特許第6861853号(P6861853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861853発毛(養毛)促進活性を有するラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55及びこれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861853
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】発毛(養毛)促進活性を有するラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20210412BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20210412BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20210412BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20210412BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210412BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20210412BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
   C12N1/20 AZNA
   C12N1/20 E
   A61K35/747
   A61P17/14
   A61P37/04
   A61P1/00
   A23L33/135
   A23L2/00 F
   A23C9/12
   A23K10/18
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-565560(P2019-565560)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公表番号】特表2020-521475(P2020-521475A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(86)【国際出願番号】KR2018006148
(87)【国際公開番号】WO2018221956
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0068238
(32)【優先日】2017年6月1日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12011P
(73)【特許権者】
【識別番号】518405821
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA FOOD RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ハクジョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミンソン
(72)【発明者】
【氏名】イム,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジャヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジウン
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−210659(JP,A)
【文献】 国際公開第00/069399(WO,A1)
【文献】 特開2015−187171(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
A61K 35/00−35/768
A23L 33/00−33/29
A23K 10/00−40/35
A61K 8/00−8/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCCM12011PのラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55{Lactobacillus curvatus WIKIM55}。
【請求項2】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物を含む、発毛(養毛)促進用薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物は、成長期の毛包(毛嚢)数を増加させることにより発毛(養毛)を促進させる、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記組成物は経口で投与されるものである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項5】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物を含む、発毛促進用食品組成物。
【請求項6】
前記組成物は成長期の毛包数を増加させて発毛を促進させる、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記食品は健康機能食品である、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項8】
前記食品は飲料、バー又は発酵乳である、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項9】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物を含む、免疫増強用組成物。
【請求項10】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物を含む、整腸剤組成物。
【請求項11】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物からなる、発酵用乳酸菌スターター。
【請求項12】
ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55;受託番号KCCM12011P)又はその培養物を含む、飼料又は飼料添加物組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のラクトバチルスクルヴァトゥス菌株及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は頭部の保護及び頭部温度の維持などの役割を果たすだけでなく、最近の美的関心の増大によって外貌を決定する身体器官でもある。これにより、脱毛及び脱毛治療方法に対して関心が高まっており、脱毛治療剤に関する研究開発が活発に行われている。毛髪は、成長期(anagen、growing phase)、移行期(canagen、transitional phase)、休止期(telogen、resting phase)、脱落期(exogen)の4段階の循環的毛周期(hair cycle)を通して成長と脱落を繰り返すが、多様な原因で毛髪の成長より脱落がより多く起こるとき、脱毛と言う。現在知られている脱毛の原因としては、遺伝的要因、血流障害及び男性ホルモンであるテストステロンによる内分泌異常などがあり、ストレスのような外的要因も知られている。
