(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861827
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】冷却式タービン翼のアダプティブ・マシニング
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20210412BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20210412BHJP
B22D 31/00 20060101ALI20210412BHJP
B22D 29/00 20060101ALI20210412BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20210412BHJP
B23H 9/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D25/00 X
B22D31/00 Z
B22D29/00 G
B22D46/00
B23H9/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-538164(P2019-538164)
(86)(22)【出願日】2018年1月12日
(65)【公表番号】特表2020-505543(P2020-505543A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】US2018013435
(87)【国際公開番号】WO2018132629
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】62/445,956
(32)【優先日】2017年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エム. エシャック
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ カメンツキー
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル アール. ミラー ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フェーリンガー
【審査官】
中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0373503(US,A1)
【文献】
米国特許第08506256(US,B1)
【文献】
特表2015−536404(JP,A)
【文献】
特開2011−122495(JP,A)
【文献】
特表2013−501884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/12
F01D 5/18
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造プロセスによって製造されたタービンブレードまたはベーンの翼セクション(12)を機械加工する方法であって、前記翼セクション(12)は、1つまたは複数の内部冷却通路(28)を有する翼内部を画定する外壁(18)を有し、前記方法は、
公称外側翼形状(40N)および公称壁厚(TN)データを含む、前記翼セクション(12)に関する設計データを受け取り、
目標外側翼形状(40T)を求めることによって機械加工パスを生成し、前記目標外側翼形状(40T)は、公称壁厚(TN)が、後で機械加工される翼セクションにおいて1つまたは複数の内部冷却通路(28)の周囲の前記外壁(18)における全ての点において維持されるように、前記公称外側翼形状(40N)を適応させることによって生成され、
前記生成された目標外側翼形状(40T)に従うように余分な材料を除去するために、前記機械加工パスに従って、鋳造プロセスによって製造された前記翼セクション(12)の外面(18a)を機械加工する、
ことを含み、
前記目標外側翼形状(40T)を求めることは、
鋳造プロセス後に前記翼セクション(12)の三次元外側形状(40A)を測定し、
鋳造された前記翼セクション(12)の測定された前記外側形状(40A)に関して前記1つまたは複数の内部冷却通路(28)のための冷却通路位置および形状測定を行い、該冷却通路位置および形状測定は、前記鋳造された翼セクション(12)の前記外壁(18)に沿った複数の点における実際の壁厚(TA)測定を行うことによって行われ、
前記1つまたは複数の内部冷却通路(28)の測定された位置(28m)の周囲の公称壁厚(TN)の値を表す点(42)を構成し、
