特許第6861861号(P6861861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6861861
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】音声無線通信システム及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/10 20090101AFI20210412BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20210412BHJP
【FI】
   H04W4/10
   H04W72/04 132
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-8720(P2020-8720)
(22)【出願日】2020年1月22日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】大津 建夫
【審査官】 米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−125619(JP,A)
【文献】 特開2018−7115(JP,A)
【文献】 特開2007−96579(JP,A)
【文献】 特開2013−48323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複信用に設定されているペアチャンネルを介して相互に複信方式で無線信号の送受信を行う第1及び第2の無線通信装置と、1台又は複数台の第3の無線通信装置とで構成される音声無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段と受信・復調手段と共に、単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号を送信する一方、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段とがそれぞれ復調した信号の合成信号により音声出力を行い、
前記第3の無線通信装置は、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段も備え、PTT(Push to Talk)ボタンのオン操作に基づいて前記単信用のチャンネルについてキャリアセンスを実行し、当該チャンネルに受信入力がないと判定された場合に、前記単信用のチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号をPTT方式で送信する一方、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行う
ことを特徴とする音声無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の無線通信装置が、前記ペアチャンネルについて前記第1の無線通信装置とは送受信のチャンネルが逆の関係にある受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行うものである請求項1に記載の音声無線通信システム。
【請求項3】
複信用に設定されているペアチャンネルを介して相互に複信方式で無線信号の送受信を行う第1及び第2の無線通信装置と、1台又は複数台の第3の無線通信装置とで構成される音声無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段と受信・復調手段と共に、単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行う一方、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる復調信号とを合成した信号で変調した無線信号を送信し、
前記第3の無線通信装置は、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段も備え、PTTボタンのオン操作に基づいて前記単信用のチャンネルに係る受信手段によりキャリアセンスを実行し、当該チャンネルに受信入力がないと判定された場合に、前記単信用のチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号をPTT方式で送信する一方、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行う
ことを特徴とする音声無線通信システム。
【請求項4】
前記第3の無線通信装置が、無線信号の送信に際して通信フレームのヘッダー部分に自装置の識別データを含め、前記第1の無線通信装置が、受信した無線信号を復調して得られる前記通信フレームのヘッダー部分から前記識別データを確認して、自装置の表示部に通信中の前記第3の無線通信装置に係る識別表示を行うようにした請求項1、請求項2又は請求項3の音声無線通信システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に係る音声無線通信システムにおける第1の無線通信装置であって、
音声出力手段と、
音声入力手段と、
前記複信用に設定されているペアチャンネルの一方のチャンネルの無線信号を受信して復調する第1の受信・復調手段と、
前記ペアチャンネルの他方のチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第2の受信・復調手段と、
前記第1の受信・復調手段と前記第2の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に係る音声無線通信システムにおける第3の無線通信装置であって、
音声出力手段と、
音声入力手段と、
前記複信用に設定されているペアチャンネルの各チャンネルの無線信号をそれぞれ受信して復調する第1及び第2の受信・復調手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第3の受信・復調手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、
前記PTTボタンのオン操作に基づいてキャリアセンスを実行すると共に、当該チャンネルに受信入力がないと判定した場合に、前記変調・送信手段の動作をPTT方式で制御するPTT制御手段と、
前記第1及び第2の各受信・復調手段と前記第3の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項2に係る音声無線通信システムにおける第2の無線通信装置であって、