【0003】
代表的な発毛促進剤としては、ミノキシジル(minoxidil;6−Amino−1、2−dihydro−1−hydroxy−2−imino−4−phenoxypyrimidine、経皮塗布剤)とフィナステライド(finasteride、経口服用剤)などが使われている。ミノキシジルの場合、血管拡張による栄養供給の促進によって毛髪の成長を誘導することが知られており、フィナステライドの場合、テストステロンの代謝酵素である5α−reductaseの活性抑制による毛乳頭細胞死滅抑制の作用機序を有している。しかし、これらの治療剤は共に使用時にのみ効果があり、使用を中断すれば効果がなくなるため、持続的に使わなければならないという不便さがあり、ミノキシジルの場合はべたつく使用感や皮膚刺激といった副作用が、フィナステライドの場合は精力減退、勃起不全などの性機能障害が報告されているため、持続的な使用には多くの制限が伴う。
【0004】
このような背景の下で、最近は乳酸菌を用いた皮膚及び毛髪健康に対する研究が進んでいるが、直接的に発毛(養毛)に影響を与える乳酸菌に対しては明かされていないため、毛髪の健康及び発毛をもたらすことができる優れた乳酸菌を含む組成物の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発毛促進活性に優れた新規のラクトバチルス属乳酸菌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、伝統的な発酵食品からプロバイオティックスとして優れた効果を示しながら、発毛促進効果を示す乳酸菌株を捜す努力をした結果、新規のラクトバチルス属乳酸菌株であるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55)を分離(単離)及び同定して本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明は、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55)又は、その培養物を有効成分として含む発毛促進の薬学組成物及び食品組成物、治療有効量のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又は、その培養物を、これを必要とする対象に投与することを含む発毛促進方法、発毛促進のためのラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55の新規用途を提供する。
【0008】
本発明によるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55)は、キムチ由来の新規のラクトバチルスクルヴァトゥス菌株である。本発明では、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55をキムチから分離して同定したが、入手経路はこれに限定されるものではない。
【0009】
本発明の実施例によって分離された伝統的な発酵食品から、プロバイオティックスとして優れた効果を示す乳酸菌株は微生物の同定及び分類のための16S rDNA塩基配列分析結果、SEQ ID NO:1で示される塩基配列を有することが見出された。
【0010】
そこで、SEQ ID NO:1で示される16S rDNA塩基配列を有する本発明の微生物をラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55)と名付け、韓国微細物保存センターに2017年4月7日付で寄託した(受託番号KCCM12011P)。
【0011】
本発明のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55は、グラム陽性菌であって、好気的条件及び嫌気的条件の両方の条件下で成長することが可能な通性嫌気性菌(facultative anaerobe)であり、胞子を形成することなく、細胞は桿菌の形態を有している。
【0012】
本発明のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55はプロバイオティックスであり、一般的な乳酸菌の整腸効果及び免疫増強効果を有する。ラクトバチルス属の乳酸菌が整腸効果免疫増強効果を有するということはよく知られている。
【0013】
本発明において、「プロバイオティックス(probiotics)」は、ヒトを含む動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きた微生物という意味と理解される。プロバイオティックスはプロバイオティック活性を有する生きた微生物で、単一又は複数の菌株の形態で提供される場合、宿主の腸内細菌叢に有益な影響を及ぼすことができる。
【0014】
下記の実施例では、本発明のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55が毛包の形成を促進させることにより、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株が発毛促進の効果を示すことを確認した。よって、本発明によるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55は、ヒト又は動物の整腸、発毛促進、免疫強化などの様々な用途に活用できる。
【0015】
本発明で、「発毛(養毛)促進」効果とは、毛髪の成長を促進して最終的には、全体毛髪において成長期の毛髪の割合を増加させることを意味する。したがって、前記用語は成長期の毛髪の割合が減少することによって引き起こされる脱毛を抑制するもので、「脱毛改善」、「脱毛予防」及び「脱毛治療」と同じ意味であると言い得る。
【0016】
このように、本発明の例示的な実施形態は、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を含むプロバイオティックス組成物を提供する。
【0017】
本発明による組成物に含まれるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55は、生菌体又は死菌体として存在することができ、乾燥又は凍結乾燥された形態として存在することもできる。多様な組成物内に含ませるために適した乳酸菌の形態及び製剤化方法は当業者によく知られている。
【0018】
例示的な一実施形態において、前記組成物は生菌として存在するラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株を含む経口投与用組成物であってもよい。
