(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方向性電磁鋼板基材は、シリコン(Si):2.8〜6.8重量%、アルミニウム(Al):0.020〜0.040重量%、マンガン(Mn):0.01〜0.20重量%、及びアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、又はこれらの組み合わせを0.01〜0.15重量%含み、残部はFe及びその他の不可避不純物からなるものであることを特徴とする請求項4乃至12のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層及び/又はセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層又はセクションを、他の部分、成分、領域、層又はセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層又はセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層又はセクションとして言及される。
【0022】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/又は成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/又は成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0023】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは、まさに他の部分の上にあるか、その間に他の部分が伴ってもよい。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0024】
また、本発明において、1ppmは、0.0001%を意味する。
別途に定義しないものの、ここに使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するものとして追加解釈され、定義されない限り、理想的又は非常に公式的な意味で解釈されない。
【0025】
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0026】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、固形分を基準として、カルシウム化合物30〜70重量%、及び残部マグネシウム酸化物又はマグネシウム水酸化物を含む。ここで、固形分基準とは、溶媒などの成分を除いた固形分を100重量%に設定したものを意味する。
本発明の一実施例による焼鈍分離剤組成物は、方向性電磁鋼板基材10に塗布されてモンチセライト被膜20を形成する。
【0027】
モンチセライトはオリビングループ(olivine group)で、
図1のような原子単位構造から構成される。マグネシウムイオンはM1サイトに存在し、カルシウムイオンはM2サイトに存在する。
図1で、酸素(O)は赤色の円、シリコン(Si)はピンク色の円、Ca及びMgは青色の円で表示した。
【0028】
モンチセライト被膜20は、従来のフォルステライト被膜に比べて、M2サイトにCaイオンが置換されて化学構造的変化があり、融点が低下して、高温焼鈍工程でガラス被膜の形成温度が低くなって良好な品質の表面特性を確保できる。また、低い温度領域で生成されたモンチセライト被膜は、2次再結晶の形成に決定的な影響を及ぼすAlN系インヒビターの分解を抑制する効果があり、優れた磁性品質を確保できる。そして、モンチセライトは、フォルステライトよりモース硬度(Mohs hardness)が低くて被膜密着性に優れるという利点がある。
【0029】
カルシウム化合物は、モンチセライトのCaを供給する役割を果たす。従来の焼鈍分離剤組成物とは異なり、本発明の一実施例では、カルシウム化合物を添加して、鋼板基材10上にモンチセライト被膜20が形成される。
【0030】
カルシウム化合物は、Caを供給できる化合物であれば制限なく使用可能である。具体的には、カルシウムオキシド(CaO)、カルシウムヒドロキシド(Ca(OH)
2)、カルシウムコバルトオキシド(Ca
3Co
4O
9)、カルシウムシリケート(CaSiO
3)、カルシウムチタネート(CaTiO
3)、カルシウムジルコネート(CaZrO
3)、ヒドロキシアパタイト(Ca
5(OH)(PO
4)
