(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
図1に示すように、誘導加熱調理器100の上部には、鍋等の被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2を備えている。第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2は、天板4の手前側において、横方向に並設されている。また、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器100は、3口目の加熱口として、第3の誘導加熱口3も備えている。第3の誘導加熱口3は、第1の誘導加熱口1及び第2の誘導加熱口2の奥側であって、天板4の横方向のほぼ中央位置に設けられている。
第1の誘導加熱口1、第2の誘導加熱口2及び第3の誘導加熱口3のそれぞれの下方には、加熱口に載置された被加熱物5を加熱する第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13が設けられている。各々の加熱手段はコイルで構成されている。
【0010】
天板4は、全体が耐熱強化ガラス又は結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されている。また、天板4には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12、及び第3の誘導加熱手段13の加熱範囲である加熱口に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布又は印刷等により形成されている。
【0011】
天板4の手前側には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13で被加熱物5等を加熱する際の投入電力及び調理メニュー等を設定するための入力装置として、操作部40が設けられている。なお、本実施の形態1では、誘導加熱コイル毎に操作部40を分けて、操作部40a、操作部40b及び操作部40cとしている。
また、操作部40の近傍には、報知手段として、各誘導加熱コイルの動作状態、操作部40からの入力及び操作内容等を表示する表示部41が設けられている。なお、本実施の形態1では、誘導加熱コイル毎に表示部41を分けて、表示部41a、表示部41b及び表示部41cとしている。
【0012】
なお、操作部40及び表示部41は、上述のように誘導加熱手段毎に設けられている場合、及び、各誘導加熱手段共通のものとして設ける場合等、特に限定するものではない。ここで、操作部40は、例えばプッシュスイッチ及びタクトスイッチ等の機械的なスイッチ、電極の静電容量の変化により入力操作を検知するタッチスイッチ等により構成されている。また、表示部41は、例えばLCD(Liquid Crystal Device)及びLED等で構成されている。
なお、操作部40と表示部41とは、これらを一体に構成した操作表示部43としても良い。操作表示部43は、例えば、LCDの上面にタッチスイッチを配置したタッチパネル等によって構成される。
【0013】
誘導加熱調理器100の内部には、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12、及び第3の誘導加熱手段13のコイルに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器全体の動作を制御するための制御部45とが設けられている。
【0014】
駆動回路50により高周波電力が、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13に供給されることで、各誘導加熱手段のコイルからは高周波磁界が発生する。なお、駆動回路50の詳細構成については、後述する。
【0015】
第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13は、例えば次のように構成されている。なお、第1の誘導加熱手段11、第2の誘導加熱手段12及び第3の誘導加熱手段13は、同様の構成となっている。このため、代表して第1の誘導加熱手段11の構成を以下に説明する。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の第1の誘導加熱手段を示す平面図である。
図2において、第1の誘導加熱手段11は、加熱口の中央に配置された内周コイル11aと、内周コイル11aの周囲に配置された外周コイル11e及び外周コイル11dとで構成されている。第1の誘導加熱手段11の外周は、第1の誘導加熱口1に対応した略円形状である。
【0017】
内周コイル11aは、略同心円状に配置された内周内コイル111aと内周外コイル112aとから構成されている。内周内コイル111a及び内周外コイル112aは、円形の平面形状を有し、絶縁被膜された任意の金属からなる導電線が円周方向に巻回されることにより構成されている。なお、導電線の材料としては、例えば銅、アルミニウムなどがある。
内周内コイル111a及び内周外コイル112aは、直列に接続されて一つの駆動回路50aにより駆動制御される。なお、内周内コイル111a及び内周外コイル112aを並列接続しても良く、また、それぞれ独立した駆動回路を用いて駆動しても良い。
【0018】
外周コイル11dは、外周上コイル111dと外周下コイル112dとから構成されている。外周コイル11eは、外周左コイル111eと外周右コイル112eとから構成されている。外周上コイル111d、及び外周下コイル112dは、直列に接続されて一つの駆動回路50dにより駆動制御される。外周左コイル111e、及び外周右コイル112eは、直列に接続されて一つの駆動回路50eにより駆動制御される。
【0019】
外周上コイル111d、外周下コイル112d、外周左コイル111e、外周右コイル112eは、内周コイル11aの円形の外形にほぼ沿うようにして、内周コイル11aの周辺に配置されている。なお、以下の説明において、外周上コイル111d、外周下コイル112d、外周左コイル111e、及び外周右コイル112eを、「各外周コイル」とも称する。
【0020】
4つの各外周コイルは、略1/4円弧状の平面形状を有しており、絶縁皮膜された任意の金属からなる導電線を各外周コイルの1/4円弧状の形状に沿って巻きつけることで構成される。すなわち、各外周コイルは、内周コイル11aに隣接する1/4円弧状領域において、内周コイル11aの円形の平面形状に実質的に沿って延びるように構成されている。なお、導電線の材料としては、例えば銅、アルミニウムなどがある。なお、各外周コイルはそれぞれ並列接続しても良い。また、外周上コイル111dと外周下コイル112dを一つの駆動回路を用いて駆動しても良い。
