特許第6861862号(P6861862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861862無段変速機用のプッシュベルトおよびプッシュベルトが設けられた変速機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861862
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】無段変速機用のプッシュベルトおよびプッシュベルトが設けられた変速機
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   F16G5/16 C
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-9149(P2020-9149)
(22)【出願日】2020年1月23日
(62)【分割の表示】特願2017-534230(P2017-534230)の分割
【原出願日】2015年12月23日
(65)【公開番号】特開2020-73826(P2020-73826A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2020年2月25日
(31)【優先権主張番号】1041121
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アリエン ブランツマ
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−227935(JP,A)
【文献】 特開2014−141976(JP,A)
【文献】 特開平01−098733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端キャリヤ(31)と、該無端キャリヤ(31)に摺動可能に配置された複数の横断セグメント(32)とを備える駆動ベルト(3)であって、該横断セグメント(32)には2つの本体面(38,39)がそれぞれ設けられており、該本体面(38,39)の間に前記横断セグメント(32)が厚さ方向に延びており、前記本体面のうちの少なくとも第1の本体面(38)には、凸状に湾曲した傾斜エッジ(18)が設けられており、該傾斜エッジ(18)は、高さ方向で、ほぼ一定の厚さ(Tts)を有する前記横断セグメント(32)の上側部分と、その厚さが前記傾斜エッジ(18)から離れる方向に減少している前記横断セグメント(32)の下側部分との間の移行部を提供しており、前記横断セグメント(32)には、さらに、少なくとも1つの切欠(33)がそれぞれ設けられており、該切欠(33)は、前記2つの本体面(38,39)の間に延びておりかつ半径方向内側方向において、前記無端キャリヤ(31)の内側を、前記駆動ベルト(3)において、支持する支持面(42)によって区切られている、駆動ベルト(3)において、
前記傾斜エッジ(18)の半径方向外側の延在範囲は、前記支持面(42)の半径方向外側に配置されており、前記傾斜エッジ(18)の半径方向内側の延在範囲は、前記支持面(42)の半径方向内側に配置されており、
前記横断セグメント(32)の前記上側部分の前記厚さ(Tts)は、1.2〜2.2mmに達し、前記傾斜エッジ(18)の前記凸状の湾曲が、3〜15mmの半径を有する円弧によって近似されることを特徴とする、駆動ベルト(3)。
【請求項2】
前記横断セグメント(32)の前記傾斜エッジ(18)は、それぞれの横断セグメント(32)の前記支持面(42)の半径方向外側および半径方向内側へほぼ等しい量だけ延びていることを特徴とする、請求項1記載の駆動ベルト(3)。
【請求項3】
