(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記発光部が前記入力光を発している時の前記強度から前記発光部が前記入力光を発していない時の前記強度を減算することによって得られた強度変化の値を用いて、前記接触位置を算出する請求項1または2に記載のタッチパネル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、デジタルサイネージ(電子看板)等のために、タッチパネルを内蔵することによって接触位置を検出可能な大型の表示装置が開発されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術のような赤外線方式のタッチパネルは、多数の発光素子及び受光素子を画面の縁に沿って配列する必要があるため、大型化には大きなコストが掛かる。
【0006】
また、静電容量方式のタッチパネルは、1層又は複数層の透明な電極層を必要とするため、大型化には大きなコストが掛かる。さらに電極層や接着層の存在によって光の透過率が低下するため、明るさを補うために表示装置のバックライトの消費電力が上昇する。また、抵抗膜方式のタッチパネルは、表面に接触を検出するための電極層及びフィルムを必要とするため、やはり光の透過率が低下する。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、光の透過性が高い低コストのタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のタッチパネル装置は、接触を受ける接触面を有するパネルと、前記パネルを透過する入力光を前記パネルへ入力する発光部と、前記入力光によって前記接触面上に生成されたエバネッセント光の反射光を含む出力光を検出する受光部と、前記受光部が検出した前記出力光の強度と、予め記憶された前記接触面上の位置に対応する前記出力光の強度との関係に基づいて前記接触面において接触を受けた接触位置を算出して出力する制御部とを備える。
【0009】
前記タッチパネル装置において、前記受光部は複数の受光素子を備えてもよく、前記制御部は、それぞれの前記複数の受光素子が検出した前記出力光の強度を用いてそれぞれの前記受光部から前記接触位置までの距離を算出し、前記複数の受光素子に係る複数の前記距離を用いて前記接触位置を算出してもよい。
【0010】
前記タッチパネル装置において、前記制御部は、前記発光部が前記入力光を発している時の前記強度から前記発光部が前記入力光を発していない時の前記強度を減算することによって得られた強度変化の値を用いて、前記接触位置を算出してもよい。
【0011】
前記タッチパネル装置において、前記受光部は、前記反射光を撮像することによって画像を取得するカメラであってもよく、前記制御部は、前記カメラが取得した前記画像から前記接触位置を算出してもよい。
【0012】
前記タッチパネル装置において、前記制御部は、前記カメラが取得した前記画像から前記接触の指紋を検出してもよく、前記接触位置とともに前記指紋を出力してもよい。
【0013】
前記タッチパネル装置において、前記発光部は、0.78μm以上1000μm未満の波長を有する前記入力光を発してもよい。
【0014】
前記タッチパネル装置において、前記発光部は、複数の波長を有する前記入力光を発してもよい。
【0015】
前記タッチパネル装置において、前記制御部は、前記出力光の変化の大きさに基づいて、前記接触の有無を判定してもよい。
【0016】
前記タッチパネル装置において、前記制御部は、前記出力光の変化の時系列のパターンに基づいて、前記接触の有無を判定してもよい。
【0017】
前記タッチパネル装置において、前記接触面の静電容量を測定する静電容量測定部をさらに備えてもよく、前記制御部は、前記静電容量測定部が測定した前記静電容量に基づいて、前記接触の有無を判定してもよい。
【0018】
前記タッチパネル装置において、前記発光部は、前記パネルの前記接触面を取り囲む端面へ前記入力光を入力してもよい。
【0019】
前記タッチパネル装置において、前記受光部は、前記発光部とは反対側の前記端面から出力される前記出力光を検出してもよい。
【0020】