前記公称壁厚(TN)の値を表す前記点(42)に対して前記公称外側翼形状(40N)を整合させるためにベストフィットオペレーションを行い、
前記ベストフィットオペレーションにより整合された公称外側翼形状(40N)からまだ逸脱している公称壁厚の値を表す点(42a)と一致するように、前記ベストフィットオペレーションの後に前記公称外側翼形状(40N)を適応させることによって前記目標外側翼形状(40T)を生成する
ことを含む、
方法。
【請求項2】
前記目標外側翼形状(40T)が、前記鋳造された翼セクション(12)の前記測定された外側形状(40A)を超えて延びることがないように、前記目標外側翼形状(40T)を制限することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記翼セクション(12)の三次元外側形状(40A)の測定は、触覚座標測定機械プロービング、またはレーザスキャニングまたは写真測量、またはそれらの組合せによって行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記実際の壁厚(TA)の測定は、超音波、X線、計算された断層撮影法、渦電流またはそれらの組合せを用いて行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記実際の壁厚の測定(TA)は、前記鋳造された翼セクション(12)のスパン方向(半径方向)および翼弦方向に沿った様々な点において行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
タービンブレードまたはベーンの列を製造する方法であって、
鋳造プロセスによって複数のタービンブレードまたはベーンを製造し、各ブレードまたはベーンは、1つまたは複数の内部冷却通路を備える翼セクション(12)を有し、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法によって、前記鋳造プロセスの後に各翼セクション(12)の外面(18a)を機械加工し、
各ブレードまたはベーンの前記翼セクション(12)に特定の、前記機械加工のために用いられる機械加工パスが生成される、
タービンブレードまたはベーンの列を製造する方法。
【請求項7】
鋳造プロセスによって製造されたタービンブレードまたはベーンの翼セクション(12)をアダプティブに機械加工するための機械加工パスデータを生成するためのCADモジュール(56)であって、前記翼セクション(12)は、1つまたは複数の内部冷却通路(28)を有する翼内部を画定する外壁を有し、
前記CADモジュール(56)は、公称外側翼形状(40N)および公称壁厚(TN)データを含む、前記翼セクション(12)に関する設計データを受け取るように構成されており、
前記CADモジュール(56)は、目標外側翼形状(40T)を求めることによって前記機械加工パスデータを生成するように構成されており、前記CADモジュール(56)は、前記公称壁厚(TN)が、後で機械加工される前記翼セクションにおいて1つまたは複数の内部冷却通路(28)の周囲の前記外壁(18)における全ての点において維持されるように、前記公称外側翼形状(40N)を適応させることによって前記目標外側翼形状(40T)を生成するように構成されており、
前記機械加工パスデータは、前記生成された目標外側翼形状(40T)に従うように余分な材料を除去するために、前記鋳造プロセスによって製造された前記翼セクション(12)の外面(18a)を機械加工するための情報を規定し、
前記CADモジュール(56)は、前記鋳造された翼セクション(12)に関する三次元外側形状(40A)測定データを受け取るように構成されており、
前記CADモジュール(56)は、前記鋳造された翼セクション(12)の測定された前記外側形状(40A)に関して1つまたは複数の内部冷却通路(28)のための冷却通路位置および形状測定を行うように構成されており、該冷却通路位置および形状測定は、前記鋳造された翼セクション(12)の前記外壁(18)に沿った複数の点における実際の壁厚(TA)の測定を行うことによって行われ、
前記CADモジュール(56)は、前記1つまたは複数の内部冷却通路(28)の測定された位置(28m)の周囲の公称壁厚(TN)の値を表す点(42)を構成するように適応させられており、
前記CADモジュール(56)は、前記公称壁厚(TN)の値を表す前記点(42)に対して前記公称外側翼形状(40N)を整合させるためにベストフィットオペレーションを行うように適応させられており、
