速に収縮または崩壊して、マイクロストリームまたは衝撃波を発生させ、それにより細胞膜に剪断応力を及ぼして一時的にまたは恒久的にそうした膜を破砕するように、宿主細胞の近傍でキャビテーションを起こすことによる。より最近では、キャビテーションを引き起こすことになる音響エネルギー未満の音響エネルギーでUCAを使用し、ソノポレーションを生じさせることができることが示唆されている。例えば、Forbesら(2008年)Ultrasound in Med. & Biol. 34巻(12号):2009〜2018頁を参照されたい。しかしながら、このプロセスは、液体媒体ではUCAは液体表面に上昇することになり、その一方で宿主細胞は下方に沈降することになるという事実を含む様々な理由で、大規模には実施されていない。ソノポレーションによるトランスフェクションには、浮揚性マイクロバブルおよび宿主細胞が音響エネルギーの適用時に隣接していることが必要であるため、これは、問題である。別の問題は効率である。現在まで、細胞死を最小限に抑えつつ、トランスフェクトが成功した宿主細胞の数を最大化する、ソノポレーションに基づくトランスフェクション法は報告されていない。さらに、他のトランスフェクション技法と同様に、ソノポレーションは、現在まで、トランスフェクトするのが難しい細胞、例えば初代細胞、特に幹細胞のトランスフェクションには有効でない。
【0007】
理想的なトランスフェクション法は、以下をもたらすと予想される:
【0008】
細胞死を最小限に抑えつつ、トランスフェクトされる宿主細胞の割合を最大化すること、
【0009】
典型的にはトランスフェクションに耐性を示す細胞を含む様々な細胞タイプのトランスフェクションの成功を可能にすること、
【0010】
非哺乳動物細胞および哺乳動物細胞のトランスフェクションを可能にすること、
【0011】
コンフルエントな細胞およびコンフルエントではない細胞のトランスフェクションを可能にすること、
【0012】
DNA、RNA、低分子干渉RNA(siRNA/RNAi)、マイクロRNA(miRNA)、およびDNAプラスミドなどの核酸の細胞へのトランスフェクションを可能にすること、
【0013】
タンパク質および小型分子を含む他のタイプの外因性物質の細胞へのトランスフェクションを可能にすること、
【0014】
(a)Cas9タンパク質およびガイドRNAで構成されるリボ核タンパク質(RNP)および(b)関連プロモーターを有するCRISPRプラスミドを含む、遺伝子発現を実行するための標的細胞機能および機構の修飾のために選択された核酸配列および関連タンパク質と共に機能すること、
【0015】
過度な量の時間または労力を必要としない簡単な実装を含むこと、および
【0016】
実装の速度および容易さの結果として、ハイスループットトランスフェクションでの使用に適合可能であること。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、上記で考察した当技術分野における必要性に対処し、宿主細胞をトランスフェクトするための、ソノポレーションに基づく方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
【0020】
(a)(i)宿主細胞および宿主細胞内に導入しようとする外因性物質を各々が含む少なくとも2つのレザバー、および(ii)音響放射を発生および指向させるための音響放射発生器を含むシステムを提供するステップ、
【0021】
(b)音響放射発生器をレザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、音響放射発生器をレザバーのうちの第1のレザバーと音響的に接続するステップ、
【0022】
(c)音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で第1のレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の導入を促進するステップ、
【0023】
(d)音響放射発生器を第1のレザバーから音響的に分離するステップ、
【0024】
(e)音響放射発生器をレザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、音響放射発生器をレザバーのうちの第2のレザバーと音響的に接続するステップ、および
【0025】
(f)第2のレザバーにつき、ステップ(c)を繰り返すステップ。
【0026】
この実施形態の一態様では、少なくとも2つのレザバーは、複数のレザバー内に含まれており、上記方法は、(g)音響放射発生器を第2のレザバーから音響的に分離し、その後追加のレザバーにつき、ステップ(b)〜(g)を繰り返すことをさらに含む。レザバーは、96ウェルプレート、384ウェルプレート、または1536ウェルプレートなどのマイクロウェルプレートなどの一体型多重レザバーユニット内に含まれていてもよい。この実施形態の一態様では、レザバー内に指向された音響放射は、集束音響放射である。
【0027】
この実施形態の別の態様では、上記方法は、複数の多重レザバーの各々にある宿主細胞が引き続いて迅速にソノポレートされるハイスループットトランスフェクションシステムの状況内で実施される。これは、レザバー間移行時間が、最大で約0.5秒、0.1秒、または0.001秒であることを意味する場合がある。関連する態様では、各レザバーの流体媒体の容積は、約0.5μL〜約500μLの範囲であってもよい。
【0028】
この実施形態の別の態様では、ソノポレーションを誘導するための様式は、発生させた音響放射を宿主細胞に付与するための手段、一般的には、音響活性化可能な局所化流体容積など、流体媒体内に複数の音響活性化可能な部分を含むトランスフェクション刺激物質を含む。局所化流体容積は、照射されたマイクロバブルから宿主細胞への音響エネルギーの移転を促進するために宿主細胞にコンジュゲートされていてもよい気体充填マイクロバブルであってもよい。
【0029】
別の実施形態では、以下のステップを含む、宿主細胞をトランスフェクトするための方法が提供される:
【0030】
(a)宿主細胞と適合する流体媒体に、第1の結合部分で表面機能化された複数の気体充填マイクロバブルを懸濁することにより、マイクロバブル組成物を調製するステップ、
【0031】
(b)マイクロバブルを、宿主細胞タイプに特異的であり、第1の結合部分に連結する第2の結合部分で機能化されている抗体と、流体媒体中でマイクロバブルを抗体と混合することによりコンジュゲートし、それによりマイクロバブル−抗体コンジュゲートを生成するステップ、
【0032】
(c)マイクロバブル−抗体コンジュゲートを、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質と混合することにより、負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートを調製するステップ、
【0033】
(d)任意選択で、負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートを宿主細胞適合性流体媒体で希釈して、それにより、トランスフェクション効率の最適化に有効な負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲート濃度を有する希釈物を提供するステップ、
【0034】
(e)レザバー中の宿主細胞を希釈物と接触させるステップ、および
【0035】
(f)マイクロバブルを、それらの平均共鳴周波数から約15%以内の、またはそれらの平均共鳴周波数の高調波から約15%以内の周波数で共鳴させる条件下でレザバーを音響放射で照射することにより、(e)で提供した宿主細胞−希釈物混合物をソノポレートするステップ。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含むレザバーと音響的に接続するステップ;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、約10℃よりも大きな流体媒体の温度上昇をもたらさずに宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内に指向させるステップを含む方法を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、少なくとも1536個のレザバーを含む一体型多重レザバーユニット内に含まれる選択されたレザバーと音響的に接続するステップであって、選択されたレザバーが、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含む、ステップ;ならびに音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含む方法を提供する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、局所化流体容積が音響的に活性化されて、局所化流体容積の平均共鳴周波数から約15%以内のまたは局所化流体容積の平均共鳴周波数の高調波から約15%以内の周波数で振動する様式で、音響放射をレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含む方法を提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、選択されたサイズから約15%以内のサイズを有する局所化流体容積が音響的に活性化される様式でレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含む方法を提供する。
【0040】
関連する実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、(a)音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および多峰形サイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;(b)音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、第1のモーダルピーク(modal peak)から約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積が音響的に活性化される様式でレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積が、音響エネルギーを宿主細胞付近に移転させるステップ;(c)ステップ(b)を繰り返して、第2のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップ;ならびに(d)任意選択で、ステップ(b)を繰り返して、1つまたは複数の追加のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップを含む方法を提供する。
【0041】
追加の実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた音響照射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させるステップであって、発生させた音響放射の周波数成分が、音響活性化可能な局所化流体容積のサイズ分布と関連するように選択される、ステップを含む方法を提供する。
【0042】
関連する実施形態では、本発明は、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続し、トランスフェクション刺激物質が、レザバー内で空間分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているステップ;ならびに音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた音響放射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップであって、発生させた音響放射の周波数成分が、音響活性化可能な局所化流体容積の空間分布と関連するように選択される、ステップを含む方法を提供する。
【0043】
別の実施形態では、ソノポレーションは、協同して(好ましくは同時に、しかしながら必ずしも同時とは限らない)、ただし異なる周波数で作動する2つの変換器を使用して実施され、変換器の一方は、環状変換器であり、周囲に作動可能に設置され、標準的変換器を封入する。この実施形態では、環状変換器および標準的変換器は、一般的には、異なる周波数で作動することになる。この実施形態の一態様では、環状変換器は、ソノポレーションを引き起こすように選択された周波数で作動させてもよく、標準的変換器は、ソノポレートされた細胞の、例えば、レザバー内への、担体上への、または分析のための分析機器への音響射出(acoustic ejection)をもたらすのに有効な周波数で作動させることができる。この実施形態の別の態様では、2つの変換器の一方は、主に、ソノポレーションのための音響エネルギーを供給するように機能し、他方の変換器は、マイクロバブル−細胞コンジュゲーションを使用しない場合、宿主細胞に対するマイクロバブルの相対的位置を変化させるための音響エネルギーを送達する。
【0044】
別の実施形態では、ソノポレーションは、異なるサイズのマイクロバブルをソノポレートするのに有効な異なる音響周波数を各々が有する複数の音響トーンバースト(acoustic toneburst)を引き続いて照射することにより実施される。複数の音響トーンバーストの各々の音響周波数は、典型的には、約1.5MHz〜約5.0MHzの範囲、より通常は、約2.0MHz〜約2.5MHzの範囲である。
【0045】
さらなる実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積を含むトランスフェクション刺激物質を含む選択されたレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、局所化流体容積が音響的に活性化される様式で音響放射をレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含み、発生される音響放射は、局所化流体容積の少なくとも50%が照射後に依然としてインタクトのままであることを確実にするように選択された音響ソノポレーション圧力におけるものである、方法が提供される。この実施形態の一態様では、音響ソノポレーションは、局所化流体容積のキャビテーションをもたらすことになる最低音圧の約50%〜約90%の範囲である。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
(a)(i)宿主細胞および前記宿主細胞内に導入しようとする外因性物質を各々が含む少なくとも2つのレザバー、および(ii)音響放射を発生および指向させるための音響放射発生器を含むシステムを提供するステップ、
(b)前記音響放射発生器を前記レザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、前記音響放射発生器を前記レザバーのうちの第1のレザバーと音響的に接続するステップ、