【0019】
他の例示的な実施形態において、前記組成物はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株の培養物、溶菌物(破砕物)又は前記菌株を用いた発酵物を含む皮膚塗布用又は皮膚外用剤組成物であってもよい。
【0020】
また、本発明の例示的な一実施形態では、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を含む整腸剤組成物を提供する。本発明による整腸剤組成物はヒトを含む動物の胃膓疾患の予防、治療及び改善に用いることができる。好ましくは、前記動物は、牛、馬、豚のような家畜を含む。前記「胃膓疾患」には、胃腸に危害を及ぼす細菌感染及び炎症性腸疾患が含まれる。例えば病原性微生物(大膓菌、サルモネラ菌、クロストリジウムなど)による感染性下痢、胃腸炎症、炎症性腸疾患、神経性膓炎症侯群、小腸微生物過成長症、腸内赤痢性下痢などが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0021】
具体的には、本発明による整腸剤組成物は経口で投与することが好ましい。投与量は胃膓疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療又は予防目的などによって変えてもよいが、一般的には成人を基準に一日に1千万個から数千億個を投与することができる。
【0022】
本発明はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を含む免疫増強用組成物を提供する。ラクトバチルス属の乳酸菌が整腸効果や免疫増強効果を有するということはよく知られている。
【0023】
本発明はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を含む発毛促進用組成物を提供する。
【0024】
本発明によるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55は、このような有益な効果によって、医薬品、健康機能食品、食品、飼料、飼料添加剤、乳酸菌スターター又は化粧品内に含めることができる。
【0025】
例示的な一実施形態において、本発明はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を有効成分として含む発毛促進用医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の組成物が医薬組成物に活用される場合、本発明の医薬組成物は、前記有効成分以外に、薬剤学的に適して生理学的に許容される補助剤(アジュバンド)を使って製造することができ、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆(コーティング)剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などが使用されうる。
【0027】
具体的には、前記薬学組成物は、投与のために、上記の有効成分以外に加えて薬剤学的に許容可能な担体を1つまたは複数種以上含んで薬剤学的組成物に製剤化することができる。
【0028】
前記薬剤学的組成物の製剤形態は、顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、坐剤、液剤、シロップ、ジュース(汁)、懸濁剤、乳剤、点滴剤又は注射可能な液剤などであってもよい。例えば、錠剤又はカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などの経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合することができる。また、所望の場合又は必要な場合、適した結合剤、滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物として含めることができる。適した結合剤はこれに制限されるものではないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はβラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントゴム又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ゴム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤はこれに制限されるものではないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0029】
液状溶液に製剤化された組成物において許容可能な薬剤学的担体は、滅菌及び生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分の中で1成分以上を混合して使うことができ、必要によって抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤に製剤化することができる。
【0030】
さらに、当該分野の適切な方法として、Remington’s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を用い、対応する疾患によって又は成分によって製剤化することができる。
【0031】
また、本発明は治療的有効量のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を、これを必要とする対象体に投与することを含む発毛促進方法を提供する。
【0032】
本明細書で使用される「対象(体)」とは、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物を言い、具体的にはヒトを言う。
【0033】
また、本明細書で使用される「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって決定される組職系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘導する有効成分又は薬学的組成物の量を意味するものであり、これは治療される疾患又は障害の症状の緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する治療上の有効量及び投与回数は所望の効果によって変わることは、当業者には明らかである。したがって、投与される最適な投与量は当業者が容易に決定することができ、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の含量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の排泄率、治療期間、同時に使われる薬物を含めた多様な因子によって調節できる。本発明の治療方法において、成人の場合、本発明のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を0.01mg/kg〜200mg/kgの用量で、1日1回〜数回投与することができる。
