特許第6861860号(P6861860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861860大きな外径のプリフォームの自動化された尖鋭化方法および得られたガラスプリフォーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861860
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】大きな外径のプリフォームの自動化された尖鋭化方法および得られたガラスプリフォーム
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/10 20060101AFI20210412BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20210412BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C03B37/10
   C03B37/012 A
   G02B6/02 356A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2020-3759(P2020-3759)
(22)【出願日】2020年1月14日
(65)【公開番号】特開2020-111500(P2020-111500A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】62/792,562
(32)【優先日】2019年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チウリン マ
(72)【発明者】
【氏名】カイ フエイ チャン
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−083751(JP,A)
【文献】 特開2003−277092(JP,A)
【文献】 特開平11−011972(JP,A)
【文献】 特開2006−027924(JP,A)
【文献】 特開平08−277138(JP,A)
【文献】 特開2003−048738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00
C03B 37/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尖鋭化されたガラスプリフォームを生成するための、大きな外径のプリフォームの自動化された尖鋭化方法であって、
前記ガラスプリフォームは、所定の先端形状および輪郭形状を有し、ガラス廃棄物が少なく、前記プリフォームから線引きされるファイバのクラッドからコアの導波路の歪みがごく少なく、前記尖鋭化方法は、
加熱ゾーン、前記プリフォームの一端を保持するように適合される第1の保持ユニットと、前記プリフォームの反対端を保持するように適合される第2の保持ユニットと、を有する装置でガラスプリフォームを作成するステップと、
前記加熱ゾーンで前記ガラスプリフォームの領域を加熱し、それによってその領域の前記プリフォームを最初に軟化させるステップと、
前記加熱ゾーンの温度を調節するステップと、
前記第1の保持ユニットおよび前記第2の保持ユニットを同期して同時に移動させることにより、前記加熱ゾーンに対して前記プリフォームを尖鋭化位置に位置決めするステップと、
前記プリフォームの前記領域が軟化するまで、前記加熱ゾーンに熱を加えるステップと、
少なくとも前記第2の保持ユニットを、所定の非線形速度プロファイルに従って、前記加熱ゾーンから遠ざけるよう移動させるステップと、
前記第2の保持ユニットの速度がその最大値に達すると、これにより、前記プリフォームの前記領域に薄いガラスストランドが作成され、少なくとも前記加熱ゾーンの前記温度を低下させるステップと、
細くなった前記ガラスストランドを切断して、尖鋭化されたガラスプリフォームを生成するステップと、
を含むプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項2】
前記ガラスプリフォームは、上向きのコラプスプロセスによって作成される、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項3】
前記加熱ゾーンの前記温度を調節するステップは、前記温度を下げて前記プリフォームを冷却するステップを含む、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項4】
前記加熱ゾーンに対して前記プリフォームを位置決めするステップは、前記プリフォームを前記加熱ゾーンの中央のわずかに片側に位置決めする、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項5】
前記加熱ゾーンに対して前記プリフォームを位置決めするステップは、前記プリフォームを前記加熱ゾーンのほぼ中央に位置決めする、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項6】
前記尖鋭化位置は、FEMシミュレーションを使用して最適化される、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項7】
前記第1の保持ユニットの位置は、ロードセルに応答して変更され、前記第1の保持ユニットの前記位置は、前記ロードセルが実質的にゼロの負荷を示すまで変更される、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項8】
前記熱が前記加熱ゾーンに加えられ、それにより、前記ロードセルの指示値の勾配が実質的にゼロになるまで、前記プリフォームの前記領域を軟化させる、
請求項7に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項9】
前記所定の非線形速度プロファイルは、指数曲線に近似させる、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項10】
前記所定の非線形速度プロファイルは、FEMシミュレーションの使用によって定義される、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項11】
少なくとも前記第2の保持ユニットを、所定の非線形速度プロファイルに従って、前記加熱ゾーンから遠ざけるよう移動させるステップは、前記第2の保持ユニットとは反対の方向に、同じ前記所定の非線形速度プロファイルに従って、前記第1の保持ユニットを前記加熱ゾーンから遠ざけるよう移動させるステップをさらに含む、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項12】
少なくとも前記加熱ゾーンの前記温度を下げるステップは、前記加熱ゾーンをオフにするステップと、前記第1の保持ユニットが、前記加熱ゾーンに向かって、前記第2の保持ユニットと同じ方向であるが、わずかに小さい速度で移動するように、前記第1の保持ユニットの前記移動を逆にするステップと、を含む、
請求項11に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項13】
少なくとも前記加熱ゾーンの前記温度を下げるステップは、前記加熱ゾーンをオフにするステップと、前記第1の保持ユニットを、前記第2の保持ユニットとは反対の方向に、前記加熱ゾーンから急速に遠ざけるよう移動させる一方で、前記第2の保持ユニットが、その所定の非線形速度プロファイルを完了するステップと、を含む、
請求項1に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項14】
コントローラによって前記方法ステップの1つ以上を管理するステップをさらに含む、
請求項1から13のいずれか1項に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【請求項15】
得られた前記尖鋭化されたガラスプリフォームは、前記プリフォームの外径に対して、鋭く、短い先端を有する、
請求項1から14のいずれか1項に記載のプリフォーム尖鋭化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、細長いガラス構成材料の製造に関し、より詳細には、先端の表面形状および輪郭形状が良好であり、ガラス廃棄物の発生を抑制し、クラッドからコアの導波路の歪みが極めて少ない、そのような構成材料の製法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「Upward Collapse Process and Apparatus for Making Glass Preforms」と題し、本出願の譲受人であるHeraeus Tenevo LLC & Heraeus Quarzglas GmbH & Co.KGにより、2017年11月15日に提出された米国特許出願公開第2018/0145752号に開示されるように、光ファイバの設計および応用に関係している応用科学および応用工学の分野は、ファイバオプティックスとして知られている。光ファイバは、ガラス(シリカ)を、毛髪よりわずかに太い直径に細く線引きすることによって作られる、柔軟で、透明な繊維である。光ファイバは、ファイバの両端間で光を伝送するために最もよく用いられ、光ファイバ通信に広く用いられており、その通信で光ファイバは、ワイヤケーブルよりも長距離および高帯域(データ転送速度)の伝送を可能にする。ファイバは、信号が大容量で損失の少ないファイバに沿って伝わるので、金属ワイヤの代わりに用いられる。それに加えて、ファイバはまた、金属ワイヤで問題となる電磁干渉を受けるおそれもない。ファイバは、照明にも使用され、束にされ、ファイバを使用して映像を搬送し、それにより、ファイバスコープの場合のように、狭い空間での観察を可能にすることができる。また、特別に設計されたファイバは、光ファイバセンサやファイバレーザなど、他の多くの種類の用途にも使用される。
【0003】
一般に、光ファイバは、屈折率を下げた透明なクラッド材に囲まれる透明なコアを含む。光は、ファイバが導波路として機能するようになる全内部反射の現象によって、コアに閉じ込められる。多くの伝播経路または横モードに対応しているファイバは、マルチモードファイバと呼ばれ、一方、単一のモードに対応しているファイバは、シングルモードファイバと呼ばれる。
【0004】
今日、光ファイバのカットオフ波長の厳しい仕様が満たされる必要があり、その仕様を達成するための歩留まり損失は許容されない。カットオフ波長は、この波長より短い波長で、シングルモード光ファイバがマルチモードファイバとして機能するようになる波長として定義することができる。つまり、言い換えれば、カットオフ波長は、この波長より長い波長で、シングルモード光ファイバのシングルモード動作が保証される波長として定義することができる。現在、多くのネットワークプランナは、光ファイバケーブルの仕様を作成する際に定義する最も重要なパラメータの1つが、ケーブルのカットオフ波長であることを認識している。
【0005】
一般に、光ファイバは、作成済みのプリフォームを炉内で加熱し、プリフォームを光ファイバに線引きすることによって製作される。1つのプリフォームは、約7,000〜8,000kmの光ファイバにすることができる。ファイバの線引きは、プリフォームの外径に対して鋭く短い先端を有するプリフォームを用いて、効率的かつ迅速に開始することが望ましい。さらに、プリフォームから線引きされたファイバが、なるべく不具合を出さず廃棄物になることなく、適正なファイバカットオフ性能を有するように、プリフォームの先端は適切なクラッド対コア比でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の下向き線引きシステムおよびプロセスに固有の問題を解決するために、光ファイバプリフォームを製造するための装置と、その装置を用いる関連した上向きコラプスプロセスとの第1の目的は、プリフォームの外径に対して鋭く短い先端を有するプリフォームを製造することである。第2の目的は、ファイバのカットオフ波長が適正となるように、そのようなプリフォームから線引きされる最終的なファイバにおける導波路(クラッドからコア)の歪みの影響を最小化し、あるいは排除することである。第3の目的は、プリフォームの尖鋭化におけるガラス廃棄物と、従来の下向き線引きシステムおよびプロセスに固有のアセンブリの問題とを最小限に抑え、あるいは排除することである。第4の目的は、優れた形状と導波路特性とを備えた最大のプリフォームサイズを実現し、その後のファイバ線引きで最高の生産性を実現することである。第5の目的は、最高品質(最も清浄で乾燥した)RIT(ロッドインチューブ)またはRIC(ロッドインシリンダ)プリフォーム境界面を実現することである。第6の目的は、シリンダ内に任意の長さの複数の独立したコアロッドを(それらを一緒に溶接することなく)積み重ねることができるようにすることである。そのため、重量がアセンブリ内で完全に独立して支持され、貴重で高価なコアロッドおよびシリンダのオーバクラッドプロセスでの無駄がほぼゼロになる。さらなる目的は、オンラインでの尖鋭化を可能にし、ほぼ100%の最終プリフォーム歩留まりを達成することである。
【0007】
さらなる目的は、プリフォームを水平(X−Y)平面に作成するために使用されるガラス体の流動的な位置決めと、垂直(z)方向の正確な直線移動の両方とを可能にして、プリフォームの形状を正確に調整および制御できるようにすることである。さらに別の目的は、1つ以上のロードセルによる加熱中のガラス体の挙動を監視することである。さらに別の目的は、物理学と質量保存とを使用して、プリフォームの線引きと尖鋭化方法の正確な寸法制御とを行い、従来のオンライン測定とフィードバック制御との費用を削減することである。
【0008】