3)、カルシウムカーボネート(CaCO
3)、カルシウムハイドライド(CaH
2)、カルシウムカーバイド(CaC
2)、カルシウムホスフェート(Ca
3(PO
4)
2)、カルシウムスルフェート(CaSO4)、カルシウムオキシレート(CaC
2O
4)、カルシウムペルオキシド(CaO
2)、及びカルシウムクロメート(CaCrO
4)の中から選択される1種以上になってもよい。
【0031】
カルシウム化合物は、焼鈍分離剤組成物内に30〜70重量%含むことができる。カルシウム化合物が過度に少なく含まれる場合、形成されるモンチセライト被膜20内のCa含有量が少なくなって鉄損に劣ることがある。カルシウム化合物が過度に多く含まれる場合、形成されるモンチセライト被膜20内のCa含有量が多くなって耐食性に劣ることがある。したがって、前述した範囲でカルシウム化合物を含むことができる。更に具体的には、カルシウム化合物は、40〜60重量%を含むことができる。更に具体的には、カルシウム化合物は、45〜55重量%を含むことができる。
【0032】
マグネシウム酸化物又はマグネシウム水酸化物は、モンチセライトのMgを供給する役割を果たす。マグネシウム酸化物又はマグネシウム水酸化物は、マグネシウム酸化物(MgO)であってもよい。前記マグネシウム酸化物(MgO)に関しては、通常広く知られた通りであるので、詳細な説明を省略する。
【0033】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、セラミック粉末を1〜10重量%更に含んでもよい。セラミック粉末は、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、及びZrO
2の中から選択される1種以上になってもよい。セラミック粉末を適正量更に含む場合、形成されるモンチセライト被膜20の絶縁特性が更に向上できる。
【0034】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、Sb
2(SO
4)
3、SrSO
4、BaSO
4、又はこれらの組み合わせを1〜10重量%更に含んでもよい。Sb
2(SO
4)
3、SrSO
4、BaSO
4、又はこれらの組み合わせを適正量更に含むことによって、表面光沢に優れ、粗度が非常に美麗な方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0035】
焼鈍分離剤組成物は、固形物の均一な分散及び容易な塗布のために溶媒を更に含んでもよい。溶媒としては、水、アルコールなどを使用することができ、固形分100重量部に対して300〜1000重量部を含むことができる。このように、焼鈍分離剤組成物は、スラリー形態であってもよい。
【0036】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板100は、方向性電磁鋼板基材10の一面又は両面にモンチセライト被膜20が形成される。
図2は、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図を示す。
図2では、方向性電磁鋼板基材10の上面にモンチセライト被膜20が形成された場合を示す。
【0037】
モンチセライト被膜20は、従来のフォルステライト被膜に比べて、M2サイトにCaイオンが置換されて化学構造的変化があり、融点が低下して、高温焼鈍工程でガラス被膜の形成温度が低くなって良好な品質の表面特性を確保できる。また、低い温度領域で生成されたモンチセライト被膜は、2次再結晶の形成に決定的な影響を及ぼすAlN系インヒビターの分解を抑制する効果があり、優れた磁性品質を確保できる。そして、モンチセライトは、フォルステライトよりモース硬度(Mohs hardness)が低くて被膜密着性に優れるという利点がある。
【0038】
モンチセライト被膜は、Caを0.5〜90重量%含むことができる。モンチセライト被膜20内のCa含有量が少なすぎると、方向性電磁鋼板の鉄損に劣ることがある。モンチセライト被膜20内のCa含有量が多すぎると、耐食性に劣ることがある。したがって、前述した範囲でCaを含むことができる。更に具体的には、Caを4〜65重量%含むことができる。
【0039】
モンチセライト被膜は、Mgを3〜80重量%含むことができる。Mg含有量が少なすぎると、モンチセライト被膜形成量が不足して表面不良が発生し、Mg含有量が多すぎると、フォルステライトが形成されて鉄損特性に劣ることがある。したがって、前述した範囲でMgを含むことができる。具体的には、Mgを5〜50重量%含むことができる。更に具体的には、Mgを7〜15重量%含むことができる。
