(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861818
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】溶鉱炉のための、耐摩耗性材料を備えた複数層の突起を有する銅の冷却プレート
(51)【国際特許分類】
C21B 7/10 20060101AFI20210412BHJP
F27D 1/12 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
C21B7/10 301
F27D1/12 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-532742(P2019-532742)
(86)(22)【出願日】2016年12月30日
(65)【公表番号】特表2020-503437(P2020-503437A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】IB2016058115
(87)【国際公開番号】WO2018122591
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレロ・ブランコ,イグナシオ
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−224914(JP,A)
【文献】
特表2003−500626(JP,A)
【文献】
特開2014−227564(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0056361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/10
F27D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鉱炉のための冷却プレート(1)であって、
前記冷却プレート(1)は、
互いに平行であるリブ(4−j)を備える内面(3)を有する銅製本体(2)を
備え、
リブ(4−j)は、互いに対向する第1の端(6)を有し、リブは、互いに対向する第2の端(7)を有する溝(5)、によって分離されており、
前記溝(5)の少なくとも1つが、前記第2の端(7)間に延びる突起(10)を備え、突起(10)は、高い熱伝導性を有する材料で形成された第1の層(11)と、耐摩耗性材料で形成され、冷却プレートを炉に設置した際の前記第1の層(11)の頂部上に配置された第2の層(12)と、を備えており、
前記高い熱伝導性を有する材料は、高伝導性の金属である銅および銅合金であり、前記耐摩耗性材料は、耐摩耗性の鋼または鋳鉄、もしくは、炭化ケイ素、または、押出し成形された炭化ケイ素である、
ことを特徴とする、冷却プレート(1)。
【請求項2】
複数層の突起(10)の各々が、単一の溝(5)に結合させられていることを特徴とする、請求項1に記載の冷却プレート。
【請求項3】
複数層の突起(10)の各々が、前記第1の層(11)と前記第2の層(12)との間に挟まれ、SiCまたは押出し成形されたSiCで形成されている、第3の層(13)をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載の冷却プレート。
【請求項4】
複数層の突起(10)の各々の第1の層(11)および第2の層(12)が、それぞれ、2つの隣接する溝(5)に結合させられていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却プレート。
【請求項5】
各々の複数層の突起(10)の前記第1の層(11)が、スロット(17)を備え、
スロットは、前記第2の端(7)間に延びるとともに、セラミックで形成されるか、耐摩耗性および/または耐熱製の鋼で形成されているインサート(18)を備えている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の冷却プレート。
【請求項6】
前記銅製本体(2)の前記内面(3)が、少なくとも2つの異なる高さを有するリブ(4−j)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷却プレート。
【請求項7】