【0021】
なお、各外周コイルの数は4つに限定されるものではない。また、各外周コイルの形状もこれに限るものではなく、例えば、円形の外周コイルを複数用いた構成でも良い。また、各外周コイルの形状は、例えば、楕円状でも良いし、三角形でも良いし、四角形でも良い。
【0022】
なお、本実施の形態1においては、内周コイル11aの周囲に各外周コイルを配置している。各外周コイルを内周コイル11aと同心円状に配置しないのは、各外周コイルと内周コイル11aの電磁結合を弱くして、各コイル間の干渉を小さくして各コイルの電力制御性を良くするためである。
【0023】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、第1の誘導加熱手段11は、駆動回路50a、駆動回路50d、及び駆動回路50eにより駆動制御される。即ち、内周コイル11aは、駆動回路50aにより駆動制御される。また、外周上コイル111d及び外周下コイル112dは、駆動回路50dにより駆動制御される。また、外周左コイル111e及び外周右コイル112eは、駆動回路50eにより駆動制御される。
駆動回路50aから内周コイル11aに高周波電流が供給されることで、内周コイル11aから高周波磁界が発生する。駆動回路50dから外周上コイル111d及び外周下コイル112dに高周波電流が供給されることで、外周上コイル111d及び外周下コイル112dから高周波磁界が発生する。駆動回路50eから外周左コイル111e及び外周右コイル112eに高周波電流が供給されることで、外周左コイル111e及び外周右コイル112eから高周波磁界が発生する。
【0024】
制御部45は、専用のハードウェア、又はメモリ48に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)で構成される。なお、CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はプロセッサとも言う。
【0025】
制御部45が専用のハードウェアである場合、制御部45は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field−programmable gate array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。制御部45が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現しても良いし、各機能部を一つのハードウェアで実現しても良い。
制御部45がCPUの場合、制御部45が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ48に格納される。CPUは、メモリ48に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部45の各機能を実現する。ここで、メモリ48は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。
なお、制御部45の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしても良い。
【0026】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
なお、駆動回路50は加熱手段毎に設けられているが、その回路構成は同一であっても良いし、加熱手段毎に変更しても良い。
図4では内周コイル11aを駆動する駆動回路50aについて図示する。
【0027】
図4に示すように、駆動回路50aは、アームを2組備えたフルブリッジインバータ回路で構成されている。駆動回路50aのアームは、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成される。
また、駆動回路50aは、直流電源回路22と、共振コンデンサ24aと、入力電流検出手段25aとを備える。
【0028】
入力電流検出手段25aは、例えば電流センサで構成され、交流電源21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御部45へ出力する。
【0029】
直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b、平滑コンデンサ22cを備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換する。
【0030】
直流電源回路22の出力である正負母線間には、2組のアームが接続されている。一方のアームは、スイッチング素子であるIGBT231a、231bが直列に接続され、フライホイールダイオードであるダイオード231c、231dがそれぞれIGBT231a、231bと並列に接続されている。他方のアームは、スイッチング素子であるIGBT232a、232bが直列に接続され、フライホイールダイオードであるダイオード232c、232dがそれぞれIGBT232a、232bと並列に接続されている。
【0031】
IGBT231a、IGBT231b、IGBT232a、及びIGBT232bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。制御部45は、IGBT231aをオンさせている間はIGBT231bをオフ状態にし、IGBT231aをオフさせている間はIGBT231bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。また、制御部45は、IGBT232aをオンさせている間はIGBT232bをオフ状態にし、IGBT232aをオフさせている間はIGBT232bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、駆動回路50aは、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜100kHz程度の高周波の交流電力に変換して、内周コイル11aと共振コンデンサ24aからなる共振回路に電力を供給する。
【0032】
このように構成することで、内周コイル11aには数十A程度の高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって内周コイル11aの直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。
【0033】