【0040】
モンチセライト被膜は、Siを3〜80重量%含むことができる。Si含有量が少なすぎると、モンチセライト被膜形成量が不足して密着性に劣り、Si含有量が多すぎると、白化現象の表面欠陥が発生しうる。したがって、前述した範囲でSiを含むことができる。具体的には、Siを5〜50重量%含むことができる。更に具体的には、Siを7〜15重量%含むことができる。
【0041】
モンチセライト被膜は、酸素(O)を3〜80重量%含むことができる。更に具体的には、Oを5〜50重量%含むことができる。更に具体的には、Oを7〜15重量%含むことができる。
モンチセライト被膜は、Feを残部として含む。その他の炭素(C)も不純物として含むことができる。
【0042】
このようなモンチセライトは、焼鈍分離剤組成物を塗布する過程で、組成物の主成分であるカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)が、方向性電磁鋼板に含有されているシリコン(Si)と反応して形成される。このようなモンチセライト被膜20は、被膜張力付与効果に優れている。
【0043】
モンチセライト被膜20は、厚さが0.1〜10μmであってもよい。モンチセライト被膜20の厚さが薄すぎると、被膜張力付与能が低下して鉄損に劣る問題が生じることがある。モンチセライト被膜20の厚さが厚すぎると、モンチセライト被膜20が密着性に劣って剥離が起こることがある。したがって、モンチセライト被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。更に具体的には、モンチセライト被膜20の厚さは、0.8〜6μmであってもよい。
【0044】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板100は、モンチセライト被膜20上にセラミック層30が更に形成されてもよい。
図2では、モンチセライト被膜20上にセラミック層30が更に形成された一例を示す。
【0045】
セラミック層30の厚さは、0.5〜5μmであってもよい。セラミック層30の厚さが薄すぎると、セラミック層30の絶縁効果が少なく現れる問題が生じることがある。セラミック層30の厚さが厚すぎると、セラミック層30の密着性が低くなり、剥離が起こることがある。したがって、セラミック層30の厚さを前述した範囲に調節することができる。更に具体的には、セラミック層30の厚さは、0.8〜3.2μmであってもよい。
【0046】
セラミック層30は、セラミック粉末を含むことができる。セラミック粉末は、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3・TiO
2、Y
2O
3、9Al
2O
3・2B
2O
3、BN、CrN、BaTiO
3、SiC、及びTiCの中から選択される1種以上になってもよい。セラミック粉末の粒径は、2〜900nmになってもよい。セラミック粉末の粒径が小さすぎると、セラミック層の形成が困難になりうる。セラミック粉末の粒径が大きすぎると、表面粗度が粗くなって表面欠陥が発生しうる。したがって、セラミック粉末の粒径を前述した範囲に調節することができる。
【0047】
セラミック粉末は、球状、板状形、及び針状形を含む群より選択されたいずれか1つ以上の形態であってもよい。
セラミック層30は、金属リン酸塩を更に含んでもよい。金属リン酸塩は、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Al、及びMnの中から選択される1種以上を含むことができる。
【0048】
金属リン酸塩を更に含む場合、セラミック層30の絶縁性が更に向上する。
金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物からなるものであってもよい。
【0049】
金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物からなるものであり、金属水酸化物は、Ca(OH)
2、Al(OH)
3、Mg(OH)
2、B(OH)
3、Co(OH)
2、及びCr(OH)
3を含む群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。
【0050】
具体的には、前記金属水酸化物の金属原子は、リン酸のリンと置換反応して単一結合、二重結合、又は三重結合を形成してなるものであり、未反応自由リン酸(H