前記タッチパネル装置において、前記パネルに沿って隙間をあけて延在する、画像を表示するための表示部をさらに備えてもよく、前記受光部は、前記パネルと前記表示部との間の前記隙間から出力される前記出力光を検出してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光の透過性が高い低コストのタッチパネル装置を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るタッチパネル装置1の正面図である。
図2は、本実施形態に係るタッチパネル装置1の側面図である。
図1及び
図2において、各部材の大きさは視認性のために調整されており、実際の大きさには対応していない。
タッチパネル装置1は、制御部11と、発光部12と、受光部13と、パネル14と、表示部15とを備える。制御部11、発光部12、受光部13、パネル14及び表示部15は、筐体(図示せず)に固定される。
【0024】
パネル14は、発光部12及び表示部15が発する光を透過する板である。パネル14は、ユーザによる接触(タッチ)を受ける接触面141と、接触面141を取り囲み、接触面141と直交する端面142とからなる。パネル14は、例えば樹脂、ガラス等、少なくとも発光部12が発する入力光の波長と表示部15が発する可視光の波長とに対して透明な材料で構成される。
【0025】
発光部12は、制御部11に接続されており、パネル14のY軸方向の辺に対向して配置される。発光部12は、制御部11からの制御信号に従って所定の波長の光(入力光A)を発生させる発光素子を有する。発光部12は、例えばLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)等を発光素子として有する。発光部12は、入力光Aをパネル14のY軸方向の辺の端面142に入力できる位置に設けられる。パネル14に一様に入力光Aを入力するために、発光部12は、パネル14の端面142と発光素子との間にライトガイド又は導光板を有することが望ましい。
【0026】
受光部13は、パネル14の発光部12が設けられた辺に対向するY軸方向の辺およびY軸と直行するX軸方向の辺に設けられる。各受光部13は、制御部11に接続されており、パネル14の端面142からの光(出力光B)を検出してその光の強度を示す信号を制御部11に送信する受光素子を有する。受光部13は、例えばPD(フォトダイオード)等を受光素子として有する。パネル14上でのユーザの接触位置を高精度に特定するために、各受光部13は対向する辺に沿って配置された少なくとも2つの受光素子を有することが望ましい。受光部13は、パネル14の端面142からの出力光Bを受けられる位置に設けられる。環境光(外乱光)の影響を抑えるために、受光部13は、パネル14の端面142と受光素子との間に偏光フィルタを有することが望ましい。
【0027】
表示部15は、制御部11に接続されており、パネル14の背面側(Z軸方向)にパネル14と平行に設けられている。表示部15は、液晶ディスプレイ等、制御部11からの制御信号に従って各種の情報を表示可能な任意の表示装置を有する。表示部15は、パネル14を介してユーザに向けて画像を表示する。
【0028】
制御部11は、発光部12を制御して光を発生させるとともに、各受光部13が受けた光に基づいてユーザの接触位置を算出する。制御部11は、算出した接触位置を上位システムに出力する。
【0029】
[タッチ検出方法の説明]
図3A、
図3Bは、本実施形態に係るタッチパネル装置1によるタッチ検出方法の模式図である。
図3Aは、パネル14にユーザが接触していない状態を示す。
物質の内部と外部との屈折率が異なる場合において、光が該物質の内部を通過する際に、光は該物質の内部と外部との界面に所定の値以上の角度で入射すると全反射されることが知られている。タッチパネル装置1において、端面142から入力された入力光Aは、パネル14と外部(すなわち大気)との界面において全反射を繰り返し、パネル14の内部を進行する。全反射しない入力光Aは、パネル14外へ透過して発散する。
【0030】
光がある界面で全反射される際に、該界面に関して該光の反対側には、該光の1波長程度の厚さのエバネッセント光(エバネッセント場ともいう)が生成されることが知られている。エバネッセント光は、全反射される光と同じ振動数で、界面に沿って伝搬する光波である。エバネッセント光のエネルギー分布は界面から1波長程度(例えば数百nm)の領域に限定され、界面にまとわりつくように局在する。タッチパネル装置1において、パネル14の外側の接触面141の近傍には、全反射された入力光Aによってエバネッセント光Cが生成される。
【0031】