前記第1の無線通信装置おける第1の受信・復調手段及び変調・送信手段に対して、前記ペアチャンネルに係る送受信のチャンネルが逆の関係にある受信・復調手段と変調・送信手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する受信・復調手段と、
前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成する信号合成手段と、
前記信号合成手段が合成した信号により音声を出力させる音声出力手段と、
前記変調・送信手段へ音声信号を入力する音声入力手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項3に係る音声無線通信システムにおける第1の無線通信装置であって、
音声出力手段と、
音声入力手段と、
前記複信用に設定されているペアチャンネルの一方のチャンネルの無線信号を受信して復調する第1の受信・復調手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第2の受信・復調手段と、
前記第1の受信・復調手段と前記第2の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する第1の信号合成手段と、
前記音声入力手段から得られる音声信号と前記第2の受信・復調手段の復調信号とを合成する第2の信号合成手段と、
前記ペアチャンネルの他方のチャンネルのキャリア信号を前記第2の信号合成手段による合成信号で変調して送信する変調・送信手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項3に係る音声無線通信システムにおける第3の無線通信装置であって、
音声出力手段と、
音声入力手段と、
前記複信用に設定されているペアチャンネルの各チャンネルの無線信号をそれぞれ受信して復調する第1及び第2の受信・復調手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信する受信手段と、
前記単信用に設定されているチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、
PTTボタンのオン操作に基づいて前記受信手段によりキャリアセンスを実行すると共に、当該チャンネルに受信入力がないと判定した場合に、前記変調・送信手段の動作をPTT方式で制御するPTT制御手段と、
前記第1及び第2の各受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三者同時通話が可能な音声無線通信システム及びそのシステムに用いられる無線通信装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、大規模な構造物やビルの建設・建築現場では建材等の揚重に大型クレーンが用いられているが、揚重作業に係る安全性の確保については、クレーン操作者だけでなく、現場全体を見張って適宜注意を促す監視者や、玉掛や誘導等を行う各種作業者など多数の者が関与しているため、現場に適合した方式でそれらの者の連携が有効且つ円滑になされることが必要である。
【0003】
そのため、クレーン操作者と監視者と作業者の三者がそれぞれ業務用の無線通信機を携帯して、相互に複信方式で三者同時通話を行える音声無線通信システムが開発されている。
最も簡易なシステムとしては、クレーン操作者が2台の無線通信機を携帯して監視者側と作業者側の各無線通信機と独立に複信方式での通信を行うシステムがあり、同システムにおいてクレーン操作者が携帯する2台の無線通信機は三者通信用のヘッドセット付きアダプタで接続されている。
前記アダプタでは三者の音声信号を合成し、その合成された音声信号が監視者と作業者へ送信される一方、クレーン操作者もその合成音声を聴き取っているため三者同時通話が実現されている。
【0004】
また、下記特許文献1には、図13及び図14に示すような三者同時通話が可能な無線通信システムが開示されている。
図13の無線通信システムは、中継機として動作する親機210と3台の子機220-1〜3とからなる。
ここで、親機210は、受信手段(RX21-4)でキャリアセンス(CS)を行い、所定のペアチャンネル(CH0)で無線信号を送信する送信手段(TX23)と、そのペアチャンネル(CH0)とは異なる3つのチャンネル(440MHz帯-CH1,CH2,CH3)の各無線信号を受信する各受信手段(RX21-1〜3)と、それらの受信手段(RX21-1〜3)で受信した各無線信号を復調して得られる各音声信号を合成して送信手段(TX23)へ出力する信号合成手段211とからなるものである。
一方、各子機220-1〜3は、キャリアセンス(CS)用の受信手段(RX11-1:CH1,CH2,CH3)及び通信用の受信手段(RX11-2:CH0)と共に、それぞれが前記親機210の各受信手段(RX21-1〜3)のチャンネル(440MHz帯-CH1,CH2,CH3)に対応する送信手段(TX13:440MHz帯-CH1/CH2/CH3)を備えている。
【0005】
したがって、親機210におけるキャリアセンス(CS)で当該周波数に受信入力がない状態にあれば、各子機220-1〜3は、それぞれのキャリアセンス(CS)で当該周波数に受信入力がないことを条件に、子機相互間での複信方式による同時通話を行うことができる。
なお、図13では子機が3台になっているが、親機210側が440MH帯の受信手段を追加すれば、4台以上の子機が参加した複信方式での同時通話も可能である。
【0006】
また、図14の無線通信システムは、前記のように中継機としての親機を要さずに、子機同士で三者同時通話を実現しようとするものである。
第1の子機230は、所定のペアチャンネル(421MHz帯-CH1,440MHz帯-CH1)で無線信号を送受信する送信手段(TX13)及び受信手段(RX11-1:キャリアセンスも実行)と、そのペアチャンネル(CH1)とは異なるチャンネル(440MHz帯-CH2)に係る受信手段(RX11-2)と、2つの信号合成手段231,232を備え、前記各受信手段(RX11-1),(RX11-2)が受信した無線信号を復調して得られる各音声信号を信号合成手段231で合成してスピーカー233へ出力すると共に、信号合成手段231が合成した音声信号とマイクロホン234から入力された音声信号とを信号合成手段232で合成して送信手段(TX13)へ出力するものである。
第2の子機240は、キャリアセンス(CS)も兼ねた受信手段(RX11-1:421MHz帯-CH1)と送信手段(TX13: 440MHz帯-CH1)により前記第1の子機230と同時通話を行う。
第3の子機241は、キャリアセンス(CS)用の受信手段(RX11-1:421MHz帯-CH2)と通信用の受信手段(RX11-2: 421MHz帯-CH1)と送信手段(TX13:440MHz帯-CH2)により第1の子機230と同時通話を行う。