前記溝(5)が、蟻ほぞ状の断面を有していることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷却プレート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの冷却プレート(1)を備えていることを特徴とする、溶鉱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鉱炉に関し、より明確には、溶鉱炉に固定された冷却プレート(またはステーブ)に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者に知られているように、溶鉱炉は、通常、冷却プレート(またはステーブ)で部分的にカバーされた内壁を備えている。
【0003】
いくつかの実施形態では、これら冷却プレート(またはステーブ)は、内側(すなわち高温)面を有する本体を備えている。内側(すなわち高温)面は、互いに平行なリブを備えている。これらリブは、やはり互いに平行である溝によって分離されている。これらリブおよび溝は、耐熱性ライニング(ブリックであるかグナイト)、または、溶鉱炉の内側の付加物層の固定を可能にするために配置されている。
【0004】
良好な熱伝導性を提供するために、本体が銅または銅合金で製造されている場合、銅が耐摩耗性材料ではないことから、リブは、早く腐食される。
【0005】
そのような早い腐食を避けるために、欧州特許第2285991号明細書の特許文献に記載のように、鋼ピースを溝内に、リブの側壁および溝のベースに対して導入することにより、リブの硬度を向上させることが可能である。そのような鋼ピースにより、リブの良好な保護が可能になり、また、鋼ピースがステーブの変形に熱的に適合することから、ステーブが、自在に膨張および変形することも可能である。しかし、鋼ピースは、適切に冷却されず、また、ガスによって浸食される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2285991号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明の目的は、この状況を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、互いに平行なリブを備える内面を有する銅製本体を備える、溶鉱炉で使用するための冷却プレート(ステーブ)に関する。リブは、互いに平行に配置され、互いに対向する第1の端を有し、互いに対向する第2の端を有する溝によって分離されている。
【0009】
この冷却プレート(またはステーブ)は、その溝の少なくとも1つが、複数層の突起の少なくとも一部を備え、複数層の突起が、その第2の端間に延び、隣接するリブの耐摩耗性を局所的に増大させる、耐摩耗性材料で形成された少なくとも1つの層を備えている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の冷却プレート(またはステーブ)は、別々に考慮されるか、すべての可能な技術的組合せに係る、以下の任意選択の特徴をも備える場合がある。
【0011】
−耐摩耗性材料は、金属およびセラミックを含むグループから選択される場合がある、
・耐摩耗性金属は、耐摩耗性の鋼または鋳鉄である場合がある、
・耐摩耗性セラミックは、炭化ケイ素、押出し成形された炭化ケイ素、または、剥離に対する良好な耐性および高い硬度を有する他の耐熱性材料である場合がある、
−複数層の突起は、高い熱伝導性を有する材料で形成された第1の層と、耐摩耗性材料で形成され、この第1の層の頂部に配置された第2の層とを備えている場合がある、
・第1の層の材料は、高伝導性の金属である銅および銅合金を含むグループから選択される場合がある、
・第1の実施形態では、複数層の突起の各々は、単一の溝に結合させられている場合がある、
・複数層の突起は、第1の層と第2の層との間に挟まれ、複数層の突起の硬度を向上させることが意図された硬度を有する材料で形成されている、第3の層をさらに備えている場合がある、
・第3の層は、SiCまたは押出し成形されたSiCなど、剥離に対する良好な耐性および高い硬度を有するセラミックで形成されている場合がある、
・第2の実施形態では、複数層の突起の各々の第1の層および第2の層は、それぞれ、2つの隣接する溝に結合させられている場合がある、
・複数層の突起の各々の第1の層は、第2の端間に延びるとともに、この第1の層の硬度を増大させることが意図された硬度を有する材料で形成された他のインサートを備えたスロットを備えている場合がある、
・他のインサートは、セラミックで形成されるか、耐摩耗性および/または耐熱製の鋼で形成されている場合がある、
−銅製本体の内面は、少なくとも2つの異なる高さを有するリブを備えている場合がある、
−溝は、蟻ほぞ状(dovetail)の断面を有する場合がある。
【0012】