(c)前記音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、前記宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で前記第1のレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた前記宿主細胞内への前記外因性物質の導入を促進するステップ、
(d)前記音響放射発生器を前記第1のレザバーから音響的に分離するステップ、
(e)前記音響放射発生器を前記レザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、前記音響放射発生器を前記レザバーのうちの第2のレザバーと音響的に接続するステップ、ならびに
(f)前記第2のレザバーにつき、ステップ(c)を繰り返すステップ
を含む、方法。
(項目2)
前記少なくとも2つのレザバーが、複数のレザバー内に含まれており、前記方法が、(g)前記音響放射発生器を前記第2のレザバーから音響的に分離し、その後、前記複数のレザバーの追加のレザバーにつき、ステップ(b)〜(g)を繰り返すステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記複数のレザバーが、96個のレザバー、384個のレザバー、1536個のレザバー、3456個のレザバー、または3456個よりも多くのレザバーを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記レザバーが、アレイで配置されている、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記レザバーが、一体型多重レザバーユニットを含む担体内に含まれている、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記一体型多重レザバーユニットが、ウェルプレートを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
ステップ(c)〜(e)が、最大で約0.5秒のレザバー間移行時間で実施される、項目1に記載の方法。
(項目8)
ステップ(b)〜(g)の反復が、最大で約0.5秒のレザバー間移行時間で実施される、項目2に記載の方法。
(項目9)
前記レザバー間移行時間が、最大で約0.1秒である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記レザバー間移行時間が、最大で約0.001秒である、項目8に記載の方法。
(項目11)
各レザバー間移行が、前記レザバーを前記音響放射発生器に対して移動させることにより実施される、項目8に記載の方法。
(項目12)
各レザバー間移行が、前記音響放射発生器を前記レザバーに対して移動させることにより実施される、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記音響放射発生器が、集束素子を含み、ステップ(c)が、前記レザバー内へと指向させた音響放射が集束音響放射になるように、ステップ(c)で発生させた音響放射を集束させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記宿主細胞および前記外因性物質が、流体媒体内に含まれている、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記宿主細胞のソノポレーションを誘導するための様式が、発生させた前記音響放射を前記宿主細胞に付与するための手段を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
音響放射を前記宿主細胞に付与するための手段が、トランスフェクション刺激物質を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記トランスフェクション刺激物質が、前記流体媒体内に複数の音響活性化可能な部分を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記音響活性化可能な部分が、局所化流体容積を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記局所化流体容積が、取り囲まれた流体容積である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記取り囲まれた容積が、気体充填マイクロバブルを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
ステップ(c)で発生させ、前記レザバー内へと指向させた音響放射は、前記マイクロバブルが、前記マイクロバブルの平均共鳴周波数から約15%以内の、または前記マイクロバブルの平均共鳴周波数の高調波から約15%以内の波長を有する励起放射を受け取るようなものである、項目16に記載の方法。
(項目22)
ステップ(c)で発生させ、前記レザバー内へと指向させた音響放射は、前記マイクロバブルが、前記マイクロバブルの平均共鳴周波数から約5%以内の、または前記マイクロバブルの平均共鳴周波数の高調波から約5%以内の波長を有する励起放射を受け取るようなものである、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記システムが、前記マイクロバブルから前記細胞への音響放射の移転を可能にするように、前記マイクロバブルが前記宿主細胞と十分に接近することを確実にするための手段をさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記手段が、ステップ(b)の前に、前記マイクロバブルを前記宿主細胞にコンジュゲートすることを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
ステップ(a)で提供された前記システム中の前記宿主細胞が、前記マイクロバブルにコンジュゲートされる、項目23に記載の方法。
(項目26)
各レザバー中の前記流体媒体の容積が、約0.5μL〜約500μLの範囲である、項目14に記載の方法。
(項目27)
前記流体媒体が、等張性緩衝液を含む、項目14に記載の方法。
(項目28)
前記細胞が、前記レザバーの表面で平板培養される、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記細胞が、非接着性である、項目1に記載の方法。
(項目30)
前記外因性物質が、核酸、プラスミド、ペプチド、タンパク質、脂質、ポリサッカリド、小型分子、またはそれらの組み合わせを含む、項目1に記載の方法。
(項目31)
前記外因性物質が、DNAプラスミドを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記外因性物質が、リボ核タンパク質を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記リボ核タンパク質が、宿主細胞核酸を変更することが可能である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記リボ核タンパク質が、ガイドRNA、およびCRISPR関連RNA−プログラム可能な(programmable)DNAまたはRNAヌクレアーゼタンパク質またはタンパク質複合体を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記リボ核タンパク質が、ガイドRNAおよびCas9タンパク質を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記リボ核タンパク質が、ガイドRNA、および触媒的に不活性なCRISPR関連RNA−プログラム可能なDNAまたはRNAヌクレアーゼタンパク質またはタンパク質複合体を含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
ステップ(c)では、ソノポレートすることが、前記レザバーを、約15秒間〜約40秒間にわたって毎秒約10〜約25トーンバーストの速度の音響トーンバーストで照射することを含む、項目1に記載の方法。
(項目38)
各周期的音響トーンバーストが、およそ5サイクル〜10サイクルのトーンバーストである、項目37に記載の方法。
(項目39)
宿主細胞をトランスフェクトするための方法であって、
(a)前記宿主細胞と適合する流体媒体に、第1の結合部分で表面機能化された複数の気体充填マイクロバブルを懸濁することにより、マイクロバブル組成物を調製するステップ、
(b)前記マイクロバブルを、前記宿主細胞のタイプに特異的であり、かつ前記第1の結合部分に連結する第2の結合部分で機能化されている抗体と、前記流体媒体中で前記マイクロバブルを前記抗体と混合することによりコンジュゲートし、それによりマイクロバブル−抗体コンジュゲートを生成するステップ、
(c)前記マイクロバブル−抗体コンジュゲートを、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質と混合することにより、負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートを調製するステップ、
(d)任意選択で、前記負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートを宿主細胞適合性流体媒体で希釈して、それによりトランスフェクション効率の最適化に有効な負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲート濃度を有する希釈物を提供するステップ、
(e)レザバー中の宿主細胞を前記希釈物と接触させるステップ、および
(f)前記マイクロバブルを、それらの平均共鳴周波数から約15%以内の、またはそれらの平均共鳴周波数の高調波から約15%以内の周波数で共鳴させる条件下で、音響放射を前記レザバーに照射することにより、(e)で提供した前記宿主細胞−希釈物混合物をソノポレートするステップ
を含む、方法。
(項目40)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、約10℃よりも大きな前記流体媒体の温度上昇をもたらさずに、前記宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で、前記音響放射を前記レザバー内へと指向させるステップ
を含む、方法。
(項目41)
前記宿主細胞のソノポレーションが、約5℃よりも大きな前記流体媒体の温度上昇をもたらさない、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記宿主細胞のソノポレーションが、約2℃よりも大きな前記流体媒体の温度上昇をもたらさない、項目41に記載の方法。
(項目43)
ソノポレーションが、前記流体媒体の温度を約40℃よりも高く上昇させない、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記レザバー内へと指向される音響放射が、集束音響放射である、項目40に記載の方法。
(項目45)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、少なくとも1536個のレザバーを含む一体型多重レザバーユニット内に含まれる選択されたレザバーと音響的に接続するステップであって、前記選択されたレザバーが、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含む、ステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、前記音響放射を、前記宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で前記レザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた前記宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップ
を含む、方法。
(項目46)
前記レザバー内へと指向される音響放射が、集束音響放射である、項目45に記載の方法。
(項目47)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、前記局所化流体容積が、前記局所化流体容積の平均共鳴周波数から約15%以内のまたは前記局所化流体容積の平均共鳴周波数の高調波から約15%以内の周波数で振動するように音響的に活性化される様式で、前記音響放射を前記レザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された前記局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップ
を含む、方法。
(項目48)
音響的に活性化された前記局所化流体容積が、前記局所化流体容積の平均共鳴周波数から約5%以内であるかまたは前記局所化流体容積の平均共鳴周波数の高調波から約5%以内である周波数で振動される、項目47に記載の方法。
(項目49)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、選択されたサイズから約15%以内のサイズを有する前記局所化流体容積が音響的に活性化される様式で、前記音響放射を前記レザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された前記局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップ
を含む、方法。
(項目50)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
(a)音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および多峰形サイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;
(b)前記音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、第1のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積が音響的に活性化される様式で、前記音響放射を前記レザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された前記局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップ;
(c)ステップ(b)を繰り返して、第2のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップ;ならびに
(d)任意選択で、ステップ(b)を繰り返して、1つまたは複数の追加のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップ
を含む、方法。
(項目51)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた前記音響放射を、前記宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で前記レザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた前記宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップであって、発生させた前記音響放射の周波数成分が、前記音響活性化可能な局所化流体容積のサイズ分布と関連するように選択される、ステップを含む、方法。