【0007】
この図14の無線通信システムによれば、第1の子機230における音声信号の合成によって第2及び第3の子機でも音声情報を共有できるため、複信方式での三者同時通話が実現できる。
また、第1の子機230側において、受信手段(RX11-2:440MHz帯-CH2)の他に別チャンネルの受信手段(RX11-n:440MHz帯-CHn)を設けるようにすれば、4台以上の子機間での同時通話も可能である。
【0008】
なお、図13及び図14の無線通信システムにおける親機210や子機220-1〜3,230,240,241は、下記非特許文献1で規定されている特定小電力無線局の内の音声による通信を行う無線電話用無線設備に相当するものであり、且つキャリアセンスを実行して、送信空中線電力10mWの送信出力が可能な無線通信装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6072337号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】社団法人電波産業会、「特定小電力無線局/無線電話用無線設備/標準規格」,RCR STD-20 4.1版、平成17年11月30日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、建設工事現場が広い場合などには、クレーンの設置場所以外でも様々な作業がなされており、クレーン操作者と監視者との間での密な交信が必要であることはもとより、直接的に揚重作業に係る玉掛や誘導の作業者だけでなく、広い範囲に散在している他の作業者もクレーン操作者との交信が必要になる場合が少なくない。
たとえば、建材の搬入路で車両の進入/退出を管理している者や、クレーン設置場所の近傍の工事個所で施工管理を行っている者など他の作業者においても、揚重作業との関係で安全性を確保するためにクレーン操作者と監視者との交信に割り込まなければならないような場合がある。特に、クレーン操作者からの見通しが悪いような建設工事現場ではそのようなケースが多発する。
【0012】
したがって、図13の無線通信システムでは異なる送信チャンネルの送信手段を備えた子機の台数を多くして対応し、また、図14の無線通信システムでも第3の子機241の他に異なるチャンネルの送信手段を備えた第4・第5・・・の子機を設けて対応することになるが、図13の無線通信システムの場合には、中継機としての親機210に子機220-n(n=4,5,6…)の追加台数分だけ受信手段(RX21-n)を増設しなければならず、また、図14の無線通信システムの場合も同様に、追加される第4以降の子機の送信チャンネルに対応した受信手段が第1の子機230に増設されなければならない。
【0013】
一方、建設工事現場等でのクレーン作業においては、前記のようにクレーン操作者と監視者は常に緊密に交信し合う必要があるが、他の作業者にとっては、クレーンのフックやジブの動きが自らの作業や安全性に関係する場合にのみクレーン操作者や監視者と交信ができれば足りることが多く、必ずしも複信方式で常時交信している必要はなく、現状でのクレーンの動作状況だけが確認できていれば足りる。
【0014】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、クレーン操作者と監視者が複信用の
ペアチャンネルを介して交信中に、他の作業者がPTT(Push to Talk)方式で単信用のチャンネルを介して適宜交信に参加できる音声通信システムを提供し、無線通信機のハードウエアを複雑にすることなく、建設工事現場等におけるクレーンの揚重作業等に係る安全性を確保するための音声無線通信に関して、より実際に適合したシステムを実現することを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の第一の発明は、複信用に設定されているペアチャンネルを介して相互に複信方式で無線信号の送受信を行う第1及び第2の無線通信装置と、1台又は複数台の第3の無線通信装置とで構成される音声無線通信システムであって、前記第1の無線通信装置は、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段と受信・復調手段と共に、単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号を送信する一方、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段とがそれぞれ復調した信号の合成信号により音声出力を行い、前記第3の無線通信装置は、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段も備え、PTT(Push to Talk)ボタンのオン操作に基づいて前記単信用のチャンネルについてキャリアセンスを実行し、当該チャンネルに受信入力がないと判定された場合に、前記単信用のチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号をPTT方式で送信する一方、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行うことを特徴とする音声無線通信システムに係る。
【0016】
この第一の発明によれば、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置が複信用のペアチャンネルを介して同時通話している状態で、第3の無線通信装置は、両者の同時通話を聴きながら、単信方式のチャンネルを介して、キャリアセンスで当該チャンネルに受信入力がないことを条件に、PTT方式でその同時通話に参加することができる。
第3の無線通信装置が複数台ある場合における同時通話への参加は一台に限定されるが、参加していない他の第3の無線通信装置でも第1、第2及び第3の無線通信装置の間での通話は聴くことができる。
第3の無線通信装置はキャリアセンス・PTT方式での同時通話への参加となるが、複信通話よりも単信通話の方が簡潔に要点を絞ったメッセージを発信できる傾向もあり、情報交換の効率化が図れる。
【0017】
前記第一の発明においては、前記第2の無線通信装置が、前記ペアチャンネルについて前記第1の無線通信装置とは送受信のチャンネルが逆の関係にある受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行うものとしておくことが望ましい。
前記第一の発明において、第2の無線通信装置が複信用のペアチャンネルを介した同時通話に係る受信・復調手段と変調・送信手段しか有していない場合には、第3の無線通信装置からの音声を聴くことができないが、この改良構成によれば、第2の無線通信装置においても通話に参加した第3の無線通信装置からの音声を聴くことができる。