2つの可変プーリ(1,2)と、該プーリ(1,2)の周囲に巻き掛けられた、請求項1または2に記載の駆動ベルト(3)とを備えるトランスミッションであって、前記プーリ(1,2)は、前記トランスミッションの動作中、その最も大きい、すなわち最大値(Rmax)と、その最も小さい、すなわち最小値(Rmin)との間で変化し得る、走行半径(R;Rmax;Rmin)を画定することができ、前記駆動ベルト(3)の前記横断セグメント(32)は、互いに相対的に傾斜可能であるのに対し、一対の隣接する横断セグメント(32)の間の接触線(CS,CRX,CRN)は、このような一対の隣接する横断セグメント(32)が互いにほぼ平行に向けられているときの半径方向で最も外側の位置(接触線CS)と、前記駆動ベルトが最大走行半径(Rmax)に定まっている限り、このような一対の隣接する横断セグメント(32)が互いに傾斜させられているときの中間位置(接触線CRX)と、前記駆動ベルトが最大走行半径(Rmax)に定まっている限り、このような一対の隣接する横断セグメント(32)が互いに傾斜させられているときの半径方向で最も内側の位置(接触線CRN)との間で、前記傾斜エッジ(18)において半径方向に移動し、前記横断セグメント(32)の前記支持面(42)は、前記傾斜エッジ(18)の前記接触線(CS,CRX,CRN)の前記中間位置(接触線CRX)の半径方向内側で、かつ前記傾斜エッジ(18)の前記接触線(CS,CRX,CRN)の前記半径方向で最も内側の位置(接触線CRN)の半径方向外側に配置されていることを特徴とする、トランスミッション。
【請求項4】
前記横断セグメント(32)の前記支持面(42)は、前記傾斜エッジ(18)の前記接触線(CS,CRX,CRN)の、前記中間位置(接触線CRX)と、前記半径方向で最も内側の位置(接触線CRN)とから半径方向でほぼ等しい距離に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のトランスミッション。
【請求項5】
前記横断セグメント(32)の前記支持面(42)は、半径方向で、前記傾斜エッジ(18)の前記接触線(CS,CRX,CRN)の前記半径方向で最も内側の位置(接触線CRN)よりも、前記中間位置(接触線CRX)により近く配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のトランスミッション。
【請求項6】
前記トランスミッションの速度比は、前記2つのプーリ(1,2)における前記駆動ベルト(3)の前記それぞれの走行半径(R;Rmax,Rmin)の間の比によって決められ、前記トランスミッションのすべての可能な速度比について、無端キャリヤ(31)の半径方向で最も内側のフレキシブルリングの、前記2つのプーリ(1,2)のそれぞれにおける半径方向の位置の比が、前記一対の隣接する横断セグメント(32)の間の前記接触線(CS,CRX,CRN)の、前記2つのプーリ(1,2)のそれぞれにおける半径方向の位置比の値よりも1に近い値を有する、請求項3に記載のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車、特に乗用車において適用されるような、ベルトおよびプーリタイプの無段変速機用のプッシュベルトタイプの駆動ベルトに関する。無段変速機用のこのようなプッシュベルトは、一般的に公知であり、同軸的に取り付けられた複数のフレキシブルリングから成る少なくとも1つの無端の、すなわちリング状のキャリヤと、無端キャリヤに取り付けられ、まとまって無端キャリヤの全周をほぼ埋める複数の横断セグメントとを有する。プッシュベルトの横断セグメントは、互いの間に押付力を加えながら、無端キャリヤの周囲に沿って移動することができ、これにより、作動中、駆動力を一方のトランスミッションプーリから別のトランスミッションプーリへ伝達する。
【0002】
横断セグメントの以下の説明では、言及される方向は、横断セグメントがプッシュベルトの一部である状態に関する。横断セグメントの長手方向または厚さ方向は、プッシュベルトの周方向に対応する。横断セグメントの鉛直方向または高さ方向は、プッシュベルトの半径方向に対応する。横断セグメントの水平方向または幅方向は、長手方向および鉛直方向の両方に対して垂直な方向に対応する。
【0003】