3PO
4)の量が25重量%以下の化合物からなるものであってもよい。
金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物からなるものであり、リン酸に対する金属水酸化物の重量比率は、1:100〜40:100で表されるものであってもよい。
【0051】
金属水酸化物が過度に多く含まれる場合には、化学的な反応が完了せず沈殿物が生じる問題が発生し、金属水酸化物が過度に少なく含まれる場合には、耐食性に劣る問題が発生しうるので、前記のように範囲を限定することができる。
以下、方向性電磁鋼板基材10の成分の限定理由について説明する。
【0052】
Si:2.8〜6.8重量%
シリコン(Si)は、鋼の比抵抗を増加させて鉄損を減少させる役割を果たすが、Siの含有量が少なすぎる場合には、鋼の比抵抗が小さくなって鉄損特性に劣り、高温焼鈍時、相変態区間が存在して2次再結晶が不安定になる問題が発生しうる。Siの含有量が多すぎる場合には、脆性が大きくなって冷間圧延が困難になる問題が発生しうる。したがって、前述した範囲でSiの含有量を調節することができる。更に具体的には、Siは、3.8〜5.8重量%含まれる。
【0053】
Al:0.020〜0.040重量%
アルミニウム(Al)は、最終的にAlN、(Al、Si)N、(Al、Si、Mn)N形態の窒化物になって抑制剤として作用する成分である。Alの含有量が少なすぎる場合には、抑制剤として十分な効果を期待しにくい。また、Alの含有量が多すぎる場合には、Al系の窒化物が過度に粗大に析出、成長するので、抑制剤としての効果が不足になりうる。したがって、前述した範囲にAlの含有量を調節することができる。
【0054】
Mn:0.01〜0.20重量
マンガン(Mn)は、Siと同じく、比抵抗を増加させて鉄損を減少させる効果があり、Siと共に窒化処理によって導入される窒素と反応して(Al、Si、Mn)Nの析出物を形成することによって、1次再結晶粒の成長を抑制して2次再結晶を起こすのに重要な元素である。しかし、Mnの含有量が多すぎる場合、熱延途中にオーステナイト相変態を促進するので、1次再結晶粒の大きさを減少させて2次再結晶を不安定にする。また、Mnの含有量が少なすぎる場合、オーステナイト形成元素として熱延再加熱時にオーステナイト分率を高めて析出物の固溶量を多くすることで、再析出時に析出物の微細化とMnSの形成による1次再結晶粒が過度に大きくならないようにする効果が不十分に起こることがある。したがって、前述した範囲にMnの含有量を調節することができる。
【0055】
Sb、Sn、又はこれらの組み合わせ:0.01〜0.15重量%
Sb又はSnは結晶粒界偏析元素であって、結晶粒界の移動を妨げる元素であるため、結晶粒成長抑制剤として{110}<001>方位のゴス結晶粒の生成を促進して2次再結晶がよく発達するようにするので、結晶粒の大きさ制御に重要な元素である。もし、Sb又はSnを単独又は複合添加した含有量が少なすぎると、その効果が低下する問題が生じることがある。Sb又はSnを単独又は複合添加した含有量が多すぎると、結晶粒界偏析がひどく生じて鋼板の脆性が大きくなり、圧延時に板破断が発生しうる。
更に具体的には、Sbを0.01〜0.05重量%、Snを0.01〜0.12重量%含むことができる。
【0056】
C:0.01重量%以下
Cは、本発明による実施例における方向性電磁鋼板の磁気的特性の向上に大きく役に立たない成分であるので、できるたけ除去することが好ましい。しかし、一定水準以上含まれている場合、圧延過程では、鋼のオーステナイト変態を促進して、熱間圧延時に熱間圧延組織を微細化させて均一な微細組織が形成されることを補助する効果があるので、スラブでのC含有量は0.03重量%以上で含まれることが好ましい。しかし、C含有量が過剰であれば、粗大な炭化物が生成され、脱炭時に除去が困難になるので、0.08重量%以下であることが好ましい。方向性電磁鋼板の製造過程で脱炭焼鈍過程により炭素が脱炭され、最終的に製造される方向性電磁鋼板内にはCが0.01重量%以下で含まれるようになる。
【0057】
N:0.001〜0.005重量%