本発明は、上で導入したような、少なくとも1つの冷却プレートを備えた溶鉱炉にも関する。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、以下の添付図面を参照して、指示として以下に与えられ、いずれの方法でも制限するものではない、詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る冷却プレートの実施形態の第1の例の一部を斜視図で示す概略図である。
【
図2】本発明に係る冷却プレートの実施形態の第2の例の一部を断面図で示す概略図である。
【
図3】
図2に示す冷却プレートの変形形態を断面図で示す概略図である。
【
図4】本発明に係る冷却プレートの実施形態の第3の例の一部を断面図で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特に、溶鉱炉で使用でき、耐摩耗性が向上した冷却プレート(またはステーブ)1を提案することを目的としている。
【0016】
本発明に係る冷却プレート(またはステーブ)1の実施形態の一例が、
図1に示されている。そのような冷却プレート(またはステーブ)1は、溶鉱炉の内壁に取り付けられることが意図されている。
【0017】
図示のように、本発明に係る冷却プレート(またはステーブ)1は、銅製本体2を備えている。この銅製本体2は、互いに平行ないくつかのリブ4−jを備えた内側(すなわち高温の)面3を有している。これらリブ4−jは、互いに対向している第1の端6を有し、互いに対向している第2の端7を有する溝5によって分離されている。冷却プレート1が溶鉱炉の内壁に取り付けられると、そのリブ4−jおよび溝5は、水平に配置される。この場合には、銅製本体2は、その内面3とは反対側であり、溶鉱炉の内壁に固定される外面14を備えている。そのため、内面3は、非常に高温の材料、および、溶鉱炉内に存在するガスと接触し得る本体の面である。
【0018】
たとえば、
図2から
図4に示すように、溝5は、通常、耐熱製ブリック15の固定を最適化するために、蟻ほぞ状の断面を有する。しかし、リブ4−jおよび溝5は、他の断面形状を有する場合がある。特に複数層の突起10を受け入れるために、溝5の蟻ほぞ状の断面が望ましいが、
図1に示すように、溝5は、矩形の断面を有する場合がある。
【0019】
さらに、
図1の非限定的な例に示されるように、銅製本体2の内面3は、少なくとも2つの異なる高さh1およびh2を有するリブ4−jを備えている場合がある。この任意選択により、耐熱製ブリック15の固定を最適化することが可能になる。
図1の例では、第1のリブ4−1(j=1)は、第1の高さh1を有し、第1のリブ4−1間に規定された第2のリブ4−2(j=2)は、第1の高さh1より小である第2の高さh2を有している。しかし、
図2から
図4の実施形態の他の例に示すように、銅製本体2は、同じ高さのリブ4−1を備えている場合がある。
【0020】
さらにまた、
図2および
図3に示すように、銅製本体2は、好ましくは、冷却流体が流れる内部チャネル16を備えている。
【0021】
図1から
図4に示すように、溝5の少なくとも1つは、複数層の突起10の少なくとも一部を備えている。複数層の突起は、その第2の端7間に延びて、隣接するリブ4−jの耐摩耗性を局所的に増大させる、この耐摩耗性材料で形成された少なくとも1つの層12を備えている。
【0022】
複数層の突起10(溝5内に位置する)のおかげで、ステーブに、下向きの荷重によって加えられる速度および圧力は、明らかに低減され、これにより、それらの材料(すなわち、銅または銅合金)、および、ステーブ本体が早く腐食することを避けることが可能になる。換言すると、突起により、摩耗を最小にするために、材料の移動が少ないエリアを発生させることが可能になる。
【0023】
たとえば、層12の耐摩耗性材料は、金属であるかセラミックである場合がある。この耐摩耗性金属は、たとえば、鋼または鋳鉄、好ましくは、耐熱性のグレード(たとえば、化学的組成に、重量%で、0.3%≦C≦0.5%、1%≦Si≦2.5%、12≦Cr≦14%、Mn≦1%、Ni≦1%、P≦0.04%、S≦0.03%、およびMo≦0.5%で示される内容物を含む、GX40CrSi13などの耐熱性の鋳造鋼)であるか、または、高温で機能することができる、耐摩耗性の鋼である場合がある。耐摩耗性セラミックは、たとえば、炭化ケイ素(SiC)、押出し成形された炭化ケイ素(より高い熱伝導性)、または、剥離に対する良好な耐性および高い硬度を有する他の耐熱性材料である場合がある。
【0024】
たとえば、
図1から
