特許第6861805号(P6861805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861805
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】燃料圧送ユニット
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20210412BHJP
   F02M 37/18 20060101ALI20210412BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20210412BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   F02M37/00 311K
   F02M37/18 A
   F02M37/08 E
   F02M37/10 H
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-515796(P2019-515796)
(86)(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公表番号】特表2019-529780(P2019-529780A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017073897
(87)【国際公開番号】WO2018055032
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】102016218294.3
(32)【優先日】2016年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クライネベアク
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121454(JP,A)
【文献】 特表2009−537744(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02803848(EP,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102007039861(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102014225315(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 37/08
F02M 37/10
F02M 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(M1)によって駆動可能な燃料ポンプ(P1)と、該燃料ポンプ(P1)によって圧送可能な駆動噴流によって作動されかつ燃料を圧送する少なくとも1つのサクションジェットポンプとを有する、燃料タンク内の燃料圧送ユニットであって、
前記燃料ポンプ(P1)が、前記サクションジェットポンプによって充填可能なバッフルポットに配置されており、
前記燃料ポンプ(P1)が、第1出口(A1)を有し、該第1出口(A1)を通して、燃料を消費器へと圧送可能である、燃料圧送ユニットにおいて、
前記燃料ポンプ(P1)は、弁(V1)によって開放可能または閉鎖可能な第2出口(A2)を有し、
前記第2出口(A2)を通して、前記少なくとも1つのサクションジェットポンプを駆動可能な駆動噴流を圧送可能であり、
前記弁(V1)の開放位置と閉鎖位置とは、前記電動モータ(M1)と前記弁(V1)との間に配置された機械的なクラッチ(K1)を介し、前記電動モータ(M1)によって切り換え可能であり、前記クラッチ(K1)は、前記電動モータ(M1)の、燃料圧送のための通常の回転運動の場合には、前記弁(V1)の弁プレート(3)を移動させず、前記通常の回転運動とは逆方向の回転運動の場合には、前記弁(V1)の前記弁プレート(3)を移動させて、前記弁(V1)の前記開放位置と前記閉鎖位置とを切り換える、
ことを特徴とする、燃料圧送ユニット。
【請求項2】
前記弁(V1)の前記開放位置と前記閉鎖位置との切り換えが、360°以下の前記電動モータ(M1)の回転方向逆転によって生じることを特徴とする、請求項記載の燃料圧送ユニット。
【請求項3】
前記弁(V1)の前記開放位置と前記閉鎖位置との切り換えが、180°以下の前記電動モータ(M1)の回転方向逆転によって生じることを特徴とする、請求項2記載の燃料圧送ユニット。
【請求項4】
前記弁(V1)の前記開放位置と前記閉鎖位置との切り換えが、90°以下の前記電動モータ(M1)の回転方向逆転によって生じることを特徴とする、請求項3記載の燃料圧送ユニット。
【請求項5】
前記弁(V1)の前記開放位置と前記閉鎖位置との切り換えは、少なくとも75°の前記電動モータ(M1)の回転方向逆転によって生じることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料圧送ユニット。
【請求項6】