Nは、Alなどと反応して結晶粒を微細化させる元素である。これらの元素が適切に分布する場合には、上述のように、冷間圧延後の組織を適切に微細化して適切な1次再結晶粒度を確保するのに役立つことができる。しかし、その含有量が過剰であれば、1次再結晶粒が過度に微細化され、その結果、微細な結晶粒によって2次再結晶時の結晶粒成長を招く駆動力が大きくなって、好ましくない方位の結晶粒まで成長することがある。また、N含有量が過剰であれば、最終焼鈍過程での除去にも多くの時間が費やされるので、好ましくない。したがって、前記窒素含有量の上限は0.005重量%とし、スラブ再加熱時に固溶される窒素の含有量が0.001重量%以上になるべきであるので、前記窒素含有量の下限は0.001重量%とすることが好ましい。方向性電磁鋼板の製造過程で浸窒焼鈍過程により窒素が一部浸透し、最終的に製造される方向性電磁鋼板内にはNが0.005〜0.05重量%含まれるようになる。
【0058】
図3は、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートを概略的に示す。
図3の方向性電磁鋼板の製造方法のフローチャートは、単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、方向性電磁鋼板の製造方法を多様に変形することができる。
【0059】
図3に示すように、方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階S10;鋼スラブを加熱する段階S20;加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する段階S30;熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する段階S40;冷延板を脱炭焼鈍及び窒化焼鈍する段階S50;脱炭焼鈍及び窒化焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階S60;及び焼鈍分離剤が塗布された鋼板を高温焼鈍する段階S70を含む。その他、方向性電磁鋼板の製造方法は、他の段階を更に含んでもよい。
【0060】
まず、段階S10では、鋼スラブを準備する。鋼スラブの成分については、前述した方向性電磁鋼板の成分について具体的に説明したので、繰り返しの説明は省略する。
次に、段階S20では、鋼スラブを加熱する。この時、スラブ加熱は、1,200℃以下で、低温スラブ法で加熱することができる。
【0061】
次に、段階S30では、加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延板を製造する。段階S30の後、製造された熱延板を熱延焼鈍することができる。
次に、段階S40では、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する。段階S40は、冷間圧延を1回実施するか、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施することができる。
【0062】
次に、段階S50では、冷延板を脱炭焼鈍及び窒化焼鈍する。この時、冷延板を脱炭焼鈍及び窒化焼鈍する段階は、冷延板を同時に脱炭焼鈍及び窒化焼鈍するか、脱炭焼鈍後、窒化焼鈍することができる。
【0063】
次に、段階S60では、脱炭焼鈍及び窒化焼鈍された鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤については具体的に上述したので、繰り返しの説明は省略する。
次に、段階S70では、焼鈍分離剤が塗布された鋼板を高温焼鈍する。高温焼鈍する過程で、焼鈍分離剤内のCa及びMgと方向性電磁鋼板基材10内のSiが反応して、モンチセライト被膜20を形成する。
【0064】
高温焼鈍時、1次均熱温度は700℃、2次均熱温度は1200℃とし、昇温区間の温度区間では15℃/hrの条件で統制することができる。また、気体雰囲気は、1200℃まで25%窒素及び75%水素の混合気体雰囲気とし、1200℃に到達した後には100%水素雰囲気で15時間維持した後、炉冷(furnace cooling)することができる。
【0065】
段階S70の後に、セラミック層30を形成する段階を更に含んでもよい。セラミック層30についても具体的に上述したので、繰り返しの説明は省略する。セラミック層30を形成する方法として、モンチセライト被膜上にセラミック粉末を噴射してセラミック層を形成することができる。具体的には、プラズマスプレーコーティング(Plasma spray)、高速火炎スプレーコーティング(High velocity oxy fuel)、エアロゾルデポジション(Aerosol deposition)、低温スプレーコーティング(Cold spray)の方法を適用することができる。
【0066】