別の目的は、反応性ガスを使用して、プリフォーム界面のエッチング、洗浄および乾燥を行うことである。(1)プリフォーム外面との直接接触を回避し、(2)プリフォームアセンブリを完全にシールし、その結果、その界面は外部環境、特に真空開始中の装置の加熱要素(たとえば、加熱炉)内の汚染物質からシールドされる、本質的にクリーンなプロセスを提供することはさらに別の目的である。関連する目的は、プリフォームの外面に接触することなくプリフォームの重量を支えることである。他の関連する目的は、製造プロセス中にプリフォームにかかる水平方向または横方向の力を回避し、プリフォームの反り量を最小化または排除することである。さらに別の目的は、例えば、エアライン、気泡、ファイバの破損、損失の問題を回避することにより、プリフォームまたはファイバの界面の品質を改善することである。
【0009】
また、有限要素モデリングを使用して、最適な上向き線引きおよびプリフォーム尖鋭化レシピを効率的に開発することも目的である。関連する目的は、開発中に必要な試行回数を減らすことにより、貴重な加熱炉の生産能力を節減することである。さらに別の関連する目的は、特に良好なプリフォームおよび光ファイバ収率の最終量を「スクイーズド」できるプリフォームの両端で、炉の加熱とガラス流動の複雑な熱物理学とを正確に理解できるようにすることである。
【0010】
さらに別の目的は、光ファイバプリフォームを製造するための装置およびその装置を使用する関連する上向きコラプスプロセスと組み合わせて、カメラシステムおよびパターン化された背景をもつプリフォーム測定機能を提供することである。関連する目的は、導波路の幾何学的特性の自動化された、非破壊的かつ生産に適した測定を提供することである。さらに別の関連する目的は、プリフォームのユーザに、導波路品質の付加価値保証を提供し、光ファイバの線引きを微調整する潜在的な機会を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、優れた先端の表面形状および輪郭形状、ガラス廃棄物の低減、およびクラッドからコアの導波路の歪みを最小限に抑えたガラスプリフォームを製造する装置および関連する上向きコラプスプロセスが提供される。この装置は、重り、周縁部、ギャップで隔てられたコアロッドおよびクラッド(「シリンダ」)を有するガラス体を受け入れる。この装置は、クラッドの上部に取り付けられた上部カラーであって、上部カラーは、クラッドの外径とほぼ同じかまたはそれよりも小さい外径を有する、上部カラーと、クラッドの下部に取り付けられた下部カラーであって、下部カラーは、クラッドの外径より小さいか、またはほぼ同じ外径を有する、下部カラーと、任意選択のスペーサで支持されたシリンダ内の1つ以上の自立型積層コアロッドと、下部カラーおよび任意選択のスペーサの両方を保持し支持する下部カラーホルダおよび真空ユニットであって、それによってガラス体の周縁部に接触することなくガラス体の全重量を支持し、下部カラーホルダおよび真空ユニットは、装置からガスを除去し、または装置にガスを導入する、下部カラーホルダおよび真空ユニットと、上部カラーを保持し支持する上部カラーホルダおよび真空ユニットであって、上部カラーホルダおよび真空ユニットは、装置からガスを除去しまたはガスを導入する、上部カラーホルダおよび真空ユニットと、ガラス体を加熱し、クラッドをコアロッドにコラプスし、ギャップを閉じ、ガラスプリフォームを作成するための加熱要素と画定された加熱ゾーンとをもつオーバクラッドまたは線引きタワー構造またはフレームとを含む。
【0012】
関連する上向きコラプスプロセスにより、クラッドからコアの導波路の歪みがごく少ないガラスプリフォームが作成される。このプロセスにより、重り、周縁部、ギャップで隔てられたコアロッドおよびクラッド(「シリンダ」)を有するガラス体が得られる。上部カラーがクラッドの上部に固定され、下部カラーがクラッドの下部に固定されている。下部カラーは、線引きタワーにある加熱ゾーンの下の下部カラーホルダおよび真空ユニットで支えられている。自立し積み重ねられたコアロッド(つまり、一緒に溶接されていない)は、下部カラーによって、または積み重ねられたコアロッドが置かれ、下部カラーホルダおよび真空ユニットによって支持される任意選択のスペーサによって、下部カラーホルダと真空ユニットとがガラス体の周縁部に接触することなく、ガラス体の全重量を支えるように、下から支持される。上部カラーは、加熱ゾーンの上にある上部カラーホルダおよび真空ユニットで支えられている。ガラス体は、加熱ゾーンに配置された加熱要素の中心に対して、所定のレシピで配置され、上方に移動する。ガラス体が加熱ゾーンを介して上方に供給されると、クラッドがコアロッド上にコラプスし、それによりギャップが閉じられ、ガラスプリフォームが作成される。
【0013】
改善された上向きコラプスプロセスにより、プリフォームの外径に対して鋭く短い先端部を有したガラスプリフォームが作成され、ガラス廃棄物が削減され、クラッドからコアへの導波路の歪みが最小化される。プリフォームアセンブリのゾーンが加熱炉内で加熱され、軟化される。プリフォームの先端部は成形され、プロセスは、加熱ゾーンの上方および下方へのガラスの正確な移動、加熱炉の加熱のタイミング、およびプリフォームの下部(または、代わりに上部)の重量の検知(これは実際には軟化した材料の粘度の測定値である)によって制御される。正しい粘度に達すると、プリフォームの先端部が、(引き続いて線引きされる光ファイバの)導波路の歪みと廃棄物とを最小限に抑えて最適に成形される(通常、短くかつ鋭く尖鋭化される)ように、正確にプログラム化され制御される加速度プロファイル(ガラス流のFEMシミュレーションから導出される)で、下部ホルダが、上部ホルダから離される。高度に非線形の加速度引き取りレシピの同じ概念は、バッティング旋盤および酸水素トーチ加熱を伴う水平プリフォーム尖鋭化方法などの他のチッププロセスに適用することもできる。
【0014】
関連する自動化された大きな外径のプリフォーム尖鋭化方法により、所定の先端部の表面形状および輪郭形状を有し、ガラス廃棄物が少なく、その後線引きされるファイバのクラッドからコアの導波路の歪みがごく少ないガラスプリフォームが得られる。このプロセスは、加熱ゾーン、プリフォームの一端を保持するように適合される第1の保持ユニット、およびプリフォームの反対端を保持するように適合される第2の保持ユニットを有する装置でガラスプリフォームを作成すること、加熱ゾーンでガラスプリフォームの領域を加熱し、それによってその領域のプリフォームを最初に軟化させること、加熱ゾーンの温度を調節すること、第1の保持ユニットおよび第2の保持ユニットを同期して同時に移動させることにより、加熱ゾーンに対してプリフォームを尖鋭化位置に位置決めすること、第1の保持ユニットの位置を変更して、プリフォームの実質的に全ての重量を第2の保持ユニットに移動させること、プリフォームの領域が軟化するまで、加熱ゾーンに熱を加えること、少なくとも第2の保持ユニットを、所定の非線形速度プロファイルに従って、加熱ゾーンから遠ざけるよう移動させること、第2の保持ユニットの速度がその最大値に達すると、これにより、プリフォームの領域に薄いガラスストランドが作成され、少なくとも加熱ゾーンの温度を低下させること、および細くなったガラスストランドを切断して、尖鋭化されたガラスプリフォームを生成することを含む。
【0015】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的なものであるが、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0016】
本発明は、添付の図面に関連して読むとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行によれば、図面の様々な機能は縮尺通りではないことが強調されている。それどころか、様々な機能の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。図面には次の図が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ガラスの細長い構成材料を形成する上向きコラプスプロセスで使用される装置の主な構成要素を示す概略図である。
図2】光学構成材料を製造するために使用されるガラス体の透視側面図である。
図3図3A図3B図3Cおよび図3Dは、上向きコラプスプロセスのFEMシミュレーションにおける4つのステップを示し、加熱要素内の所要の位置に置かれたガラス体を描写した図である。
図4A】プロセスの実行が低温側にあることを示す比較的大きな振幅を反映したロードセル指示値の「リップル」を示す図である。
図4B】プロセスの実行が高温側にあることを示す比較的小さな振幅を反映したロードセル指示値の「リップル」を示す図である。
図5図1に示す装置と組み合わせて使用されるプリフォーム測定デバイスの実施形態の概略図である。
図6図6Aは、本発明の実施形態による下部尖鋭化動作で実現される非線形の速さ(または速度)のプロファイルのグラフであり、図6Bおよび図6Cはそれぞれより低い速度での速度プロファイルの詳細を示す。
図7図7A図7B図7C図7Dおよび図7Eは、オンライン下部尖鋭化方法のFEMシミュレーションの5つのステップを示しており、加熱要素内に配置されたガラス体を描写している。
図8図8A図8B図8Cおよび図8Dは、オンライン中部尖鋭化方法のFEMシミュレーションの4つのステップを示しており、加熱要素内に配置されたガラス体を描写している。
図9図9Aは、先端部が、必要な先端部外径でスナップカットされる前のオンライン下部尖鋭化方法から得られる先端部を示す。図9Bは、オンライン下部尖鋭化方法中の下部におけるガラス滴下を示す。図9Cは、FEMシミュレーションで予測されたオンライン下部尖鋭化方法中の下部におけるガラス滴下を示す。
図10】二重先端部中間のスナップカットの準備ができた位置での中間尖鋭化試験の最終結果を示す図である。
図11図11A図11Bおよび図11Cは、200mmODプリフォームに適用されるオンライン下部尖鋭化方法のための3つの異なる尖鋭化速度プロファイルを示す温度プロファイルを提供する。
図12図11A図11Bおよび図11Cに示す3つの異なる尖鋭化速度プロファイルのそれぞれから生じるプリフォーム先端部の形状を比較する、プリフォーム半径に対するプリフォーム高さのグラフである。
図13図13A図13Bおよび図13Cは、150mmODプリフォームに適用されるオンライン下部尖鋭化方法のための3つの異なる尖鋭化速度プロファイルを示す温度プロファイルを提供する。
図14図13A図13Bおよび図13Cに示す3つの異なる尖鋭化速度プロファイルのそれぞれから生じるプリフォーム先端部の形状を比較する、プリフォーム半径に対するプリフォーム高さのグラフである。
図15図15A図15Bおよび図15Cは、0.2gの速度プロファイルを使用して、200mmODプリフォームに適用されるオンライン下部尖鋭化方法のための3つの異なる尖鋭化位置を示す温度プロファイルを提供する。
図16図16Aは、プロセスが始まってから6,950秒後での(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)、加熱ゾーンと、加熱ゾーンの中心から70mm上に位置する尖鋭化位置を有するプリフォームとの温度プロファイルを示す。図16Bは、図16Aの矢印「H」の間を取り出した図16Aの拡大図である。
図17図17Aは、0.2gの速度プロファイルを使用して、200mmODのプリフォームに適用されたオンライン下部尖鋭化方法の、実質的に水平方向の破線がプリフォームの区画を画定している、プリフォーム半径に対するプリフォーム高さのグラフである。図17Bは、図17Aから得られた測定値を使用した、プリフォームOD/コアODの比に対するプリフォーム高さのグラフである。
図18】最小二乗適合指数関数を反映する本発明の実施形態による下部尖鋭化動作で実現される非線形の速さ(または速度)のプロファイルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般に、光ファイバは、2つの別個のプロセスで製作される。第1に、コアロッドが調製され、次いでロッドインチューブ(RIT)プロセスもしくはロッドインシリンダ(RIC)プロセスによって、または外付化学気相堆積(OVD)プロセスなどの別のオーバクラッドプロセスによって、プリフォームが製作される。第2に、製作されたプリフォームは炉内で加熱され、光ファイバに線引きされる。光ファイバプリフォームを製造するための従来のプロセスおよび装置は、2つのプロセスのうちの第1のプロセスを遂行し、光ファイバRITオーバクラッド装置を提供することを含み得る。
【0019】
オーバクラッド装置は、立て旋盤、立て旋盤の各端部に取り付けられたチャック、立て旋盤の両端部の間を垂直に移動させるための立て旋盤の往復台、往復台に取り付けられた酸素水素バーナ、往復台に取り付けられた加熱炉、立て旋盤の端部に設けられた真空ポンプ、真空ポンプを立て旋盤の端部に接続するための連結器、ならびに往復台の垂直移動、酸素水素バーナの流量、およびチャックの回転を制御するための立て旋盤の外側のコントローラを含む。加熱炉は、ガラスチューブを予熱しまたは加熱して、コアロッドをガラスチューブで被覆する。
【0020】
実際には、プリフォームの外径は、従来のRITオーバクラッド装置では90mm以下に制限される。その制限は、酸素水素バーナによる非効率的な加熱によるものである。さらに、コアロッドの重量を上端部から個別に支えるために、単一のコアロッド(RITオーバクラッドチューブと同じ長さを有する)にハンドルが溶接される必要がある。これは、2つの欠点をもたらす。(1)短いコアロッドは効果的に利用することができないので、コアロッド材料が無駄になること、および(2)特に、酸素水素トーチを用いたコアロッドへのハンドルの溶接は、コアロッドの表面に表面水酸化物(OH)が取り込まれる原因となり、この表面水酸化物は、エッチング除去(プロセスの追加コストとなる)されない場合、OH吸収のために特に1,383nmでファイバの減衰量を増大させる可能性があることである。
【0021】
ごく最近では、石英ガラスの管、ロッド、またはコラプスしたオフラインロッドインシリンダ(ORIC)のプリフォームは、加熱ゾーン(例えば、加熱炉)を含む装置に、石英ガラス構成材料(例えば、シリンダ、インゴット、またはコラプスしていないRIC)を、その下端部が軟化してストランドを形成し始めるように、垂直方向に導入することによって製造されている。次いで、ストランドは、1組以上の引き取りホイールを含む引き取りデバイスに配置される。ストランドの引き取り速度は、引き取りホイールの速度によって制御され、引き取りホイールは、成形ゾーンの温度または粘度、およびホイールで支持されているストランドの重量に応じて、下向きかそれとも上向きの力を加え得る。成形は、ダイスを用いずに達成される。したがって、ストランドの寸法は、石英ガラス構成材料の送り速度、加熱ゾーンの温度、および引き取りホイールの速度によって制御される。