図4に示すように、複数層の突起10は、高い熱伝導性を有する材料で形成された第1の層11と、耐摩耗性材料で形成され、この第1の層11の頂部に配置された第2の層12とを備えている場合がある。この実施形態は、いずれの機械加工段階(machining phase)をも伴わずに、慣習的な冷却プレートの適用を可能にしている。
【0025】
高い熱伝導性を有する第1の層11は、複数層の突起10のもっとも低い位置に配置されて、熱シールドとして機能する。この理由は、熱的負荷が、上方に流れる高温ガス流から主として来るためである。たとえば、この第1の層11の材料は、高い伝導性の金属である銅または銅合金である場合がある。第2の層12は、耐摩耗性材料で形成され、第1の層11を早く腐食することから保護するために、第1の層11の頂部に配置されている。前述のように、この第2の層12は、耐摩耗性の鋼、鋳鉄、またはセラミックで形成することができる。
【0026】
やはり、たとえば、
図1から
図3に示すように、複数層の突起10の各々は、単一の溝5に結合させられ得る。換言すると、複数層の突起10の各々の一部が、単一の溝5内に配置される一方、この複数層の突起10の残りの部分が、この単一の溝5を越えて延びている。
【0027】
この場合、複数層の突起10の各々は、第1の層11と第2の層12との間に挟まれ、突起全体の耐摩耗性を増大させることが意図された、非常に高い硬度を有するセラミック材料で形成されている、第3の層13をさらに備えている場合がある。
【0028】
図1および
図2の例では、第3の層13の各々は、その結合させられる溝5のベースの境界を定める、内面3の一部と接触しており、一方、
図3の例では、第3の層13の各々は、下に位置する第1の層11の突出部により、その結合させられる溝5のベースの境界を定める内面3の部分から分離されている。
図1および
図2に示す代替形態は、前方側から、ステーブに設置することができ、一方、
図3に示す代替形態は、溝の内側の横からのみ設置することができる。この横からの設置の変形形態の利点は、脆性のセラミックピースが断片に破損した場合における、配置のより高い安定性である。
【0029】
たとえば、第3の層13の各々は、SiCまたは押出し成形されたSiCなどの高硬度セラミックで形成されている場合がある。セラミックは、挟まれており、したがって、脱落する材料の衝撃から保護されており、また、熱膨張によって生じ得る冷却プレートの曲げとは関係ないことから、ここでセラミックは使用することができる。
【0030】
図4に示す、実施形態の変形形態では、複数層の突起10の各々の第1の層11および第2の層12は、それぞれ、2つの隣接する溝5に結合させられている場合がある。換言すると、複数層の突起10の第1の層11の一部が、第1の溝5内に配置される一方、この第1の層11の残りの部分が、この第1の溝5を越えて延びており、この複数層の突起10の第2の層12の一部が、第1の溝5の近位に位置する第2の溝5内に配置される一方、この第2の層12の残りの部分が、この第2の溝5を越えて延びている。そのため、下部の第1の層11は、熱的負荷を銅製本体2に向け、一方、頂部の第2の層12は、結合させられている第1の層11を、摩耗から保護する。
【0031】
この場合、
図4の非限定的な例に示すように、複数層の突起10の各々の第1の層11は、第2の端7間に延び、インサート18を備えたスロット17を備えている場合がある。第1の層11に埋め込まれている、このインサート18は、この第1の層11の硬度を向上させることを意図した硬度を有する材料で形成されている。たとえば、
図4の非限定的な例に示すように、スロット17が規定(すなわち、機械加工)された第1の層11の面は、ガスを外側に送り、また、負荷が円滑に、突起10で構築された「ポケット」に流れることを補助もするように傾斜している場合がある。
【0032】
やはり、たとえば、
図4に示すように、スロット17の各々、そしてひいては、結合されているインサート18は、蟻ほぞ状の断面を有する場合がある。
【0033】
やはり、たとえば、インサート18の各々は、SiCなどのセラミック、または鋼(耐摩耗性、耐熱性、または両方の組合せ)で形成されている場合がある。層11の硬度を増大させるための他の実施態様を使用することができる。たとえば、各スロット17は、インサート18を規定するボルトがネジ込まれるネジ穴である場合がある。
【0034】
複数層の突起10が位置する溝5が、溶鉱炉の形状および/または寸法に依存する場合があることに留意することが重要である。たとえば、
図2および
図3に示す例では、複数層の突起10は、3つの溝5毎に配置されている場合がある。しかし、他の例では、複数層の突起10は、2つの溝5毎、4つの溝5毎、または、さらには5つの溝5毎に配置される場合がある。