(項目52)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップであって、前記トランスフェクション刺激物質は、前記レザバー内で空間分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されている、ステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた前記音響放射を、前記宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で前記レザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた前記宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップであって、発生させた前記音響放射の周波数成分が、前記音響活性化可能な局所化流体容積の空間分布と関連するように選択される、ステップ
を含む、方法。
(項目53)
細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、
音響放射発生器を、宿主細胞、前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積を含むトランスフェクション刺激物質を含む選択されたレザバーと音響的に接続するステップ;ならびに
前記音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、前記音響放射を、前記局所化流体容積が音響的に活性化される様式で前記レザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された前記局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への前記外因性物質の組込みを促進するステップであって、発生させた前記音響放射が、前記局所化流体容積の少なくとも50%が照射後に依然としてインタクトのままであることを確実にするように選択された音響ソノポレーション圧力におけるものである、ステップ
を含む、方法。
(項目54)
前記音響ソノポレーション圧力が、前記局所化流体容積のキャビテーションをもたらすことになる最低音圧の約50%〜90%の範囲である、項目53に記載の方法。
(項目55)
宿主細胞をトランスフェクトするための方法であって、宿主細胞を、宿主細胞適合性流体媒体中にマイクロバブル−抗体コンジュゲートおよび前記宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質を含むレザバー中で接触させるステップ、ならびにこのようにして提供した宿主細胞−希釈物混合物を、協同して、ただし異なる周波数で作動する2つの変換器により発生された音響放射で前記レザバーを照射することによりソノポレートするステップを含み、前記変換器の一方が、環状変換器であり、周囲に作動可能に設置され、標準的変換器を封入する、方法。
(項目56)
前記環状変換器が、約1MHz〜約2.5MHzの範囲の周波数で作動する、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記標準的変換器が、約6MHz〜約20MHzの範囲の周波数で作動する、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記2つの変換器の一方が、主に、ソノポレーションのための音響エネルギーを供給するように機能し、他方の変換器が、ソノポレートされた細胞の前記流体媒体からの音響射出を可能にするように音響エネルギーを送達する、項目55に記載の方法。
(項目59)
前記2つの変換器の一方が、主に、ソノポレーションのための音響エネルギーを供給するように機能し、他方の変換器が、前記宿主細胞に対する前記マイクロバブルの相対的位置を変化させるための音響エネルギーを送達する、項目55に記載の方法。
(項目60)
前記宿主細胞に対する前記マイクロバブルの相対的位置を、前記マイクロバブルおよび前記宿主細胞が互いに接近してソノポレーションが促進されるように変化させる、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記マイクロバブルおよび前記宿主細胞が、ソノポレーションを引き起こすのに有効な音響強度の領域中で互いに接近して位置決めされる、項目58に記載の方法。
(項目62)
ソノポレーションを使用して宿主細胞をトランスフェクトするための方法において、以下:ソノポレーション事象後にトランスフェクション効率を評価すること、トランスフェクション効率を向上させるための候補解決策として少なくとも1つのソノポレーションパラメーターを調整すること、追加のソノポレーション事象を実施すること、および前記追加のソノポレーション事象のトランスフェクション効率を評価して、前記候補解決策の有効性を評価することを含む、向上。
(項目63)
前記追加のソノポレーション事象のトランスフェクション効率に基づき、ソノポレーションパラメーターを変化させるステップをさらに含む、項目61に記載の方法。
(項目64)
前記ソノポレーションパラメーターが、音響強度、変換器出力周波数、およびトーンバーストプロファイルの少なくとも1つから選択される、項目62に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0060】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術的および科学用語はすべて、本発明が関する当業者により一般に理解される意味を有する。本発明の説明に特に重要な特定の用語は、下記で定義されている。
【0061】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」は、状況が明白にそうではないと示さない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば「要素」は、単一の要素だけでなく、2つまたはそれよりも多くの異なる要素の組み合わせなども指す。
【0062】
「音響放射」および「音響エネルギー」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、音波の形態をしたエネルギーの放出および伝搬を指す。他の波形と同様に、音響放射は、下記で考察されているような集束手段を使用して集束させることができる。
【0063】
「集束手段」および「音響集束手段」という用語は、レンズのように作用する音響エネルギー源と分離されているデバイス、または強めあう干渉および弱め合う干渉により焦点における音響エネルギーの収束を達成するように音響エネルギー源を空間的に配置することのいずれかにより、音響波を焦点に収束させるための手段を指す。集束手段は、曲面を有する固体部材のように単純であってもよく、または音響放射を指向させるために回折が使用されるフレネルレンズに見出されるものなど、複雑な構造を備えていてもよい。また、好適な集束手段としては、例えば、当技術分野で公知であり、Nakayasuらの米国特許第5,798,779号およびAmemiyaら(1997年)Proceedings of the 1997 IS&T NIP13 International Conference on Digital Printing Technologies、698〜702頁に記載されているフェーズドアレイ法が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される「音響接続」および「音響的に接続された」という用語は、音響エネルギーを実質的に喪失させずに音響放射を物体間で移転させることが可能になるように、物体が別の物体と直接的または間接的に接触して配置されている状態を指す。2つの物品が間接的に音響的に接続されている場合、それを介して音響放射を伝達することができる媒介物を提供するための「音響接続媒体」が必要である。したがって、エジェクタが、例えば、音響接続媒体をエジェクタと流体との間に挿入して、エジェクタが発生させた音響放射を、音響接続媒体を介して流体内に移転させることにより、レザバー中の流体と音響的に接続されていてもよい。
【0065】
「音響活性化可能な」部分は、特定の波長の音響エネルギーで照射されると超音波周波数での振動が引き起こされる部分である。
【0066】
用語「レザバー」は、本明細書で使用される場合、流体を保持または含むために容器またはチャンバーを指す。その最も単純な形態の1つでは、レザバーは、単に流体と表面とが接触することにより、流体を保持するのに十分な濡れ特性を有する固体表面から構成される。また、レザバーは、ウェルプレート内のウェルおよびチューブラックのチューブまたは他のそのような容器などであってもよい。
【0067】
用語「アレイ」は、本明細書で使用される場合、レザバーの配置、例えばウェルプレート内のウェルなどの、特徴の二次元配置を指す。アレイは、一般的に、例えば、直線グリッド、並列ストライプ、およびスパイラルなどに規則正しく整列されている特徴で構成されるが、不規則アレイも有利に使用することができる。アレイは、パターンが必ずしも規則正しく整列されている特徴を含まないという点で、パターンとは異なる。アレイは、典型的には、しかしながら必ずというわけではないが、少なくとも約4〜約10,000,000個の特徴、一般的には約4〜約1,000,000個の範囲の特徴を含む。
【0068】
「流体媒体」などの用語「流体」は、本明細書で使用される場合、非固形物であり、少なくとも部分的に液体で構成されている物質を指す。流体は、最小限に、部分的に、または完全に溶媒和、分散、または懸濁されている固形物を含んでいてもよい。流体の例としては、限定されないが、水性液体(水をそれ自身および塩水を含む)および有機溶媒などの非水性液体などが挙げられる。また、流体は、細胞または生体分子などを含む生物学的流体であってもよい。
【0069】
用語「核酸」は、自然界で生成されたかまたは実験室で合成されたかに関わらず、オリゴヌクレオチドを含むヌクレオシド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを指し、したがって、プラスミドなどの非天然構築物を包含する。これらの用語は、特に別様に示されていない限り、または状況が異なる解釈を示さない限り、本明細書では交換可能に使用される。核酸としては、2−デオキシ−D−リボースおよびD−リボースを含むものが挙げられ、したがって、それぞれポリデオキシリボヌクレオチドおよびポリリボヌクレオチドを包含し、従来のプリンおよびピリミジン塩基、つまりアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびウラシル(U)、ならびにそれらに保護形態のいずれを含んでいてもよく、例えば、塩基は、当業者に公知であり、関連する本文および文献に記載されている、アセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、またはベンゾイル、ならびにプリンおよびピリミジン類似体などの保護基で保護されている。一般的な類似体としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N
6−メチルアデニン、N
6−−イソペンチル−アデニン、2−メチルチオ−N
6−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチル−アミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、1−メチルプソイドウラシル、クエオシン、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、および2,6−ジアミノプリン。核酸は、本明細書では、限定されないが、以下のものを含む他のタイプの修飾を同様に含んでいてもよい:例えば、ヒドロキシル基の1つまたは複数が、ハロゲン原子または脂肪族基で置換されているか、またはエーテルもしくはアミンなどとして官能化されている、糖部分の修飾;メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アミノアルキルホスホルアミデート、およびアミノアルキルホスホトリエステルなどの非天然ヌクレオチド間連結;ペンダント部分による官能化;インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)の組込み;キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属)などの組込み。
【0070】
用語「ポリペプチド」は、2つまたはそれよりも多くのアミノ酸で構成されている任意の構造も含むことが意図されており、したがって、ジペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質を含み、こうした用語は、本文または状況がそうではないと示さない限り、本明細書では交換可能に使用される。ペプチドのすべてまたは一部を形成するアミノ酸は、20個の従来の天然に存在するアミノ酸、つまりアラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)、ならびに従来のアミノ酸の異性体および修飾などの非従来型のアミノ酸、例えば、D−アミノ酸、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素修飾されたアミノ酸、β−アミノ酸、アミノ酸を模倣するように設計された構築物または構造(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、β−アラニン、ナフチルアラニン、3−ピリジルアラニン、4−ヒドロキシプロリン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、およびノル−ロイシン)、および例えば、Rosenbergらの米国特許第5,679,782号に記載されているような他の非従来型のアミノ酸のいずれであってもよい。また、ペプチドは、天然に存在するアミド−CONH−連結が、ペプチド骨格内の1つまたは複数の部位で、N置換アミド、エステル、チオアミド、レトロペプチド(retropeptide)(−NHCO−)、レトロチオアミド(retrothioamide)(−NHCS−)、スルホンアミド(−SO
2NH−)、および/またはペプトイド(N置換グリシン)連結などの非従来型の連結と置換されている非ペプチド骨格連結を含んでいてもよい。したがって、ペプチドは、プソイドペプチドおよびペプチド模倣物を含むことができる。ペプチドは、(a)天然に存在していてもよく、(b)化学合成により生成されてもよく、(c)組換えDNA技術により生成されてもよく、(d)より大きな分子の生化学的または酵素的断片化により生成されてもよく、(e)上記に列挙されている方法(a)〜(d)の組み合わせから生じる方法により生成されてもよく、または(f)ペプチドを生成するための任意の他の手段により生成されてもよい。
【0071】