なお、スイッチング素子であるIGBT231a、IGBT231b、IGBT232a、及びIGBT232bは、例えばシリコン系からなる半導体で構成されている。なお、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いた構成でも良い。スイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体材料を用いることで、スイッチング素子の損失を減らすことができる。また、スイッチング周波数を高周波にしても駆動回路の放熱が良好であるため、駆動回路の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0034】
コイル電流検出手段25bは、内周コイル11aと共振コンデンサ24aとからなる共振回路に接続されている。コイル電流検出手段25bは、例えば、電流センサで構成され、内周コイル11aに流れる電流を検出し、コイル電流値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0035】
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
図5では、外周コイル11dを駆動する駆動回路50d、及び外周コイル11eを駆動する駆動回路50eについて図示する。
図5に示すように、駆動回路50d及び駆動回路50eは、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成されるアームを3組備えている。なお、これ以降、3組のアームのうち1組を共通アーム、他の2組を第1アーム及び第2アームと呼ぶ。
【0036】
共通アームは、外周コイル11d及び外周コイル11eに接続されたアームで、IGBT234a、IGBT234b、ダイオード234c、及びダイオード234dで構成されている。
第1アームは、外周コイル11dが接続されたアームで、IGBT233a、IGBT233b、ダイオード233c、及びダイオード233dで構成されている。
第2アームは、外周コイル11eが接続されたアームで、IGBT235a、IGBT235b、ダイオード235c、及びダイオード235dで構成されている。
【0037】
共通アームのIGBT234a及びIGBT234b、第1アームのIGBT233a及びIGBT233b、並びに第2アームのIGBT235a及びIGBT235bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
【0038】
制御部45は、共通アームのIGBT234aをオンさせている間はIGBT234bをオフ状態にし、IGBT234aをオフさせている間はIGBT234bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。同様に、制御部45は、第1アームのIGBT233a及びIGBT233b、並びに第2アームのIGBT235a及びIGBT235bを交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、共通アームと第1アームとにより、外周コイル11dを駆動するフルブリッジインバータを構成する。また、共通アームと第2アームとにより、外周コイル11eを駆動するフルブリッジインバータを構成する。
【0039】
外周コイル11d及び共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点であるIGBT234aとIGBT234bの接続点と、第1アームの出力点であるIGBT233aとIGBT233bの接続点との間に接続される。
外周コイル11e及び共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点と、第2アームの出力点であるIGBT235aとIGBT235bの接続点との間に接続されている。
【0040】
外周コイル11dに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25cにより検出する。コイル電流検出手段25cは、例えば、外周コイル11dに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
外周コイル11eに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25dにより検出する。コイル電流検出手段25dは、例えば、外周コイル11eに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0041】
制御部45は、投入電力に応じて、各アームのスイッチング素子(IGBT)に高周波の駆動信号を入力し、各コイルへ供給する電力を調整する。制御部45は、各アームの駆動信号を同一周波数とし、共通アームの駆動信号を基準とした第1アーム及び第2アームの駆動信号の位相差制御によって、各コイルへ供給される電力を調整する。なお、各アームの駆動信号のオンデューティ比は同一である。
【0042】
このように、2つのフルブリッジインバータ回路のアームのうちの一つを共通アームとして共有することにより、IGBTを8個から6個へインバータの部品点数を少なくして、安価に構成できる。
【0043】
なお、
図5では、外周コイル11dを構成する外周上コイル111dと外周下コイル112dとを直列接続し、外周コイル11eを構成する外周左コイル111eと外周右コイル112eとを直列接続する例を示したが、これに限定されない。4つの外コイルを個別の駆動回路で駆動しても良いことは言うまでもない。
【0044】
なお、内周コイル11aは、本発明における「第1コイル」に相当する。
また、外周コイル11d及び外周コイル11eは、本発明における「第2コイル」に相当する。
また、駆動回路50aは、本発明における「第1インバータ回路」に相当する。
また、駆動回路50d及び駆動回路50eは、本発明における「第2インバータ回路」に相当する。
また、制御部45は、本発明における「制御装置」に相当する。
また、駆動回路50aから内周コイル11aへ供給される高周波電流は、本発明における「第1高周波電流」に相当する。
また、駆動回路50dから外周コイル11dへ供給される高周波電流は、本発明における「第2高周波電流」に相当する。
また、駆動回路50eから外周コイル11eへ供給される高周波電流は、本発明における「第2高周波電流」に相当する。
【0045】
(動作)
次に、本実施の形態1における誘導加熱調理器の動作について説明する。
【0046】
使用者は、被加熱物5を誘導加熱調理器100の加熱口に載置し、操作表示部43により加熱動作を開始させる入力操作を行う。
制御部45は、入力操作に応じて、駆動回路50a、50d、50eをそれぞれ動作させ、被加熱物5を誘導加熱する加熱動作を行う。すなわち、内周コイル11a、外周上コイル111d及び外周下コイル112d、並びに外周左コイル111e及び外周右コイル112eのそれぞれへ高周波電流を供給させる。