横断セグメントには、プッシュベルトの少なくとも1つの無端キャリヤを受け入れるための少なくとも1つの開口が設けられている。横断セグメントは支持面を有しており、この支持面は、開口の半径方向内側または下側の境界であり、無端キャリヤの半径方向内側と接触するために利用される。無端変速機の変速機プーリの円錐形のディスクと接触するために、横断セグメントは、水平方向で見て両側に、プーリディスク接触面が設けられており、このプーリディスク接触面は、円錐形のプーリディスクによって円錐形のプーリディスクの間に規定された角度に相当する角度で互いに拡開している。
【0004】
鉛直方向で見ると、横断セグメントの厚さは減少しており、これにより、隣接する横断セグメントを、水平方向を中心にして互いに回転させることができ、この場合、プッシュベルトは全体として、円錐形のプーリディスクの間において必要とされるように湾曲した軌道を辿る。通常、横断セグメントの上側部分には、ほぼ一定の厚さが設けられているのに対し、横断セグメントの下側部分の厚さは、下方へ減少している。横断セグメントのこれらの2つの部分の間において、プッシュベルトの互いに反対の周方向へ向けられた横断セグメントの主面のうちの少なくとも一方は、幅方向に延びる移行部を有しており、この移行部において、横断セグメントの前記上側部分と前記下側部分とにそれぞれ関連した、それぞれの主面の2つの部分が、つながっている。この移行部は、多くの場合、当該技術分野において、ロッキングエッジまたは傾斜エッジと呼ばれている。横断セグメントのこの特定の設計は、例えば、特開2000−065153号公報より公知である。2つのトランスミッションプーリにおける傾斜エッジのそれぞれの半径方向位置の間の比が、プーリの間の(回転)速度比、(ひいては)変速比を部分的に決定することに留意されたい。実際には、傾斜エッジのそれぞれの半径方向位置の間のこのような比、すなわち、幾何学的に決定される変速比と、プーリに対するプッシュベルトの滑りによる速度比との間に、差が生じる。
【0005】
プッシュベルトの作動中、無端キャリヤも、滑る、すなわち、横断セグメントに対して移動することができ、この移動は、摩擦(熱)による動力の望ましくない損失によって伴われる。このような動力損失は、支持面と傾斜エッジとの間の鉛直方向分離量を最小限に減じることによって最小限に減じることができることが公知である。なぜならば、横断セグメントに対する無端キャリヤの長手方向または滑り速度は、このような分離量に比例することが知られているからである。特開2000−065153号公報によれば、このような鉛直方向分離量およびそれに関連した動力の損失は、横断セグメントのキャリヤ接触面と一列になるように傾斜エッジの鋭い角度の角部を配置し、これにより、このような分離量を、少なくとも理論上ゼロに減じることによって、最小限に減じられる。
【0006】
しかしながら実際には、好適な製造プロセスの制限によるだけでなく、材料の機械的強度および/または耐摩耗性を超越しないように隣接する横断セグメントの間の接触応力を許容レベルに制限するためにも、傾斜エッジを鋭い角部として実施することはできない。その代わり、傾斜エッジは、それぞれの主面の凸状に湾曲した部分によって構成されており、その湾曲は、横断セグメントの鉛直方向に延びている。これにより、実際には、プッシュベルトにおける2つの隣接する横断セグメントの間の主に軸方向に向けられた接触線は、横断セグメント間の回転角度に応じて、すなわち、プッシュベルトの局所的湾曲に応じて、前記鉛直方向で下方へ移動する。その結果、支持面と傾斜エッジとの間の前記鉛直方向分離量は、必然的に、プッシュベルトの湾曲した軌道の半径と共に変化し、(ひいては)1つのこのような半径のためにのみ最小となり得る。
【0007】
本開示の課題は、横断セグメントと、無端キャリヤとの間のスリップに関連した摩擦損失を減じるために傾斜エッジの凸状湾曲を補償することである。特に、本開示は、この点で横断セグメントの設計を最適化することを目的とする。
【0008】