例えば「実質的に同一のレザバー」などの語句の「実質的に」という用語は、音響特性が大きく逸脱しないレザバーを指す。例えば、「実質的に同一のレザバー」の音響減衰は、互いに10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、および最も好ましくは最大で0.1%だけ逸脱する。用語「実質的に」の他の使用は、類似の定義を含む。
【0072】
本発明は、非哺乳動物細胞および哺乳動物細胞、コンフルエントな細胞およびコンフルエントではない細胞を含む様々な細胞タイプのトランスフェクションを可能にする様式で音響放射を使用して、細胞をトランスフェクトするための方法を提供する。本明細書に記載のソノポレーションを使用して、上記方法は、限定されないが、プラスミド、リボ核タンパク質、および他の種を含む外因性物質の宿主細胞への組込みを可能にする。下記に詳述することになるが、上記方法は、主に、多数の細胞含有レザバーで引き続いて実施することができるため、ハイスループットトランスフェクションでの使用に適している。
【0073】
一実施形態では、細胞をトランスフェクトするための方法は、(a)(i)宿主細胞およびソノポレーションにより誘導されたトランスフェクションを介して宿主細胞内に導入しようとする外因性物質を各々が含む少なくとも2つのレザバー、および(ii)音響放射を発生および指向させるための音響放射発生器を含むシステムを提供するステップ、(b)音響放射発生器をレザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、音響放射発生器をレザバーのうちの第1のレザバーと音響的に接続するステップ、(c)音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で第1のレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の導入を促進するステップ、(d)音響放射発生器を第1のレザバーから音響的に分離するステップ、(e)音響放射発生器をレザバーの他のいかなるものとも同時に音響的に接続せずに、音響放射発生器をレザバーのうちの第2のレザバーと音響的に接続するステップ、および(f)第2のレザバーにつき、ステップ(c)を繰り返すステップを含む。
【0074】
一般的には、しかしながら必ずというわけではないが、第1および第2のレザバーは、複数のレザバー内に含まれており、上記方法は、レザバーの一部またはすべてで繰り返される。これが該当する場合、上記方法は、(f)の後に追加のステップ、すなわち(g)音響放射発生器を第2のレザバーから音響的に分離し、他のレザバーにつき、ステップ(b)〜(g)を繰り返すステップを含む。要素のモジュラリティおよび互換性を提供するため、デバイスは、時には、複数の取外し可能なレザバー、例えば、チューブラックのチューブなどと共に使用されることが好ましい場合がある。レザバーは、パターンでまたはアレイで、典型的には、各レザバーに個々の系統的なアドレス指定能力(systematic addressability)を提供するようにアレイで配置されている。レザバーの各々は、個別のまたは独立型の容器として提供されていてもよいが、多数のレザバーが必要とされる状況では、例えば、ハイスループットトランスフェクション法では、レザバーは、一体型多重レザバーユニット内に含まれていることが好ましい。多重レザバーユニットは、レザバーとしての役目を果たす個々のウェルを有するウェルプレートであってもよい。デバイスでの使用に好適な多ウェルプレートは市販されており、例えば、1ウェルプレート当たり96、384、1536、または3456個のウェルを含んでいてもよく、全スカートを有していてもよく、半スカートを有していてもよく、またはスカートを有していなくともよい。ウェルプレートまたはマイクロタイタープレートは、一般に使用される実験室物品になっている。Society for Laboratory Automation and Screening(SLAS)が設立されており、米国国家規格協会と協力して、占有面積および寸法規格ANSI/SLAS 1−2004を含む、マイクロタイタープレートの規格を維持している。そのようなウェルプレートのウェルは、一般的に、直線的アレイの形態である。
【0075】
このような市販のウェルプレートが入手可能であるが、少なくとも約10,000個のウェル、または100,000〜500,000個ものもしくはそれよりも多くのウェルを含む他の幾何学的構成の注文仕様のウェルプレートの製造および使用を除外するものではない。さらに、レザバーの構築に使用される物質は、音響的に適合し、そこに含まれる流体試料と適合性でなければならない。水に基づく流体の場合、多くの物質が、レザバーの構築に好適であり、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:酸化ケイ素および酸化アルミニウムなどのセラミックス、ステンレス鋼および白金などの金属、ならびにポリエステル、ポリプロピレン、環式オレフィンコポリマー(例えば、Nippon ZeonのZeonex(登録商標)およびTiconaのTopas(登録商標)などの市販されているもの)、ポリスチレン、およびポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー。
【0076】
加えて、複数のレザバーの各々にある宿主細胞を迅速に引き続いてトランスフェクトするために必要な移動量および時間を低減するために、各レザバーの中心は、隣のレザバー中心から、約1センチメートル以内、例えば、約1.5ミリメートル以内、約1ミリメートル以内、および約0.5ミリメートル以内に位置することが望ましい。こうした寸法は、レザバーのサイズを最大容積に限定する傾向がある。レザバーは、典型的には、約1mL以下、好ましくは約500μL以下、およびより好ましくは約250μL以下の流体、および一部の場合では、100μL、50μL、25μL、10μL、5μL、1μL、または0.5μL以下の流体を含むように構築されている。したがって、作業中、レザバーの流体媒体の容積は、約0.5μL〜約500μLの範囲にある。一貫性を容易にするために、レザバーは、実質的に音響的に区別不能であることも好ましい。
【0077】
超音波変換器を含む音響放射発生器を使用して音響放射を発生させ、発生させた音響放射を、トランスフェクトしようとする宿主細胞を含むレザバー内に指向させる。超音波変換器は、典型的には、アクチュエーター、およびアクチュエーターにより生成された音響エネルギーを集中させる集束素子を含み、アクチュエーターの例としては、圧電素子および磁歪素子(magnetorestrictive element)が挙げられ、一般的に、これに限定されないが、本明細書では圧電変換器が好ましい。作動中、アクチュエーターは、超音波駆動周波数のシグナルにより駆動され、活性物理素子(active physical element)で超音波振動を生成する。こうした振動は、音響接続媒体内へと伝達され、それを介して、流体試料を収容するレザバー内へと伝達される。単一の変換器を使用してもよく、または一部の場合では、変換器アセンブリを含む多重素子音響放射発生器を使用してもよい。例えば、線形音響アレイ、曲線音響アレイ、またはフェーズド音響アレイを使用して、複数のレザバーに同時に伝達される音響放射を発生させることが有利である。好ましい実施形態では、単一の音響放射発生器が使用される。本明細書で有利に使用することができる音響放射発生器の幾つかの例は、Labcyte Inc.(San Jose、CA)から入手可能なAcoustic Droplet Ejection(ADE)システムに組み込まれているものであり、例えば、Stearnsらの米国特許第6,416,164号、Ellsonらの第6,666,541号、Ellsonらの第6,603,118号、Ellsonらの第6,746,104号、Ellsonらの第6,802,593号、Ellsonらの第6,938,987号、Mutzらの第7,270,986号、Ellsonらの第7,405,395号、およびMutzらの第7,439,048号に記載されている。Labcyteの市販のADEシステムの例としては、Echo(登録商標)525、Echo(登録商標)550、およびEcho(登録商標)555液体ハンドラーを含むEcho(登録商標)500シリーズの液体ハンドラーシステムが挙げられる。
【0078】
上記で説明されているように、本明細書の音響放射発生器は、好ましくは集束素子を含む。当技術分野で公知の曲面またはフレネルレンズを含む様々な集束手段はいずれも、本発明と共に使用することができる。そのような集束手段は、Loveladyらの米国特許第4,308,547号およびQuateらの米国特許第5,041,849号、ならびに米国特許出願公開第2002037579号に記載されている。
【0079】
ウェルプレートまたは他のタイプのアレイ内などの、複数のレザバーの各々にある宿主細胞をトランスフェクトする場合、本方法は、各ソノポレーション事象後に、照射しようとする次のレザバーに音響放射発生器が整列されるように、音響接続関係にあるレザバーの各々および音響放射発生器を位置決めするための手段と合わせて実施される。位置決め手段は、レザバーを含む担体(例えば、移動可能なステージに位置決めされていてもよい)を音響エジェクタに対して移動させるために、またはその逆のために、トランスフェクションシステム内に組み込まれていてもよい。それにより、レザバーの迅速で引き続いた照射を容易に促進することができる。両タイプの位置決め手段、つまりエジェクタ位置決め手段またはレザバーもしくはレザバー担体位置決め手段は、例えば、モーター、レバー、プーリー、ギア、またはそれらの組み合わせ、または他の電気機械的もしくは機械的手段から構築することができる。レザバー間移行時間は、好ましくは、最大で約0.5秒、好ましくは最大で約0.1秒、および最適には最大で約0.001秒である。
【0080】
注目すべきことには、音響放射発生器は、照射しようとするレザバーに、したがって同様にレザバーの内容物に対して音響接続関係になければならず、複数のレザバーを引き続いて照射する場合、音響放射発生器は、ソノポレーション後に、各々の照射されたレザバーから分離され、その後、次のソノポレーション事象のために次のレザバーと音響的に接続される。したがって、プロセスは、音響放射発生器を、照射しようとする第1のレザバーと音響的に接続して、第1のレザバーを照射すること、その後、音響放射発生器を第1のレザバーから音響的に分離すること、その後、音響放射発生器を次のレザバーと音響的に接続して、次のレザバーを照射することなど、ならびに所望の数のレザバーが照射されるまでプロセスを継続することを含む。レザバーの内容物と直接接触させることにより音響的接続を達成することが可能であるが、好ましい手法は、音響放射発生器の任意の部分(例えば、集束手段)を、レザバーの内容物と接触させずに、音響放射発生器を、レザバーと、およびしたがってその内容物と音響的に接続することである。
【0081】
音響放射発生器は、各レザバーの外部表面と直接的に接触してもまたは間接的に接触してもよい。直接的な接触の場合、音響放射発生器をレザバーと音響的に接続するためには、直接的な接触が、効率的な音響エネルギー移転を確実にするように完全に共形的(conformal)であることが好ましい。すなわち、音響放射発生器およびレザバーは、嵌め合い接触に適した対応する表面を有するべきである。したがって、音響接続が、集束手段を介して音響放射発生器とレザバーとの間で達成される場合、レザバーは、集束手段の表面プロファイルに対応する外側表面を有することが望ましい。共形接触でない場合、音響エネルギー移転の効率および精度が損なわれる場合がある。加えて、多数の集束手段は曲面を有するため、直接接触手法は、特異的に形成された逆表面を有するレザバーの使用を必要とする場合がある。
【0082】
最適には、音響放射発生器と各レザバーとの間の間接的接触による音響接続は、以下の文献に記載されているように達成される:Stearnsらの米国特許第6,416,164号、Ellsonらの第6,666,541号、Ellsonらの第6,603,118号、Ellsonらの第6,746,104号、Ellsonらの第6,802,593号、Ellsonらの第6,938,987号、Mutzらの第7,270,986号、Ellsonらの第7,405,395号、およびMutzらの第7,439,048号。これらは、上記で引用されている。一般的に、音響接続媒体は、音響放射発生器と照射しようとするレザバーの底部との間に配置される。音響接続媒体は、音響接続流体、好ましくは、音響放射発生器の最上部表面と、例えば、音響放射発生器の最上部表面に位置する音響集束手段と、レザバーの下側とで共形接触する音響的に均質な物質であってもよい。加えて、音響接続流体が、照射されているレザバーの流体媒体とは異なる音響特性を有する物質を実質的に含まないことを確実にすることが重要である。使用の際、第1のレザバーは、音響放射発生器により発生された音響放射が、例えば集束手段により音響接続媒体内へと指向され、次いで音響放射がレザバー内へと伝達されるように、音響放射発生器と音響的に接続される。システムは、単一の音響エジェクタを含んでいてもよく、または以前に注記されているように、複数のエジェクタを含んでいてもよい。単一エジェクタ設計は、液滴配置の精度ならびに液滴サイズおよび速度の一貫性が、単一エジェクタを用いるとより容易に達成されるため、一般的に、複数のエジェクタ設計よりも好ましい。しかしながら、本発明は単一エジェクタ設計に限定されない。
【0083】
本明細書で以前に説明されているように、ソノポレーションによりトランスフェクトしようとする宿主細胞を含むレザバーは、宿主細胞および宿主細胞内に導入しようとする外因性物質を含む。宿主細胞および外因性物質は、流体媒体、つまり、緩衝液、例えばダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)などの等張性緩衝液などの宿主細胞適合性流体媒体中に含まれていることが有利である。「適合性」流体媒体とは、細胞が、少なくとも5分間生存することができる媒体を意味する。
【0084】
宿主細胞および宿主細胞タイプ:細胞は、必要な因子をすべて有する適切な媒体で増殖されるべきであり、媒体は、夾雑物を含んでいてはならない。レザバー内に含まれる流体媒体中の細胞密度は最適化されるべきである。なぜなら、低すぎる密度は、細胞間接触の非存在下で増殖不良を引き起こす場合があり、高すぎる密度は、接触阻害をもたらして、細胞が核酸または他の高分子の取込みに対して耐性となる場合があるためである。宿主細胞は、一般に、細胞株など、被験体から採取された細胞に由来する。一般にうまくいく哺乳動物細胞株だけでなく、一部の場合、従来公知の方法ではトランスフェクトするのが非常に難しい細胞を含む、多数のタイプの哺乳動物細胞を、本発明の方法を使用してトランスフェクトすることができる。一般にうまくいく哺乳動物細胞株としては、例えば、以下のものが挙げられる:ヒト細胞株HeLa、HepG2、HUVEC、MCF7、H1ヒト胚性、GM12878、K562、およびジャーカットE6.1;マウス細胞株NIH−3T3およびMEF(マウス胚性線維芽細胞);およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびアフリカミドリザル腎臓(COS−7)細胞などの他の細胞株。通常はトランスフェクトが非常に難しいが、本方法を使用して効率的にトランスフェクトすることができる細胞としては、例として、B細胞およびT細胞を両方とも含むリンパ球;あらゆる起源の初代細胞;ニューロン;あらゆるタイプの幹細胞;および卵母細胞が挙げられる。この後者の群内の具体的な細胞株としては、ヒトリンパ芽球様株GM12878およびジャーカットE6.1、ならびにH1ヒト胚性細胞が挙げられる。