前記クラッチ(K1)が、2つの部分(1、2)から構成されており、回転方向逆転により、前記クラッチの前記2つの部分(1、2)が、前記クラッチ(K1)の回転軸線周りに互いに反対方向に回転可能であり、
前記クラッチの前記2つの部分(1、2)が互いに相対的に回転することにより、少なくとも1つのクラッチ部分(2)の、前記回転軸線に沿った並進運動が発生可能であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料圧送ユニット。
【請求項7】
前記回転軸線に沿った少なくとも1つの前記クラッチ部分(2)の前記並進運動が、前記弁プレート(3)に伝達可能であり、前記弁プレート(3)により、前記第2出口(A2)が、開放可能であるかまたは閉鎖可能であることを特徴とする、請求項記載の燃料圧送ユニット。
【請求項8】
前記弁プレート(3)が係止装置(4)を有しており、
前記弁プレート(3)が、少なくとも1つの前記クラッチ部分(2)の前記並進運動によって移動させられ、その結果、前記係止装置(4)が、前記第2出口(A2)を構成するケーシング(5)に形成された凹部に係合することによって、前記弁プレート(3)が前記ケーシング(5)に固定されることを特徴とする、請求項記載の燃料圧送ユニット。
【請求項9】
前記弁プレート(3)の前記係止装置(4)が、少なくとも1つの前記クラッチ部分(2)の前記並進運動により、かつ、少なくとも1つの前記クラッチ部分(2)の前記回転運動により、解除可能であることを特徴とする、請求項記載の燃料圧送ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって駆動可能な燃料ポンプと、この燃料ポンプによって圧送可能な駆動噴流によって作動されかつ燃料を圧送する少なくとも1つのサクションジェットポンプとを有する、燃料タンク内の燃料圧送ユニットであって、燃料ポンプが、サクションジェットポンプによって充填可能なバッフルポットに配置されており、燃料ポンプが、第1出口を有しており、第1出口を通して燃料を消費器へと圧送可能である、燃料圧送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
タンクシステムでは、一般に、タンクに収容された媒体を圧送するために圧送ポンプが使用される。タンクシステムは、蓄積された媒体を所定の消費器に圧送するために使用される。特別な事例においてこのタンクシステムは、例えば、内燃機関に供給する燃料を貯蔵するタンクシステムであり、これは、例えば多くの自動車において一般的である。蓄積された媒体の圧送には、様々な圧送ポンプを使用することができる。以下に例示的に説明する燃料の特別な事例では、このためにいわゆる燃料ポンプが使用されるが、燃料以外の用途が除外されることはない。
【0003】
従来技術においては、電気動作式燃料ポンプの多くの実施形態が公知である。ポンプ段に接続されている電動モータに電圧を加えることにより、燃料体積を圧送することができる。
【0004】
さらにサクションジェットポンプが公知である。サクションジェットポンプは、吸引管を通して駆動噴流を圧送することにより、吸引個所の領域に負圧を形成し、これにより、周囲にある燃料を引き込むという原理に基づいている。したがって、サクションジェットポンプには、その動作のために、それぞれ、別の燃料ポンプによる燃料の圧送によって形成される駆動噴流が必要である。さらに、例えば、電気動作式燃料ポンプと、1つまたは複数のサクションジェットポンプとを組み合わせることが公知である。
【0005】
ここでは、サクションジェットポンプは、例えば、大部分は浸漬式ポンプとして形成される電気作動式燃料ポンプによって燃料が搬出されるバッフルポットに燃料をあらかじめ圧送するために使用される。サクションジェットポンプは、車両の都度の走行状況および特に傾きに依存せずに完全な吐出が可能になるようにタンクに分配される。これは、特に、タンクにおける所定の充填レベル以上では、個々のチャンバ間の流体接続が、サクションジェットポンプの圧送管路だけによって保証される、複数のチャンバを備えたタンクにおいては有利である。
【0006】
従来技術における解決手段の欠点は、特に、電気動作式燃料ポンプによって燃料が圧送されると直ちに、すなわちサクションジェットポンプによって駆動噴流が圧送されると直ちに、サクションジェットポンプが持続的に作動されることである。あらゆる状況においてサクションジェットポンプの付加的な圧送能力は必要ではないため、基本的には常時必要ではないサクションジェットポンプを持続的に動作させることにより、不必要に多くのエネルギが消費されてしまう。
【0007】
切換可能な弁によって個々のサクションジェットポンプをオンオフするように規定された複数の解決手段が公知である。しかしながら、これは特に、追加のアクティブな構成部材、すなわち切換可能な弁を設けなければならず、燃料圧送のための制御装置に付加的な駆動部を設けなければならず、また弁を駆動制御するための付加的なケーブルも敷設しなければならないために不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、サクションジェットポンプを簡単かつ要求に応じて起動および停止できるようにする燃料圧送ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