更に具体的には、Ar、H2、N2、又はHeを含むガスを20〜300kWの出力でプラズマ化した熱源に、セラミック粉末を供給してセラミック層を形成するプラズマスプレーコーティング方法を使用することができる。また、プラズマスプレーコーティング方法として、Ar、H2、N2、又はHeを含むガスを20〜300kWの出力でプラズマ化した熱源に、セラミック粉末及び溶媒の混合物サスペンション形態で供給してセラミック層30を形成することができる。この時、溶媒は、水又はアルコールになってもよい。
更に、セラミック層30を形成する方法として、セラミック粉末及び金属リン酸塩を含むセラミック層形成組成物を塗布してセラミック層を形成する方法を使用することができる。
【0067】
セラミック層30の形成後、必要に応じて磁区微細化を行うことができる。
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるのではない。
【0068】
実験例1:セラミック粉末の種類別特性
実施例1
シリコン(Si)を3.4重量%、アルミニウム(Al):0.03重量%、マンガン(Mn):0.05重量%、アンチモン(Sb)を0.04重量%、及びスズ(Sn)を0.11重量%、炭素(C)を0.06重量%、窒素(N)を40重量ppm含み、残部はFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1150℃で220分間加熱した後、2.3mmの厚さに熱間圧延して、熱延板を製造した。
【0069】
熱延板を1120℃まで加熱した後、920℃で95秒間維持した後、水に急冷して酸洗した後、0.23mmの厚さに冷間圧延して、冷延板を製造した。
冷延板を850℃に維持された炉(Furnace)中に投入した後、露点温度及び酸化能を調節し、水素、窒素、及びアンモニアの混合気体雰囲気で脱炭浸窒及び1次再結晶焼鈍を同時に行って、脱炭浸窒焼鈍された鋼板を製造した。
焼鈍分離剤組成物として、カルシウムチタネート(CaT
iO
3)50重量%、酸化マグネシウム40重量%、酸化チタン5重量%、及びSb
2(SO
4)
3 5重量%を蒸留水と混合してスラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを脱炭浸窒焼鈍された鋼板に塗布した後、最終焼鈍した。
最終焼鈍時、1次均熱温度は700℃、2次均熱温度は1200℃とし、昇温区間の温度区間では15℃/hrとした。また、1200℃までは窒素50体積%及び水素50体積%の混合気体雰囲気とし、1200℃到達後には100体積%の水素気体雰囲気で20時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
最終焼鈍により製造されたモンチセライト被膜をX−ray回折分析法(XRD)を利用して定量分析を進行させて、その結果を
図4に示した。モンチセライト被膜のSEM EDS分析結果を
図6に示した。
図6に示されるように、モンチセライト被膜内のCa:11.27重量%、Mg:8.23重量%、Si:8.30重量%、O:7.45重量%と分析された。
【0070】
その後、アルゴン(Ar)ガスを250kWの出力でプラズマ化した熱源に、セラミック粉末として、TiO
2を供給して、最終焼鈍板の表面に0.9μmの厚さのセラミック層を形成した。
【0071】
図5では、実施例1で製造した方向性電磁鋼板の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。方向性電磁鋼板基材上にカルシウム成分を含むモンチセライト被膜及びセラミック層が順次に形成されたことを確認できる。
【0072】
実施例2〜12
実施例1と同様に実施するが、焼鈍分離剤内のカルシウム化合物及びセラミック粉末を、下記表1にまとめられたカルシウム化合物及びセラミック粉末に切り替えてモンチセライト被膜及びセラミック層を形成した。
すべてのカルシウム化合物においてモンチセライト被膜が形成されたことを確認した。
【0073】
実施例13
実施例1と同様に実施するが、セラミック層を形成しなかった。
【0074】
比較例1
実施例13と同様に実施するが、酸化マグネシウム90重量%、酸化チタン5重量%、及びSb
2(SO
4)
3 5重量%を含む焼鈍分離剤組成物を使用した。
【0075】
比較例2
実施例1と同様に実施するが、酸化マグネシウム90重量%、酸化チタン5重量%、及びSb2(SO4)3 5重量%を含む焼鈍分離剤組成物を使用した。
図7は、実施例1及び比較例2で製造したモンチセライト被膜及びフォルステライト被膜のフーリエ変換赤外線分光(FT−IR)分析結果を示した。