【0047】
制御部45は、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。制御部45は、20kHz〜100kHzの範囲内、例えば21kHzの周波数で、駆動回路50a、50d、50eを駆動する。これにより、天板4上に配置された被加熱物5が誘導加熱される。なお、制御部45は、各コイルの上方に被加熱物5が載置されているか否かを判定し、上方に被加熱物5が載置されていない無負荷状態のコイルの駆動を停止しても良い。例えば、制御部45は、コイル電流と入力電流の関係に応じて負荷判定を行う。
【0048】
また、制御部45は、内周コイル11aと各外周コイルとの隣り合う部分において高周波電流の向きが同じとなるように、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。なお、
図4及び
図5において、直流電源回路22、制御部45、及び操作表示部43は共通化しても良い。
【0049】
図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の各コイルに流れる電流方向を示す図である。
図6に示すように、内周コイル11aの電流方向15と、各外周コイルの内周コイル11aと隣り合う部分に流れる電流方向16とは、同じ方向に流れる。一方、内周コイル11aの電流方向15と、各外周コイルの外側の部分に流れる電流方向17とは、逆方向に流れることになる。
【0050】
各コイルに流れる電流の向きについて
図7を用いて詳細に説明する。なお、各外周コイルの構成はそれぞれ同じであるため、外周右コイル112eを例に説明する。
【0051】
図7は、
図6の要部拡大図である。なお、
図7においては、内周コイル11aの一部と外周右コイル112eとを示している。
図7に示すように、外周右コイル112eは、環状に巻かれた巻線によって形成されている。また、外周右コイル112eは、内周コイル11aの周方向に延びる第1巻線部112e1と、第1巻線部112e1と間隔を空けて配置され、内周コイル11aの周方向に延びる第2巻線部112e2とを有している。また、外周右コイル112eは、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との間に、第3巻線部112e3と第4巻線部112e4とを有している。
【0052】
第1巻線部112e1に流れる高周波電流の電流方向16と、第1巻線部112e1に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流の電流方向15とは、同じ方向に流れる。
これにより、外周右コイル112eと内周コイル11aとが隣り合う部分の周辺の磁界が強め合い、誘導加熱による発熱を大きくすることができる。つまり、当該部分の火力を強くすることができる。
【0053】
一方、第2巻線部112e2に流れる高周波電流の電流方向17と、第1巻線部112e1に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流の電流方向15とは、逆方向に流れる。
そのため、例えば、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2とを同じ平面上に配置すると、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界の一部と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界の一部とが打ち消し合う。つまり、被加熱物5の誘導加熱による発熱が小さくなる。
そこで、本実施の形態1における誘導加熱調理器100においては、各外周コイルの第1巻線部112e1と天板4との距離と、第2巻線部112e2と天板4との距離とが異なるように構成している。具体例を、
図8を用いて説明する。
【0054】
(コイル配置)
図8は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図8においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図8においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図8においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0055】
図8に示すように、内周コイル11a、及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が短い平面である上部平面U上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、第1巻線部112e1よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。
【0056】
以上のように本実施の形態1においては、第1巻線部112e1と天板4との距離と、第2巻線部112e2と天板4との距離とが異なる。
このため、第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2が同一平面上に配置した場合と比較すると、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを軽減できる。よって、被加熱物5の外周部での火力及び発熱の低下を抑制することができ、被加熱物5の外周部の温度むらを低減することができる。
特に、各外周コイルの幅である内側と外側との距離が短い場合には、より一層、被加熱物5の外周部の温度むらを低減させる効果、並びに被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0057】
また、本実施の形態1においては、制御部45は、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。また、各外周コイルの第1巻線部に流れる高周波電流は、第1巻線部に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流と同じ向きとなる。
このため、異なる周波数の高周波電流が隣接するコイルに流れることによって、磁気的な干渉によって生じる騒音の発生を抑制できる。
【0058】
また、加熱口の外周側に配置される第2巻線部112e2が、第1巻線部112e1よりも天板4に近い位置に配置されるので、加熱口の外周側となる被加熱物5の外周部を加熱しやすく、大鍋などの被加熱物5の外周部の温度むらを低減させる効果が得られる。よって、大鍋などの被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0059】
実施の形態2.