前記CADモジュール(56)は、前記ベストフィットオペレーションにより整合された公称外側翼形状(40N)からまだ逸脱している公称壁厚(TN)の値を表す点(42a)と一致するように、前記ベストフィットオペレーションの後に前記公称外側翼形状(40N)を適応させることによって、目標外側翼形状(40T)を生成するように適応させられている、
CADモジュール(56)。
【請求項8】
さらに、前記CADモジュール(56)は、前記目標外側翼形状(40T)が、前記鋳造された翼セクション(12)の前記測定された外側形状(40A)を超えて延びることがないように、前記目標外側翼形状(40T)を制限するように構成されている、請求項7記載のCADモジュール(56)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、ここで引用したことによりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年1月13日に出願された米国仮出願第62/445956号明細書(US provisional application No.62/445,956)の優先権を請求する。
【0002】
背景
1.分野
本発明は、概してタービン翼の製造、特に、内部冷却通路を備える鋳造されたタービン翼のアダプティブ・マシニングのプロセスに関する。
【0003】
2.関連技術の説明
ガスタービン翼は、通常、鋳造、特にインベストメント鋳造によって製造される。冷却式タービン翼は、インベストメント鋳造プロセス中にコアを使用して形成される1つまたは複数の内部冷却通路を有する。インベストメント鋳造プロセスは、特に外壁厚さ、後縁厚さおよび形状などの翼の重要な特徴においてある制限を課す。例えば、
図1に概略的に示したように、鋳造プロセス中、例えば金属部分の固化/収縮の差により、変形および/または変位(破線によって示されている)を生じることがある。
図1に示された例は、前縁冷却通路LEおよび後縁冷却通路TEの場合のねじれまたは回転ならびに翼弦中央冷却通路MCの場合のコア変位の形式におけるコア変形を示している。コアの変形は、冷却通路の形状および/または位置の変化につながることがあり、これは、鋳造されたタービン翼の外壁の壁厚を、タービン翼の公称または目標壁厚からずらすことがある。
【0004】
上述のような鋳造制限は、構成部材のサイズおよび重量にある程度関係する。新世代のガスタービンエンジンは、より高い負荷を達成するために、増大されたサイズのタービン翼を有する傾向がある。薄い翼を備える必要な翼ジオメトリは、このようなプロセス制限により、インベストメント鋳造によって製造するためには困難であることがある。これまで、任意の翼サイズおよび形状によるこのような鋳造制限は、利用可能な設計オプションを制限してきた。
【0005】
概要
簡潔に言えば、本発明の態様は、ある鋳造プロセス制限、特にコア変形および/または変位を含む制限を克服することがある、翼のアダプティブ・マシニングのための技術を提供する。
【0006】
発明の第1の態様によれば、鋳造プロセスによって製造されたタービンブレードまたはベーンの翼セクションを機械加工する方法が提供される。翼セクションは、1つまたは複数の内部冷却通路を有する翼内部を画定した外壁を有する。方法は、公称外側翼形状および公称壁厚データを含む、翼セクションに関する設計データを受け取ることを含む。方法は、さらに、目標外側翼形状を求めることによって機械加工パスを生成することを含む。目標外側翼形状は、引き続き機械加工される翼セクションにおける1つまたは複数の内部冷却通路の周囲の外壁における全ての点において公称壁厚が維持されるように公称外側翼形状を適応させることによって生成される。方法は、次いで、生成された目標外側翼形状に従うように余分な材料を除去するため、生成された機械加工パスに従って、鋳造プロセスによって製造された翼セクションの外面を機械加工することを含む。
【0007】
発明の第2の態様によれば、鋳造プロセスによって製造されたタービンブレードまたはベーンの翼セクションをアダプティブに機械加工するための機械加工パスデータを生成するためのCADモジュールが提供される。翼セクションは、1つまたは複数の内部冷却通路を有する翼内部を画定した外壁を有する。CADモジュールは、公称外側翼形状および公称壁厚データを含む、翼セクションに関する設計データを受け取るように構成されている。CADモジュールは、さらに、目標外側翼形状を求めることによって機械加工パスデータを生成するように構成されている。CADモジュールは、引き続き機械加工される翼セクションにおける1つまたは複数の内部冷却通路の周囲の外壁における全ての点において公称壁厚が維持されるように公称外側翼形状を適応させることによって目標外側翼形状を生成するように構成されている。機械加工パスデータは、生成された目標外側翼形状に従うように余分な材料を除去するため、鋳造プロセスによって製造された翼セクションの外面を機械加工するための情報を規定する。