【0022】
従来のORICプロセスでは、境界面のギャップにおいて、熱および真空で、合成高純度ガラス製のシリンダ(一般に、長さ3m、外径約200mm)を高純度ガラスコアロッド上にコラプスさせて、光ファイバプリフォームを形成する。通常、プリフォームは、連続的に下向きに線引きされ、直径はシリンダの元の直径よりも大幅に小さくなる。シリンダとコアロッドとの間のギャップに十分な真空がかけられて、境界面のコラプスを促進させるとともに、軟化したガラスを介してコアロッドの重量を支える必要がある。コアロッドがシリンダに対して移動するのを防ぐために、真空が不可欠である。そうでない場合は、結果として生じるプリフォームのクラッド対コア比が崩れ、そこから線引きされるファイバは、要求される導波路仕様(カットオフ波長など)を満たさないようになる。また、複雑で高価なプリフォームの外径測定およびフィードバック制御は、下へ進むコラプス、伸長、および線引きのプロセスでも必要とされ、そのような制御を用いるにもかかわらず、高精度のプリフォーム表面形状(プリフォームの反り量または曲率および直径変動が小さいことを含む)と、クラッドからコアまで歪みのない導波路特性とを達成することは困難である。下向きの線引きプロセスにおけるこの固有の導波路の歪みの影響は、外側のクラッドガラスが、高温であるために、内側のコアロッドガラスよりも速く下方に流れる加熱炉内では、大部分は、溶融ガラスおよび未結合コアロッドに作用する重力および真空力に起因する。
【0023】
従来の下向き線引きシステムおよびプロセスを使用して、外径がシリンダまたはクラッドの元のサイズに近い最大のプリフォームを製造することは極めて困難なことである。プリフォームの表面形状および導波路特性が、表面形状、クラッド対コア比、コアの偏心率および反り量などのパラメータに関して要求される仕様とかけ離れている場合には、プロセスの開始時および終了時に、かなりの量の良質のプリフォームガラスが無駄になる。したがって、従来のプリフォームシステムおよびプロセスには、明らかに欠点がある。
【0024】
米国特許出願公開第2018/0145752号によれば、導波路(クラッドからコア)の歪みがほとんどなく、廃棄物およびコストが大幅に低減されて、存在の確認されている最大の外径および長さ(すなわち、外径は約200mm(従来の外径は約150mmに制限される)であり、長さは約3mであり、または元のシリンダもしくはクラッドとほぼ同じ大きさである)を有するプリフォームをもたらす装置および上向きコラプスプロセスが提供される。従来の光ファイバプリフォームは、90〜150mmの外径を有する。効率化された上向きコラプスプロセスでは、ORICクラッドの積み重ねられたコアロッドが下から支えられ(したがって、コラプスプロセスにおいてコアロッドはクラッドに対して移動しない)、ORICアセンブリ全体が加熱炉に対して上方へ移動するので、図1に示され、以下で説明されるように、プリフォームは連続的にコラプスされて上方に引き上げられる。装置および上向きコラプスプロセスは、(1)最も大きい既知のオーバクラッドシリンダを用いて、コラプスのみのプロセスで、最も大きい既知のプリフォームを作ることができるため、それらを製造し、(2)ほぼ100%のオーバクラッドおよび完成した(尖鋭化した)プリフォームの歩留まり(ほとんど無駄がない)と、統合されたオンラインプリフォーム尖鋭化方法(処理時間および加熱ステップの節減)を含む効率化され簡略化された(例えば、オンライン測定またはフィードバック制御の必要がない)プロセスとにより、コストを削減し、(3)可変および任意の長さの固定され、積層し、支持されたコアロッドのために本質的に歪みが小さな導波路(クラッドからコア)により、導波路の品質を改善し、(4)境界面を改善し、コアロッドのD/d比を下げる(境界面が導波路コアに近づく)ために、反応ガス(SFなど)を最大で約1気圧まで(すなわち、真空は必要ない)境界面に加えることができるようにする。
【0025】
コアロッドのD/d比は、コアロッドの外径の(光が伝播する)導波路コアの直径に対する比である。ただし、「D」はコアロッドの外径、「d」は導波路コアの直径である。この比率は、コア容量の拡大を定義する際に、RITプリフォームまたはRICプリフォームを使用して光ファイバを製造する者にとって非常に重要である。コアロッドのD/d比が小さくなるにつれて、境界面が導波路コアに近づき、このことは、コアロッドに必要なガラスの相対量が減少する(クラッドのガラスの量は増加する必要がある)ことを意味する。その結果として、このことは、同じコアロッド製造施設を使用したときに、その施設のコアロッドを生産する能力(または光ファイバコアに対して同等の容量)は、おおよそD/dの2乗に従ってスケール変更する(例えば、D/dを3.3から2.3に減らすことにより、コア容量を2倍にする)ことを意味する。しかしながら、コアロッドのD/dを減らすことは、そこでの指数関数的に増加する光パワー伝播のために、オーバクラッド材料の純度および境界面品質に重要な課題を提起する。したがって、コアロッドのD/dを小さくした状況では、境界面でのより積極的なガスエッチング、洗浄および乾燥プロセス(例えば、SFを使用)が必要になる。要するに、D/d比を小さくする(すなわち、境界面をコアに近づける)ことにより、プリフォームの製造業者は、(a)高価な投資なしでコア容量を簡単に拡大することができ、(b)コアに近い屈折率特性を有したより複雑で高度な光ファイバ設計を実現することができる。
【0026】
図1を参照すると、光ファイバプリフォームを製造するための装置10が示されている。装置10は、垂直に配置されたフレーム12を含む。下部から上部まで、フレーム12は、下方開口端;予熱または下方断熱ゾーン14;加熱ゾーン16;後加熱または上方断熱ゾーン17;加熱後冷却、アニーリングおよびオーブンガスパージゾーン18;ならびに下方開口端に対向する上方開口端を含む。加熱ゾーン16は、加熱要素(一般にオーブンまたは加熱炉)によって、好ましくは500℃〜2,300℃、より好ましくは1,000℃〜2,300℃、さらに最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度に加熱することができる。より具体的には、加熱要素は、好ましくは環状構造である。加熱要素は、フレーム12の加熱ゾーン16を形成するために、フレーム12内またはフレーム12の周囲に配置されることが好ましい。加熱要素の酸化を防ぐために、不活性ガスが高温で加熱要素に注入される。
【0027】
図2を参照すると、光ファイバプリフォームを製造するために、ガラス体20が用いられる。ガラス体20は、円筒または管状の構造をしている。ガラス体20は、第1の端部または上端部22から、対向する第2の端部または下端部24まで延在する長さLを有する。長手方向軸Xは、対向する第1の端部22と第2の端部24との間に延在する。好ましくは、ガラス体20の第1の端部22および第2の端部24は両方とも直角切断端部である。
【0028】
ガラス体20は、好ましくは、導波性光ファイバコアを含むガラスコアまたはコアロッド30と、コアロッド30を囲むガラスクラッド32とで構成される。より具体的には、コアロッド30は、ガラス体20の幾何学的中心に形成され、ガラス体20の長さLに沿って延在することが好ましい。クラッド32は、ガラス体20の長さLに沿ってコアロッド30を半径方向に取り囲むように、コアロッド30を覆って形成されることが好ましい。クラッド32は、共通の中心線に沿って位置合わせされた同軸配置でコアロッド30を取り囲む。初めのうちは、コアロッド30とクラッド32との間にギャップ31が存在する。クラッド32は、外径「OD」を有する。
【0029】
クラッド32は、純粋石英ガラスまたはドープ石英ガラスであってもよい。しかし、クラッド32は、ドープされていないにしても(例えば、フッ素で)ドープされているにしても、最高純度の合成シリカであることが好ましい。コアロッド30は、適切な屈折率プロファイルを達成するためにドープ領域および非ドープ領域を備えた、概して高純度の石英ガラスであることが好ましい。クラッド32およびコアロッド30はそれぞれ、溶融石英または内付化学気相堆積、外付化学気相堆積、および気相軸付け堆積を含む1種類以上の化学気相堆積(CVD)などの任意好適なプロセスによって形成することができる。一般に、中心にあるコア材料のコアロッド30は、周囲のクラッド32中の材料の屈折率よりも大きい屈折率を有して、プリフォームから線引きされたファイバを通過する光信号の内部反射を可能にし、効果的な導波路をもたらす。
【0030】
図1に戻ると、クラッド32の上部に、第1のカラーまたは上部カラー40が付けられている。上部カラー40をクラッド32に付けるために、他の機構を使用することもできるが、上部溶接部42が適している。上部カラー40の外径は、クラッド32の外径とほぼ同じか、またはそれよりも小さい。クラッド32の下部に、第2のカラーまたは下部カラー44が付けられている。下部カラー44をクラッド32に付けるために、他の機構を使用することもできるが、下部溶接部46が適している。下部カラー44の外径は、クラッド32の外径よりも小さいか、またはそれとほぼ同じである。上部カラー40および下部カラー44は両方とも、中空の管状構成要素である。
【0031】
積み重ねられたコアロッド30は、クラッド32の内部に配置され、任意選択の短尺スペーサ48の上部に載っており、そしてまたこの短尺スペーサ48は、長尺スペーサ50の上部に載っている。短尺スペーサ48は、上向きコラプスプロセス後に、長尺スペーサ50がプリフォームに溶接されず、その後、下部カラー44から簡単に取り外すことができることを確実にするために、長尺スペーサ50の上部に設けられる。長尺スペーサ50は、長尺スペーサ50の下に設置された下部カラーホルダおよび真空ユニット52によって支持される。また、下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、その名前が示すように、下部カラー44を保持し、これを支持する。プリフォームアセンブリ(クラッド32に付けられた上部カラー40および下部カラー44と共に、ガラス体20の、積み重ねられたコアロッド30、およびクラッド32を含む)と下部カラーホルダおよび真空ユニット52とは、オーブンガスパージゾーン18の上に設置された上部カラーホルダおよび真空ユニット54に最初に搭載される。(下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54により、装置10は、装置10の両端で、装置10からガスを除去し、すなわち真空を作り出し、または装置10にガスを導入することができるようになる。上部カラーホルダおよび真空ユニット54は、その名前が示すように、上部カラー40を保持し、これを支持する。)次に、ガラス体20は、加熱ゾーン16に対して、より具体的には加熱ゾーン16の加熱要素に対して所要の位置に置かれ、加熱要素を経由して上方へ動かされる。下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、加熱ゾーン16の下で把持され支持されている。一方、上部カラーホルダおよび真空ユニット55は、加熱ゾーン16の上で把持され支持されている。加熱ステップが開始する前に、上部溶接部42(したがって、クラッド32の上部)は、上部溶接部42への熱衝撃を回避するために、最初に、加熱要素の中心から所定の距離だけ下に配置される。(「所定の」とは、事前に決定されることを意味し、したがって、所定の特性は、何らかの事象に先立って決定され、すなわち選択され、または少なくとも既知でなければならない。)例えば、この距離は約350mmであってもよい。
【0032】
図1を参照して、装置10を使用してプリフォームを生産する上向きコラプスプロセスについて説明する。ガラス体20はフレーム12を通過し、そこでガラス体20が加熱され、軟化し、伸長して、光ファイバプリフォームなどの光学構成材料を形成する。より具体的には、ガラス体20の下端部24は、好ましくは、プロセスの開始時にフレーム12内に安定するようにして配置され、その後、ガラス体20は、フレーム12を通って上向き(すなわち、従来の下向きの反対)の方向に進む。フレーム12では、ガラス体20は、加熱ゾーン16でゾーン別に加熱される。オーバクラッドのギャップ31をコラプスし、コアロッド30をオーバクラッドシリンダまたはクラッド32と融合させる溶融変形によって、プリフォームが連続的に作り出される(任意選択で、プリフォームは、プロセス中に、上部カラーホルダおよび真空ユニット54、ならびに下部カラーホルダおよび真空ユニット52によって加えられる引張力または圧縮力のいずれかによって、伸長/延長または短縮/圧縮することができる)。
【0033】
一実施形態では、ガラス体20は、2つの別個のガラス構成材料、すなわち、積み重ねられたコアロッド30とクラッド32との同軸型アセンブリである。より具体的には、コアロッド30は中実の円筒形ロッドの形をしており、クラッド32は、積み重ねられたコアロッド30を取り囲む中空のオーバクラッドシリンダの形をしている(すなわち、ロッドインシリンダアセンブリ)。同軸型アセンブリでは、ガラスアセンブリが加熱ゾーン16に入るまでは、積み重ねられたコアロッド30とクラッド32とは融合されない。
【0034】
ガラス体20のこの実施形態の同軸型アセンブリが、フレーム12を通って上方へ進むとき、コアロッド30およびクラッド32は、2つのガラス構成材料が軟化し融合して、一体化した統合されたガラス体20を形成するのに十分な所定の温度に所定の時間だけ加熱される。(「一体化した」とは、追加の部分品なしで、それ自体で全て揃った単一の部分品または単一の単体パーツを意味する。すなわち、パーツは、別のパーツとのユニットとして形成される1つの一体構造の部分品である。)より具体的には、2部分品型のガラス体20の連続部分が、加熱ゾーン16に近づき、加熱ゾーン16で加熱されるにつれて、クラッド32およびコアロッド30が軟化し、軟化したクラッド32がコアロッド30上にコラプスして、コアロッド30と融合する。次いで、少なくとも1つ、より好ましくは複数の「すぐに線引きできる」プリフォームを、結果として生じる一体構造のガラス体20からファイバに、直接線引きすることができる。