本開示によれば、プッシュベルトの別の摩擦的態様が考慮され、この摩擦的態様は、支持面の上方に配置された傾斜エッジの範囲を制限する。すなわち、無端キャリヤ内で、無端キャリヤのフレキシブルリングは、それぞれ、変速機プーリにおける僅かに異なる半径方向位置に配置され、特に、このような半径方向位置は、無端キャリヤのそれぞれの連続する、半径方向でより外側に配置されたリングの間で個々のリングの厚さだけ増大する。その結果、無端キャリヤの各フレキシブルリングは、僅かに異なる個々の幾何学的変速比および周速で作動し、これにより、各リングは、半径方向内側および/または半径方向外側の隣接する1つまたは複数のリングに摩擦力を加える。特に、半径方向でより外側に配置されたフレキシブルリングは、半径方向でより内側に配置されたフレキシブルリングに対して、1もしくは1:1により近い変速比で作動させられる。
【0009】
さらに、横断セグメントは、2つのトランスミッションプーリにおける横断セグメントの傾斜エッジにおける接触線のそれぞれの半径方向位置の比に応じて、特定の幾何学的変速比で作動させられ、この幾何学的変速比は、必ずしも、無端キャリヤの半径方向で最も内側のリングの個々の幾何学的変速比と等しくなることはできず、少なくともトランスミッションの全ての速度比において等しくなることはできない。これにより、通常、横断セグメントと、プッシュベルトの無端キャリヤの半径方向で最も内側のフレキシブルリングとの幾何学的な比の間に差が存在する。
【0010】
ここで、上記で説明した機能的態様に関連して、新規の設計基準を、プッシュベルトの最適な機能のために規定することができる。すなわち、本開示によれば、横断セグメントと、無端キャリヤの半径方向で最も内側のフレキシブルリングとの周速の差が、半径方向で最も内側のリングと、無端キャリヤの次の連続するリングとの周速の差と同じ符号を有する(すなわち、同じ相対移動の方向を有する)ことが極めて好ましい。この場合にのみ、半径方向で最も内側のフレキシブルリングによって、半径方向で最も内側のフレキシブルリングのそれぞれの半径方向の側において受けられる摩擦力は、ちょうど無端キャリヤの他のリングによって受けられる摩擦力と同様に、互いに反対の(周)方向へ方向付けられる。この場合、少なくとも無端キャリヤの他のリングに対する、さもなければ最も内側のフレキシブルリングの早期故障につながる可能性がある、最も内側のフレキシブルリングの不都合な機械的荷重が、好ましくは回避される。
【0011】
有効には、上記の設計基準は、プッシュベルト内で、無端キャリヤの半径方向で最も内側のフレキシブルリングの個々の幾何学的な比が、常時、横断セグメントの前記幾何学的な比よりも、1、すなわち1:1の比に近いことを必要とする。数学的な意味において、上記の設計基準は、すなわち、1の絶対値から、半径方向で最も内側のフレキシブルリングの幾何学的な変速比を引いたものが、1の絶対値から、プッシュベルトの横断セグメントの幾何学的な変速比を引いたものよりも小さいかまたはそれと等しいことを必要とする。
【0012】
傾斜エッジが、支持面および無端キャリヤ全体の下方、すなわち半径方向内側に配置されている場合、上記の設計基準は、常に自動的に満足されることに留意されたい。特に、傾斜エッジの湾曲(例えば、円形またはだ円形)およびサイズ(例えば、小さいまたは大きい凸状の曲率半径)に対する制約は加えられない。対照的に、傾斜エッジが、完全に支持面の上方、すなわち半径方向外側に配置されているときには、傾斜エッジの湾曲またはサイズにかかわらず、上記の基準を満足させることはできない。しかしながら、本開示の教示において、上記の設計基準を満足させながら、摩擦による動力損失を最小限に減じるために、好ましくは傾斜エッジの湾曲の一部を支持面の上方に配置することは依然として可能である。
【0013】
本開示によれば、上記の設計基準は、支持面が、円錐形のプーリディスクの間のプッシュベルトの湾曲した軌道の最大曲率半径と、このような軌道の最小曲率半径とに関連した傾斜ゾーンにおける軸方向接触線の間に配置されることを必要とする。特に、支持面は、半径方向でこれらの接触線のほぼ半分に配置されている。
【0014】
ここで、上述の新規の横断セグメントを図面に関連してさらに説明する。図面において、参照符号は、等しいまたは類似の部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】2つのプーリ上を走行する駆動ベルトを備えた無段変速機の概略的な透視図を提供しており、駆動ベルトは、無端キャリヤと、複数の横断セグメントとを有し、プッシュベルトとして知られている。