燃料圧送ユニットについての課題は、請求項1の特徴的構成を備えた燃料圧送ユニットによって解決される。
【0010】
本発明の一実施例は、電動モータによって駆動可能な燃料ポンプと、燃料ポンプによって圧送可能な駆動噴流によって作動されかつ燃料を圧送する少なくとも1つのサクションジェットポンプとを有する、燃料タンク内の燃料圧送ユニットであって、燃料ポンプが、サクションジェットポンプによって充填可能なバッフルポットに配置されており、燃料ポンプが、第1出口を有し、この第1出口を通して、燃料を消費器へと圧送可能であり、燃料ポンプが、弁によって開放可能であるかまたは閉鎖可能である第2出口を有している、燃料圧送ユニットに関する。
【0011】
ここでは、例示的に燃料圧送ユニットについて述べている。しかしながら、本発明による原理は、液状媒体のための別の圧送ユニットにも容易に適用可能である。
【0012】
燃料ポンプは、第1出口を有しており、この第1出口を通して、バッフルポットからこの燃料ポンプによって圧送される燃料を、タンクから排出して消費器へと圧送することができる。燃料圧送ユニットの場合、消費器は、好適には内燃機関によって形成される。出口を備えたこのタイプの燃料ポンプは、従来技術において公知であり、多様に利用可能である。本発明では、燃料ポンプは、第2出口を有し、第2出口を通して、燃料ポンプによって圧送される燃料の部分体積を搬出可能である。搬出されるこの部分体積は、好ましくは、タンク内のサクションジェットポンプに駆動噴流を供給するために使用される。この駆動噴流により、サクションジェットポンプによって燃料を圧送することができ、この燃料は、例えば、タンクから、燃料ポンプが配置されているバッフルポットに圧送される。
【0013】
駆動噴流は多くの走行状況では単に必要でないという理由から、この駆動噴流をサクションジェットポンプに持続的に圧送する必要はないため、第2出口は、弁によって所期のように閉鎖または開放される。これにより、第2出口を開放または閉鎖することによって、サクションジェットポンプを起動または停止することができる。
【0014】
特に有利であるのは、第2出口を通して、1つまたは複数のサクションジェットポンプを駆動可能な駆動噴流を圧送可能な場合である。このことは、例えば、タンクの離れた領域から燃料ポンプの吸引領域へと燃料を圧送するのに有利である。特にマルチチャンバタンクまたは極めて大きな凹凸を有するタンクでは、いずれの充填レベルにおいても重力だけによって燃料ポンプの吸引領域へと燃料が流れる可能性がないことが多い。
【0015】
弁が、電動モータとの機械的なクラッチを介し、電動モータによって調整可能であることも有利である。電動モータとの機械的なクラッチを介して弁を操作することにより、弁の特に容易な調整を実現することができる。特に、個別の電力供給部または駆動部を必要とし得る付加的かつ能動的な構成部材は不要である。これにより、投入すべきコストが最小化される。好適には、弁は、クラッチを介して電動モータまたは電動モータによって駆動される軸に接続されており、これにより、電動モータの回転運動を弁またはクラッチに伝達することが可能である。変速装置に類似する構成部材を介して電動モータの回転運動を変換することも有利である。これにより、例えば、電動モータの回転運動を並進運動に変換することができる。弁の構成に応じてこれが有利になり得る。
【0016】
有利な一実施例の特徴は、弁の位置が、燃料ポンプを駆動する電動モータの、燃料圧送のための通常の回転運動とは逆方向の回転運動によって変更可能であることである。
【0017】
通常の回転運動とは、燃料をタンクから消費器へと圧送するために電動モータが回転する、この電動モータの回転方向のことである。好ましくは、燃料ポンプは、所定の回転方向のために設計されており、これにより、電動モータがこの回転方向に回転する場合にだけ燃料を消費器へと圧送する。今日の燃料ポンプには、特に、電気的な励磁場に相応に影響を与えることにより、2つの回転方向に回転させることが可能な、電気的に転流されるモータが使用される。電動モータと弁との間のクラッチを適切に機械的に形成することにより、電動モータの回転方向に依存して、弁を所期のように駆動制御することができる。
【0018】
弁が、クラッチを介し、電動モータによって移動可能であることも有利である。これにより、弁を所期のように駆動制御できるため、このことは有利である。基本的には、切換命令を介して開放および閉鎖可能な、電気的に操作されるクラッチを設けることも可能である。しかしながらこれは、本来の本発明による着想に反するものである。というのは、ここではまさに弁に対して可能な限りに容易に操作できることが所望されており、これにより、好適には、弁と電動モータとを接続するために機械的なクラッチが設けられているからである。
【0019】