【0035】
好ましくは、ガラス体20のこの実施形態の同軸配置は、500℃〜2,300℃、より好ましくは1,000℃〜2,300℃、最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度に加熱される。より好ましくは、コアロッド30上のクラッド32の軟化およびコラプスは、1,000℃〜2,200℃、より好ましくは1,300℃〜2,000℃、最も好ましくは1,600℃〜1,800℃の温度で行われる。軟化しコラプスしたクラッド32と軟化したコアロッド30との融合は、好ましくは1,000℃〜2,200℃、より好ましくは1,300℃〜2,200℃、最も好ましくは1,600℃〜2,200℃の温度で行われる。ただし、ガラス材料の組成や処理量などの他の要因も、クラッド32がコアロッド30上にコラプスしてコアロッド30と融合する温度に影響を与えることを、当業者は理解するであろう。
【0036】
コアロッド30とクラッド32との間の融合した境界面は、装置10のいくつかの構成要素によって清浄であることが保証されている。例えば、下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54は、これらは両方とも密閉されており、上向きコラプスプロセスが真空で動作可能となる。下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54はまた、加熱要素(例えば、加熱炉)および外部環境の潜在的な汚染物質からプリフォームアセンブリ(特に境界面)を隔離する。加熱炉および外部環境は、従来のプロセス、特に、境界面への汚染物質の侵入を回避することが困難な真空開始プロセスの間の典型的な汚染源である。さらに、境界面のエッチング、洗浄および乾燥を行うために、反応性境界面処理ガスを用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明の全体的な性質をより明確に実証するために含んでいる。これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、例示するものである。
【0038】
FEM(有限要素モデリング)を使用して、シリンダへの熱衝撃を回避し、結果的にシリンダが適切な時間にコラプスに必要な温度に達するように、シリンダの動きとオーブンの加熱速度とを組み合わせたシミュレーションによるプロセスレシピを開発する。これらのシミュレーションを活用して、図3A図3B図3Cおよび図3Dに示すように、標準手順として、クラッド32の上部を予熱し、クラッド32とコアロッド30との間の境界面のコラプスを起こす(すなわち、ガラス体20のギャップ31を閉じる)レシピを特定した。これらの4つの図は、シミュレーションの4つの典型的な瞬間のスナップショットであり、これらは、予熱段階(A)〜(B)、ヒータ中央での滞留時間、および進行中の上向きコラプスを簡潔に描写しようと試みている。全部のシミュレーションは、動的なプロセスの全期間にわたる温度プロファイルの推移を示す。スナップショットは、本プロセスの一部の重要な瞬間を示している。
【0039】
図3Aは、オーブンを1,860秒間加熱した後、シリンダの移動が始まる直前の加熱ゾーン16、ガラス体20、および下部カラー44の温度プロファイルを示す。図3Bは、ガラス体20の上部が加熱ゾーン16の下部に到達するときに、プロセスが始まってから2,840秒後のガラス体20の温度プロファイルを示す。図3Cは、ガラス体20の上部が加熱ゾーン16の中心に到達し、その動きが7分間停止したときの、プロセスが始まってから4,280秒後のガラス体20の温度プロファイルを示す。図3Dは、プロセスが始まってから5,000秒後のガラス体20の温度プロファイルを示す。ガラス体20の上部は、加熱ゾーン16の中心より上方に移動している。ガラス体20およびコアロッド30は、加熱ゾーン16の中心より約100mm上で、コラプスに必要な温度に達する。FEMシミュレーションは、加熱ゾーン16内のガラスの温度、粘度、応力および流れに関する情報を提供する。FEMシミュレーションを使用して、約290mmの長さを有する加熱ゾーン16(および加熱要素)を対象にして、レシピを効率的に特定し、必要とされる実際の試行回数を最小限に抑えた。
【0040】
加熱ゾーン16の加熱要素を加熱するのに使用する典型的なレシピは、50kWで30分間、100kWで10分間、150kWで10分間、200kWで10分間、プロセスが定常状態に入ってから220kW(または少し低い最大電力、例えば212kW)である。装置10の下部に位置する下部カラーホルダおよび真空ユニット52は速度V1で移動し、装置10の上部に位置する上部カラーホルダおよび真空ユニット54は速度V2で移動する。通常、プロセスの開始時はV1=V2である。典型的なレシピでは、2分間で100kWに達した後に、V1=V2=13.5mm/分で6分間とする。次いで、アセンブリを4分間停止させる。4分の停止の後に、上部溶接部42が加熱要素の中心に到達するまで、アセンブリは13.5mm/分で再び上方へ移動する。上部溶接部42が加熱要素の中心に到達した時点で、アセンブリを6分間停止させる。次いで、アセンブリを、定常状態におけるコラプスのために、V1=V2で再び上方へ移動させる。
【0041】
上部溶接部42が、加熱ゾーン16の中心より約110mm〜約135mm上にあるときに、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の真空ポンプを作動させる(すなわち、オンにする)。そのような作動により、矢印56の方向へ真空に引かれ、上部カラー40内の圧力が低下し始める。上部カラー40内の圧力が低下し終えるときには、クラッド32の上部はコラプスし、ギャップ31は閉じ、クラッド32はコアロッド30を封じ込め、またはクラッド32はコアロッド30と融合している。このとき、真空ポンプが、下部カラーホルダおよび真空ユニット52で排気し続ける一方で、圧力が約1気圧に達するまで、上部カラー40にガス(例えば、窒素ガスN)を充填し戻す。次いで、上部カラー40を大気に接続させる。
【0042】
上部カラーホルダおよび真空ユニット54の真空ポンプを作動させて(すなわち、オンにして)、矢印58の方向へ真空に引くことができる。同様に、加熱ゾーン16の加熱要素で使用するガス(典型的には、アルゴン、ヘリウム、または最も典型的には、窒素などの不活性ガス)のパージは、矢印60の方向で加熱要素にガスを導入することによって達成することができる。ガスパージは、ガラス体20の外面上での煤の発生と、加熱要素の酸化とを防ぐために、ガラス体20の外面と加熱要素の表面との間で行う。加熱要素の上部でのガスパージは、通常、本プロセスの最初から稼働させる。プロセス中またはプロセス後に、プリフォームの表面に煤またはその他の堆積物が形成されないように、適切なパージ速度(例えば、9m/h)を特定することが重要である。
【0043】
下部溶接部46が加熱ゾーン16の中心より所定の距離(例えば、約500mm)だけ下方にあるとき、加熱要素の電力を直線的に減少させ始める。下部溶接部46が加熱ゾーン16の中心に到達するとき、加熱素子の電力は所定の終了電力値(例えば、約150kW〜約160kW)でなければならない。この終了電力を維持しながら、アセンブリは、短い距離(例えば、約50mm)だけなおも上昇し続ける必要がある。このプロセスステップにより、最終段階の温度上昇が抑えられ、下部付近のガラスの過熱およびスランピングが回避される。
【0044】
下部溶接部46が加熱要素の中心から短い距離(例えば、約50mm)だけ上方にあるとき、プロセスを終了する。この位置で、加熱要素への電力を完全にオフにし、同時にアセンブリの動きを停止させる。ガラス体20の下端部24へのクラッド32の完全なコラプスを保証するために、プロセスが停止した後、短時間(例えば、1〜2分)、真空排気を維持することができる。最終段階の加熱レシピが100%適正な場合には、真空を維持する必要はなく、また一方、真空を余分な時間維持することで、下部カラー44が変形する危険を抱えることもある。
【0045】
ロードセル68を使用して、下部カラー44によって支持されている総重量を測定した。わずかな一定の振動摂動が上部カラーおよび真空ユニット54の速度V2に重畳され、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の速度V1が一定に保たれる場合、図4Aおよび4Bに示すように、ロードセルの指示値曲線に「リップル」が現れることが判明した。「リップル」の振幅が大きいほど、プロセスは低温になる。これは、低温プロセスでは、加熱要素の中心にある軟化したガラスが硬く、振動の力をアセンブリの底部により移行させることができるためである。この情報は、加熱要素の電力設定が一定であれば、加熱要素の実際の状態に起因して、プロセスがやや高温側にあるのか、それともやや低温側にあるのかを示す。例えば、図4Aは、比較的大きな振幅、したがって、低温側のプロセスを示す。一方、図4Bは、比較的小さな振幅、したがって、高温側のプロセスを示す。この知識に基づいて、プロセスの終了電力を決定することができ、すなわち、プロセスが低温になるほど、終了電力を高くする必要がある。この「リップル」振幅は、基本的には、加熱要素の中心におけるガラス体20の真の粘度測定値であり、パイロメータを用いたいかなるガラス表面温度測定よりも遥かに信頼度が高い。
【0046】
したがって、装置10および関連する上向きコラプスプロセスは、振動運動を与えることによって、加熱要素の中心におけるガラス体20の粘度測定を可能にする。プリフォームアセンブリの上部の位置に小さな振動を与える。並行して、プリフォームアセンブリの重量を、ロードセル68によって測定する。ロードセル68の測定により、加熱要素の中心におけるガラス体20の粘度の間接的な測定が実現する。この情報は、例えば、コントローラ88(後述する)を使用して、加熱ゾーン16の温度/加熱電力を制御するために用いることができる。
【0047】
従来の下向き線引きプロセスと明確に異なる点として、積み重ねられたコアロッド30は、真空によって支持される代わりに、積み重ねられたコアロッド30の下部にあるスペーサ48、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52によって支持され、オーバクラッドプロセスおよび線引きプロセスの間にわたり、クラッド32に対するコアロッド30の位置を本質的に固定する。言い換えれば、上向きコラプスプロセスは、クラッドからコアの導波路の歪み、したがってファイバのカットオフ波長の問題をもたらし得るコアロッドの移動を防ぐために、真空を必要としない。さらに、従来の下向き線引きプロセスとは対照的に、上向き線引きプロセスでは、加熱ゾーン16内の溶融ガラスの上方および下方の両方のガラスの重量は、上部カラー40および下部カラー44によってしっかりと支持され、このことは、加熱ゾーン16で、重力および真空力により従来引き起こされていたクラッドからコアの導波路が歪む効果を本質的に排除する。この違いにより、加熱要素またはコラプス温度が低温側で効力をもつ場合、(ガラスが真空からの圧力差を変換してコアロッド30を支持するのに十分に軟化していないため)上向きコラプスプロセスはさらに多くの耐性をもつことを可能にする。
【0048】
上向きコラプスプロセスはまた、コアロッド30の重量を支えるために真空が必要ないため、コアロッド30とクラッド32との間のギャップ31内の分圧(大気圧かまたはそれより少し高い、典型的には約1,100mbarまで)をも可能にする。したがって、高温コラプスの間中に、六フッ化硫黄(SF、室温での取り扱いが安全である)などの反応界面処理ガスを境界面処理ガス矢印62の方向に自由に加えて、金属粒子や表面水酸化物(OH)などの潜在的な境界面汚染をエッチング除去することができる。六フッ化硫黄に加えて、他の好適な反応性境界面処理ガスとしては、酸素(O)、安全性の懸念が生じるが塩素(Cl)、フッ素(F)、三フッ化窒素(NF)、四フッ化ケイ素(SiF)、四フッ化炭素(CF)およびフルオロホルム(CHF)がある。プリフォーム境界面のエッチング、洗浄および乾燥に反応性境界面処理ガスを使用することで、境界面の改善、光ファイバの品質向上(ファイバの破損、気泡、損失、またはエアラインの低減)、およびコアロッドのD/d比の低下を生じる。
【0049】
前節で述べたように、上向きコラプスプロセスは、積み重ねられたコアロッド30がスペーサ48、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52によって下から支持され、(ガラスが軟化する)加熱ゾーン16の上下両方のガラスの重量も支持されるため、コアからクラッドのガラス流動の差、または導波路の歪み効果に対してそれほど弱くない。このような支持によって、制御されていないガラス流動および歪みの問題が解消される。その結果として、過剰な加熱または重力および真空力によりクラッドからコアの導波路が歪む危険を冒すことなく、低粘度ガラス材料(高濃度Fドープクラッド32など)を加工するという本来備わる優位性がある。これは、Fドープクラッド32材料を用いた特定のクラスのファイバ設計に重要な加工上の利点を提供する。
【0050】
図1に戻ると、上部カラー40の内径よりわずかに小さい(すなわち、通常は約126mm)外径を有する任意選択のガラスディスク70が、コアロッド30およびクラッド32の上部であって上部カラー40の内側に配置される。ディスク70は、約5cmの厚さであり得る。プロセスの始動中に、加熱要素の中心における上部溶接部42の6分の滞留時間の後、下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54の両方から真空をかける。真空により、上部カラー40がディスク70の上にコラプスされる。V2>V1と設定することにより、V2=V1であるクラッド32のその他の部分の定常状態におけるコラプスの前に、クラッド32の上部に先端を引っ張る。その結果、低コストで歩留まりの高いオンラインプリフォーム尖鋭化方法が実現し、これにより、後続のファイバ線引き用に最も簡単で最も効率的なプリフォームを生じさせる。統合されたオンラインプリフォーム尖鋭化方法は、従来のオフライン尖鋭化方法と比較して、労力およびコストの両方の相当量を節減する(例えば、余分な加熱ステップを省く)。