図2】公知のプッシュベルトの周方向に向けられた、公知のプッシュベルトの断面図を示している
図3】公知のプッシュベルトの横断セグメントの幅方向に向けられた図を提供している。
図4】本開示の教示を具体化する新規の横断セグメントの前側立面図を提供している。
図5図4の新規の横断セグメントの、横断セグメントの1つの向きにおける断面図を提供している。
図6A図4の新規の横断セグメントの、横断セグメントの1つの向きにおける断面図を提供している。
図6B図4の新規の横断セグメントの、横断セグメントの1つの向きにおける断面図を提供している。
図6C図4の新規の横断セグメントの、横断セグメントの1つの向きにおける断面図を提供している。
図7】第2の典型的な実施の形態における新規の横断セグメントを有するプッシュベルトの断面図を提供している。
【0016】
図面において、同一の符号は、同一または少なくとも同等の技術的特徴に関する。
【0017】
図1における無段変速機の概略図は、プーリ軸6,7の間でトルクを伝達するために閉ループで2つのプーリ1,2上を走行するプッシュベルトタイプの駆動ベルト3を示している。プッシュベルト3は、フレキシブルな、リング状の、すなわち無端のキャリヤ31と、ほぼ隣接した列において無端キャリヤ31の周囲に沿って連続的に配置された複数の横断セグメント32とを有する。
【0018】
各トランスミッションプーリ1,2は一対の円錐形のディスク4,5を有する。ディスク4,5は、鋭角、いわゆるプーリ角Φpを形成しながら半径方向外方に向かって開放したテーパした周方向溝を形成している。プッシュベルト3の周方向セクションは、それぞれのプーリ1,2のプーリディスク4,5によってプーリディスク4,5の間に締め付けられながら、プーリ溝に配置されている。これにより、プーリ1,2の間において、プッシュベルト3によって、それらの間の摩擦の助けにより力が伝達されてもよい。
【0019】
これらのプーリディスク4,5の間の軸方向分離量は、プーリ1,2の間の速度比を制御するために、通常、プーリ1,2の一方のプーリディスク4のみがそれぞれのプーリ軸6,7に対して軸方向に可動に配置されることによって制御することができる。プーリ1,2の2つの円錐形ディスク4,5の間の距離を反対方向に変化させることによって、プーリ1,2におけるプッシュベルト3の湾曲した軌道部分の半径方向位置もしくは走行半径Rが、互いに反対の半径方向で変化させられ、その結果、2つのプーリ1,2の回転速度の比が変化させられる。特に、速度比は、負荷に関連したトランスミッションの出力プーリ2の回転速度を、負荷を駆動するエンジンまたはモータに関連した変速機の入力プーリ1の回転速度で割ったものと定義される。
【0020】
図1において、公知の変速機は最小速度比で示されており、この場合、プッシュベルト3は、入力プーリ1においては最小走行半径Rminに、出力プーリ2においては最大走行半径Rmaxに配置されており、これにより、入力プーリ1の回転速度が出力プーリ2の回転速度よりも高くなる。
【0021】
図2には、プッシュベルト3の周方向もしくは長さ方向Lに面した、すなわち、プッシュベルト3の軸方向もしくは幅方向Wと、半径方向もしくは高さ方向Hとに対して垂直な方向に面した断面図でプッシュベルト3が示されている。プッシュベルト3のこの典型的な実施の形態では、2つの無端キャリヤ31がプッシュベルト3に含まれており、これらの無端キャリヤ31は、この図2においては断面図で示されているのに対し、プッシュベルト3の1つの横断セグメントは前側立面図で示されている。プッシュベルト3の横断セグメント32および無端キャリヤ31は、通常、鋼から形成されている。
【0022】
この図2に示された典型的な実施の形態では、無端キャリヤ31は、それぞれ5つの個々のフレキシブルリング43から成り、これらのリング43は、互いに同心状に重ね合わされて、無端キャリヤ31を形成している。実際には、無端キャリヤ31は、多くの場合、6つ以上、例えば6、9または12のフレキシブルリング43を含み、さらに多くのフレキシブルリングも可能である。