【0018】
本願の第二の発明は、複信用に設定されているペアチャンネルを介して相互に複信方式で無線信号の送受信を行う第1及び第2の無線通信装置と、1台又は複数台の第3の無線通信装置とで構成される音声無線通信システムであって、前記第1の無線通信装置は、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段と受信・復調手段と共に、単信用に設定されているチャンネルの受信・復調手段も備え、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行う一方、前記ペアチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる復調信号とを合成した信号で変調した無線信号を送信し、前記第3の無線通信装置は、前記単信用のチャンネルに係る受信・復調手段と変調・送信手段と共に、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段も備え、PTTボタンのオン操作に基づいて前記単信用のチャンネルに係る受信手段によりキャリアセンスを実行し、当該チャンネルに受信入力がないと判定された場合に、前記単信用のチャンネルに係る変調・送信手段により、自装置への入力音声信号で変調した無線信号をPTT方式で送信する一方、前記ペアチャンネルに係る2チャンネルの受信・復調手段から得られる各復調信号を合成した信号により音声出力を行うことを特徴とする音声無線通信システムに係る。
【0019】
この第二の発明によれば、第一の発明と異なり、第1の無線通信装置において、ペアチャンネルに係る変調・送信手段が自装置への入力音声信号と単信用のチャンネル側の受信・復調手段の復調信号とを合成した信号で変調した無線信号を送信するようにしているため、第2の無線通信装置では、第一の発明の前記改良構成のように単信用のチャンネルの受信・復調手段を備えていなくても、第3の無線通信装置からの音声を聴くことができる。
また、この発明における第3の無線通信装置では、ペアチャンネルに係る2チャンネルの各受信・復調手段による各復調信号を合成した信号に通話中の全ての音声信号が含まれているため、単信用のチャンネルに係る受信信号については復調する必要はなく、単にキャリアセンス用の受信手段だけで足りるという利点もある。
【0020】
そして、第一及び第二の発明における前記第3の無線通信装置が、無線信号の送信に際して通信フレームのヘッダー部分に自装置の識別データを含め、前記第1の無線通信装置が、受信した無線信号を復調して得られる前記通信フレームのヘッダー部分から前記識別データを確認して、自装置の表示部に通信中の前記第3の無線通信装置に係る識別表示を行うようにすれば、前記第1の無線通信装置において通信中の前記第3の無線通信装置の確認が容易となる。
特に、前記第3の無線通信装置が多数台ある場合にはその内のどの無線通信装置が交信に参加しているかを知ることができ、さらに識別データを有していない第三者の無線通信装置が通信に参加することを有効に防止できる。
【0021】
なお、以上の第一及び第二の発明における第1、第2及び第3の無線通信装置については、以下のようなものとして構成できる。
(1) 第一の発明の音声無線通信システムにおける第1の無線通信装置は、音声出力手段と、音声入力手段と、前記複信用に設定されているペアチャンネルの一方のチャンネルの無線信号を受信して復調する第1の受信・復調手段と、前記ペアチャンネルの他方のチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第2の受信・復調手段と、前記第1の受信・復調手段と前記第2の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段とを具備した無線通信装置として構成できる。
【0022】
(2) 第一の発明の音声無線通信システムにおける第3の無線通信装置は、音声出力手段と、音声入力手段と、前記複信用に設定されているペアチャンネルの各チャンネルの無線信号をそれぞれ受信して復調する第1及び第2の受信・復調手段と、前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第3の受信・復調手段と、前記単信用に設定されているチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、前記PTTボタンのオン操作に基づいてキャリアセンスを実行すると共に、当該チャンネルに受信入力がないと判定した場合に、前記変調・送信手段の動作をPTT方式で制御するPTT制御手段と、前記第1及び第2の各受信・復調手段と前記第3の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段とを具備した無線通信装置として構成できる。
【0023】
(3) 第一の発明の音声無線通信システムにおける第2の無線通信装置は、前記第1の無線通信装置おける第1の受信・復調手段及び変調・送信手段に対して、前記ペアチャンネルに係る送受信のチャンネルが逆の関係にある受信・復調手段と変調・送信手段と、前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する受信・復調手段と、前記ペアチャンネル側の受信・復調手段と前記単信用のチャンネル側の受信・復調手段から得られる各復調信号を合成する信号合成手段と、前記信号合成手段が合成した信号により音声を出力させる音声出力手段と、前記変調・送信手段へ音声信号を入力する音声入力手段とを具備した無線通信装置として構成できる。
【0024】
(4) 第二の発明の音声無線通信システムにおける第1の無線通信装置は、音声出力手段と、音声入力手段と、前記複信用に設定されているペアチャンネルの一方のチャンネルの無線信号を受信して復調する第1の受信・復調手段と、前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信して復調する第2の受信・復調手段と、前記第1の受信・復調手段と前記第2の受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する第1の信号合成手段と、前記音声入力手段から得られる音声信号と前記第2の受信・復調手段の復調信号とを合成する第2の信号合成手段と、前記ペアチャンネルの他方のチャンネルのキャリア信号を前記第2の信号合成手段による合成信号で変調して送信する変調・送信手段とを具備した無線通信装置として構成できる。
【0025】