さらに、弁の位置が、360°以下の、好適には180°以下の、特に好ましくは90°以下の電動モータの回転方向逆転によって変更可能であると有利である。
【0020】
好ましくは、弁の位置は、通常の回転方向とは逆方向の電動モータの部分的な回転だけによって与えられる。これによって回避しようとするのは、通常の回転方向とは逆の比較的長く持続する回転により、燃料がもはや圧送されないかまたは燃料の逆圧送さえも生じてしまうことである。さらに、弁の操作を迅速に行い、これにより、可能な限りに短い回転量が有利であるようにする。さらに、回転方向逆転の後に電動モータを再び通常方向に回転させるために必要な時間を短くする。なぜなら、逆方向に大きな回転角が生じないようにするためである。
【0021】
さらに、弁の位置が、少なくとも75°の電動モータの回転方向逆転によって変更可能であると有利である。意図しない弁の操作を排除するために、逆方向への十分に大きな回転運動が必要である。さらに、機械的なクラッチでは、弁を開放するかまたは閉鎖するために、十分に大きな移動を弁に伝達できるようにすることを目的として、最小回転量が必要である。
【0022】
クラッチが2つの部分から構成されており、回転方向逆転により、2つのクラッチ部分が、クラッチの回転軸線周りに互いに反対方向に回転可能であり、2つのクラッチ部分が互いに相対的に回転することにより、少なくとも1つのクラッチ部分の、回転軸線に沿った並進運動が発生可能であると有利である。電動モータの回転運動を並進運動に変換し、これにより、弁の適切な操作を保証するために、このような構成は有利である。2つのクラッチ部分は、例えば、これらが互いに接触する、回転式舞台装置のような2つのコンタクト面を有していてよい。2つのクラッチ部分が互いに相対運動することにより、回転運動を並進運動に変換することができる。これは、例えば、傾斜と、クラッチ部分が滑走する上昇または下降する軌道とを設けることによって実現可能である。
【0023】
特に好ましいのは、電動モータが通常の回転方向に運動し、ひいては燃料が圧送される場合に、クラッチ部分が互いに引っ掛かり、互いに相対運動しないようにクラッチ部分を形成することである。好ましくは、通常の回転方向に沿った回転運動の際には、弁の操作を回避し、これにより、弁が、都度の最後に設定された位置に止まるようにする。したがって、所期のように、開放された弁を引き続いて開放されたままにし、またはその逆に閉鎖された弁を閉鎖されたままにすることが可能である。
【0024】
さらに、回転軸線に沿った少なくとも1つのクラッチ部分の並進運動が、弁プレートに伝達可能であり、弁プレートにより、第2出口が開放可能であるかまたは閉鎖可能であると有利である。弁プレートを並進的にスライドさせることにより、開口部を所期のように開放するかまたはこれを閉鎖することができる。したがって、第2出口は、簡単に開放または閉鎖することができ、これにより、駆動噴流を形成するためのサクションジェットポンプへの燃料の圧送を開始または終了させることができる。
【0025】
さらに、弁プレートが係止部を有し、弁プレートが、少なくとも1つのクラッチ部分の並進運動によって生じたそれぞれの位置にこの係止部によって固定されると有利である。
【0026】
この係止部は、弁プレートを所定の位置に固定できるようにし、ひいては弁が開いたままかまたは閉じたままにするために有利である。考えられ得る係止機構では、例えば、弁プレートが移動すると、そのために設けられた凹部に嵌合する逆さ鉤が設けられる。並進運動と回転運動とを組み合わせることによって実現できるのは、例えば、逆さ鉤が、凹部に対して回転され、このときに弁プレートが、案内されている溝の平らな内面において、この弁プレートが、クラッチへと向かうようにまたはクラッチから離れるように並進的にスライドできることにより、係止を元のように解除することである。この原理は、例えば、ボールペンから公知である係止部と同様に機能する。
【0027】
さらに、弁プレートが所定の開放位置および所定の閉鎖位置に係止できるようにし、それぞれ、通常の回転方向とは逆に電動モータを回転運動させることにより、2つの位置の間で弁プレートがスライドできるようにする、別の多様な実施形態を規定することも可能である。
【0028】
弁プレートの係止が、少なくとも1つのクラッチ部分の並進運動により、かつ/または少なくとも1つのクラッチ部分の回転運動により解除可能であることも有利である。
【0029】
このようにすることは、弁プレートが、電動モータの同じ回転運動により、閉鎖位置にも開放位置にもスライドできることを保証するために特に有利である。このために特に有利であるのは、例えば、2つの位置のうちの1つから、通常の回転方向とは逆方向の、電動モータの第1の回転運動により、弁プレートを第2の位置にスライドさせ、そこで確実に係止させ、同じ方向への電動モータの第2の回転運動により、第2の位置から解除して、第1の位置にスライドさせて戻すことである。ここでは弁プレートは、通常の回転方向への電動モータの回転運動の際に、その都度の位置に止まる。
【0030】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項および以下の図の説明に記載されている。