【0023】
プッシュベルト3の横断セグメント32は、その接触面37を介して各プーリ1,2のディスク4,5の間に加えられる締付力を取り上げる。1つのこのような接触面37が横断セグメント32のそれぞれの軸方向側に設けられている。これらの接触面37は半径方向外方へ互いに拡開しており、これにより、接触面の間に鋭角が規定されており、この鋭角はプッシュベルト3のベルト角Φbと称され、プーリ角Φpにほとんど相当する。
【0024】
図3の側面図にも示された横断セグメント32には、互いに反対側に配置された2つの切欠33が設けられている。これらの各切欠33は、横断セグメント32のそれぞれの軸方向側に向かって開放しており、それぞれの無端キャリヤ31の小さな周方向セクションを収容している。これにより、横断セグメント32の第1の部分もしくはベース部分34は、無端キャリヤ31から半径方向内方へ延びており、横断セグメント32の第2の部分もしくは中間部分35は、無端キャリヤ31の間に配置されており、横断セグメント32の第3の部分もしくは上側部分36は、無端キャリヤ31から半径方向外方へ延びている。各切欠33の半径方向内側は、横断セグメント32のベース部分34のいわゆる支持面42によって画定されており、この支持面42は、半径方向外方、すなわち概して横断セグメント32の上側部分36の方向に面しており、無端キャリヤ31の内側と接触する。
【0025】
横断セグメント32は、半径方向および軸方向で無端キャリヤ31によって拘束されているが、無端キャリヤ31の周方向に沿って移動、すなわち摺動することができ、これにより、互いに押し付けられ、かつプッシュベルト3およびプーリ1,2の回転方向で無端キャリヤ31に沿って互いに前方へ押し付けられる横断セグメント32によって、変速機プーリ1,2の間でトルクを伝達することができる。
【0026】
さらに、横断セグメント32は、横断セグメント32の第1の本体面38から突出した突出部40と、第2の本体面39に設けられた対応する孔41とが設けられているように示されている。プッシュベルト3において、本体面38,39は、互いに反対の周方向Lに面しており、後続の横断セグメント32の突出部40が、先行する横断セグメント32の孔41に少なくとも部分的に配置されており、これにより、プッシュベルト3の周方向に対して垂直な平面におけるこれらの隣接する横断セグメント32の相互の移動が、防止されているか、または少なくとも制限されている。
【0027】
横断セグメント32の第2の本体面39はほぼ平坦であるのに対し、横断セグメント32の第1の本体面38にはいわゆる傾斜エッジ18が設けられている。傾斜エッジ18は、半径方向Hで、第2の本体面39に対してほぼ平行に延びた、第1の本体面38の上側部分と、第2の本体面39に向かって延びるように傾斜させられた、第1の本体面38の下側部分との間の移行部を形成している。これにより、横断セグメント32の前記上側部分には、横断セグメント32の本体面38,39の間にほぼ一定の寸法が提供されており、すなわち、周方向Lで見て、最大寸法は、横断セグメント32の公称厚さTtsである。約1.5mmの横断セグメント32の厚さTtsが、実用上、最も一般的に適用される。しかしながら、より一層広い範囲が、もちろん、これに関して利用でき、例えば、1.2〜2.2mmのあらゆる値を、原則的に、横断セグメント32の厚さTtsとして適用することができる。
【0028】
傾斜エッジ18は、互いに押し付け合った接触を維持しながら、隣接する横断セグメント32を互いに傾斜または回転させるために設けられており、これにより、プッシュベルト3全体は、湾曲することができる、すなわち、湾曲した軌道を辿ることができ、この場合、第1の横断セグメント32の平坦な第2の本体面39は、隣接する第2の横断セグメント32の第1の本体面38における傾斜エッジ18の湾曲において転がる。この前記の点で、傾斜エッジ18は、図2および図3においては一本の線によって概略的にしか示されていないが、現実には、傾斜エッジ18は、円形またはだ円形の円弧などの、凸面状に湾曲した面の形状で提供されていることに留意されたい。6mmの傾斜エッジ18の曲率半径Rteが、実用上、最も一般的に適用される。しかしながら、より一層広い範囲が、もちろん、これに関して利用でき、例えば、3〜15mmのあらゆる値を、原則的に、6の傾斜エッジの曲率半径Rteとして適用することができる。