本実施の形態2における誘導加熱調理器100の各外周コイルの配置について、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0060】
(コイル配置)
図9は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図9においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図9においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図9においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0061】
図9に示すように、内周コイル11a、及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eは、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって上方へ傾斜し、基準平面Bと交差する上向き傾斜面S1上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、第1巻線部112e1よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2は、共に天板4に対して斜めに配置されている。
【0062】
このような構成においても上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態2では、各外周コイルの第1巻線部と第2巻線部とが同一の平面上に配置されるので、各外周コイルの製作工程において、コイルの曲げ工程を省くことができ、製作工程を簡易化できる。
また、本実施の形態2では、同一のコイル幅の外周コイルと比較して、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との間隔を広くすることができる。具体例を、
図10を用いて説明する。
【0063】
図10は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の第1巻線部と第2巻線部との間隔を説明する図である。
図10の下段は、外周右コイル112eを基準平面B上に配置した構成を示す。この場合、平面視におけるコイル幅Wは、第1巻線部112e1の幅W1と第2巻線部112e2の幅W2と、間隔G2との和となる。
図10の上段は、外周右コイル112eを上向き傾斜面S1上に配置した構成を示す。外周右コイル112eの平面視におけるコイル幅Wを同じにした場合、上向き傾斜面S1上に配置した第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との間隔G1は、間隔G2よりも広くなる。
このように、本実施の形態2の構成によれば、同一のコイル幅Wの外周コイルを基準平面B上に配置した場合と比較して、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との間隔を広くすることができる。
【0064】
(変形例1)
図11は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例1を示す断面図である。
なお、
図11においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図11においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図11においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0065】
図11に示すように、内周コイル11aは、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって上方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である上向き傾斜面S1上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行であって、天板4との距離が基準平面Bよりも短い平面である上部平面U上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、第1巻線部112e1よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、上記実施の形態1の構成と比較して、各外周コイルの曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0066】
(変形例2)
図12は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例2を示す断面図である。
なお、
図12においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図12においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図12においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0067】
図12に示すように、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって上方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である上向き傾斜面S1上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、第1巻線部112e1よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、上記実施の形態1の構成と比較して、外周コイルを曲げる製作工程における曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0068】
実施の形態3.
本実施の形態3における誘導加熱調理器100の各外周コイルの配置について、上記実施の形態1及び2との相違点を中心に説明する。
【0069】
(コイル配置)
図13は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図13においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図13においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図13においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0070】
図13に示すように、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が長い平面である下部平面L上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、第1巻線部112e1よりも天板4との距離が長い位置に配置されている。
【0071】
以上のように本実施の形態3においては、第1巻線部112e1と天板4との距離と、第2巻線部112e2と天板4との距離とが異なる。
このため、第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2が同一平面上に配置した場合と比較すると、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを軽減できる。よって、被加熱物5の外周部での火力及び発熱の低下を抑制することができ、被加熱物5の外周部の温度むらを低減することができる。
特に、各外周コイルの幅である内側と外側との距離が短い場合には、より一層、被加熱物5の外周部の温度むらを低減させる効果、被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0072】
また、本実施の形態3においては、制御部45は、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。また、各外周コイルの第1巻線部に流れる高周波電流は、第1巻線部に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流と同じ向きとなる。
このため、異なる周波数の高周波電流が隣接するコイルに流れることによって、磁気的な干渉によって生じる騒音の発生を抑制できる。
【0073】
また、加熱口の内周側に配置される第1巻線部112e1が、第2巻線部112e2よりも天板4に近い位置に配置される。このため、加熱口の内周側となる被加熱物5の中央部を加熱しやすく、一般的に普及数量の多い中鍋又は小鍋などの被加熱物5に対して、被加熱物5の外周部の温度むらを低減させる効果が得られる。よって、中鍋又は小鍋などの被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0074】
(変形例1)
図14は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例1を示す断面図である。
なお、
図14においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図14においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図14においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0075】
図14に示すように、内周コイル11aは、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eは、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって下方へ傾斜し、基準平面Bと交差する下向き傾斜面S2上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2は、共に天板4に対して斜めに配置されている。
【0076】
このような構成においても上述した効果を得ることができる。また、各外周コイルの第1巻線部と第2巻線部とが同一の平面上に配置されるので、各外周コイルの製作工程において、コイルの曲げ工程を省くことができ、製作工程を簡易化できる。
また、上記実施の形態2と同様に、同一のコイル幅の外周コイルと比較して、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との間隔を広くすることができる。
【0077】
(変形例2)
図15は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例2を示す断面図である。
なお、
図15においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図15においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図15においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0078】
図15に示すように、内周コイル11aは、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって下方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である下向き傾斜面S2上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行であって、天板4との距離が基準平面Bよりも長い平面である下部平面L上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上述した効果を得ることができる。また、
図13に示した構成と比較して、各外周コイルの曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0079】
(変形例3)
図16は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例3を示す断面図である。
なお、
図16においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図16においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図16においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0080】
図16に示すように、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって下方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である下向き傾斜面S2上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上述した効果を得ることができる。また、
図13に示した構成と比較して、各外周コイルの曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0081】
実施の形態4.