【0034】
本発明の治療方法において、本発明のラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を有効成分として含む組成物は、経口、直腸、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内又は皮内の経路を通して通常的な方式で投与することができる。
【0035】
他の例示的な実施形態において、本発明はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を有効成分として含む発毛促進用食品組成物を提供する。前記食品組成物は機能性食品又は飲料、バーなどの形態を含むことができる。
【0036】
本発明において、前記菌株を有効成分として含む食品組成物は、発酵乳などの飲料を含むことができる。このように、本発明はラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物からなる発酵用乳酸菌スターターを提供する。
【0037】
本発明による食品組成物は前記医薬組成物と同じ方式で製剤化され、機能性食品として用いられる、または各種の食品に添加することができる。本発明の組成物を添加することができる食品としては、例えば、飲料類、アルコール飲料類、お菓子類、ダイエットバー、乳製品、肉類、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0038】
例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤のような飲料類に製造される場合、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物以外にもクエン酸、果糖シロップ(フルクトースシロップ)、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、各種の植物抽出液などをさらに含むことができる。
【0039】
また、本発明は、前記ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を含む健康機能食品として提供することができる。機能性食品とは、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物を飲料、お茶類、香辛料、ガム、お菓子類などの食品素材に添加するかカプセル化、粉末化するか懸濁液などに製造した食品であり、これを摂った場合、健康上の特定の効果をもたらすが、一般の薬品とは違い、長期服用時に発生し得る副作用などがない利点がある。このようにして得られる本発明の健康機能食品は、日常的に摂ることができるので非常に有用である。このような健康食品におけるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55又はその培養物の添加量は、対象健康食品の種類によって一律的に規定することはできないが、食品本来の味を損なわない範囲内で添加すればよく、対象食品に対して通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%の範囲である。また、顆粒、錠剤又はカプセル形の食品の場合には通常0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%の範囲で添加すればよい。例示的な一実施形態において、本発明の健康機能食品は飲料の形態であってもよい。
【0040】
前記本発明による組成物は、飼料添加物又は飼料として用いることができる。
【0041】
飼料添加剤として用いる場合、前記組成物は20〜90%の高濃縮液であるか粉末又は顆粒形に製造することができる。前記飼料添加物は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸、又はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩又はポリフェノール、カテキン、αトコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のいずれか1種又は2種以上をさらに含むことができる。飼料として用いる場合、前記組成物は通常の飼料形態に製剤化することができ、通常の飼料成分を含むことができる。
【0042】
前記飼料添加剤及び飼料は、穀物、例えば粉砕又は破砕された小麦、燕麦、麦、トウモロコシ及び米をさらに含むことができ、植物性タンパク質飼料、例えば油菜、豆、及びヒマワリを主成分とする飼料、動物性タンパク質飼料、例えば血粉、肉粉、骨粉及び魚粉をさらに含むことができ、糖分及び乳製品、例えば各種の粉乳及び乳漿粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、その他にも栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0043】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与するか、あるいは食用担体中に他の飼料添加剤と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤はトップドレッシングとして、又はこれらを動物飼料に直接混合するか、又は飼料と別途の経口剤形として容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料と別に投与する場合、当該技術分野によく知られているように、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、即時放出又は徐放性剤形に製造することができる。このような食用担体は、固体又は液体、例えばトウモロコシ澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、胡麻油及びプロピレングリコールであってもよい。固体担体が使われる場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤又は含糖錠剤又は微分散性形態のトップドレッシングであってもよい。液体担体が使われる場合、飼料添加剤はゼラチン軟質カプセル剤、又はシロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、又は溶液剤の剤形であってもよい。
【0044】
また、前記飼料添加剤及び飼料は、補助剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、可溶化剤などを含むことができる。前記飼料添加剤は、浸酒、噴霧又は混合して動物飼料に添加して用いることができる。
【0045】
本発明の飼料又は飼料添加物は、哺乳動物、家擒及び魚類を含む多数の動物に提供することができる。
【0046】