(5) 第二の発明の音声無線通信システムにおける第3の無線通信装置は、音声出力手段と、音声入力手段と、前記複信用に設定されているペアチャンネルの各チャンネルの無線信号をそれぞれ受信して復調する第1及び第2の受信・復調手段と、前記単信用に設定されているチャンネルの無線信号を受信する受信手段と、前記単信用に設定されているチャンネルのキャリア信号を前記音声入力手段から入力された音声信号で変調して送信する変調・送信手段と、PTTボタンのオン操作に基づいて前記受信手段によりキャリアセンスを実行すると共に、当該チャンネルに受信入力がないと判定した場合に、前記変調・送信手段の動作をPTT方式で制御するPTT制御手段と、前記第1及び第2の各受信・復調手段の各復調信号を合成して前記音声出力手段へ出力する信号合成手段とを具備した無線通信装置として構成できる。
【発明の効果】
【0026】
本願発明の音声無線通信システム及び無線通信装置によれば、工事現場等における動力機械の操作者と現場監視者と他の作業者がそれぞれ無線通信装置を携帯して三者同時通話を行うことで作業の安全確保を図る場合に、動力機械の操作者と現場監視者は常に緊密な交信をとる必要がある一方、他の作業者は必要に応じて前記交信に参加できれば足り、むしろより多くの作業者が参加できるようにしておくことが望ましいという実際面での要求があるが、それをチャンネル数の追加によって実現するのではなく、作業者側の無線通信装置を単信方式の単一チャンネルを利用したキャリアセンス・PTT方式で前記交信へ参加させるという音声無線通信システム方式で実現する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本願発明の実施形態1に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図である。
図2】実施形態1に係る音声無線通信システムにおけるクレーン操作者の無線通信装置のブロック図である。
図3】実施形態1に係る音声無線通信システムにおける監視者の無線通信装置のブロック図である。
図4】実施形態1に係る音声無線通信システムにおける作業者の無線通信装置のブロック図である。
図5】通信フレームフォーマット図である。
図6】実施形態1に係る音声無線通信システムにおける各無線通信装置間の通信シーケンス図である。
図7】本願発明の実施形態2に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図である。
図8】実施形態2に係る音声無線通信システムにおける監視者の無線通信装置のブロック図である。
図9】実施形態2に係る音声無線通信システムにおける各無線通信装置間の通信シーケンス図である。
図10】本願発明の実施形態3に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図である。
図11】実施形態3に係る音声無線通信システムにおけるクレーン操作者の無線通信装置のブロック図である。
図12】実施形態3に係る音声無線通信システムにおける作業者の無線通信装置のブロック図である。
図13】先行技術文献に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図である。
図14】従来技術文献に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明の音声無線通信システム及び無線通信装置に係る各実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[実施形態1]
この実施形態に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図は図1に示され、10はクレーン操作者が携帯している無線通信装置、30は監視者が携帯している無線通信装置、50a〜50nは各作業者a〜nがそれぞれ携帯している無線通信装置であり、上記の図13及び図14の無線通信システムの場合と同様に、それぞれの無線通信装置は特定小電力無線局における音声通信用の無線電話用無線設備であって、キャリアセンスを実行して、送信空中線電力10mWでの送信出力が可能なものである。
【0029】
ここで、クレーン操作者の無線通信装置10は図2に示すような構成を備えている。
アンテナ11で受信された電波から受信部12によって421MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅され、復調部13によりその無線信号から音声信号が復調される。
また、受信部14では422MHz帯のチャンネルch2の無線信号が抽出・増幅され、復調部15によりその無線信号から音声信号が復調される。
そして、それらの復調された音声信号は音声信号合成部16で合成された後、増幅器17で増幅され、その増幅後の音声信号でスピーカー(レシーバー)16を駆動して音声出力させる。
【0030】
一方、マイクロホン19から得られる音声信号は増幅器20で増幅され、変調部21においてキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を送信部22から440MHz帯のチャンネルCH1でアンテナ23から無線送信する。
ただし、無線送信に際しては常にキャリアセンス(CS)が実行され、操作部24のPTTボタンをオンにすると、制御部26が受信部12で421MHz帯のチャンネルCH1の受信入力が一定レベル以上あるか否かを確認し、ない場合には送信部22が送信モードへ移行して操作部24の該当インジケータを点灯させ、ある場合には送信モードへの移行は停止される。
【0031】
そして、無線通信装置10は、操作部24のボタンやツマミを操作することにより送受信周波数の設定や音量調整や表示部25での表示設定などが行われ、また動作中にはそれらの設定に基づいて各モジュールが制御されるが、それらは制御部26が内蔵プログラムに基づいて実行する。
【0032】
なお、受信側の421MHz帯のチャンネルCH1と送信側の440MHz帯のチャンネルCH1は、上記非特許文献1の第4頁の表3.1において通信方式が「同報通信方式、複信方式又は半複信方式」で周波数帯が421.8125〜421.9125MHz(12.5kHz間隔)/440.2625〜440.3625MHz(12.5kHz間隔)の中で与えられているペアチャンネルであり、具体的には同非特許文献1の第6頁の表3.4においてチャンネル番号32〜40として規定されているペアチャンネルの中の一つである。
また、受信側の422MHz帯のチャンネルch2は、同非特許文献1の第4頁の表3.1において通信方式が「単向通信方式、単信方式又は同報通信方式」で周波数帯が422.2000〜422.3000MHz(12.5kHz間隔)として与えられているチャンネルであり、具体的には同非特許文献1の第6頁の表3.5においてチャンネル番号41〜49として規定されているチャンネルの中の一つである。