【0085】
本方法を使用してトランスフェクトすることができる細胞株の具体的な例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:C8161、CCRF−CEM、MOLT、mIMCD−3、NHDF、HeLa−S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panc1、PC−3、TF1、CTLL−2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH−77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK−UT、CaCo2、P388D1、SEM−K2、WEHI−231、HB56、TIB55、ジャーカット、J45.01、LRMB、Bcl−1、BC−3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK−52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS−1、COS−6、COS−M6A、BS−C−1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚性線維芽細胞、3T3 Swiss、3T3−L1、132−d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293−T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A−549、ALC、B16、B35、BCP−1細胞、BEAS−2B、bEnd.3、BHK−21、BR293.BxPC3.C3H−10T1/2、C6/36、Cal−27、CHO、CHO−7、CHO−IR、CHO−K1、CHO−K2、CHO−T、CHO Dhfr−/−、COR−L23、COR−L23/CPR、COR−L23/5010、COR−L23/R23、COS−7、COV−434、CML T1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK−293、HeLa、Hepa1c1c7、HL−60、HMEC、HT−29、ジャーカット、JY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma−Mel 1−48、MC−38、MCF−7、MCF−10A、MDA−MB−231、MDA−MB−468、MDA−MB−435、MDCK II、MDCK 11、MOR/0.2R、MONO−MAC6、MTD−1A、MyEnd、NCI−H69/CPR、NCI−H69/LX10、NCI−H69/LX20、NCI−H69/LX4、NIH−3T3、NALM−1、NW−145、OPCN/OPCT細胞株、Peer、PNT−1A/PNT2、RenCa、RIN−5F、RMA/RMAS、Saos−2細胞、Sf−9、SkBr3、T2、T−47D、T84、THP1細胞株、U373、U87、U937、VCaP、ベロ細胞、WM39、WT−49、X63、YAC−1、YAR、およびそれらのトランスジェニック変種。細胞株は、当業者の公知の様々な供給源から入手可能である(例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)(Manassas、VA)を参照。
【0086】
宿主細胞を含む流体媒体中の外因性物質、つまり、トランスフェクションにより宿主細胞内に組み込もうとする外因性物質は、生細胞内に導入して、意図されている機能、結果、または利益を提供することができる任意の物質であってもよい。トランスフェクションは、一般的に、細胞のDNAに付加、変更、および/または調節するように分子をレシピエント細胞内に導入することであると定義されるが、本発明の状況では、この定義は、本発明の方法が、宿主細胞DNAの構造および機能に最終的に影響を及ぼす分子部分を含むがそれらに限定されない幅広く様々な分子部分の宿主細胞内への組込みを促進する限り、拡大されてもよい。「外因性物質」としては、この用語が本明細書で使用される場合、限定されないが、以下のものを含む:DNA、RNA、mRNA、低分子干渉RNA(siRNA/RNAi)、マイクロRNA(miRNA)、宿主細胞でタンパク質を発現することになる遺伝子をコードするDNAプラスミド、エンハンサーまたはRNA)を生成するような他の目的に有用なDNAプラスミド、CRISPRのための相同組換えドナーなどの目的の部分をコードする小型線形DNAなどの核酸;キナーゼ、サイトカイン、クロマチンリモデリング酵素、視覚化用の蛍光タンパク質、および通常タンパク質の変異体バージョンを含むタンパク質およびポリペプチド;ならびに小型分子、特に、特定の経路(例えば、薬物または毒素経路)の阻害剤または活性化因子、放射性標識ヌクレオチドまたはアミノ酸、コレステロール、グルコース、および他の糖などの、生物学的に有用な(例えば、生物学的プロセスの調節を支援することができる)低分子量の(<約900ダルトン)有機化合物(例えば、「小型分子」下のNCBI BioSystemsデータベースエントリーを参照);脂質、リポタンパク質、リポポリサッカリド、リポポリサッカリド、およびポリサッカリドなどの脂質性およびサッカリド性物質;ならびにCRISPR編集に使用されるCasタンパク質およびタンパク質複合体などのリボ核タンパク質。
【0087】
好ましい実施形態では、外因性物質は、DNAプラスミドなどの核酸、またはCas:ガイドRNAリボ核タンパク質などのリボ核タンパク質を含む。
【0088】
核酸:宿主細胞内に導入することができる外因性核酸は、遺伝子、遺伝子断片、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの形態であってもよく、または生物学的活性または他の利益を有する任意の他のタイプの核酸であってもよい。本方法を使用して宿主細胞内に導入される核酸は、一般的には、しかしながら必ずというわけではないが、好適な調節領域(例えば、プラスミドであってもよいベクターのプロモーター配列)の転写および翻訳制御下にある少なくとも1つの構造遺伝子を含む構築物の形態であり、次いで、前述の構造遺伝子によりコードされるペプチドまたはタンパク質の発現を可能にする。当技術分野で公知のように、そのような構築物は、通常、プロモーター以外の1つまたは複数の調節エレメントを含む。最も一般には、外因性核酸は、本方法を使用して、DNAプラスミドにより宿主細胞内に導入される。他の好適なベクターが公知であり、関連する本文および文献に記載されている。核酸による宿主細胞のトランスフェクションは、一部の場合では、陽イオン性脂質処方物、陽イオン性ポリマー(例えば、DEAE−デキストランまたはポリエチレンイミン)、またはデンドリマーなどのトランスフェクション促進剤を必要とする場合がある。上記で示唆されている本発明の方法は、実施例5で確立されているCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート:clustered regularly interspaced short palindromic repeat)プラスミドと組み合わせてもうまく機能する。CRISPRプラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする場合、幾つかの軽微な修飾が必要または望ましい場合がある。例えば、CRISPRプラスミドは、比較的大型であるため、上流処理に供して、その全体的サイズを低減してもよい。その代わりにまたは加えて、JetPEI(登録商標)(Polyplus Transfection)などのトランスフェクションヘルパ−試薬を使用してもよい。
【0089】
CRISPRおよびRNP:本方法は、リボ核タンパク質(RNP)を含む幅広く様々なタンパク質との併用に有用であることが強調されるべきである。RNPは、RNAと結合したタンパク質である。つまり、RNPは、リボ核酸およびRNA結合タンパク質の複合体である。そのような複合体は、DNA複製および遺伝子発現の調節を含む、多くの生物学的機能に重要である。本状況では、ゲノム編集分野で最近急速に重要性を増しているCRISPR−Cas機序を強化する操作されたRNPが特に重要である。例えば、Donohoueら、Trends Biotechnol.(2017年8月1日)を参照されたい。当技術分野で公知のように、CRISPRに基づくトランスフェクションは、CRISPR関連タンパク質または「Cas」タンパク質、ならびにRNA、つまりcrRNA(宿主DNAの標的配列の位置を特定する)およびtracrRNA(crRNAと塩基対合して、RNA二重鎖を形成する)の組み合わせ、またはcrRNAおよびtracrRNAの両方を組み込む単鎖ガイドRNA(sgRNA)のいずれでもよい「ガイドRNA」(gRNA)で構成されているRNPを使用することを含む。
【0090】
Casタンパク質、通常はCas9またはその相同体、およびガイドRNA、「単鎖ガイド」RNA(sgRNA)またはcrRNAおよびtracrRNAの組み合わせのいずれかは、CRISPRトランスフェクション系の主成分である。CRISPR成分のバリエーションが可能であり、例えば、Zhangらの米国特許第8,771,945号に記載されている。S.pyogenesまたはS.pneumoniaeに由来するCas9などのCas9が、最も一般に使用されるCRISPRヌクレアーゼであるが、他のCasタンパク質、特にCfp1を、Cas9の代わりに使用することができ、他のCasタンパク質としては、限定されないが、以下のものが挙げられることが理解されると予想される:Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2.Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらの相同体、またはそれらの修飾されたバージョン。本明細書でCRISPRトランスフェクションと共に使用されるCasタンパク質は、種々の方法の1つで変更または修飾されていてもよく、例えば、標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠如する変異したCasヌクレアーゼが、多くの状況で有用であり得る。例えば、S.pyogenesに由来するCas9のRuvC I触媒ドメインのアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)を含むCRISPR−Cas9 D10Aニッカーゼは、二本鎖ではなく、ポリヌクレオチド二重鎖の一本鎖を切断する。別の例として、前述の変異およびHNHドメインにH840A変異を含む、「dCas9」は、ポリヌクレオチドを切断する能力を完全に欠如する。例えば、Qiら(2013年)Cell 152巻:1173〜1183頁を参照されたい。さらなる例として、Casヌクレアーゼは、融合タンパク質ドメインが、追加の機能、例えば転写活性化または抑制活性または核酸結合活性などを提供するように選択されている融合タンパク質の一部である。
【0091】
一般的に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を誘導するのに十分な、標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。ガイド配列は、任意の標的配列を標的とするように選択することができる。一部の実施形態では、標的配列は、細胞のゲノム内の配列、特に標的ゲノムに固有な配列である。ガイド配列は、いくつもの目的のために、宿主細胞のポリヌクレオチドの標的化を可能にして、標的とする領域を欠失、挿入、転座、不活化、または活性化することにより標的ポリヌクレオチドを修飾するように選択することができる。したがって、CRISPR複合体は、遺伝子療法、薬物スクリーニング、疾患診断および予後を含む多数の分野に幅広い適用を有する。したがって、CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、多くの疾患関連遺伝子およびポリヌクレオチドならびにシグナル伝達生化学的経路関連遺伝子およびポリヌクレオチドを含むことができる。多数の疾患関連遺伝子およびポリヌクレオチドが、当技術分野で公知であり、シグナル伝達生化学的経路関連遺伝子およびポリヌクレオチドも同様である。例えば、上記のZhangらの米国特許第8,771,945号を参照されたい。
【0092】
宿主細胞をソノポレートするための本方法は、音響放射発生器により発生された音響放射を宿主細胞に付与するための手段を含む。一般的には、しかしながら必ずというわけではないが、音響放射を宿主細胞に付与するための手段は、トランスフェクション刺激物質、つまり音響放射発生器による照射時に超音波的な振動を引き起こし、超音波振動を近隣の宿主細胞に移転する物質を含む。トランスフェクション刺激物質は、粒子、ビーズ、または局所化流体容積の形態の複数の音響活性化可能な部分を含んでいてもよく、「局所化流体容積」は、輪郭形成特徴(delineating feature)により取り囲まれていても取り囲まれていなくともよい空間的に局所化された容積の流体を指し、局所化流体容積は、通常は、周囲流体とは異なる物理的特性を有するが、それが必要というわけではない。取り囲まれていない局所化流体容積としては、局所化された脂質性または疎水性領域が、親水性(例えば、水性)流体内に含まれているか、または局所化された親水性(例えば、水性)領域が、脂質性または疎水性流体内に含まれている流体組成物が挙げられる。取り囲まれた局所化流体容積としては、流体含有マイクロカプセル、例えば、液体含有およびゲル含有マイクロカプセルが挙げられ、カプセル壁は、カプセル内部と外部流体との間である程度の物質交換が可能であってよくまたは可能でなくともよく、流体は、懸濁粒子を含んでいてもよくまたは含んでいなくともよい。さらに他のタイプの取り囲まれた容積は、含まれている流体と不混和性であってもよくまたは不混和性でなくともよい第1の流体で構成されており、不混和性物質の分子層が、流体内部と流体外部との間に障壁を提供するように第1の流体を取り囲む。例えば、Mutzらの米国特許第7,270,986号を参照されたい。
【0093】
本発明の一実施形態では、トランスフェクション刺激物質は、宿主細胞および外因性物質と共に流体媒体内に組み込まれる気体充填マイクロバブルを含む。
【0094】
本明細書の好ましい実施形態で使用されるマイクロバブルは、例えば、標的化リガンドの付着により機能化することができる外側表面を有するシェル内部に気体コアを被包する小型球体である。以降、標的化リガンドは、宿主細胞に特異的な抗体に存在する第2の結合部分に会合することができ、第1および第2の結合部分の会合が、マイクロバブル−宿主細胞複合体をもたらすことができる限り、時には「第1の結合部分」と称されることになる。マイクロバブル−宿主細胞複合体の形成は、マイクロバブルにより受け取られ、それらを振動させる音響放射が宿主細胞に伝達され、ソノポレーションを促進することを確実にするための1つの技法である。理論により束縛されることは望まないが、音響放射の宿主細胞への伝達は、細胞膜または細胞壁を物理的に破壊し、DNAまたはRNPなどの大型分子の細胞取込みを可能にする一過性の細孔を生成することにより、ソノポレーションを促進すると考えられる。