図3Bは、パネル14にユーザ(ここでは指)が接触している状態を示す。ユーザがパネル14に接触又は近接すると、パネル14近傍に生成されているエバネッセント光Cはユーザの指の表面で拡散反射して反射光Dが発生する。エバネッセント光Cの反射光 Dのうち一部はパネル14内を全反射しながら進行して受光部13に到達し、残りの部分はパネル14外に発散する。そのため、受光部13は、全反射された入力光A及びエバネッセント光Cの反射光Dを含む出力光Bを受ける。したがって、受光部13が受ける出力光Bの強度は、
図3Aの状態と
図3Bの状態とで変動する。
【0032】
エバネッセント光が拡散反射されると、入力光Aのエネルギーが一部失われるため出力光B中の入力光Aの強度が低下する一方で、出力光Bに反射光Dの強度が付加される。そのため、発光部12、受光部13及び接触位置の関係によって、出力光Bの強度が上昇する場合と低下する場合の両方があり得る。したがって、出力光Bの強度は、接触面141におけるユーザの接触位置によって変化する。
【0033】
タッチパネル装置1の制御部11は、受光部13が受けた出力光Bの強度を、予め記憶された複数の位置と、それらの位置に対応した出力光の強度との関係と比較することによって、ユーザによる接触位置を算出する。
【0034】
[タッチパネル装置1の構成]
図4は、本実施形態に係るタッチパネル装置1のブロック図である。
図4において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図4に示したもの以外のデータの流れがあってよい。
図4において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図4に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に別れて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0035】
タッチパネル装置1は、上述の制御部11、発光部12、受光部13及び表示部15に加えて、記憶部16を有する。制御部11は、入力光制御部111と、出力光検出部112と、関係読出部113と、接触位置算出部114と、出力部115とを有する。
【0036】
記憶部16は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部16は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶している。
【0037】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部11は、記憶部16に記憶されたプログラムを実行することにより、入力光制御部111、出力光検出部112、関係読出部113、接触位置算出部114及び出力部115として機能する。制御部11の機能の少なくとも一部は、電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、ネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0038】
本実施形態に係るタッチパネル装置1は、
図4に示す具体的な構成に限定されない。タッチパネル装置1は、1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0039】
入力光制御部111は、発光部12を制御して、入力光Aを発生させる。具体的には、入力光制御部111は、発光部12に制御信号を送信することによって、発光部12に所定の波長の入力光Aを発生させる。
【0040】
発光部12が発する入力光Aは、例えば赤外線領域(0.78μm以上1000μm未満の波長範囲)の光である。赤外線はユーザに不可視であるため、表示部15の表示内容を邪魔することがないため好ましい。入力光Aは、赤外線領域に限られず、可視光領域( 0.38μm以上0.78μm未満の波長範囲)又は紫外線領域(0.1μm以上0.38μm未満の波長範囲)の光であってもよい。入力光Aの波長は、タッチパネル装置1の実装に応じて適宜選択される。
【0041】
出力光検出部112は、受光部13が受けた出力光Bを検出する。具体的には、出力光検出部112は、受光部13が受けた出力光Bの強度を示す信号を受光部13から受信し、該信号に対して復調等の処理を行うことによって、出力光Bの強度を検出する。
【0042】