また、キャリアセンスに関して、上記非特許文献の第13頁には「他の無煙局の電波を受信した場合、当該無線局の発射電波と同一の周波数(複信方式及び半複信方式のものにあっては受信周波数に対応する送信周波数)の発射を行わないものとする。」とされており、送信部22のチャンネルは440MHz帯のチャンネルCH1であるため、受信部12の421MHz帯のチャンネルCH1でキャリアセンスが行われている。
【0033】
次に、監視者の無線通信装置30は図3に示すような構成を備えている。
同図から明らかなように、その構成は無線通信装置としては一般的なものに過ぎず、その送受信における使用周波数がクレーン操作者の無線通信装置10で使用されているペアチャンネルに対して送信/受信で逆の関係になっている点にのみ特徴がある。
アンテナ31で受信された電波から受信部32によって440MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅され、復調部33によりその無線信号から音声信号が復調され、その音声信号が増幅器34で増幅されてスピーカー35を駆動して音声出力させる。
一方、マイクロホン36から得られる音声信号は増幅器37で増幅され、変調部38においてキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を送信部39から421MHz帯のチャンネルCH1でアンテナ40から無線送信する。
【0034】
なお、無線通信装置30は、操作部41のボタンやツマミを操作することにより送受信周波数の設定や音量調整や表示部42での表示設定などが行われ、また動作中にはそれらの設定に基づいて各モジュールが制御されるが、それらを制御部43が内蔵プログラムに基づいて実行することは前記無線通信装置10の場合と同様である。
また、無線送信に際して常にキャリアセンスが実行されることも同様であり、操作部41のPTTボタンをオンにすると、制御部43が受信部32で440MHz帯のチャンネルCH1の受信入力が一定レベル以上あるか否かを確認し、ない場合には送信部39が送信モードへ移行して操作部41の該当インジケータを点灯させ、ある場合には送信モードへの移行は停止される。
【0035】
作業者a〜nの無線通信装置50a〜50nは図4に示すような構成を備えている。
アンテナ51で受信された電波から受信部52によって440MHz帯のチャンネルCH1の無線信号を抽出・増幅し、復調部53によりその無線信号から音声信号が復調される。
また、受信部54では421MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅され、復調部55によりその無線信号から音声信号が復調される。
また、受信部56では422MHz帯のチャンネルch2の無線信号が抽出・増幅され、復調部57によりその無線信号から音声信号が復調される。
そして、復調された3チャンネル分の音声信号は音声信号合成部58で合成された後、増幅器59で増幅され、その増幅後の音声信号でスピーカー(レシーバー)60を駆動して音声出力させる。
一方、送信系については、マイクロホン61から得られる音声信号が増幅器62で
増幅され、変調部63においてキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を送信部64から単信用の422MHz帯のチャンネルch2でアンテナ65から無線送信する。
【0036】
なお、各無線通信装置50a〜50nは、操作部66のボタンやツマミを操作することにより送受信周波数の設定や音量調整や表示部67での表示設定などが行われ、また動作中にはそれらの設定に基づいて各モジュールが制御されるが、それらを制御部68が内蔵プログラムに基づいて実行することは前記無線通信装置10,30の場合と同様である。
また、無線送信に際して常にキャリアセンスが実行されることも同様であり、操作部66のPTTボタンをオンにすると、制御部68が受信部56で422MHz帯のチャンネルch2の受信入力が一定レベル以上あるか否かを確認し、ない場合には送信部64が送信モードへ移行して操作部66の該当インジケータを点灯させ、ある場合には送信モードへの移行は停止される。
【0037】
図1に戻って、この実施形態に係る音声無線通信システムは、以上のようなそれぞれの無線通信装置10,30,50a〜50nの構成と機能に基づいて、クレーン操作者と監視者との間での同時通話、及びクレーン操作者と何れか一者の作業者(a,b,…,n)との間での同時通話が実現できる。
【0038】
図6はこの実施形態の音声無線通信システムにおける無線通信装置間の通信シーケンスを示す。
クレーン操作者は予め自身が携帯する無線通信装置10の送信チャンネルを440MHz帯-CH1に、受信チャンネルを421MHz帯-CH1と422MHz帯-ch2に選択・設定して監視者と各作業者a〜nに通知し、それに対応して、監視者は自身の無線通信装置30の送信チャンネルを421MHz帯-CH1に、受信チャンネルを440MHz帯-CH1に設定し、また各作業者a〜nも自身の無線通信装置50a〜50nの送信チャンネルを422MHz帯-ch2に、受信チャンネルを440MHz帯-CH1と421MHz帯-CH1と422MHz帯-ch2に設定しておく。
【0039】
先ず、クレーン操作者の無線通信装置10は、操作部24のPTTボタンがオン操作されると受信部12と制御部68で421MHz帯-CH1についてのキャリアセンスを行い、所定レベル以上の受信信号が検出されなければ、送信部22から440MHz帯-CH1で接続要求信号を送信し、これに対して、監視者の無線通信装置30は受信部32で前記接続要求信号を受信すると送信部39から421MHz帯-CH1で接続応答信号を送信し、クレーン操作者の無線通信装置10がその接続応答信号を受信することで通信接続が完了する。
以降、クレーン操作者の無線通信装置10と監視者の無線通信装置30の間では複信方式の周波数帯のペアチャンネル(421MHz帯-CH1と440MHz帯-CH1)を用いた同時通話が可能になり、クレーン操作者と監視者が常時より密な通話を行うことができる状態が継続する。
【0040】
一方、各作業者a〜nの無線通信装置50a〜50nは、操作部66のPTTボタンがオン操作されると受信部56と制御部68で単信用のチャンネルである422MHz帯-ch2についてのキャリアセンスを行い、所定レベル以上の受信信号が検出されなければ、PTTボタンのオン状態を維持したまま作業者の音声信号を前記単信用のチャンネルを介して送信する。
ただし、図6では、クレーン操作者の無線通信装置10と監視者の無線通信装置30の間での通信接続が完了して同時通話状態に入った後、作業者b−作業者a−作業者nの順でクレーン操作者の無線通信装置10に対して単信用のチャンネルである422MHz帯-ch2を介して音声信号が送信された状態を示している。
【0041】