【0051】
V2がV1よりも高く設定されている場合には、境界面のコラプスが開始されて継続する際に、上向きコラプスプロセスにより、クラッド32の元の直径よりも大幅に小さい直径のプリフォームを伸長させ、または上方に線引きさせることもできる。伸長した(またはさらに圧縮された)プリフォームの直径は、質量保存則による直線的な垂直速度V1およびV2の的確な設定によって、正確に制御することができる。また一方、始動時における良好なプリフォームガラスの減少は、従来の下向き線引きプロセスよりも上向きコラプスプロセスの方が遥かに少ないため、延伸プリフォームのコストを大幅に節減することができる。
【0052】
また、(ガラスが軟化する)加熱ゾーン16の上方および下方の両方のガラスの重量は、上部カラー40および下部カラー44によって支持されており、一方、プリフォーム自体の外面は接触されていないので、上向きコラプスプロセスは、プリフォームを完成させるための完全に非接触のプロセスでもある。プリフォームの接触、したがって水平方向または横方向の力を回避することにより、プーラホイールがプロセス全体を通して常にプリフォームと接触し、水平方向または横方向の力を加える従来の下向き線引きプロセスとは異なり、非常に清浄なプリフォーム表面と、非常に反りが少ない直線状プリフォームとの両方がもたらされる。
【0053】
多くの従来の下向き線引きプロセスでは、プーラホイールとプリフォームの周縁部との間に、小さな接触領域が存在する。そのような接触により、不純物や汚染物質がプリフォーム表面に混入する可能性がある。さらに、プーラホイールは下向き線引きプロセスで横方向の力を行使し、プリフォームの反り(この反りは、プリフォームが長いほど悪化し、つまり、単純な曲率の場合、プリフォームの長さの2乗に応じて反りが増加する)を引き起こす可能性がある。過剰な圧力が、プリフォームのガラス表面を損傷させる可能性があるために、プーラホイールによってプリフォームに加えられ得る接触力の量は制限される。そのため、1組のプーラホイールセットによって加えられ得るよりも大きな引張力を必要とする大きなプリフォームでは、プリフォームの重量を支えるのに必要な合計鉛直力(摩擦力)を実現するために、複数組のプーラホイールセットを異なる高さでプリフォームに適用してもよい。しかし、複数組のプーラホイールセットは、装置の高さおよびコストの両方を増加させる。さらに、プリフォームの反りを小さくすることは、プーラホイールのセットが正確に位置合わせされている場合にのみ、複数組のプーラホイールセットで実現することができる。これは実際には実現することが困難である。非接触の上向きコラプスプロセスでは、プリフォームに加えられる横方向の力がないために、反りが非常に少ないプリフォームが得られる。
【0054】
図1に再び戻ると、装置10は、任意選択で、フレーム12に取り付けられるグリッパシステム80を含んでもよい。好適なグリッパシステム80が、「Formation Of Elongated Glass Components With Low Bow Using A Gripper Device」と題し、本出願の譲受人であるHeraeus Tenevo LLC&Heraeus Quarzglas GmbH & Co.KGにより、2015年1月22日に提出された国際特許出願第PCT/US2015/012471号に、より完全に記載されている。一実施形態では、グリッパシステム10をフレーム12に取り付けることにより、グリッパシステム80は装置10の中に含まれている。
【0055】
グリッパシステム80は、クランプ要素82と、クランプ要素82をグリッパシステム80に取り付ける取り付け要素84とを含む。グリッパシステム80は、フレーム12の長さ(図1ではZ方向として定義される)と平行に、垂直に移動することができる。取り付け要素84は、クランプ要素82のX方向およびY方向(つまり、X−Y平面内の任意の位置)への平行移動を可能にする。(必要でもなく推奨でもないが、特に、加熱炉ではなく、トーチが加熱要素を提供する場合には、回転を可能にするチャックシステムを使用することもできる。)一実施形態では、取り付け要素84は、リニア軸受またはリニアレールに取り付けられた一対のアームと、アームの動きを制御するためのモータ、例えば手動モータ駆動装置もしくはサーボモータ駆動装置とを含むX−Yテーブルである。さらに、取り付け要素84は低摩擦デバイスであり、したがって、外部物体によりクランプ要素82に加えられる力は、クランプ要素82が外部要素に抵抗力を加えるよりはむしろ、クランプ要素82が取り付け要素84に沿って偏向されることをもたらす。
【0056】
プリフォームが形成されると、クランプ要素82を動かして、下部カラー44または(図1に示すように)下部カラーホルダおよび真空ユニット52と接触させることにより、グリッパシステム80を取り付けることができる。クランプ要素82は、好ましくはプリフォームに接触すべきではない。クランプ要素82は、下部カラー44と逆の形状である凸状領域を有するように所定の大きさに作り、その結果、下部カラー44に損傷を与えることなく、下部カラー44の周りにしっかりと合わせることができる。クランプ要素82は、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の外面の全てまたは(図1に示すように)一部のみと接触してもよい。例示的な実施形態では、クランプ要素82は、ケイ酸カルシウム、アスベスト、圧縮ガラス、またはセラミック繊維(例えば、ロックウール)もしくは高温ゴム(例えば、シリコーンまたはフルオロポリマエラストマ)などの高温圧縮性材料で作られていてもよい。
【0057】
クランプ要素82は、最初に、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の中心を決定することにより、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の中心と位置合わせされ、次いでクランプ要素82を移動して、X方向の中心と位置合わせされる。いくつかの実施形態では、クランプ要素82は、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の推定中心、例えば、所望の移動経路に基づいて予想される中心に位置合わせすることができる。他の実施形態では、クランプ要素82を下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52と、より正確に位置合わせするために、装置10は、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の中心の位置を特定することができる検知要素と、検知要素の出力から中心を決定するためのコンピュータとをさらに含んでもよい。検知要素は、1つ以上のレーザデバイス、カメラ/ビジョンシステム、リニアエンコーダ、または機械的接触(ダイヤルインジケータ)システムを含み得る。例示的な実施形態では、検知要素は、グリッパシステム80に取り付けられてもよく、または例えばフレーム12に取り付けられ、グリッパシステム80の外部にあってもよい。別の実施形態では、検知要素は、グリッパシステム80およびフレーム12の両方の外部にあり、例えばカメラであってもよい。グリッパシステム80は、位置合わせ不良を防止するために、さらなる要素を含むので、グリッパシステム80が、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の中心と完全に位置合わせされる必要はない。
【0058】
クランプ要素82が位置合わせされると、クランプ要素82は、取り付け要素84のX方向の移動により、底部カラー44または底部カラーホルダおよび真空ユニット52と接触する。取り付け要素84は、例えば、X−Yテーブルの一対のアームを制御するために使用されるモータなどの任意好適な機構により移動させることができる。取り付け要素84は低摩擦デバイスであるため、クランプ要素82を、中心と適切に位置合わせされていない状態で下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52に取り付けようとした場合、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52がクランプ要素82を押す力は、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52が移動する代わりに、クランプ要素82を位置合わせした位置に移動させる。取り付け要素84は、クランプ要素82が下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52に取り付けられると、クランプ要素82の移動を防止するために係合および解放が可能なロック機構をさらに含んでもよい。クランプ要素82が所定の位置に移動されている間に、ロック機構はロック解除され、その結果、クランプ要素82は、クランプ要素82に加えられるいずれかの追加の力によって引き続き動かされながら、モータによって移動させられ得る。クランプ要素84が下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52と接触すると、ロック機構が係合して、クランプ要素82がX−Y平面内でそれ以上移動するのを防止する。
【0059】
位置合わせ不良を検出するために、一実施形態では、グリッパシステム80は、底部カラー44または底部カラーホルダおよび真空ユニット52にクランプ要素82を取り付けるプロセスの間に発生する反力を検知してこの反力を測定するロードセルなどの力検知デバイスをさらに含む。ロードセルは、クランプ要素82から各ロードセルの歪ゲージ(図示せず)に加えられた力を、電気信号に変換する変換器である。次に、電気信号を測定して、歪ゲージに加えられた力と相関させることができる。例示的なロードセルには、油圧ロードセル、空気圧ロードセルおよび歪ゲージロードセルがある。クランプ要素82が、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の中心と適切に位置合わせされていない場合には、反力は、クランプ要素82が適切に位置合わせされている場合よりも大きくなる。力検知デバイスで反力を測定することにより、位置合わせ不良を検出して修正し、その後、クランプ要素82が、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52の移動をもたらすのに十分な力を、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52に加えることができる。一実施形態では、力検知デバイスは、低摩擦の取り付け要素84と併せて使用されてもよく、この場合、クランプ要素82が取り付け要素84上で、位置合わせした位置に移動できるようにするために、クランプ要素82が下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52に取り付けられる速度は、予想よりも大きい反力に応答して減速される。例示的な実施形態では、クランプ要素82は、力検知デバイスによって位置合わせ不良が検出されない間、約50mm/分〜約100mm/分の範囲の速度で、下部カラー44、または下部カラーホルダおよび真空ユニット52に向かって移動することができ、位置合わせ不良が検出される場合、速度は約10mm/分〜約25mm/分に減少する。他の用途では、クランプ速度がこれらの範囲を超える場合がある。
【0060】
要約すれば、グリッパシステム80は、従来の完全接触プーラホイールシステムに取って代わって、プリフォームアセンブリの重量(約350kg以上であってもよい)を支持するのに役立つ。グリッパシステム80は、プリフォームを作るために使用されるガラス体20の水平(X−Y)面内での流動的な位置決めと、プリフォーム表面形状およびプリフォーム尖鋭化方法の正確な位置合わせおよび制御のための垂直(Z)方向における精密な直線運動とを可能にする。特に、グリッパシステム80が組み込まれている場合、装置10は、プリフォームに対する水平方向または横方向の力を回避し、それによってプリフォームの反りを最小化し、あるいは排除し、ロードセルを使用して加熱中のガラスの挙動を監視することができ、物理学(質量保存)を用いて、寸法を正確に制御することを可能にする(従来のオンライン測定およびフィードバック制御の費用を排除する)。
【0061】
さらに、装置10および関連する上向きコラプスプロセスは、プリフォーム測定デバイスと組み合わせて使用することができる。好適なプリフォーム測定デバイスは、「Methods And Apparatus For Determining Geometric Properties Of Optical Fiber Preforms」と題し、本出願の譲受人であるHeraeus Tenevo LLC & Heraeus Quarzglas GmbH & Co.KGにより、2014年8月8日に提出された国際特許出願第PCT/US2014/050368号にさらに詳しく記載されている。
【0062】
図5は、光ファイバプリフォーム100の1つ以上の幾何学的特性を決定するための好適なプリフォーム測定デバイス90の実施形態の概略図である。図5を参照すると、デバイス90は、2次元パターン92および画像取り込みユニット94を含む。図5に描写される実施形態では、画像取り込みユニットはデジタルカメラである。図5に描写される実施形態に示すプリフォーム測定デバイス90は、光ファイバプリフォーム100をその長手方向軸の周りに回転させるように構成された支持体およびドライバ96を含む。図5に示す支持体およびドライバ96の一部はまた、光ファイバプリフォーム100の右端を位置決めして、プリフォーム100を回転させるように構成された支持体およびドライバ96をも含む。支持体およびドライバ96は、単一構造であってもよく、または支持体とドライバとは、別個の構成要素であってもよい。支持体は、捕捉される画像がプリフォーム100を通して見た2次元パターン92であるように、2次元パターン92と画像取り込みユニット94との間にプリフォーム100を位置合わせする構成となっている。
【0063】