【0095】
典型的なマイクロバブル物質、つまり典型的なシェル物質の例としては、限定されないが、脂質、ポリマー、アルブミン、およびガラクトースが挙げられるが、最も一般には脂質性物質が使用される。また、より長期間持続する、つまり分解(生分解または他のプロセスによる)に耐性の他のタイプのシェル物質、例えば、被覆ガラスビーズまたは架橋ポリマーを使用することができる(Cohenらの米国特許第5,487,390号を参照)。好適なマイクロバブルとしては、医学的造影画像法(つまり、コントラスト増強超音波での)、細胞単離、および細胞分離に使用されるマイクロスフェア型の製品が挙げられる。したがって、種々の状況におけるマイクロバブル造影剤の使用に関し、好適なマイクロバブルシェル物質および表面機能化技法を開示するRychakらの米国特許出願公開第2015/0219636号A1(出願人Targeson,Inc.、San Diego、CA)に記載されているシェル物質も、本方法と共に使用することができる。本発明と共に使用するための好ましいマイクロバブルシェル物質は、ソノポレーション中のキャビテーションの可能性を最小限に抑えるために、比較的弾性である。マイクロバブルの気体コアは、ペルフルオロカーボン、空気、または窒素であってもよいが、ペルフルオロカーボンが最も一般である。超音波周波数場で振動し、次いで、本トランスフェクション法中にマイクロバブルの共鳴を引き起こすのは、マイクロバブルの気体コアである。根底にある機序は、明確には特定されていないが、本明細書に記載のような、宿主細胞に繋留されたマイクロバブルの音響誘導共鳴は、トランスフェクションが成功する要因であることが強調されるべきである。
【0096】
本発明と共に有利に使用することができる市販の超音波造影剤としては、例として、以下のものが挙げられる:Targesphere(登録商標)およびTargesphere(登録商標)SA(Targeson、San Diego、CAから入手可能;Tlaxaら(2010年)Ultrasound Med. Biol.36巻(11号):1907〜18頁を参照);Optison(登録商標)(GE Healthcare)、オクタフルオロプロパン気体コアを有するアルブミンマイクロバブル;脂質/ガラクトースシェルおよび空気コアを有するLevovist(登録商標)(Schering);ペルフレキサンコアを有するImagent(登録商標)脂質マイクロスフェア;オクタフルオロプロパン気体コアを有するDefinity(登録商標)脂質マイクロスフェア;ならびにLumason(登録商標)六フッ化硫黄脂質マイクロバブル(以前は、Sonovue(登録商標))およびMicroMarkerマイクロバブル(Bracco Imaging S.p.A./Fujifilm Visualsonics)。Akadeum Life Sciences(Ann Arbor、MI)から入手可能なストレプトアビジン被覆ガラスマイクロバブルなど、他の目的が意図されているマイクロバブルも使用することができる。
【0097】
本発明の一実施形態では、マイクロバブルは、照射されたマイクロバブルから細胞への音響エネルギーの移転を促進するために、宿主細胞にコンジュゲートされており、それにより、刺激された細胞膜または細胞壁を介した細胞内への外因性物質のトランスフェクションが可能になる。マイクロバブル−抗体コンジュゲートの調製は、典型的には、マイクロバブルを第1の結合部分で機能化し、その後、機能化されたマイクロバブルを宿主細胞タイプに特異的な抗体と組み合わせることを含み、抗体は、マイクロバブルに存在する第1の結合部分と連結する第2の結合部分で機能化されている。混合は、宿主細胞適合性流体媒体中で実施される。マイクロバブル−抗体コンジュゲートを調製する際、質量/容積比は、典型的には、2×10
7個のマイクロバブルに対して約0.5μg〜5μg抗体の範囲であり、より典型的には、2×10
7個のマイクロバブルに対して約0.5μg〜3μg抗体の範囲であり、最も通常は、2×10
7個のマイクロバブルに対して約0.5μg〜1.5μg抗体の範囲である。
【0098】
第1の結合部分と第2の結合部分との間の付着、つまりマイクロバブル−細胞複合体をもたらす連結を形成する「結合対」は、共有結合性であってもよく、または非共有結合性であってもよいが、典型的には非共有結合性である。共有結合性付着の例としては、第1および第2の結合部分の一方としての役目を果たす遊離アミノ基と、第1および第2の結合部分の他方としての役目を果たすカルボキシル基との間で形成されるアミド連結が挙げられる。非共有結合性付着の様式としては、例えば、イオン結合、水素結合、吸着、または物理的な固定化が挙げられる。例示的な結合対としては、以下のものが挙げられる:対応する抗体またはその結合部分もしくは断片と組み合わせた任意のハプテン性または抗原性化合物(例えば、ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン)および非免疫学的結合対(例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、ホルモン[例えば、チロキシンおよびコルチゾール]−ホルモン結合タンパク質、受容体−受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アセチルコリン受容体−アセチルコリンまたはその類似体)、IgG−プロテインA、レクチン−炭水化物、酵素−酵素コファクター、酵素−酵素阻害剤、ならびに核酸二重鎖を形成可能な相補的ポリヌクレオチド対)など。典型的には、市販のビオチン化抗体およびストレプトアビジンで表面機能化されているマイクロバブルが使用されるビオチン−ストレプトアビジン付着が最も一般に使用される。
【0099】
その後、マイクロバブル−抗体コンジュゲートを外因性物質と混合することにより、「負荷」マイクロバブル−抗体コンジュゲートを調製することができ、外因性物質は、本明細書で以前に記載されている通りであり、例えば、DNAプラスミドまたはCRISPR RNPである。マイクロバブル−抗体コンジュゲートに負荷するための好ましい濃度/個数比は、1.25×10
7個のコンジュゲート(1mL当たり5×10
8個)に対して約1〜10μMの範囲のRNPであり、最適には、1.25×10
7個のコンジュゲートに対して約3〜6μMの範囲のRNPである。これらは代表的な範囲に過ぎず、任意の外因性物質の好適な濃度/個数比を経験的に決定することができる限りで、限定することは意図されていない。この点で、例えば、宿主細胞適合性流体で希釈することにより、流体媒体中の負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートの濃度を調整することができ、流体は、ステップ(a)で使用される流体媒体と同じであってもよくまたは同じでなくともよい。希釈の程度は、細胞健康状態、およびしたがってより良好なトランスフェクション効率にもつながる環境を提供するように最適化される。希釈の程度の最適化は、実施例に記載されている。一般的に、あまりに希薄な懸濁物は、十分な度合いのトランスフェクションを提供せず、濃縮され過ぎた懸濁物も、理由は異なるが、同様に不十分な度合いのトランスフェクションを提供することになり、後者の場合、宿主細胞がマイクロバブル−抗体コンジュゲートによるトーンバーストから本質的に遮蔽されることになるため、宿主細胞の多くに音響エネルギーが到達しない場合があることが留意されるべきである。
【0100】
ソノポレーション:その後、トランスフェクションをもたらすように選択されたソノポレーションパラメーターを使用して、以前に記載のように、音響放射発生器を作動させて、音響放射を発生させ、流体媒体中の負荷コンジュゲートを含むレザバー内へと指向させることにより、負荷マイクロバブル−抗体コンジュゲートを照射する。好適なソノポレーションパラメーターは、観察されたトランスフェクション効率を、音響強度、変換器出力周波数、およびトーンバーストプロファイル(例えば、トーンバースト幅)などの1つまたは複数のソノポレーションパラメーターに対して関連させることにより、経験的に選択することができる。例えば、以前に説明されているように、宿主細胞、マイクロバブル、および選択された外因性物質を含むレザバーの照射に使用される音圧は、マイクロバブルの共鳴を誘導するのに十分であるべきだが、好ましい実施形態では、通常はレザバー底部の内側表面に位置する音響焦点スポット近傍の流体領域にマイクロバブルキャビテーションを引き起こすほど高くなるべきではない。焦点スポットでの典型的な音圧は、約1MPa〜約2MPaの範囲である。最適なソノポレーションパラメーターは、日常的な実験作業を使用して当業者により決定することができ、一般的には細胞タイプに応じて様々であろう。しかしながら、一般的に、ソノポレーションは、各々が数十ミリ秒程度またはそれより短く、約15〜40秒間にわたって毎秒約10〜約25回生じる周期的音響トーンバーストの短いバーストでレザバーを照射することにより、例えば、約30秒間にわたって毎秒10回(10Hz)で1ms未満の継続期間で照射することにより実施される。説明のためであるが、実施例6には、前述のプロトコールを使用して、各トーンバーストが8サイクルの出力からなる10Hzのバースト反復率での300回の周期的音響トーンバースト(上記に示されるように、約30秒間のソノポレーション期間に対応する)の照射を用いたソノポレーションが記載されている。実施例6では、トーンバースト継続期間は、およそ3.5μsだった(2.25MHzの公称出力周波数で分割された8サイクル)。照射は、所望の場合、任意の1つのレザバー内で繰り返して、ビームの焦点の位置または幅を変化させて、ソノポレートされるマイクロバブルの数および面積を最大化し、次いでトランスフェクション効率を最大化することができる。
【0101】
通常、発生させた音響放射は、照射されたマイクロバブルが、レザバー中のマイクロバブルの平均共鳴周波数から約15%以内の、好ましくはレザバー中のマイクロバブルの平均共鳴周波数から約5%以内の、またはレザバー中のマイクロバブルの平均周波数の高調波から約15%以内の、好ましくはレザバー中のマイクロバブルの平均周波数の高調波から約5%以内の波長を有する励起放射を受け取ることを確実にするように選択された周波数および強度であることが好ましい。関連する実施形態では、発生させた音響放射は、特定のサイズの、または特定のサイズ範囲内の照射されたマイクロバブルが、レザバー中のマイクロバブルの平均共鳴周波数から約15%以内の、好ましくはレザバー中のマイクロバブルの平均共鳴周波数から約5%以内の、またはレザバー中のマイクロバブルの平均周波数の高調波から約15%以内の、好ましくはレザバー中のマイクロバブルの平均周波数の高調波から約5%以内の波長を有する励起放射を受け取ることを確実にするように選択された周波数および強度であってもよい。マイクロバブルが組成物中で多峰形サイズ分布を有する場合、マイクロバブルを1回よりも多く照射してもよく、各照射事象は、各モーダルピークを有するかまたは付近のマイクロバブルを標的とする。
【0102】
加えて、一部のマイクロバブルは、照射の結果としてキャビテーションを起こす場合があるが、一般的には、キャビテーションを回避することが好ましい。そのため、ソノポレーションは、通常、マイクロバブルキャビテーションをもたらすことになる最低音圧の約50%〜90%の範囲の音響ソノポレーション圧力を使用してマイクロバブルを照射するように音響放射発生器を調整することにより実施される。音響ソノポレーション圧力は、例えば、約0.2MPa〜約2MPaの範囲であり、典型的には約1.5MPa未満である。多くの細胞株では、キャビテーション限界未満の音響出力レベルが、ソノポレーションによる良好なトランスフェクション結果を提供することになるが、キャビテーション限界未満で作動させる追加の利益は、その後のマイクロバブルの再使用が可能であるということである。すなわち、キャビテーション未満の音響エネルギーで照射すると、照射後に依然としてインタクトのままであるマイクロバブルの数は、一般的に、ソノポレーション前のマイクロバブルの元の数の約50%、80%、90%、または99%以内である。ソノポレーション後にインタクトなマイクロバブルは、最初にソノポレートされた宿主細胞と同じレザバー中にあってもなくてもよい同じ宿主細胞と共に再使用することができる。その代わりに、ソノポレーション後にインタクトなマイクロバブルは、自然にまたは処理の結果としてのいずれかでコンジュゲート抗体から分離されれば、異なる宿主細胞タイプと共に再使用することができる。また、キャビテーション未満の音響レベルで作動させることにより、同じレザバーで照射を反復することが可能になり、例えば、最初のソノポレーション事象の後、音響放射発生器により発生された音響ビームを使用して、インタクトであり、既に照射されたマイクロバブルを、レザバー内の異なる空間位置にある宿主細胞と接触させる。
【0103】
本発明の他の実施形態では、下記で説明されるように、ソノポレーションは、音響接続および分離ステップの反復を必要としない。宿主細胞、外因性物質、流体媒体、トランスフェクション刺激物質、および他の要素に関する上記の記載、ならびにトランスフェクション方法論の態様は、そうでなければ以下の実施形態に適用可能である。
【0104】
本発明の追加の実施形態では、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含むレザバーと音響的に接続すること;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、約10℃よりも大きな流体媒体の温度上昇をもたらさずに宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させることにより、細胞をトランスフェクトするための音響的方法が提供される。例えば、上記方法は、約5℃、2℃、または1℃よりも大きな温度上昇をもたらさずにソノポレーションを誘導することができる。関連する実施形態では、ソノポレーションは、流体媒体の温度を約40℃より高く上昇させずに生じる。発生させた音響放射を、集束手段を使用してレザバー内へと指向させ、集束音響放射を使用してソノポレーションを実施することが好ましい。また、流体媒体は、本明細書で以前に説明されているようなトランスフェクション刺激物質を含むことが好ましい。
【0105】
別の実施形態では、音響放射発生器を、少なくとも1536個のレザバーを含む一体型多重レザバーユニット内に含まれる選択されたレザバーと音響的に接続することであって、選択されたレザバーが、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、および流体媒体を含む、接続すること;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式で前記レザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進することにより、細胞をトランスフェクトするための音響的方法が提供される。したがって、一体型多重レザバーユニットは、1536個のウェルまたは3456個のウェルなどを有するマイクロウェルプレートであってもよい。上記の実施形態と同様に、発生させた音響放射を、集束手段を使用してレザバー内へと指向させること、および流体媒体がトランスフェクション刺激物質を含むことが好ましい。