本実施の形態4における誘導加熱調理器100の各外周コイルの配置について、上記実施の形態1〜3との相違点を中心に説明する。
【0082】
(コイル配置)
本実施の形態4における各外周コイルは、平面視において、第1巻線部の少なくとも一部が内周コイル11aと重なる位置に配置されている。具体例を、
図17を用いて説明する。
【0083】
図17は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図17においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図17においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図17においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0084】
図17に示すように、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が長い平面である下部平面L上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が長い位置に配置されている。また、平面視において、第1巻線部112e1の少なくとも一部は、内周コイル11aと下方で重なる位置に配置されている。
【0085】
以上のように本実施の形態3においては、第1巻線部112e1と天板4との距離と、第2巻線部112e2と天板4との距離とが異なる。
このため、第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2が同一平面上に配置した場合と比較すると、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを軽減できる。よって、被加熱物5の外周部での火力及び発熱の低下を抑制することができ、被加熱物5の外周部の温度むらを低減することができる。
特に、各外周コイルの幅である内側と外側との距離が短い場合には、より一層、被加熱物5の外周部の温度むらを低減させる効果、被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0086】
また、本実施の形態4においては、制御部45は、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。また、各外周コイルの第1巻線部に流れる高周波電流は、第1巻線部に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流と同じ向きとなる。
このため、異なる周波数の高周波電流が隣接するコイルに流れることによって、磁気的な干渉によって生じる騒音の発生を抑制できる。
【0087】
また、本実施の形態4における各外周コイルは、平面視において、第1巻線部の少なくとも一部が内周コイル11aと重なる位置に配置されている。このため、内周コイル11aの外周側近傍の磁界を強くすることができる。よって、加熱口の内周側となる被加熱物5の中央部を加熱しやすく、一般的に普及数量の多い中鍋又は小鍋などの被加熱物5に対して、温度が低めになりやすい被加熱物5の外周部の発熱量を多くすることができる。
【0088】
(変形例1)
図18は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例1を示す断面図である。
なお、
図18においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図18においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図18においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0089】
図18に示すように、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が短い平面である上部平面U上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、平面視において、第1巻線部112e1の少なくとも一部は、内周コイル11aと上方で重なる位置に配置されている。
このような構成においても上述した効果を得ることができる。
【0090】
(変形例2)
図19は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例2を示す断面図である。
なお、
図19においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図19においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図19においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0091】
図19に示すように、内周コイル11aは、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が長い平面である下部平面L上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって上方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である上向き傾斜面S1上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が長い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上述した効果を得ることができる。また、
図18に示した構成と比較して、各外周コイルの曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0092】
(変形例3)
図20は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器のコイルの配置の変形例3を示す断面図である。
なお、
図20においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図20においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図20においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0093】
図20に示すように、内周コイル11aは、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が短い平面である上部平面U上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、内周コイル11aの外周側から加熱口の外周側に向かって下方へ傾斜し、基準平面Bと交差する平面である下向き傾斜面S2上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。また、外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4に対して斜めに配置されている。
このような構成においても上述した効果を得ることができる。また、
図13に示した構成と比較して、各外周コイルの曲げ量を少なくすることができ、容易に製作することができる。
【0094】
実施の形態5.