【0008】
発明は、図面を用いてさらに詳細に示されている。図面は、好ましい構成を示しており、発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】タービン翼を製造するためのインベストメント鋳造プロセスにおけるコア変形または変位の概略図である。
【
図2】本発明の態様が実施されてもよい、翼セクションを含む鋳造されたタービンブレードの斜視図である。
【
図3】
図2における断面III−IIIに沿った断面図である。
【
図4】翼セクションにおける内部冷却通路の測定された位置の周囲における公称壁厚の値を表す点の構成を示す概略図である。
【
図5】公称壁厚の値を表す前記点に対する公称外側翼形状のベストフィットアライメントを示す概略図である。
【
図6】機械加工後の翼セクションの最終的な外面と一致する目標外側翼形状を示す概略図である。
【
図7】本発明の1つの態様による、鋳造された翼セクションをアダプティブに機械加工するためのシステムを示す概略図である。
【0010】
詳細な説明
好ましい実施の形態の以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面が参照され、図面には、例として、限定としてではなく、発明が実施されてもよい特定の実施の形態が示されている。本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その他の実施の形態が使用されてもよく、変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0011】
本発明の実施の形態は、タービンブレード、典型的には、ガスタービンエンジンの低圧タービン段において使用可能な大スパンブレードに関連して示される。本発明の態様は、高圧または低圧タービン段における回転ブレードまたは固定ベーンなどの、翼セクションを有するその他のタービン構成部材に適用可能であってもよいことに留意すべきである。
【0012】
ここで
図2を参照すると、鋳造プロセス、例えばインベストメント鋳造プロセスによって製造されてもよいタービンブレード10が示されている。鋳造されたタービンブレード10は、回転軸線(図示せず)に関してプラットフォーム14から半径方向外方へスパン方向に延びる翼セクション12を有する。ブレード10は、さらに、プラットフォーム14から半径方向内方へ延びておりかつブレード10をロータディスク(図示せず)に取り付けるように構成された根元部分16を有する。
図1および
図2を一緒に参照すると、鋳造された翼セクション12は、概して中空の翼内部を画定する外壁18から形成されている。外壁18は、前縁24および後縁26において接続された、概して凹面状の正圧面20と、概して凸面状の負圧面22とを有する。翼内部は、冷却流体の半径方向流れのための1つまたは複数の内部冷却通路28を有する。内部冷却通路28は、内部隔壁30の間に画定されていてもよい。外壁18は、高温ガスパスに面するように構成された外面18aと、内部冷却通路28に面する内面18bとを有する。
【0013】
内部冷却通路28は、インベストメント鋳造プロセスの間に鋳造コアによって形成される。上述のように、鋳造プロセス中、例えば金属部分の固化または収縮の差により、コアは、変形(例えば、転がり、回転)および/または変位を生じることがある。コアの変形は、内部冷却通路28の形状および/または位置の変化につながることがあり、これは、外壁18の壁厚をその意図した厚さからずらすことがある。本発明の態様は、コアの変形および/または変位に関連した上述の問題を少なくとも解決する。
【0014】
本発明の実施の形態によれば、翼セクションの最終的な形状は、鋳造制限を超えて翼セクションの外側(すなわち、外壁18の外面18a)をアダプティブにポストマシニングすることによって形成されてもよい。
図3〜
図6を参照してここで説明するように、鋳造された翼セクションのアダプティブなポストマシニングのための方法は、公称外側翼形状40
Nおよび公称壁厚T
Nデータを含む、翼セクション12に関する設計データを受け取り、目標外側翼形状40
Tを求めることによって機械加工パスを生成し、目標外側翼形状40
Tは、公称壁厚T
Nが、後で機械加工される翼セクションにおいて1つまたは複数の内部冷却通路28の周囲の外壁18における全ての点において維持されるように、公称外側翼形状40
Nを適応させることによって生成され、生成された目標外側翼形状40
Tに従うように余分な材料を除去するために、前記機械加工パスに従って、鋳造プロセスによって製造された翼セクション12の外面18aを機械加工する、ことを含む。目標外側翼形状40