【0106】
別の実施形態では、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続すること;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、局所化流体容積が、局所化流体容積の平均共鳴周波数から約15%以内であるかまたは局所化流体容積の平均共鳴周波数の高調波から約15%以内である周波数で振動するように音響的に活性化される様式で、音響放射をレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進することにより、細胞をトランスフェクトするための音響的方法が提供される。例えば、局所化流体容積は、局所化流体容積の平均共鳴周波数から約5%以内であるかまたは局所化流体容積の平均共鳴周波数の高調波から約5%以内である周波数で振動するように音響的に活性化されてもよい。この場合も、好ましい実施形態では、レザバー内へと指向される音響放射は、集束音響放射である。
【0107】
別の実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、選択されたサイズから約15%以内のサイズを有する局所化流体容積が音響的に活性化される様式でレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含む方法が提供される。
【0108】
関連する実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、(a)音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および多峰形サイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;(b)音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、第1のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積が音響的に活性化される様式で、音響放射をレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積が、音響エネルギーを宿主細胞付近に移転させるステップ;(c)ステップ(b)を繰り返して、第2のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップ;および(d)任意選択で、ステップ(b)を繰り返して、1つまたは複数の追加のモーダルピークから約15%以内であるサイズを有する局所化流体容積を音響的に活性化するステップを含む方法が提供される。
【0109】
追加の実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびサイズ分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されているトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップ;および音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた音響放射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させるステップであって、発生させた音響放射の周波数成分が、音響活性化可能な局所化流体容積のサイズ分布と関連するように選択される、ステップを含む方法が提供される。「〜と関連する」とは、音響放射内の個々の周波数が、局所化容積分布内の個々のサイズおよびサイズ範囲を標的とし、音響的に活性化するように調整される(tune)ことを意味する。
【0110】
関連する実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、およびトランスフェクション刺激物質を含むレザバーと音響的に接続するステップであって、トランスフェクション刺激物質が、レザバー内で空間分布を有する複数の音響活性化可能な局所化流体容積で構成されている、ステップ;および音響放射発生器を作動させて、選択された周波数成分を有する音響放射を発生させ、発生させた音響放射を、宿主細胞のソノポレーションが誘導される様式でレザバー内へと指向させ、それによりソノポレートされた宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップであって、発生させた音響放射の周波数成分が、音響活性化可能な局所化流体容積の空間分布と関連するように選択される、ステップによる方法が提供される。この場合、「〜と関連する」は、音響放射内の個々の周波数が、レザバー内の異なる位置の局所化容積を標的とし、音響的に活性化するように調整されることを示す。
【0111】
別の実施形態では、ソノポレーションは、協同して(好ましくは同時に、しかしながら必ずしも同時とは限らない)、ただし異なる周波数で作動する2つの変換器を使用して実施され、変換器の一方は、環状変換器であり、周囲に作動可能に設置され、標準的変換器を封入する。この実施形態では、環状変換器および標準的変換器は、一般的には、異なる周波数で作動することになる。例えば、ソノポレートされた細胞が、流体媒体から音響的に射出される場合、環状変換器は、ソノポレーションを引き起こすように選択された周波数で作動させてもよく、標準的変換器は、例えば、レザバー内への、担体への、または分析のための分析機器への輸送のために、ソノポレートされた細胞の音響射出をもたらすのに有効な周波数で作動させることができる。そのような場合に、環状変換器は、約1MHz〜約2.5MHzの範囲の周波数で作動させてもよく、標準的変換器は、約6MHz〜約20MHzの範囲の、好ましくは約9MHz〜約14MHzの範囲の、および最適には約11.5MHzの周波数で作動させてもよい。
【0112】
この実施形態の一態様では、2つの変換器の一方は、主に、ソノポレーションのための音響エネルギーを供給するように機能し、他方の変換器は、マイクロバブル−細胞コンジュゲーションを使用しない場合、宿主細胞に対するマイクロバブルの相対的位置を変化させるための音響エネルギーを送達する。理想的には、マイクロバブルおよび宿主細胞は、互いに接近して位置決めされるとき、ソノポレーションを引き起こすのに有効な音響強度の領域にあるべきである。
【0113】
追加の実施形態では、ソノポレーションは、異なるサイズのマイクロバブルをソノポレートするのに有効な異なる音響周波数を各々が有する複数の音響トーンバーストを引き続いて照射することを含む。複数の音響トーンバーストの各々の音響周波数は、典型的には、約1.5MHz〜約5.0MHzの範囲、より通常には、約2.0MHz〜約2.5MHzの範囲である。狭い分布のマイクロバブルサイズでは、広い分布のマイクロバブルサイズと同じレベルの励起を達成するのに、典型的にはより小さな範囲の音響周波数が必要とされ、ここで同じ効果を達成するには音響周波数を変動させる必要がある。最適には、音響周波数成分は、ソノポレーションの均一性を向上させるためにマイクロバブルの共鳴周波数分布に応じて、かつ最小量の送達される総音響エネルギーにおいて調整される。複数の音響トーンバーストは、一般に、5サイクル〜10サイクルのトーンバーストであり、同じであってもよくまたは異なっていてもよい。
【0114】
さらなる実施形態では、細胞をトランスフェクトするための音響的方法であって、音響放射発生器を、宿主細胞、宿主細胞内にトランスフェクトしようとする外因性物質、流体媒体、および複数の音響活性化可能な局所化流体容積を含むトランスフェクション刺激物質を含む選択されたレザバーと音響的に接続するステップ;および音響放射発生器を作動させて音響放射を発生させ、音響放射を、局所化流体容積が音響的に活性化される様式でレザバー内へと指向させ、それにより音響的に活性化された局所化流体容積の近傍にある宿主細胞内への外因性物質の組込みを促進するステップを含み、発生される音響放射は、局所化流体容積の少なくとも50%が照射後に依然としてインタクトのままであることを確実にするように選択された音響ソノポレーション圧力におけるものである、方法が提供される。この実施形態の一態様では、音響ソノポレーションは、局所化流体容積のキャビテーションをもたらすことになる最低音圧の約50%〜約90%の範囲である。
【0115】
また、本開示は、音響的トランスフェクションプロセスを最適化するための種々の方法を包含することが意図される。例えば、Ellsonらの米国特許第6,932,097号、Ellsonらの第6,938,995号、Ellsonらの第7,354,141号、Qureshiらの第7,899,645号、Ellsonらの第7,900,505号、Stearnsらの第8,107,319号、Ellsonらの第8,453,507号、およびStearnsらの第8,503,266号に記載されているように、レザバー中の流体を特徴付けるために、本明細書に記載の音響放射発生器を使用して、流体メニスカスの高さ、ならびに流体容積、粘度、密度、表面張力、組成、音響インピーダンス、音響減衰、流体中の音速などの他の特性を測定し、その後、それらのいずれかまたはすべてを使用して、音響出力、音響周波数、トーンバースト継続期間、および/または集束レンズのF値を含む、最適なソノポレーションパラメーターを決定することができる。別の例として、Stearnsらの米国特許第7,717,544号および第8,770,691号には、レザバー内の表面から反映する音響放射の波形を分析することにより、音響的液滴射出または他の音響プロセスに使用される音響放射の振幅を最適化するための方法が記載されている。加えて、Mutzらの米国特許第7,481,511号およびEllsonらの第7,784,331号には、音響プロセスパラメーターを制御して、レザバー特性の変動を説明するための方法が提供されている。
【実施例】
【0116】
実験
【0117】
材料
以下のリストには、これらの実施例で使用される材料が、材料の供給源と共に示される。
【0118】
Targesphere(登録商標)SA:ストレプトアビジン機能化マイクロバブルの陽イオン性分散物(Targeson)
【0119】
抗CD51:ビオチン化抗ヒトCD51抗体、0.09%アジ化ナトリウムを含むDPBS中0.5μg/μL(Biolegend #327906)
【0120】
HEK−293細胞:ヒト胚性腎臓細胞、細胞株293、4mM L−グルタミン、10%のウシ胎仔血清(FBS)、および100U/μLペニシリン−ストレプトマイシンで追加補充された高グルコース培地を有する標準細胞培養緩衝液DMEM中(ATCC #CRL−1773)
【0121】
DPBS:カルシウムおよびマグネシウムを有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(ThermoFisher Scientific #14040182)
【0122】
GFP:緑色蛍光タンパク質(全体にわたって、eGFPすなわち高感度GFPを使用した)
【0123】
gWiz−GFP:eGFPをコードするプラスミド(Aldevron)
【0124】
CRISPRプラスミド:pCas−Guide−EF1a−eGFP(Origene #GE100018)
【0125】
リポフェクタミン(登録商標)3000(ThermoFisher Scientific)
【0126】
実施例1〜5についての一般的プロトコール
【0127】
(1)マイクロバブル/DPBS分散物の調製:Targesphere SAマイクロバブル分散物を含むバイアルを、混合物が均一に混濁するようにみえるまで、10秒間穏やかに振盪し、反転した。100μLのTargesphere SA分散物を抽出し、新しい1.5mLチューブに導入した。900μLのDPBSを添加し、分散物を穏やかに混合した。その後、混合物を、室温で直立させて2分間インキュベートし、その後Minifuge(登録商標)で2分間遠心分離して、マイクロバブルを懸濁液から分離した。注射針を使用して、マイクロバブルの白色ケークの下にある下澄み(infranatant)をゆっくりと除去し、その後、マイクロバブルを、100μLのDPBSに再懸濁した。(元のマイクロバブル媒体で見られた、表面張力問題およびバブルのウェル表面との接着を低減するために、元の媒体をTargesphere SAマイクロバブル分散物から除去し、DPBSで置換した。)実施例6では、その例で説明されているように、このプロトコールの改変版を使用した。
【0128】
(2)マイクロバブルとビオチン化抗体とのコンジュゲーション:10μgの抗CD51ビオチン化抗体(つまり、20μLの0.5μg/μL溶液)を100μLのマイクロバブル分散物に添加し、抗CD51抗体のTargesphere SA分散物に対する質量/容積比は、1:10だった。バイアルを、穏やかに撹拌しながら室温で約20分間インキュベートした。実施例6では、そこで説明されているように、このプロトコールの改変版を使用した。
【0129】
(3)プラスミド負荷マイクロバブルの調製(実施例1〜5):ビオチン化抗体/Targesphere組成物を含むバイアルを、何回か反転させて均一に混合し、24μLの5μg/μL gWiz−GFPプラスミドを(120μgのgWiz−GFPに対応する)、(2)で調製した120μLのマイクロバブル−ビオチン化抗体コンジュゲートに添加した。プラスミドのTargesphere SA分散物に対する質量/容積比は、1:1だった。バイアルを、再び穏やかに撹拌しながら室温で約25分間インキュベートした。
【0130】
(4)細胞とのインキュベーション:以下のプラスミド負荷マイクロバブル希釈物を調製した:
【0131】
1:4容積/容積、100μLマイクロバブル分散物および300μL DPBS;
【0132】
1:20容積/容積、20μLマイクロバブル分散物および380μL DPBS;
【0133】
1:40容積/容積、10μLマイクロバブル分散物および390μL DPBS;ならびに
【0134】
1:200容積/容積、2μLマイクロバブル分散物および398μL DPBS。
【0135】
マイクロバブルを含まない400μL DPBSを、対照として使用した。
【0136】
20μLのプラスミド負荷マイクロバブル(または対照)を、平板培養されたHEK−293細胞(これは、384ウェルプレートで80%コンフルエンスまで培養され(1ウェル当たりおよそ25,000個の細胞が得られ、最大容積はおよそ115μL/ウェルだった)、培地は最初にピペット操作で細胞から除去しておいた)にピペットで入れた(pipette)。以下の表では、処理濃度は、マイクロバブル希釈物、1ウェル当たりの負荷容積、およびマイクロバブル対細胞インキュベーション比と関連付けられている。
【表1】
【0137】
ウェルプレートを、上下逆さまに裏返して結合を促進し、37℃のインキュベーターに5分間入れた。当初は、その後、プレートを50μLのDPBSで洗浄して、未結合マイクロバブルを除去したが、洗浄ステップで細胞も除去されてしまうことが判明したため、洗浄ステップを中止した(注:これは、異なる細胞タイプの場合、該当する場合もあり、または該当しない場合もある)。