前記哺乳動物として、豚、牛、羊、山羊、実験用齧歯動物だけではなく、ペット(例えば、犬、猫)などに使うことができる。前記家擒類としては、鶏、七面鳥、鴨、が鳥、きじ、及びうずらなどにも使うことができ、前記魚類としては、マスなどに使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
例示的な一実施形態において、前記飼料又は飼料添加剤は、ペット用発毛促進に使うことができる。前記ペットとしては、犬、猫、鼠、兎などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
また、前記組成物が化粧料組成物として使われる場合、化粧料組成物の剤形としては、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤又は頭皮洗浄剤の剤形であってもよく、前記皮膚外用剤の剤形としては、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック又はゲルであってもよく、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又は噴霧剤のような経皮投与型剤形を挙げることができる。頭皮洗浄剤の剤形としては、例えばヘアスプレー剤、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、ヘアーエッセンス、ヘアローション、ヘアー栄養ローション、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、ヘアー栄養クリーム、ヘアーモイスチャークリーム、ヘアーマッサージクリーム、ヘアーワックス、ヘアーエアロゾル、ヘアーパック、ヘアー栄養パック、ヘアーせっけん、ヘアークレンジングフォーム、毛髪染色剤、毛髪用ウェーブ剤、毛髪脱色剤、ヘアーゲル、ヘアーグレーズ又はヘアームースであってもよいが、これに制限されるものではない。各剤形の外用剤組成物において、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株以外の他の成分はその他の外用剤の剤形又は使用目的などによって当業者が容易に適宜選択して取り合わせることができる。
【0049】
本発明の化粧料組成物は、具体的には化粧品として許容可能な媒質又は基剤を含む。これは局所適用に適したあらゆる剤形であってよく、例えば溶液、ゲル、固体又はねり無水生成物、油相を水相に分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球又はイオン性(リポソーム)及び/又は非イオン性の小嚢分散剤の形態で、又はクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシールスティックの形態で提供することができる。また、泡沫(foam)の形態又は圧縮推進剤をさらに含むエアロゾル組成物の形態にも製造することができる。また、本発明の化粧料組成物は皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含むことにより、皮膚科学分野で通常的に使われる局所適用又は全身適用可能な補助剤の形態に製造することができ、これらの組成物は当該分野の通常的方法によって製造することができる。
【0050】
また、本発明の化粧料組成物は、脂肪物質、有機溶媒、可溶化剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小嚢又は化粧品に通常的に使われる任意の他の成分のように化粧品学分野で通常的に使われる補助剤を含むことができる。これらの補助剤は化粧品分野で一般的に使用される量で導入される。
【0051】
本発明による組成物に含まれるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株の量は1回を基準に約10〜1012cfu/gであってもよく、例えば10〜1011cfu/g、10〜1010cfu/gであってもよい。菌株を投与する場合には生菌状態で投与してもよく、摂取前に死滅させるか衰弱した(attenuation)状態で投与してもよい。また、培養上澄み液などを使って製造する場合には、熱処理過程による滅菌化過程をさらに経ることができる。最小限の効能を有するために必要な菌株量及び一日摂取量は摂取者の身体又は健康状態によって変わるが、一般的に約10〜1012cfu/gであってもよく、例えば10〜1011cfu/g、10〜1010cfu/gであってもよい。
【0052】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、以下に詳細に説明する実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現されるものである。ただ、実施例は本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範囲を十分に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項によってのみ規定される。
【発明の効果】
【0053】
本発明によるラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55は、発毛促進活性を示すので、プロバイオティックスとしてヒト又は動物の整腸、免疫強化、胃膓疾患及び発毛促進などの用途のために多様に活用できる。さらに、発酵用スターターとして有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の菌株を30日間摂ったマウスの発毛様相を肉眼で観察した結果を示す。
図2】本発明の菌株を摂ったマウスの皮膚組職及び皮膚厚さを測定した結果を示す。
図3】本発明の菌株を摂ったマウスの皮下組職内の毛包数を測定した結果を示す。
図4】本発明の菌株を20週間摂ったマウスの発毛様相を肉眼で観察して毛髪成長期を確認したグラフを示す。
図5】本発明の菌株を摂ったマウスの毛包幹細胞の分布をFACS分析で確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1:菌株の分離及び同定
【0057】
キムチ抽出物の原液をMRS培地に塗抹して得た菌単一コロニー(集落)を収集してMRS brothで培養した。DNAはQIAamp DNA Mini Kit(QIAgen、Germany)を使って抽出した。抽出されたDNAは1%アガロースゲールを用いて確認し、16S rDNA geneを増幅するために抽出されたgenomic DNAを鋳型としてPCRを進めた。PCR条件は、denaturation 95℃1分、annealing 45℃1分、extension 72℃1分30秒で30サイクルを遂行した。得られたPCR産物はMacrogen(Seoul、Korea)に依頼して配列を分析した。細菌の同定は、16S rDNA配列をNational Center for Biotechnology Information(NCBI、www.ncbi.nlm.nih.gov)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)検索エンジンの類似性分析によって遂行した。