Tは、鋳造プロセス中のコアシフト(変形および/または変位)を補償するように適応させられており、述べられた順序での以下の基準の、優先順位がつけられた考慮に基づいて生成される:1)内部冷却通路28の周囲の外壁18の公称壁厚および2)公称翼外側形状。
【0015】
鋳造プロセスの後の第1のプレマシニングステップにおいて、個々の鋳造された翼セクションの外側形状を求めるために、三次元(3−D)測定が行われる。3−D測定は、例えば、触覚座標測定機械プロービング、またはレーザスキャニングまたは写真測量、それらのあらゆる組合せ、または鋳造された翼セクションの外側形状に関する3−D幾何学的データを得るための別のその他の測定技術によって行われてもよい。
図4において3−D面40
Aによって示された、測定された外側形状は、
図3に示された、鋳造された翼セクション12の外面18aに対応する。
【0016】
次のステップは、鋳造された翼セクション12の測定された外側形状40
Aに対する、内部冷却通路28のための冷却通路位置および形状測定を行うことを含む。冷却通路位置および形状測定は、
図3に示したように、鋳造された翼セクション12の外壁18に沿った複数の点において実際の壁厚測定(T
Aとして示されている)を行うことによって行われてもよい。測定された実際の壁厚は、単純にするためにT
Aとして均一に示されているが、外壁12における異なる点において変化することがあることに留意すべきである。壁厚測定は、超音波、X線、計算された断層撮影法、渦電流またはあらゆるその他の公知の技術を用いて行われてもよい。例えば、超音波を用いた測定の場合、壁厚T
Aは、翼セクション12の外壁18の外面18aにおける1つの点に信号送信器/プローブを配置し、最も強いエコー信号が受信される外壁18の内面18bにおける1つの点までの距離を求めることによって測定されてもよい。外壁18の軸方向(翼弦方向)および半径方向範囲に沿った十分に多数の点における壁厚の値を測定することによって、
図4に示したように、冷却通路の3−Dジオメトリ28m(形状および位置を含む)が、鋳造された翼セクションの測定された外側形状40
Aに関して求められてもよい。
【0017】
さらに
図4を参照すると、後続のステップにおいて、点42は、設計データから得られた公称壁厚(T
N)の値を表す、内部冷却通路の測定された位置28mの周囲に構成される。すなわち、点42は、内部冷却通路の測定された形状28mの周縁におけるそれぞれの点からの公称または設計壁厚T
Nと等しい距離に構成される。点42は、冷却通路の半径方向スパンに沿って形成されてもよい。単純にするために、公称厚さは、T
Nとして均一に示されている。当業者は、公称厚さの値が、半径方向および軸方向(翼弦方向)の両方において、内部冷却通路の周囲の異なる点において変化することがあることを認識するであろう。
【0018】
次に、
図5に示したように、(設計データから得られた)3−D公称外側翼形状40
Nを、公称壁厚T
Nの値を表す点42と一致させるために、反復ベストフィットオペレーションが行われる。理想的な鋳造プロセスの場合、公称壁厚の値を表す全ての点42は、公称外側翼形状40
N上に位置する。例示した例において、鋳造プロセス中の鋳造コアの角度方向の向きの変化および相対的な変位により、点42のうちの少なくとも幾つかは、ベストフィットアライメントの後、公称外側翼形状40
Nから逸脱する。
【0019】
次に、
図6に示したように、目標外側翼形状40
Tが、ベストフィットアライメントの後、公称外側翼形状40
Nを適応させることによって生成される。
図6に示したように、ベストフィットアライメントの後の、公称外側翼形状40
Nから逸脱する公称壁厚の値を表す点(すなわち、公称外側翼形状40
Nの内側または外側に位置する点)が42aとして示されているのに対し、ベストフィットアライメントの後の、公称外側翼形状40
N上(または規定された公差範囲内)に位置する公称厚さの値を表すこれらの点は、42bとして示されている。目標外側翼形状40
Tは、3−D公称外側翼形状40
Nを調節することによって生成された3−D形状であり、これにより、公称外側翼形状40
Nのベストフィットアライメントから逸脱した点42aは、今では目標外側翼形状40
T上に位置する。したがって、目標外側翼形状40
Tは、
図6に示したように、公称壁厚の値を表す全ての点42aおよび42bと一致する。上述のように、目標外側翼形状40
Tは、適応のための、優先順位が付けられた基準、すなわち、設計データから得られる公称壁厚(T
N)および公称外側翼形状(40
N)に基づいて求められる。
【0020】
目標外側翼形状40