プリフォーム測定デバイス90を使用する例示的な一方法は、以下のステップを含む。すなわち、長手方向軸、外径および周縁部を有する光ファイバプリフォーム100を提供すること、プリフォーム100の長手方向軸に平行な長さと、プリフォーム100の外径より大きい幅とを有する2次元パターン92を提供すること、プリフォーム100が2次元パターン92と画像取り込みユニット94との間に位置合わせされるように配置した画像取り込みユニット94を提供すること、プリフォーム100をその長手方向軸の周りに回転させ、プリフォーム100の周縁部に沿った2つ以上の異なる点でプリフォーム100を通して見た2次元パターン92の第1の複数の画像を取得すること、および第1の複数の画像から、プリフォーム100の少なくとも1つの幾何学的特性を判定することである。
【0064】
プリフォーム測定デバイス90および関連する方法に従って判定できる光ファイバプリフォーム100の幾何学的な特色または特性には、直径、楕円率、D/d比、オーバクラッドOD/ID比、コアロッド30の偏心率、および完成したプリフォーム100のコア偏心率、ならびに全体的なプリフォームの反り量が含まれる。したがって、プリフォーム測定デバイス90および関連する方法は、導波路および幾何学的特性の自動化された、非破壊的な、製造に適した測定を提供する。それらはまた、プリフォーム100のユーザに導波路品質の付加価値保証を提供し、光ファイバの作成プロセスを微調整する潜在的な機会を提供する。
【0065】
コントローラは、2つの構成要素の間のデータの流れを管理しまたは指示する(すなわち、通信を促進する)ハードウェアデバイスまたはソフトウェアプログラムである。装置10は、コントローラ88を含む。コントローラ88は、例えば、ロードセル68、グリッパシステム80;上部および下部のカラーホルダおよび真空ユニット52、54;ならびに真空システムおよび処理ガスシステムからデータを取得し、そのデータを使用して、装置10の他のコンポーネントおよび関連する上向きコラプスプロセスを制御する能力を提供する。コントローラ88は、最適な加熱および移動のプロセスレシピを効率的に保証するために、当業者に周知の仕方でプリセット制御プログラムまたはルーチンをその中にプログラム化している。より具体的には、コントローラ88は、例えば、速度V1およびV2、ガスの流量、グリッパおよびフィーダの位置、加熱炉の電力設定のタイミング、および真空ポンプの圧力を規定することができる。コントローラ88は、生産のための頑健で再現可能な「ワンボタン」自動化プロセスを保証するのに役立つ。
【0066】
上向きコラプスプロセスの重要な利点は、導波路(クラッドからコア)の歪みを最小化し、あるいは排除することである。導波路の歪みの原因は、従来のプロセスに固有のコアロッドおよび溶融ガラスに対する重力および真空力であり、この原因は上向きコラプスプロセスによって解消される。導波路の歪みは、RIT/RIC分野で対処されることは、あるとしても稀である。問題認識が欠如しているのは、以前の光ファイバの性能要件が、それほど厳しくなかったためである可能性があり、そのため、この分野では、例えば、とりわけ、ファイバのカットオフ波長の障害を招き得る実際の導波路(クラッドからコア)の歪み効果を気にすることなく、光学プリフォームを単純なガラス棒のように扱う傾向があった。
【0067】
世界規模のコネクテッドデバイス、クラウドサービス、5G(第5世代のモバイルネットワークまたは第5世代のワイヤレスシステム、これはモバイル通信規格の主要な段階であることを示す)、およびインダストリ4.0(または第4の産業革命、サイバーフィジカルシステム、モノのインターネット、クラウドコンピューティングなどの生産テクノロジにおける自動化およびデータ交換の現在の傾向)、ならびにその他の進歩により、帯域幅に対する需要は急激に増加している。そのため、光ファイバ製造業者は、その生産高および生産性を高める必要がある。次世代の光ファイバ製造では、高速で線引きされる非常に大きなプリフォームが必要である。上向きのコラプスプロセスの結果は、連続した光ファイバの線引きを数日間維持することができ、生産性および光ファイバ出力を向上させるだけでなく、コストを削減し、プリフォームのユーザのために、ファイバの歩留まりの改善を実現する「すぐに線引きできる」中実のプリフォームである。
【0068】
上向きコラプスプロセスには、当然、上方への線引き(および、任意選択で、伸長または圧縮)と、上部カラー40をコラプスすることによる、かつ上部カラー40の外径をクラッド32の外径に一致させることによる、低コストの上方へのオンライン尖鋭化とが含まれる。上向きコラプスプロセスのこれらのさらなる特徴的な機能は、質量保存およびガラス流動の正確な物理学による、従来の下向き線引きプロセスよりも遥かに正確かつ安価に実行できる。延伸/伸長および先端部特徴を含む上向きコラプスプロセスは、プリフォーム端での導波路の歪みを最小化して、ほぼ100%の尖鋭化プリフォームの歩留まり(すなわち、より「良好な」ガラス)を実現できる。また、上向きコラプスプロセスでは、従来の下向き線引きプロセスの開始のために使用される無駄な犠牲的出発材料がなくても、良好なプリフォームガラスの歩留まりがほぼ100%であることを指摘する価値がある。そして、上部カラー40および下部カラー44に使用される材料の消費量はまた、上向きコラプスプロセスではごく少ない。
【0069】
単一のオーバクラッド上向きコラプスプロセスが上で説明されている。ただし、このプロセスは、スペーサ48の外径を大きくし、最大加熱電力および終了電力をわずかに調節するなどのささいな変更を加えた、複数のオーバクラッド「ギャップ」ジャケットチューブとオーバクラッドシリンダとの組み合わせに適用することができる。さらに、上向きコラプスプロセスはまた、積み重ねられたコアロッド30の重量が下から完全に支持されるので、クラッドの内径(つまり、従来の下向き線引きプロセスの場合のように、上部クラッドの内側でコアロッドを支持するための下部クラッド用のより小さな内径)を一致させる必要がないという明確な利点を有し、2倍(またはさらに3倍以上)の長さのクラッド32に対応することができる。
【0070】
改善され、効率的で低コストの上向きコラプス尖鋭化方法により、プリフォーム100の外径に対して鋭く短い先端部を有したガラスプリフォーム100が作成され、ガラス廃棄物がさらに削減され、クラッドからコアへの導波路の歪みがさらに最小化される。大きなOD(>150mm)のプリフォーム100を被覆し伸張するために使用されるのと同じ装置10が、改善された尖鋭化方法のために使用される。プリフォームアセンブリのゾーンが加熱炉内で加熱され、軟化される。プリフォームの先端部は成形され、プロセスは、加熱ゾーン16の上方および下方へのガラスの正確な移動、加熱炉の加熱のタイミング、およびプリフォーム100の下部(または、代わりに上部)の重量の検知(これは実際には軟化した材料の粘度の測定値である)によって制御される。正しい粘度に達すると、プリフォームの先端部が、導波路の歪みと廃棄物とを最小限に抑えて最適に成形される(通常、短くかつ鋭く尖鋭化される)ように、コントローラ88を使用して正確にプログラム化され制御される加速度プロファイル(ガラス流のFEMシミュレーションから導出され、例えば、図6Aに示される)で、下部カラーホルダおよび真空ユニット52が、上部カラーホルダおよび真空ユニット54から離される。高度に非線形の加速度引き取りレシピの同じ概念は、バッティング旋盤および酸水素トーチ加熱を伴う水平プリフォーム尖鋭化方法などの他の尖鋭化方法に適用することもできる。
【0071】
改善された尖鋭化方法は、例えば、適切に短いプリフォーム先端部を生成するオンラインの下部(または上部)および中部の尖鋭化方法を含むいくつかの実施形態を有する。より一般的には、改良された尖鋭化方法は、初期アセンブリの両端が保持され、制御された方法で移動することができるいずれかのオーバクラッドプリフォーム製造プロセスに適用することができる。例として、上向きコラプスプロセスおよび上向き線引きプロセスを使用すると、連続オンライン下部尖鋭化方法は、プロセスの9つの「スナップショット」強調表示ステップを使用して説明することができる。本ステップは、図7A図7Eを参照して説明する。図7A図7B図7C図7Dおよび図7Eは、オンライン下部尖鋭化方法のFEMシミュレーションの5つのステップを示しており、加熱要素内に配置されたガラス体を描写している。
【0072】
上方への線引きが終了するとき、プリフォーム100の下部は、装置10の加熱ゾーン16の中心より上にある。プリフォーム100がその位置にある状態で、本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第1のステップでは、加熱電力をオフにする。本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第2のステップでは、装置10内のプリフォーム100の位置を維持し、プリフォーム100の底部をいくらか冷却する(通常10分間の「保持」で十分である)。
【0073】
本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第3のステップでは、下部カラーホルダおよび真空ユニット52と、上部カラーホルダおよび真空ユニット54とは、プリフォーム100の下部を、加熱ゾーン16の中心よりわずかに高いかまたは低い特定の場所(つまり、尖鋭化位置)に再配置するために、同期して一緒に移動し、プリフォーム材料の先端部の無駄が最小限になるようにする。図7Aは、合計プロセスの5,605秒後の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示し、これは、本実施例では尖鋭化方法の開始時間であり、プリフォーム100の下部は尖鋭化および冷却のために所要の位置に置かれる。(合計時間は、短いシリンダを線引きして尖鋭化したシミュレーションからの例示である。)最適化された尖鋭化位置は、特定のODサイズおよび材料タイプのプリフォーム100に対して固定され、予め決定される。最適化された尖鋭化位置は、FEMシミュレーションによって確認でき、実際のテストによって検証することができる。これについては、以下でさらに説明する。
【0074】
本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第4のステップにおいて、プリフォーム100の下部が尖鋭化位置に移動した後、アセンブリ下部の保持位置(または代替実施形態での上部保持位置)がわずかに調節されて、アセンブリの全ての重量が上部カラーホルダおよび真空ユニット54に移る。グリッパシステム80の取り付け要素84に設置されたロードセル68は、例えば、グリッパシステム80の重量を監視するために使用することができる。保持位置をわずかに調節すると、グリッパシステム80の荷重指示値がゼロになるはずである。
【0075】
本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第5のステップでは、加熱電力をオンにする(すなわち、加熱ゾーン16が再稼働する)。熱は尖鋭化に使用される。図7Bは、加熱ゾーン16を再稼働させたときの、プロセスが開始してから5,720秒での加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。(再度、合計時間は、短いシリンダを線引きして尖鋭化したシミュレーションからの例示である。)下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、プロセスが始まってから5,793秒後に下降を開始する。したがって、図7Aおよび7Bに示されている本実施例のプロセスのスナップショットでは、まだ移動が開始していない。
【0076】
プリフォーム100の底部が加熱されて軟化すると、加熱ゾーン16の下のアセンブリの重量がグリッパシステム80上に載り始める。したがって、グリッパシステム80上に設置されたロードセル68の指示値は徐々に増加する。ガラスの軟化が続くと、ロードセル68の指示値の増加勾配は最終的に小さくなり、本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第6のステップで最終的にゼロに達する(すなわち、指示値は上部に達するとフラットになる)。
【0077】
グリッパシステム80に設置されたロードセル68の指示値の勾配がゼロに達するとき(またはほぼゼロに近づくとき)、本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第7のステップが開始する。このステップは図7Cに示されており、全プロセスの6,300秒後(および下部カラーホルダおよび真空ユニット52の下降開始から6,300−5,793=507秒後)の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示している。下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、所定の、高度に非線形である指数関数的な加速度の大きさのプロファイルまたは加速度プロファイル(粘度と表面張力とが与えられた初期では非常に遅く、例えば毎分わずか1ミリメートルの割合であり、尖鋭化の終わりでは非常に速くなり、例えば約1,800mm/分である)に従って下方に移動する。
【0078】
図6Aは、本発明の実施形態による下部尖鋭化方法で達成された非線形速度プロファイル(3つの例の指数関数的曲線を示す)のグラフである。図6Aは、ゼロから1,800mm/分の速度のプロファイルを示す。図6Bは、ゼロから200mm/分までの低速でのプロファイルを強調する(すなわち、図6Bは、図6Aの一部に「ズームイン」している)。図6Cは、ゼロから20mm/分までのさらに低い速度でのプロファイルを強調する(すなわち、図6Cは、図6Aおよび図6Bの一部に「ズームイン」している)。したがって、図6Bおよび図6Cは、それぞれより低い速度における速度プロファイルの詳細を示す。
【0079】