【0029】
横断セグメント32のうちの1つの傾斜エッジ18における、2つの隣接する、しかしながら互いに傾斜した横断セグメント32の間のほぼ水平方向に、すなわち軸方向に向けられた接触線は、これにより、このような2つの横断セグメント32の間の相互の傾斜角度が増大するに従って、鉛直方向または高さ方向で下方へ、すなわち半径方向内方へ移動する。しかしながら、2つの隣接する横断セグメント32の相対的な傾斜角度は、制限されたままである、すなわち、5度またはその程度を越えることはないので、傾斜エッジ18の所要の半径方向延在範囲も、制限されたままである。特に、このような所要の延在範囲は、通常、2.2mmの厚さTtsと、12mmの傾斜エッジの曲率半径Rteとを有する横断セグメント32の極端な場合でさえも、1mmを超えることはない。むしろ、横断セグメント32の最も一般的に適用される設計(Tts=1.5mm;Rte=6mm)において、傾斜エッジ18のこのような半径方向延在範囲は、約3分の1mmでしかなく、これは、図2および図3の縮尺においては正確に示すことができない。
【0030】
さらに、図2および図3において、傾斜エッジ18は、支持面42の半径方向内側に配置されている。傾斜エッジ18と支持面42とのこの相互の位置決めは、実用上、一般的に適用されているが、変速機における作動中のプッシュベルト3の動力伝達効率の点で最適以下であることも知られている。本開示は、特に、支持面42に対する横断セグメント32の傾斜エッジ18の位置決めの点で、横断セグメント32の択一的な新規の設計を提供する。この択一的な設計は、プッシュベルト3全体の動力伝達効率を高めることを目的とする。
【0031】
このような新規の横断セグメント32の第1の実施の形態は、その前側立面図において図4に概略的に示されている。説明の明瞭性および容易性のために、傾斜エッジ18のサイズ、すなわち半径方向延在範囲は、例えば、横断セグメント32全体の高さに対して誇張されている。図4において最も関連して、本開示によれば、傾斜エッジ18は、支持面42の半径方向外側に配置されたCSでマークされた線と、支持面42の半径方向内側に配置された18Bでマークされた線とから、半径方向内方へ延びている。すなわち、本開示によれば、傾斜エッジ18は、支持面の上側および下側の両方に延びており、図2に示された公知技術とは対照的に、傾斜エッジ18は、横断セグメント32のベース部分34に配置されているのみならず、部分的に横断セグメント32の中間部分35にも配置されている。その結果、プッシュベルト3における隣接する横断セグメント32の間の傾斜エッジ18における接触線は、少なくとも平均しておよび少なくとも半径方向で、支持面42のより近くに配置されており、これにより、隣接する横断セグメント32の間の相対速度または滑りが好ましくは作動中に減じられる。
【0032】
支持面42に対する傾斜エッジ18の上記の新規の配置は、横断セグメント32(の一部)の断面図A−Aにおいて、図5図6A図6Bおよび図6Cにも示されている。図5において、矢印18Tは、傾斜エッジ18の上側、すなわち半径方向外側の延在範囲を示しており、矢印18Bは、傾斜エッジ18の下側、すなわち半径方向内側の延在範囲を示している。さらに、図5および図6A図6Cにおけるより小さな矢印CS,CRX,CRNは、2つの隣接する横断セグメント32の間の3つの可能な接触線(の半径方向位置)を示している。矢印CSは、プッシュベルト3の直線的な部分におけるこのような接触線を示しており、この場合、隣接する横断セグメント32はほぼ平行に配置されている(図6Aも参照)。矢印CRXは、プッシュベルト3の湾曲した軌道の前記最大半径において湾曲させられたプッシュベルト3の部分におけるこのような接触線を示している(図6Bも参照)。矢印CRNは、プッシュベルト3の湾曲した軌道の前記最小半径において湾曲させられたプッシュベルト3の部分におけるこのような接触線を示している(図6Cも参照)。最後に、図5および図6A図6Cにおいて、点線L42は、支持面42の半径方向位置を示している。