Tの生成のための上記のステップは、後述するように計算機支援設計(CAD)を介して実施されてもよい。例示された実施の形態において、CADモジュールは、目標外側翼形状40
Tが、鋳造された翼セクション12の測定された外側形状40
Aを超えて延びることがないように、目標外側翼形状40
Tを制限するように適応させられていてもよい。
【0021】
目標外側翼形状40
Tに基づき、機械加工パスデータが生成されてもよい。機械加工パスデータは、生成された目標外側翼形状40
Tに従うように余分な材料を除去するため、測定された形状40
Aに対応する鋳造された翼セクションの外面を機械加工するための情報を規定する。生成された機械加工データに基づき、外壁の外面は、例えば、研削またはフライス削りによって機械加工されてもよい。しかしながら、外壁機械加工は、特に電解加工(ECM)および放電加工(EDM)を含みかつこれらに限定されないその他の手段によって行われてもよい。
【0022】
上述の実施の形態において、鋳造プロセスは、(機械加工前の)鋳造された翼セクション12における実際の壁厚(T
A)が、それぞれの翼セクションの設計データから得られた対応する公称壁厚の値(T
N)より大きくなることを保証するように構成されてもよい。任意のタービン列のタービンブレードまたはベーンのポストマシニングのために、各翼セクションの機械加工は、外側翼面および内部冷却通路の形状に同時に適合するように適応させられてもよい。これにより、ブレードまたはベーンの当該列の各翼セクションを機械加工するために、特定の機械加工パスが生成される。コア変形は、個々の翼ごとに変化するので、機械加工パスの生成および機械加工の実行は、各タービン翼に特定して適応させられてもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、鋳造された翼セクションのアダプティブなポストマシニングのための自動化されたシステムに関する。
図7に示したように、このようなシステム50は、センサモジュール52を有してもよい。センサモジュール52は、上述のように、鋳造された翼セクションの外側形状の3−D測定を行いかつ鋳造された翼セクションの実際の壁厚の値の測定によって冷却通路の形状および位置を測定するためのセンサを含む。システム50は、例えば、タービンブレードまたはベーンの3−DモデルまたはCADモデルの形式の設計データを含むメモリ手段54を有してもよい。システム50は、さらに、上述の方法に従って機械加工パスデータ66を生成するために、センサモジュール52から測定データ62を受け取りかつメモリ54から設計データ64(例えば、公称壁厚の値、公称外側翼形状)を受け取るように構成されたCADモジュールを有する。CADモジュールは、計算機支援設計パッケージのためのサブコンポーネントであってもよい。CADモジュールによって生成された機械加工パスデータ66は、数値制御(NC)プログラムを含んでもよい。システム50は、さらに、機械加工データ66に基づいて、鋳造されたタービン翼の外面を機械加工するための機械加工装置を含む。CADモジュールは、鋳造された各タービン翼のためにNCプログラムを自動的にセットアップし、チェックしかつ適応させてもよい。CADモジュールは、コンピュータコードにおいて規定されてもよく、上述の方法を行うためにコンピュータを操作するために使用されてもよいことが認められるであろう。すなわち、方法を行うためにコンピュータを操作するために使用するために適したコンピュータコードを実現する方法および物品は、1つの発明的概念の、独立して特定可能な態様である。
【0024】
薄い翼のアダプティブ・マシニングを含む上述の実施の形態は、鋳造プロセス制限を克服してもよく、これにより、鋳造不能なジオメトリを製造することを可能にし、例えば、より薄い翼、テーパを有さないまたは小さなテーパを有する、より薄い後縁を備える翼の製造を可能にする。より薄い翼外壁は、特に低圧タービン段において、回転するタービンブレードにおける遠心引張荷重を著しく減じることがある。例示された実施の形態は、鋳造プロセス最適化によって壁厚を減じることと比較して、より費用対効果の高い製造方法をも可能にする。別の利点は、鋳造プロセス公差を減じかつ/または鋳造壁厚を増大させる可能性であり、これにより、鋳造歩留まりを高め、したがって、鋳造コストを減じる。
【0025】
特定の実施の形態が詳細に説明されているが、全体的な開示内容を考慮して、これらの詳細に対する様々な変更および代替を開発することができることを当業者は認識するであろう。したがって、開示された特定の配列は、例示的でしかなく、添付の請求項ならびにそのあらゆるおよび全ての均等物の完全な範囲が与えられるべき本発明の範囲に関して制限するものではないことが意図されている。