【0031】
以下では、図面を参照し、複数の実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電動モータと、2つの出口と、弁と、クラッチとを備えた本発明による燃料ポンプの概略液圧回路図である。
図2】弁、およびこの弁を電動モータに接続することが可能なクラッチの基本原理図である。
図3】2つの出口のうちの1つが、クラッチによって電動モータに接続される弁によって閉鎖可能である、2つの出口を備えた燃料ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、本発明による燃料ポンプの液圧回路図が示されている。参照符号A1およびA2により、燃料ポンプの出口が示されている。出口A1は、消費器に、例えば、燃料ポンプの下流に接続されている内燃機関に通じている。出口A2は、出口A2を通して駆動噴流を供給可能な1つまたは複数のサクションジェットポンプに通じている。
【0034】
出口A2は、弁V1によって開放可能であるかまたは完全に閉鎖可能である。したがって、出口A2の下流に接続されているサクションジェットポンプは、駆動噴流を形成するために圧送される燃料が、弁V1を通って流れることができるか否かによって、起動または停止させることが可能である。
【0035】
電動モータM1は、燃料ポンプのポンプ段P1を駆動する。クラッチK1を介して弁V1も電動モータM1に接続されており、電動モータM1によってこの弁V1を移動させることができる。クラッチK1は、弁V1が、電動モータM1の所定の回転方向に沿っては移動しないのに対し、電動モータM1の逆方向の回転方向に沿っては開放位置から閉鎖位置にスライドできるように、または逆に閉鎖位置から開放位置にスライドできるように、設計されている。
【0036】
電動モータM1は、エネルギ源E1に導電的に接続されている。励磁場の極性を変更することにより、電動モータM1の回転方向を変更することができ、これにより、電動モータM1は、時計回りかまたは反時計回りに回転する。
【0037】
図2には、図1の燃料ポンプのクラッチK1の概略図が示されている。
【0038】
クラッチK1は、図2の実施例では2つのクラッチ部分1および2から形成されている。クラッチ部分1は、電動モータM1の駆動軸に接続されており、したがって電動モータM1の回転運動に対応して一緒に回転する。
【0039】
クラッチ部分2は、弁V1の弁プレート3に接続されており、さらにクラッチ部分1に接触している。クラッチ部分1が、電動モータM1により、燃料ポンプを動作させるための通常の回転方向とは逆に回転される場合、クラッチ部分1は、クラッチ部分2に対して回転する。したがって、このようにクラッチ部分1および2を構成することにより、回転軸線に沿いかつ弁V1へと向かう並進運動が形成され、これにより、弁プレート3は並進的にスライドされる。
【0040】
クラッチ部分1および2は、このために、例えば、回転式舞台装置のように形成されかつ傾斜を有することが可能である。クラッチ部分2の並進運動に加え、クラッチ部分2は、クラッチ部分1の回転運動の少なくとも一部を弁プレート3に伝達する。
【0041】
弁プレート3は、逆さ鉤によって形成された係止装置4を有しており、係止装置4により、出口A2を構成するケーシング5に弁プレート3を固定することができる。ケーシング5は、このために、逆さ鉤が嵌合することが可能な凹部を有している。係止された位置から弁プレート3を回動させて出すことにより、逆さ鉤を凹部から解除することができ、弁プレート3をケーシング5に対して並進運動させかつ回転運動させることができる。
【0042】
弁プレート3は、ばね6を介して、ケーシング5に対して支持されており、これにより、クラッチK1へと向かう、弁プレートの後退運動が助勢される。通常の回転方向とは逆の、電動モータM1の回転運動がないとき、弁プレート3は、開放状態かまたは閉鎖状態のいずれかの都度の最後の位置に止まる。したがって、弁V1の位置は、電動モータM1の回転運動によって完全に特定される。
【0043】
図3には、上部の端部領域に2つの出口A1およびA2を備えた燃料ポンプの断面図が示されている。出口A2は、図1および2に既に示した弁V1を介して開放および閉鎖することが可能である。図2から既知となった構造は、電動モータM1の上側の燃料ポンプ7に組み込まれている。図3の参照符号は、同じ部材が指示されている場合には、図2の参照符号と同じである。
【0044】
図3には、本発明による燃料圧送ユニット用の燃料ポンプについて考えられ得る例示的な実施形態が示されている。燃料ポンプ7は、慣用の燃料ポンプと同様に吸引開口部を下部の端部領域に有しており、この吸引開口部を通して、この燃料ポンプは、燃料をその周囲から吸引することができる。この場合に燃料は燃料ポンプによって上方に圧送され、図3の実施例では、出口A1を通り、弁V1の開放状態に応じて出口A2を通って搬出される。
【0045】
図1〜3の実施例は、特に制限的な性質を有しておらず、本発明の着想を明確にするためだけに使用されている。
図1
図2
図3