選択される特定の非線形速度プロファイルは、事前に決定するか、またはFEMシミュレーションから導出することができる(もちろん、試験によって確認することができる)。このプロファイルは、図6Aの左端のプロファイルに示すように、重力(g、このgは9.8m/secである)下での自由な滴下に対応する。あるいは、図6Aの中央(0.2g)および右端(0.1g)のプロファイルに示すように、部分重力を加えることができる。FEMは、自由落下下で行われるプロセスと比較して、部分重力下でプリフォームの先端部を短くして尖らせることができることを示している。したがって、部分重力(特に、0.2g)下で測定した自由ガラス滴下速度プロファイルを、好ましい実施形態として特定した。(検討中の図7A図7Eに示す本実施例のプロセスは、0.2gの部分重力印加をシミュレートしている。したがって、図6Aの中央プロファイルは、507秒の移動後の下部カラーホルダおよび真空ユニット52の速度が249mm/分であることを示している。)ただし、特定の用途では、非線形の速度プロファイルは、部分重力によって誘起される滴下速度プロファイルに必ずしも従わない場合がある。より一般的には、非線形速度プロファイルを試験によって微調整して、プリフォームの先端部をさらに短く、鋭くすることができる。
【0080】
図7Dは、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の速度が1,728mm/分(図6A参照)であり、プリフォーム100の先端部が形成されているときの、合計プロセスの6,405秒後(または、下部カラーホルダおよび真空ユニット52が下降を開始してから6,405−5,793=612秒後)の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示している。図7Eは、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の速度が、約1,800mm/分(図6A参照)の最大値に近づき、プリフォーム100の先端部が形成されたときの、合計プロセスの6,480秒後(または、下部カラーホルダおよび真空ユニット52が下降を開始してから6,480−5,793=687秒後)の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示している。下部カラーホルダおよび真空ユニット52の速度が非線形速度プロファイルの最大値に近づくと、本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第8のステップで、加熱ゾーン16への電力がオフにされ、上部カラーホルダおよび真空ユニット54が短時間(例えば、数分)、比較的速い速度(例えば、約90mm/min以上)で上方に移動される。その間、下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、所定の非線形速度プロファイルを完了するまでその下向きの移動を継続する。上部カラーホルダおよび真空ユニット54を上昇させることにより、プリフォーム100の先端部の大部分が最大加熱ゾーンの上方に配置され、先端部の大部分でのさらなるガラススランピングが回避される。伸長が完了する前に電源を切ると、細いガラスストランドが加熱炉の中央で張力を受けたままになり、過度の熱によりストランドが巻き上がるのを防ぐことができる。
【0081】
本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第9および最後のステップでは、薄いガラスストランドを加熱炉の下でスナップカットする。次に、尖鋭化したプリフォーム100は、上部カラーホルダおよび真空ユニット54によって加熱炉の上部から引き出す。
【0082】
次に、オンライン中部尖鋭化方法に移り、これにより、2つの尖鋭化したプリフォームを同時に作成することができる。連続オンライン中部尖鋭化方法は、プロセスのステップを強調表示する10の「スナップショット」を使用して説明できる。本ステップは、図8A図8Dを参照して説明する。図8A図8B図8Cおよび図8Dは、オンライン中部尖鋭化方法のFEMシミュレーションの4つのステップを示しており、加熱要素内に配置されたガラス体を描写している。
【0083】
上方への線引きが終了するとき、プリフォーム100の下部は、装置10の加熱ゾーン16の中心より上にある。この位置は、前述の本実施例のオンライン下部尖鋭化方法の第1のステップと同様に、本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第1のステップを定義する。しかしながら、本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第2のステップでは、加熱ゾーン16を特定の予熱レベルに維持し(例えば、加熱電力を50kWに設定することができる)、装置10内のプリフォーム100の位置を維持する。
【0084】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第3のステップでは、下部カラーホルダおよび真空ユニット52と、上部カラーホルダおよび真空ユニット54とは、プリフォーム100の中間点を、加熱ゾーン16のほぼ中心(つまり、尖鋭化位置)に再配置するために、同期して一緒に移動する。図8Aは、合計プロセスの5,950秒後の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示し、これは、本実施例では尖鋭化方法の開始時間である。上記の本実施例のオンライン下部尖鋭化方法とは対照的に、本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の開始のための最適化された位置はない。尖鋭化は、プリフォーム100の中央で簡単に行われる。
【0085】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第4のステップにおいて、プリフォーム100の下部が尖鋭化位置に移動した後、アセンブリ下部の保持位置(または代替実施形態での上部保持位置)がわずかに調節されて、アセンブリの全ての重量が上部カラーホルダおよび真空ユニット54に移る。グリッパシステム80の取り付け要素84に設置されたロードセル68は、例えば、グリッパシステム80の重量を監視するために使用することができる。保持位置をわずかに調節すると、グリッパシステム80の荷重指示値がゼロになるはずである。
【0086】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第5のステップでは、加熱電力を増加させる。増加した熱は尖鋭化に使用される。図8Bは、加熱ゾーン16の温度が上昇したときの、プロセスが始まってから6,140秒後の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。プロセスが始まってから6,163秒後に、下部カラーホルダおよび真空ユニット52は下降を開始し、上部カラーホルダおよび真空ユニット54は上昇を開始する。したがって、図8Aおよび図8Bに示されている本実施例のプロセスのスナップショットでは、まだ移動が開始していない。
【0087】
プリフォーム100の中央が加熱されて軟化すると、加熱ゾーン16の下のアセンブリの重量が下部カラーホルダおよび真空ユニット52の上に載り始める。したがって、グリッパシステム80上に設置されたロードセル68の指示値は徐々に増加する。ガラスの軟化が続くと、ロードセル68の指示値の増加勾配は最終的に小さくなり、本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第6のステップで最終的にゼロに達する(すなわち、指示値は上部に達するとフラットになる)。
【0088】
グリッパシステム80に設置されたロードセル68の指示値の勾配がゼロに達するとき(またはほぼゼロに近づくとき)、本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第7のステップが開始する。このステップは図8Cに示されており、全プロセスの6,660秒後(および下部カラーホルダおよび真空ユニット52の下降開始と、上部カラーホルダおよび真空ユニット54の上昇開始とから、6,660−6,163=497秒後)の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示している。下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、所定の、高度に非線形である指数関数的な加速度の大きさのプロファイルまたは加速度プロファイルに従って下方に移動する。
【0089】
同時にかつ対称的に、上部カラーホルダおよび真空ユニット54は、同じ所定の、高度に非線形である指数関数的な加速度の大きさのプロファイルに従って上方に移動し始める。高度な非線形速度プロファイルは、上記の本実施例のオンライン下部尖鋭化方法で適用される非線形速度プロファイルの一部(例えば、4分の1)である。したがって、図8Cのスナップショットでの下部カラーホルダおよび真空ユニット52と上部カラーホルダおよび真空ユニット54との両方の速度は、52.56mm/分である。その速度は、図6Aの0.2g中心プロファイルを参照して計算し、プロファイルは497秒で210.24mm/分を示し、210.24mm/分x0.25=52.56mm/分である。下部カラーホルダおよび真空ユニット52の最大速度、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54の最大速度は、当然ながら、特定の用途に依存する。本例では、その最大速度が約90mm/分になるように任意に選択される。
【0090】
図8Dは、全プロセスの6,950秒後(および下部カラーホルダおよび真空ユニット52の下降開始と、上部カラーホルダおよび真空ユニット54の上昇開始とから、6,950−6,163=787秒後)の加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。この時点で、下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54の両方は、すでに最大速度に達している。下部カラーホルダおよび真空ユニット52、ならびに上部カラーホルダおよび真空ユニット54が最大速度に達すると、速度をさらに増加させることなく、プリフォーム100の対称的な伸長が維持される。
【0091】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第8のステップは、所定量の分離伸長(所望の先端長の2倍よりわずかに小さい)が達成されると開始する。その時点で、加熱電力がオフになり(すなわち、加熱ゾーン16の動作を停止する)、上部カラーホルダおよび真空ユニット54の速度は、加熱ゾーン16内の柔らかく薄いガラスストランドを張力下で維持するために、上部カラーホルダおよび真空ユニット54の下降速度が、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の下降速度よりもわずかに小さくなるように反転させる。下向きの移動によって作り出される距離が加熱ゾーン16の長さの約半分に達すると(つまり、2つの先端部の最も薄い部分が加熱ゾーン16の下に移動している)、上部カラーホルダおよび真空ユニット54の下向きの速度が、下部カラーホルダおよび真空ユニット52の下向きの速度に等しくなるように調節される。
【0092】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第9のステップは、2つの先端部の最も薄い部分が加熱ゾーン16の底から出て、細いストランドを簡単に切断できる位置に到達したときに開始する。2つの先端部がその位置になると、上部カラーホルダおよび真空ユニット54、ならびに下部カラーホルダおよび真空ユニット52の両方の下方への移動が同時に停止する。
【0093】
本実施例のオンライン中部尖鋭化方法の第10および最後のステップでは、薄いガラスストランドを最も薄い部分、すなわち2つの先端部の中間でスナップカットする。次に、上側の尖鋭化したプリフォーム100は、上部カラーホルダおよび真空ユニット54によって加熱炉の上部から引き出す。下側の尖鋭化したプリフォーム100は、加熱炉の下方で取り出される。
【0094】
コントローラ88を使用して、上述のオンライン下部尖鋭化方法およびオンライン中部尖鋭化方法を完全に自動化することができる。あるいは、コントローラ88を使用して、これらのプロセスの実質的に一方または両方を自動化することができる。例えば、チップが完了した後にチップを切断する最終ステップは、オペレータが手動で行ってもよい。
【0095】
上記のオンライン下部尖鋭化方法およびオンライン中部尖鋭化方法の両方を実施する実際の試験を行った。図9Aは、オンライン下部尖鋭化方法を使用して実現した実際の先端部を示す。先端部は、必要なチップODでまだスナップカットしていなかった。図9Bは、プリフォーム100の下部での実際のガラス滴下を示す。図9Cは、FEMモデリングにより予測されるオンライン下部尖鋭化方法中の下部におけるガラス滴下を示す。オンライン下部尖鋭化方法を実施する実際の試験では、FEMシミュレーションで予測された結果を確認した。
【0096】
また、上記のオンライン中部尖鋭化方法を実施する実際の試験を行った。図10は、二重先端部中間のスナップカットの準備ができた位置での中間尖鋭化試験の最終結果を示す。オンライン下部尖鋭化方法に関しては、オンライン中部尖鋭化方法の実際の試験は、FEMシミュレーションによって予測された結果を確認した。
【0097】
特定の光ファイバの線引きに可能な最良のプリフォーム100を作成するために、プリフォーム100およびプリフォーム100を作成するために使用される尖鋭化方法の多くの特性は、バランスが取れて最適化されなければならない。それらの特性の中には、プリフォーム100の先端の形状、尖鋭化位置(これはガラス廃棄物を生成しまたは低減することができる)、そしておそらく最も重要な、プリフォーム100のODのコアODに対する比がある。したがって、最適な先端部形状、尖鋭化位置および比率を調べるために実験を行った。
【0098】