【0138】
(5)ソノポレーション:予め加温しておいた80μLのDPBSをウェルに再充填して合計を100μLとし、125RCFで5分間遠心分離して大きなバブルを除去した(より速い回転速度では、細胞は、ほとんどではないとしても、その多くが死滅してしまう可能性が高いと予想される)。その後、細胞を、音響液体ハンドラー(Echo(登録商標)500シリーズ液体ハンドラー、Labcyte Inc.、San Jose、CA)の改良型の音響放射発生器を使用して超音波でパルス処理し、ウェルプレートを一晩インキュベーターに戻した。1〜2日後、細胞を、DNA取込みを示すGFP蛍光および生存について検査した。
【0139】
(実施例1)
上記のプロトコールを使用して、4枚のプレートのHEK−293細胞を試験した。DPBS単独対照ウェルを含む、4つすべてのプレートを同一にセットアップした。対照プレートは超音波処理しなかった。384ウェルプレートを、1ウェル当たり25,000個のHEK−293細胞で使用した。各プレートを、単一の電圧、0V(対照プレート)、0.5V(低出力)、1.0V(中出力)、または1.5V(高出力)のいずれかでパルス処理した。1.0Vは、焦点で約1.5MPaの音圧をもたらした。ソノポレーションの24時間後、細胞のGFP蛍光を検査した。ソノポレーションは、HEK−293細胞がGFPプラスミドを取り込み、発現することを可能にすることにおいて成功裏のものであり、そして取込みパーセントは、電圧およびプラスミド負荷マイクロバブルの濃度と共に増加したことが見出された。最も高い濃度のプラスミド負荷マイクロバブルおよび最も高い電圧で、蛍光が最高度であることが見出された。緑色(蛍光)細胞は、ウェルプレートを反転させた後のマイクロバブルの分布により、ウェルの周囲付近に濃縮されていた。対照プレートの一部の細胞が緑色になったが、極めてわずかだった。これは、数パーセントの細胞が、培地中のプラスミドを取り込んだことによるものだった。
【0140】
(実施例2)
1:200希釈の代わりに「プラスミドのみ」の対照を用いた、つまりプラスミドを1:4ウェルに見出されるものと同じ濃度で添加したこと以外は、一般的プロトコールおよび実施例1の手順に従った。得られた結果により、高媒体濃度のプラスミド単独では、細胞の形質転換に十分ではないことが確認された。
【0141】
(実施例3)
一般的プロトコール実施例1の手順を繰り返したが、各ウェルの中心に単一のパルスを適用するのではなく、各ウェルを異なる位置で数回パルス処理した。これは、各ウェルの全体にわたってGFP蛍光が存在することから推論することができるように、ウェルの周囲付近にトランスフェクトされた細胞が濃縮することを解消し、より均一な分布を提供したことが見出された。
【0142】
(実施例4)
実施例1の手順を以下のように改変して繰り返した。
【0143】
2つの陽性対照細胞集団が含まれていた:(1)リポフェクタミン3000を使用し、製造業者により提供されたトランスフェクションプロトコールに従って、細胞をトランスフェクトし、(2)死細胞を熱ショックにより死滅させた。
【0144】
加えて、ソノポレーションの1〜2日後に、死細胞を陽性染色する細胞膜完全性色素、つまりMultiCyt Cell Membrane Integrity Dye Panel FL3 dye(IntelliCyt、Albuquerque、NM)で、細胞を染色した。
【0145】
トランスフェクション率および生存率を、蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して分析した。結果は、
図1〜
図7に提供されている。
図1は、HEK−293細胞をマイクロバブルおよび他の物質と区別することを可能にする、前方散乱の高さ 対 側方散乱の高さのプロットを示し、死細胞は、生細胞のより高密度クラスターの上方のより高いSSC−H軸に、別個のグループとして出現する。
図2では、GFPをコードするプラスミドがトランスフェクトされた細胞はFL1チャネルで検出され、細胞膜完全性色素で染色された細胞、つまり死細胞は、FL3チャネルで検出された。プロットの「GFP+」および「死」というラベルは、手動で設定したものであり、こうした対照細胞集団は、
図3では別々に示される。
図4および
図5から結論付けることができるように、トランスフェクションに成功した宿主細胞の割合は、音響出力およびマイクロバブル濃度の両方と共に増加した。また、
図6に示されるように、トランスフェクション後に残る生細胞のパーセントは、使用された最も高い電圧、1.5Vでさえ、ほぼ100%である。
図7は、陰性対照、つまり、マイクロバブルの非存在下にてDPBSのみで得られたデータを示す。
【0146】
(実施例5)
この例には、ソノポレーションを使用したCRISPRプラスミドのトランスフェクションが記載されている。gWiz−GFPプラスミドの代わりに、Cas9およびGFPを発現するCRISPRプラスミドを用いたこと以外、一般的プロトコールおよび実施例1の手順に従った。1.5Vのソノポレーションパルスを使用した。マイクロバブル−抗体コンジュゲートの分散物を、DPBSで調製した(一般的プロトコールに記載されているように)。マイクロバブル−抗体コンジュゲートの濃度は、DPBS 1mL当たり5×10
8個だった。その後、この分散物を、分散物1μL当たりのμgプラスミドとして示されている、以下の比率でプラスミドと組み合わせた:1:1;2:1;4:1;および8:1。各比率で3回の反復を実施した。1つの「無プラスミド」陰性対照行および1つの「無ソノポレーション」陰性対照列が含まれていた。実施例4と同様に、IntelliCyt FACSを使用して結果をアッセイした。GFP陽性細胞は、CRISPRプラスミド取込みを示し、蛍光色素染色は死細胞を示した。
【0147】
結果は、
図8および
図9に示される。
図8は、4つのプラスミド濃度の各々で得られたGFP陽性細胞のパーセントを示し、
図9は、各濃度でのGFP陽性細胞の平均パーセントを示し、標準偏差エラーバーが表示されている。GFP陽性細胞のパーセントは、バックグラウンドよりも高く、細胞がCRISPRプラスミドを取り込み、発現したことを示す。また、得られたデータは、表2に要約されている。
【表2】
【0148】
得られたシングレット細胞数のデータは、表3に示される。
【表3】
【0149】
処理後の細胞死率は低いままである。
図10は、4つのプラスミド濃度の各々の死細胞のパーセントを示す。また、得られたデータは、表4に要約されている。
【表4】
【0150】
GFP陽性細胞パーセントの傾向は、プラスミド濃度と共に増加し、バックグラウンド陰性対照よりも高く、このことより、ソノポレーションを使用してCRISPRプラスミドをトランスフェクトすることができることが確認される。トランスフェクション成功率の増加は、例えば、ソノポレーションを使用して、リボ核タンパク質を標的細胞内に導入することを含む技法など、プラスミドに基づかない方法を使用することにより可能であるはずである。
【0151】
(実施例6)
この例には、Integrated Technologies,Inc.(IDT、Coralsville、Iowa)から得たAlt−R(商標)S.p.Cas9ヌクレアーゼ3NLS、ならびにHPRT遺伝子を標的とするAlt−R(商標)CRISPR−Cas9HPRT陽性対照crRNA、Alt−R(商標)CRISPR−Cas9陰性対照crRNA、および無ヌクレアーゼ緩衝液を含むAlt−R(商標)CRISPR−Cas9キット(これもIDTから得た)を使用した、CRISPR Cas9/ガイドRNAリボヌクレオチド(RNP)によるHEK−293細胞のトランスフェクションが記載されている。crRNAと複合体形成するための蛍光標識tracrRNAを、別々に得た(ATTO(商標)550にコンジュゲートされたAlt−R(商標)CRISPR−Cas9 tracrRNA、これもIDTから得た)。
【0152】
(a)マイクロバブル/DPBS分散物の調製:これは、マイクロバブル/DPBS分散物を調製するための一般的プロトコールに記載されている方法の改変版である。Targesphere SAマイクロバブル分散物を含むバイアル(濃度2×10
9マイクロバブル/mL)を、混合物が均一に混濁するようにみえるまで、10秒間穏やかに振盪し、反転した。50μLのTargesphere SA分散物を抽出し、新しい1.5mLチューブに導入した。950μLのDPBSを添加し、分散物を穏やかに混合した。その後、混合物を、室温で直立させて2分間インキュベートし、その後Minifuge(登録商標)で2分間遠心分離して、マイクロバブルを分散液から分離した。注射針を使用して、マイクロバブルの白色ケークの下にある下澄みを、容積が50μLに達するまでゆっくりと除去した。
【0153】
(b)マイクロバブルとビオチン化抗体とのコンジュゲーション:これは、マイクロバブルをビオチン化抗体にコンジュゲーションするための、一般的プロトコールに記載されている方法の改変版である。5μgの抗CD51ビオチン化抗体(つまり、10μLの0.5μg/μL溶液)を50μLのマイクロバブル/DPBS分散物に添加した。抗CD51抗体のTargesphere SAマイクロバブルに対する質量/個数比は、1:2×10
7だった。バイアルを、穏やかに撹拌しながら室温で約20分間インキュベートした。
【0154】
(c)ガイドRNAの形成:crRNAおよびtracrRNAを、200μMにてIDT無ヌクレアーゼ二重鎖緩衝液に懸濁した。crRNAを1:1の等モル比で組み合わせ、ガイドRNA終濃度は100μMだった(表5)。
【表5】
【0155】
混合物を95℃で5分間加熱し、その後熱から取り外し、室温へ冷却させた。
【0156】
(d)RNP複合体の形成:Cas9をガイドRNAと組み合わせて、Alt−R(商標)CRISPR−Cas9ユーザーガイドに記載されているように、RNPを生成した。手短に言えば、ソノポレーションを受けた各ウェルについて、ガイドRNA(つまり、上記のステップで調製されたcrRNA:tracrRNA二重鎖)をDPBSで希釈し、Cas9を、最後にゆっくりと約1:1.15のCas9:gRNAモル比で添加した。その後、混合物を室温で20分間インキュベートした。濃度は、以下の通りだった。
【表6】
【0157】
(e)負荷マイクロバブルの調製:抗体−マイクロスフェアコンジュゲート(「aCD51 Targesphere」)を含むバイアルを穏やかに弾いて混合した。その後、抗体−マイクロスフェアコンジュゲートを、上記のステップで調製したRNPと組み合わせ、20分間インキュベートし、その後DPBSで希釈して、4μM RNPおよび5×10
8マイクロバブル(mb)/mLの終濃度にした。
【表7】
【0158】
(f)aCD51 TargesphereとHEK−293細胞とのインキュベーション:増殖培地(一般的プロトコールを参照)を、HEK−293細胞からピペット操作で除去した。aCD51 Targesphere(つまり、抗体コンジュゲートマイクロバブル)をピペットで吸引排出してよく混合した。その後、25μLのaCD51 Targesphereを、組織培養コーティングでコーティングされた384ウェルポリプロピレンマイクロウェルプレートの各ウェルにピペットで入れた。プレートを、上下逆さまに裏返して、aCD51 Targesphereと細胞との結合を促進し、37℃のインキュベーターに5分間入れた。
【0159】
(g)ソノポレーション:逆ピペット操作(reverse pipetting)を使用して、予め加温しておいた75μLの完全増殖培地を各ウェルに添加し、1ウェル当たりの合計流体容積を100μLとし、RNP濃度を1μMにした。2.25MHzの変換器、0.5”の口径、および1インチの焦点距離(F値は2)を使用して、ソノポレーションを実施した。変換器を作動させて、各レザバーを、約10Hzのバースト反復率の300回のトーンバーストで照射した。これは、トーンバーストが0.1秒間隔だったことを意味する。各トーンバーストは、およそ(8/2.25)3.5μsのトーンバースト継続期間に相当する、8サイクルの出力で構成されていた。RF周波数は、バースト出力の全体にわたって一定だった。
【0160】
(h)分析:CRISPR編集の成功率は、HPRT遺伝子内に導入されたインデルの数を測定することにより評価した。「インデル」は、ヌクレオチドの挿入または欠失により引き起こされるDNA配列の変化である。これは、ヘリックスの両鎖が互いに完全に塩基対合しない場合(つまり、片方がインデルを含む場合)に二本鎖DNAが切断される、T7エンドヌクレアーゼI(T7E1)消化アッセイを使用して定量化した。T7E1による消化後、DNAは、インタクトのままであるかまたは2つのより小さな断片へと切断されるかのいずれかである。消化されたDNAを、ゲル電気泳動を使用して分析して、断片をサイズで分離し、切断断片対全長断片の量を分析した。
【0161】
T7エンドヌクレアーゼI CRISPRインデル検出アッセイ:細胞を、DPBSで洗浄し、Epicentre QuickExtract DNA抽出溶液を使用して溶解した。得られたゲノムDNAを、目的の部位(つまり、HPRT遺伝子座)を隣接するプライマーを使用してPCR増幅した。PCR産物を、95℃に加熱して変性させ、その後ゆっくりと室温に冷却し、ミスマッチ対の形成を促進した。その後、T7エンドヌクレアーゼIを添加し、37℃で1時間インキュベートして、>1塩基対ミスマッチを有するあらゆる二本鎖DNAを切断した。その後、消化したDNAを希釈し、CRISPR Discoveryゲルキットを使用して、AATI断片アナライザーに流して、切断パーセントを測定した。
【0162】
切断パーセントを測定するために、AATI ProSizeソフトウェアにより、存在する「全長」DNAの量を、より小さな「断片1」および「断片2」のバンドで見出された量と比較した。この切断パーセントは、細胞集団中のCRISPRにより実施された編集パーセントの代理指標である。しかしながら、T7E1酵素は、CRISPR編集事象の最大30%を占める場合がある1塩基対インデルを検出することができない。したがって、このアッセイにより測定される切断パーセントは、インデル形成の真の割合を著しく過小評価する。
【0163】
【化1】
【0164】
実験作業を繰り返し、第2のセットの結果を生成した。2つの実験は、下記ではラン1およびラン2と呼ばれる。
【0165】
結果:
図11は、ラン1のミスマッチ切断アッセイおよび分析の結果を示すキャピラリー電気泳動ゲルを示し、
図12は、ラン2の結果を提供するキャピラリー電気泳動ゲルである。1,083bp断片は全長PCR産物であり、「断片1」は827bpであり、「断片2」は、256bpである。両図は、実験試料には切断があり、対照はすべて切断を欠如したことを示し、CRISPRトランスフェクションおよび編集が成功したことを示す。表8は、各ランの切断パーセントを示す。
【表8】
【0166】
切断パーセント結果は、
図13の棒グラフにも示されており、この図では、より暗色のバーは、ラン1の結果を表わし、より明色のバーは、ラン2の結果を表わす。
【0167】
図14は、標識tracrRNAを検出するためにRFPライトキューブを備えたEVOS蛍光顕微鏡を使用して、ラン2で得られた蛍光画像である。この画像に見ることができるように、HPRTおよび非標的化RNPは、実験条件下で細胞へのトランスフェクトが成功したが、陰性対照条件は、非常に低い取込みをもたらした。