【0033】
本開示によれば、図4図5および図6A図6Cに示したように、半径方向で見たときに、支持面42が、円錐形のプーリディスク4,5の間におけるプッシュベルト3の直線的な部分に関連した傾斜エッジ18における軸方向接触線CSと、このような湾曲した軌道の最も小さい、すなわち最小曲率半径Rminに関連した傾斜エッジ18aにおける軸方向接触線CRNとの間のほぼ半分に配置されるように、傾斜エッジ18は設計および/または位置決めされている。特に、半径方向で見たとき、支持面42は、このような湾曲した軌道の最も大きな、すなわち最大の曲率半径Rmaxに関連した傾斜エッジ18における軸方向接触線CRXと、このような湾曲した軌道の最小の曲率半径Rminに関連した前記軸方向接触線CRNとの間に配置されている。特に、本開示の文脈の中での支持面42の理論的に最適な位置において、支持面42は、このような湾曲した軌道の最小の曲率半径Rminに関連した前記軸方向接触線CRNよりも、最大の曲率半径Rmaxに関連した前記軸方向接触線CRXに幾分近く配置されている。
【0034】
プッシュベルト3の横断セグメント32の上記の新規の設計により、作動中、横断セグメント32の支持面42と、無端キャリヤ31の最も内側のフレキシブルリング43の半径方向内面との間に最小限の相対移動しか生じない一方、それと同時に、このような相対移動の方向が、半径方向で最も内側のリング43と、このような半径方向で最も内側のリング43の半径方向外側の無端キャリヤ31の次の隣接するリング43との間の相対移動の方向と同じであるという条件が満たされる。これにより、これらの新規の横断セグメント32を有するプッシュベルト3は、有利には、好ましくはプッシュベルト3の寿命に対する損害なく、作動中に高い動力伝達効率を提供する。
【0035】
本開示による横断セグメント32の第2の実施の形態が、図7にプッシュベルト3の断面図で概略的に示されている。図7の例において、横断セグメント32には、横断セグメント32のベース部分34のそれぞれの軸方向側から延びた2つのピラー44の間に配置された、中央に配置された1つの切欠33のみが設けられている。この第2の実施の形態では、傾斜エッジ18は2つの部分において提供されており、このような各部分は、部分的にそれぞれのピラー部分44に配置されている。横断セグメント32のこの第2の実施の形態においても、傾斜エッジ18は、半径方向で見たときに、支持面42が、傾斜エッジ18の半径方向延在範囲の約半分のところに配置されるように位置決めされている。この第2の実施の形態は、傾斜エッジ18においてそれらの間の接触線における隣接する横断セグメント32の間に加えられる押付力が、横断セグメント32とプーリディスク4,5との間に加えられる摩擦力により近く、それにより、横断セグメント32の(曲げ)荷重が、好ましくは、少なくとも新規の横断セグメント32の上記の第1の実施の形態と比較して低い、という利点を有する。さらに、横断セグメント32のこの第2の実施の形態では、9mmを超える、好ましくは12mmの傾斜エッジの比較的大きな凸状の曲率半径Rteが適用されている。
【0036】
本開示は、前記説明の全体および添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴の2つ以上のあらゆる組合せを適用することが可能であり得る。
【0037】
本開示によって表された発明は、明細書に明示的に言及された実施の形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の手の届くものも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7