したがって、各無線通信装置50a〜50nでは、複信用の前記ペアチャンネル421MHz帯-CH1,440MHz帯-CH1と単信方式のチャンネル422MHz帯-ch2の各受信部52,54,56でクレーン操作者と監視者と自己も含む全作業者a〜nの音声を聴取しながら、単信用のチャンネル422MHz帯-ch2のキャリアセンスで所定レベル以上の受信信号が検出されていないことを条件に(当然に他の作業者が通話に参加していない)、そのチャンネル422MHz帯-ch2を介して当該作業者の音声をPTT方式で無線通信装置10と無線通信装置50a〜50n(自装置も含む)へ送信できる。
すなわち、各作業者は、クレーン作業者と監視者と他の作業者の通話を聴きながら、他の作業者が通話に参加していないことを条件にPTT方式でクレーン作業者との同時通話を行うことができ、建設工事現場等でのクレーン作業の安全性を確保する上で、実際に即した音声無線通信システムを構成できる。
【0042】
なお、図5は無線通信装置10,30,50a〜50nの送信信号の通信フレームフォーマットを示す。
この実施形態において、作業者a〜nが携帯している各無線通信装置50a〜50nの送信信号における通信フレームのヘッダー内のペイロード部に自装置のID情報を含めておき、無線通信装置10がいずれかの無線通信装置(50i:i=a〜n)からの無線信号を受信した場合に、制御部26が復調部15の復調信号から前記ID情報を検出し、予めそのID情報に対応づけられている無線通信装置50iの端末番号や携帯者名を表示部25に表示させるようにすれば、クレーン操作者は作業者iからの音声信号の受信中であることを容易に確認できる。
また、クレーン操作者からみれば、何処の作業箇所からの音声メッセージであるかを直ちに認識できるため、より即応的に安全性を考慮したクレーン操作が可能になると共に、関係の無い第三者が同時通話に参加することも有効に防止できる。
【0043】
[実施形態2]
この実施形態に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図は図7に示される。
この実施形態は、図7図1を比較すれば明らかなように、監視者の無線通信装置30Aの構成が実施形態1におけるそれらのものと相違している点に特徴がある。
具体的には、監視者の無線通信装置30Aについて単信用のチャンネル422MHz帯-ch2に係る受信・復調機能が追加され、且つその受信・復調信号と複信用のチャンネル440MHz帯-CH1の受信・復調信号とを合成して音声出力させる点にあり、その他はすべて実施形態1の場合と同様である。
【0044】
そして、監視者の無線通信装置30Aは図8に示すような構成を備えている。
アンテナ31で受信された電波から受信部32によって440MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅され、復調部33によりその無線信号から音声信号が復調される。
また、受信部45では422MHz帯のチャンネルch2の無線信号が抽出・増幅され、復調部46によりその無線信号から音声信号が復調される。
そして、復調された各音声信号は音声信号合成部47で合成された後、増幅器34で増幅され、その増幅後の音声信号でスピーカー(レシーバー)35を駆動して音声出力させる。
以下、音声入力・送信系(36〜40)及び操作部41と表示部42と制御部43の関係と機能は実施形態1での監視者の無線通信装置30と同様である。
【0045】
図9はこの実施形態の音声無線通信システムにおける無線通信装置10,30A,50a〜50nの間の通信シーケンスを示す。
通信シーケンスに関しても実施形態1の場合と殆どにおいて同様であり、監視者の無線通信装置30Aにおいて、送信可能となった作業者(図では作業者b−作業者a−作業者n)の無線通信装置50b,50a,50nからの音声信号が監視者の無線通信装置30Aでも受信されている点(*で示す部分)で異なるだけである。
【0046】
この実施形態によれば、実施形態1の音声無線通信システムでは監視者の無線通信装置30において交信に参加した各作業者a〜nの音声を聴くことができなかったのに対して、クレーン操作者の無線通信装置10と同様にそれらの作業者の音声も聴くことができる。
【0047】
[実施形態3]
この実施形態に係る音声無線通信システムのネットワーク構成図は図10に示される。
この実施形態は、図10図1を比較すれば明らかなように、クレーン操作者の無線通信装置10A及び各作業者a〜nの無線通信装置50Aa〜50Anの構成が実施形態1におけるそれらのものと相違している点に特徴がある。
先ず、実施形態1における無線通信装置10では、単信用のチャンネル422MHz帯-ch2に係る受信音声信号が複信用のチャンネル421MHz帯-CH1に係る受信音声信号と合成されて音声出力されるだけの構成になっているが、この実施形態の無線通信装置10Aでは、前記構成に加えて、単信用のチャンネル422MHz帯-ch2に係る受信音声信号はマイクロホンからの入力音声信号と合成されて、複信用のチャンネル440MHz帯-CH1で送信される。
【0048】
また、実施形態1における無線通信装置50a〜50nでは、複信用のペアチャンネルに係る440MHz帯-CH1と421MHz帯-CH1の受信音声信号及び単信用のチャンネル422MHz帯-ch2に係る受信音声信号が全て合成されて音声出力される構成になっているが、この実施形態の無線通信装置10Aでは、単信用のチャンネル422MHz帯-ch2に係る受信信号はキャリアセンスに用いられるだけで足り、その受信信号は復調も合成もされず、単に受信信号レベルの検出の対象とされるだけである。
【0049】
そして、この実施形態におけるクレーン操作者の無線通信装置10Aは図11に示すような構成を備えている。
図11図2を比較すれば明らかなように、この実施形態の無線通信装置10Aは実施形態1での無線通信装置10と基本的構成においては共通している。
すなわち、アンテナ11で受信された電波から受信部12によって421MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅されて、その増幅後の信号から復調部13により音声信号が復調され、また、受信部14では422MHz帯のチャンネルch2の無線信号が抽出・増幅されて、その増幅後の信号から復調部15により音声信号が復調される。
また、復調された各音声信号は音声信号合成部16で合成された後、増幅器17で増幅され、その増幅後の音声信号でスピーカー(レシーバー)18を駆動して音声出力させることは、実施形態1の無線通信装置10と同様である。
【0050】