関係読出部113は、記憶部16に予め記憶された、パネル14上の位置と、それらの位置における出力光Bとの関係を示すテーブルを読み出す。パネル14上の位置と出力光Bとの関係は、パネル14上の複数の位置のそれぞれをユーザが接触した場合の出力光Bのそれぞれの強度を、計算又は実験によって予め取得することによって定義される。強度として、出力光Bの強度そのものの値を用いてもよく、強度変化の値を用いてもよい。強度変化の値とは、ある位置を、ユーザが接触した場合の出力光Bの強度とユーザが接触していない場合の出力光Bの強度との差の値である。
【0043】
接触位置算出部114は、関係読出部113が読み出したパネル14上の位置と出力光Bとの関係を示すテーブルを参照して、出力光検出部112が検出した出力光Bに対応するパネル14の接触面141上のユーザの接触位置を検出する。より具体的には、出力光検出部112が検出した出力光Bを、上記テーブルにおける出力光Bと比較することによって、ユーザによる接触位置を判断する。
例えば接触位置算出部114は、出力光検出部112が検出した出力光Bの強度と、関係読出部113が読み出したテーブルにおける出力光Bの複数の強度との差をそれぞれ算出する。
【0044】
このように算出された強度の差は、ユーザによる接触位置と関係読出部113が読み出したテーブルにおける複数の位置との間の距離に対応する。すなわち、テーブルの複数の位置のうち、検出された出力光Bとの強度の差が小さいテーブルにおける出力光Bに対応する位置の近くにユーザが接触したと考えられる。このように、接触位置算出部114は、パネル14の接触面141上の複数の位置に対応して算出した複数の強度の差から、ユーザによる接触位置を推定する。
【0045】
受光部13が複数の受光素子を含む場合には、複数の受光素子についてそれぞれパネル14上の位置と出力光Bとの関係を定義し、複数のこれらの関係を用いてユーザによる接触位置を決定してもよい。この場合には、例えば接触位置算出部114は、出力光検出部112が検出した出力光Bの強度と、各受光素子についての関係における複数の位置の出力光Bの強度との差から、ユーザによる接触と各受光素子との間の距離を算出する。そして接触位置算出部114は、各受光素子からの距離を用いて三辺測量を行うことによって、ユーザによる接触位置を算出する。これにより、1つの受光素子を用いる場合よりも、ユーザによる接触位置を高精度に特定することができる。
【0046】
出力部115は、接触位置算出部114によって算出されたユーザによる接触位置を出力する。具体的には出力部115は、接触位置算出部114によって算出されたユーザによる接触位置を示す情報を、タッチパネル装置1に接続された上位システムに送信する。この上位システムは、受信した接触位置を示す情報に基づいて所定の処理を行う。出力部115は、接触位置算出部114によって算出されたユーザによる接触位置を示す情報を、記憶部16に記憶することによって出力してもよい。
【0047】
[タッチ検出方法のフローチャート]
図5は、本実施形態に係るタッチパネル装置1が実行するタッチ検出方法を示すフローチャートである。
図5のフローチャートは、例えばタッチパネル装置1が起動されることによって開始される。
【0048】
まず入力光制御部111は、発光部12を制御して、所定の波長の入力光Aを発生させる(S11)。出力光検出部112は、受光部13が受けた出力光Bを検出する(S12)。出力光検出部112が検出する出力光Bは、パネル14内を全反射しながら通過した入力光Aと、パネル14近傍に生成されたエバネッセント光Cの反射光Dとを含む。
【0049】
次に関係読出部113は、記憶部16に予め記憶された、パネル14上の位置と、それらの位置における出力光Bとの関係を示すテーブルを読み出す(S13)。接触位置算出部114は、ステップ S12で出力光検出部112が検出した出力光Bを、ステップS13で関係読出部113が読み出したパネル14上の位置と出力光Bとの間の関係を示すテーブルと比較する。この比較によって、ユーザがパネル14に接触しているか否かを判定する。
【0050】
接触位置算出部114は、ユーザがパネル14に接触していないことを判定した場合に(S14のNO)、ユーザによる接触位置を出力せずに、ステップS16に進む。接触位置算出部114は、ユーザがパネル14に接触していることを判定した場合に(S14のYES)、検出した出力光B及びパネル14上の位置と出力光Bとの間の関係からユーザによる接触位置を算出する。そして出力部115は、接触位置算出部114によって算出されたユーザによる接触位置を出力する(S15)。