本実施の形態5における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1〜4との相違点を中心に説明する。なお、各外周コイルの配置は、上記実施の形態1〜4の何れかと同じである。
【0095】
図21は、実施の形態5に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図21においては、
図2のXX縦断面を模式的に示している。また、
図21においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図21においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0096】
図21に示すように、本実施の形態5における誘導加熱調理器100は、内周コイル11aの下方に、平面視において放射状に配置した、平板状の磁性部材200aを備える。磁性部材200a、例えばフェライトなどの磁性体によって形成される。
【0097】
また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1の両側面及び下方の少なくとも一部を囲むように配置された第1磁性部材200e1を備える。また、外周右コイル112eの第2巻線部112e2の両側面及び下方の少なくとも一部を囲むように配置された第2磁性部材200e2を備える。第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2は、それぞれ、U字形状の磁性体により形成される。第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2は、例えばフェライトなどの磁性体によって形成される。
【0098】
例えば
図21に示すように、第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2の上端は、外周右コイル112eの上端よりも上方に位置するように形成される。また、第1磁性部材200e1の上端と天板4との距離と、第2磁性部材200e2の上端と天板4との距離とが同じとなるように形成される。
【0099】
このような構成により、第1巻線部112e1の周囲には、第1磁性部材200e1と天板4上の被加熱物5とを通る磁路が形成される。また、第2巻線部112e2の周囲には、第2磁性部材200e2と天板4上の被加熱物5とを通る磁路が形成される。
このため、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを、更に、軽減することができる。
【0100】
また、第1磁性部材200e1の上端と天板4との距離と、第2磁性部材200e2の上端と天板4との距離とを同じとなるように形成されている。このため、第1巻線部112e1から第2巻線部112e2側へ洩れる磁界、及び第2巻線部112e2から第1巻線部112e1側へ洩れる磁界を軽減することができる。
【0101】
なお、第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2の形状は、U字形状に限定されない。第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2の形状は、例えば凹部形状でも良い。また、第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2を、複数の板形状のフェライトを組み合わせて形成しても良い。また、第1磁性部材200e1及び第2磁性部材200e2の隣接部分を共通の部材で形成しても良い。
【0102】
実施の形態6.
本実施の形態6における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態1〜5との相違点を中心に説明する。
【0103】
(コイル配置)
図22は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器の第1の誘導加熱手段を示す平面図である。
図23は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図23においては、
図22のYY縦断面を模式的に示している。また、
図23においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図23においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0104】
図22及び
図23に示すように、外周右コイル112eは、平面視において、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2とが上下に重なるように配置されている。すなわち、各外周コイルは、筒状に巻かれた巻線の中心軸が天板4と平行な方向に配置されている。
【0105】
また、内周コイル11a及び外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、天板4と平行な平面である基準平面B上に配置されている。外周右コイル112eの第2巻線部112e2は、天板4と平行であって、基準平面Bよりも天板4との距離が長い平面である下部平面L上に配置されている。すなわち、外周右コイル112eの第1巻線部112e1は、第2巻線部112e2よりも天板4との距離が短い位置に配置されている。
【0106】
なお、外周右コイル112eの第1巻線部112e1の幅を広くして、天板4と平行になる面積を増やしても良い。
なお、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2とが、平面視において、完全に上下に重なるように配置しなくても良く、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2との少なくとも一部が、上下に重なるように配置しても良い。
【0107】
以上のように本実施の形態6においては、第1巻線部112e1と天板4との距離と、第2巻線部112e2と天板4との距離とが異なる。
このため、第1巻線部112e1及び第2巻線部112e2が同一平面上に配置した場合と比較すると、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを軽減できる。よって、被加熱物5の外周部での火力及び発熱の低下を抑制することができ、被加熱物5の外周部の温度むらを低減することができる。
【0108】
また、本実施の形態6においては、制御部45は、駆動回路50a、50d、50eを同一周波数で駆動する。また、各外周コイルの第1巻線部に流れる高周波電流は、第1巻線部に隣り合う内周コイル11aに流れる高周波電流と同じ向きとなる。
このため、異なる周波数の高周波電流が隣接するコイルに流れることによって、磁気的な干渉によって生じる騒音の発生を抑制できる。
【0109】
また、第1巻線部112e1と第2巻線部112e2とが、平面視において、上下に重なるように配置されている。
このため、第1巻線部112e1の幅を、上記実施の形態1〜5と比較して広くすることができる。よって、被加熱物5の外周部の温度むらを更に低減し、被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0110】
実施の形態7.