一方、マイクロホン19から得られる音声信号は増幅器20で増幅されるが、その次段には音声信号合成部28が設けられており、増幅器20からの音声信号と前記復調部15で復調された音声信号とが音声信号合成部28で合成され、変調部21においてキャリア信号を合成後の音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を送信部22から440MHz帯のチャンネルCH1で無線送信するようになっている。
したがって、この実施形態の無線通信装置10Aでは、単信方式で受信した422MHz帯のチャンネルch2の音声信号をマイクロホン19からの音声信号と合成して複信方式の440MHz帯のチャンネルCH1で送信している点に特徴がある。
【0051】
また、この実施形態における各作業者a〜nの無線通信装置50Aa〜50Anは図12に示すような構成を備えている。
図12図4を比較すれば明らかなように、この実施形態の無線通信装置50Aa〜50Anは実施形態1での無線通信装置50a〜50nと基本的構成においては共通している。
しかし、実施形態1の無線通信装置50a〜50nに設けられている単信用の422MH帯のチャンネルch2に係る受信部56に対する復調部57がこの実施形態では設けられておらず、その点に構成上の相違がある。
【0052】
したがって、アンテナ51で受信された電波から受信部52によって440MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅されて、その増幅後の信号から復調部53により音声信号が復調され、また、受信部54では421MHz帯のチャンネルCH1の無線信号が抽出・増幅されて、その増幅後の信号から復調部55により音声信号が復調されるが、復調された各音声信号は音声信号合成部58で合成された後、増幅器59で増幅され、その増幅後の音声信号でスピーカー(レシーバー)60を駆動して音声出力させる。
【0053】
ところで、受信部56はキャリアセンス専用のものであり、操作部66のPTTボタンがオン操作された際に制御部68が受信部56における422MH帯のチャンネルch2の受信信号レベルを検出し、そのレベルに基づいて送信部64からの無線送信の可否を選択するようになっている。
そのため、実施形態1での無線通信装置50a〜50nのように受信部56に対応する復調部57を設ける必要がない。
【0054】
一方、送信系については、マイクロホン61から得られる音声信号が増幅器62で増幅され、変調部63においてキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を送信部64から単信用の422MHz帯のチャンネルch2でアンテナ65から無線送信するが、これは実施形態1の送信系と同様である。
【0055】
なお、この実施形態における監視者の無線通信装置30については、実施形態1のものと同様の構成である。
【0056】
図10に戻って、●はクレーン操作者の音声信号を、■は監視者の音声信号を、また▲は通話に参加した作業者(同図ではb)の音声信号を示す。
この実施形態に係る音声無線通信システムでは、以上のような無線通信装置10A,30,50Aa〜50Anの構成と機能に基づいて、クレーン操作者と監視者との間での同時通話において、両者は相手方の音声と共に通話に参加した作業者(同図ではb)の音声も合成音として聴くことができる。
これは、実施形態1では監視者が作業者の音声を聴くことができなかったこと、実施形態2では監視者は作業者の音声を聴くことができるが、監視者の無線通信装置30Aには図8に示した受信部45と復調部46と音声合成部47が必要になったこととの対比において、この実施形態3の方がより合理的であるといえる。
【0057】
また、作業者a〜nの無線通信装置50Aa〜50Anでは、クレーン操作者と監視者との間での同時通話の音声と共に、通話に参加している作業者(図10ではb)の音声を合成音として聴くことができる。
この場合、無線通信装置50Aa〜50Anにおける単信用の422MHz帯のチャンネルch2に係る受信部56はキャリアセンス専用のものであり、実施形態1,2の場合のように、その受信信号に対する復調部は設けられておらず、その点においても合理的であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の音声無線通信システム及び無線通信装置は、建設工事現場でのクレーン作業においてクレーン操作者と監視者と作業者が無線通信装置を携帯して、安全性を確保するための通信システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10…クレーン操作者の無線通信装置、11…アンテナ、12…受信部、13…復調部、14…受信部、15…復調部、16…音声信号合成部、17…増幅器、18…スピーカー(レシーバー)、19…マイクロホン、20…増幅器、21…変調部、22…送信部、23…アンテナ、24…操作部、25…表示部、26…制御部、30…監視者の無線通信装置、31…アンテナ、32…受信部、33…復調部、34…増幅器、35…スピーカー(レシーバー)、36…マイクロホン、37…増幅器、38…変調部、39…送信部、40…アンテナ、41…操作部、42…表示部、43…制御部、50a,50b,〜,50n…作業者の無線通信装置、51…アンテナ、52…受信部、53…復調部、54…受信部、55…復調部、56…受信部、57…復調部、58…音声信号合成部、59…増幅器、60…スピーカー(レシーバー)、61…マイクロホン、62…増幅器、63…変調部、64…送信部、65…アンテナ、30A…監視者の無線通信装置、45…受信部、46…復調部、47…音声信号合成部、10A…クレーン操作者の無線通信装置、28…音声信号合成部、50Aa,50Ab, 〜,50An…作業者の無線通信装置、210…親機、211…信号合成手段、220-1〜3…子機、230…第1の子機、231…音声合成手段、232…音声合成手段、233…スピーカー、234…マイクロホン、240…第2の子機、241…第3の子機。

【要約】
【課題】建設工事現場等でクレーン操作者と監視者と作業者が無線通信機を携帯して、作業の安全確保を図る音声無線通信システムにおいて、利用チャンネル数を増大させずに三者同時通話を実現する。
【解決手段】クレーン操作者と監視者の各無線通信装置10,30Aは、複信用のペアチャンネル(421MHz帯・440MHz帯-CH1)で音声信号の送受信を行うと共に、単信用チャンネル(422MHz帯-ch2)の受信・復調部を備え、前記ペアチャンネルでの受信側の音声信号と前記単信用チャンネルでの受信音声信号とを合成出力させる。各作業者a〜nの各無線通信装置50a〜50nは、前記各チャンネルの受信部を備えて、その各受信音声信号を合成出力させると共に、PTT方式の送信部を備えて、前記単信用チャンネルの受信部でキャリアセンスを実行した上で、作業者の音声信号を送信する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14