【0051】
所定の終了条件(例えばタッチパネル装置1の終了操作が行われること)が満たされない場合に(S16のNO)、タッチパネル装置1はステップS11に戻って処理を繰り返す。所定の終了条件が満たされる場合に(S16のYES)、タッチパネル装置1は処理を終了する。
【0052】
[誤検出の抑制方法]
本実施形態において、接触位置の誤検出を抑制するために例えば以下の第1から第8の方法が考えられる。
第1の方法として、発光部12を、750nm近傍の波長又は900nm近傍の波長を有する入力光Aを発するように構成してもよい。太陽光は、750nm近傍の波長及び900nm近傍の波長の光をほとんど含まない。そのため、750nm近傍の波長又は900nm近傍の波長を有する入力光Aを用いることによって、太陽光の影響を抑えることができる。
【0053】
第2の方法として、発光部12を、赤外線領域、可視光領域及び紫外線領域から選択された複数の波長の入力光Aを発するように構成してもよい。環境光等によるノイズが発生した場合には、複数の波長において同じ影響が出る確率は低い。一方、ユーザによる接触が実際に行われた場合には、複数の波長のいずれにおいても同じ接触位置が算出される。
【0054】
そこで、入力光制御部111は、発光部12から各波長の入力光Aを順に発生させ、出力光検出部112は入力光Aの波長ごとに出力光Bを検出する。そして接触位置算出部114は、入力光Aの波長ごとに接触位置を算出する。そして入力光Aの複数の波長について算出された接触位置が同一である場合又は近い場合に、接触位置算出部114は該接触位置のいずれか又は平均値を、正しい接触位置として決定する。複数の波長の接触位置が大きく異なる場合には、接触位置算出部114は接触が行われていないことを判定する。このように複数の波長の入力光Aを順に用いることによって、ノイズによる接触の誤検出を抑えることができる。
【0055】
第3の方法として、入力光制御部111は、発光部12をパルス駆動させて入力光Aを断続的に発するように制御してもよい。この場合に、出力光検出部112は、入力光Aが発生している時の出力光Bの強度から、入力光Aが発生していない時の出力光Bの強度を減算することによって得られた値を用いて、接触位置の算出を行う。これにより、入力光 Aが発生していない時に出力光検出部112によって検出されるパネル14外及び表示部 15からの光を、接触位置の算出から除外できる。このような構成によって、環境光(外来光)や、表示部15によって表示されるコンテンツの影響を少なくして接触位置を算出することができる。
【0056】
第4の方法として、表示部15は、受光部13が出力光Bを検出する時に、表示のための光(バックライト)の発生を停止(瞬断)してもよい。このような構成により、接触位置に算出に用いられる出力光Bに表示のための光が混入しないため、接触の誤検出を抑えることができる。また、表示部15は表示のための光のうち、特定の波長の光(例えば赤色光、緑色光及び青色光のうちいずれか)のみを瞬断してもよい。この場合には、発光部 12は該特定の波長の光を入力光Aとして用いる。このような構成により、入力光Aとして可視光領域の光を用いる場合であっても、表示のための光による接触の誤検出を抑えることができる。さらに、表示の瞬断が特定の色のみで行われるため、ユーザによる表示の鑑賞を邪魔しづらい。
【0057】
第5の方法として、接触位置算出部114は、出力光Bの変化の大きさに基づいて、接触の有無を決定してもよい。例えば手の平等のユーザの指以外の部分がパネル14に接触した場合には、ユーザは操作を意図していないことが多いため、接触していないとみなすことが望ましい。そこで接触位置算出部114は、出力光検出部112が検出した出力光Bの強度の変化の大きさが所定の閾値以上である場合に、接触が行われていないことを判定する。出力部115は、該判定に従って接触位置を出力する。これにより、手の平等による広い面積の接触について、接触位置の出力から除外することができる。
【0058】
第6の方法として、入力光制御部111は、パネル14のうち指に近い部分等の一部のみに発光部12から入力光Aを入力し、その他の部分の発光部12を消灯するように発光部12をエリア駆動させてもよい。この場合に、入力光制御部111は、人体の大きさ(身長等)とタッチパネル装置1の配置から指に近い部分を推測し、入力光Aを入力すべきエリアを特定する。これにより、タッチパネル装置1は、指の接触を高精度に検出することができる。