最初に先端部形状に取りかかる。FEMシミュレーションを用いて、200mmODプリフォーム100に適用されるオンライン下部尖鋭化方法について、3つの異なる尖鋭化速度プロファイルを調査した。図11Aは、0.2g部分重力下の速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから6,430秒後の(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。(合計時間は、短いシリンダを線引きして尖鋭化したシミュレーションからの例である。)図11Bは、1.0g重力下の速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから6,317.5秒後の(すなわち、自由滴下連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。図11Cは、0.001m/秒の線形速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから8,000秒後の(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。
【0099】
図12は、図11A図11Bおよび図11Cに示す3つの異なる尖鋭化速度プロファイルのそれぞれから生じるプリフォーム先端部の形状を比較する、プリフォーム半径(r)に対するプリフォーム高さ(z)のグラフである。非線形の0.2gおよび1gの速度プロファイルから生じるプリフォーム先端部の形状は、比較的類似している。比較的遅い線形速度から生じるプリフォーム先端部の形状は、テーパがゆるいほど実質的に鋭くなる。ただし、線形速度プロファイルを使用する場合のトレードオフは、より長い転倒時間が必要になり(コストが増加する)、より多くの廃棄物ガラスが生成されることである。このような考慮事項により、最善の妥協した先端部形状をもたらすものとして、0.2g速度プロファイルの選択が促され得る。
【0100】
次に、再びFEMシミュレーションを用いて、150mmODプリフォーム100に適用されるオンライン下部尖鋭化方法について、3つの異なる尖鋭化速度プロファイルを調査した。図13Aは、1.0g重力下の速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから6,794.2秒後の(すなわち、自由滴下連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。図13Bは、0.2g部分重力下の速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから7,127.9秒後の(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。図13Cは、0.1g部分重力下の速度プロファイルを有し、プロセスが始まってから7,437秒後の(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)加熱ゾーン16およびプリフォーム100の温度プロファイルを示す。
【0101】
図14は、図13A図13Bおよび図13Cに示す3つの異なる尖鋭化速度プロファイルのそれぞれから生じるプリフォーム先端部の形状を比較する、プリフォーム半径(r)に対するプリフォーム高さ(z)のグラフである。結果として得られるプリフォーム先端部の形状は、重要な違いおよび相互関係を示す。つまり、速度プロファイルの重力が小さいほど、プリフォーム先端部の形状が鋭くなる。非線形の0.2gおよび0.1gの速度プロファイルは比較的類似している。1.0gの速度プロファイルから得られるプリフォーム先端部の形状は、テーパがきつくなるほど鋭さが大幅に低下する。繰り返すが、考慮事項のバランスにより、最善の妥協した先端部形状をもたらすものとして、0.2g速度プロファイルの選択が促され得る。
【0102】
上記に示したように、プリフォーム100と、バランスを取り、最適化されなければならないプリフォーム100を作成するために使用される尖鋭化方法との第2の特性は、尖鋭化方法が始まる際の加熱ゾーン16の中心に対するプリフォーム100の位置である(つまり、尖鋭化位置)。FEMシミュレーションを用い、0.2gの速度プロファイルを使用して、200mmODプリフォーム100に適用されるオンライン下部尖鋭化方法について、3つの異なる尖鋭化位置を調査した。図15Aは、プロセスが始まってから6,490秒後での(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)、加熱ゾーン16と、加熱ゾーン16の中心から35mm上に位置する尖鋭化位置を有するプリフォーム100との温度プロファイルを示す。図15Bは、プロセスが始まってから6,430秒後での(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)、加熱ゾーン16と、加熱ゾーン16の中心から50mm上に位置する尖鋭化位置を有するプリフォーム100との温度プロファイルを示す。図15Cは、プロセスが始まってから7,222.7秒後での(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)、加熱ゾーン16と、加熱ゾーン16の中心から70mm上に位置する尖鋭化位置を有するプリフォーム100との温度プロファイルを示す。
【0103】
図15A図15Bおよび図15Cに示されている尖鋭化位置の結果の比較は、尖鋭化位置が高いほど、プリフォーム100から生成されるガラス廃棄物が少ないことを示している。これらの結果は、尖鋭化位置が高い方が望ましいことを示唆する。図16Aは、プロセスが始まってから6,950秒後での(すなわち、連続プロセスのスナップショットで)、加熱ゾーン16と、加熱ゾーン16の中心から70mm上に位置する尖鋭化位置を有するプリフォーム100との温度プロファイルを示す。図16Bは、図16Aの矢印「H」の間を取り出した図16Aの拡大図である。図16Aおよび図16Bは、調査した最も高い尖鋭化位置を用いて達成されたごく少ないガラス廃棄物を強調している。
【0104】
しかし、ここでもトレードオフが存在する。図15C図16Aおよび図16Bに示される70mmの尖鋭化位置などのより高い尖鋭化位置では、プリフォーム100が尖鋭化する前に、長すぎる滴下が必要である。長い滴下は、尖鋭化方法のコストを増加させる。さらに、より高い尖鋭化位置は、非現実的ではないとしても、装置10を使用して実現することは困難である。下部カラーホルダおよび真空ユニット52は、プリフォーム100を尖鋭化位置に配置して保持し、より高い尖鋭化位置では、滴下中に比較的長い距離を移動しなければならない。考慮事項のバランスにより、最小量のプリフォーム廃棄物と実用的な量の滴下長との間の最善の妥協点をもたらすものとして、50mmの尖鋭化位置の選択が促され得る。
【0105】
上記に示したように、プリフォーム100と、バランスを取り最適化する必要のあるプリフォーム100の作成に使用される尖鋭化方法との第3の特性は、プリフォーム100のODとコアODとの比である。FEMシミュレーションを用い、0.2gの速度プロファイルを使用して、200mmODプリフォーム100に適用されるオンライン下部尖鋭化方法の比率を調査する。図17Aは、プリフォーム半径(r)に対するプリフォーム高さ(z)のグラフである。プリフォームODは、実線で示す。コアODは、ほぼ垂直の破線で示す。ほぼ水平に向けられた破線は、コアを含むプリフォーム100の区画を画定する。各区画は、プリフォーム100のOD測定値とプリフォーム100のコアのOD測定値とを与える。これらの測定値は、図17Bにグラフで示され、図17Bは、プリフォームOD/コアODの比に対するプリフォーム高さ(z)のグラフである。
【0106】
図17Aは、図示の例示的なシミュレーションでは、許容可能な「良好な」プリフォームガラスが、約300mmのプリフォーム高さから始まることを示す。その高さより下のガラスは廃棄物となる。プリフォーム100が光ファイバを線引きするために使用される前に、廃棄ガラスは切り離されるので、重要ではない。
【0107】
図17Bは、大きいODプリフォーム100から非常に小さい先端部へのサイズの移行が、テーパの中央で、プリフォームOD/コアODの望ましくない高い(歪んだ)比をもたらすことを示す。図17Bに示す例示的なシミュレーションでは、比率は、プリフォーム100の上部で15.6から始まり、17を超えてピークに達する。しかし、プリフォーム100がテーパ領域を出て先端に達すると、熱伝達およびガラス流動の物理的性質により、比率は15未満の一定の「良好な」値に回復する。ガラスは、上向き線引きオンライン尖鋭化方法の間中に、コアロッド30およびクラッド32の両方を流れる。
【0108】
したがって、プリフォームの尖鋭化方法により、実際には先端部内部のクラッド対コア比が歪んでしまう。しかし、重要な点は、光ファイバに線引きされたときに、プリフォームの先端が良好で、一定のクラッド対コア比のファイバになることである。この結果の理由は、プリフォーム尖鋭化方法およびファイバ線引きプロセスの両方において、大きなODプリフォームから小さな先端部(尖鋭化方法中)への、またはファイバ(ファイバ線引きプロセス中)へのサイズの大きな移行が、テーパの中央で非常に類似した高いクラッド対コアピーク比をもたらすが、このような高いクラッド対コア比は、テーパ領域を出て先端部またはファイバに到達すると、熱伝達およびガラス流動の同じ物理学的性質のために、一定の良好な値に回復するためである。言い換えれば、歪んだクラッド対コア比のプリフォーム先端部を線引きすると、実際には良好なクラッド対コア比のファイバが得られ、大きなプリフォームからテーパを経てファイバへと通常のファイバを線引きする際に、クラッド対コア比がどのように変化するのかに非常によく似ている。要約すると、上で開示されたプリフォームの尖鋭化方法は、最終的な、そしてその後の光ファイバ線引きプロセスに非常によく適合する。
【0109】
図18は、最小二乗適合指数関数を含む本発明の実施形態による下部尖鋭化動作で実現される非線形の速さ(または速度)のプロファイルのグラフである。FEMシミュレーションは、0.2gを使用した150mmODプリフォーム100に適用されるオンライン下部尖鋭化方法を反映している。離散データポイントは、シミュレーションを使用して「実際の」速度として生成した。連続指数曲線は、多くのデータポイントを通る実線で示される。曲線は、最小二乗関数y=0.3117exp(0.0207x−4.0428)に従う。ただし、yは速度(mm/分)を表し、xは時間(秒)を表す。横軸および縦軸はそれぞれ水平軸および垂直軸であり、図18に示す2次元グラフのx軸およびy軸を形成する。
【0110】
データポイントに対する曲線の全体的な適合は、0.2gの速度プロファイルが実際に「指数関数的」であることを示している。低速でのカーブフィットの品質は、高速でのフィットほど良好ではない。それでも、非線形速度プロファイルは、確かに指数曲線に近似している。
【0111】
上記のオンライン尖鋭化方法を使用して、すぐにでも光ファイバに線引きが可能な尖鋭化プリフォームを作成することができる。FEMシミュレーションを使用して、尖鋭化方法のレシピを効率的に特定し、必要な実際の試行回数を最小限に抑えている。グリッパシステム80の取り付け要素84に設置したロードセル68からの指示値は、設計したレシピの頑健な実装を保証するために使用している。
【0112】
オンライン尖鋭化方法は、上記の目的を達成し、多くの利点をもたらす。例えば、このプロセスは、従来のオフライン尖鋭化方法と比較して、プロセス時間およびコストを大幅に節約する。また、優れたプリフォーム材料の無駄を削減する。つまり、最適化されたオンライン下部尖鋭化方法は、無駄をプリフォーム100全体の1%未満に削減するのに役立ち、最適化されたオンライン中部尖鋭化方法の無駄はゼロに近づく。おそらく最も重要なのは、オンライン尖鋭化方法が、先端部の表面形状(長さと幅)と輪郭形状とを最適化して、最も効率的なファイバの線引きを起動することである。
【0113】
より具体的には、オンライン尖鋭化方法により、プリフォーム先端部内のガラスの量が最小限に抑えられる。関連する利点は、(プリフォームの直径に比べて)ごく小さい先端長と鋭い先端とを実現するプロセスであり、最小限のガラス滴下と起動時間とで、後続のファイバ線引きを比較的簡単に開始できることである。別の関連する利点は、プロセスがプリフォーム100から線引きされた最終的な光ファイバの導波路の歪みを最小限に抑えることである。オンライン尖鋭化方法から生じる200mmの外径(大きな)のプリフォーム100は、例えば、ごく少ない導波路歪みを伴う8.2μmの導波路コア直径(または125/8.2=15.2の比率)を有する125μmの外径(小さな)の光ファイバに線引きされ得る。プリフォームの先端は、適切なクラッド対コア比を備えているため、そこから引き出されたファイバは、破損と無駄とを最小限に抑えて、正しいファイバカットオフ性能を発揮する。尖鋭化方法に応じて、少なくともいくつかの従来の市販のプリフォームチップには、かなりの量の歪んだ(「劣った」)導波路ガラスが含まれているため、良好なファイバに線引きすることができない。このような劣った先端部は、尖鋭化方法での優れたプリフォームガラスの大きな無駄を表している。
【0114】
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものではなく、例示するものと解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載されている本発明から逸脱することなく、上記の特徴の多数の変形および組み合わせを利用することができる。そのような変形は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱とは見なされず、全てのそのような変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。例えば、この文書で広く引用されている全ての範囲は、その範囲内に、より広い範囲に含まれるより狭い範囲を全て含むことを明確に意図している。また、当業者には理解されるように、プロセスに含まれる特定のステップを省略できることも明確に意図されている。特定の追加手順が追加される場合がある。ステップの順序は、説明されている特定の順序から変更される場合がある。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4A
図4B
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図18