【0076】
実施例及び比較例で製造した方向性電磁鋼板を、1.7T、50Hzの条件で、磁気特性及び騒音特性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0077】
電磁鋼板の磁気特性は、通常、W17/50とB8を使用する。W17/50は、周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流で磁化させた時に現れる電力損失を意味する。ここで、Teslaは、単位面積あたりの磁束(flux)を意味する磁束密度の単位である。B8は、電磁鋼板の周囲を巻取った巻線に800A/mの大きさの電流量を流した時、電磁鋼板に流れる磁束密度値を示す。
【0078】
また、絶縁特性は、ASTM A717国際規格により、Franklin測定器を活用してコーティング上部を測定した。
また、密着性は、試験片を10〜100mmの円弧に接して180°曲げた際の、被膜剥離のない最小円弧径で表したものである。
【0079】
【表1】
表1に示されるように、比較例1及び比較例2より、実施例1〜13の特性に優れていることを確認できる。
【0080】
実験例2:1000kVAの変圧器の磁気特性、占積率及び騒音特性評価
実施例14
シリコン(Si)を3.3重量%、アルミニウム(Al):0.03重量%、アンチモン(Sb)を0.03重量%、及びスズ(Sn)を0.06重量%、炭素(C)を0.05重量%、窒素(N)を30重量ppm含み、残部はFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1150℃で220分間加熱した後、2.3mmの厚さに熱間圧延して、熱延板を製造した。
【0081】
熱延板を1120℃まで加熱した後、920℃で95秒間維持した後、水に急冷して酸洗した後、0.23mmの厚さに冷間圧延して、冷延板を製造した。
冷延板を850℃に維持された炉(Furnace)中に投入した後、露点温度及び酸化能を調節し、水素、窒素、及びアンモニアの混合気体雰囲気で脱炭浸窒及び1次再結晶焼鈍を同時に行って、脱炭浸窒焼鈍された鋼板を製造した。
【0082】
焼鈍分離剤組成物としてカルシウムチタネート(CaTiO
3)50重量%、酸化マグネシウム40重量%、酸化チタン5重量%、及びSb
2(SO
4)
3 5重量%を蒸留水と混合してスラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを脱炭浸窒焼鈍された鋼板に塗布した後、最終焼鈍した。
【0083】
最終焼鈍時、1次均熱温度は700℃、2次均熱温度は1200℃とし、昇温区間の温度区間では15℃/hrとした。また、1200℃までは窒素50体積%及び水素50体積%の混合気体雰囲気とし、1200℃到達後には100体積%の水素気体雰囲気で20時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0084】
その後、コロイダルシリカ45重量%、第1リン酸アルミニウム45重量%、酸化クロム5重量%、水酸化ニッケル5重量%で混合されたセラミック層形成組成物を撹拌し、最終焼鈍板の表面に4.5g/m2となるように塗布した後、860℃に設定された乾燥炉で120秒間処理した後、レーザ磁区微細化処理を実行し、1000kVAの変圧器を製作して、設計磁束密度に応じて60Hzの条件で評価した結果を下記表2に示した。
【0085】
比較例3
実施例14と同様に実施するが、酸化マグネシウム90重量%、酸化チタン5重量%、及びSb2(SO4)3 5重量%を含む焼鈍分離剤組成物を使用した。
占積率は、JIS C2550国際規格により、測定器を活用して測定した。電磁鋼板試験片を複数個積層した後、表面に1MPaの均一な圧力を加えた後、試験片の4面の高さの精密測定により電磁鋼板の積層による実重量比率を理論重量で割って測定した。
騒音評価方法は、国際規定IEC61672−1と同一に評価するが、負圧の代わりに電磁鋼板の揺れ(振動)データを取得して騒音換算値[dBA]で評価する。電磁鋼板の揺れは、周波数60Hzの磁場を1.7Teslaまで交流で磁化させた時、レーザドップラー方式を活用して非接触式で時間に応じて振動パターンを測定する。
【0086】
【表2】
表2に示されるように、比較例3より、実施例14の特性がはるかに優れていることを確認できる。
【0087】
本発明は、実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。