【0059】
第7の方法として、接触位置算出部114は、出力光Bの変化の時系列のパターンに基づいて、接触の有無を決定してもよい。ユーザの指がパネル14に触れる際には、通常、指先から指の腹へと接触面積が徐々に大きくなる。そのため、出力光Bの変化には、時系列のパターンが表れる。
【0060】
そこで接触位置算出部114は、指の接触に対応する出力光Bの変化の時系列のパターンを予め定義しておく。接触位置算出部114は、出力光検出部112が検出した出力光Bの強度を時系列で取得し、該時系列の出力光Bの強度に、予め定義された時系列のパターンが含まれるか否かを判定する。そして接触位置算出部114は、時系列の出力光Bの強度に、予め定義された時系列のパターンが含まれる場合には、指の接触が行われたことを判定し、そうでない場合には、指の接触が行われていないことを判定する。出力部115は、該判定に従って接触位置を出力する。このように出力光Bの変化の時系列のパターンに基づいて接触の有無を判定することによって、指の接触を高精度に検出することができる。
【0061】
第8の方法として、タッチパネル装置1に、パネル14の静電容量を測定する静電容量測定部をさらに設けてもよい。静電容量測定部は、人体の接触に対応する静電容量を予め定義しておく。静電容量測定部は、パネル14の接触面141の静電容量を測定する。そして、静電容量測定部は、測定された静電容量が、予め定義された人体の接触に対応する静電容量に合致する場合には、ユーザの接触が行われたことを判定し、そうでない場合にはユーザの接触が行われていないことを判定する。出力部115は、該判定に従って接触位置を出力する。このように静電容量に基づいて接触の有無を判定することによって、ユーザ以外のゴミや小動物の接触を除外し、ユーザの接触を高精度に検出することができる。
【0062】
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るタッチパネル装置1は、パネル14の表面に生成されるエバネッセント光Cの反射光Dに基づいて、パネル14上におけるユーザによる接触位置を算出する。このような構成によれば、接触位置を検出するための透明電極が不要であるため、従来の静電容量式のタッチパネルよりも低コストであり、また光の透過率が高い。また、発光部12及び受光部13の多数の組を画面の縁に沿って配列させる必要がないため、従来の赤外線式のタッチパネルよりも低コストである。
【0063】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は受光部13として受光素子を用いるのに対して、本実施形態は受光部13として撮像装置を用いる。それ以外の構成及び処理は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
[タッチパネル装置1の構成]
図6は、本実施形態に係るタッチパネル装置1の側面図である。
図6において、各部材の大きさは視認性のために調整されており、実際の大きさに対応していない。表示部15は、パネル14に沿って所定の大きさの隙間Eをあけて延在する。
【0065】
受光部13は、隙間Eからパネル14を撮像した画像を制御部11に送信する撮像装置(カメラ)を有する。受光部13は、パネル14と表示部15との間の隙間Eから出力される出力光Bを検出できる位置に設けられる。
【0066】
[タッチ検出方法の説明]
図7は、本実施形態に係るタッチパネル装置1によるタッチ検出方法の正面図である。
図7は、受光部13の撮像装置がパネル14を撮像した画像に対して台形補正を行った画像を示す。すなわち、受光部13はパネル14と表示部15との隙間Eの端に設けられるため、パネル14を撮像すると、画像中のパネル14に台形歪みが発生する。そのためタッチパネル装置1は、受光部13が撮像した画像に対して台形補正を行うことによって、画像中のパネル14の台形歪みを解消する。
【0067】
上述のように、エバネッセント光Cの厚さは数百nm程度である。一方、指紋の高さ(すなわち指紋の山と谷との差)は、0.1mm程度である。このように指紋の高さはエバネッセント光Cの厚さより圧倒的に大きいため、指がパネル14に接触した際に、エバネッセント光Cは指紋の山の部分(凸部)で反射されるが、指紋の谷の部分(凹部)では反射されない。そのため、ユーザの指が接触しているパネル14を受光部13が撮像すると、エバネッセント光Cの反射光Dは、