【0058】
本発明の実施例によって分離された菌株は、微生物の同定のための16S rDNA塩基配列分析結果、SEQ ID NO:1の核酸配列を有することが判明した。
【0059】
そこで、本発明の微生物は、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55(Lactobacillus curvatus WIKIM55)と命名され、韓国微細物保存センターに2017年04月07日付で寄託された(受託番号KCCM12011P)。
【0060】
SEQ ID NO:1.ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55の16S rDNA配列
【0061】
実施例2:ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55の発毛促進効能確認
【0062】
前記実施例1で分離したラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株をMRS培地で30℃、24時間培養し、培養された菌体を8,000rpmで5分間遠心分離し、PBSで濯いだ後に残っている培地成分を除去した。その後、PBSを用いて1×1010CFU/mlの菌数に定量し、0.2ml(2×10CFU)ずつゾンデを用いて実験動物に週5回経口投与した。この際、陰性及び陽性対照群には滅菌されたPBSを投与した。
【0063】
1)官能評価
【0064】
休止期を前にする6週齢マウス(C57/BL6)を一週間飼育室で馴化させ、動物用除毛器を用いて背中の毛を除去した。その後、30日間ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55を経口投与した後、発毛様相を臨床的な肉眼評価法で官能評価を実施した。
【0065】
その結果、図1に示すように、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株を取った群(WIKIM55)の場合、PBSを取った対照群(PBS)に比べて発毛が早いことが示された。
【0066】
2)皮膚厚さの測定
【0067】
毛髪は毛周期で成長と脱落を繰り返す。毛髪が成長する成長期の場合、皮膚層が厚くなり、毛包(毛嚢)が主に皮膚の皮下層に存在することが知られている。そこで、マウスの毛を除去した後、30日後の皮膚組職と皮膚厚さを測定した(図2)。
【0068】
その結果、PBS処理群は393.28μmの皮膚厚さを、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55摂取群は670.95μmの皮膚厚さを有することを確認し、大部分の毛包が皮下層に存在することをともに確認することができた。これから、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55摂取群では、大部分の毛包が成長期にあることを確認した。
【0069】
3)皮下組織内の毛包数測定
【0070】
マウスの毛を除去した後、30日後のマウスの皮下組織内の毛包数を測定した。
【0071】
その結果、図3に示すように、PBS処理群に比べてラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55摂取群で著しく多くの毛包数を測定することができた。
【0072】
実施例3:ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55の発毛促進効能確認
【0073】
前記実施例1で分離したラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株をMRS培地で30℃、24時間培養し、培養された菌体を8,000rpmで5分間遠心分離し、PBSで濯いだ後に残っている培地成分を除去した。その後、PBSを用いて1×1010CFU/ml菌数に定量し、0.2ml(2×10CFU)ずつゾンデを用いて実験動物に週5回経口投与した。この際、陰性及び陽性対照群には滅菌されたPBSを投与した。
【0074】
1)官能評価
【0075】
休止期前の6週齢マウス(C57/BL6)を一週間飼育室で馴化させ、動物用除毛器を用いて背中の毛を除去した。その後、20週間ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55を経口投与した後、発毛パターンを臨床的な視覚評価で官能評価を実施した。
【0076】
図4に示すように、PBSを取った対照区(PBS)は、約7週間の休止期後に毛髪成長期を有する反面、ラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55菌株を取った群(WIKIM55)の場合は約2〜3週間の休止期後に毛髪成長期に転換されて発毛程度が増加することを観察することができた。
【0077】
2)毛包幹細胞の分布確認
【0078】
対照群(PBS)とラクトバチルスクルヴァトゥスWIKIM55を20週間取った摂取群(WIKIM55)のマウスの毛包(毛嚢)幹細胞の分布を比較するために、マウスの背中皮膚組職を摘出した。摘出された皮膚組職から皮下脂肪を除去した後、リン酸緩衝溶液(phosphate buffered saline、PBS)で洗浄し、4mg/mlのコラゲナーゼIV(collagenase IV)、2mg/mlのヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、100U/mlのDNase I酵素が含まれたRPMI1640培地に入れた後、gentleMACS dissociator(miltenyibiotec、Germany)を用いて皮膚組職から毛包幹細胞を分離した。毛包幹細胞の分布を調べるために、FACS(fluorescence activated cell sorting)分析を実施した。この際、免疫表現型確認対象になった抗原はCD45−CD34+CD49f+の免疫学的特性を示す。皮膚組職から分離した細胞を1×10個になるようにし、2%のFBSを含むPBS溶液で洗浄し、それぞれの抗原にあたる抗体と室温で反応させた。抗原の発現有無は、フローサイトメーター(flow cytometer)によって確認した。
【0079】
図5の結果から分かるように、対照群(PBS、Naive)に比べ、WIKIM55摂取群(WIKIM55)の皮膚組職にCD34+CD49f+の免疫学的特性を示す毛包幹細胞がもっと多く分布していることが確認された。毛包幹細胞は新しい毛髪の生長に関与する細胞であり、WIKIM55の摂取は毛包幹細胞を形成させ、発毛効果を向上させると考えられる。
【受託番号】
【0080】
KCCM12011P
【0081】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]