本実施の形態7における誘導加熱調理器100の構成について、上記実施の形態6との相違点を中心に説明する。なお、各外周コイルの配置は、上記実施の形態6と同じである。
【0111】
図24は、実施の形態7に係る誘導加熱調理器のコイルの配置を示す断面図である。
なお、
図24においては、
図22のYY縦断面を模式的に示している。また、
図24においては、加熱口の中心Cから右側のみを示している。なお、
図24においては、各外周コイルのうち外周右コイル112eを図示するが、他の外周コイルも同様の構成である。
【0112】
図24に示すように、本実施の形態7における誘導加熱調理器100は、内周コイル11aの下方に、平面視において放射状に配置した、平板状の磁性部材200aを備える。磁性部材200aは、例えばフェライトなどの磁性体によって形成される。
【0113】
また、外周右コイル112eの第1巻線部112e1の両側面及び下方の少なくとも一部を囲むように配置された第1磁性部材200e1を備える。第1磁性部材200e1は、U字形状の磁性体により形成される。第1磁性部材200e1は、例えばフェライトなどの磁性体によって形成される。例えば
図24に示すように、第1磁性部材200e1の上端は、外周右コイル112eの第1巻線部112e1の上端よりも上方に位置するように形成される。
【0114】
このような構成により、第1巻線部112e1の周囲には、第1磁性部材200e1と天板4上の被加熱物5とを通る磁路が形成される。このため、第1巻線部112e1に流れる高周波電流によって生じた磁界と、第2巻線部112e2に流れる高周波電流によって生じた磁界との打ち消し合いを、更に、軽減することができる。
【0115】
また、第1磁性部材200e1の上端が第1巻線部112e1の上端よりも上方に位置するので、第1巻線部112e1から第2巻線部112e2側へ洩れる磁界を軽減することができる。
【0116】
なお、第1磁性部材200e1の形状は、U字形状に限定されない。第1磁性部材200e1の形状は、例えば凹部形状でも良い。また、第1磁性部材200e1を、複数の板形状のフェライトを組み合わせて形成しても良い。
【0117】
実施の形態8.
本実施の形態8における誘導加熱調理器100の動作について、上記実施の形態1〜7との相違点を中心に説明する。なお、本実施の形態8における誘導加熱調理器100の構成は、上記実施の形態1〜7の何れかと同じである。
【0118】
(動作)
操作表示部43により加熱動作を開始させる入力操作が行われると、制御部45は、入力操作に応じて、駆動回路50a、50d、50eをそれぞれ駆動させ、被加熱物5を誘導加熱する加熱動作を行う。
【0119】
制御部45は、駆動回路50d及び駆動回路50eの駆動周波数を、駆動回路50aの駆動周波数よりも可聴周波数以上高くする。すなわち、制御部45は、各外周コイルに流れる高周波電流の周波数を、内周コイル11aに流れる高周波電流の周波数よりも可聴周波数以上高くなるように、駆動回路50d、50eをそれぞれ駆動する。例えば、制御部45は、駆動回路50aを23kHzの駆動周波数で駆動し、駆動回路50d及び駆動回路50eを90kHzの駆動周波数で駆動する。
【0120】
ここで、可聴周波数とは、人の聴覚によって認識できる音の周波数である。可聴周波数の下限は、略20kHzである。
【0121】
以上のような動作により、異なる周波数の高周波電流が隣接するコイルに流れることによって、磁気的な干渉によって生じる騒音の発生を抑制できる。
また、加熱口の外側に配置された各外周コイルに、内周コイル11aに流れる電流よりも高い周波数の高周波電流が流れる。このため、加熱口の外周側となる被加熱物5の外周部を加熱しやすく、被加熱物5の外周部の火力及び発熱を向上させる効果が得られる。
【0122】
ここで、被加熱物5の中には、非磁性体に磁性体を取り付けた複合材によって形成されたものがある。例えば、アルミニウムなどの非磁性体のフライパンの底の中央部に、ステンレスなどの磁性体が取り付けられて被加熱物5が形成されている。なお、磁性体の非磁性体への取り付けは、例えば、貼り付け、溶着、溶射、圧着、嵌め込み、かしめ、埋め込み等、任意の方法が用いられる。
【0123】
一般に、複合材の被加熱物5は、非磁性体であるベースの、底面が平らとなる中央部分に磁性体が取り付けられ、底面が湾曲する外周部には磁性体が取り付けられていない。このような被加熱物5が加熱口に載置されると、加熱口の中央に磁性体が載置され、加熱口の外周側に非磁性体が載置されることとなる。
【0124】
本実施の形態8の誘導加熱調理器100は、各外周コイルを内周コイル11aよりも高周波の電流が流れるため、上記のような複合材の被加熱物5を誘導加熱する際に、複合材の被加熱物5の外周部となる非磁性体を高周波加熱することができる。よって、被加熱物5の材質に適した誘導加熱を行うことができる。
【0125】
なお、各外周コイルを駆動する駆動回路50d及び駆動回路50eのスイッチング素子に、ワイドバンドギャップ半導体材料を用いても良い。高周波で駆動させるスイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体材料を用いることで、スイッチング素子の通電損失を減らすことができる。また、スイッチング周波数を高周波にしても駆動回路の放熱が良好であるため、駆動回路の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路の小型化及び低コスト化を実現することができる。