図7に示すように指紋F(指紋の山の部分)の形状として画像に写る。そのため本実施形態に係るタッチパネル装置1は、パネル14を撮像することによって、エバネッセント光Cの反射光Dを含む出力光Bから、接触位置に加えて指紋を検出することができる。
【0068】
[タッチ検出方法のフローチャート]
図8は、本実施形態に係るタッチパネル装置1が実行するタッチ検出方法を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは、例えばタッチパネル装置1が起動されることによって開始される。
【0069】
まず入力光制御部111は、発光部12を制御して、所定の波長の入力光Aを発生させる(S21)。出力光検出部112は、受光部13にパネル14を撮像させ、画像を取得する(S22)。このとき、出力光検出部112は、撮像した画像に対して所定の台形補正を行う。パネル14の画像には、パネル14近傍に生成されたエバネッセント光Cの反射光Dを含む出力光Bが写る。
【0070】
次に関係読出部113は、記憶部16に予め記憶されたパネル14上の位置と、それらの位置における出力光Bとの関係を示すテーブルを読み出す(S23)。本実施形態において、パネル14上の位置と出力光Bとの関係は、パネル14上の複数の位置にそれぞれユーザが接触した場合に撮像される画像中の出力光Bの位置を、計算又は実験によって予め取得することによって定義される。
【0071】
接触位置算出部114は、ステップS22で出力光検出部112が撮像した画像を、ステップS23で関係読出部113が読み出したパネル14上の位置と出力光Bとの関係と示すテーブルと比較することによって、ユーザがパネル14に接触しているか否かを判定する。
【0072】
接触位置算出部114は、ユーザがパネル14に接触していないことを判定した場合に(S24のNO)、ユーザによる接触位置を出力せずに、ステップS27に進む。接触位置算出部114は、ユーザがパネル14に接触していることを判定した場合に(S24のYES)、検出した出力光B及びパネル14上の位置と出力光Bとの間の関係からユーザによる接触位置を算出する。すなわち接触位置算出部114は、関係読出部113が読み出した関係において、画像中の出力光Bの位置に関連付けられたパネル14上の位置を、ユーザによる接触位置として算出する。そして出力部115は、接触位置算出部114によって算出されたユーザによる接触位置を出力する(S25)。
【0073】
さらに接触位置算出部114は、ステップS22で出力光検出部112が撮像した画像中において、ステップS25で算出された接触位置を中心とした所定の大きさの領域を、ユーザの指紋Fとして検出する。そして出力部115は、接触位置算出部114によって検出されたユーザの指紋Fを出力する(S26)。
【0074】
所定の終了条件(例えばタッチパネル装置1の終了操作が行われること)が満たされない場合に(S27のNO)、タッチパネル装置1はステップS21に戻って処理を繰り返す。所定の終了条件が満たされる場合に(S27のYES)、タッチパネル装置1は処理を終了する。
【0075】
[第2の実施形態の効果]
本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、接触位置と同時にユーザの指紋を検出することができる。指紋の検出にもエバネッセント光Cの反射光Dを用いるため、低コストで接触位置及び指紋を検出する装置を実現できる。本実施形態に係るタッチパネル装置1は、ATM(現金自動預払機)のような、ユーザによる操作の受け付けと生体認証のための指紋の受け付けとを両方要する装置に好適に用いることができる。
【0076】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0077】
タッチパネル装置1の制御部11(プロセッサ)は、
図5および
図8に示すタッチ検出方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、制御部11は、
図5および
図8に示すタッチ検出方法を実行するためのタッチ検出プログラムを記憶部16から読み出し、該タッチ検出プログラムを実行してタッチパネル装置1の各部を制御することによって、
図5および
図8に示すタッチ検出方法を実行する。
図5および
図8に示すタッチ検出方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。